(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】航行支援装置
(51)【国際特許分類】
B63B 79/30 20200101AFI20240508BHJP
B63B 79/10 20200101ALI20240508BHJP
【FI】
B63B79/30
B63B79/10
(21)【出願番号】P 2020120651
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502055377
【氏名又は名称】商船三井テクノトレード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹 健児
(72)【発明者】
【氏名】田中 良和
(72)【発明者】
【氏名】織田 博行
(72)【発明者】
【氏名】黄 鎮川
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 洋三
(72)【発明者】
【氏名】小竿 誠
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198515(JP,A)
【文献】特開2010-044755(JP,A)
【文献】特開2006-193124(JP,A)
【文献】特開2016-133992(JP,A)
【文献】特開2019-010983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 79/00-79/40
B63B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上移動体の航行を支援する航行支援装置であって、
前記水上移動体の速度を測定する速度測定手段と、
前記水上移動体の動力源の出力量を測定する動力源出力測定手段と、
前記速度測定手段により測定された速度、及び、前記動力源出力測定手段により測定された前記動力源の出力量に基づいて、前記水上移動体に積載される積載量及び前記水上移動体の速度に対する前記水上移動体の温室効果ガスの排出量を、
前記温室効果ガスの種類に基づく係数を用いて、前記水上移動体の航行を支援する指標として演算する指標演算手段と、
前記指標演算手段により演算された前記指標を表示する表示手段と
を備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記指標をメーターとして表示すること
を特徴とする請求項1に記載の航行支援装置。
【請求項3】
前記水上移動体の速度及び前記動力源の馬力に基づいて、シーマージンを演算するシーマージン演算手段を備え、
前記表示手段は、前記シーマージン演算手段により演算された前記シーマージンを表示すること
を特徴とする請求項1に記載の航行支援装置。
【請求項4】
前記シーマージン演算手段は、時系列のシーマージンを演算し、
前記表示手段は、前記時系列のシーマージンを表示すること
を特徴とする請求項
3に記載の航行支援装置。
【請求項5】
前記水上移動体の燃料使用量を測定する燃料使用量測定手段を備え、
前記表示手段は、前記燃料使用量測定手段により測定された前記燃料使用量を表示すること
を特徴とする請求項1に記載の航行支援装置。
【請求項6】
水上移動体の航行を支援する航行支援方法であって、
前記水上移動体の速度を測定し、
前記水上移動体の動力源の出力量を測定し、
測定した速度、及び、測定した前記動力源の出力量に基づいて、前記水上移動体に積載される積載量及び前記水上移動体の速度に対する前記水上移動体の温室効果ガスの排出量を、
前記温室効果ガスの種類に基づく係数を用いて、前記水上移動体の航行を支援する指標として演算し、
演算した前記指標を表示すること
を含むことを特徴とする航行支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上移動体の航行を支援する航行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水上を移動する船には、航行を阻害する様々な要因がある。このような要因には、波浪外力、船底汚損、風力、機関の汚損、機関の劣化、又は、速力増加による抵抗増加などがある。また、これらの要因は、航行中の船に複合的に作用する。
【0003】
このため、船の航行を支援するための様々な装置がある。例えば、気象及び海象の予報値を考慮に入れた船体動揺予測機能付き船体運動監視装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、船の操縦において、エネルギー消費量を抑えるように効率的な航行をするための情報は乏しい。一般的に、船内の設備には、現在の航行が効率的か否かを把握できるような情報は表示されない。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、水上移動体の効率的な航行を支援する航行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点に従った航行支援装置は、水上移動体の航行を支援する航行支援装置であって、前記水上移動体の速度を測定する速度測定手段と、前記水上移動体の動力源の出力量を測定する動力源出力測定手段と、前記速度測定手段により測定された速度、及び、前記動力源出力測定手段により測定された前記動力源の出力量に基づいて、前記水上移動体に積載される積載量及び前記水上移動体の速度に対する前記水上移動体の温室効果ガスの排出量を、前記温室効果ガスの種類に基づく係数を用いて、前記水上移動体の航行を支援する指標として演算する指標演算手段と、前記指標演算手段により演算された前記指標を表示する表示手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、水上移動体の効率的な航行を支援する航行支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る航行支援装置の構成を示す構成図。
【
図2】第1実施形態に係るGHGメーターの表示画面を示す簡易図。
【
図3】第1実施形態に係る機関出力値と燃料消費率との相関関係を示すグラフ図。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る航行支援装置の構成を示す構成図。
【
図5】第2実施形態に係る表示器の表示画面を示す簡易図。
【
図6】第2実施形態に係るSMモニタリング画面を示す簡易図。
【
図7】第2実施形態に係るベースカーブの求め方を説明するためのグラフ図。
【
図8】第2実施形態に係る燃料使用量メーターの表示画面を示す簡易図。
【
図9】第2実施形態に係る船体動揺に関する時系列データの表示画面を示す簡略図。
【
図10】第2実施形態に係るSMの時系列データの表示画面を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る航行支援装置10の構成を示す構成図である。
図2は、本実施形態に係るGHGメーター20の表示画面を示す簡易図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
航行支援装置10は、船の航行を支援する装置である。例えば、船員は、航行支援装置10から得られた情報に基づいて、航行状態を把握しながら、船の操縦を行う。航行支援装置10は、船に設置され、コンピュータを用いて構成される。なお、航行支援装置10は、水上を移動する水上移動体であれば、どのようなものに適用してもよい。例えば、主に水中を移動する潜水艦でもよいし、移動を主な目的としない設備又は人工島のようなものでもよい。ここでは、水上移動体は、主に船として説明する。
【0012】
航行支援装置10は、指標演算部1、入力機器2、速度センサ3、機関出力測定部4、表示処理部5、及び、表示器6を備える。なお、航行支援装置10を構成する機器類は、航行支援装置10に関係なく設けられる船舶機器等を兼用してもよい。
【0013】
指標演算部1は、温室効果ガス(GHG, global greenhouse gas)値を演算する処理部である。GHG値は、船から排出されるGHGの排出量に基づいて、船が効率的に航行しているか否かを判断するための指標である。例えば、GHG値は、現在の航行状態を示す瞬時値であるが、1時間平均、4時間平均、1日平均、1航海の平均、1年平均、1航海の累積値、又は、1年の累積値でもよい。ここで、4時間は、外航船の航海士が交代する時間間隔を意味するが、船の運用の実情に合わせて、任意の時間にしてよい。
【0014】
指標演算部1には、入力機器2から入力された情報、速度センサ3により検出された速度、及び、機関出力測定部4により測定された機関出力値が入力される。指標演算部1は、入力された各種情報に基づいて、GHG値を演算する。指標演算部1は、演算したGHG値を表示処理部5に出力する。
【0015】
入力機器2は、指標演算部1による演算に用いる情報を操作者が入力するための機器である。入力機器2は、キーボード又はマウス等であるが、表示器6の画面から情報を入力するタッチパネル方式でもよいし、その他の入力方式の機器でもよい。
【0016】
速度センサ3は、船の速度を測定するセンサである。速度センサ3は、測定した速度を指標演算部1に出力する。
機関出力測定部4は、船の動力源となる機関からの出力量を示す機関出力値を測定する。機関出力測定部4は、測定した機関出力値を指標演算部1に出力する。
【0017】
表示処理部5は、指標演算部1により演算されたGHG値を、GHGメーター20として視覚的に表すように画像処理等の演算処理をする。表示処理部5は、演算処理後、表示器6にGHGメーター20を表示するための情報を表示器6に出力する。
【0018】
表示器6は、表示処理部5から受信する情報に基づいて、GHG値を画面に表示する。これにより、船員は、表示器6に表示されるGHG値を確認することで、航行状態を把握する。
【0019】
次に、GHG値の演算方法について説明する。GHG値は、GHG排出量を積載量(DW, deadweight)と速度で除した値であり、次式により求まる。
【0020】
【0021】
上式に用いる各数値について説明する。
CO2換算係数は、温室効果ガスとして二酸化炭素の量に換算して、GHG値を求めるための係数である。例えば、船でも使われる重油のCO2換算係数は、約3である。なお、ここでは、二酸化炭素に換算したが、他の温室効果ガスに換算してもよい。また、温室効果ガスの種類に対応して決定された複数の換算係数を用いて、複数の温室効果ガスに換算してGHG値を求めてもよい。CO2換算係数は、航行支援装置10に設定された設定値でもよい、外部から変更できない固定値でもよい。
【0022】
燃料消費率(g/kWh)は、機関出力値に対して、燃料消費量を求めるための係数である。例えば、燃料消費率は、船の主機関の陸上公試運転で得られた各機関出力での燃料消費率から内挿して得られる。燃料消費率は、機関出力値に応じて変化する。
【0023】
例えば、機関出力値に対応する燃料消費率は、次のように求める。主機関は、出荷前の陸上公試運転において、いくつかの負荷で燃料消費率を測定して、保証値を満足していることを確認する。陸上公試運転において、N個の測定点で燃料消費率を測定した場合、隣接する2つの測定点を直線で結び、N個の測定点を全て直線で繋げることで、任意の機関出力値に対応する燃料消費率が求まる。
【0024】
図3に示すように、機関出力値(%)をX軸(横軸)とし、燃料消費率(g/kWh)をY軸(縦軸)とし、隣接する2つの測定点を(xi,yi)と(xi+1,yi+1)とした場合、この2つの測定点の間の任意の燃料消費率を求める式は、次のようになる。
【0025】
【0026】
これにより、機関出力値xpに対応する燃料消費率ypが求まる。
積載量(ton)は、航行中の船に積載された重量であり、船体の重量を含まない。積載量は、必要に応じて(例えば、積載量が変わる度に)入力機器2で入力してもよいし、重量センサにより自動的に測定されてもよいし、固定値として設定されてもよい。
【0027】
速度(sea mile/h)は、速度センサ3により測定された測定値である。機関出力値(kW)は、機関出力測定部4により測定された測定値である。これらの測定値については、入力機器2により入力されてもよいし、任意の値に変更できてもよい。
【0028】
次に、機関出力値の求め方について説明する。
機関出力値の測定方法には、次の2つの方法がある。1つは、プロペラ軸のねじり量を測定して、出力を直接算出するために、軸馬力計を用いる方法である。もう1つは、次式を用いて、単位時間当たりに主機が消費する燃料量を流量計で測定し、相当出力における陸上公試の燃料消費率で除して求める燃料馬力がある。なお、この他の方法により、機関出力値を測定してもよい。
【0029】
【0030】
ここで、Fは、流量計より得られた1時間当たりの主機関の燃料消費量、Fgは、使用燃料比重、FOCは、陸上公試時の燃料消費率、LCVsは、陸上公試時の使用燃料発熱量、LCVvは、使用燃料発熱量である。
【0031】
図2を参照して、GHGメーター20の表示画面について説明する。状態Gpは、現在のGHG値を示す。
GHGメーター20の目盛りの最小値及び最大値は、例えば、次のように決定する。最小値は、外洋航海の最低船速と速力馬力曲線の基準カーブ上の機関出力値から得られるGHG値とする。最大値は、外洋航海の最低船速と最大の機関出力値から得られるGHG値とする。
図2では、最小値を9、最大値を30としている。例えば、GHG値は、1~5分の測定インターバルによる1~5分平均値を瞬時値とした値である。
【0032】
GHGメーター20の表示は、領域が区分けられ、各領域が意味付けられてもよい。例えば、GHG値が250未満の領域は、GHG排出量が効率的な航行であることを示し、GHG値が250~500の領域は、GHG排出量の増加を注意喚起することを示し、GHG値が500以上の領域を、GHG排出量が非効率的な航行であることを警告することを示す。また、効率的な航行の領域を緑色、注意喚起する領域を黄色、警告する領域を赤色として各領域を色分けすることで、現在の航行の状態を視覚的に分かり易くしてもよい。
【0033】
GHGメーター20には、現時点のGHG値(瞬時値)に限らず、1時間平均、4時間平均、1日平均、1航海平均、1年平均、1航海の累積値、又は、1年の累積値を表示してもよい。また、複数のGHG値を比較できるように、任意の組合せの複数のGHG値を同時に表示してもよいし、表示するGHG値を変えるように画面が切り換えられてもよい。例えば、航海計画時のGHG値を表示し、計画と現在の航行状態を比較した評価が分かるようにしてもよい。
【0034】
なお、
図2に示すように、GHGメーター20は、横方向に直線状に延びる直方形状の表示画面にしたが、これに限らない。例えば、GHGメーター20の表示画面は、縦方向の直方形状でもよいし、時計のように、円形状の画面の円周周りに目盛りが表示され、GHG値を針が指すようにしてもよい。
【0035】
本実施形態によれば、GHGメーター20を表示することで、GHG排出量の観点から航行状態が効率的か否かを船員が把握し易くなり、効率的な航行になるように、船を操縦し易くなる。
【0036】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る航行支援装置10Aの構成を示す構成図である。
図5は、本実施形態に係る表示器6の表示画面を示す簡易図である。
【0037】
航行支援装置10Aは、
図1に示す第1実施形態に係る航行支援装置10において、指標演算部1及び表示処理部5をそれぞれ指標演算部1A及び表示処理部5Aに代え、馬力測定部7及び燃料使用量測定部8を加えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0038】
航行支援装置10Aは、
図5に示すように、GHGメーター20、シーマージン(SM, sea margin)モニタリング画面21、及び、燃料使用量メーター22を表示器6に表示する。GHGメーター20については、第1実施形態と同様である。
【0039】
馬力測定部7は、SMモニタリング画面21に用いるために、馬力を測定する。例えば、馬力測定部7は、プロペラ軸のねじり量を測定する軸馬力計である。馬力測定部7は、測定した馬力を指標演算部1Aに出力する。なお、馬力測定部7による測定は、どのように行われてもよい。また、機関出力測定部4による機関出力値を測定する過程において、馬力を測定する場合、馬力測定部7を設ける代わりに、この測定結果を利用してもよい。
【0040】
燃料使用量測定部8は、燃料使用量メーター22に用いるために、燃料(FO, fuel oil)の使用量を測定する。燃料使用量測定部8は、測定した燃料使用量を指標演算部1Aに出力する。なお、燃料使用量測定部8による測定は、どのように行われてもよい。例えば、使用した燃料の量を直接測定するものに限らず、燃料の残量から求めてもよい。また、機関出力測定部4による機関出力値を測定する過程において、燃料使用量を測定する場合、燃料使用量測定部8を設ける代わりに、この測定結果を利用してもよい。
【0041】
指標演算部1Aは、GHGメーター20、SMモニタリング画面21、及び、燃料使用量メーター22を生成するための演算処理を行う。GHGメーター20の生成については、第1実施形態と同様である。
【0042】
図6は、本実施形態に係るSMモニタリング画面21を示す簡易図である。
SMモニタリング画面21では、横軸を船速(ノット)とし、縦軸を1時間平均軸馬力(100kW)としている。
【0043】
SMモニタリング画面21には、4つのパワーカーブCv1,Cv2,Cv3,Cv4が描かれる。第1パワーカーブCv1は、現時点の排水量でのベースカーブである。第2パワーカーブCv2は、第1パワーカーブCv1に対して、20%~30%を馬力増加させたパワーカーブである。第3パワーカーブCv3は、第1パワーカーブCv1に対して、50%~60%を馬力増加させたパワーカーブである。第4パワーカーブCv4は、第1パワーカーブCv1に対して、90%~110%を馬力増加させたパワーカーブである。
図6では、第1パワーカーブCv1に対する馬力増加率をそれぞれ、第2パワーカーブCv2は30%、第3パワーカーブCv3は50%、第4パワーカーブCv4は100%とした例を示す。
【0044】
各パワーカーブCv1~Cv4は、SMの各領域の境界線を表す。例えば、各領域は、次のように定義する。第1パワーカーブCv1と第2パワーカーブCv2の間の領域は、通常域を表す。第2パワーカーブCv2と第3パワーカーブCv3の間の領域は、燃費増域を表す。第3パワーカーブCv3と第4パワーカーブCv4の間の領域は、荒天域を表す。第4パワーカーブCv4よりも上の領域は、危険域を表す。各領域の幅は、船の規模等に基づいて任意に変更してよい。なお、領域及びパワーカーブCv1~Cv4は、いくつ設けてもよいし、領域の名称又は意味合いは任意に決定してよい。
【0045】
SMは、次式のように定める。
SM(%)=100×(P-Po)/Po …式(4)
ここで、Pは、ある航海速力を維持するために必要な機関出力値(軸馬力)である。Poは、平水中でこの航海速力を維持するために必要な機関出力値(軸馬力)である。
【0046】
図7を参照して、ベースカーブ(
図6に示す第1パワーカーブCv1)の求め方について説明する。
図7では、横軸は、速度Vs(ノット)を示し、縦軸は、主機馬力(BHP, brake horse power)を%MCO(連続最大出力、Maximum Continuous Output)で示す。
【0047】
ここで、Cadm1、Cadm2、Cadm3は、それぞれ、満載、ライトバラスト、任意排水量でのアドミラルティー係数を表し、Δ1、Δ2、Δ3は、それぞれ、満載、ライトバラスト、任意排水量での排水量(ton)を表し、BHP1、BHP2、BHP3は、それぞれ、満載、ライトバラスト、任意排水量での馬力(kW)を表す。
【0048】
模型試験及び試運転により、満載時のパワーカーブCvaとライトバラスト時のパワーカーブCvbを得る。これらの2つのパワーカーブCva,Cvbから任意排水量のパワーカーブCvcを、以下のように求める。
【0049】
満載とライトバラストのアドミラルティー係数Cadm1,Cadm2を次の2式により求める。
【0050】
【0051】
【0052】
次に、満載のアドミラルティー係数Cadm1とライトバラストのアドミラルティー係数Cadm2の間を補間するように、排水量の線形相関から任意排水量のアドミラルティー係数Cadm3を次式により求める。
【0053】
【0054】
最後に、同船速での馬力を次式により求める。
【0055】
【0056】
このようにして、各船速における馬力を求め、任意排水量でのパワーカーブCvcを求めることができる。これにより、
図6に示す第1パワーカーブCv1が求まる。
【0057】
指標演算部1Aは、馬力測定部7により測定された馬力に基づいて、直近の1時間平均の馬力を演算する。指標演算部1Aは、演算した直近の1時間平均の馬力及び速度センサ3により測定された速度に基づいて、SMモニタリング画面21における現時点の状況を示す現在プロットPcの座標を求める。
【0058】
なお、
図6に散在する点で示すように、現在プロットPcと共に、過去の状況を示すプロットを表示してもよい。また、過去の状況を示すプロットは、所望の条件に合う状況のプロットのみを表示するように、対水船速又は馬力変動等の条件を指定するフィルター条件を設定できるようにしてもよい。
【0059】
図8は、本実施形態に係る燃料使用量メーター22の表示画面を示す簡易図である。
燃料使用量メーター22は、時計のように、円周状に目盛りが表示され、指針IDにより現在の燃料使用量が示される。例えば、目盛りは、色分け等により区分けされ、現在の燃料使用量が多いか少ないかが視覚的に分かり易くしてもよい。
図8では、0~30を「低(low)」、30~70を「中(medium)」、70~100を「高(high)」としている。なお、燃料使用量メーター22は、GHGメーター20と同様に、どのような画面で表示してもよい。
【0060】
指標演算部1Aは、燃料使用量測定部8により測定された使用量に基づいて、所定時間当たりの燃料使用量(例えば、ton/日)を演算する。例えば、燃料使用量は、1~5分の測定インターバルによる1~5分平均値を瞬時値とした値である。燃料使用量は、瞬時値に限らず、1時間平均、4時間平均、1日平均、1航海の平均、1年平均、1航海の累積値、又は、1年の累積値が演算されてもよい。この場合、任意の値が見られるように、燃料使用量メーター22の表示が切り替わるようにしてもよい。
【0061】
表示処理部5Aは、第1実施形態と同様に、画像処理等の演算処理をし、表示器6にGHGメーター20を表示するための情報を表示器6に出力する。また、表示処理部5Aは、
図6に示すSMモニタリング画面21及び
図8に示す燃料使用量メーター22についても、GHGメーター20と同様に、画像処理等の演算処理をし、これらを表示器6に表示するための情報を表示器6に出力する。
【0062】
図9は、本実施形態に係る船体動揺に関する時系列データ24の表示画面を示す簡略図である。
図10は、本実施形態に係るSMの時系列データ25の表示画面を示す簡略図である。
【0063】
表示器6には、
図9に示す船体動揺に関する時系列データ24又は
図10に示すSMの時系列データ25を表示してもよい。
【0064】
船体動揺に関する時系列データ24は、ロールの時系列データ241、ピッチの時系列データ242、及び、航行中の船体復元力(GM)の時系列データ243を含む。各時系列データ241~243は、横軸を時間軸(例えば、更新周期1分)で示す。ロールの時系列データ241及びピッチの時系列データ242の縦軸は、角度(度)である。航行中の船体復元力(GM)の時系列データ243の縦軸は、距離(m)である。
【0065】
SMの時系列データ25は、横軸を時間軸(例えば、更新周期1分)とし、縦軸をSM(%)として示す。また、縦軸の基準(0%)は、平水中でその時の排水量で、その航海速力を維持するために必要な機関出力値(軸馬力)である。
図10に示すように、SMの時系列データ25を参照することで、最大値Smax(+66%)、最小値Smin(-5%)、及び、航海中の数時間での海象状況や潮流の変化などを視覚的に把握できる。
【0066】
本実施形態によれば、第1実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
表示器6に、GHGメーター20と共に、SMモニタリング画面21及び燃料使用量メーター22を表示することで、第1実施形態よりも、現在の航行状態を把握し易くなり、効率的な航行をするための情報を得やすくなる。なお、SMモニタリング画面21又は燃料使用量メーター22のいずれか一方は表示しなくてもよい。SMモニタリング画面21をGHGメーター20と共に表示した場合、変針、回転数又は速度等を決定するための情報を得やすくなる。燃料使用量メーター22をGHGメーター20と共に表示した場合、燃料消費量を抑えるための情報を得やすくなる。
【0067】
SMモニタリング画面21において、各領域を視覚的に明確にすることで、次のような利点がある。馬力増加域から荒天域に入る前に、回転数を落とすことで、無意味な船体動揺の増加での馬力損失を回避することができる。危険域に入る前に変針を促すことで、危険域に入ることで状況が悪化し変針すらできない危険性を回避することができる。現在プロットPcで現状を把握することにより、船体動揺(ピッチング又はローリング等)又は航行中の船体復元力(GM)が悪化するか又は好転するかの推定を船体動揺の推移と航行中のGMを分析して表示することで、早く変針すべきかの判断材料を得ることができる。この判断材料として、
図9に示す船体動揺に関する時系列データ24を表示器6に表示してもよい。
【0068】
SMモニタリング画面21において、現在プロットPcと共に、過去の状況を示すプロットを表示させることで、現在の航行効率又は時系列の推移を把握することができる。また、瞬時値、1時間平均、6時間平均、1日平均、又は、1時間平均の時系列データの推移を切り替えて表示できるようにしてもよい。これにより、例えば、1時間平均データの推移を見ることで、過去から現在の運転点の推移から今後の傾向を推定することができる。例えば、外航船の航海士のように、4時間毎に交代する場合でも、自身が担当していない時間帯も含めて、時系列の変化を把握することができる。このために、
図10に示すSMの時系列データ25を表示器6に表示してもよい。
【0069】
SMモニタリング画面21において、過去の状況を示すプロットを表示する条件を指定するフィルター条件を設けてもよい。フィルター条件を設けた場合、ピッチング、馬力変動、回転数変動、風速、又は、風向等をフィルター条件として、平水中の速力馬力曲線を表示することで、新造時の速力馬力曲線をその時点の排水量に修正し比較することで、どの程度新造時から悪化しているか判断することができる。これにより、船底汚損及び主機の汚損劣化などの悪化原因が生じているかを判断できる。なお、ピッチング、馬力変動、及び、回転数変動のそれぞれの変動が小さいデータをフィルター条件により除去できるようにしてもよい。このように、船底汚損状況を把握することで、適切な時期に、アフロートでの船底汚損除去工事をすることができる。これにより、船底汚損による馬力の損失を防ぎ、GHG削減に貢献することができる。
【0070】
燃料使用量メーター22において、燃料使用量を、瞬時値、1時間平均、4時間平均、1日平均、1航海の平均、1年平均、1航海の累積値、又は、1年の累積値を切り替えて表示することで、より現状の航行状態を把握し易くなる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、構成要素を削除、付加又は変更等をしてもよい。また、複数の実施形態について構成要素を組合せ又は交換等をすることで、新たな実施形態としてもよい。このような実施形態が上述した実施形態と直接的に異なるものであっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0072】
1…指標演算部、2…入力機器、3…速度センサ、4…機関出力測定部、5…表示処理部、6…表示器、10…航行支援装置。