(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像記録装置及び画像記録方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240508BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/14 201
(21)【出願番号】P 2020128610
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山縣 真由子
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】土井 司
(72)【発明者】
【氏名】中川 純一
(72)【発明者】
【氏名】関 聡
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-159698(JP,A)
【文献】特開2017-035886(JP,A)
【文献】特開2013-159017(JP,A)
【文献】特開2009-034996(JP,A)
【文献】特開2017-035814(JP,A)
【文献】特開2017-081119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが所定の方向に配列された記録ヘッドを記録媒体に対して前記所定の方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
処理対象画素の多値データが有する階調値を、複数の閾値が配列された閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の量子化データを生成する量子化手段と、
1画素の吐出動作に対応する時間をN個の期間に分割したとき、前記複数のノズルのうち、第1隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向にK期間(K<N)おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群に隣接する第2隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向に前記K期間おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群の前記第2隣接ノズル群に最も近いノズルを、前記第2隣接ノズル群の前記第1隣接ノズル群に最も近いノズルに対し、L期間(N/2<L<N)遅れて駆動する、時分割駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記駆動制御手段が前記時分割駆動制御を行う状態において、前記量子化手段が生成した前記量子化データに従って、前記記録ヘッドよりインクを吐出させる記録手段と、
を備え、
前記量子化手段は、所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、所定のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行うことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記量子化手段は、
前記往路走査については、前記基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記往路方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行い、
前記復路走査については、前記基本閾値マトリクスを前記交差する方向に反転した反転基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記復路方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記量子化手段は、予めメモリに保存された前記閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記量子化手段は、予めメモリに記憶された前記基本閾値マトリクスに対し前記オフセットを行うことによって前記閾値マトリクスを生成し、当該閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドの記録解像度で配列する複数の記録画素のそれぞれについてドットの記録又は非記録を定める基本インデックスパターンを、前記所定の方向と前記交差する方向とに繰り返し配置させて生成されるインデックスパターンを用いて、前記量子化データから、前記記録手段が記録するための記録データを生成する記録データ生成手段を更に備え、
前記記録データ生成手段は、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記交差する方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記記録手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記記録データ生成手段は、
前記往路走査については、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記往路方向に1画素分オフセットして配置させ、
前記復路走査については、前記基本インデックスパターンを前記交差する方向に反転した反転基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記反転基本インデックスパターンに対して前記復路方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
インクを吐出する複数のノズルが所定の方向に配列された記録ヘッドを記録媒体に対して前記所定の方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
処理対象画素の多値データが有する階調値を第1の階調値と第2の階調値に分割して、第1階調データと第2階調データを生成する分割手段と、
前記第1の階調値を、複数の閾値が配列された第1閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の第1量子化データを生成し、前記第2の階調値を、前記第1閾値マトリクスとは異なる第2閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の第2量子化データを生成する量子化手段と、
1画素の吐出動作に対応する時間をN個の期間に分割したとき、前記複数のノズルのうち、第1隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向にK期間(K<N)おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群に隣接する第2隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向に前記K期間おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群の前記第2隣接ノズル群に最も近いノズルを、前記第2隣接ノズル群の前記第1隣接ノズル群に最も近いノズルに対し、L期間(N/2<L<N)遅れて駆動する、時分割駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記駆動制御手段が前記時分割駆動制御を行う状態において、前記量子化手段が生成した前記第1量子化データ及び前記第2量子化データに従って、前記記録ヘッドよりインクを吐出させる記録手段と、
を備え、
前記量子化手段は、所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、第1のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる第1基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第1閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行い、前記所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる第2基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第2閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行うことを特徴とする画像記録装置。
【請求項8】
前記記録手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記第1量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記第2量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記第1基本閾値マトリクスと前記第2基本閾値マトリクスは、前記交差する方向に反転した関係にあり、
前記量子化手段は、
前記往路走査については、前記第1基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記往路方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第1閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行い、
前記復路走査については、前記第2基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記復路方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第2閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記量子化手段は、予めメモリに保存された前記第1閾値マトリクス及び前記第2閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記量子化手段は、予めメモリに記憶された前記第1基本閾値マトリクスに基づいて前記第1閾値マトリクス及び前記第2閾値マトリクスを生成し、前記第1閾値マトリクス及び前記第2閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記記録ヘッドの記録解像度で配列する複数の記録画素のそれぞれについてドットの記録又は非記録を定める基本インデックスパターンを、前記所定の方向と前記交差する方向とに繰り返し配置させて生成されるインデックスパターンを用いて、前記第1量子化データ及び前記第2量子化データから、前記記録手段が記録するための第1記録データ及び第2記録データをそれぞれ生成する記録データ生成手段を更に備え、
前記記録データ生成手段は、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記交差する方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項12】
前記記録手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記第1量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記第2量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記記録データ生成手段は、
前記往路走査については、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記往路方向に1画素分オフセットして配置させ、
前記復路走査については、前記基本インデックスパターンを前記交差する方向に反転した反転基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記反転基本インデックスパターンに対して前記復路方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項11に記載の画像記録装置。
【請求項13】
前記記録ヘッドは、前記複数のノズルのそれぞれに配されたヒータに、前記駆動制御手段によって電圧パルスが印加されることにより、インク中に生成された泡の成長エネルギーによってインクを吐出することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項14】
インクを吐出する複数のノズルが所定の方向に配列された記録ヘッドを記録媒体に対して前記所定の方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、前記記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、
処理対象画素の多値データが有する階調値を、複数の閾値が配列された閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の量子化データを生成する量子化工程と、
1画素の吐出動作に対応する時間をN個の期間に分割したとき、前記複数のノズルのうち、第1隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向にK期間(K<N)おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群に隣接する第2隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向に前記K期間おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群の前記第2隣接ノズル群に最も近いノズルを、前記第2隣接ノズル群の前記第1隣接ノズル群に最も近いノズルに対し、L期間(N/2<L<N)遅れて駆動する、時分割駆動制御を行う駆動制御工程と、
前記駆動制御工程によって前記時分割駆動制御が行われる状態において、前記量子化工程で生成された前記量子化データに従って、前記記録ヘッドよりインクを吐出させる記録工程と、
を有し、
前記量子化工程は、所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、所定のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行うことを特徴とする画像記録方法。
【請求項15】
前記記録工程は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記量子化工程は、
前記往路走査については、前記基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記往路方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行い、
前記復路走査については、前記基本閾値マトリクスを前記交差する方向に反転した反転基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記復路方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項14に記載の画像記録方法。
【請求項16】
前記量子化工程は、予めメモリに保存された前記閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項14又は15に記載の画像記録方法。
【請求項17】
前記量子化工程は、予めメモリに記憶された前記基本閾値マトリクスに対し前記オフセットを行うことによって前記閾値マトリクスを生成し、当該閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項14又は15に記載の画像記録方法。
【請求項18】
前記記録ヘッドの記録解像度で配列する複数の記録画素のそれぞれについてドットの記録又は非記録を定める基本インデックスパターンを、前記所定の方向と前記交差する方向とに繰り返し配置させて生成されるインデックスパターンを用いて、前記量子化データから、前記記録工程が記録するための記録データを生成する記録データ生成工程を更に有し、
前記記録データ生成工程は、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記交差する方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項19】
前記記録工程は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記記録データ生成工程は、
前記往路走査については、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記往路方向に1画素分オフセットして配置させ、
前記復路走査については、前記基本インデックスパターンを前記交差する方向に反転した反転基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記反転基本インデックスパターンに対して前記復路方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項18に記載の画像記録方法。
【請求項20】
インクを吐出する複数のノズルが所定の方向に配列された記録ヘッドを記録媒体に対して前記所定の方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、前記記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、
処理対象画素の多値データが有する階調値を第1の階調値と第2の階調値に分割して、第1階調データと第2階調データを生成する分割工程と、
前記第1の階調値を、複数の閾値が配列された第1閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の第1量子化データを生成し、前記第2の階調値を、前記第1閾値マトリクスとは異なる第2閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の第2量子化データを生成する量子化工程と、
1画素の吐出動作に対応する時間をN個の期間に分割したとき、前記複数のノズルのうち、第1隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向にK期間(K<N)おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群に隣接する第2隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向に前記K期間おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群の前記第2隣接ノズル群に最も近いノズルを、前記第2隣接ノズル群の前記第1隣接ノズル群に最も近いノズルに対し、L期間(N/2<L<N)遅れて駆動する、時分割駆動制御を行う駆動制御工程と、
前記駆動制御工程によって前記時分割駆動制御が行われる状態において、前記量子化工程で生成された前記第1量子化データ及び前記第2量子化データに従って、前記記録ヘッドよりインクを吐出させる記録工程と、
を有し、
前記量子化工程は、所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、第1のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる第1基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第1閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行い、前記所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる第2基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第2閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行うことを特徴とする画像記録方法。
【請求項21】
前記記録工程は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記第1量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記第2量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記第1基本閾値マトリクスと前記第2基本閾値マトリクスは、前記交差する方向に反転した関係にあり、
前記量子化工程は、
前記往路走査については、前記第1基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記往路方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第1閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行い、
前記復路走査については、前記第2基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記復路方向に1画素分オフセットすることによって得られる前記第2閾値マトリクスを用いて、前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項20に記載の画像記録方法。
【請求項22】
前記量子化工程は、予めメモリに保存された前記第1閾値マトリクス及び前記第2閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項20又は21に記載の画像記録方法。
【請求項23】
前記量子化工程は、予めメモリに記憶された前記第1基本閾値マトリクスに基づいて前記第1閾値マトリクス及び前記第2閾値マトリクスを生成し、前記第1閾値マトリクス及び前記第2閾値マトリクスを用いて前記量子化処理を行うことを特徴とする請求項20又は21に記載の画像記録方法。
【請求項24】
前記記録ヘッドの記録解像度で配列する複数の記録画素のそれぞれについてドットの記録又は非記録を定める基本インデックスパターンを、前記所定の方向と前記交差する方向とに繰り返し配置させて生成されるインデックスパターンを用いて、前記第1量子化データ及び前記第2量子化データから、前記記録工程が記録するための第1記録データ及び第2記録データをそれぞれ生成する記録データ生成工程を更に有し、
前記記録データ生成工程は、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記交差する方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項20から23のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項25】
前記記録工程は、前記記録ヘッドを前記記録媒体に対して往路方向に移動させながら前記第1量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる往路走査と、前記記録ヘッドを前記往路方向と反対の復路方向に移動させながら前記第2量子化データに従って前記記録ヘッドよりインクを吐出させる復路走査とを繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録し、
前記記録データ生成工程は、
前記往路走査については、前記第2隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記基本インデックスパターンに対して前記往路方向に1画素分オフセットして配置させ、
前記復路走査については、前記基本インデックスパターンを前記交差する方向に反転した反転基本インデックスパターンを、前記第1隣接ノズル群に対応する画素領域の前記反転基本インデックスパターンに対して前記復路方向に1画素分オフセットして配置させることを特徴とする請求項24に記載の画像記録方法。
【請求項26】
前記記録ヘッドは、前記複数のノズルのそれぞれに配されたヒータに、前記駆動制御工程によって電圧パルスが印加されることにより、インク中に生成された泡の成長エネルギーによってインクを吐出することを特徴とする請求項14から25のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置のような画像記録装置においては、装置の電源容量を抑えるために、記録ヘッドの時分割駆動を行うことがある。時分割駆動とは、同一のノズル列に配列する複数のノズルをいくつかのセクションに分け、同じセクションに含まれる複数のノズル間で、記録素子に電圧パルスを印加するタイミングを1画素範囲内でシフトさせる駆動制御である。このような時分割駆動を行うことにより、同時に駆動されるノズルの数を減らし、電源容量を抑え、装置の低コスト化を図ることができる。その一方で、記録媒体においては、上記タイミングのシフトに伴って生じる僅かな記録位置ずれがスジムラやテクスチャを招致し、画像品位を低下させてしまうこともある。
【0003】
上記課題に対し、特許文献1には、時分割駆動のセクション構成に合わせて、画像データをシフトさせることにより、時分割駆動に伴う記録位置ずれを目立たなくする記録制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の記録制御を採用した場合、記録位置ずれやテクスチャは目立たないものの、画像データのシフトの影響で、画像全体が傾いてしまうという課題が発生する。以下、このような課題について説明する。
【0006】
図36は、一般的な時分割駆動を示す図である。時分割駆動において、記録ヘッド3600上に並ぶ複数のノズルは、複数のセクションに分割される。図では、128個のノズルが16個ずつ8個のセクションに分割された例を示している。そして、各セクションの先頭のノズルを第1ブロック、2番目のノズルを第2ブロック・・と順番に分類し、その上で、タイミングチャート3601に示すように、個々のノズルを駆動するタイミングをブロック単位で順次シフトさせる。
【0007】
このような駆動制御の下、記録ヘッド3600を図の主走査方向に移動させると、走査方向の同じ画素位置であっても、記録媒体にはドットパターン3602のような傾いた直線が形成される。即ち、記録媒体においては、記録ヘッド3600の移動方向に対し、一定の傾きを有する斜め線が、ノズルの配列方向に繰り返し配置される状態となる。
【0008】
図37(a)~(d)は、上記駆動制御の下で行う、特許文献1の記録制御を説明するための図である。ここでは、X方向を記録ヘッドの主走査方向、Y方向をノズル配列方向としている。2値の画像データ3701において、黒画素はドットの記録(1)、白画素はドットの非記録(0)を示している。
図36で説明した駆動制御の下で、このような2値の画像データ3701を記録すると、記録媒体には補正前ドットパターン3702のような画像が記録される。隣接するセクション間の境界に発生するX方向へのずれが目立ち、画像劣化の要因となっている。
【0009】
特許文献1によれば、このような隣接するセクション間のずれを補正するために、2値の画像データ3701をずれと反対の方向にセクション単位でシフトさせた補正データ3703を生成する。そして、上記駆動制御の下で補正データ3703を記録すると、記録媒体には補正後ドットパターン3704のような一様な画像を記録することができる。補正後ドットパターン3704によれば、隣接するセクション間のずれが補正されているのが分かる。
【0010】
しかしながら、補正後ドットパターン3704においては、セクション単位で画像データをシフトしているため、画像全体がY軸に対し傾いてしまっている。この場合、傾いた画像の端部が記録媒体の余白領域にはみ出してし、その部分の画像情報が欠落してしまうおそれが生じる。
【0011】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものである。よってその目的とするところは、時分割駆動を行う画像記録装置において、高画質な画像を記録することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために本発明は、インクを吐出する複数のノズルが所定の方向に配列された記録ヘッドを記録媒体に対して前記所定の方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、処理対象画素の多値データが有する階調値を、複数の閾値が配列された閾値マトリクスの前記処理対象画素の画素位置に対応する閾値と比較することによって量子化し、前記処理対象画素の量子化データを生成する量子化手段と、1画素の吐出動作に対応する時間をN個の期間に分割したとき、前記複数のノズルのうち、第1隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向にK期間(K<N)おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群に隣接する第2隣接ノズル群に含まれるノズルを前記所定の方向に前記K期間おきに順次駆動し、前記第1隣接ノズル群の前記第2隣接ノズル群に最も近いノズルを、前記第2隣接ノズル群の前記第1隣接ノズル群に最も近いノズルに対し、L期間(N/2<L<N)遅れて駆動する、時分割駆動制御を行う駆動制御手段と、前記駆動制御手段が前記時分割駆動制御を行う状態において、前記量子化手段が生成した前記量子化データに従って、前記記録ヘッドよりインクを吐出させる記録手段と、を備え、前記量子化手段は、所定の階調値の画像データが一様に入力された場合に、所定のパターンが周期的に配置される量子化データが得られる基本閾値マトリクスに対し、前記第2隣接ノズル群に対応する閾値を前記第1隣接ノズル群に対応する閾値に対して前記交差する方向に1画素分オフセットすることによって得られる閾値マトリクスを用いて、量子化処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、時分割駆動を行う画像記録装置において、高画質な画像を記録することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】インクジェット記録装置における記録部の概要を示す斜視図。
【
図3】インクジェット記録システムの制御の構成を説明するためのブロック図。
【
図4】記録装置の電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図。
【
図10】コントローラが参照するテーブルを示す図。
【
図11】第1実施形態における時分割駆動を説明するための図。
【
図12】2パスマルチパス記録を説明するための模式図。
【
図13】一般的な閾値マトリクスとドットパターンの関係を示す図。
【
図14】第1実施形態の閾値マトリクスとドットパターンの関係を示す図。
【
図15】高い分散性が得られる仕組みを説明するための図。
【
図16】記録ヘッドをノズル面から観察した概略図。
【
図17】第2実施形態における時分割駆動を説明するための図。
【
図18】ドット配置パターンと基本インデックスパターンを示す図。
【
図19】第2実施形態の閾値マトリクスとインデックスパターンを説明するための図。
【
図20】第2実施形態の記録制御を行った場合のドットパターンを示す図。
【
図21】往復の記録走査において駆動タイミングのずらしを行う様子を示す図。
【
図22】走査間の記録位置ずれを説明するための図。
【
図23】第3実施形態における画像処理の工程を説明するためのフローチャート。
【
図24】第3実施形態における2パスマルチパス記録を説明するための模式図。
【
図25】往路走査と復路走査でドットパターンを比較する図。
【
図26】第3の実施形態の閾値マトリクスとインデックスパターンを示す図。
【
図27】LEv列とLOd列の駆動タイミングの調整を行う様子を説明する図。
【
図28】第3の実施形態の量子化処理の結果を示す図。
【
図29】時分割駆動を行った場合のドットパターンを示す図。
【
図31】第3の実施形態における量子化処理の結果を示す図。
【
図32】第3の実施形態における記録媒体に形成されるドットパターンを示す図。
【
図34】変形例におけるマルチパス記録を説明するための模式図。
【
図35】変形例で使用するインデックスパターンを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
<ハードウェア構成概要>
図1(a)及び(b)は、本実施形態で使用可能なインクジェット記録装置2(以下、単に記録装置とも言う)における、記録部の概略構成図である。図中、X方向は、キャリッジ106の走査方向、Y方向は記録媒体Pの搬送方向を示す。
図1(a)は記録装置2の斜視図であり、
図1(b)はキャリッジ106部分の断面図である。
【0016】
キャリッジ106は、キャリッジモータE0001(
図4参照)を駆動源として移動するキャリッジベルト108に固定され、キャリッジシャフト109に案内支持されながら、図中±X方向に往復移動可能になっている。キャリッジ106が移動する間、キャリッジ106に搭載された記録ヘッド102が吐出データに従ってインクを吐出することにより、記録媒体Pに1バンド分の画像が記録される。このような記録走査が行われる領域の記録媒体Pは、プラテン107によって背面から支持され、記録ヘッド102のノズル面と記録媒体Pの距離が一定に保たれている。
【0017】
1バンド分の記録走査が終了すると、記録媒体Pをニップする搬送ローラ103と補助ローラ104のローラ対、及び給紙ローラ対105が図中矢印の方向に回転し、上記1バンド分の距離に対応する距離だけ記録媒体Pを、X方向と交差するY方向に搬送する。以上のような、記録走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体Pには、段階的に画像が形成されていく。
【0018】
キャリッジ106には、記録ヘッド102にインクを供給するための4つのインクカートリッジ101が搭載されている。本実施形態において、4つのインクカートリッジ101は、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを収容する。記録動作が行われない時、キャリッジ106は、ホームポジションHで待機する。
【0019】
図2(a)~(c)は、記録ヘッド102をノズル面から見た図である。
図2(a)はノズル面の全体図、
図2(b)及び(c)は、ノズル面に配された各ノズル列の拡大図を示す。
図2(a)に示すように、記録ヘッド102には、ブラックインクを吐出するK列、シアンインクを吐出するC列、マゼンタインクを吐出するM列、イエローインクを吐出するY列が、X方向に並列している。個々のノズル列には、対応するインクを吐出するための複数のノズルが、所定のピッチでY方向に配列されている。これらノズル列は半導体技術によって形成されるが、本実施形態ではブラックインクを吐出するK列のみが、他のノズル列とは別のチップに形成されている。
【0020】
図2(b)は、K列の拡大図である。K列には、ブラックインクを吐出するノズルが300dpiのピッチでY方向に64個配列するブラックノズル列201が、X方向に2列配置されている。これら2列のノズル列201は、Y方向に半ピッチ(600dpiの1画素分)ずれて配置されている。このようなK列は、Y方向に600dpiの解像度で128個のノズルが配置されているものとしてデータ処理され、K列をX方向に移動させながら吐出動作を行うことにより、記録媒体にはY方向に600dpiの解像度を有する画像を記録することができる。本実施形態において、ノズル列201に配された個々のノズルは、約25plのブラックインクを吐出し、記録媒体に直径約60μmのドットを記録するものとする。
【0021】
図2(c)は、C列、M列、Y列の拡大図である。C列、M列、Y列のそれぞれには、5plのインクを吐出するノズル列202と2plのインクを吐出するノズル列203が、X方向に並列配置されている。ノズル列202、203においては、128個のノズルが600dpiのピッチでY方向に配列している。5plのインクは記録媒体において直径約38μmのドットを形成し、2plのインクは記録媒体において直径約28μmのドットを形成する。
【0022】
個々のノズルの直下(-Z方向)には、記録素子となる不図示のヒータが設けられている。このヒータに電圧パルスを印加すると、急激に加熱されたインク中に膜沸騰が生じ、発生した泡の成長エネルギーによってインクが吐出される。
【0023】
図3は、本実施形態に適用可能なインクジェット記録システムの制御の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態におけるインクジェット記録システムは、
図1で説明したインクジェット記録装置2と、画像処理装置1とを含む。画像処理装置1は、例えばPCとすることができる。
【0024】
画像処理装置1は、記録装置2で記録可能な画像データを生成する。画像処理装置1において、主制御部308は、CPU、ROM、RAM、ASIC等から構成され、画像処理装置1における画像の作成や、作成した画像を記録装置2で記録する場合の画像処理等を行う。画像処理装置I/F 309は、記録装置2との間でデータ信号の授受を行う。表示部310は、ユーザに対し様々な情報を表示し、例えばLCDなどを適用することができる。操作部314は、ユーザが操作を行うための操作部であり、例えばキーボードやマウスを適用することができる。システムバス312は、主制御部308と各機能とを結ぶ。I/F信号線313は、画像処理装置1と記録装置2を接続する。I/F信号線313の種類としては、例えばセントロニクス社の仕様のものを適用することができる。
【0025】
記録装置2において、コントローラ301は、CPU、ROM、RAMなどによって構成され、記録装置2全体を制御する。記録バッファ302は、記録ヘッド102に転送する前の画像データを、ラスタデータとして格納する。インクジェット方式の記録ヘッド102は、記録バッファ302に格納された画像データに従って、各ノズルからインクを吐出する。
【0026】
給排紙モータ制御部304は、LFモータE0002(
図4参照)を駆動し、記録媒体Pの搬送や給排紙を制御する。キャリッジモータ制御部300は、キャリッジモータE0001(
図4参照)を駆動し、キャリッジ106の往復走査を制御する。データバッファ306は、画像処理装置1から受信した画像データを一時的に格納する。システムバス307は、記録装置2の各機能を接続する。
【0027】
図4は、記録装置2の電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。記録装置2の電気的構成は、主にキャリッジ基板E0013、メイン基板E0014、電源ユニットE0015及びフロントパネルE0106等によって構成される。
【0028】
電源ユニットE0015はメイン基板E0014と接続され、各種駆動電源を供給している。
【0029】
キャリッジ基板E0013は、キャリッジ106に搭載されたプリント基板ユニットである。キャリッジ基板E0013は、ヘッドコネクタE0101を通じて記録ヘッド102と信号の授受を行ったり、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を介して供給された駆動電源を記録ヘッド102へ供給したりする。また、キャリッジ基板E0013は、キャリッジ106の移動に伴ってエンコーダセンサE0004から出力されるパルス信号に基づいて、エンコーダスケールE0005とエンコーダセンサE0004との位置関係の変化を検出する。そして、その出力信号をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を介してメイン基板E0014へと出力する。
【0030】
メイン基板E0014は、記録装置2の各部の駆動制御を司るプリント基板ユニットである。メイン基板E0014は、ホストインターフェースE0017を有し、画像処理装置1となるホストコンピュータから画像データを受信する。また、メイン基板E0014は、キャリッジ106を走査させるための駆動源となるキャリッジモータE0001、記録媒体を搬送するための駆動源となるLFモータE0002など、各種モータと接続されて各機能の駆動を制御する。また、メイン基板E0014には、LFエンコーダセンサのような装置各部の動作状況を検出する様々なセンサへ制御信号を発信したり、センサの検出信号を受信したりするためのセンサ信号線E0104が接続されている。更に、メイン基板E0014は、パネル信号E0107を介してフロントパネルE0106と情報の授受を行うためのインターフェースを有している。
【0031】
図5は、メイン基板E0014の内部構成を示すブロック図である。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)E1102は、1チップの演算処理装置内蔵半導体集積回路である。ASIC E1102は、制御バスを通じてROM E1004に接続され、ROM E1004に格納されたプログラムに従って各種制御を行う。
図3で説明したコントローラ301としての機能は、ASIC E1102が実現することになる。
【0032】
ASIC E1102は、ホストインターフェースE0017の接続及びデータ入力状態に応じて、各種論理演算や条件判断等を行い、各構成要素を制御し、記録装置の制御を司っている。
【0033】
ASIC E1102の電力は、電源ユニットE0015から供給され、供給された電力は、メイン基板E0014内外の各部へ必要に応じて電圧変換された上で供給される。また、ASIC E1102は、電源ユニットE0015に電源ユニット制御信号E4000を送信し、記録装置の低消費電力モード等を制御する。
【0034】
ASIC E1102は、前述したモータ制御信号E1106、電源制御信号E1024及び電源ユニット制御信号E4000等を出力する。また、ASIC E1102は、各種センサに関連するセンサ信号E0104の送受信を行う。
【0035】
ASIC E1102は、エンコーダ信号(ENC)E1020の状態を検知してタイミング信号を生成し、ヘッド制御信号E1021で記録ヘッド102の記録動作を制御する。ここに示すエンコーダ信号(ENC)E1020は、CRFFC E0012を通じて入力されるエンコーダセンサE0004の出力信号である。また、ヘッド制御信号E1021は、フレキシブルフラットケーブルE0012を通じてキャリッジ基板E0013に接続され、ヘッドコネクタE0101を経て記録ヘッド102に供給される。また、記録ヘッド102からの各種情報は、上記と逆の経路でASIC E1102に伝達される。
【0036】
DRAM E3007は、記録用のデータバッファ、ホストコンピュータからの受信データバッファ等として、また各種制御動作に必要なワーク領域としても使用されている。EEPROM E1005は、記録履歴等各種情報を記憶し必要に応じて呼び出すのに使用される。電源制御回路E1010は、ASIC E1102からの電源制御信号E1024に従って発光素子を有する各センサ等への電源供給を制御する。ホストインターフェースE0017は、ASIC E1102からのホストインターフェース信号E1128を、外部に接続されるホストインターフェースケーブルE1029に伝達し、またこのケーブルE1029からの信号をASIC E1102に伝達する。
【0037】
<記録ヘッド駆動回路>
図6は、記録ヘッド102の駆動回路の構成図である。ここでは、簡単のため、シアンインクを吐出するノズル列202(
図2参照)に含まれるM個の記録素子についての駆動回路を示す。図中、M個の記録素子R01~RMは、一端が駆動電圧VHに共通に接続され、他端がMビットドライバ601に接続されている。Mビットドライバ601には、Mビットラッチ602からの出力信号と、Nビットのブロックイネーブル選択信号(BE1~BEN)との論理積(AND)信号が入力される。Mビットシフトレジスタ603に接続されたMビットラッチ602は、ラッチ信号(LAT)の受信に伴って、Mビットシフトレジスタ603に記憶されているMビットのデータをラッチ(記録保持)する。Mビットシフトレジスタ603は、記録データ転送クロック(SCLK)に同期して送られてくる2値の記録信号S_INを、記録素子R01~RMに対応付けて整列させ、一時的に記憶する。
【0038】
ブロックイネーブル選択信号(BE1~BEN)は、M個の記録素子(ヒータ)R01~RMをN個のブロックに分割して駆動するための信号である。M個の記録素子R01~RMは、N個のブロックイネーブル選択信号(BE1~BEN)のいずれか1つに対応付けられている。M個の記録素子R01~RMのそれぞれは、対応するブロックイネーブル選択信号がONになったタイミングで、Mビットラッチに保存されている記録信号に基づいて駆動電圧VHが印加される。ブロックイネーブル選択信号(BE1~BEN)の発信は、ASIC E1102によって制御され、
図5のヘッド制御信号E1021として記録ヘッド102に送信される。
【0039】
ASIC E1102は、N個のブロックイネーブル選択信号(BE1~BEN)を、時間tずつずらしたタイミングで発信させる。ここで、時間tは1画素分の吐出動作に係る時間をN分割した時間に相当する。このように、同じ1画素領域であってもN個のブロックを異なるタイミングで駆動する制御を、時分割駆動制御と称する。
【0040】
図2で説明したような多数のノズルで構成される記録ヘッドを用いる場合、全てのノズルを同時に駆動するためには、大きな電源容量が必要となる。また、全てのノズルを同時に駆動すると瞬間的に多大な電流が流れるため、ノイズの発生も懸念される。本実施形態のような時分割駆動を行うことにより、同時に駆動される記録素子の数を抑え、記録装置に必要な電源容量を低量化し、ノイズの発生を抑制することができる。
【0041】
<画像処理の流れ>
図7は、任意の画像を記録装置2で記録する際に、画像処理装置1の主制御部308と記録装置2のコントローラ301によって実行される一連の画像処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、任意の画像の記録コマンドを、ユーザが入力することによって開始される。
【0042】
本処理が開始されると、主制御部308は、まずステップS701において色補正処理を行う。本実施形態において、アプリケーション等で生成された画像データは、600dpiで配列する各画素が、R(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)それぞれについて8bit256階調の輝度値を有するものとする。色補正処理において、主制御部308は、このような各画素のRGBデータを、記録装置2に固有な色空間で表現されるR´B´G´データに変換する。具体的な変換方法としては、例えば、予めメモリに格納されたルックアップテーブルを参照することによって行うことができる。
【0043】
ステップS702において、主制御部308は、R´G´B´データに対して色分解処理を行う。具体的には、予めメモリに格納されているルックアップテーブルを参照し、各画素の輝度値R´G´B´を、記録装置2が使用するインク色に対応する、8bit256階調の濃度値C1、M1、Y1、K1に変換する。
【0044】
ステップS703において、主制御部308は、濃度値C1、M1、Y1、K1に対し階調補正処理を行う。階調補正処理とは、入力された濃度値と記録媒体Pで表現される光学濃度が線形関係を有するようにするための補正である。通常は予め用意された1次元のルックアップテーブルを参照することにより行う。ステップS703の階調補正処理により、8ビット256階調の濃度値C1、M1、Y1、K1は、8ビット256階調の階調値C2、M2、Y2、K2に変換される。
【0045】
ステップS704において、主制御部308は、階調データC2、M2、Y2、K2に対し所定の量子化処理を行い、量子化データC3、M3、Y3、K3を生成する。本実施形態において、ブラックインク用の量子化データK3は、ドットの記録(1)又は非記録(0)を示す2値データである。一方、シアン、マゼンタ、イエローインク用の量子化データC3、M3,Y3は、3段階の階調値(0、1、2)のいずれかを示す3値データである。本実施形態では、このような量子化処理を、閾値マトリクスを用いたディザ法によって行う。
【0046】
本実施形態では、以上S701~S704までの処理を、画像処理装置1の主制御部308によって行う。主制御部308は、ステップS704で生成された量子化データC3、M3、Y3、K3を、記録装置2に送信する。
【0047】
量子化データC3、M3、Y3、K3を受信した記録装置2のコントローラ301は、まず、ステップS705において、ノズル列展開処理を行う。
【0048】
図8は、ステップS705において、コントローラ301が参照するノズル列展開テーブルを示す。
図2で説明したように、本実施形態の記録ヘッド102において、C列、M列、Y列には、5plのインクを吐出するノズル列202と、2plのインクを吐出するノズル列203が含まれている。コントローラ301は、量子化データが示す量子化値C3、M3,Y3に応じて、5plのノズル列202と2plのノズル列203のそれぞれに対し、ノズル階調値C4、M4、Y4を決定する。本例では、2plのノズル列203のノズル階調値C4は生成せず、5plのノズル列202のノズル階調値C4、M4,Y4として、0、1、2のいずれか設定するものとする。なお、25plのインクを吐出する2つのノズル列201を有するK列については、記録(1)又は非記録(0)を示す2値の量子化値K3を、そのままノズル階調値K4とする。
【0049】
図7の説明に戻る。ステップS706において、コントローラ301は、マスク処理を行う。
【0050】
図9は、ステップS706において、コントローラ301が使用する、CMY用の多値マスクパターンの例を示す図である。2パスのマルチパス記録を行う場合、多値マスクパターンは、奇数パス目のためのマスクパターンMp1と偶数パス目のためのマスクパターンMp2が用意される。マスクパターンMp1、Mp2は、32×32画素の画素領域を有し、個々の画素について「1」又は「2」のマスク値が設定されている。図中、グレーで示す画素がマスク値「1」が設定された画素であり、黒で示す画素がマスク値「2」が設定された画素である。マスクパターンMp1とマスクパターンMp2は、マスク値「1」及び「2」について互いに補完関係を有している。コントローラ301は、このマスクパターンMp1、Mp2をXY方向に繰り返して使用する。
【0051】
一方、図示はしていないが、ブラックインク用のマスクパターンとしても、32×32画素の画素領域を有する、奇数パス目用のマスクパターンと偶数パス目用のマスクパターンが用意されている。ブラックインク用のマスクパターンは2値のマスクパターンであり、個々の画素について「1」又は「0」のマスク値が設定されている。そしてこれら奇数パス目用のマスクパターンと偶数パス目用のマスクパターンは、マスク値「1」及び「0」について互いに補完関係を有している。なお、ブラックインク用のマスクパターンとしては、
図9に示したマスクパターンMp1、Mp2のマスク値(1、2)を、マスク値(0、1)に書き換えたものを使用してもよい。
【0052】
コントローラ301は、以上のようなマスクパターンを参照することにより、処理対象画素の座標(x、y)に基づいて、処理対象画素の奇数パス目のマスク値と偶数パス目のマスク値を取得する。
【0053】
図10は、ステップS706において、コントローラ301が参照するテーブルを示す。コントローラ301は、ステップS705で得られたノズル階調値C4、M4、Y4、K4と、上述したマスクパターンMp1,Mp2から得られるマスク値の組み合わせにより、処理対象画素について2値の記録値C5、M5、Y5、K5を決定する。記録値C5、M5、Y5、K5は、処理対象画素についてドットの記録(1)または非記録(0)を示す値である。
【0054】
例えば、ノズル階調値C4が0の場合、マスク値によらず処理対象画素の記録値C5は0(非記録)となる。ノズル階調値C4が1の場合は、マスク値が1である場合のみ記録値C5は1(記録)となる。ノズル階調値C4が2の場合は、マスク値が1又は2である場合に記録値C5は1(記録)となる。
【0055】
以上説明したマスク処理により、処理対象画素に対してドットを記録するか否かを定める記録値C5、M5、Y5、K5が、奇数パス目と偶数パス目のそれぞれについて決定される。その結果、階調値C4=2である画素は、奇数パス目と偶数パス目によってドットが1つずつ記録されることになる。また、階調値C4=1である画素は、奇数パス目と偶数パス目の一方によってドットが1つ記録されることになる。更に、階調値C4=0である画素は、奇数パス目にも偶数パス目にも、ドットが記録されないことになる。
【0056】
図7の説明に戻る。S707において、コントローラ301は、ステップS706で生成された記録値C5、M5、Y5、K5を記録ヘッド102のドライバに送信する。ヘッドドライバは、受信した記録値に従って吐出データを生成し記録ヘッド102の記録素子を駆動し、吐出動作を行わせる。以上で本処理は終了する。
【0057】
<ブロック駆動制御>
図11(a)及び(b)は、本実施形態で採用する時分割駆動を説明するための図である。本実施形態の時分割駆動では、各ノズル列に配列するノズルを16のブロックに分け、ヒータに電圧パルスを印加するタイミングを各ブロックでシフトさせる。このような時分割駆動は、
図6で説明した駆動回路によって実現される。
【0058】
図11(a)は、ブロック番号と各ブロックの駆動順序を示す図である。ブロック1に含まれるノズルは最初のタイミングで駆動され、ブロック2に含まれるノズルは4番目のタイミングで駆動され、ブロック16に含まれるノズルは14番目のタイミングで駆動されることを示している。16個のブロックのそれぞれは、600dpiの1画素に対応する期間を16分割した1番目~16番目のいずれかのタイミングで駆動される。
【0059】
図11(a)に示す情報は、
図5で説明したRAM E3007、ROM E1004、もしくはASIC E1102内部の記憶領域に、ブロック駆動順序設定テーブルとして保持されている。時分割駆動を行うとき、ASIC E1102は、このブロック駆動順序設定テーブルに基づいて、ブロックイネーブル選択信号(BE1~BEN)を生成する。
【0060】
図11(b)は、C列のノズル列202に配列するノズルと、個々のノズルの駆動タイミングチャートと、記録媒体上におけるドット記録状態を示す図である。Y方向に配列するノズルは、-Y方向側1番目のノズルから、ブロック1、ブロック4・・・とそれぞれ異なる16のブロックに振り分けられる。また、17番目~32番目のノズルは、1番目~16番目のノズルと同じ順番で、それぞれ異なる16のブロックに振り分けられる。このような連続する16ノズルの群を本明細書ではセクションと呼ぶ。
【0061】
タイミングチャート1100は、
図11(a)のテーブルに従う、各ノズルの駆動タイミングを示す。ここでは第1セクションに含まれるノズルの駆動タイミングを示しているが、第2セクション以降も、タイミングチャート1100が繰り返される状態となる。図中、横軸は時間を示し、縦軸は各ノズルのヒータに印加される駆動電圧VHを示す。図によれば、600dpiの1画素に対応する期間を16分割した中で、ブロック1、ブロック12、ブロック7、ブロック2・・・の順に1期間ずつずれてノズルが順次駆動され、最後にブロック6のノズルが駆動される。
【0062】
このような駆動制御の下、キャリッジ106(
図1参照)を+X方向に移動させると、記録媒体にはドットパターン1101が形成される。キャリッジ106を+X方向に移動しながらの吐出であるため、ドットは、駆動順に応じて+X方向にずれて配置される。より詳しく説明すると、600dpiの1画素領域を16分割したものを1区間としたとき、1番目~6番目、7番目~12番目、13番目~16番目のように互いに隣接する6ノズルで記録されたドットは、3区間ずつずれて配置される。このため、記録媒体においては、X方向に対し一定の傾きを有する斜め線が、Y方向に繰り返し配置される状態となる。
【0063】
本実施形態では、3区間ずつずれて配置される1番目~6番目のノズル群を隣接ノズル群1、7番目~11番目のノズル群を隣接ノズル群2、12番目~16番目のノズル群を隣接ノズル群3と呼ぶ。このような隣接ノズル群1~3は、各セクションにおいて同様に含まれる。
【0064】
以上説明したような時分割駆動を行うと、同時に駆動するノズルの数を低減させ電源容量を抑えることができる。その一方で、ドットパターン1101のように、600dpiの1画素領域内において、ドットの記録位置にばらつきが生じることになる。
図11の場合は、隣接ノズル群間の境界に13区間分(≒34μm)のずれが発生している。
【0065】
図12は、記録装置2において、コントローラ301の制御の下で実行される、2パスマルチパス記録を説明するための模式図である。ここでは、説明を簡単にするため、記録ヘッド102に配列する複数のノズル列のうち、C列のノズル列202(
図2参照)の記録動作について説明する。2パスのマルチパス記録を行う場合、ノズル列202に含まれる128個のノズルは、第1分割領域と第2分割領域に分割される。
【0066】
第1記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を+X方向に移動させながら、第1分割領域を用い、マスクパターンMp1を用いて生成した記録データC5に従った吐出動作を行う。その後、コントローラ301は、記録媒体を64画素分だけ+Y方向に搬送する。
図12では便宜上、記録ヘッド102を-Y方向に移動させることで、各分割領域と記録媒体の単位領域の相対的な位置関係を示している。
【0067】
第2記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を+X方向に移動させながら、第1分割領域と第2分割領域を用い、マスクパターンMp2を用いて生成した記録データC5に従った吐出動作を行う。その後、コントローラ301は、記録媒体を64画素分だけ+Y方向に搬送する。
【0068】
第3記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を+X方向に移動させながら、第1分割領域と第2分割領域を用い、マスクパターンMp1を用いて生成した記録データC5に従った吐出動作を行う。その後、コントローラ1301は、記録媒体を64画素分だけ+Y方向に搬送する。
【0069】
以後、以上説明したような、マスクパターンMp1に従う記録走査とマスクパターンMp2に従う記録走査を、64画素分の搬送動作を介在させながら交互に繰り返し行う。これにより、記録媒体の各単位領域には、マスクパターンMp1に従って記録されたドットパターンと、マスクパターンMp2に従って記録されたドットパターンとが重ねて記録されることになる。
【0070】
<閾値マトリクスと時分割駆動の関係>
図13(a)~(c)は、量子化処理で使用可能な一般的な閾値マトリクスと、記録媒体上に形成されるドットパターンの関係を示す図である。
図13(a)は、一般的な2値化用の閾値マトリクスを示す。閾値マトリクスは16×16画素の画素領域を有し、個々の画素には0~255のいずれかの閾値Thが設定されている。以下、2値量子化を説明するため、階調データC2を2値の量子化データC3に量子化する場合について説明する。
【0071】
主制御部308は、処理対象画素の階調値C2とその画素に対応する閾値Thが、Th≦C2の関係にある時、当該画素の量子化値C3を「1」と設定し、Th>C2の関係にある時、当該画素の量子化値C3を「0」と設定する。
【0072】
図13(b)は、階調値C2=128の多値データが一様に入力された場合の、量子化の結果を示している。図中、黒で示した画素は量子化値C3が1である画素であり、白で示した画素は量子化値C3が0である画素である。
図13(b)では、閾値マトリクスよりも短い周期、即ち2画素×2画素の周期を有する白黒パターンがXY方向に繰り返し配置され、ドットの記録を示す黒い画素が一様に分散しているのがわかる。
図13(a)に示す閾値マトリクスにおいては、階調値C2が0~255のどのような値であっても、量子化データ上でこのように閾値マトリクスよりも短い周期を有する繰り返しパターンが出現するように、各画素の閾値が定められている。
【0073】
図13(c)は、
図13(b)の量子化データに従って、
図11で説明した時分割駆動を行った場合に記録媒体に記録されるドットパターンを示す。時分割駆動を行った場合、X座標が同じ画素位置であっても、各ドットが着弾する位置は、対応するブロックに応じて互いにずれた状態となる。このため、量子化データ上では
図13(b)のように高い分散性が得られても、記録媒体に形成されるドットパターンにおいては、隣接ノズル群間の境界部分で繰り返しパターンの位相がずれ、
図13(c)のようにドットの粗密が発生してしまう。特に、隣接ノズル群間の境界部分における13区間分(≒34μm)のずれが目立っているのがわかる。
【0074】
図14(a)~(c)は、本実施形態の量子化処理で使用する閾値マトリクスと、記録媒体上に形成されるドットパターンの関係を示す図である。
図14(a)は、本実施形態において、
図7のステップS704で使用する閾値マトリクスを示す。本実施形態の閾値マトリクスは、
図13(a)で示したような、閾値マトリクスよりも短い周期の繰り返しパターンが出現する閾値マトリクスに対し、所定のオフセット処理を施したものである。以下、
図13(a)で示した、量子化データ上で閾値マトリクスよりも短い周期の繰り返しパターンが出現し、高い分散性が得られる基本となる閾値マトリクスを基本閾値マトリクスと呼ぶ。
【0075】
以下、
図13(a)と
図14(b)を参照しながら、基本閾値マトリクスに対するオフセット処理を具体的に説明する。まず、隣接ノズル群1(ノズル番号1~6)に対応する領域の閾値は、基本閾値マトリクスを維持する。隣接ノズル群2(ノズル番号7~11)に対応する領域の閾値は、+X方向に1画素分オフセットする。この際、最も右側(+X側)の領域の閾値は最も左側(-X側)の領域に移動させる。隣接ノズル群3(ノズル番号12~16)に対応する領域の閾値は、+X方向に2画素分オフセットする。
【0076】
図14(b)は、
図14(a)の閾値マトリクスを用い、階調値C2=128の多値データが一様に入力された場合の、量子化の結果を示している。
図13(b)に比べ、隣接ノズル群の境界で繰り返しパターンの位相がずれ、黒画素の分散性が損なわれているのが分かる。しかしながら、
図11で説明した時分割駆動によって記録動作を行うと、
図14(c)に示すような一様なドットパターンが得られる。
図14(c)のドットパターンは、
図13(c)のドットパターンに比べ、境界部分における繰り返しパターンのズレが解消され、高い分散性が得られている。
【0077】
図15は、
図14(c)のドットパターンで高い分散性が得られる仕組みを説明するための図である。
図11(b)と同様、ノズル列202に配列するノズルと、個々のノズルの駆動タイミングチャートと、記録媒体上におけるドット記録状態を示している。ここでは、X方向に連続する2つの画素列に対し続けてドットを記録した場合のタイミングチャート1500とドットパターン1501を示している。
【0078】
ドットパターン1501において、先行する画素のドット群と後続する画素のドット群を見ると、隣接ノズル群1が記録する先行ドット群の延長線上に隣接ノズル群2が記録する後続ドット群が位置しているのがわかる。そして、これら先行ドット群と後続ドット群が一定の傾きで連続的に配置しているのがわかる。これは、隣接ノズル群1の中で最も遅く駆動される6番目のノズルと、隣接ノズル群2の中で最も早く駆動される7番目のノズルの駆動ずれが13区間分であり、6番目のノズルの先行画素と7番目のノズルの後続画素の駆動ずれが3区間に相当するためである。即ち、7番目のノズルに対し13区間遅れて駆動される6番目のノズルは、7番目のノズルの次の画素の駆動タイミングに対し3区間(=16-13)早いタイミングで駆動され、結果として、他の隣接ノズルと同等の間隔でドットが配置されることになる。このような状況は、隣接ノズル群2と3の間の境界でも発生する。
【0079】
以上のことに鑑み、本実施形態では、量子化データ上で高い分散性が得られる基本閾値マトリクスを予め用意し、この基本閾値マトリクスの閾値の内容を、
図14で説明した規則でオフセットした閾値マトリクスを用いて量子化処理を行う。その結果、基本閾値マトリクスを用い、且つ時分割駆動を行わずに記録した場合と同等のドットパターンを、時分割駆動を行った上で再現することができる。
【0080】
この際、閾値マトリクスについては、予め画像処理装置1のメモリに保存しておいてもよいが、メモリには基本閾値マトリクスのみを保存しておいてもよい。後者の場合、必要に応じて基本閾値マトリクスに所定のオフセット処理を施して、実際に使用する閾値マトリクスを生成すればよい。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、上記記録位置ずれの補正を量子化処理で行うため、量子化後のデータをシフトする特許文献1のように、画像の傾きが発生することはない(
図37参照)。よって、画像の傾きに伴う画像の欠落も招致されない。更に、特許文献1の様に、量子化後のデータを補正するための新たな処理を追加する必要がないので、補正のために処理負荷が増大したり、スループットが低下したりすることもない。
【0082】
なお、以上では、2パスのマルチパス記録において、記録走査を往路方向(+X方向)のみで行う場合を説明してきたが、本実施形態は双方向のマルチパス記録にも応用することができる。即ち、
図12で説明したマルチパス記録において、第1、第3記録走査のような奇数番目の走査を記録ヘッドの往路走査で行い、第2、第4記録走査のような偶数番目の走査を記録ヘッドの復路走査で行うようにしてもよい。
【0083】
但し、この場合、記録ヘッドに対し上述と同様の駆動制御を行うと、往路走査と復路走査とでドット配列の傾きが左右で反転することになる。よって、復路走査用の閾値マトリクスについては、基本閾値マトリクスに対し、
図14(a)で説明した往路走査用の閾値マトリクスとは左右を反転したオフセット処理を行う必要が生じる。即ち、本実施形態を双方向のマルチパス記録に応用する場合は、往路走査用の閾値マトリクスと復路走査用の閾値マトリクスを用意する必要がある。
【0084】
この際、メモリには、往路走査用の閾値マトリクスと復路走査用の閾値マトリクスを保存しておいてもよいが、基本閾値マトリクスのみを保存する形態としてもよい。後者の場合、画像処理装置の主制御部308は、メモリに保存されている基本閾値マトリクスに対し、左右を反転したオフセット処理を施して、往路走査用の閾値マトリクスと復路走査用の閾値マトリクスを生成すればよい。
【0085】
以上では、1画素の吐出動作に要する時間を16分割したものを1期間とし、同じ隣接ノズル群の中では3期間おきに順次駆動し、隣接ノズル群間の境界では13期間をおいて駆動する形態とした。しかしながら、時分割制御において、1画素の吐出動作に要する時間の分割数や、同じ隣接ノズル群の中で順次駆動する期間、及び隣接ノズル群間の境界での駆動期間は、上記に限定されるものではない。1画素の吐出動作に要する時間をN期間に分割したとき、同じ隣接ノズル群の中ではK期間(K<N)おきに順次駆動し、かつ1つのセクションの中に隣接ノズル群がK個存在するような形態であればよい。この形態であれば、基本閾値マトリクスに対し、1画素分オフセットさせた閾値マトリクスを用いることの効果を発揮させることができる。
【0086】
(第2の実施形態)
<ノズル配列構成>
本実施形態においても、
図1、
図3~
図6で説明したインクジェット記録システム及びインクジェット記録装置を使用する。但し、本実施形態のインクジェット記録装置2は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の他、グレー(G)のインクも吐出するものとする。このため、
図1で説明したキャリッジ106には5色分のインクカートリッジが搭載される。
【0087】
図16(a)~(c)は、本実施形態の記録ヘッド102をノズル面から見た図である。
図16(a)はノズル面の全体図、
図16(b)及び(c)は、ノズル面に配された各ノズル列の拡大図を示す。
図16(a)に示すように、記録ヘッド102には、ブラックインク用のK列、シアンインク用のC1列とC2列、マゼンタインク用のM1列とM2列、イエローインク用のY列、及びグレーインク用のG1列とG2列が、図のように並列している。本実施形態では全てのノズル列が同一のチップに形成されている。
【0088】
図16(b)は、K列の拡大図である。K列には、ブラックインクを吐出するノズルが600dpiのピッチでY方向に128個配列するノズル列1601が、X方向に2列配置されている。これら2列のノズル列201は、Y方向に半ピッチ(1200dpiの1画素分)ずれて配置されている。このようなK列をX方向に移動させながら吐出動作を行うことにより、記録媒体にはY方向に1200dpiの解像度を有する画像を記録することができる。本実施形態において、ノズル列1601に配された個々のノズルは、約5plのブラックインクを吐出し、記録媒体にド直径約38μmのドットを記録するものとする。以下、相対的に+Y方向に配置されている列をLEv列、-Y方向に配置されている列をLOd列と呼ぶ。イエローインクを吐出するY列は、ブラックインクを吐出するK列と同じ構成を有している。
【0089】
図16(c)は、C1列とC2列の拡大図である。C1列には、5plのシアンインクを吐出するLEv列と、2plのシアンインクを吐出するMEv列と、1plのシアンインクを吐出するSOd列とが配列されている。一方、C2列には、5plのシアンインクを吐出するLOd列と、2plのシアンインクを吐出するMOd列と、1plのシアンインクを吐出するSEv列とが配列されている。いずれのノズル列も、128個ずつのノズルが600dpiのピッチでY方向に配列している。5plのインクは記録媒体において直径約38μmのドットを形成し、2plのインクは直径約28μmのドットを形成し、1plのインクは直径約22μmのドットを形成する。
【0090】
C1列とC2列において、LEv列はLOd列に対し、MEv列はMOd列に対し、SEv列はSOd列に対し、-Y方向に半ピッチ(1200dpi)ずれて配置されている。また、2plを吐出するMEv列とMOd列、及び1plを吐出するSEv列とSOd列は、5plを吐出するLEv列とLOd列に対し、-Y方向に1/4ピッチ(2400dpi)ずれて配置されている。なお、C1列とC2列における、LodとLEvのY方向の位置は、K1列とK2列における、LodとLEvのY方向の位置と同じである。M1列とM2列、及びG1列とG2列については、C1列とC2列と同じ構成を有している。
【0091】
これらノズル列を構成する個々のノズルの直下(-Z方向)には、記録素子となる不図示のヒータが設けられている。そして、このヒータに電圧パルスを印加すると、急激に加熱されたインク中に膜沸騰が生じ、発生した泡の成長エネルギーに伴ってインクが吐出される仕組みになっている。
【0092】
<ブロック駆動制御>
図17(a)及び(b)は、本実施形態で採用する時分割駆動を説明するための図である。
【0093】
図17(a)は、本実施形態の時分割駆動におけるブロック番号と各ブロックの駆動順序を示す図である。16個のブロックのそれぞれは、第1の実施形態と同様、600dpiの1画素に対応する期間を16分割した1番目~16番目のいずれかのタイミングで駆動される。ブロック1に含まれるノズルは最初のタイミングで駆動され、ブロック2に含まれるノズルは5番目のタイミングで駆動され、ブロック16に含まれるノズルは16番目のタイミングで駆動されることを示している。
【0094】
図17(b)は、ノズル列1601に配列するノズルと、個々のノズルの駆動タイミングチャートと、記録媒体上におけるドット記録状態を示す図である。ここでは、
図17(a)のテーブルに従って、X方向に連続する2つの画素列に対し続けてドットを記録した場合のタイミングチャート1700とドットパターン1705を示している。
【0095】
本実施形態において、600dpiの1画素領域を16分割したものを1区間としたとき、1番目~4番目のように互いに隣接するノズルで記録されたドットは、4区間ずつずれて配置される。その上で、本実施形態では、4区間ずつずれて配置される1番目~4番目のノズル群を隣接ノズル群1、5番目~8番目のノズル群を隣接ノズル群2、9番目~12番目のノズル群を隣接ノズル群3、13番目~16番目のノズル群を隣接ノズル群4と呼ぶ。このような隣接ノズル群1~4は、各セクションにおいて同様に含まれる。
【0096】
以上のような時分割駆動を行うと、隣接ノズル群間の境界には、11区間分(≒29μm)のずれが発生する。その上で、ドットパターン1705を見ると、隣接ノズル群1が記録したドット群の延長線上には、隣接ノズル群2が次の画素のために記録したドット群が位置していることが分かる。
【0097】
これは、隣接ノズル群1の中で最も遅く駆動される4番目のノズルと、隣接ノズル群2の中で最も早く駆動される5番目のノズルの駆動ずれが11区間分であり、4番目のノズルの先行画素と5番目のノズルの後続画素の駆動ずれが5区間に相当するためである。即ち、5番目のノズルに対し11区間遅れて駆動される4番目のノズルは、5番目のノズルの次の画素の駆動タイミングに対し5区間(=16-11)早いタイミングで駆動される。その結果、4区間ずつずれている他の隣接ノズルとほぼ同等の間隔でドットが配置されることになる。このような状況は、他の隣接ノズル群間の境界でも発生する。
【0098】
本実施形態においては、このような記録位置ずれの規則に基づいて、第1の実施形態と同様の基本閾値マトリクスに対してオフセット処理を行い、得られた閾値マトリクスを
図7の量子化処理で使用する。
【0099】
<画像処理の流れ>
以下、本実施形態で実行する画像処理について説明する。本実施形態においても、
図7で説明したフローチャートに従って画像処理を行うことができる。以下、第1の実施形態と異なるステップについて説明する。なお、ステップS701~S704までの処理解像度は、第1の実施形態と同様の600dpi×600dpiとする。
【0100】
ステップS705のノズル列展開処理において、コントローラ301は、600dpi×600dpiの量子化値C3を、600dpi×1200dpiのノズル階調値C4に変換する。
【0101】
図18(a)及び(b)は、本実施形態のノズル列展開処理で使用するドット配置パターンと基本インデックスパターンを示す図である。
図18(a)は、ドット配置パターンを示す図である。600dpi×600dpiの1画素領域は、600dpi×1200dpiの2つの記録画素に対応付けられる。600dpi×600dpiの1画素の量子化値C3が「0」即ちドットの非記録を示す場合、600dpi×1200dpiのどちらの記録画素にもドットは配置されない。一方、600dpi×600dpiの1画素の量子化値C3が「1」即ちドットの記録を示す場合、実際にドットを記録する位置は、2通り考えられる。本実施形態では、上側の記録画素即ち-Y方向側の記録画素にドットを配置するパターンAと、下側の記録画素即ち+Y方向側の記録画素にドットを配置するパターンBを用意する。本実施形態のドット配置パターンにおいて、上側の記録画素は、LEv列のノズルによってドットが記録されることになり、下側の記録画素はLOd列のノズルによってドットが記録されることになる(
図16(c)参照)。
【0102】
図18(b)は、基本インデックスパターン1800を示す図である。基本インデックスパターン1800において、各四角は、600dpi×600dpiの1画素領域に対応する。各画素には、対応する画素の量子化値が「1」であった場合に、パターンAでドットを配置するかパターンBでドットを配置するかが定められている。なお、
図18(a)のドット配置パターンは5plインク滴用、即ちLEv列とLOd列用のパターンであるが、2plインク滴、1plインク滴を混合して出力する設定であっても良い。
【0103】
<閾値マトリクスとインデックスパターン>
図19(a)~(d)は、本実施形態で使用する閾値マトリクスとインデックスパターンを説明するための図である。
図19(a)は、ステップS704の量子化処理で使用する閾値マトリクスである。この閾値マトリクスは、
図13(a)で説明した基本閾値マトリクスに対し、本実施形態の時分割駆動の規則に基づいて、オフセット処理を行ったものである。具体的には、基本閾値マトリクスに対し、隣接ノズル群2に対応する領域では+X方向に1画素分、隣接ノズル群3に対応する領域では+X方向に2画素分、隣接ノズル群4に対応する領域では+X方向に3画素分オフセットする。
【0104】
図19(b)は、
図19(a)の閾値マトリクスを用い、階調値C2=128の多値データが一様に入力された場合の、量子化データを示している。
【0105】
一方、
図19(c)は、ステップS707のノズル展開処理で使用するインデックスパターンである。基本インデックスパターン1800は、XY方向に繰り返し使用されるのが一般であるが、本実施形態では閾値マトリクスと同様のオフセット処理を行う。即ち、X方向については基本インデックスパターン1800を繰り返し使用するが、Y方向については、隣接ノズル群の単位で+X方向に1画素分ずつオフセットする。
【0106】
具体的には、隣接ノズル群1に対応する領域では、基本インデックスパターン1800をそのままX方向に繰り返し使用する。隣接ノズル群2に対応する領域では、隣接ノズル群1に対し、基本インデックスパターン1800を+X方向に1画素オフセットして使用する。隣接ノズル群3に対応する領域では、基本インデックスパターン1800を+X方向に2画素オフセットして使用し、隣接ノズル群4に対応する領域では、基本インデックスパターン1800を+X方向に3画素オフセットして使用する。
【0107】
図19(d)は、
図19(b)の量子化データC3に従って、
図18(a)のドット配置パターンと
図19(c)のインデックスパターンを用いて生成した2値の記録データC4を示す。2値の記録データC4では、X方向600dpi、Y方向1200dpiの各画素について、ドットの記録(1)又は非記録(0)が設定されている。
【0108】
なお、実際に量子化処理で使用する閾値マトリクスやインデックスパターンについては、予め画像処理装置1のメモリに保存しておいてもよいが、メモリには基本閾値マトリクスや基本インデックスパターンのみを保存しておいてもよい。この場合、必要に応じて基本閾値マトリクスや基本インデックスパターンに所定のオフセット処理を施して、実際に使用する閾値マトリクスや基本インデックスパターンを生成することになる。
【0109】
本実施形態の記録制御も、第1の実施形態と同様、双方向のマルチパス記録に応用することができる。即ち、
図12で説明したマルチパス記録において、第1、第3記録走査のような奇数番目の走査を記録ヘッドの往路走査で行い、第2、第4記録走査のような偶数番目の走査を記録ヘッドの復路走査で行うようにしてもよい。
【0110】
本実施形態を双方向のマルチパス記録に応用する場合は、往路走査用の閾値マトリクスと復路走査用の閾値マトリクス、及び往路走査用のインデックスパターンと復路走査用のインデックスパターンを用意する必要がある。この場合、画像処理装置の主制御部308は、メモリに保存されている基本閾値マトリクスに対し、左右を反転したオフセット処理を施すことにより、往路走査用の閾値マトリクスと復路走査用の閾値マトリクスを生成してもよい。また、記録装置2のコントローラ(ASIC)は、メモリに保存されている基本インデックスパターンに対し、左右を反転したオフセット処理を施すことにより、往路走査用のインデックスパターンと復路走査用のインデックスパターンを生成してもよい。
【0111】
図20(a)~(d)は、本実施形態の記録制御を行った場合のドットパターンを説明するための図である。
図20(a)は、
図17で説明した本実施形態の時分割駆動の下、
図19(d)の2値データに従って吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンを示す。一方、
図20(b)は、本実施形態の時分割駆動の下、基本閾値マトリクスと基本インデックスパターンに対しオフセット処理を行わずに吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンを示す。両者を比較すると、
図20(b)では、隣接ノズル群の境界部で発生するずれの影響で、ドットの粗密が発生してしまっている。これに対し、
図20(a)に示す本実施形態のドットパターンでは、ドットの粗密が低減され、高いドット分散性が得られていることが分かる。
【0112】
<LEv列とLOd列の駆動タイミングの調整>
ところで、
図20(a)に示すドットパターンは、
図20(b)に比べれば高い分散性が得られているものの、2ドットを単位とした周期的な粗密が存在しているのが分かる。これは、記録媒体上において、Y方向の記録解像度とX方向の記録解像度が異なっていることが原因である。よって、本実施形態では、このような記録解像度の違いに起因するドットの粗密を低減するために、時分割駆動を利用してLEv列とLOd列の駆動タイミングを更に調整する。
【0113】
具体的には、LEv列とLOd列のそれぞれにおいて、隣接するノズルが形成するドットが、
図17で説明した時分割駆動によって4区間分ずれて配置されるため、LOd列とLEv列とが、互いにこのズレの半分の位置に配置されるようにする。そのために、本実施形態では、LEv列に対してLOd列を+X方向に(-1200dpi+600dpi÷16×2≒15.9μm)だけずらして配置するように制御する。これにより、
図20(c)に示すような、更に分散性に優れたドットパターンを記録することができる。
【0114】
図21(a)及び(b)は、往復の記録走査において、上記のような駆動タイミングのずらしを行う様子を説明するための模式図である。
図21(a)は往路走査の駆動タイミング、
図21(b)は復路走査の駆動タイミングをそれぞれ示している。記録ヘッド102には、
図16(c)に示すようにC1列とC2列が配置されている。
【0115】
往路走査においては、まず、LEv列が基準位置に達したタイミングで、LEv列を上述した時分割駆動で駆動する。その後、LOd列が基準位置に達する前の、基準位置より(1200dpi+600dpi÷16×2≒26.5um)だけ手前の位置に達したタイミングで、LOd列を時分割駆動で駆動し、LOd列が基準位置に達したタイミングでは駆動しない。
【0116】
復路走査においては、まず、LOd列が基準位置に達したタイミングでは駆動せず、LOd列が基準位置から(1200dpi+600dpi÷16×2≒26.5um)だけ進んだ位置に達したタイミングで、LOd列を時分割駆動で駆動する。その後、LEv列が基準位置に達したタイミングで、LEv列を時分割駆動で駆動する。往路走査においても復路走査においても、時分割駆動における600dpiの1画素を16分割して得られる1期間の単位で上記調整を行うことができる。
【0117】
以上説明したような駆動制御を行うことにより、往路走査では
図20(c)に示すドットパターンが得られることになる。また、往路走査とは反対向きの復路走査においては、
図20(c)を左右反転したドットパターンが得られることになる。
【0118】
なお、以上では、LOd列の駆動タイミングをLEv列に対してずらす内容で説明したが、LOd列に対してLEv列の駆動タイミングをずらしても、
図20(c)に示すドットパターンを得ることはできる。また、往路走査と復路走査で、駆動タイミングをずらすノズル列をLEv列とLOd列との間で切り替えてもよい。また、記録装置の都合で、ずらしの解像度に限界がある場合には、少なくとも1200dpi分のずらしが実現されれば、
図20(c)に示すドットパターンに近づけることができる。
【0119】
以上説明したように本実施形態によれば、LOd列とLEv列を備えた記録ヘッドを用いて時分割駆動を行う場合のドット着弾位置に基づいて、好適な閾値マトリクスとインデックスパターンとを用意し、更に、LOd列とLEv列の駆動タイミングを調整する。これにより、画像の傾きや欠落を発生させることはなく、ドット分散性の高い高画質な画像を出力することが可能となる。
【0120】
なお、以上では、1画素の吐出動作に要する時間を16分割したものを1期間とし、同じ隣接ノズル群の中では4期間おきに順次駆動し、隣接ノズル群間の境界では11期間をおいて駆動する形態とした。しかしながら、時分割制御において、1画素の吐出動作に要する時間の分割数や、同じ隣接ノズル群の中で順次駆動する期間、及び隣接ノズル群間の境界での駆動期間は、上記に限定されるものではない。1画素の吐出動作に要する時間をN期間に分割したとき、同じ隣接ノズル群の中ではK期間(K<N)おきに順次駆動し、隣接ノズル群間の境界ではL期間(N/2<L<N)をおいて駆動する形態であればよい。この形態であれば、基本閾値マトリクスに対し、1画素分オフセットさせた閾値マトリクスを用いることの効果を発揮させることができる。
【0121】
(第3の実施形態)
<走査間の記録位置ずれについて>
マルチパス記録においては、単位領域を記録する記録走査間で記録位置ずれが発生すると、画像の粒状性や濃度ムラが目立ってしまうことがある。特に
図1で説明したようなシリアル型のインクジェット記録装置においては、キャリッジ106の走査速度のばらつき、搬送ローラ103と補助ローラ104の搬送ばらつき、記録媒体のコックリング等に起因して、記録位置ずれは突発的に発生する。
【0122】
図22(a)及び(b)は、第2の実施形態で説明した記録制御に従って、
図20(c)のドットパターンを2パスのマルチパス記録で記録した際に、記録走査間で記録位置ずれが発生した場合のドットパターンを示す。ここでは、マスクパターンMp1、Mp2を用いたステップS706のマスク処理により、約半数のドットが単位領域に対する1パス目で記録され、残りの半数のドットが2パス目で記録されている。
【0123】
図22(a)は、1パス目に対し2パス目の記録位置がX方向に+42μmずれた場合を示している。また、
図22(b)は、1パス目に対し2パス目の記録位置がX方向に-42μmずれた場合を示している。ずれが発生していない
図20(c)のドットパターンと比較すると、ドットの分散性が低下していることがわかる。
【0124】
本実施形態においては、上記実施形態で説明した時分割駆動に伴う記録位置ずれに加え、
図22で説明したような記録走査間の記録位置ずれも、画像上で目立たなくするための制御を行う。
【0125】
<画像処理の流れ>
図23は、本実施形態で実行する画像処理の工程を説明するためのフローチャートである。ステップS2301の色補正処理とステップS2302の色分解処理は、
図7で説明した第1の実施形態のステップS701の色補正処理とステップS702の色分解処理と同様であるため、ここでの説明は割愛する。
【0126】
ステップS2303において、主制御部308は、8bit256階調のC1、M1、Y1、K1データに対して分割処理を行う。そして、往路走査用の濃度データC1_1、M1_1、Y1_1、K1_1と、復路走査用の濃度データC1_2、M1_2、Y1_2、K1_2とを生成する。この際、主制御部308は、C1、M1、Y1、K1データが示す各色の濃度値を、ほぼ均等に2分割すればよい。
【0127】
以降は、各インク色について同じ処理が並行して行われる。よって、ここでは簡単のためシアンデータ(C1_1,C1_2)についてのみ説明する。
【0128】
ステップS2304-1、S2304-2において、主制御部1308は、濃度値C1_1,C1_2のそれぞれに対し階調補正処理を行う。階調補正処理の内容は、第1の実施形態のS703と同様であるため、ここでの説明は割愛する。ステップS2304-1、S2304-2の階調補正処理により、8ビット256階調の濃度値C1_1,C1_2は、8ビット256階調の濃度値C2_1,C2_2にそれぞれ変換される。
【0129】
ステップS2305-1、S2305-2において、主制御部308は、濃度値C2_1,C2_2のそれぞれに対し所定の量子化処理を行い、往路走査の量子化値C3_1及び復路走査用の量子化値C3_2を生成する。量子化値C3_1は、往路走査について各画素の記録(1)又は非記録(0)を示す1ビット2値データである。量子化値C3_2は、復路走査について各画素の記録(1)又は非記録(0)を示す1ビット2値データである。なお、ここでは説明を簡単にするため、量子化値C3_1及びC3_2を記録(1)又は非記録(0)を示す2値データとしたが、量子化値は3値以上であってもよい。主制御部308は、ステップS2305-1、S2305-2で生成された量子化データC3-1、C3-2を記録装置2に送信する。
【0130】
ステップS2306-1、S2306-2において、記録装置2のコントローラ301は、ノズル列展開処理を行う。即ち、予め用意したインデックスパターンを用い、600dpi×600dpiの量子化値C3_1及びC3_2を、600dpi×1200dpiのノズル階調値C4_1及びC4_2に変換する。このノズル列展開処理により、X方向1画素×Y方向1画素の領域が、X方向1画素×Y方向2画素の領域に分割され、それぞれの画素についてドットの記録(1)又は非記録(0)が設定される。
【0131】
なお、上記フローチャートでは、色分解処理と階調補正処理の間で、往路走査用と復路走査用にデータを分割するための分割処理を行ったが、分割処理は階調補正の後に行ってもよい。この場合、階調補正処理において、往路走査用の1次元のルックアップテーブルと復路走査用の1次元ルックアップテーブルを予め用意し、階調補正処理と分割処理とを同時に行ってもよい。
【0132】
<双方向のマルチパス記録について>
図24は、記録装置2において、コントローラ301の制御の下で実行される、本実施形態の2パスマルチパス記録を説明するための模式図である。第1、第2の実施形態では、個々の記録走査のための記録データをマスクパターンMp1、Mp2を用いて生成した。これに対し、本実施形態では、マスクパターンMp1、Mp2は使用せず、
図23のステップS2306-1で生成されたノズル階調値C4_1に従って往路走査を行い、ステップS2306-2で生成されたノズル階調値C4_2に従って往路走査を行う。以下、
図12で説明したマルチパス記録と異なる点のみを説明する。
【0133】
第1記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を往路方向即ち+X方向に移動させながら、第1分割領域を用い、記録データC4_1に従った吐出動作を行う。その後、コントローラ301は、記録媒体を64画素分だけ+Y方向に搬送する。
【0134】
第2記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を復路方向即ち-X方向に移動させながら、第1分割領域と第2分割領域を用い、記録データC4_2に従った吐出動作を行う。その後、コントローラ301は、記録媒体を64画素分だけ+Y方向に搬送する。
【0135】
第3記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を再び往路方向即ち+X方向に移動させながら、第1分割領域と第2分割領域を用い、記録データC4_1に従った吐出動作を行う。その後、コントローラ1301は、記録媒体を64画素分だけ+Y方向に搬送する。
【0136】
以後、以上説明したような、記録データC4_1に従う往路走査と記録データC4_2に従う復路走査を、64画素分の搬送動作を介在させながら交互に繰り返し行う。これにより、記録媒体の各単位領域には、往路走査によって記録されたドットパターンと、復路走査によって記録されたドットパターンとが重ねて記録されることになる。
【0137】
図25(a)及び(b)は、
図17で説明した時分割駆動制御の下、キャリッジ106を+X方向に移動させた場合と-X方向に移動させた場合の、記録媒体に形成されるドットパターンを比較する図である。
図25(a)は、キャリッジ106を+X方向に移動させた場合に形成されるドットパターンであり、
図25(b)は、キャリッジ106を-X方向に移動させた場合に形成されるドットパターンである。これら2つのドットパターンは、X方向において対称な関係を有している。
【0138】
<閾値マトリクスとインデックスパターン>
図26は、本実施形態で使用する閾値マトリクスとインデックスパターンを示す図である。第1閾値マトリクス2601は、
図23のステップS2305-1で使用する往路走査用の閾値マトリクスであり、第2閾値マトリクス2602は、ステップS2305-2で使用する復路走査用の閾値マトリクスである。第1閾値マトリクス2601は、
図13(a)で説明した基本閾値マトリクスに対し、
図17の時分割駆動の規則に基づいて、往路走査用のオフセット処理を行ったものである。具体的には、基本閾値マトリクスに対し、隣接ノズル群2に対応する領域では+X方向に1画素分、隣接ノズル群3に対応する領域では+X方向に2画素分、隣接ノズル群4に対応する領域では+X方向に3画素分オフセットしたものである。
【0139】
また、第2閾値マトリクス2602は、
図13(a)で説明した基本閾値マトリクスをX方向に反転した反転基本閾値マトリクスに対し、
図17の時分割駆動の規則に基づいて、復路走査用のオフセット処理を行ったものである。具体的には、反転基本閾値マトリクスに対し、隣接ノズル群2に対応する領域では-X方向に1画素分、隣接ノズル群3に対応する領域では-X方向に2画素分、隣接ノズル群4に対応する領域では-X方向に3画素分オフセットしたものである。閾値マトリクスよりも短い周期の繰り返しパターンが出現するように生成された基本閾値マトリクスを反転して得られる反転基本閾値マトリクスについても、基本閾値マトリクスと同様の繰り返しパターンが出現し、高いドット分散性を実現することができる。
【0140】
一方、第1インデックスパターン2603は、
図23のステップS2306-1で使用する往路走査用のインデックスパターンであり、第2インデックスパターン2604は、ステップS2306-2で使用する復路走査用のインデックスパターンである。第1インデックスパターン2603は、
図18(b)で説明した基本インデックスパターン1800に対し、
図17の時分割駆動の規則に基づいて、往路走査用のオフセット処理を行ったものである。具体的には、隣接ノズル群1に対応する領域では、基本インデックスパターン1800をそのままX方向に繰り返し使用する。隣接ノズル群2に対応する領域では、隣接ノズル群1に対し、基本インデックスパターン1800を+X方向に1画素オフセットして使用する。隣接ノズル群3に対応する領域では、基本インデックスパターン1800を+X方向に2画素オフセットして使用し、隣接ノズル群4に対応する領域では、基本インデックスパターン1800を+X方向に3画素オフセットして使用する。
【0141】
また、第2インデックスパターン2604は、
図18(b)で説明した基本インデックスパターンをX方向に反転した反転基本インデックスパターン2500に対し、
図17の時分割駆動の規則に基づいて、往路走査用のオフセット処理を行ったものである。具体的には、隣接ノズル群1に対応する領域では、反転基本インデックスパターン2500をそのままX方向に繰り返し使用する。隣接ノズル群2に対応する領域では、隣接ノズル群1に対し、反転基本インデックスパターン2500を-X方向に1画素オフセットして使用する。隣接ノズル群3に対応する領域では、反転基本インデックスパターン2500を-X方向に2画素オフセットして使用し、隣接ノズル群4に対応する領域では、反転基本インデックスパターン2500を-X方向に3画素オフセットして使用する。
【0142】
図26の第1閾値マトリクス2601と第1インデックスパターン2603を、往路走査用の画像処理で使用することにより、
図17で説明した時分割駆動の下、
図20(a)に示すドットパターンを記録媒体上に記録することができる。また、第2閾値マトリクス2602と第2インデックスパターン2604を、復路走査用の画像処理で使用することにより、本実施形態の時分割駆動の下、
図20(a)に示すドットパターンを左右に反転させたパターンを記録媒体上に記録することができる。
【0143】
なお、本実施形態においても、実際に量子化処理で使用する閾値マトリクスやインデックスパターンは、必要に応じて生成される形態としてもよい。即ち、メモリには、基本閾値マトリクスと基本インデックスパターンを保存しておき、必要に応じてこれらに反転処理及び所定のオフセット処理を施して、実際に使用する閾値マトリクスや基本インデックスパターンを生成すればよい。
【0144】
<LEv列とLOd列の駆動タイミングの調整>
図27(a)及び(b)は、本実施形態におけるLEv列とLOd列の駆動タイミングの調整を行う様子を説明するための模式図である。
図27(a)は往路走査の駆動タイミング、
図27(b)は復路走査の駆動タイミングをそれぞれ示している。記録ヘッド102には、
図16(c)に示すようにC1列とC2列が配置されている。
【0145】
往路走査においては、まず、LEv列が基準位置に達したタイミングで、LEv列を上述した時分割駆動で駆動する。その後、LOd列が基準位置に達したタイミングでは駆動せず、LOd列が基準位置より(1200dpi+600dpi÷16×2≒26.5um)だけ進んだ位置に達したタイミングで、LOd列を時分割駆動で駆動する。
【0146】
復路走査においては、まず、LOd列が基準位置に達したタイミングでは駆動せず、LOd列が基準位置から(1200dpi+600dpi÷16×2≒26.5um)だけ進んだ位置に達したタイミングで、LOd列を時分割駆動で駆動する。その後、LEv列が基準位置に達したタイミングで、LEv列を時分割駆動で駆動する。
【0147】
なお、以上では、LOd列の駆動タイミングをLEv列に対してずらす内容で説明したが、LOd列に対してLEv列の駆動タイミングをずらしてもよい。また、往路走査と復路走査で、駆動タイミングをずらすノズル列をLEv列とLOd列との間で切り替えてもよい。
【0148】
<記録位置ずれとドットパターンの関係>
図28(a)及び(b)は、本実施形態の量子化処理によって得られる量子化データを示す。
図28(a)は、階調補正処理後の濃度値C2_1が一様に64であった場合に、
図26に示す第1閾値マトリクスを用いて量子化処理を行った結果を示す。第1閾値マトリクスにおいて、64以下の閾値Thが設定されている画素の量子化値が記録(1)となり、図中、黒画素で示している。基本閾値マトリクスを用いて量子化した場合に対し、隣接ノズル群に対応する4ラスタごとに、+X方向に1画素ずつずれた状態となっている。
【0149】
一方、
図28(b)は、階調補正処理後の濃度値C2_2が一様に64であった場合に、
図26に示す第2閾値マトリクス2602を用いて量子化処理を行った結果を示す。第2閾値マトリクスにおいて、64以下の閾値Thが設定されている画素の量子化値が記録(1)となり、図中、黒画素で示している。反転基本閾値マトリクスを用いて量子化した場合に対し、隣接ノズル群に対応する4ラスタごとに、-X方向に1画素ずつずれた状態となっている。
【0150】
既に説明したように、
図26に示す第1閾値マトリクス2601と第2閾値マトリクス2602はX方向に対称な関係を有しているため、
図28(a)及び(b)に示す量子化の結果もX方向に対称な関係を有している。
【0151】
図29は、
図28に示す量子化データに基づき、時分割駆動を行いながら吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンを示す図である。第1ドットパターン2901は、
図28(a)に示す量子化データに基づき、第1インデックスパターン2603に従い、時分割駆動を行いながら往路走査で吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンである。第2ドットパターン2902は、
図28(b)に示す量子化データに基づき、第2インデックスパターン2604に従い、時分割駆動を行いながら復路走査で吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンである。また、合成ドットパターン2903は、第1ドットパターン2901と第2ドットパターン2902をずれの無い状態で合成したドットパターンである。更に、往復ずれドットパターン2904は、第1ドットパターン2901に対し第2ドットパターン2902を+X方向に1200dpiの1画素分(≒21μm)だけずらした状態を示す。
【0152】
本実施形態によれば、第1ドットパターン2901も、第2ドットパターン2902も、高いドット分散性が得られている。そして、どのドットを中心に見ても、周囲のドットとの距離がほぼ一定になっている。また、合成ドットパターン2903と往復ずれドットパターン2904を比較すると、両者はほぼ同型のパターンとなっており、記録媒体に対するドットの被覆面積もほぼ同等である。即ち、往路走査で第1ドットパターン2901を記録し、復路走査で第2ドットパターン2902を記録する本実施形態において、往路走査と復路走査の記録位置が1画素程度ずれたとしても、濃度ムラの無い一様な画像を記録することができる。
【0153】
図30は、
図29に示した本実施形態のドットパターンの比較例を示す図である。ここでは、オフセット処理を施さない基本閾値マトリクスと基本インデックスパターンを用いて量子化処理とノズル展開処理を行い、本実施形態の時分割駆動の下で吐出動作を行った場合を示している。第1ドットパターン3001は往路走査で記録されるドットパターンを示し、第2ドットパターン3002は復路走査で記録されるドットパターンを示している。また、合成ドットパターン3003は、第1ドットパターン3001と第2ドットパターン3002をずれの無い状態で合成したドットパターンを示す。更に、往復ずれドットパターン3004は、第1ドットパターン3001に対し第2ドットパターン3002を+X方向に1200dpiの1画素分(≒21μm)だけずらした状態を示す。
【0154】
本比較例の、第1ドットパターン3001と第2ドットパターン3002においては、隣接ノズル群の境界部分で11区間分のずれが発生し、ドットの分散性が損なわれているのが分かる。即ち、任意のドットに着目した場合、周囲のドットとの距離は一定ではない。また、合成ドットパターン3003と往復ずれドットパターン3004を比較すると、両者のパターンは大きく異なっている。即ち、往路走査で第1ドットパターン3001を記録し、復路走査で第2ドットパターン3002を記録する本比較例において、往路走査と復路走査の記録位置が1画素程度ずれた場合、ドット被覆率やパターンが変化し、濃度ムラの発生が懸念される。
【0155】
図28及び
図29では、階調データがC2_1=C2_2=64である場合について説明したが、無論、本実施形態では、他の濃度値が入力された場合にも上記効果を得ることはできる。
【0156】
図31(a)及び(b)は、32画素×32画素の全てに、C2_1=C2_2=255の階調データが一様に入力された場合の、ステップS2305-1、S2305-2の量子化処理の結果を示す図である。C2_1=C2_2=255の場合、往路走査用の第1閾値マトリクス2601及び復路走査用の第2閾値マトリクス2602において、全ての画素の量子化値が記録(C3_1=1、C3_2=1)となる。
【0157】
図32は、
図31に示す量子化データに基づき、時分割駆動を行いながら吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンを示す図である。第1ドットパターン3201は、
図31(a)に示す量子化データに基づき、第1インデックスパターン2603に従い、時分割駆動を行いながら往路走査で吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンである。第2ドットパターン3202は、
図31(b)に示す量子化データに基づき、第2インデックスパターン2604に従い、時分割駆動を行いながら復路走査で吐出動作を行った場合に、記録媒体に形成されるドットパターンである。また、合成ドットパターン3203は、第1ドットパターン3201と第2ドットパターン3202をずれの無い状態で合成したドットパターンをである。更に、往復ずれドットパターン3204は、第1ドットパターン3201に対し第2ドットパターン3202を+X方向に1200dpiの1画素分(≒21μm)だけずらした状態を示す。
【0158】
第1ドットパターン3201も、第2ドットパターン3202も、閾値マトリクスよりも短い周期を有するパターンがXY方向に繰り返し配置され、高いドット分散性が得られている。また、合成ドットパターン3203と往復ずれドットパターン3204を比較すると、両者はほぼ同型のパターンとなっており、記録媒体に対するドットの被覆面積も同等である。即ち、本実施形態によれば、このような高い階調領域であっても、往路走査と復路走査の記録位置ずれによらず、濃度ムラの無い一様な画像を記録することができる。
【0159】
図33は、
図32に示したドットパターンの比較例を示す図である。ここでは、C2_1=C2_2=255の階調データが一様に入力された場合において、オフセット処理を施さない基本閾値マトリクスと基本インデックスパターンを用いて量子化処理とノズル展開処理を行った場合を示している。第1ドットパターン3301は往路走査で記録されるドットパターンであり、第2ドットパターン3302は復路走査で記録されるドットパターンである。また、合成ドットパターン3303は、第1ドットパターン3301と第2ドットパターン3302をずれの無い状態で合成したドットパターンを示す。更に、往復ずれドットパターン3304は、第1ドットパターン3301に対し第2ドットパターン3002を+X方向に1200dpiの1画素分(≒21μm)だけずらした状態を示す。
【0160】
本比較例の、第1ドットパターン3301と第2ドットパターン3302においては、隣接ノズル群の境界部分で11区間分のずれが発生し、ドットの分散性が崩れている。また、合成ドットパターン3303と往復ずれドットパターン3304を比較すると、両者のパターンは異なっている。即ち、往路走査で第1ドットパターン3301を記録し、復路走査で第2ドットパターン3302を記録する本比較例において、往路走査と復路走査の記録位置が1画素程度ずれた場合、ドット被覆率やパターンが変化し濃度ムラなどが検知されるおそれが生じる。
【0161】
以上説明したように本実施形態によれば、双方向のマルチパス記録で時分割駆動を行う際のドット着弾位置に基づいて、
図29の第1ドットパターン2901及び第2ドットパターン2902が得られるような閾値マトリクスとインデックスパターンを用意する。詳しくは、所定の階調値(例えばC2_1=C2_2=64)において、
図29で説明した第1ドットパターン2901、第2ドットパターン2902のような格子パターンが得られるような、閾値マトリクスとインデックスパターンを用意する。そして、これらを基本閾値マトリクスと基本インデックスパターンとして設定する。
【0162】
その上で、これら基本閾値マトリクスと基本インデックスパターンに対し、時分割駆動に基づいて往路走査用のオフセット処理および復路走査用のオフセット処理を施し、得られた閾値マトリクスとインデックスパターンを用いて
図23に従った画像処理を行う。これにより、分散性に優れ、且つ往復走査間の記録位置ずれに対して耐性のある合成ドットパターンを、各階調で記録することが可能となる。
【0163】
(第3の実施形態の変形例)
上記実施形態では、2パス双方向のマルチパス記録を行う場合を例に説明した。しかしながら、記録ヘッドの記録走査と記録媒体の搬送動作を交互に繰り返すマルチパス記録においては、搬送誤差のばらつきに伴って単位領域の境界に黒スジや白スジが発生する場合がある。例えば、搬送量が設計値よりも大きくなった場合は境界に白スジが発生し、搬送量が設計値よりも少なくなった場合は黒スジが発生する。本変形例では、このよう搬送量のばらつきに伴う黒スジや白スジを目立たなくするために、単位領域間の境界部分に対してのみ3パスのマルチパス記録を行う記録制御について説明する。
【0164】
図34は、本変形例におけるマルチパス記録を説明するための模式図である。本変形例においては、ノズル列202に含まれる128個のノズルをR1~R3の3つの領域に分割する。具体的には、搬送方向において1番目~16番目のノズルを領域R1、17番目~112番目のノズルを領域R2、113番目~128番目のノズルを領域R3とする。
【0165】
第1記録走査において、コントローラ301は、記録ヘッド102を往路方向即ち+X方向に移動させながら、領域R1とR2の半分を用いた吐出動作を行う。その後、コントローラ301は、記録媒体を48画素分だけ+Y方向に搬送し、第2記録走査において、記録ヘッド102を復路方向即ち-X方向に移動させながら、領域R1とR2を用いた吐出動作を行う。更に、コントローラ301は、記録媒体を48画素分だけ+Y方向に搬送し、第3記録走査において、記録ヘッド102を往路方向即ち+X方向に移動させながら、領域R1~R3を用いた吐出動作を行う。以後、領域R1~R3を用いた往路走査と復路走査を、64画素分の搬送動作を介在させながら交互に繰り返し行う。
【0166】
図35は、本変形例で使用するインデックスパターンを説明するための図である。本変形例では、領域R1~R3のそれぞれで、
図23のS2306-1及びS2306-2で使用するインデックスパターンを異ならせる。
【0167】
具体的に説明すると、領域R2については、第3の実施形態と同様、往路走査では第1インデックスパターン2603を用い、復路走査では第2インデックスパターン2604を用いる。領域R1については、往路走査ではインデックスパターンA1を用い、復路走査ではインデックスパターンB1を用いる。また、領域R3については、往路走査ではインデックスパターンA2を用い、復路走査ではインデックスパターンB2を用いる。
【0168】
インデックスパターンA1、A2、B1、B2のそれぞれは16×16の画素領域を有し、空白の画素はドットを記録しないことを意味する。16ノズル分の領域を有するR1とR3では、これらインデックスパターンをX方向に繰り返し配列させて使用する。
【0169】
ここで、領域R1で使用するインデックスパターンA1と領域R3で使用するインデックスパターンA2は、端部に近い位置にあるノズルほど吐出頻度が小さくなるように、第1インデックスパターン2603のパラメータを分配したものである。即ち、インデックスパターンA1を用いて得られるドットパターンと、インデックスパターンA2を用いて得られるドットパターンとは、補完の関係を有することになる。
【0170】
同様に、領域R1で使用するインデックスパターンB1と領域R3で使用するインデックスパターンB2は、端部に近い位置にあるノズルほど吐出頻度が小さくなるように、第2インデックスパターン2604のパラメータを分配したものである。即ち、インデックスパターンB1を用いて得られるドットパターンと、インデックスパターンB2を用いて得られるドットパターンとは、補完の関係を有することになる。
【0171】
ここで、再び
図34を参照する。記録媒体において、第1単位領域と第2単位領域の間の第1境界領域は、領域R1による往路走査と領域R2による復路走査と領域R3による往路走査によって記録される。領域R1の往路走査と領域R3の往路走査の補完によって往路走査用のドットパターンが完成するため、第1境界領域において他の単位領域と同様の画像を記録することができる。
【0172】
また、第2単位領域と第3単位領域の間の第2境界領域は、領域R1による復路走査と領域R2による往路走査と領域R3による復路走査によって記録される。領域R1の復路走査と領域R3の復路走査の補完によって復路走査用のドットパターンが完成するため、第2境界領域においても他の単位領域と同様の画像が記録される。
【0173】
このような本変形例によれば、端部に近い位置にあるノズルほど吐出頻度が小さくなるように制御されるため、搬送動作にばらつきが生じても、境界における黒スジや白スジの発生を抑えることができる。
【0174】
以上では、1画素の吐出動作に要する時間を16分割したものを1期間とし、同じ隣接ノズル群の中では4期間おきに順次駆動し、隣接ノズル群間の境界では11期間をおいて駆動する形態とした。しかしながら、時分割制御において、1画素の吐出動作に要する時間の分割数や、同じ隣接ノズル群の中で順次駆動する期間、及び隣接ノズル群間の境界での駆動期間は、上記に限定されるものではない。1画素の吐出動作に要する時間をN期間に分割したとき、同じ隣接ノズル群の中ではK期間(K<N)おきに順次駆動し、隣接ノズル群間の境界ではL期間(N/2<L<N)をおいて駆動する形態であればよい。この形態であれば、基本閾値マトリクスに対し、1画素分オフセットさせた閾値マトリクスを用いることの効果を発揮させることができる。
【0175】
(その他の実施形態)
以上の実施形態では、1画素の吐出動作に要する時間をN期間に分割したとき、同じ隣接ノズル群の中ではK期間(K<N)おきに順次駆動し、隣接ノズル群間の境界ではL期間(N/2<L<N)をおいて駆動する場合について説明した。しかしながら、上記実施形態で説明した、1画素の吐出動作に要する時間の分割数や、同じ隣接ノズル群の中で順次駆動する期間、及び隣接ノズル群間の境界での駆動期間は、ほんの一例にすぎない。1画素の吐出動作に要する時間をN期間に分割したとき、同じ隣接ノズル群の中ではK期間(K<N)おきに順次駆動し、かつ1セクションの中に隣接ノズル群がK個存在するような形態であればよい。この形態であれば、基本閾値マトリクスに対し、1画素分オフセットさせた閾値マトリクスを用いることの効果を発揮させることができる。
【0176】
以上の実施形態では、
図1に示したシリアル型のインクジェット記録装置を用い2パスのマルチパス記録を行う場合を例に説明したが、本発明はこのような形態に限定されない。マルチパス記録は行わない1パス記録であってもよいし、3パス以上のマルチパス記録であってもよい。また、フルライン型のインクジェット記録装置においても、時分割駆動は有用されており、上記と同様の問題が提起される。このため、時分割駆動に基づくオフセット処理を施した閾値マトリクスを使用するという上記実施形態の記録制御は、フルライン型のインクジェット記録装置であっても、有効に機能させることができる。
【0177】
以上では、
図7及び
図23で説明した一連の画像処理において、量子化処理までの工程を画像処理装置1が行い、ノズル列展開処理以降を記録装置2が行う内容で説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。ノズル列展開処理までの工程を画像処理装置が行ってもよいし、図に示した全ての工程を、インクジェット記録装置のコントローラ301が実行してもよい。いずれにしても、所定の時分割駆動制御を行う機能と、その時分割制御の下で画像を記録するために、上述したようなオフセット処理が施された閾値マトリクスを用いて記録データ生成処理を行う機能とを備えたシステムが、本発明の画像記録装置となる。すなわち、上記第1~第3の実施形態の場合は、画像処理装置1と記録装置2を含めたシステム全体が本発明の画像記録装置となる。
【0178】
また、上記実施形態の画像処理の各工程で示した入出力データのビット数や解像度は一例であり、ビット数や解像度は状況に応じて様々に変更することができる。また、記録装置の色数も上記実施形態に限定されない。ライトシアンやライトマゼンタなどの同系色で濃度の違うもの、レッド、グリーン、ブルーなどの特色を使用する記録装置であってもよい。この場合、色分解処理においては、その色数に対応した種類の階調データを生成すればよく、以降の処理では上述した画像処理を色ごとに行えばよい。
【0179】
また、以上の実施形態では、ヒータに電圧パルスを印加することによりインクを吐出させるサーマルジェット型の記録ヘッドを用いたが、上記実施形態のいずれにおいても、吐出形式は特に限定されるものではない。例えば、圧電素子を利用してインクの吐出を行ういわゆるピエゾ型のインクジェット記録装置等、様々な記録装置に対して有効に適用できる。
【0180】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 画像処理装置
2 インクジェット記録装置
102 記録ヘッド