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特許7483534パワーコンディショナ及びそれを備えた蓄電池充電制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ及びそれを備えた蓄電池充電制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240508BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240508BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240508BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240508BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240508BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02J3/14
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J3/38 130
H02J7/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020117934
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015230
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
(72)【発明者】
【氏名】相馬 英明
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-34840(JP,A)
【文献】特開2012-60752(JP,A)
【文献】特開2015-27237(JP,A)
【文献】特開2020-43736(JP,A)
【文献】特開2018-170933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H02J 3/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から契約ブレーカを介して入力される交流を直流に変換して直流バスに出力するAC/DCインバータと、
前記直流バスのバス電圧に基づいて蓄電池に充電電力を出力する蓄電池用DC/DCコンバータと、
最大許容値を取得して記憶する取得部と、
前記契約ブレーカに入力される電流又は電力を検出するセンサーの検出値を参照して、前記検出値が前記取得部によって記憶された最大許容値を超えないように、前記蓄電池用DC/DCコンバータに含まれるスイッチング素子のデューティ比を更新する更新動作を実行する電力変換制御部とを備え、
前記取得部は、前記最大許容値を特定するユーザ入力を有線又は無線により受け付ける受付装置から、前記最大許容値を取得でき
前記電力変換制御部は、前記検出値が前記取得部によって記憶された最大許容値に応じた所定閾値を超える場合に、前記蓄電池の充電電力を第1の傾きで減少させ、その後、第2の傾きで増加させるように、前記更新動作を実行し、前記第2の傾きの絶対値は、前記第1の傾きの絶対値よりも小さいことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記電力変換制御部は、所定の周期毎に前記更新動作を実行し、
前記所定の周期は、前記系統電源から入力される交流の周期以下であることを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記電力変換制御部は、前記検出値が前記所定閾値を超える場合に、前記蓄電池の充電電力を前記第1の傾きで所定のボトム値まで減少させ、当該ボトム値に所定期間維持した後、当該ボトム値から前記第2の傾きで増加させるように、前記更新動作を実行することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記電力変換制御部は、前記契約ブレーカに入力される電流を検出する前記センサーの検出値を参照して前記更新動作を実行する機能と、前記契約ブレーカに入力される電力を検出する前記センサーの検出値を参照して前記更新動作を実行する機能とを有することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のパワーコンディショナと、
前記センサーと、
前記蓄電池とを備えたことを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電池充電制御システムにおいて、
太陽電池パネルをさらに備え、
前記パワーコンディショナは、前記太陽電池パネルの出力電圧を所定の電圧に変換して前記直流バスに出力する太陽電池用DC/DCコンバータをさらに備えたことを特徴とする蓄電池充電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統電源から契約ブレーカを介して入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池に供給するパワーコンディショナ及びそれを備えた蓄電池充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された蓄電池充電制御システムは、一部の宅内機器に供給される負荷電流を測定し、負荷電流の測定値と蓄電池の充電電流との合計が、所定の最大許容値から負荷電流の予備分を引いた値を超えないように蓄電池の充電電流を制御することで、契約ブレーカのトリップを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5690618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分散型電源システムに設けられる蓄電池の容量は製品によって異なる。契約ブレーカの契約を従来から変更せずに、近時の分散型電源システムを導入すると、蓄電池の大容量化により、蓄電池への充電時に、契約ブレーカに入力される電流又は電力が最大許容値を超え、契約ブレーカが落ちることがある。
【0005】
例えば、日本においては、蓄電池からの充放電電力量は従来では1.5~3kW程度であったが、家庭内の全負荷に対応する蓄電池を有する近年の分散型電源システムでは、蓄電池からの充放電電力量が5.5kwとなっている。蓄電池への充電電力量が5.5kwであり、かつ充電電圧が200Vである場合、蓄電池に27.5Aの大電流が流れる。このときに家庭内でエアコンや電磁調理器等の負荷が瞬時的に大きな電力を消費すると、契約ブレーカに最大許容値を超える電流又は電力が入力され、契約ブレーカが落ちてしまう。
【0006】
そこで、契約ブレーカのトリップを防止するために、契約ブレーカの最大許容値を高くすることが考えられる。しかし、契約ブレーカの最大許容値を高くするには、契約電力を増やす必要があるので、電気料金が高騰する。また、契約ブレーカを取り替えるための工事が必要となり、工事費用も発生する。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、契約ブレーカのトリップをより確実に防止するとともに、電気料金の高騰を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、契約ブレーカに入力される電流又は電力を検出するセンサーの検出値を参照して充電制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、本発明の第1の態様は、パワーコンディショナが、系統電源から契約ブレーカを介して入力される交流を直流に変換して直流バスに出力するAC/DCインバータと、前記直流バスのバス電圧に基づいて蓄電池に充電電力を出力する蓄電池用DC/DCコンバータと、最大許容値を取得して記憶する取得部と、前記契約ブレーカに入力される電流又は電力を検出するセンサーの検出値を参照して、前記検出値が前記取得部によって記憶された最大許容値を超えないように、前記蓄電池用DC/DCコンバータに含まれるスイッチング素子のデューティ比を更新する更新動作を実行する電力変換制御部とを備え、前記取得部は、前記最大許容値を特定するユーザ入力を有線又は無線により受け付ける受付装置から、前記最大許容値を取得できることを特徴とする。
【0010】
これにより、電力変換制御部が、充電電力を制御するために、契約ブレーカに実際に入力される電流又は電力を検出するセンサーの検出値を参照するので、契約ブレーカから宅内機器等の負荷に入力される電流及び電力の大きさに関わらず、契約ブレーカのトリップを確実に防止できる。
【0011】
また、センサーの検出値が所定閾値を超えるときに、蓄電池の充電電力を一時的に減らせるので、契約ブレーカの最大許容値を比較的小さく設定できる。したがって、契約電力を減らし、電気料金を削減できる。また、従来よりも蓄電容量が大きい蓄電池を導入する場合でも、契約ブレーカを取り替えるための工事、及びその工事費用を不要にできる。
【0012】
また、電力変換制御部が、取得部によって取得された最大許容値に応じて充電電力を制御するので、パワーコンディショナを、最大許容値が異なる複数種類の契約ブレーカに適用できる。
【0013】
また、ユーザは、受付装置への入力により、最大許容値を特定できる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記電力変換制御部は、所定の周期毎に前記更新動作を実行し、前記所定の周期は、前記系統電源から入力される交流の周期以下であることを特徴とする。
【0015】
これにより、所定の周期を、系統電源から入力される交流の周期よりも長くした場合に比べ、充電制御の応答性を改善できる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様において、前記電力変換制御部は、前記検出値が前記取得部によって記憶された最大許容値に応じた所定閾値を超える場合に、前記蓄電池の充電電力を第1の傾きで所定のボトム値まで減少させ、当該ボトム値に所定期間維持した後、当該ボトム値から第2の傾きで増加させるように、前記更新動作を実行し、前記第2の傾きの絶対値は、前記第1の傾きの絶対値よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
これにより、センサーの検出値が所定閾値を超える場合には、充電電力を急速に減少させることにより、契約ブレーカのトリップを確実に防止できる。また、充電電力をボトム値からゆっくり増加させることにより、AC/DCインバータの出力が不安定になって系統に悪影響を及ぼすのを抑制するとともに、充電電流に加わる外乱による蓄電池の劣化及び短寿命化を抑制できる。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記第1~第3の態様において、前記電力変換制御部は、前記契約ブレーカに入力される電流を検出する前記センサーの検出値を参照して前記更新動作を実行する機能と、前記契約ブレーカに入力される電力を検出する前記センサーの検出値を参照して前記更新動作を実行する機能とを有することを特徴とする。
【0019】
これにより、電流を検出するセンサーと電力を検出するセンサーのいずれが設けられている場合にも、契約ブレーカのトリップを確実に防止できる。
【0020】
本発明の第5の態様は、前記第1~第4の態様のいずれか1つに係るパワーコンディショナと、前記電流センサーと、前記蓄電池とを備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様において、太陽電池パネルをさらに備え、前記パワーコンディショナは、前記太陽電池パネルの出力電圧を所定の電圧に変換して前記直流バスに出力する太陽電池用DC/DCコンバータをさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、契約ブレーカのトリップをより確実に防止するとともに、電気料金の高騰を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る蓄電池充電システムの構成を示すブロック図である。
図2】蓄電池用DC/DCコンバータの詳細な構成を示す回路図である。
図3】(a)は、系統電源からパワーコンディショナに供給される順変換電流と、家庭内負荷に供給される電流とを示すグラフであり、(b)は、系統電源からパワーコンディショナに供給される順変換電流と、契約ブレーカを流れる電流とを示すグラフである。
図4】実施形態2の図1相当図である。
図5】実施形態3の図1相当図である。
図6】(a)は、実施形態3に係る蓄電池充電システムにおける蓄電池の充電電力の推移の一例を示すグラフであり、(b)は、図6(a)に対応する充電チャタカウンタのカウント値を示すグラフである。
図7】(a)は、実施形態3に係る蓄電池充電システムにおける蓄電池の充電電力の推移の別の例を示すグラフであり、(b)は、図7(a)に対応する充電チャタカウンタのカウント値を示すグラフである。
図8】(a)は、実施形態3に係る蓄電池充電システムにおける蓄電池の充電電力の推移のさらに別の例を示すグラフであり、(b)は、図8(a)に対応する充電チャタカウンタのカウント値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る蓄電池充電システム1を示す。この蓄電池充電システム1は、契約ブレーカ10と、電流センサー11と、専用連系ブレーカ12と、家庭内負荷13と、パワーコンディショナ20と、受付装置としてのリモートコントローラ14と、受付装置としての無線ルーター15と、蓄電池16とを備えている。
【0026】
契約ブレーカ10は、系統電源2に接続された第1の電路L1に設けられている。第1の電路L1の一端は、系統電源2に接続され、第1の電路L1の他端は、第2及び第3の電路L2,L3に分岐する。契約ブレーカ10は、所定の最大許容値(トリップ電流)を超える電流が流れたときに、第1の電路L1を遮断する。
【0027】
電流センサー11は、第1の電路L1を流れる電流、すなわち契約ブレーカ10に入力される電流を検出する。
【0028】
専用連系ブレーカ12は、第2の電路L2に設けられている。
【0029】
家庭内負荷13は、第3の電路L3に接続されている。
【0030】
パワーコンディショナ20は、AC/DCインバータ21と、蓄電池用DC/DCコンバータ22と、取得部としての通信制御部23と、電力変換制御部24とを備えている。パワーコンディショナ20は、蓄電池16に蓄えられた電力を交流電力に変換して専用連系ブレーカ12を介して家庭内負荷13に出力する放電モードと、系統電源2から契約ブレーカ10及び専用連系ブレーカ12を介して入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池16に供給する充電モードとで動作可能に構成されている。
【0031】
AC/DCインバータ21は、充電モードにおいて、系統電源2から契約ブレーカ10及び専用連系ブレーカ12を介して入力される交流を直流に変換して直流バスBに出力する一方、放電モードにおいて、直流バスBのバス電圧を交流に変換して専用連系ブレーカ12を介して家庭内負荷13に出力する。
【0032】
蓄電池用DC/DCコンバータ22は、充電モードにおいて、直流バスBのバス電圧に対して降圧動作を行って蓄電池16に充電電力を出力する一方、放電モードにおいて、蓄電池16の出力電圧を所定の電圧に変換して直流バスBに出力する。
【0033】
詳しくは、図2に示すように、蓄電池用DC/DCコンバータ22は、第1のコンデンサ22aと、ブリッジ回路22bと、第1及び第2のリアクトル22c,22dと、第2のコンデンサ22eとを備えている。
【0034】
第1のコンデンサ22aの一端は、直流バスBに接続され、第1のコンデンサ22aの他端は、接地されている。
【0035】
ブリッジ回路22bは、第1のコンデンサ22aと並列に、かつ互いに直列に接続された第1及び第2のスイッチング素子SW1,SW2と、第1及び第2のスイッチング素子SW1,SW2と並列に、かつ互いに直列に接続された第3及び第4のスイッチング素子SW3,SW4とを有している。第1~第4のスイッチング素子SW1~SW4には、第1~第4の還流ダイオードD1~D4が並列に接続されている。第1及び第2のスイッチング素子SW1,SW2の中間ノードには、第1のリアクトル22cの一端が接続されている。第3及び第4のスイッチング素子SW3,SW4の中間ノードには、第2のリアクトル22dの一端が接続されている。第1のリアクトル22cの他端と、第2のリアクトル22dの他端とは、第1の出力ノードN1に接続されている。
【0036】
第2のコンデンサ22eの一端は、第1の出力ノードN1に接続され、第2のコンデンサ22eの他端は、第2の出力ノードN2に接続されている。第1及び第2の出力ノードN1,N2間の電圧が、蓄電池16に出力される。
【0037】
通信制御部23は、所定の最大許容値を取得して記憶する。具体的には、通信制御部23は、受信部23aと記憶部23bとを有する。受信部23aは、最大許容値を、リモートコントローラ14と無線ルーター15とから配線を介して受信することにより取得し、記憶部23bに記憶させる。リモートコントローラ14は、最大許容値を特定するユーザ入力を有線により受け付ける。ユーザ入力としては、例えばボタン入力を採用できるが、他の入力方法を採用してもよい。無線ルーター15は、最大許容値を特定する信号を、タブレット3やスマートフォン4等の無線送信手段から無線通信によって受信する。
【0038】
電力変換制御部24は、蓄電池16の充電電力を初期電力値に設定して蓄電池16の充電を開始させる。初期電力値は、5.5kWである。電力変換制御部24は、電流センサー11の検出値、及び記憶部23bに記憶された最大許容値を参照して、電流センサー11の検出値が上記最大許容値を超えないように、蓄電池用DC/DCコンバータ22に含まれる第1~第4のスイッチング素子SW1~SW4のデューティ比を更新する更新動作を50μs毎に実行する。この更新動作は、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えるか否かを判定し、当該検出値が前記所定閾値を超えると判定した場合には、蓄電池16の充電電力を初期電力値よりも低い第1ボトム値とし、第1ボトム値としてから所定の電力低減時間RTの経過後に初期電力値に戻す一方、当該検出値が前記所定閾値を超えないと判定した場合には、蓄電池16の充電電力を初期電力値に維持するように第1~第4のスイッチング素子SW1~SW4のデューティ比を更新する動作である。第1ボトム値は、2kWである。電力低減時間RTは、50μs未満に設定される。所定閾値は、通信制御部23によって記憶された最大許容値に応じた値に設定される。詳しくは、所定閾値は、最大許容値よりも所定値分小さい値に設定される。例えば、最大許容値が50Aである場合、所定閾値は、最大許容値の95%や、最大許容値よりも0.1A小さい49.9Aや、最大許容値よりも0.5A小さい49.5Aに設定される。
【0039】
ここで、契約ブレーカ10を流れる電流をIA(A)、系統電源2からパワーコンディショナ20に供給される順変換電流をIB(A)、家庭内負荷13に供給される電流をIL(A)とすると、以下の式(1)が成り立つ。
【0040】
IA=IB+IL ・・・(1)
また、パワーコンディショナ20に系統電源2から供給される電力をPC1(W)、蓄電池16の充電電力をPC2(W)、パワーコンディショナ20の連系入力端子のAC(Alternating Currrent)電圧をV0(V)、蓄電池16の入力端子のDC(Direct Current)電圧をVB(V)、蓄電池16の充電電流をIC(A)、AC/DCインバータ21の変換効率をη1、蓄電池用DC/DCコンバータ22の変換効率をη2とすると、以下の式(2)及び式(3)が成り立つ。
【0041】
PC1=IB*V0 ・・・(2)
PC2=PC1*η1*η2=IC*VB ・・・(3)
また、電力変換制御部24は、AC/DCインバータ21に含まれるスイッチング素子(図示せず)の制御も行う。
【0042】
電力変換制御部24は、電流センサー11の検出値、及び記憶部23bに記憶された最大許容値を参照して前記更新動作を実行する機能に加え、契約ブレーカ10に入力される電力を検出する電力センサー(図示せず)の検出値、及び記憶部23bに記憶された最大許容値を参照して、前記電力センサー(図示せず)の検出値が当該最大許容値を超えないように蓄電池用DC/DCコンバータ22に含まれる第1~第4のスイッチング素子SW1~SW4のデューティ比を更新する更新動作を、50μs毎に実行する機能も有する。
【0043】
蓄電池16は、蓄電池ユニット16aとBMU(Battery Management Unit)16bとを有している。
【0044】
蓄電池ユニット16aとしては、リチウムイオン電池やその他の二次電池を用いることができる。
【0045】
BMU16bは、異常を防止するように蓄電池ユニット16aを制御する。
【0046】
次に、上述のように構成された蓄電池充電システム1では、充電モード時において、系統電源2から契約ブレーカ10を流れる電流、すなわち第1の電路L1を流れる電流が、第2及び第3の電路L2,L3に分岐する。第2の電路L2に流れ込んだ電流は、専用連系ブレーカ12を介してパワーコンディショナ20に送られる。パワーコンディショナ20に送られた交流は、AC/DCインバータ21で直流に変換されて直流バスBに出力される。直流バスBのバス電圧は、蓄電池用DC/DCコンバータ22によって下げられ、蓄電池16の蓄電池ユニット16aに入力される。一方、第3の電路L3に流れ込んだ電流は、家庭内負荷13に供給される。
【0047】
一方、リモートコントローラ14に、最大許容値を特定するユーザ入力が行われると、通信制御部23の受信部23aが、ユーザ入力により特定された最大許容値をリモートコントローラ14から受信し、記憶部23bに記憶させる。
【0048】
また、タブレット3やスマートフォン4等の無線送信手段から、最大許容値を特定する信号を無線ルーター15が受信すると、通信制御部23の受信部23aが、信号により特定された最大許容値を受信し、記憶部23bに記憶させる。
【0049】
そして、充電モード時、電力変換制御部24は、電流センサー11の検出値、及び記憶部23bに記憶された最大許容値を参照して、蓄電池用DC/DCコンバータ22に含まれる第1~第4のスイッチング素子SW1~SW4のデューティ比を更新する更新動作を、50μs毎に実行する。これにより、契約ブレーカ10を流れる電流の検出値が前記所定閾値を超える場合に、蓄電池16の充電電力が減らされる。
【0050】
したがって、通信制御部23の記憶部23bに記憶された最大許容値をITとすると、以下の式(4)が常に成立する。
【0051】
IA<IT ・・・(4)
例えば、図3の例では、記憶部23bに記憶された最大許容値ITが75Aである。タイミングt0からタイミングt1の間では、系統電源2からパワーコンディショナ20に供給される順変換電流IBが最大値の29.3Aとなっている。ここでは、蓄電池16の充電電力は5.5kw、端子電圧は200Vであり、蓄電池用DC/DCコンバータ22の変換効率(η2)は94%となっている。タイミングt1からタイミングt2の間では、家庭内負荷13に流れる負荷電流が、負荷電流限界値Ilimである45.7Aを超える。したがって、電力変換制御部24が、蓄電池用DC/DCコンバータ22に含まれる第1~第4のスイッチング素子SW1~SW4を制御することにより、蓄電池16の充電電力を電力低減期間RTの間だけ減らす。このときの負荷電流と負荷電流限界値Ilimとの差を、図3中符号DIF1で示す。これにより、系統電源2からパワーコンディショナ20に供給される順変換電流IBが29.3Aから減少する。このときの順変換電流IBの減少量を、図3中符号DIF2で示す。
【0052】
このように、電力変換制御部24が、充電電力を制御するために、契約ブレーカ10を流れる電流を検出する電流センサー11の検出値を参照するので、契約ブレーカ10から家庭内負荷13に流れる負荷電流の大きさに関わらず、最大許容値を超える電流が契約ブレーカ10に流れるのを確実に防止できる。したがって、契約ブレーカ10のトリップによる家庭内の停電を確実に防止できる。
【0053】
また、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えるときだけ、蓄電池16の充電電力を一時的に減らせるので、家庭内負荷13に、電子レンジ、電磁調理器、エアコン等の瞬時的に大きい電流が流れる機器が含まれる場合でも、契約ブレーカ10の最大許容値を比較的小さく設定できる。したがって、契約電力を減らし、電気料金を削減できる。また、従来よりも蓄電容量が大きい蓄電池16を導入する場合でも、契約ブレーカ10を取り替えるための工事、及びその工事費用を不要にできる。
【0054】
また、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えない期間の充電電力は、比較的大きくできるので、充電時間を短くできる。
【0055】
また、電力変換制御部24が、通信制御部23によって取得された最大許容値に応じて充電電力を制御するので、パワーコンディショナ20を、最大許容値が異なる複数種類の契約ブレーカ10に適用できる。
【0056】
また、通信制御部23の受信部23aが、最大許容値を特定するユーザ入力を受け付けるリモートコントローラ14と、最大許容値を特定する信号を無線通信により受信する無線ルーター15とから最大許容値を取得するので、ユーザは、リモートコントローラ14への入力と、無線ルーター15に無線通信によって信号を送信する無線送信手段への入力とにより、最大許容値を特定できる。
【0057】
また、上述のように構成されたパワーコンディショナ20の電力変換制御部24は、契約ブレーカ10に入力される電力を検出する電力センサー(図示せず)の検出値、及び記憶部23bに記憶された最大許容値を参照して前記更新動作を実行する機能も有するので、蓄電池充電システム1に、契約ブレーカ10に入力される電力を検出する電力センサー(図示せず)を電流センサー11の代わりに設けた場合でも、通信制御部23に、契約ブレーカ10に入力される電力の最大許容値を取得及び記憶させることにより、最大許容値を超える電力が契約ブレーカ10に入力されるのを防止できる。
【0058】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2に係る蓄電池充電システム1を示す。本実施形態2では、蓄電池充電システム1が、太陽電池パネル17をさらに備えている。そして、パワーコンディショナ20が、太陽電池用DC/DCコンバータ25をさらに備えている。
【0059】
太陽電池用DC/DCコンバータ25は、太陽電池パネル17の出力電圧を所定の電圧に変換して直流バスBに出力する。
【0060】
本実施形態2に係る蓄電池充電システム1では、晴れた日の日中等に、太陽電池パネル17の発電電力による蓄電池16の充電が行われる。具体的には、電力変換制御部24が太陽電池用DC/DCコンバータ25及び蓄電池用DC/DCコンバータ22を駆動し、太陽電池パネル17の出力電圧が太陽電池用DC/DCコンバータ25によって所定の電圧に変換され、直流バスBに出力される。そして、直流バスBのバス電圧は、蓄電池用DC/DCコンバータ22によって変換され、蓄電池16の蓄電池ユニット16aに入力される。
【0061】
なお、夜間等、日照量の少ないときには、実施形態1と同様に、系統電源2からの電力によって蓄電池16が充電される。
【0062】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態3では、図5に示すように、パワーコンディショナ20が、充電チャタカウンタ26を備えている。また、電力低減期間RTが、更新動作の周期50μsよりも長い30分間に設定されている。
【0064】
電力変換制御部24は、電流センサー11の検出値が通信制御部23によって記憶された最大許容値に応じた所定閾値を超えるか否かの判定を50μs毎に常に行っている。そして、電力変換制御部24は、蓄電池16の充電電力を2kWの第1ボトム値よりも大きくした状態で、電流センサー11の検出値が上記所定閾値を超えると判定した場合、急峻な第1の傾きS1で蓄電池16の充電電力を2kWの第1ボトム値まで減少させるように前記更新動作を実行する。一方、蓄電池16の充電電力を2kWの第1ボトム値とした状態で、電流センサー11の検出値が上記所定閾値を超えると判定した場合には、急峻な第1の傾きS1で蓄電池16の充電電力を第1ボトム値よりも小さい第2ボトム値まで減少させるように前記更新動作を実行する。第2ボトム値は、1kWに設定される。
【0065】
また、電力変換制御部24は、蓄電池16の充電電力を2kWの第1ボトム値よりも大きくした状態で、電流センサー11の検出値が上記所定閾値を超えると判定した場合に、充電チャタカウンタ26のカウント値に1を加算する。また、電力変換制御部24は、蓄電池16が満充電となるか、又は充電開始から所定の設定時間ST(図7参照)が経過したときに充電チャタカウンタ26のカウント値を0にリセットする。
【0066】
充電チャタカウンタ26のカウント値が1である場合、電力変換制御部24は、充電電力を第1ボトム値又は第2ボトム値に減少させて電力低減期間RTだけ維持し、充電電力を第1ボトム値又は第2ボトム値に減少させてから電力低減期間RTが経過したときに、充電電力を当該第1ボトム値から第1の傾きS1よりもなだらかな第2の傾きS2で5.5kWの初期電力値まで増加させるように前記更新動作を実行する。第2の傾きS2は、1kW/分に設定される。第2の傾きS2の絶対値は、第1の傾きS1の絶対値よりも小さい。一方、充電チャタカウンタ26のカウント値が2である場合、電力変換制御部24は、充電電力を第1ボトム値に減少させた後、蓄電池16が満充電となるか、又は充電開始から所定の設定時間STが経過するときまで、蓄電池16の充電電力を第1ボトム値に維持するように前記更新動作を実行する。
【0067】
以下、電力変換制御部24の動作例について、図6~8を参照して説明する。
【0068】
図6(a)及び図6(b)に示す例では、タイミングT1において、充電チャタカウンタ26のカウント値が0の状態で、電力変換制御部24が、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えると判定し、充電チャタカウンタ26のカウント値を1とし、蓄電池16の充電電力を初期電力値から第1ボトム値まで減らしている。その後、電流センサー11の検出値は所定閾値を超えないので、電力変換制御部24は、充電電力を第1ボトム値に電力低減時間RTだけ維持した後、タイミングT2から第2の傾きS2で上記初期電力値まで上昇させている。
【0069】
図7(a)及び図7(b)に示す例では、タイミングT3において、電力変換制御部24が、蓄電池16の充電電力を初期電力値に設定して蓄電池16の充電を開始させている。その後、タイミングT4において、充電チャタカウンタ26のカウント値が0の状態で、電力変換制御部24が、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えると判定し、充電チャタカウンタ26のカウント値を1とし、蓄電池16の充電電力を初期電力値よりも低い第1ボトム値まで減らしている。そして、電力変換制御部24は、充電電力を第1ボトム値に電力低減時間RTの30分間維持し、タイミングT5から第2の傾きS2で上昇させる。この例では、充電電力が初期電力値に達する前のタイミングT6において、電流センサー11の検出値が所定閾値を超える。したがって、電力変換制御部24は、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えると判定し、充電チャタカウンタ26のカウント値を2とするとともに、蓄電池16の充電電力を再び第1ボトム値まで減らし、蓄電池16が満充電となるまで蓄電池16の充電電力を第1ボトム値のままとする。タイミングT7で蓄電池16が満充電となると、電力変換制御部24は、蓄電池16の充電を終了させるとともに、充電チャタカウンタ26のカウンタ値を0にリセットする。なお、充電開始から設定時間STが経過するまでに蓄電池16が満充電とならなければ、充電開始から設定時間STが経過したタイミングTEにおいて、電力変換制御部24が、蓄電池16の充電を終了させるとともに、充電チャタカウンタ26のカウンタ値を0にリセットする。
【0070】
図8(a)及び図8(b)に示す例では、タイミングT8において、充電チャタカウンタ26のカウント値が0の状態で、電力変換制御部24が、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えると判定し、充電チャタカウンタ26のカウント値を1とし、蓄電池16の充電電力を初期電力値から第1の傾きS1で第1ボトム値まで減らす。次いで、タイミングT8から電力低減時間RTが経過する前のタイミングT9において、電力変換制御部24が、電流センサー11の検出値が所定閾値を超えると判定し、蓄電池16の充電電力を第1の傾きS1で第2ボトム値まで減少させる。そして、電力変換制御部24は、充電電力を第2ボトム値に電力低減時間RTの30分間維持し、タイミングT10から第2の傾きS2で上昇させる。
【0071】
したがって、本実施形態3によると、電流センサー11の検出値が所定閾値を超える場合には、充電電力を第1の傾きS1で急速に減少させることにより、契約ブレーカ10のトリップを確実に防止できる。また、充電電力を第1ボトム値又は第2ボトム値から第2の傾きS2でゆっくり初期電力値に戻すので、AC/DCインバータ21の出力が不安定になって系統に悪影響を及ぼすのを抑制するとともに、充電電流に加わる外乱による蓄電池16の劣化及び短寿命化を抑制できる。
【0072】
また、充電チャタカウンタ26のカウント値が2である場合、電力変換制御部24が充電電力を第1ボトム値に減少させた後、蓄電池16が満充電となるか、又は充電開始から所定の設定時間STが経過したときまで充電電力を変化させないので、家庭内負荷13に流れる電流の変動に起因する充電電流の頻繁な変動を抑制できる。
【0073】
なお、上記実施形態1~3では、電力変換制御部24に、更新動作を50μs毎に実行させたが、50μs以外の所定の周期毎に実行させてもよい。所定の周期は、系統電源2から入力される交流の周期以下とすることが好ましい。具体的には、系統電源2から入力される交流の周波数が50Hzの場合には、所定の周期を20ms以下にすることが好ましく、系統電源2から入力される交流の周波数が60Hzの場合には、所定の周期を16.6ms以下にすることが好ましい。これにより、所定の周期を、系統電源2から入力される交流の周期よりも長くした場合に比べ、より短時間の検出値の閾値超過に対応した充電電力の制御が可能になり、充電制御の応答性を改善できる。
【0074】
また、上記実施形態1~3では、受信部23aが、最大許容値をリモートコントローラ14と無線ルーター15とから配線を介して受信したが、最大許容値のユーザ入力を有線又は無線により受け付ける他の受付装置から受信(取得)するようにしてもよい。また、受信部23aが、配線を介さず、無線により最大許容値を受信するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態2では、太陽電池パネル17を発電ユニットとして用いたが、風力等の太陽光以外の再生可能エネルギーを利用する発電機や、コージェネレーションシステムを発電ユニットとして用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、系統電源から契約ブレーカを介して入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池に供給するパワーコンディショナ及びそれを備えた蓄電池充電制御システムとして有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 蓄電池充電システム
2 系統電源
10 契約ブレーカ
11 電流センサー
14 リモートコントローラ(受付装置)
15 無線ルーター(受付装置)
20 パワーコンディショナ
21 AC/DCインバータ
22 蓄電池用DC/DCコンバータ
23 通信制御部(取得部)
24 電力変換制御部
25 太陽電池用DC/DCコンバータ
B 直流バス
SW1~SW4 第1~第4のスイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8