(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16H 37/12 20060101AFI20240508BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20240508BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16H37/12 Z
B65H3/06 350Z
G03G21/16 147
G03G21/16 180
G03G21/16 195
(21)【出願番号】P 2020132479
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千野 英人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊介
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-151655(JP,A)
【文献】特開2016-175719(JP,A)
【文献】特開2004-083167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0007706(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/12
B65H 3/06
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力を被駆動部材へ伝達する駆動列に設けられる駆動伝達装置であって、
前記駆動源と連結されて回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合う複数の歯を有するギア部と、前記駆動ギアと噛み合う歯がない領域である欠歯部と、を備え、前記ギア部が前記駆動ギアに噛み合うことにより回転し、前記欠歯部が前記駆動ギアに対向することにより回転を停止する従動ギアと、
前記従動ギアの回転に連動して回転する第1カム部材と、
前記従動ギアの回転に連動して回転する第2カム部材と、
前記第1カム部材に付勢力を付与する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1カム部材に当接する第1当接部と、
第2弾性部材により付勢されて、前記第2カム部材によって移動されるフォロワ部材と、
を有し、
前記第1カム部材は、(i)前記欠歯部が前記駆動ギアに対向するときに、前記従動ギアの回転が制限されるように、前記第1当接部と当接するホームカム面と、(ii)前記従動ギアの回転に応じて前記第2弾性部材の弾性力が開放されるときに、前記第1当接部と当接するキャンセルカム面と、を含み、
前記キャンセルカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1弾性部材の弾性力がチャージされるように前記第1当接部と当接することを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記キャンセルカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1カム部材の回転中心からの半径が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第1カム部材は、前記従動ギアの回転に応じて前記第2弾性部材の弾性力がチャージされるときに、前記第1当接部と当接するアシストカム面を含み、前記アシストカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1弾性部材の弾性力が開放されるように前記第1当接部と当接することを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記アシストカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1カム部材の回転中心からの半径が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記ホームカム面は、第1ホームカム面、第2ホームカム面、第3ホームカム面を含み、前記第1ホームカム面、前記第2ホームカム面、前記第3ホームカム面は、第1カム部材の回転方向に並べられ、
前記キャンセルカム面は、前記第1ホームカム面と前記第2ホームカム面の間に設けられた第1キャンセルカム面と、前記第2ホームカム面と前記第3ホームカム面の間に設けられた第2キャンセルカム面と、を含み、
前記アシストカム面は、前記第3ホームカム面と前記第1ホームカム面の間に設けられることを特徴とする請求項3に記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
前記第1キャンセルカム面と前記第2キャンセルカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1カム部材の回転中心からの半径が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記従動ギアの回転に応じた前記第2キャンセルカム面の半径の増加量は、前記従動ギアの回転に応じた前記第1キャンセルカム面の半径の増加量よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の駆動伝達装置。
【請求項8】
前記第1カム部材と前記第2カム部材は一体的に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項9】
前記従動ギアと前記第1カム部材と前記第2カム部材は一体的に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の駆動伝達装置。
【請求項10】
請求項1に記載の駆動伝達装置と、
画像を形成する画像形成部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
記録材を積載する積載部と、
前記積載部から前記記録材を搬送するローラを備え、
前記フォロワ部材の移動に連動して、前記ローラが移動することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
ベルトと転写部材を含む中間転写ユニットを備え、前記フォロワ部材の移動に連動して、前記転写部材が移動することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項13】
駆動源からの駆動力を被駆動部材へ伝達する駆動列に設けられる駆動伝達装置であって、
前記駆動源と連結されて回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合う複数の歯を有するギア部と、前記駆動ギアと噛み合う歯がない領域である欠歯部と、を備え、前記ギア部が前記駆動ギアに噛み合うことにより回転し、前記欠歯部が前記駆動ギアに対向することにより回転を停止する従動ギアと、
前記従動ギアの回転に連動して回転する第1カム部材と、
前記従動ギアの回転に連動して回転する第2カム部材と、
前記第1カム部材に付勢力を付与する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1カム部材に当接する第1当接部と、
第2弾性部材により付勢されて、前記第2カム部材によって移動されるフォロワ部材と、
を有し、
前記第1カム部材は、(i)前記欠歯部が前記駆動ギアに対向するときに、前記従動ギアの回転が制限されるように、前記第1当接部と当接するホームカム面と、(ii)前記従動ギアの回転に応じて前記第2弾性部材の弾性力がチャージされるときに、前記第1当接部と当接するアシストカム面と、を含み、
前記アシストカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1弾性部材の弾性力が開放されるように前記第1当接部と当接することを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項14】
前記アシストカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1カム部材の回転中心からの半径が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項13に記載の駆動伝達装置。
【請求項15】
前記第1カム部材と前記第2カム部材は一体的に構成されていることを特徴とする請求項13に記載の駆動伝達装置。
【請求項16】
前記従動ギアと前記第1カム部材と前記第2カム部材は一体的に構成されていることを特徴とする請求項15に記載の駆動伝達装置。
【請求項17】
請求項13に記載の駆動伝達装置と、
画像を形成する画像形成部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
記録材を積載する積載部と、
前記積載部から前記記録材を搬送するローラを備え、
前記フォロワ部材の移動に連動して、前記ローラが移動することを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
ベルトと転写部材を含む中間転写ユニットを備え、前記フォロワ部材の移動に連動して、前記転写部材が移動することを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項20】
駆動源からの駆動力を被駆動部材へ伝達する駆動列に設けられる駆動伝達装置であって、
前記駆動源と連結されて回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合う複数の歯を有するギア部と、前記駆動ギアと噛み合う歯がない領域である欠歯部と、を備え、前記ギア部が前記駆動ギアに噛み合うことにより回転し、前記欠歯部が前記駆動ギアに対向することにより回転を停止する従動ギアと、
前記従動ギアの回転に連動して回転する第1カム部材と、
前記従動ギアの回転に連動して回転する第2カム部材と、
前記第1カム部材に付勢力を付与する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1カム部材に当接する第1当接部と、
第2弾性部材により付勢されて、前記第2カム部材によって移動されるフォロワ部材と、
を有し、
前記第1カム部材は、(i)前記欠歯部が前記駆動ギアに対向するときに、前記従動ギアの回転が制限されるように、前記第1当接部と当接するホームカム面と、(ii)キャンセルカム面とアシストカム面の少なくとも一つを含み、
前記キャンセルカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第2弾性部材の弾性力が開放されるときに、前記従動ギアの回転に応じて前記第1弾性部材の弾性力がチャージされるように前記第1当接部と当接し、
前記アシストカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第2弾性部材の弾性力がチャージされるときに、前記従動ギアの回転に応じて前記第1弾性部材の弾性力が開放されるように前記第1当接部と当接することを特徴とする駆動伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの駆動力を被駆動部材へ伝達する駆動伝達装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置には、駆動源からの駆動力を、部分的に歯が欠けた欠歯ギアを用いた駆動伝達装置によって、被駆動部材に伝達させて駆動させる構成がある。
【0003】
特許文献1には、前述の駆動伝達装置によって、被駆動部材としてのピックローラを回転駆動させることや、ピックローラを退避位置から給送位置へと移動させるピックアームを動作させることが開示されている。
【0004】
具体的には、特許文献1では、被駆動部材としてのピックローラは、軸回りに回動可能なピックアームにより保持されており、給送モータにより駆動される。ピックアームは、ピックローラを退避位置から給送位置へとリフトダウンさせるカムにより回転運動が制御されている。
【0005】
シートの給送指令が行われると、ソレノイドが作動し、トリガバネによって付勢されるトリガ部材により、トリガカムが回動する。ピックアームを動作させるカムは、トリガカムと同期して回転するように係合部を有し、トリガカムと連動して回動する。
【0006】
そして、トリガカムに連動してカムが所定量回動すると、カムと同期して回転する部分的に歯が欠けた欠歯ギアが、給送モータにより駆動される連結ギアと噛み合い、回転を始める。これによりカムがさらに回転し、給送バネによって付勢されているピックアームが、カムの外周面に摺接しながらリフトダウンする。そして、ピックローラが給送位置まで移動し、カセット内に積載されたシート束の最上位のシートに接し、シートの給送を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、カムの回転によってピックアームが退避位置から給送位置へと下降動作を開始する際に、ピックアームを付勢している給送バネが伸長され、その弾性力が開放される。すると、この給送バネの弾性力によって、カムに対してカムの回転方向に作用する逆入力トルクが発生する。この逆入力トルクが発生すると、欠歯ギアと連結ギアとの歯車噛み合いのバックバッシュが詰まったり、ピックアームが急動作することによる打突音が発生しやすくなる。
【0009】
一方、カムの回転によってピックアームが給送位置から退避位置へと上昇動作を開始する際に、ピックアームを付勢している給送バネが圧縮され、その弾性力がチャージされる。すると、この給送バネが圧縮される力によって、カムに対してカムの回転方向とは逆方向に作用する駆動トルクが発生する。
【0010】
本発明の目的は、駆動源からの駆動力を受けて回転されるカム部材のトルク変動を、専用部材を配設することなく低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な構成は、駆動源からの駆動力を被駆動部材へ伝達する駆動列に設けられる駆動伝達装置であって、前記駆動源と連結されて回転する駆動ギアと、前記駆動ギアと噛み合う複数の歯を有するギア部と、前記駆動ギアと噛み合う歯がない領域である欠歯部と、を備え、前記ギア部が前記駆動ギアに噛み合うことにより回転し、前記欠歯部が前記駆動ギアに対向することにより回転を停止する従動ギアと、前記従動ギアの回転に連動して回転する第1カム部材と、前記従動ギアの回転に連動して回転する第2カム部材と、前記第1カム部材に付勢力を付与する第1弾性部材と、前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1カム部材に当接する第1当接部と、第2弾性部材により付勢されて、前記第2カム部材によって移動されるフォロワ部材と、を有し、前記第1カム部材は、(i)前記欠歯部が前記駆動ギアに対向するときに、前記従動ギアの回転が制限されるように、前記第1当接部と当接するホームカム面と、(ii)前記従動ギアの回転に応じて前記第2弾性部材の弾性力が開放されるときに、前記第1当接部と当接するキャンセルカム面と、を含み、前記キャンセルカム面は、前記従動ギアの回転に応じて前記第1弾性部材の弾性力がチャージされるように前記第1当接部と当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動源からの駆動力を受けて回転されるカム部材のトルク変動を低減することができる。
【0013】
また、第1弾性部材の付勢力を、従動ギアの欠歯部が駆動ギアに対向するときに、従動ギアの回転を制限する以外に、カム部材のトルク変動の低減にも利用するため、専用部材を配設する必要がなく、部品点数が増加することがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図6】(a)(b)第1クラッチにおける従動ギアの斜視図
【
図7】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図8】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図9】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図10】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図11】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図12】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図13】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図14】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図15】(a)第1クラッチを表側から見た図、(b)第1クラッチを裏側から見た図
【
図16】(a)(b)第2クラッチにおける従動ギアの斜視図
【
図17】(a)第2クラッチを表側から見た図、(b)第2クラッチを裏側から見た図
【
図18】(a)第2クラッチを表側から見た図、(b)第2クラッチを裏側から見た図
【
図19】(a)第2クラッチを表側から見た図、(b)第2クラッチを裏側から見た図
【
図20】(a)第2クラッチを表側から見た図、(b)第2クラッチを裏側から見た図
【
図21】(a)第2クラッチを表側から見た図、(b)第2クラッチを裏側から見た図
【
図27】(a)(b)第3クラッチにおけるカム部材の斜視図
【
図28】(a)第3クラッチを表側から見た図、(b)第3クラッチを裏側から見た図
【
図29】(a)第3クラッチを表側から見た図、(b)第3クラッチを裏側から見た図
【
図30】(a)第3クラッチを表側から見た図、(b)第3クラッチを裏側から見た図
【
図31】(a)第3クラッチを表側から見た図、(b)第3クラッチを裏側から見た図
【
図32】カム部材の回転トルクと第2カム部のカム半径との関係図
【
図33】第1給送部および第2給送部を備えた画像形成装置の概略断面図
【
図34】(a)(b)画像形成装置における中間転写ユニットの交換説明図
【
図35】(a)(b)中間転写ユニットにおける内部の動作説明図
【
図36】(a)(b)中間転写ユニットにおける内部の動作説明図
【
図37】(a)(b)中間転写ユニットにおける内部の動作説明図
【
図40】従動ギアの回転トルクとカム部のカム半径との関係図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
〔第1実施形態〕
以下に、第1実施形態に係る駆動伝達装置及びそれを備える画像形成装置について説明する。
【0017】
[画像形成装置]
まず、
図33を用いて画像形成装置の概略構成と一連の画像形成動作について説明する。
図33は、4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックB)のトナー画像を形成する画像形成部を各々備えたフルカラーレーザビームプリンタ(以下、「画像形成装置100」と称す)の全体構成を示す概略断面図である。
【0018】
図33に示すように、画像形成装置100は、水平方向に並設された4個のカートリッジ101(101Y,101M,101C,101B)を備えている。カートリッジ101は、感光ドラム102(102Y,102M,102C,102B)と、帯電ローラ103(103Y,103M,103C,103B)と、現像ローラ104(104Y,104M,104C,104B)を一体的に備えている。帯電ローラ103は、感光ドラム102の周囲に設けられ、感光ドラム102表面を均一に帯電する。現像ローラ104は、感光ドラム102の周囲に設けられ、感光ドラム102にトナーを付着させてトナー像として現像する。また、カートリッジ101内部には、所定色のトナー(図中不示)が収納されている。カートリッジ101の内部に収納されたトナーは、それぞれ供給ローラ105(105Y,105M,105C,105B)の回転によって現像ローラ104の表面に供給される。
【0019】
ベルト106は、無端ベルト状であり、駆動ローラ106aと従動ローラ106bとテンションローラ106cに掛け回されており、その表面にトナー像を担持可能な中間転写体としての像担持体である。また、ベルト106は駆動ローラ106aが反時計回り方向に回転することにより回転駆動し、ベルト106の表面を移動させる。
【0020】
ベルト106の周囲には、感光ドラム102に対向した位置に、感光ドラム102表面のトナー像をベルト106に転写する4個の一次転写ローラ106dが配設されている。またベルト106の周囲には、ベルト106表面に残留した転写残トナーを除去するクリーニング装置107が配設されている。
【0021】
前記ベルト106、駆動ローラ106aと従動ローラ106bとテンションローラ106c、4個の一次転写ローラ106d、及びクリーニング装置107は、画像形成装置100に対して着脱可能な中間転写ユニットTとして構成されている。
【0022】
記録材Sへの画像形成動作について説明する。画像形成装置100は、カセット109に収納された記録材Sを、レジストレーションローラ112に向けて1枚ずつ給送する第1給送部F1を備えている。第1給送部F1は、ピックローラ108と、給送ローラ110と、分離ローラ111と、を有している。第1給送部F1において、ピックローラ108をカセット109に収納された記録材Sから退避した位置より下降させて記録材Sに当接させたあと、反時計回り方向に回転させて記録材Sを給送ローラ110と分離ローラ111に給送する。ピックローラ108により繰り出された記録材Sは、分離ローラ111により1枚ずつに分離され、給送ローラ110によりレジストレーションローラ112へ搬送される。
【0023】
記録材Sは、レジストレーションローラ112によってベルト106表面に形成するトナー画像の形成動作と同期して、ベルト106の表面に対して当接離間可能な二次転写ローラ113に搬送される。
【0024】
一方、記録材Sが給送される動作と同期して、感光ドラム102は時計回り方向に回転しながら帯電ローラ103により表面を均一に帯電される。更に、感光ドラム102は時計回り方向に回転しながら、画像信号に応じた光を照射するレーザスキャナ114(114Y,114M,114C,114B)により露光され、静電潜像が形成される。
【0025】
感光ドラム102に形成された静電潜像は現像ローラ104によって現像されてトナー像として可視化される。感光ドラム102はベルト106に接触しており、感光ドラム102表面のトナー像は一次転写ローラ106dによってベルト106に順次多重転写(一次転写)される。
【0026】
その後、ベルト106に多重に現像されたトナー像は、駆動ローラ106aと二次転写ローラ113の間までベルト106とともに移動した後、二次転写ローラ113によって記録材S上に一括して転写(二次転写)される。記録材Sに転写されたトナー像は、トナー定着手段である定着ローラ対115へ搬送され、定着ローラ対115のニップ部を通過する際に、記録材Sに加熱加圧され定着される。そして、記録材Sは、排出ローラ対116を介して画像形成装置100上部の排出トレイ117へトナー像面を下向きにして排出され、画像形成動作が終了する。
【0027】
[第1給送部F1]
次に、
図1~
図3を用いて第1給送部F1について説明する。
図1は第1給送部F1の斜視図であり、
図2は、第1給送部F1の組み立て前の斜視図である。
図3は第1給送部F1の動作説明図であり、
図3(a)はピックローラが上昇位置にある図、
図3(b)はピックローラが下降位置にある図である。ここで、ピックローラの上昇位置とは、ピックローラ108がカセット109から退避した退避位置(
図33に示す破線位置)である。また、ピックローラの下降位置とは、ピックローラ108がカセット109に収納された記録材のうち最上位の記録材に当接された給送位置(
図33に示す実線位置)である。
【0028】
図1と
図2に示すように、第1給送部F1は、ピックローラ108と、給送ローラ110と、分離ローラ111と、を有している。
【0029】
第1給送部F1において、歯車部108aを備えたピックローラ108と、歯車部110aを備えた給送ローラ110と、ローラアイドラギア118は、それぞれの歯車が噛合うように、ローラホルダ119に回転可能に収納されている。給送ローラ110の近傍には分離ローラ111が回転自在に配設されている。アイドラギア120はローラ駆動ギア121と噛合っており、給送ローラ110はローラ駆動ギア121の軸121aと連結されていて、アイドラギア120が回転すると給送ローラ110とピックローラ108が回転する。
【0030】
ピックアーム122は、一端が固定されたピックバネ123の他端が収納されるボス122aと、回転するピックカム124gに当接して動作するフォロワ部122bと、ローラホルダ119と係合する係合部122cを備えている。ローラホルダ119とピックアーム122は、ローラ駆動ギア121の軸121a上に揺動可能に保持されている。ピックアーム122がピックカム124gの回転によって軸121aを中心に揺動すると、ローラホルダ119も連動して揺動する。
【0031】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第2弾性部材であるピックバネ123は、フォロワ部材であるピックアーム122のフォロワ部122bに付勢力を付与している。したがって、ピックバネ123は、フォロワ部122bを介してローラホルダ119を図中下方向(軸121aを中心に反時計回り方向)に付勢している。フォロワ部材であるフォロワ部122bは、第2カム部材であるピックカム124gに当接し、ピックカム124gの回転によりピックバネ123の弾性力を開放またはチャージする方向に動作する。
【0032】
図3(a)においては、ピックカム124gの回転によってピックアーム122のフォロワ部122bがピックバネ123の付勢力に抗して軸121aを中心に時計回り方向に揺動され、ピックアーム122がピックバネ123の弾性力をチャージしている状態である。この状態は、ピックアーム122のフォロワ部122bがピックバネ123を圧縮している状態であり、ローラホルダ119は
図33においてカセット109からピックローラ108を退避した上昇位置(退避位置)にある。
【0033】
また、
図3(b)においては、ピックカム124gが回転され、ピックアーム122のフォロワ部122bがピックバネ123の付勢力によって軸121aを中心に反時計回り方向に揺動され、ピックアーム122がピックバネ123の弾性力を開放している状態である。この状態は、ピックアーム122のフォロワ部122bがピックバネ123を伸長させている状態である。またこの状態では、ローラホルダ119は所定の給送圧であるピックバネ123の付勢力によって
図33において記録材Sにピックローラ108を当接した下降位置(給送位置)にある。
【0034】
このように、ピックカム124gの回転によってピックアーム122が揺動することにより、ローラホルダ119が揺動してピックローラ108が昇降動作する。
【0035】
[第1クラッチCL1]
次に、駆動源からの駆動力を被駆動部材としてのピックローラ108及びピックカム124gへ伝達する駆動列に設けられ、駆動力を伝達または切断する駆動伝達装置としての第1クラッチCL1の構成について、
図4、
図5、
図6を用いて説明する。
【0036】
図4は第1クラッチCL1の斜視図であり、
図4(a)は第1クラッチCL1を軸線方向の一方側(ピックローラ108側とは反対側)から見た斜視図であり、
図4(b)は第1クラッチCL1を軸線方向の他方側(ピックローラ108側)から見た斜視図である。以降は、第1クラッチCL1の軸線方向の一方側を「第1クラッチCL1の表側」とし、第1クラッチCL1の軸線方向の他方側を「第1クラッチCL1の裏側」とする。
図5は第1クラッチCL1の組み立て前の斜視図である。
図6(a)及び
図6(b)は第1クラッチCL1の従動ギア124の斜視図である。
【0037】
図4、
図5、
図6に示すように、第1クラッチCL1は、駆動源Dと常時連結されて回転する駆動ギア125と、駆動ギア125と噛合可能な従動ギア124及びトリガギア126と、トリガバネ127と、を備えている。さらに第1クラッチCL1は、従動ギア124の駆動下流側に、従動ギア124と噛合可能なアイドラギア120を備え、アイドラギア120は
図1に示す第1給送部F1のローラ駆動ギア121と噛合している。また第1クラッチCL1は、トリガギア126の回転を規制する規制手段であるソレノイド128と、レバー部材129に付勢力を付与する第1弾性部材であるホームバネ130と、を備えている。第1弾性部材であるホームバネ130は、レバー部材129に付勢力を付与し、レバー部材129を後述する従動ギア124のホームカム124bの外周面に当接させる。
【0038】
さらに第1クラッチCL1は、従動ギア124の回転に連動して回転する第1カム部材であるホームカム124b及び第2カム部材であるピックカム124gを備えている。後述するが、本実施形態では、ホームカム124bとピックカム124gは、従動ギア124に一体的に構成され、従動ギア124とともに回転する。
【0039】
駆動源Dからの駆動力は、第1クラッチCL1の駆動ギア125、従動ギア124、アイドラギア120を介してローラ駆動ギア121へ伝達され、
図1中のピックローラ108と給送ローラ110を回転させる。
【0040】
トリガギア126は、駆動ギア125と噛合するギア部126aと、ソレノイド128の係止爪128aが係止して回転が規制される係止部126bと、駆動ギア125と噛合しない欠歯部126cと、を備えている。トリガギア126は、トリガバネ127が配設されるボス126dを一体的に備えている。ギア部126aは駆動ギア125の歯と噛み合う複数の歯を有し、36歯相当の歯数直径を有している。欠歯部126cは、ギア部126aの一部に設けられ、駆動ギア125の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部126aの3歯数に相当する欠歯形状である。
【0041】
従動ギア124は、駆動ギア125と噛合するギア部124aと、レバー部材129が当接して従動ギア124にホームバネ130の付勢力が付与される第1カム部材であるホームカム124bと、駆動ギア125と噛合しない欠歯部124cと、を備えている。ギア部124aは駆動ギア125の歯と噛み合う複数の歯を有し、36歯相当の歯数直径を有している。欠歯部124cは、ギア部124aの一部に設けられ、駆動ギア125の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部124aの3歯数に相当する欠歯形状である。さらに従動ギア124は、トリガバネ127が配設されるボス124dと回転軸部124eを備えている。
【0042】
さらに従動ギア124は、アイドラギア120と噛合するギア部124fと、ピックアーム122のフォロワ部122bが当接する第2カム部材であるピックカム124gと、アイドラギア120と噛合しない欠歯部124hと、を備えている。ギア部124fはアイドラギア120の歯と噛み合う複数の歯を有し、36歯相当の歯数直径を有している。欠歯部124hは、ギア部124fの一部に設けられ、アイドラギア120の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部126aの13歯数に相当する欠歯形状である。
【0043】
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、従動ギア124のホームカム124bには、ホームカム面124b1と、キャンセルカム面124b2が所定の回転位相に設けられている。ホームカム124bは、回転中心からの外周面までの径(以下、カム半径という)が均一のカム面である円弧面(外周面)を有し、このホームカム124bのカム面の一部にホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2が設けられている。ホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2は、ホームカム124bのカム半径が均一のカム面(円弧面)よりも回転中心側に向けて凹形状に設けられている。したがって、ホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2は、いずれも、回転方向上流側にカム半径が小さくなる面を備え、回転方向下流側にカム半径が大きくなる面を備えている。
【0044】
このように従動ギア124は、駆動ギア125と噛み合うギア部124aと、ホームカム124bと、アイドラギア120と噛み合うギア部124fと、ピックカム124gが一体的に構成され、駆動ギア125の駆動力によってそれぞれが同期して回転する。
【0045】
ソレノイド128は、係止爪128aと、戻しバネ128bを備えている。戻しバネ128bは係止爪128aをトリガギア126に向かう方向に付勢している。ソレノイド128に通電しておらず、係止部126bが係止爪128aと対向する位置にある時、係止爪128aは係止部126bを係止してトリガギア126の回転を規制する。ソレノイド128に通電すると、係止爪128aは戻しバネ128bの付勢力に抗してトリガギア126から退避し、それまで係止爪128aで係止部126bを係止していた場合、係止爪128aによるトリガギア126の係止部126bの係止を解除する。
【0046】
トリガバネ127は、一端をトリガギア126のボス126dに固定され、他端をトリガギア126に設けられた貫通孔に挿入された従動ギア124のボス124dに固定されており、従動ギア124に対してトリガギア126の係止部126bを係止爪128a方向に回転するように付勢している。これにより、ソレノイド128に通電して係止爪128aが係止部126bの係止を解除すると、トリガバネ127はトリガギア126に起回転力を与え、トリガギア126のギア部126aと駆動ギア125が噛合する。
【0047】
レバー部材129は、揺動軸129aと、一端が固定されたホームバネ130の他端が収納されるボス129bを備えており、揺動軸129aを回転中心として従動ギア124のホームカム124bに当接しながら揺動する。
【0048】
なお、後述するが、レバー部材129は従動ギア124が所定の回転位相にある時、ホームバネ130の付勢力によってホームカム124bを押圧するよう付勢する。具体的には、従動ギア124が
図15(a)に示す回転位相にある時、レバー部材129はホームバネ130の付勢力によってホームカム面124b1のカム半径が小さくなる面を押圧するように付勢する。これにより、従動ギア124の欠歯部124cが駆動ギア125と対向し、ギア部124aが駆動ギア125から十分な駆動力を得られない時でも、このホームバネ130の押圧力により従動ギア124を回転させることが可能となる。
【0049】
また、従動ギア124がギア部124aと駆動ギア125とが噛み合わない待機状態であるホームポジションにいる際には、レバー部材129は従動ギア124を回転軸部124e中心方向へ付勢するようにホームカム124bに当接する。そのため、ホームバネ130の押圧力によって従動ギア124は回転が制限される。
【0050】
次に、トリガギア126と従動ギア124の配設について説明する。
図5に示すように、トリガギア126は、軸受部126eと複数の溝部126fを有している。軸受部126eは従動ギア124の回転軸部124eに収納される。その際、従動ギア124に備わる複数のキー部124iは、トリガギア126が有する溝部126fに収納される。キー部124iが溝部126fに収納された状態においては、キー部124iと溝部126fの間には遊びがあるように構成されており、トリガギア126は従動ギア124に対し回転軸部124eを中心に遊びの量だけ回転することができる。本実施形態においては、トリガギア126は従動ギア124に対して3歯分の量だけ回転できるように構成される。
【0051】
[第1クラッチCL1の動作]
次に、第1クラッチCL1から第1給送部F1への駆動伝達動作について、
図7~
図15を用いて説明する。
図7~
図15の各図(a)は第1クラッチCL1を表側から見た図であり、
図7~
図15の各図(b)は第1クラッチCL1を裏側から見た図である。
【0052】
図7は、第1クラッチCL1の待機状態を示す。
図8は、第1クラッチCL1のトリガギア126の回転開始時を示す。
図9は、第1クラッチCL1の従動ギア124の回転開始時を示す。
図10、第1クラッチCL1のピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを動作させる位相まで回転した状態を示す。
図11は、ピックアーム122の揺動開始時を示す。
図12は、ピックローラ108が下降位置にある状態を示す。
図13は、ピックローラ108の上昇開始時を示す。
図14は、ピックローラ108の上昇終了時とトリガギア126の停止状態を示す。
図15は、第1クラッチCL1の従動ギア124の回転終了直前状態を示す。
図7~
図15における各部材の回転方向や動作方向は、各部材の近傍に記載した矢印の示す通りである。
【0053】
第1クラッチCL1の待機状態では、
図7(a)、
図7(b)に示すように、駆動ギア125は回転し、レバー部材129はホームカム124bのホームカム面124b1に当接していて従動ギア124を回転軸部124e中心方向へ付勢している。この時、ホームカム124bは、ホームカム面124b1のうち、カム半径が小さくなる面とカム半径が大きくなる面との間の最もカム半径が小さい部分に当接している。この状態において従動ギア124は、欠歯部124cが駆動ギア125と対向するホームポジションに保持されており、駆動ギア125から従動ギア124に駆動力は伝達されない。また従動ギア124の欠歯部124hもアイドラギア120と対向しており、従動ギア124のギア部124fはアイドラギア120と噛合っていない。また、トリガギア126の溝部126fと従動ギア124のキー部124iの間には遊びがある状態にある。
【0054】
また
図7(a)に示すように、トリガギア126はトリガバネ127によって反時計回り方向に回転するよう付勢されているが、係止部126bがソレノイド128の係止爪128aに係止されて停止している。この状態においてトリガギア126は、欠歯部126cが駆動ギア125と対向するため、駆動ギア125の駆動力はトリガギア126には伝達されない。
【0055】
図7(b)に示すように、ピックアーム122のフォロワ部122bはピックバネ123の付勢力によって従動ギア124のピックカム124gに当接している。この状態においては、ピックローラ108は
図3(a)と同様に
図33におけるカセット109から退避した上昇位置にあり、記録材Sから離間した位置にある。
【0056】
次に、第1クラッチCL1による駆動伝達を行うためには、まずトリガギア126を回転させる必要がある。このため、
図8(a)に示すように、ソレノイド128に通電し係止爪128aをトリガギア126の係止部126bから退避させ、係止爪128aによる係止部126bの係止を解除する。すると、トリガバネ127の付勢力によってトリガギア126のボス126dが従動ギア124のボス124dに近づく方向に移動させられ、トリガギア126が反時計回り方向に回転を開始する。この時、従動ギア124はホームカム124bのホームカム面124b1がレバー部材129によって回転軸部124e中心方向に押圧され、回転が制限されている。すなわち、従動ギア124はホームバネ130の押圧力(付勢力)により回転が制限されている。そのため、トリガバネ127の付勢力を受けても回転しない。トリガギア126が回転すると、トリガギア126のギア部126aと駆動ギア125が噛合し、トリガギア126が駆動ギア125から駆動力を受けて回転する。
【0057】
トリガギア126が駆動ギア125から駆動力を受けて回転すると、
図9(a)に示すように溝部126fとキー部124iの間の遊びが無くなり、溝部126fの縁部分がキー部124iを押圧する。これにより従動ギア124が回転を開始する。この回転により、従動ギア124のギア部124aと駆動ギア125とが噛合し、駆動ギア125から従動ギア124に駆動力が伝達される。駆動ギア125の回転に従動して従動ギア124が回転すると、レバー部材129はホームカム124bのホームカム面124b1におけるカム半径が大きくなる面と摺動する方向に揺動する。これにより、レバー部材129がホームバネ130を縮ませて弾性力がチャージされる。
【0058】
なお、ソレノイド128の係止爪128aが係止部126bの係止を解除してトリガギア126が回転した後は、
図9(a)に示すようにソレノイド128への通電を止める。このため、係止爪128aは戻しバネ128bによってトリガギア126に近づく方向へ移動され、係止爪128aが係止部126bを係止可能な位置に待機される。
【0059】
次に、
図10(a)、
図10(b)に示すように、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを上昇位置から下降位置へ動作させる直前の位相まで従動ギア124が回転していく。この直前の位相までに、レバー部材129は、ホームカム124bのキャンセルカム面124b2におけるカム半径が小さくなる面に沿って最もカム半径が小さい部分まで摺動することにより、ホームバネ130を伸長させて付勢力を小さくしている。
【0060】
次に、
図11(a)、
図11(b)において、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを動作させている状態にある。これにより、ピックアーム122はピックバネ123の付勢力によって揺動され、ピックローラ108が下降を開始する。この際、ピックアーム122のフォロワ部122bは、ピックバネ123の付勢力によってピックカム124g側である従動ギア124に逆入力トルクを発生させる。ここで、逆入力トルクとは、ピックカム124gの回転によりピックアーム122が下降を開始する際に、ピックアーム122を下降する方向に付勢するピックバネ123の付勢力が、カムに対して更に回転方向に作用するトルクである。
【0061】
この時、レバー部材129はキャンセルカム面124b2におけるカム半径が大きくなる面に当接を開始する。これにより、レバー部材129は、ピックバネ123が伸長される動作に応じて、ホームバネ130を縮ませて弾性力をチャージするように揺動される。すなわち、キャンセルカム面124b2は、ピックカム124gの回転によりフォロワ部122bがピックバネ123の弾性力を開放する動作に応じて、ホームバネ130の弾性力をチャージするようにホームバネ130(レバー部材129)に作用する。このようにキャンセルカム面124b2におけるカム半径が大きくなる面によって、ホームバネ130を縮ませることで、逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させる。このため、駆動源Dからの駆動力を受けて回転されるピックカム124gのトルク変動を低減することができる。
【0062】
次に、
図12(a)、
図12(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bの動作を完了させて、ピックローラ108は下降位置にある。この状態においては、ピックバネ123の付勢力によってピックカム124g側である従動ギア124には逆入力トルクは発生しない。また、レバー部材129は、ホームカム124bのキャンセルカム面124b2から、ホームカム124bのカム半径が均一のカム面である円弧面で摺動する方向に揺動する。これにより、レバー部材129がホームバネ130を再び縮ませて弾性力がチャージされる。その後、従動ギア124が更に回転すると、ギア部124fがアイドラギア120と噛み合いを開始し、
図33におけるピックローラ108及び給送ローラ110が回転を開始する。
【0063】
次に、
図13(a)、
図13(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bに当接して、ピックアーム122を動作させ、ピックローラ108を上昇させる直前の状態にある。また、ギア部124fとアイドラギア120は噛み合っており、ピックローラ108と給送ローラ110(
図33参照)は回転している。
【0064】
次に
図14(a)、
図14(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを揺動させて、ピックローラ108を
図33におけるカセット109から退避した上昇位置に再び位置させている状態にある。これにより、ピックバネ123を再び縮ませて弾性力がチャージされる。
【0065】
また、
図14(a)に示すように、トリガギア126の欠歯部126cが駆動ギア125と対向する位置まで回転すると、ギア部126aが駆動ギア125と噛み合わなくなるため、トリガギア126は駆動ギア125から駆動力を受けられなくなる。この時、従動ギア124はギア部124aが駆動ギア125とまだ噛み合っている。そのため、従動ギア124のボス124dに配設されるトリガバネ127を介してトリガギア126のボス126dを回転方向に押圧することでトリガギア126が回転する。そして、トリガギア126が1回転したところで、係止部126bがソレノイド128の係止爪128aに突き当たり係止され、トリガギア126は停止する。
【0066】
なお、
図14(a)に示すように、ソレノイド128の係止爪128aに係止部126bが係止されてトリガギア126が停止した時点で、溝部126fとキー部124iの間には再び遊びがある状態になる。したがって、従動ギア124はトリガギア126が停止した状態から所定量回転可能である。
【0067】
次に、
図15(a)、
図15(b)に示すように、従動ギア124の欠歯部124hはアイドラギア120に対向しており、ギア部124fとアイドラギア120は噛み合っていない。そのため、ピックローラ108と給送ローラ110(
図33参照)は回転を停止している。
【0068】
また、従動ギア124が
図15(a)に示す回転位相にある時、従動ギア124の欠歯部124cは駆動ギア125に対向しており、ギア部124aと駆動ギア125と噛み合っていない。そのため、従動ギア124は駆動ギア125からの駆動力を受けることができない。この時、従動ギア124の欠歯部124cが完全に駆動ギア125と対向する位置へ移動する前に止まってしまうと、回転する駆動ギア125と従動ギア124のギア部124aの歯先とのわずかな衝突により音が出たりする虞がある。このようなことが起こらないよう、駆動ギア125からの駆動力に頼らず従動ギア124を更に回転させる必要がある。
【0069】
具体的には、ホームバネ130の付勢力によりレバー部材129がホームカム面124b1におけるカム半径が小さくなる面に沿ってホームカム124bを回転方向に押圧する。これにより、従動ギア124の欠歯部124cを完全に駆動ギア125と対向させたホームポジションまで回転させ、従動ギア124の回転方向に関して、駆動ギア125からギア部124aの歯を十分に退避させることができる。また、トリガギア126の回転が停止した状態で従動ギア124が回転していく(キー部124iが溝部126f内を移動する)間、従動ギア124のボス124dがトリガギア126のボス126dから離れていく。そのため、トリガバネ127は伸びていき、弾性力が再びチャージされる。
【0070】
その後、
図8に示したように、ソレノイド128に再び通電して係止爪128aによる係止部126bの係止を解除すると、トリガギア126が回転し、上述した駆動伝達動作が実行される。このように、第1クラッチCL1は、従動ギア124がホームポジションにある時に、所定のタイミングでソレノイド128に通電することによって、駆動ギア125の駆動力を従動ギア124に伝達する。これにより、ピックローラ108と給送ローラ110の回転や、ピックローラ108の昇降動作を行うことができる。
【0071】
このように本実施形態によれば、第1クラッチCL1は、従動ギア124のピックカム124gが回転し、ピックアーム122のフォロワ部122bを動作させる。この際に、ピックアーム122のフォロワ部122bがピックバネ123の付勢力によって揺動することで従動ギア124側に逆入力トルクが発生するのに連動して、ホームバネ130の弾性力がチャージされる。このホームバネ130の弾性力をチャージする力は、従動ギア124に発生する逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させる。これにより、逆入力トルクを低減することができる。そして、従来構成で逆入力トルクが発生していた際に生じていた従動ギア124と駆動ギア125との歯車噛み合いのバックバッシュが詰まったり、ピックアーム122が急動作することによって生じていた打突音を低減することができる。
【0072】
また、従動ギア124は、駆動ギア125と噛み合うギア部124aと、ホームカム124bにおけるホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2と、アイドラギア120と噛み合うギア部124fと、ピックカム124gを一体的に構成している。これにより、部品寸法バラつきが少なくなり回転位相の精度が良い。
【0073】
そして、ホームバネ130の付勢力を、従動ギアの欠歯部を駆動ギアに対向するホームポジションに位置するときに、従動ギアの回転を制限する以外にも利用する。具体的には、従動カムに発生する逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させる。このため、逆入力トルクを低減するための専用部材を配設する必要がなく、部品点数が増加することがない。
【0074】
本実施形態の第1クラッチCL1は、ピックローラ108の昇降動作に用いているが、これに限定されるものではなく、欠歯部を有するギアを用いたクラッチに配設されたカム部材がフォロワ部材を動作させる機構にも適用可能である。
【0075】
なお、第1実施形態で説明したホームカム124bにおけるキャンセルカム面124b2の形状は、ホームバネ130の付勢力と関連性がある。
【0076】
図9の状態から
図10の状態までレバー部材129が当接している、ホームカム124bのキャンセルカム面124b2におけるカム半径が小さくなる面のカム勾配は、可能な範囲で緩い勾配で構成されている。これは、ホームバネ130の伸長に伴った弾性力によって従動ギア124に発生する逆入力トルクを少なくするためである。
【0077】
また、
図10の状態から
図11の状態までレバー部材129が当接している、ホームカム124bのキャンセルカム面124b2におけるカム半径が大きくなる面のカム勾配は、前述のカム半径が小さくなる面に比べて急な勾配で構成されている。これは、フォロワ部122bがピックカム124g側である従動ギア124に発生させる逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させて、トルク変動を低減するためである。
【0078】
〔第2実施形態〕
[第2クラッチCL2]
次に、第2実施形態に係る駆動伝達装置としての第2クラッチCL2の構成について、
図16を用いて説明する。
【0079】
図16は第2実施形態における第2クラッチCL2の従動ギア124の斜視図である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。
【0080】
第2実施形態における第2クラッチCL2の従動ギア124について説明する。
図16に示す第2クラッチCL2の従動ギア124は、第1実施形態における第1クラッチCL1の従動ギア124の形状が一部異なるのみであり、従動ギア124以外の構成については第1クラッチCL1と同様のため説明は省略する。
【0081】
図16に示す第2クラッチCL2の従動ギア124のホームカム124bには、前述したホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2に加えて、アシストカム面124b3が所定の回転位相に設けられている。ホームカム124bは、カム半径が均一のカム面である円弧面(外周面)を有し、このホームカム124bのカム面の一部にホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2とアシストカム面124b3が設けられている。ホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2とアシストカム面124b3は、ホームカム124bのカム半径が均一のカム面よりも回転中心側に向けて凹形状に設けられている。したがって、ホームカム面124b1とキャンセルカム面124b2とアシストカム面124b3は、いずれも、回転方向上流側にカム半径が小さくなる面を備え、回転方向下流側にカム半径が大きくなる面を備えている。
【0082】
[第2クラッチCL2の動作]
次に、第2実施形態における第2クラッチCL2から第1給送部F1への駆動伝達動作について、
図17~
図21を用いて説明する。
図17~
図21の各図(a)は第2クラッチCL2を表側から見た図であり、
図17~
図21の各図(b)は第2クラッチCL2を裏側から見た図である。
【0083】
図17は、ピックローラ108の上昇開始時を示す。
図18と
図19は、ピックローラ108の上昇開始途中の状態を示す。
図20は、ピックローラ108の上昇終了時とトリガギア126停止の状態を示す。
図21は、第2クラッチCL2の従動ギア124の回転終了直前状態を示す。
図17~
図21における各部材の回転方向や動作方向は、各部材の近傍に記載した矢印の示す通りである。
【0084】
なお、第2クラッチCL2の待機状態からピックローラ108が下降位置に動作するまでの状態については、第1実施形態で説明した第1クラッチCL1の
図7~
図12と同様のため説明は省略する。
【0085】
次に、
図17(a)、
図17(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bに当接して、ピックアーム122を動作させ、ピックローラ108を下降位置から上昇させる直前の状態にある。
【0086】
この時、レバー部材129はホームカム124bのカム半径が均一のカム面(円弧面)で摺動しており、レバー部材129によってホームバネ130は縮まっており弾性力がチャージされた状態にある。また、従動ギア124のギア部124fとアイドラギア120は噛合っており、ピックローラ108と給送ローラ110(
図33参照)は回転している。
【0087】
図18(a)、
図18(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを揺動させて、ピックローラ108が上昇途中にある。
【0088】
この時、従動ギア124にはフォロワ部122bを揺動させる駆動トルクが発生する。ここで、駆動トルクとは、ピックカム124gの回転によりピックアーム122が上昇を開始する際に、ピックバネ123の付勢力に抗してピックアーム122を上昇する方向に移動させる力が、カムに対して回転方向とは反対方向に作用するトルクである。この駆動トルクは、ピックバネ123を縮ませて弾性力をチャージするため、ピックアーム122の揺動する角度に比例して徐々に増大していき、所定の角度を揺動した以降はピックカム124gとフォロワ部122bとの摺動抵抗分の駆動トルクまで低下する。
【0089】
この駆動トルクが大きくなる従動ギア124の回転位相に合わせて、レバー部材129は、ホームカム124bのアシストカム面124b3におけるカム半径が小さくなる面に当接し、この小さくなる面に沿ってカム半径が小さくなる方向に摺動する。これにより、レバー部材129は、ピックバネ123が縮められるにしたがって、ホームバネ130を伸長させて弾性力を開放するように揺動する。すなわち、アシストカム面231b3は、ピックカム124gの回転によりフォロワ部122bがピックバネ123の弾性力をチャージする動作に応じて、ホームバネ130の弾性力を開放するようにホームバネ130(レバー部材129)に作用する。このようにアシストカム面124b3のカム半径が小さくなる面によって、ホームバネ130を伸長させることで、従動ギア124に発生する駆動トルクを打ち消すアシストトルクを発生させる。このため、駆動源Dからの駆動力を受けて回転されるピックカム124gのトルク変動を低減することができる。
【0090】
図19(a)、
図19(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを揺動させて、ピックローラ108が
図18の位置より上昇した状態にある。
【0091】
この時、従動ギア124にかかるフォロワ部122bを揺動させる駆動トルクは最大値より小さい状態にある。また、レバー部材129は、アシストカム面124b3におけるカム半径が最も小さい部分で当接していて、ホームバネ130は伸長して弾性力は小さくなっている。
【0092】
図20(a)、
図20(b)においては、従動ギア124が回転し、ピックカム124gがピックアーム122のフォロワ部122bを揺動させて、ピックローラ108を上昇位置に再び位置させている状態にある。これにより、ピックバネ123を再び縮ませて弾性力がチャージされる。
【0093】
この時、レバー部材129はホームカム124bの外周面で摺動しており、レバー部材129によってホームバネ130は縮まっており弾性力がチャージされている状態にある。ここで、
図19から
図20の状態まで従動ギア124が回転する際に、従動ギア124にかかるフォロワ部122bを揺動させる駆動トルクは、徐々に低下していく。一方、レバー部材129は、アシストカム面124b3におけるカム半径が小さい部分から大きくなる面に沿ってカム半径が大きくなる方向に摺動する。このため、従動ギア124にはホームバネ130の弾性力をチャージするための駆動トルクが加算される。
【0094】
また、第1実施形態で説明した第1クラッチCL1の
図14と同様に、トリガギア126は、1回転したところで、係止部126bがソレノイド128の係止爪128aに突き当たり係止され停止している。
【0095】
次に、
図21(a)、
図21(b)においては、第1実施形態で説明した第1クラッチCL1の
図15と同様に、従動ギアの欠歯部124hはアイドラギア120に対向しており、ギア部124fとアイドラギア120は噛み合っていない。そのため、ピックローラ108と給送ローラ110(
図33参照)は回転を停止している。
【0096】
また、レバー部材129はホームバネ130の付勢力によりホームカム面124b1におけるカム半径が小さくなる面に沿ってホームカム124bを回転方向に押圧する。これにより、従動ギア124は欠歯部124cを完全に駆動ギア125と対向させたホームポジションまで回転される。
【0097】
このように本実施形態によれば、第2クラッチCL2は、従動ギア124のピックカム124gが回転し、ピックアーム122のフォロワ部122bを動作させる。ピックカム124gがピックアーム122の上昇動作を開始させる際の従動ギア124にかかる駆動トルクが最大値になるタイミングに連動して、ホームバネ130を伸長させて付勢力を従動ギア124に与える。これにより、駆動トルクの最大値を低減することができ、従動ギア124を駆動する駆動源Dの駆動トルクの増加変動量を低下することができる。
【0098】
また、第1実施形態で説明した第1クラッチCL1に対しても、従動ギア124のホームカム124bにアシストカム面124b3を追加するだけであるので、部品点数が増加することがなく、一体的に構成することで回転位相の精度が良い。
【0099】
なお、本第2実施形態で説明したホームカム124bにおけるアシストカム面124b3の形状は、第1実施形態で説明したキャンセルカム面124b2と同様に、ホームバネ130の弾性力と関連性がある。
【0100】
図18の状態から
図19の状態までレバー部材129が当接している、ホームカム124bのアシストカム面124b3におけるカム半径が小さくなる面のカム勾配は、回転方向下流側のカム半径が大きくなる面に比べて急な勾配で構成されている。これは、従動ギア124にかかる駆動トルクの最大値に対応できるアシストトルクを発生させるためである。
【0101】
また、
図19の状態から
図20の状態までレバー部材129が当接している、ホームカム124bのアシストカム面124b3におけるカム半径が大きくなる面のカム勾配は、可能な範囲で緩い勾配で構成されている。これは、ホームバネ130が縮んでチャージされる弾性力によって従動ギア124に発生する駆動トルクの増加変動を少なくするためである。
【0102】
〔第3実施形態〕
次に、画像形成装置100における第2給送部F2について
図33と
図22~
図24を用いて説明する。
【0103】
図33に示すように、画像形成装置100は、積載トレイ209に積載された記録材Sを、レジストレーションローラ112に向けて1枚ずつ給送する第2給送部F2を備えている。第2給送部F2は、ピックローラ208と、給送ローラ210と、分離ローラ211と、を有している。第2給送部F2において、ピックローラ208を積載トレイ209に積載される記録材Sから退避した位置より下降させて記録材Sに当接させたあと、時計回り方向に回転させて記録材Sを給送ローラ210と分離ローラ211に給送する。ピックローラ208により繰り出された記録材Sは、分離ローラ211で1枚ずつに分離され、給送ローラ210によりレジストレーションローラ112へ搬送される。その後の記録材Sへの画像形成動作については、前述した第1実施形態と同様である。
【0104】
[第2給送部F2]
次に、
図22~
図24を用いて第2給送部F2について説明する。
図22は第2給送部F2の斜視図であり、
図23は、第2給送部F2の組み立て前の斜視図である。
図24は第2給送部F2の動作説明図であり、
図24(a)はピックローラ208が上昇位置にある図で、
図24(b)はピックローラ208が下降位置にある図である。ここで、ピックローラの上昇位置とは、ピックローラ208が積載トレイ209から退避した退避位置(
図33に示す破線位置)である。また、ピックローラの下降位置とは、ピックローラ208が積載トレイ209に収納された記録材のうち最上位の記録材に当接された給送位置(
図33に示す実線位置)である。
【0105】
図22と
図23に示すように、第2給送部F2は、ピックローラ208と、給送ローラ210と、分離ローラ211と、を有している。
【0106】
第2給送部F2において、歯車部208aを備えたピックローラ208と、歯車部210aを備えた給送ローラ210と、ローラアイドラギア218は、それぞれの歯車が噛合うように、ピックアーム222に回転可能に収納されている。給送ローラ210の近傍には分離ローラ211が回転自在にローラガイド219に配設されている。アイドラギア220はローラ駆動ギア221と噛合っており、給送ローラ210はローラ駆動ギア221の軸221aと連結されていて、アイドラギア220が回転すると給送ローラ210とピックローラ208が回転する。
【0107】
ピックアーム222は、第2フォロワ233の凸部233aと係合する凹部222aを備えている。ピックアーム222と第2フォロワ233は、軸221a上に揺動可能に保持されており、第2フォロワ233が揺動すると、ピックアーム222も連動して揺動する。
【0108】
次に
図24に示すように、第1フォロワ232は、一方の腕223aが固定されたピックバネ223の他方の腕223bが当接しており、第1フォロワ232はピックバネ223により反時計回り方向に付勢されている。第1フォロワ232は、カム部材231の第2カム部231aに揺動して当接するよう配設されている。また、第1フォロワ232は第2フォロワ233と係合しており、第1フォロワ232が反時計回り方向に揺動すると、第2フォロワ233は時計回り方向に揺動するように構成されている。
【0109】
図24(a)及び
図24(b)に示すように、第2弾性部材であるピックバネ223は、フォロワ部材である第1フォロワ232に付勢力を付与している。したがって、ピックバネ223は、第1フォロワ232、第2フォロワ233を介してピックアーム222を図中下方向(軸221aを中心に時計回り方向)に付勢している。フォロワ部材である第1フォロワ232は、第2カム部材である第2カム部231aに当接し、ピックカム124gの回転によりピックバネ123の弾性力を開放またはチャージする方向に動作する。
【0110】
図24(a)においては、第1フォロワ232がカム部材231の第2カム部231aに当接している状態で、ピックバネ223の弾性力をチャージしている状態である。ピックアーム222に収納されるピックローラ208は
図33において積載トレイ209から退避した上昇位置(退避位置)にある。
【0111】
図24(b)においては、カム部材231が時計回り方向に回転して第1フォロワ232が揺動し、ピックバネ223の弾性力を開放している状態である。第1フォロワ232が揺動すると第2フォロワ233が連動して揺動し、ピックアーム222は所定の給送圧であるピックバネ223の付勢力によって
図33において記録材Sにピックローラ208を当接した下降位置(給送位置)にある。
【0112】
このように、カム部材231の回転によって第1フォロワ232と第2フォロワ233が揺動することにより、ピックアーム222が揺動してピックローラ208が昇降動作する。
【0113】
[第3クラッチCL3]
次に、駆動源Dからの駆動力を被駆動部材としてのピックローラ208及びカム部材231へ伝達する駆動列に設けられ、駆動力の伝達と切断をする駆動伝達装置としての第3クラッチCL3の構成について、
図25、
図26、
図27を用いて説明する。
【0114】
図25は第3クラッチCL3の斜視図であり、
図25(a)は第3クラッチCL3を軸線方向の一方側(ピックローラ208側とは反対側)から見た図であり、
図25(b)は第3クラッチCL3を軸線方向の他方側(ピックローラ208側)から見た図である。以降は、第3クラッチCL3の軸線方向の一方側を「第3クラッチCL3の表側」とし、第3クラッチCL3の軸線方向の他方側を「第3クラッチCL3の裏側」とする。
図26は、第3クラッチCL3の組み立て前の斜視図である。
図27(a)及び
図27(b)は、第3クラッチCL3のカム部材231の斜視図である。
【0115】
図25、
図26、
図27に示すように、第3クラッチCL3は、駆動源Dと常時連結されて回転する駆動ギア225と、駆動ギア225と噛合可能な従動ギア224及びトリガギア226と、トリガバネ227と、を備えている。さらに第3クラッチCL3は、従動ギア224の駆動下流側に、従動ギア224と噛合可能なアイドラギア220を備え、アイドラギア220は前述したように第2給送部F2のローラ駆動ギア221と噛合している。また第3クラッチCL3は、トリガギア226の回転を規制する規制手段であるソレノイド228と、レバー部材229に付勢力を付与する第1弾性部材であるホームバネ230と、を備えている。第1弾性部材であるホームバネ230は、レバー部材229に付勢力を付与し、レバー部材229を後述するカム部材231の第1カム部231bに当接させる。
【0116】
さらに第3クラッチCL3は、従動ギア224の回転に連動して回転する第1カム部材である第1カム部231b及び第2カム部材である第2カム部231aを備えている。本実施形態では、第1カム部231bと第2カム部231aはカム部材231として一体的に構成され、従動ギア224の回転に連動して回転する。
【0117】
駆動源Dからの駆動力は、第3クラッチCL3の駆動ギア225、従動ギア224、アイドラギア220を介してローラ駆動ギア221へ伝達され、
図24中のピックローラ208と給送ローラ210を回転させる。
【0118】
トリガギア226は、駆動ギア225と噛合するギア部226aと、ソレノイド228の係止爪228aが係止して回転が規制される係止部226bと、駆動ギア225と噛合しない欠歯部226cと、を備えている。トリガギア226は、トリガバネ227が配設されるバネ収納部226dを一体的に備えている。ギア部226aは駆動ギア225の歯と噛み合う複数の歯を有し、44歯相当の歯数直径を有している。欠歯部226cは、ギア部226aの一部に設けられ、駆動ギア225の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部226aの4歯数に相当する欠歯形状である。
【0119】
従動ギア224は、駆動ギア225と噛合するギア部224aと、駆動ギア225と噛合しない欠歯部224bと、を備えている。従動ギア224は、トリガバネ227が配設されるバネ収納部(不図示)と、カム部材231と係合する係合部224cと、を備えている。ギア部224aは駆動ギア225の歯と噛み合う複数の歯を有し、44歯相当の歯数直径を有している。欠歯部224bは、ギア部224aの一部に設けられ、駆動ギア225の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部224aの4歯数に相当する欠歯形状である。
【0120】
また、従動ギア224のギア部224aは、アイドラギア220とも噛合可能であり、ギア部224aの一部にはアイドラギア220と噛合しない欠歯部224dが設けられている。欠歯部224dは、欠歯部224bとは別にギア部224aの一部に設けられ、アイドラギア220の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部224aの10歯数に相当する欠歯形状である。
【0121】
また、
図27に示すように、カム部材231は、第1フォロワ232に当接して動作させる第2カム部231aと、レバー部材229が当接してカム部材231にホームバネ230の付勢力を与えられる第1カム部231bと、を備えている。さらにカム部材231は、従動ギア224の係合部224cと係合するボス231cを備えている。
【0122】
図27(a)及び
図27(b)に示すように、第1カム部231bには、ホームカム面231b1と、キャンセルカム面231b2と、アシストカム面231b3が所定の回転位相に設けられている。第1カム部231bは、カム半径が均一のカム面である円弧面(外周面)を有し、この第1カム部231bのカム面の一部にホームカム面231b1とキャンセルカム面231b2とアシストカム面231b3が設けられている。ホームカム面231b1は、第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が小さくなる面と大きくなる面を備えた凹形状である。キャンセルカム面231b2は、第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が大きくなる面を備えている。アシストカム面231b3は、ホームカム面231b1とは別の場所にカム半径が小さくなる面を備えている。
【0123】
トリガギア226と従動ギア224とカム部材231は、同軸上で回転可能に配設されており、カム部材231は係合部224cとボス231cとの係合により、従動ギア224と連動して回転する。
【0124】
ソレノイド228は、係止爪228aと、戻しバネ228bを備えている。戻しバネ228bは係止爪228aをトリガギア226に向かう方向に付勢している。ソレノイド228に通電しておらず、係止部226bが係止爪228aと対向する位置にある時、係止爪228aは係止部226bを係止してトリガギア226の回転を規制する。ソレノイド228に通電すると、係止爪228aは戻しバネ228bの付勢力に抗してトリガギア226から退避し、それまで係止爪228aで係止部226bを係止していた場合、係止爪228aによるトリガギア226の係止部226bの係止を解除する。
【0125】
トリガバネ227は、一端をトリガギア226のバネ収納部226dに固定され、他端を従動ギア224のバネ収納部(不図示)に固定されており、従動ギア224に対してトリガギア226の係止部226bを係止爪228a方向に回転するように付勢している。これにより、ソレノイド228に通電して係止爪228aがトリガギア226の係止部226bの係止を解除すると、トリガバネ227はトリガギア226に起回転力を与え、トリガギア226のギア部226aと駆動ギア225が噛合する。
【0126】
レバー部材229は、揺動軸229aを備え、一端が固定されたホームバネ230の付勢力によって、揺動軸229aを回転中心としてカム部材231の第1カム部231bに当接しながら揺動する。
【0127】
なお、後述するが、レバー部材229はカム部材231が所定の回転位相にある時、ホームバネ230の付勢力によってホームカム面231b1が回転するにつれてカム半径が小さくなる面を押圧するよう付勢する。これにより、カム部材231と連動する従動ギア224の欠歯部224bが駆動ギア225と対向し、ギア部224aが駆動ギア225から十分な駆動力を得られない時でも、このホームバネ230の押圧力により従動ギア224を回転させることが可能となる。
【0128】
また、従動ギア224がギア部224aと駆動ギア225とが噛み合わない待機状態であるホームポジションにいる際には、レバー部材229はホームカム面231b1のカム半径が最も小さい面をカム部材231の回転中心方向へ付勢するように当接する。そのため、ホームバネ230の押圧力によってカム部材231及び従動ギア224は回転が制限される。
【0129】
次に、トリガギア226と従動ギア224の配設について説明する。トリガギア226と従動ギア224は、第1実施形態の第1クラッチCL1と同様に、互いに回転方向に遊びがあるように係合されており、トリガギア226は従動ギア224に対し回転中心を中心にして遊びの量だけ回転することができる。ここでは、待機状態(ホームポジション)に位置する場合、トリガギア226のギア部226aと従動ギア224のギア部224aは0.5歯分の位相差があり、トリガギア226は従動ギア224に対して2.5歯分の量だけ回転できるように構成される。
【0130】
[第3クラッチCL3の動作]
次に、第3クラッチCL3から第2給送部F2への駆動伝達動作について、
図25と
図28~
図32を用いて説明する。
図28~
図31の各図(a)は第3クラッチCL3におけるカム部材とレバー部材と第1フォロワ、第2フォロワの動作関係を表側から見た図であり、
図28~
図31の各図(b)は裏側から見た図である。
図32はカム部材231の回転トルクと第1カム部231bのカム半径との関係図である。
【0131】
図28~
図32における各部材の回転方向や動作方向は、各部材の近傍に記載した矢印の示す通りである。
【0132】
図25と
図28における第3クラッチCL3は待機状態を示している。
【0133】
第3クラッチCL3の待機状態では、
図28(a)に示すように、駆動ギア225は回転し、レバー部材229は第1カム部231bのホームカム面231b1におけるカム半径が最も小さい面に当接していて、カム部材231を回転中心方向へ付勢している。この状態においてカム部材231と連動する従動ギア224は、欠歯部224bが駆動ギア225と対向するホームポジション(不図示)に保持されており、駆動ギア225から従動ギア224に駆動力は伝達されない。従動ギア224の欠歯部224dもアイドラギア220と対向しており、従動ギア224のギア部224aはアイドラギア220と噛み合っていない。
【0134】
また
図25(a)に示すように、トリガギア226はトリガバネ227によって反時計回り方向に回転するよう付勢されているが、係止部226bがソレノイド228の係止爪228aに係止されて停止している。この状態においてトリガギア226は、欠歯部226cが駆動ギア225と対向するため、駆動ギア225の駆動力はトリガギア226には伝達されない。
【0135】
図28(b)に示すように、第1フォロワ232はピックバネ223の付勢力によってカム部材231の第2カム部231aに当接している。この状態においては、ピックローラ208は
図24(a)と同様に
図33における積載トレイ209から退避した上昇位置にあり、記録材Sから離間した位置にある。
【0136】
次に、第3クラッチCL3による駆動伝達を行うためには、前述した第1実施形態の第1クラッチCL1と同様に、まずトリガギア226を回転させる必要がある。このため、ソレノイド228に通電し係止爪228aをトリガギア226の係止部226bから退避させ、係止爪228aによる係止部226bの係止を解除する。すると、トリガバネ227の弾性力によってトリガギア226が反時計回り方向に回転を開始する。この時、従動ギア224はカム部材231のホームカム面231b1がレバー部材229によって回転中心方向に押圧され、回転が制限されている。すなわち、従動ギア224はホームバネ230の押圧力(付勢力)により回転が制限されている。そのため、トリガバネ227の付勢力を受けても回転しない。トリガギア226が回転すると、トリガギア226のギア部226aと駆動ギア225が噛合し、トリガギア226が駆動ギア225から駆動力を受けて回転する。
【0137】
トリガギア226が駆動ギア225から駆動力を受けて回転すると、トリガギア226と従動ギア224との回転方向の遊びが無くなり、従動ギア224のギア部224aはトリガギア226のギア部226aに対して3歯分遅れて回転を開始する。その後、従動ギア224のギア部224aと駆動ギア225とが噛合し、駆動ギア225から従動ギア224に駆動力が伝達される。駆動ギア225の回転に従動して従動ギア224が回転すると、レバー部材229はホームカム面231b1におけるカム半径が大きくなる面と摺動しながらホームバネ230を縮ませる方向に揺動するため、ホームバネ230の弾性力がチャージされる。
【0138】
なお、ソレノイド228の係止爪228aが係止部226bの係止を解除してトリガギア226が回転した後は、ソレノイド228への通電を止める。このため、係止爪228aは戻しバネ228bによってトリガギア226に近づく方向へ移動され、係止爪228aが係止部226bを係止可能な位置に待機される。
【0139】
次に、
図29(a)、
図29(b)に示すように、カム部材231が回転し、カム部材231の第2カム部231aが第1フォロワ232を動作させている状態にある。これにより、第1フォロワ232はピックバネ223の付勢力によって揺動され、第2フォロワ233が連動して揺動する。この際、第1フォロワ232は、ピックバネ223の付勢力によってカム部材231側である従動ギア224に逆入力トルクを発生させる。ここで、逆入力トルクとは、第1フォロワ232の回転によりピックアーム222が下降を開始する際に、ピックアーム222を下降する方向に付勢するピックバネ223の付勢力が、カム部材231に対して更に回転方向に作用するトルクである。
【0140】
この第1フォロワ232が動作する際には、レバー部材229は、第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が大きくなるキャンセルカム面231b2に当接を開始する。これにより、レバー部材229はホームバネ230を更に縮ませて弾性力をチャージするように揺動する。すなわち、キャンセルカム面231b2は、第2カム部231aの回転により第1フォロワ232がピックバネ223の弾性力を開放する動作に応じて、ホームバネ230の弾性力をチャージするようにホームバネ230(レバー部材229)に作用する。このようにホームバネ230の弾性力をチャージする力は、カム部材231に発生する逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させる。このため、駆動源からの駆動力を受けて回転されるカム部材231のトルク変動を低減することができる。
【0141】
次に、
図30(a)、
図30(b)においては、
図29の状態からカム部材231が更に回転し、カム部材231の第2カム部231aが第1フォロワ232の動作を完了させている。
【0142】
この状態においては、
図24(b)に示すピックローラ208が下降位置にある状態であるため、カム部材231にピックバネ223の付勢力による逆入力トルクは発生しない。また、レバー部材229は第1カム部231bのカム半径が最も大きい面で当接している。これにより、レバー部材229がホームバネ230を最も縮ませた弾性力がチャージされる。カム部材231が更に回転すると、
図26に示すギア部224aがアイドラギア220と噛み合いを開始し、ピックローラ208(
図33参照)が回転を開始する。
【0143】
次に、
図31(a)、
図31(b)においては、カム部材231が回転し、カム部材231の第2カム部231aが第1フォロワ232を再び揺動させて、ピックローラ208(
図33参照)が上昇動作を開始する。この時、カム部材231には第1フォロワ232を揺動させる駆動トルクが発生する。ここで、駆動トルクとは、カム部材231の回転によりピックアーム222が上昇を開始する際に、ピックバネ223の付勢力に抗してピックアーム222を上昇する方向に移動させる力が、カム部材231に対して回転方向とは反対方向に作用するトルクである。
【0144】
この駆動トルクは、ピックバネ223の弾性力をチャージするため、第1フォロワ232の揺動する角度に比例して徐々に増大していき、所定の角度を揺動した以降は第2カム部231aと第1フォロワ232との摺動抵抗分の駆動トルクまで低下する。
【0145】
この駆動トルクが大きくなるカム部材231の回転位相に合わせて、レバー部材229は第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が小さくなるアシストカム面231b3に当接を開始する。これにより、アシストカム面231b3は、第2カム部231aにより第1フォロワ232がピックバネ223の弾性力をチャージする動作に応じて、ホームバネ230の弾性力を開放するようにホームバネ230(レバー部材229)に作用する。このようにカム半径が小さくなるアシストカム面231b3によって、ホームバネ230を伸長させることで、カム部材231に発生する駆動トルクを打ち消すアシストトルクを発生させる。このため、駆動源からの駆動力を受けて回転されるカム部材231のトルク変動を低減することができる。
【0146】
カム部材231が更に回転すると、
図25(a)に示すように欠歯部224dがアイドラギア220と対向してギア部224aはアイドラギア220と噛み合わなくなり、ピックローラ208(
図33参照)の回転が停止する。またトリガギア226は、1回転したところで、係止部226bがソレノイド228の係止爪228aに突き当たって係止され回転が停止する。
【0147】
次に、
図31においてカム部材231が更に回転すると、ホームバネ230の付勢力によりレバー部材229は、ホームカム面231b1における第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が小さくなる面を押圧する。これにより、欠歯部224bが駆動ギア225に対向するホームポジションまで従動ギア224を回転させる。
【0148】
このように本実施形態によれば、第3クラッチCL3は、カム部材231の回転により第1フォロワ232を動作させる際に、カム部材231に発生する逆入力トルクをキャンセルトルクにより低減することができる。また、逆入力トルク発生時による打突音を低減することができる。
【0149】
また、カム部材231が回転して、第2カム部231aが第1フォロワ232を再び動作させピックバネ223の弾性力をチャージする際に、カム部材231に発生する駆動トルクをアシストトルクにより低減することができる。これにより
図25において、従動ギア224を駆動する駆動源Dの駆動トルクの増加変動量を低下することができる。
【0150】
なお、第3実施形態で説明した第1カム部231bにおけるキャンセルカム面231b2とアシストカム面231b3の形状と配設位置は、カム部材231の第2カム部231aが第1フォロワ232を揺動させるタイミングと関連性がある。
【0151】
図32を用いて説明する。まず、
図32中における回転トルクとは、カム部材231が第1フォロワ232から受けるトルクである。
【0152】
図32に示すように、カム部材231が回転してピックアーム222を下降させる動作である第1フォロワの動作1のタイミングでカム部材231に逆入力トルクが発生する。
【0153】
この第1フォロワの動作1の際に、第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が大きくなる面であれば、カム部材231に発生する逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させることができる。すなわち、ホームカム面231b1のカム半径が大きくなる面にキャンセルカム面231b2が隣接していてもよい。キャンセルカム面231b2は、前述した第1実施形態の第1クラッチCL1におけるキャンセルカム面124b2のカム半径の大きな面から小さくなる面のようなカム形状は必ずしも必要ではない。また、キャンセルカム面231b2は、第1フォロワの動作1の範囲よりも大きいほうが逆入力トルクは発生しにくくなる。
【0154】
次に、カム部材231が更に回転すると、ピックアーム222を上昇させる動作である第1フォロワの動作2のタイミングでカム部材231大きな駆動トルクが発生する。
【0155】
この第1フォロワの動作2の際に、第1カム部231bが回転するにつれてカム半径が小さくなる面であれば、カム部材231に発生する駆動トルクを低減することができる。すなわち、アシストカム面231b3は、ホームカム面231b1のカム半径が小さくなる面にアシストカム面231b3が隣接していてもよい。アシストカム面231b3は、前述した第2実施形態の第2クラッチCL2におけるアシストカム面124b3のカム半径の小さな面から大きくなる面のようなカム形状は必ずしも必要ではない。また、アシストカム面231b3は、第1フォロワの動作2の範囲において、駆動トルクが最も大きくなるタイミング近傍に配設することで、駆動トルクの最大値を低減することができる。
【0156】
〔第4実施形態〕
[中間転写ユニットT]
次に、画像形成装置100における中間転写ユニットTに
図34~
図37を用いて説明する。
図34(a)、
図34(b)は画像形成装置100における中間転写ユニットTの交換説明図であり、
図35~
図37の各図(a)(b)は中間転写ユニットTにおける内部の動作説明図である。
【0157】
図34(a)、
図34(b)に示すように、画像形成装置100は、右側面に設けられた右ドア234を開くと中間転写ユニットTを図内右方向に引き出すことができ、中間転写ユニットTは交換可能に構成されている。
【0158】
中間転写ユニットTは、ベルト106や4個の一次転写ローラ106dなどによって構成されており、画像形成装置100に備わる駆動源(不図示)から駆動が伝達される駆動軸235を備えている。
【0159】
図35~
図37に示すように、中間転写ユニットTは、上述した他にも駆動カム236とスライダ237とスライダばね238を備え、さらに一次転写ローラ支持部材239と転写ローラ加圧ばね240を4個ずつ備えている。
【0160】
駆動カム236は、駆動軸235の回転軸と同軸上に連結されており、3つの作動面236a,236b,236cを有している。第1作動面236a,第2作動面236b,第3作動面236cは回転方向で120度ごとに配設されている。各作動面のカム径(駆動軸235の中心から駆動カム236の周面までの径)は第1作動面236a>第2作動面236b>第3作動面236cとなっている。
【0161】
次に、中間転写ユニットTの動作について説明する。中間転写ユニットTは、感光ドラム102Y,102M,102C,102Bに対向するように一次転写ローラ支持部材239によって回転可能に支持された一次転写ローラ106dがそれぞれ配置されている。
【0162】
スライダ237は、一次転写ローラ支持部材239が当接する3つの昇降カム237aと1つの昇降カム237bを備えている。昇降カム237aと昇降カム237bとの間隔は、昇降カム237aと昇降カム237aとのお互いの間隔より大きくなっている。また、スライダ237は、図中の左右方向(複数の感光ドラムが並設された方向)にスライド可能(移動可能)であり、移動方向一方の端部がスライダばね238により他方(右方向)に向けて押圧され、他方の端部が駆動カム236に当接している。
【0163】
一次転写ローラ支持部材239は、揺動軸239aを有しており、転写ローラ加圧ばね240によって一次転写ローラ106dを感光ドラム102Y,102M,102C,102B方向に所定の付勢力で押圧するよう揺動可能に構成されている。
【0164】
このような構成により中間転写ユニットTは、駆動カム236の回転によりスライダ237が動作することで一次転写ローラ106dは画像形成装置100の画像形成動作に応じて一次転写ローラ106dをベルト106に対して昇降させる機構を備えている。
【0165】
まず、中間転写ユニットTの一次転写ローラ106dをベルト106に対して昇降させる動作について説明する。
【0166】
図35~
図37に示すように、中間転写ユニットTは、画像形成装置100の画像形成動作に応じた一次転写ローラ106dの3つの動作モードを持っている。
【0167】
第1の動作モードは、
図35(a)、
図35(b)に示すように、スライダ237は駆動カム236の第1作動面236aに当接している。この状態においては、一次転写ローラ支持部材239はスライダ237の昇降カム237aと昇降カム237bと当接しており、全ての一次転写ローラ106dがベルト106に対して離間した上昇位置にある。これは、画像形成装置100の画像形成動作前の状態である。
【0168】
第2の動作モードは、
図36(a)、
図36(b)に示すように、駆動カム236が時計回り方向に120度回転し、スライダ237は
図35(b)に示す状態から右方向にスライドして駆動カム236の第2作動面236bに当接している。この状態においては、感光ドラム102Bに対向する一次転写ローラ106dの一次転写ローラ支持部材239は昇降カム237bと離間しており、感光ドラム102Bに対向する一次転写ローラ106dがベルト106に対して当接した下降位置にある。その他の3つの一次転写ローラ支持部材239は昇降カム237aと当接しており、対応する3つの一次転写ローラ106dがベルト106に対して離間した上昇位置にある。これは、画像形成装置100のブラック色の画像形成動作時における状態である。
【0169】
第3の動作モードは、
図37(a)、
図37(b)に示すように、駆動カム236が時計回り方向に更に120度回転し、スライダ237が
図36(b)に示す状態から更に右方向にスライドして駆動カム236の第3作動面236cに当接している。この状態においては、一次転写ローラ支持部材239はスライダ237の昇降カム237aと昇降カム237bと離間しており、全ての一次転写ローラ106dがベルト106に対して当接した下降位置にある。これは、画像形成装置100のフルカラーの画像形成動作時における状態である。
【0170】
更に
図37(b)に示す第3の動作モード状態から、駆動カム236が時計回り方向に更に120度回転すると、スライダ237は左方向にスライドして駆動カム236の第1作動面236aに当接することで、再び
図35(b)に示す第1の動作モードに戻る。このように、駆動カム236が120度ずつ回転することによって、動作モードが切り替わる。
【0171】
ここで、
図35(a)、
図35(b)に示す第1の動作モードおいては、全ての転写ローラ加圧ばね240は弾性力がチャージされている状態にある。
【0172】
前記第1の動作モードから
図36(a)、
図36(b)に示す第2の動作モードに移行する際には、スライダ237は駆動カム236に逆入力トルクを発生させる。これは、感光ドラム102Bに対向する一次転写ローラ106dを支持する一次転写ローラ支持部材239が、転写ローラ加圧ばね240の付勢力によってスライダ237の昇降カム237bを右方向に押圧するからである。
【0173】
前記第2の動作モードから
図37(a)、
図37(b)に示す第3の動作モードに移行する際には、スライダ237は駆動カム236に、第1の動作モードから第2の動作モードに移行する際に発生する逆入力トルクより大きな逆入力トルクを発生させる。これは、感光ドラム102Y,102M,102Cに対向する一次転写ローラ106dを支持する3つの一次転写ローラ支持部材239が、転写ローラ加圧ばね240の付勢力によってスライダ237の昇降カム237aを右方向に押圧するからである。
【0174】
前記第3の動作モードから
図35(a)、
図35(b)に示す第1の動作モードに移行する際には、スライダ237は駆動カム236に、4つの転写ローラ加圧ばね240の弾性力をチャージするための比較的大きな駆動トルクを発生させる。これは、3つの昇降カム237aと1つの昇降カム237bが全ての一次転写ローラ支持部材239を上昇位置へ揺動させ、全ての転写ローラ加圧ばね240の弾性力をチャージするからである。
【0175】
[第4クラッチCL4]
次に、駆動軸235に駆動力の伝達と切断をする第4実施形態に係る駆動伝達装置としての第4クラッチCL4の構成について、
図38と
図39を用いて説明する。
【0176】
図38は第4クラッチCL4の斜視図であり、
図38(a)は第4クラッチCL4を軸線方向の一方側(従動ギア324側)から見た図であり、
図38(b)は第4クラッチCL4を軸線方向の他方側(従動ギア324側とは反対側)から見た図である。
図39は第4クラッチCL4における従動ギア324の正面図である。
図38(a)、
図38(b)、
図39における各部材の回転方向や動作方向は、各部材の近傍に記載した矢印の示す通りである。
【0177】
図38(a)、
図38(b)、
図39に示すように、第4クラッチCL4は、駆動源Dと常時連結されて回転する駆動ギア325と、駆動ギア325と噛合可能な従動ギア324及びトリガギア326と、トリガバネ127と、を備えている。また、トリガギア326の回転を規制する規制手段であるソレノイド128と、レバー部材129に付勢力を付与する第1弾性部材であるホームバネ130と、を備えている。第1弾性部材であるホームバネ130は、レバー部材129に付勢力を付与し、レバー部材129を後述する従動ギア324のカム部324cに当接させる。
【0178】
さらに第3クラッチCL3は、従動ギア324の回転に連動して回転する第1カム部材であるカム部324c及び第2カム部材である駆動カム236を備えている。後述するが、本実施形態では、カム部324cは従動ギア324に一体的に構成され、従動ギア324とともに回転し、駆動カム236は従動ギア324の回転に連動して回転する。
【0179】
駆動源Dからの駆動力は、第4クラッチCL4の駆動ギア325から従動ギア324へ伝達され、従動ギア324の軸部324dを介して前述した中間転写ユニットTの駆動軸235を回転する。
【0180】
トリガギア326は、駆動ギア325と噛合するギア部326aと、ソレノイド128の係止爪128aが係止して回転が規制される係止部326bと、駆動ギア325と噛合しない欠歯部326cと、を備えている。トリガギア326は、ギア部326aと、係止部326bと、欠歯部326cを、120度ごとにそれぞれ3か所設けている。ギア部326aは駆動ギア325の歯と噛み合う複数の歯を有している。欠歯部326cは、ギア部326aの一部に設けられ、駆動ギア325の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部326aの所定の歯数に相当する欠歯形状である。
【0181】
従動ギア324は、駆動ギア325と噛合するギア部324aと、駆動ギア325と噛合しない欠歯部324bと、を備えている。従動ギア324は、ギア部324aと欠歯部324bを、回転方向に交互に設けている。また従動ギア324は、ギア部324aと欠歯部324bを、それぞれ120度ごとに3か所設けている。ギア部324aは駆動ギア325の歯と噛み合う複数の歯を有している。欠歯部324bは、ギア部324aの一部に設けられ、駆動ギア325の歯と噛み合う歯がない領域であり、ギア部324aの複数の歯数に相当する欠歯形状である。
【0182】
トリガギア326と従動ギア324は軸部324dの同軸上で回転可能に配設されている。トリガギア326は、トリガバネ127によって従動ギア324に対しトリガギア326の係止部326bをソレノイド128の係止爪128a方向に回転するように付勢している。また、トリガギア326と従動ギア324は、第1実施形態の第1クラッチCL1と同様に、互いに回転方向に遊びがあるように係合されており、トリガギア326は従動ギア324に対し回転中心を中心にして遊びの量だけ回転することができる。
【0183】
ソレノイド128は、係止爪128aによってトリガギア326の係止部326bを係止してトリガギア326の回転を規制する。ソレノイド128に通電すると、係止爪128aが係止部126bの係止を解除し、トリガバネ127の付勢力によってトリガギア326が回転を開始し、さらに前述した遊びの量だけ遅れて従動ギア324が回転を開始する。また、ソレノイド128に対する通電は、従動ギア324が1/3回転(120度)ずつ回転するように行われる。
【0184】
次に、
図39に示すように、従動ギア324のカム部324cは、3つのホームカム面324c1,324c3,324c5と、2つのキャンセルカム面324c2,324c4と、1つのアシストカム面324c6と、を備えている。
【0185】
第1のホームカム面324c1、第2のホームカム面324c3、第3のホームカム面324c5は、従動ギア324のカム部324cの所定の位置に、120度ごとに設けられている。第1のホームカム面324c1、第2のホームカム面324c3、第3のホームカム面324c5は、それぞれ、凹形状であり、回転方向上流側にカム半径が小さくなる面を備え、回転方向下流側にカム半径が大きくなる面を備えている。
【0186】
第1のキャンセルカム面324c2は、第1のホームカム面324c1と第2のホームカム面324c3の間に設けられており、従動ギア324が反時計回り方向に回転するにつれてカム半径が大きくなる面を備えている。第2のキャンセルカム面324c4は、第2のホームカム面324c3と第3のホームカム面324c5の間に設けられており、従動ギア324が反時計回り方向に回転するにつれてカム半径が大きくなる面を備えている。第2のキャンセルカム面324c4のカム半径が大きくなる面は、第1のキャンセルカム面324c2よりも、従動ギア324が反時計回り方向に回転するにつれてカム半径の増加量が大きくなるように設けられている。アシストカム面324c6は、第3のホームカム面324c5と第1のホームカム面324c1の間に設けられており、従動ギア324が反時計回り方向に回転するにつれてカム半径が小さくなる面を備えている。
【0187】
[第4クラッチCL4の動作]
第4クラッチCL4から中間転写ユニットTの駆動軸235及び駆動カム236への駆動伝達動作について
図35~
図38、
図40を用いて説明する。
図40は、従動ギア324の回転トルクとカム部324cのカム半径との関係図である。
【0188】
図38(a)に示すように、レバー部材129がホームカム面324c1に当接している。この状態においては、従動ギア324は、ホームカム面324c1に対応する欠歯部324bが駆動ギア325と対向するホームポジションに保持されており、駆動ギア325から従動ギア324に駆動力は伝達されない。
【0189】
また、
図38(a)、
図38(b)における第4クラッチCL4の状態においては、中間転写ユニットTは
図35(a)、
図35(b)に示す第1の動作モードの状態にある。この
図38(a)、
図38(b)の状態から、ソレノイド128に通電すると、
図38(b)に示すように従動ギア324の軸部324dが時計回り方向に回転する。この軸部324dの回転に連動して
図38(a)における駆動軸235も時計回り方向に回転するように構成される。このような第4クラッチCL4の動作により、駆動軸235と連結されている駆動カム236は、時計回り方向に120度回転して停止する。
【0190】
このとき、レバー部材129はホームカム面324c3に当接しており、従動ギア324は、ホームカム面324c3に対応する欠歯部324bが駆動ギア325と対向するホームポジションに保持される。この状態において中間転写ユニットTは、
図36(a)、
図36(b)に示す第2の動作モードの状態にある。
【0191】
第4クラッチCL4が再び動作すると、駆動カム236が120度回転して停止する。このとき、レバー部材129はホームカム面324c5に当接しており、従動ギア324は、ホームカム面324c5に対応する欠歯部324bが駆動ギア325と対向するホームポジションに保持される。この状態において中間転写ユニットTは、
図37(a)、
図37(b)に示す第3の動作モードの状態にある。
【0192】
このように、従動ギア324が120度ずつ回転することにより、中間転写ユニットTは動作モードを切り替える。
【0193】
次に
図40を用いて、従動ギア324が回転して中間転写ユニットTの動作モードが切り替わる際の駆動カム236のトルク変動と、従動ギア324のカム部324cにおけるカム半径との関係を説明する。
図40に示す回転トルクとは、駆動カム236がスライダ237から受けるトルクである。
【0194】
図40に示すように、第1の動作モードから第2の動作モードに移行する際には、前述したように駆動カム236及び連動する従動ギア324に逆入力トルクが発生する。このタイミングに合わせて、カム部324cにおける第1のキャンセルカム面324c2とレバー部材129が当接する。このような動作により、レバー部材129はホームバネ130を縮ませて弾性力をチャージするように揺動する。すなわち、第1のキャンセルカム面324c2は、駆動カム236の回転によりスライダ237が1つの転写ローラ加圧ばね240の弾性力を開放する動作に応じて、ホームバネ130の弾性力をチャージするようにホームバネ130(レバー部材129)に作用する。このホームバネ130の弾性力をチャージする力は、従動ギア324に発生する逆入力トルクと対向するキャンセルトルクを発生させる。
【0195】
次に第2の動作モードから第3の動作モードに移行する際には、前述したように駆動カム236及び連動する従動ギア324には更に大きな逆入力トルクが発生する。このタイミングに合わせて、カム部324cにおける第2のキャンセルカム面324c4とレバー部材129が当接する。前述したように、第2のキャンセルカム面324c4のカム半径が大きくなる面は、第1のキャンセルカム面324c2よりも、従動ギア324が反時計回り方向に回転するにつれてカム半径の増加量が大きくなるように設けられている。すなわち、第2のキャンセルカム面324c4は、駆動カム236の回転によりスライダ237が3つの転写ローラ加圧ばね240の弾性力を開放する動作に応じて、第1の動作モードよりも強い力でホームバネ130の弾性力をチャージするようにホームバネ130(レバー部材129)に作用する。これにより、第2のキャンセルカム面324c4は、第1のキャンセルカム面324c2にレバー部材129が当接していたときよりも、大きなキャンセルトルクを発生させることができる。
【0196】
次に第3の動作モードから第1の動作モードに移行する際には、前述したように駆動カム236及び連動する従動ギア324に比較的大きな駆動トルクが発生する。このタイミングに合わせて、カム部324cにおけるアシストカム面324c6とレバー部材129が当接する。このような動作により、レバー部材129はホームバネ130を伸長させて弾性力を開放するように揺動する。すなわち、アシストカム面324c6は、駆動カム236の回転によりスライダ237が3つの転写ローラ加圧ばね240の弾性力をチャージする動作に応じて、ホームバネ130の弾性力を開放するようにホームバネ130(レバー部材129)に作用する。このホームバネ130の弾性力を開放する力は、従動ギア324に発生する駆動トルクを打ち消すアシストトルクを発生させる。
【0197】
このように本実施形態によれば、第4クラッチCL4は、中間転写ユニットTにおける第1の動作モードから第2の動作モードに移行する際に、従動ギア324に発生する逆入力トルクを低減することができる。また、第2の動作モードから第3の動作モードに移行する際に、従動ギア324に発生する更に大きな逆入力トルクに対して、大きなキャンセルトルクを発生させることにより低減することがでる。このように、中間転写ユニットTの動作モードの違いによる異なった大きさの逆入力トルクにも対応することができる。
【0198】
また、第3の動作モードから第1の動作モードに移行する際には、従動ギア324に対して、ホームバネ130を伸長させて弾性力を開放する力を与えることで、従動ギア324に発生する比較的大きな駆動トルクも低減することができる。
【0199】
〔他の実施形態〕
前述した第1実施形態では、第1カム部材であるホームカム124bは、ホームカム面124b1と、フォロワ部122bがピックバネ123の弾性力を開放する動作に応じてホームバネ130に作用するキャンセルカム面124b2とを備えた構成を例示した。キャンセルカム面124b2は、弾性力をチャージするようにホームバネ130に作用するカム面であり、ホームカム124bが回転するにつれてホームカム124bの回転中心から外周面までの径が大きくなるカム面である。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。第1カム部材であるホームカム124bは、ホームカム面124b1と、ピックアーム122のフォロワ部122bがピックバネ123の弾性力をチャージする動作に応じてホームバネ130に作用するアシストカム面と、を備えた構成でもよい。アシストカム面は、第2実施形態で説明したように、弾性力を開放するようにホームバネ130に作用するカム面であり、ホームカム124bが回転するにつれてホームカム124bの回転中心からの径が小さくなるカム面である。
【0200】
また前述した実施形態では、画像形成装置に対して着脱可能なカートリッジを4つ使用しているが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。また、画像形成装置に対して着脱可能なカートリッジとして、感光ドラムと、該感光ドラムに作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段を一体に有するカートリッジを例示したが、これに限定されるものではない。感光ドラムの他に、帯電手段、現像手段のうち、いずれか1つを一体に有するカートリッジであっても良い。
【0201】
更に前述した実施形態では、感光ドラムを含むカートリッジが画像形成装置に対して着脱自在な構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば感光ドラムとこれに作用するプロセス手段がそれぞれ組み込まれた画像形成装置、或いは感光ドラムとこれに作用するプロセス手段がそれぞれ着脱可能な画像形成装置としても良い。
【0202】
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。また中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像を記録材に一括して転写する画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。記録材担持体を使用し、該記録材担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に用いられる駆動伝達装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0203】
CL1,CL2,CL3 …クラッチ
D …駆動源
F1,F2 …給送部
S …記録材
T …中間転写ユニット
100 …画像形成装置
106 …ベルト
108,208 …ピックローラ
108a,110a,208a,210a …歯車部
109 …カセット
110,210 …給送ローラ
111,211 …分離ローラ
118,218 …ローラアイドラギア
119 …ローラホルダ
120,220 …アイドラギア
121,221 …ローラ駆動ギア
121a,221a …軸
122,222 …ピックアーム
122a …ボス
122b …フォロワ部
122c …係合部
123,232 …ピックバネ
124,224,324 …従動ギア
124a,224a,324a …ギア部
124b …ホームカム
124b1,231b1,324c1,324c3,324c5 …ホームカム面
124b2,231b2,324c2,324c4 …キャンセルカム面
124b3,231b3,324c6 …アシストカム面
124c,224b,224d,324b …欠歯部
124d …ボス
124e …回転軸部
124f …ギア部
124g …ピックカム
125,225,325 …駆動ギア
126,226,326 …トリガギア
126a,226a,326a …ギア部
126b,226b,326b …係止部
126c,226c,326c …欠歯部
126d,231c …ボス
126e …軸受部
126f …溝部
127,227 …トリガバネ
128,228 …ソレノイド
128a,228a …係止爪
128b,228b …戻しバネ
129,229 …レバー部材
129a,229a …揺動軸
130,230 …ホームバネ
209 …積載トレイ
219 …ローラガイド
222a …凹部
224c …係合部
231 …カム部材
231a,231b,324c …カム部
232,233 …フォロワ
233a …凸部
235 …駆動軸
236 …駆動カム
236a,236b,236c …作動面
237 …スライダ
237a,237b …昇降カム
238 …スライダばね
239 …一次転写ローラ支持部材
240 …転写ローラ加圧ばね
324d …軸部