(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/10 20060101AFI20240508BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20240508BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240508BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G03G15/10 112
G03G15/06 102
G03G21/00 310
G03G21/00 510
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2020132815
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2019187212
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】塚田 佳朗
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105985(JP,A)
【文献】特開2008-102415(JP,A)
【文献】特開2016-006453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/10
G03G 15/06
G03G 21/00
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
像担持体と、
前記像担持体に静電潜像を形成するために前記像担持体を露光する露光装置と、
前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーとキャリア液を含む液体現像剤を担持搬送し、且つ表層に弾性層が形成された導電性の現像ローラと、前記現像ローラに供給する液体現像剤を収容する現像容器と、前記現像ローラの回転方向に関して、前記現像容器から液体現像剤が供給される前記現像ローラ上の供給位置よりも下流、且つ、前記現像位置よりも上流に配置された前記現像ローラと接触する第1の導電性ローラと、前記現像ローラの回転方向に関して、前記現像位置よりも下流、且つ、前記供給位置よりも上流に配置された前記現像ローラと接触する第2の導電性ローラと、を有する現像装置と、
前記現像容器に液体現像剤を供給する供給装置と、
前記現像ローラと前記第1の導電性ローラが接触する第1の接触位置において前記液体現像剤中の正規帯電トナーが前記第1の導電性ローラから前記現像ローラに向かう電界が形成され、且つ、前記現像ローラと前記第2の導電性ローラが接触する第2の接触位置において前記液体現像剤中の正規帯電トナーが前記現像ローラから前記第2の導電性ローラに向かう電界が形成されるよう、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれにバイアスを印加するバイアス印加部と、
前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動する回転駆動部と、
を備え、
前記画像形成装置の電源がOFFからONに
移行した後であって且つ前記露光装置が前記像担持体を露光開始する前に行う前記現像装置の立ち上げ動作において、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤が前記供給位置に到達した状態で、前記回転駆動部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動し、
前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤が前記供給位置に到達した状態で前記回転駆動部が前記現像ローラの回転駆動を開始してから前記現像ローラが少なくとも1回転するまでの間、前記バイアス印加部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのいずれにもバイアスを印加することなく、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤が前記供給位置に到達した状態
で前記回転駆動部が前記現像ローラの回転駆動を開始してから前記現像ローラが少なくとも1回転した後に、前記バイアス印加部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれにバイアスを印加する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像容器に収容された液体現像剤を検知するためのセンサを更に備え、
前記画像形成装置の電源がOFFからONに
移行した後であって且つ前記露光装置が前記像担持体を露光開始する前に行う前記現像装置の立ち上げ動作において、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤を前記センサが検知したことに応じて、前記回転駆動部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像容器に収容された液体現像剤を検知するためのセンサを更に備え、
前記画像形成装置の電源がOFFからONに
移行した後であって且つ前記露光装置が前記像担持体を露光開始する前に行う前記現像装置の立ち上げ動作において、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤を前記センサが検知してから所定時間が経過した後に、前記回転駆動部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置の電源がOFFからONに
移行した後であって且つ前記露光装置が前記像担持体を露光開始する前に行う前記現像装置の立ち上げ動作において、前記供給装置による前記現像容器への液体現像剤の供給と同時に、前記回転駆動部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記バイアス印加部は、前記第1の導電性ローラ、前記第2の導電性ローラ、前記現像ローラの順にバイアスを印加する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像装置は、前記現像ローラの回転方向に関して、前記供給位置よりも下流、且つ、前記第1の接触位置よりも上流に配置され、且つ、前記現像ローラと所定のギャップを介して対向配置された電極を更に有し、
前記バイアス印加部は、前記現像ローラと前記電極が対向する対向位置において前記液体現像剤中の正規帯電トナーが前記電極から前記現像ローラに向かう電界が形成されるよう、前記現像ローラと前記電極のそれぞれにバイアスを印加する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の導電性ローラは、前記現像ローラに担持された液体現像剤の量を規制するための絞りローラである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2の導電性ローラは、前記現像ローラに担持された液体現像剤中のトナーを除去するための清掃ローラである
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像をトナーとキャリア液を含む液体現像剤を用いて現像する現像装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体などの潜像担持体上に形成された静電潜像を荷電した粒子(トナー)によって現像し、画像を形成する電子写真方式による画像形成装置(コピー機、プリンタ、ファックス等、およびその複合機)が広く普及している。
【0003】
電子写真方式において、潜像担持体上にトナー粒子により作像する過程である現像プロセスは、トナー粒子を粉体そのままの状態で使用する乾式現像方式と、液体中に分散させて画像形成に使用する湿式現像方式とに大別される。一般的にオフィスや家庭、あるいは軽印刷用途の電子写真方式といえば乾式現像剤の利用がほとんどである。
【0004】
高精細な印刷物を得るためには、より小粒子径の現像剤を利用する方が有利である。しかしながら、粒子径が小さくなるほど粒子同士の凝集力が高くなり、適度な流動性の維持を困難にすること等から、乾式現像剤の粒子径は5μm程度が下限となっている。
【0005】
それに対して、トナー粒子の挙動を液体キャリア中で制御する液体現像剤は、飛散することがなく、また粒子が液体中に分散しているので十分な流動性が維持できる。このため、液体現像剤は1μmより小粒子径とすることも可能で、高品位な画像を得やすい(特許文献1参照)。したがって、より高精細な画質が要求されるデジタル商業印刷等の分野においては、湿式現像方式は有望な画像形成プロセスである。
【0006】
ここで、現像装置に湿式現像方式を用いた画像形成装置における、液体現像剤による画像形成動作原理を概説する。
【0007】
湿式現像方式の画像形成装置では、作像に使用される液体現像剤は、現像剤混合槽においてトナー粒子とキャリア液とが適切な比率(現像剤全体におけるトナー粒子の重量パーセント濃度(wt%)で表す。以下T/Dと記す)で存在しており、充填率が高い(通常T/Dが20wt%以上)状態でトナー粒子が保存された濃縮トナーと、液体キャリアとの供給によりT/Dが調整されている。現像剤混合槽の液体現像剤は、供給ポンプにより現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給槽へと現像剤供給口から供給される。
【0008】
現像装置では、液体現像剤に含まれるトナー粒子が電気泳動により現像剤担持体上に成膜され、潜像担持体と対向する画像形成部へと搬送される。具体的には、まず現像剤供給槽へと供給された液体現像剤は、ローラ形状の現像剤担持体の回転により現像剤担持体表面に担持される。その後、現像剤担持体と成膜電極との対向部(ギャップ数100μm)、を通過する際に、成膜電極と現像剤担持体表面との電位差で生じる電界の作用で現像剤担持体表面側へトナーが引き寄せられる。
【0009】
その後、現像剤担持体表面近傍の液体現像剤は、主としてローラ部材である絞り部材と現像剤担持体とが形成する数μmの間隙、すなわち絞り部へと搬送される。なお、現像剤担持体と絞り部材とは現像装置非動作時で液体現像剤が介在しない場合には互いに適切な圧力で当接しており、現像装置動作時に液体現像剤が上流より供給されると、互いの回転動作により液体現像剤が両部材間に流れ込みギャップを形成する。絞り部では、絞り部材と現像剤担持体表面との間隙通過時に両部材間の電位差により生じる電界の作用でトナー粒子が電気泳動し、現像剤担持体表面にトナーが押し付けられる。結果、現像剤担持体表面最近傍にはトナー粒子径の1~3倍程度のトナー粒子の層が、その上層にはサブμm~μmオーダー厚さの液体キャリアの層が形成される。
【0010】
成膜電極および絞り部材によって現像剤担持体上に成膜された液体現像剤は、潜像担持体との対向部である現像部へと搬送され画像形成が行われる。現像部では、潜像担持体上に描かれた潜像により形成される電位差に応じて、画像部では現像剤担持体上のトナー粒子が潜像担持体上に電気泳動により移動し、非画像部ではトナー粒子は現像剤担持体上に引き寄せられたまま画像形成部を通過する。本工程を経て、潜像担持体上に描かれた静電潜像はトナー粒子により可視像化される。なお現像部において現像剤担持体と潜像担持体とは適切な圧で当接されるが、両者の回転動作によって現像剤担持体上の現像剤層は両担持体間に間隙を形成しながら流れ込む。
【0011】
潜像担持体上に形成されたトナー像は、以降一次転写、二次転写のプロセス経て電気泳動によりメディア上まで搬送され、定着手段によってメディア上に定着される。
【0012】
一方、画像形成に寄与せず現像剤担持体上に残留したトナー粒子は、下流に設けられた清掃部材によって回収される。主として清掃部材は現像剤担持体に対向するローラ部材であり、両部材間の間隙すなわち清掃部に搬送されたトナー粒子は、両部材間の電界の作用により現像剤担持体から清掃部材へと電気泳動することにより現像剤担持体上から引き離される。ここでも絞り部同様に、現像剤担持体と清掃部材とは、現像装置非動作時で液体現像剤が介在しない場合には互いに適切な圧力で当接しており、現像装置動作時に液体現像剤が上流より供給されると、互いの回転動作により液体現像剤が両部材間に流れ込み間隙を形成する。清掃部材に担持されたトナー粒子は、更なる清掃部材等の作用により回収され、再利用のために現像剤排出口から現像剤混合槽へと戻る。
【0013】
現像剤担持体表面は、上記のとおり清掃部材においてトナー粒子が除去されたのち再び現像剤供給槽から供給される液体現像剤を担持し、成膜電極との対向部へと進む。
【0014】
上述のような湿式現像方式の現像装置において、現像剤担持体の表層には弾性の機械特性を有するゴムや樹脂材料が用いられる。その理由は、絞り部、現像部、清掃部のように現像剤担持体とローラ形状の部材とが対向した箇所に形成される間隙においてトナー粒子を所望の方向へと電気泳動させるため、それぞれの箇所で接触幅を広く取ってトナー粒子の電気泳動にかかる時間を充分確保する必要があるからである。よってそれぞれの対向部では、動作に支障がない範囲で強い圧力により現像剤担持体と各部材とが当接されている。
【0015】
現像剤担持体と部材が対向した各々の箇所においては、現像剤担持体と対向した部材の移動速度差、すなわち周速差は、それぞれの目的に応じて適切な値に設定される。通常現像部においては、潜像担持体上に形成された潜像を忠実にトナー粒子で可視化するために、現像剤担持体と潜像担持体との周速差は±数%の範囲でほぼ0%に設定される。一方絞り部においては、現像剤担持体上に担持させる現像剤の量を適正化させることを目的とし、しばしば±数百%(-100%以下は逆回転を表す)の範囲で調整される。
【0016】
現像剤担持体表面は、画像形成動作中には常に液体現像剤が供給されているのに対し、動作停止時には現像剤担持体上からはトナー粒子が除去されキャリア液のみが付着した状態となる。動作停止直後は現像剤担持体表面はキャリア液で濡れているが、時間の経過に伴い現像剤担持体表面からキャリア液が蒸発していく。そのため、動作停止が長時間継続した後(例えば、画像形成装置の電源がOFFからONになった場合)には、現像剤担持体の表面は乾燥した状態となる。
【0017】
湿式現像方式においては、現像剤担持体と各部材間には、トナーを電気泳動させるために所定の電位差がつくられている。この際、必要となる電位差は、上述した各ニップ幅と印刷速度から算出されるニップ通過時間、およびトナーの泳動能力から概ね算出される。通常、動作中に各ニップに印加される電位差は数百Vから数kVである。
【0018】
導電性の現像剤担持体の表層に用いられる材料は、通常イオン導電もしくはカーボン導電材を含んだ弾性体(例えば、ゴム)である。これらの材料を含む導電ローラは、電界により経時的に劣化(抵抗変動)することが一般的に知られている。
【0019】
前述したように、動作停止が長時間継続した後(画像形成装置の電源がOFFからONになった場合)には、現像剤担持体の表面が乾燥している状態、即ち、動作停止が長時間継続した後には、現像剤担持体と各当接部材との対向部に液体現像剤が存在していない状態となっている。
【0020】
現像装置の立ち上げ動作において、現像剤担持体と各当接部材との対向部に液体現像剤が存在していない状態で電位差が形成された場合、現像剤担持体と各当接部材との対向部に液体現像剤が存在している状態で電位差が形成される通常画像形成時と比べて、現像剤担持体と各当接部材との間に電流が過剰に流れてしまう。その結果、導電性の現像剤担持体の表層に形成された弾性層の抵抗が上昇し、現像剤担持の寿命が短縮する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものである。画像形成装置の電源がOFFからONに移行した後であって且つ露光装置が像担持体を露光開始する前に行う現像装置の立ち上げ動作において、現像剤担持体と各当接部材との対向部に液体現像剤を介在させてから、現像剤担持体と各当接部材のそれぞれにバイアスを印加する。これにより、現像剤担持体の寿命が短縮することを抑制することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、画像形成装置であって、像担持体と、前記像担持体に静電潜像を形成するために前記像担持体を露光する露光装置と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像位置にトナーとキャリア液を含む液体現像剤を担持搬送し、且つ表層に弾性層が形成された導電性の現像ローラと、前記現像ローラに供給する液体現像剤を収容する現像容器と、前記現像ローラの回転方向に関して、前記現像容器から液体現像剤が供給される前記現像ローラ上の供給位置よりも下流、且つ、前記現像位置よりも上流に配置された前記現像ローラと接触する第1の導電性ローラと、前記現像ローラの回転方向に関して、前記現像位置よりも下流、且つ、前記供給位置よりも上流に配置された前記現像ローラと接触する第2の導電性ローラと、を有する現像装置と、前記現像容器に液体現像剤を供給する供給装置と、前記現像ローラと前記第1の導電性ローラが接触する第1の接触位置において前記液体現像剤中の正規帯電トナーが前記第1の導電性ローラから前記現像ローラに向かう電界が形成され、且つ、前記現像ローラと前記第2の導電性ローラが接触する第2の接触位置において前記液体現像剤中の正規帯電トナーが前記現像ローラから前記第2の導電性ローラに向かう電界が形成されるよう、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれにバイアスを印加するバイアス印加部と、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動する回転駆動部と、を備え、前記画像形成装置の電源がOFFからONに移行した後であって且つ前記露光装置が前記像担持体を露光開始する前に行う前記現像装置の立ち上げ動作において、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤が前記供給位置に到達した状態で、前記回転駆動部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれを回転駆動し、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤が前記供給位置に到達した状態で前記回転駆動部が前記現像ローラの回転駆動を開始してから前記現像ローラが少なくとも1回転するまでの間、前記バイアス印加部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのいずれにもバイアスを印加することなく、前記供給装置により前記現像容器に供給された液体現像剤が前記供給位置に到達した状態で前記回転駆動部が前記現像ローラの回転駆動を開始してから前記現像ローラが少なくとも1回転した後に、前記バイアス印加部は、前記現像ローラ、前記第1の導電性ローラ、及び前記第2の導電性ローラのそれぞれにバイアスを印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、画像形成装置の電源がOFFからONに移行した後であって且つ露光装置が像担持体を露光開始する前に行う現像装置の立ち上げ動作において、現像剤担持体と各当接部材との対向部に液体現像剤を介在させてから、現像剤担持体と各当接部材のそれぞれにバイアスを印加することにより、現像剤担持体の寿命が短縮することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態にかかる現像装置50および液体現像剤補給循環系200の主要構成要素を示した断面図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる画像形成装置100の主要構成要素を示した断面図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる制御系統を示したブロック図である。
【
図4】実施例1(立ち上げ動作)における現像剤供給、電圧印加、および各部材の駆動停止のタイミングを示したチャートである。
【
図5】実施例1(立ち下げ動作)における現像剤供給、電圧印加、および各部材の駆動停止のタイミングを示したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施例では、本発明を適用した現像装置および画像形成装置の一つの形態について説明する。
【0028】
[現像装置]
まず、本実施例における現像装置の構成について説明する。
【0029】
図1は、現像装置50の主要構成要素を示した断面図である。
【0030】
現像装置50には、潜像担持体である感光体ドラム20へと液体現像剤を搬送する現像剤担持体である現像ローラ54を中心として、その周囲感光体ドラム20より上流側には、現像液を貯蔵する現像剤供給槽53、現像剤供給槽53から液体現像剤を現像ローラ54上に担持させてトナー粒子を現像ローラ54側へ電界の作用により寄せる成膜電極51、現像ローラ54上に担持された液体現像剤に含まれるトナー粒子をさらに電界の作用で現像ローラ54側に押し付けると同時に余分なキャリア液を絞って回収する絞り部材である絞りローラ52が、下流側には感光体ドラム20において画像形成に寄与しなかった現像ローラ54上のトナー粒子を電界の作用で回収する第一の清掃部材である現像クリーニングローラ58が配置される。これらの部材で現像ユニット500が形成される。
【0031】
現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58にはそれぞれ、不図示の電圧印加手段から電圧が印加される。液体現像剤中のトナー粒子の移動は、それぞれの部材に印加された電圧の電位差に応じて電気泳動により行われ、トナー粒子の移動量や押しつけ量は、各部材間の電位差を調整することにより制御が行われる。なお、本実施例においては、現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52の各部材に印加する電圧はすべて負の電圧であり、現像クリーニングローラ58へ印加する電圧は正または負の電圧である。
【0032】
本実施例に用いる液体現像剤は、主としてポリエステル系の樹脂中へ顔料等の着色料を分散させた平均粒径0.7μmの粒子を、有機溶媒等の液体キャリア中に分散剤やトナー帯電制御剤、帯電指向剤とともに添加したもので、トナー粒子表面は負極性に一定量帯電している。なお、トナー粒子とキャリア液の比重はそれぞれ、1.35g/cm3、0.83g/cm3である。
【0033】
本実施例においては、画像形成プロセススピードは785mm/sであり、画像形成に寄与する上記ローラ形状の部材は、それぞれ表面周速が785mm/sとなるように回転駆動する。
【0034】
現像ローラ54は、直径42.6mmの円筒状の部材であり、中心軸を中心に
図1に示すように時計回りに回転する。該現像ローラ54はステンレス等金属製の内芯の外周部に厚さ4.3mmの導電性ポリマー等による弾性体層を備えたものである。即ち、導電性の現像ローラ54の表層には弾性層が形成されており、弾性層を構成する弾性部材としては、EPDM、ウレタン、シリコン、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、などから選択された樹脂に、電気抵抗調整材料として導電性微粒子、例えばカーボン、酸化チタン等のいずれか一つ、もしくは複数を用いて分散混合した分散型抵抗調整樹脂をベースにした物や、上述した樹脂にイオン性導電材料、例えば過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、塩化ナトリウム等の無機イオン性導電剤などのいずれか一つ、もしくは複数を用いた電気的抵抗調整樹脂をベースにしたものが適切である。
【0035】
一般に弾性体層の体積抵抗率はばらつきも含めて1×102~1×1012Ω・cmの範囲において使用され、より望ましくは1×105~1×109Ω・cmの範囲において使用される。また、弾性を得るための発泡・混合工程として発泡剤を用いる場合には、シリコン系界面活性剤(ポリジアルシロキサン、ポリシロキサン・ポリアルキレノキシドブロック共重合体)が適切である。一般に、弾性体層の硬度はJIS規格デュロメータ・タイプAを用いた測定で20°~50°の範囲において使用され、より望ましくは25°~45°の範囲において使用される。本実施例における現像ローラ54の表層は導電性ウレタンゴムであり、現像ローラ表層内部にはイオン導電剤が分散され、体積抵抗率が初期状態では5×106~1×108Ω・cmに調整してある。また、硬度は初期状態ではJIS規格デュロメータ・タイプAを用いた測定で25°~30°に調整してある。
【0036】
現像剤供給槽53は、感光体ドラム20上に形成された潜像を現像するための液体現像剤を現像ローラ54に供給するために収容する箇所であり、現像剤混合槽101においてトナー粒子の濃度(以下、現像剤中におけるトナー粒子の重量パーセント濃度[wt%]で示す。略称T/D)を適正に調整された液体現像剤が供給される。本実施例においては、現像剤混合槽101において液体現像剤のT/Dは3.0±0.5wt%に調整されており、液体現像剤が現像剤供給口531から現像剤循環ポンプ110の動作により現像剤供給槽53に供給される。なお、液体現像剤補給循環系200周りの構成および動作については、別途詳述する。
【0037】
現像剤供給槽53には、液体現像剤の剤面を検知するための剤面検知センサ59が設けられている。現像剤供給口531から現像剤循環ポンプ110の動作により現像剤供給槽53に液体現像剤が供給されて、現像剤供給槽53内の液体現像剤の剤面の高さが剤面検知センサ59の検知面の高さまで到達したとする。この場合、剤面検知センサ59は液体現像剤があることを検知し、剤面検知センサ59の出力がOFFからONに変化する。
【0038】
また、現像剤供給槽53には、後に詳述するフラッシング流路57と、現像剤排出穴532が設けられている。現像剤供給槽53への液体現像剤の供給が止められた場合、現像剤供給槽53底面に設けられた現像剤排出穴から液体現像剤は漏出するため、収容された液体現像剤の量は徐々に減少して最終的には現像剤供給槽53は空となる。なお、現像剤供給槽53底面に設けられた現像剤排出穴から液体現像剤が漏出されて、現像剤供給槽53内の液体現像剤の剤面の高さが、剤面検知センサ59の検知面の高さを下回ったとする。この場合、剤面検知センサ59は液体現像剤がないことを検知し、剤面検知センサ59の出力がONからOFFに変化する。
【0039】
成膜電極51は、現像ローラ54との対向部した面の周方向長さが24mmであり、現像ローラ54と400±80μmとのギャップを形成する。現像剤供給槽53に供給された液体現像剤は、現像剤供給槽53から液体現像剤が供給される現像ローラ54上の供給位置に到達した状態で、現像ローラ54の回転によって成膜電極51と現像ローラ54とのギャップとに引き込まれ(
図1中矢印A)、成膜電極51と現像ローラ54との印加電圧の差により当該ギャップ部に生じている電界によってトナー粒子が現像ローラ54側へと寄せられる。即ち、現像ローラ54と成膜電極51が対向する対向位置において、液体現像剤中の正規帯電トナーが成膜電極51から現像ローラ54に向かう電界が形成されている。
【0040】
絞りローラ52は、金属からなる円筒形の部材(導電性のローラ)であり、本実施例では直径16.8mmのステンレス鋼で作成されたローラを用いる。絞りローラ52は現像ローラ54と長手(本実施例では354mm)に渡って圧力が一定(本実施例では35±5kPa)となるように当接され、
図1に示すように反時計回りに回転する。現像剤供給槽53から汲み上げられ成膜電極51-現像ローラ54間のギャップを通過して絞りローラ52-現像ローラ54対向部に規定速度で搬送された液体現像剤のうち、現像ローラ54表面近傍に存在する分は、絞りローラ52-現像ローラ54間に入り込んでギャップ略1.5~2.0μm、幅略3mmのニップを安定的に形成する(
図1中矢印B)。当該ニップにおいては、絞りローラ52と現像ローラ54との印加電圧の差により生じている電界によって、トナー粒子は現像ローラ54側に押し付けられる。即ち、現像ローラ54と絞りローラ52が接触する接触位置において、液体現像剤中の正規帯電トナーが絞りローラ52から現像ローラ54に向かう電界が形成されている。
【0041】
絞りローラ52-現像ローラ54間ニップの出口付近では、液体現像剤はそれぞれのローラ表面に泣き別れるが、現像ローラ54側にはニップに存在するほぼすべてのトナー粒子とキャリア液が、絞りローラ52側へはキャリア液のみが連れまわるため、現像ローラ54上に成膜された液体現像剤層のT/Dは、現像剤供給槽における液体現像剤のT/Dと比べて10倍以上高くなる。
【0042】
なお本実施例では、絞りローラ52-現像ローラ54間ニップ通過後に現像ローラ54表面には、体積分率略60vol%に積層したトナー層の厚さは1.0±0.05μm、その上層のキャリア液層の厚さは0.3±0.05μmの現像剤層が形成されており、現像液中のT/Dは、50±5wtである。
【0043】
一方、成膜電極51と現像ローラ54とのギャップを通過したのちに絞りローラ52と現像ローラ54とのギャップに侵入しない液体現像剤は、絞りローラ52に跳ね返される形で成膜電極51の背面へと流され(
図1中矢印C)、現像剤回収槽55へと回収される。
【0044】
現像ローラ54上に担持されたトナー粒子層を含む液体現像剤は、現像ローラ54と感光体ドラム20の対向部、すなわち現像部において、感光体ドラム20上に描かれた潜像に倣って以下に詳述するように可視画像を形成する。
【0045】
感光体ドラム20は、現像ローラの幅より広く、外周面に感光層が形成された円筒状の部材であり、
図1に示すように反時計周りに回転する。感光体ドラム20の感光層は通常、有機感光体又はアモルファスシリコン感光体等で構成される。本実施例では、アモルファスシリコンおよびアモルファスカーボンの混合体により感光層が形成された、直径が84mmの感光体ドラム20を用いる。
【0046】
感光体ドラム20の周囲には、その回転方向に沿って感光体ドラム20を帯電する帯電ユニット30、帯電された感光体ドラム20に静電潜像を形成する露光ユニット40が、現像部上流に配置される。
【0047】
帯電ユニット30は、感光体ドラム20を帯電するための装置である。本実施例では帯電ユニット30はコロナ帯電器により構成され、帯電ワイヤに約-4.5kV~-5.5kVの電圧を印加することにより、感光体ドラム20の表面が略-500Vに帯電される。露光ユニット40は、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F-θレンズ等を有し、変調されたレーザを帯電された感光体ドラム20表面に照射することで静電潜像を形成する。本実施例では、露光ユニット40により画像部の電位が略-100Vとなるように潜像が形成される。
【0048】
現像部上流において感光体ドラム20上に形成された静電潜像は、現像部においてトナー粒子による可視像が形成される。現像部では、本実施例では、現像ローラ54に略-300Vの現像バイアスが印加され、感光体ドラム20上の静電潜像(画像部:-100V、非画像部:-500V)で形成される電界にしたがって、画像部ではトナー粒子が感光体ドラム20上へと電気泳動により移動し、非画像部では現像ローラ上にトナー粒子が押付けられる方向に電界が作用するため、トナー粒子は現像ローラ上にそのまま残留する。これにより、感光体ドラム20上にトナー粒子による可視画像が形成される。
【0049】
現像部で感光体ドラム20上へと移動したトナー粒子は下流の画像形成プロセスへと進んで中間転写ベルト70上に一次転写される。一次転写部では、感光体ドラム20と中間転写ベルト70が対向しており、中間転写ベルト70の背面には一次転写バックアップローラ61が当接している。一次転写バックアップローラ61には、トナー粒子の帯電特性と逆極性の電圧(本実施例では+200~+300V)が印加され、感光体ドラム20上に形成されたトナー粒子像は中間転写ベルト70上に電気泳動により移動する。感光体ドラム20上にはキャリア液と数%程度のわずかなトナーが残留するが、これは一次転写部下流に配された感光体クリーニングブレード21により掻き取られ、感光体クリーニング液回収部22で回収される。
【0050】
一方、現像ローラ54上に残留したトナー粒子は、回収・再利用へプロセスへと進む。現像ローラ54上において、現像部から下流には第一のクリーニング部材である現像クリーニングローラ58が当接している。現像クリーニングローラ58は現像ローラ54と長手(本実施例では354mm)に渡って圧力が一定(本実施例では80±5kPa)となるように当接され、
図1に示された断面では反時計回りに回転する。本実施例では、クリーニングローラにはステンレス鋼(金属)で作成された直径16.8mmのローラ(導電性のローラ)を用いる。現像ローラ54と現像クリーニングローラ58とのニップ部では、それぞれに印加された電圧の差によって電界が生じており、現像部において画像形成に寄与しなかった現像ローラ54上のトナー粒子は当該ニップ部に突入し、ほぼすべて電気泳動により現像クリーニングローラ58表面へと移動する。即ち、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58が接触する接触位置において、液体現像剤中の正規帯電トナーが現像ローラ54から現像クリーニングローラ58に向かう電界が形成されている。
【0051】
現像クリーニングローラ58には、
図1に示すように第二の清掃部材である現像クリーニングローラクリーニングブレード(以下単にクリーニングブレード)56が当接している。クリーニングブレード56はステンレス鋼からなる厚み0.2mm、自由長20mmのブレードであり、その先端が現像クリーニングローラ58の回転に対してカウンター方向で、垂直方向から30±3°傾くように突き当てられている。現像ローラ54から現像クリーニングローラ58表面に回収されたトナー粒子を含む液体現像剤は、クリーニングブレード56先端の現像クリーニングローラ56との接触部において掻き取られ、クリーニングブレード56の傾斜を伝って現像剤回収槽55へと流れていく。
【0052】
現像クリーニングローラ58に回収される液体現像剤は、現像部で形成される画像によって含まれるトナー粒子の濃度(すなわちT/D)が異なるが、最大でT/Dは略65wt%と非常に高くなる。このとき、現像クリーニングローラ58上に回収された液体現像剤の見かけ粘度は、略140mPa・sにまで上昇する。
【0053】
このように見かけ粘度が高い液体現像剤をクリーニングブレード56で掻きとった場合、クリーニングブレード56の表面の傾斜を伝って現像剤回収槽55へと流れづらくなり、したがってクリーニングブレード56先端部や表面の段差部などにトナー粒子が滞留しやすくなる。
【0054】
上記のような状況を緩和するために、本実施例では、現像剤供給槽53に供給されたT/Dの低い(本実施例では3.0±0.5wt%)状態の液体現像剤を現像クリーニングローラ58のクリーニングブレード56との接触部上流に流し掛ける(フラッシング)。具体的には、現像剤供給槽53に供給された液体現像剤の一部を成膜電極51下部に設けられたフラッシング流路57へと流すことにより、フラッシング機能を実現する(
図1中矢印D)。フラッシングを行うことにより、現像クリーニングローラ58上に回収された液体現像剤のT/Dは、最大でも略10wt%にまで低下する。その結果、液体現像剤の見かけ粘度は略8.0mPa・s程度にまで低下するため、クリーニングブレード56で掻き取られた液体現像剤はその表面や段差部で滞留することなくスムーズに現像剤回収槽55へと流れ落ちる。
【0055】
絞りローラ52に跳ね返されて成膜電極51背面から現像剤回収槽55へ回収された液体現像剤、現像クリーニングローラ58で回収されてフラッシングおよびクリーニングブレード56の掻きとりにより現像剤回収槽55へ回収された液体現像剤、および現像剤排出穴532から現像剤回収槽55へと漏出した液体現像剤は、現像剤排出口551から排出され、不図示の循環流路を経て再び現像剤混合槽101へと供給される。
【0056】
液体現像剤補給循環系200においては、上述したように、現像剤混合槽101で濃度が適正化(本実施例では3.0±0.5wt%)された液体現像剤が、現像剤循環ポンプ110により現像装置50へと供給される。現像剤供給槽53へと供給された液体現像剤のうち、画像形成に寄与せずに現像剤回収槽55を経て現像剤混合槽101へと回収されるが、回収された液体現像剤中のT/Dは画像形成で消費されるトナー量に依存する。よって、現像剤混合槽101には不図示の液体現像剤濃度検知手段が設けられており、当該検知手段で得られたT/Dの情報に基づいて濃縮現像剤およびキャリア液が補給され、現像剤混合槽101内のT/Dは適正値の範囲に収まるように制御される。本実施例においては、
図1に示すように、濃縮現像剤容器102から不図示のバッファを経てT/Dが40wt%程度に濃縮された濃縮現像剤が、またキャリア液槽103からキャリア液が、それぞれ定量ポンプ111a、111bによって必要量補給される。
【0057】
[画像形成装置]
次に、本実施例における画像形成装置の構成を説明する。
【0058】
図2は、本発明の実施形態の画像形成装置100の主要構成を示す図である。
【0059】
画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)4色の液体現像剤によるフルカラー画像形成装置である。前記詳述した現像装置50が各色分計4個、
図2に示すように中間転写ベルト70上部に上流から現像装置50Y、50M、50C、50Kの順序で並んでいる。
【0060】
中間転写ベルト70は、ベルト駆動ローラ82、従動ローラ85、および二次転写内ローラ86に張架されたエンドレスベルトであり、感光体20Y、20M、20C、20K、二次転写外ローラ81と当接しながら回転駆動される。中間転写ベルト70,一次転写バックアップローラ61Y、61M、61C、61K及び感光体20Y、20M、20C、20Kとで構成された一次転写ユニット60Y、60M、60C、60Kにより、中間転写ベルト70上に4色の液体トナーが順次重ねて転写され、フルカラー液体トナー像が形成される。
【0061】
一次転写ユニット60Kは、感光体20K上に形成されたブラック液体トナー像を中間転写ベルト70に転写するための装置である。
【0062】
一次転写ユニット60Kで中間転写ベルト70上に一次転写されたトナー画像は、二次転写ユニット80へ向かう。二次転写ユニット80において、二次転写外ローラ81には+1000Vの電圧が印加され、二次転写外ローラ82は0Vに保たれており、中間転写ベルト70上のトナー粒子は、紙等のメディア表面に二次転写される。なお二次転写後に中間転写ベルト70上に残る現像剤は、不図示の中間転写ベルト清掃部材により回収される。
【0063】
二次転写ユニット80は、二次転写外ローラ81、中間転写ベルト駆動ローラ82、二次転写外ローラブレード83、二次転写ローラクリーニング液回収部84から構成され、中間転写ベルト70上に形成された単色液体トナー像やフルカラー液体トナー像を紙当の記録媒体に転写する。
【0064】
なお、中間転写ベルト上には、画像の濃度をモニターするためのテスト画像が画像形成動作の間に定期的に描かれ、二次転写ユニット80上流に設けられたトナー画像濃度センサ87でその濃度が検知される。本実施例ではトナー画像濃度センサ87は光学式のセンサであり、テスト画像に照射されたLED光の正反射および乱反射光の強度からトナー画像の濃度を検知する。検知されたトナー画像の濃度の情報に基づいて、フィードバック制御により画像濃度の適正化が行われる。具体的には、成膜電極51に印加される電圧を調整することで、画像濃度は調整される。
【0065】
不図示の定着ユニットにおいて、記録媒体上に転写された単色液体トナー像やフルカラー液体トナー像は、記録媒体上に定着される。
【0066】
[現像剤担持体表層の抵抗の上昇を抑制する動作]
以下では、本実施例において本発明を具現化する方法について説明する。
【0067】
A.現像装置の動作開始に関わる制御系
本発明の方法では、現像剤供給槽53への液体現像剤の供給のための現像剤循環ポンプ110、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58のそれぞれの回転駆動、および現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58それぞれへの印加電圧を適切に制御することで発明を具現化する。
図3には、本実施例の画像形成装置100の制御系統のうち、本発明の方法を具現化するのに必要な部分を抜粋して表してある。
【0068】
本実施例において、画像形成時には現像剤混合槽101から現像剤供給槽53への液体現像剤の供給が連続的に行われている。その際、供給された液体現像剤は、成膜電極51-現像ローラ54間へと進んで現像ローラ54上に担持されるか、フラッシング流路57へと進んで現像クリーニングローラ58上のフラッシングに寄与する。また、一部は現像剤排出穴532を通じて現像剤供給槽53から現像剤回収槽55へと漏出する。現像剤供給槽53への液体現像剤の供給が止められると、現像ローラ54上およびブラッシング流路57への液体現像剤の供給がなくなり、その後現像剤排出穴532から液体現像剤は徐々に漏出して最終的に現像剤供給槽53内は空になる。
【0069】
画像形成動作時には、現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58にはそれぞれ電圧が印加され、トナー粒子の電気泳動の駆動力となる。本実施例において、画像形成時に現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58に印加される電圧はそれぞれ、-350V~-300V、-750V~-350V、-150V~+700Vであり、液体現像剤の抵抗率あるいは現像ローラ54表層の抵抗率等の値に応じて適宜制御される。なお本実施例では、液体現像剤の抵抗率の検知は現像剤混合槽101に、現像ローラ54表層の抵抗率の検知は現像ローラ54の周囲に、それぞれ
図1および
図2には不図示の検知手段が設けられる。成膜電極51に印加される電圧は、中間転写ベルト70上に設けられたトナー画像濃度センサ87で検知された画像濃度により制御されるが、これは画像形成に寄与する液体現像剤中のトナー粒子の移動度(電界強度に対する移動速度)がトナー粒子の消費状況等により変化することに起因する。なお、典型的な状況において、成膜電極51に印加される電圧は、-600~-900Vである。
【0070】
現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58は、画像形成時にはそれぞれほぼ同等の表面周速で回転している。回転の駆動力は現像ローラ54に対して不図示のモータにより与えられており、絞りローラ52と現像クリーニングローラ58へはギアを介して現像ローラ54から駆動力が分け与えられている。そのため本実施例では、これら3つのローラ部材は同時に回転動作を開始・停止することとなる。
【0071】
現像ローラ54を含む現像ユニット500は、感光体ドラム20の方向に対して現像ローラ54が当接と脱離を行うように動作する。本実施例では、画像形成動作時には現像ローラ54と感光体ドラム20とは、当接圧80±5kPaで当接する。画像形成動作の前後では、現像ローラ54は感光体ドラム20と離間した状態でそれぞれの動作は停止される。
【0072】
B.現像装置の動作開始シーケンス
次に、本実施例における現像装置50の動作開始シーケンスを説明する。
【0073】
具体的には、現像剤混合槽101から現像剤供給槽53への液体現像剤の供給、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転駆動、および現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58それぞれへの電圧印加をどのようなタイミングで制御して画像形成動作を開始させるか、
図4に示したタイミングチャートを用いて以下に詳述する。
【0074】
現像装置50は動作停止状態では、上述したように現像剤供給槽53からは底面に設けられた現像剤排出穴から液体現像剤は漏出するため、液体現像剤が抜けて空になっている。
【0075】
現像ローラ54の表面は、画像形成動作中には常に液体現像剤が供給されているのに対し、動作停止時には現像ローラ54上からはトナー粒子が除去されキャリア液のみが付着した状態となる。動作停止直後は現像ローラ54の表面はキャリア液で濡れているが、時間の経過に伴い現像ローラ54の表面からキャリア液が蒸発していく。そのため、動作停止が長時間継続した後(例えば、画像形成装置100の電源がOFFからONになった場合)には、現像ローラ54の表面は乾燥した状態となっている。即ち、動作停止が長時間継続した後には、現像ローラ54と絞りローラ52との対向部に液体現像剤が存在しない状態となっており、且つ、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58との対向部に液体現像剤が存在しない状態となっている。
【0076】
動作停止が長時間継続した後(画像形成装置100の電源がOFFからONになった場合)の現像装置50の立ち上げ動作は、このような状態で開始される。仮に、現像ローラ54と絞りローラ52との対向部、及び、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58との対向部のいずれにも液体現像剤が存在しない状態で、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58のそれぞれにバイアスを印加したとする。この場合、現像ローラ54と絞りローラ52との間に液体現像剤が介在していない状態で電位差が形成され、且つ、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58との間に液体現像剤が介在していない状態で電位差が形成される。
【0077】
現像装置50の立ち上げ動作において、現像ローラ54と絞りローラ52との間に液体現像剤が介在していない状態で電位差が形成された場合、現像ローラ54と絞りローラ52との間に液体現像剤が介在している状態で電位差が形成される通常画像形成時と比べて、現像ローラ54と絞りローラ52との間に電流が過剰に流れてしまう。同様にして、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58との間に液体現像剤が介在していない状態で電位差が形成された場合、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58との間に液体現像剤が介在している状態で電位差が形成される通常画像形成時と比べて、現像ローラ54と現像クリーニングローラ58との間に電流が過剰に流れてしまう。その結果、導電性の現像ローラ54の表層に形成された弾性層の抵抗が上昇し、現像ローラ54の寿命が短縮する虞がある。
【0078】
現像装置50の立ち上げ動作はこのような状態から開始するため、まず現像剤循環ポンプ110を動作させ、現像剤混合槽101に収容された液体現像剤を現像装置50の現像剤供給槽53へと供給する(T1)。
【0079】
次に、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作を開始する(T2)。現像ローラ54表面の弾性体層に対してかかりうる摩擦力の付加を抑制するためには、現像ローラ54と、現像ローラ54表面に当接している絞りローラ52及び現像クリーニングローラ58の回転動作は同時に開始されることが望ましい。本実施例では上述のように、絞りローラ52および現像クリーニングローラ58の回転動作は現像ローラ54からギアを介して駆動力が提供される構成であり、上記目的を満足する。なお、それぞれのローラ部材の回転動作が別駆動で与えられる場合には、それらの回転動作開始タイミングを極力揃える。
【0080】
また、液体現像剤を現像ローラ54-絞りローラ52間および現像ローラ54-現像クリーニングローラ58間のそれぞれのニップ部において、ローラ間に電流が過剰に流れることを抑制するために、各ローラ部材の回転動作開始時には各ニップ部に液体現像剤が供給されている状態を形成する。よって、本実施例においては、現像剤供給槽53を液体現像剤が満たし、現像剤供給槽53に設けられた剤面検知センサ59の出力がOFFからONに変化したこと(即ち、液体現像剤があることを剤面検知センサ59が検知したこと)に応じて、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作を開始する。もしくは、本実施例においては、現像剤供給槽53に設けられた剤面検知センサ59の出力がOFFからONに変化してから(即ち、液体現像剤があることを剤面検知センサ59が検知してから)所定時間が経過した後に、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作を開始する。
【0081】
図4に示したシーケンスの例では、剤面検知センサ59の出力がOFFからONに変化した時点をT1´とし、T1´から所定時間(T2-T1´)が経過した後に、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作を開始している。
【0082】
そして、現像ローラ54の回転動作を開始してから現像ローラ54が少なくとも1回転することにより、現像ローラ54-絞りローラ52間および現像ローラ54-現像クリーニングローラ58間のそれぞれのニップ部において、液体現像剤が介在している状態となる。
【0083】
なお、現像装置50の立ち上げ動作時に現像剤循環ポンプ110の動作の開始と同時に、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作を開始する変形例であってもよい。ただし、この変形例では、現像ローラ54-絞りローラ52間および現像ローラ54-現像クリーニングローラ58間のそれぞれのニップ部において、液体現像剤が介在していない状態で、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58が回転している時間が長くなることになる。そのため、現像ローラ54-絞りローラ52間および現像ローラ54-現像クリーニングローラ58間のそれぞれのニップ部に液体現像剤が到達するまでの間、現像ローラ54表面の弾性体層に対して付加される摩擦力の蓄積量が多くなってしまう。
【0084】
そのため、現像ローラ54表面の弾性体層の摩耗を抑制する観点では、現像装置50の立ち上げ動作において、現像剤循環ポンプ110の動作の開始と同時に、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作を開始するよりも、現像剤循環ポンプ110の動作の開始タイミングに対して、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作の開始タイミングを遅らせることが好ましい。本実施例では、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作の開始タイミング(T2)は、現像剤循環ポンプ110の動作の開始タイミング(T1)から6.0s後としている。
【0085】
現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58それぞれへの電圧印加は、現像剤供給槽53から現像ローラ54に液体現像剤が供給される現像ローラ54上の供給位置に液体現像剤が到達した状態で現像ローラ54が少なくとも1回転した後(好ましくは、現像ローラ54が1回転以上回転し、且つ現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転動作が安定した後)に開始する(T3。本実施例ではT3はT2の2.0s後)。なお、各々の部材に対する電圧の印加は、電圧の立ち上がり早さも考慮して電位の大小関係が逆転しないように印加タイミングに若干の時間差をつけることが望ましい。本実施例に関しては、
図4には詳述しないが、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58、現像ローラ54の順に、0.5sずつタイミングをずらして電圧を印加する。
【0086】
現像ローラ54上の現像剤状態が安定した後、露光ユニット40により感光体ドラム20に潜像を作成し、画像が実際に形成される(T4。本実施例ではT4はT3の3.0s後)。
【0087】
次に、
図5に動作終了時(立ち下げ動作時)のシーケンスを示す。基本的には、開始時(立ち上げ動作時)と逆のタイミングとなっている。作像が終了したT5に対して1.0s後に各高圧を立ち下げるT6。その後、2.0s後に駆動を停止T7。最後に、循環を停止するT8。
【0088】
ここで、本実施例の効果を確認するために、(1)本実施例の方法で現像装置50の動作を開始および終了したケース、(2)ローラ駆動と高圧印加が同タイミングで現像装置50の動作を開始および終了したケース、(3)ローラ駆動と高圧印加が本実施例と逆のタイミング、の時の現像ローラ54の抵抗変動を比較した。具体的には、感光体ドラム20上への画像形成は行わず、A4サイズ1部の画像形成を10000回実施し、その間の現像ローラ54の体積変動を測定した。
【0089】
まず、いずれのシーケンスにおいても、初期の現像ローラ54の体積抵抗率は1.0E7Ωcmである。本実施例のシーケンス(1)では10000回後の体積抵抗率は7.2E7Ωcmとあまり変わっていない。一方、ローラ駆動と高圧印加が同タイミングのシーケンス(2)では、1.0E8Ωcmと一桁の上昇が発生している。また、高圧印加後にローラが駆動するシーケンス3では、1.0E9Ωcmとほぼ2桁の上昇となっている。
【0090】
前述したように、現像ローラ54の体積抵抗率は1.0E9Ωcm未満で使用されることが望ましく、本実施例の効果は
図6より非常に大きい。
【0091】
本実施例では、現像剤担持体の駆動が安定した後に、高圧を印可したが、駆動と同時に、段階的に高圧を印加していくことで、高圧印加の時間を短縮し、画像作成までの時間を短くすることも可能である。
【0092】
また、ここで、本実施例の効果を確認するために、本実施例の方法で現像装置50の動作を開始したケースとその他の方法で現像装置50の動作を開始したケースの現像ローラ54表面弾性層のダメージ度合いを比較した。具体的には、感光体ドラム20上への画像形成は行わず、A4サイズ150部の画像形成に相当する時間ごとに現像剤供給槽53への液体現像剤の供給、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転駆動、現像ローラ54、成膜電極51、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58それぞれへの電圧印加と停止を繰り返し、現像ローラ54表面の弾性層の表面粗さRaの変化を確認した。なお、両ケースともに初期の現像ローラ54の表面粗さRaは0.20μmであった。結果を
図7に示す。
【0093】
まず、本実施例の方法で現像装置50の動作を開始した場合、
図7中実線で示されているように、2000k枚相当の動作時間で現像ローラ54表面の弾性層の表面粗さRaの増加は、初期の0.20μmから0.38μmのごくわずかであった。
【0094】
現像装置50の他の動作開始順序として、現像剤供給槽53への液体現像剤の供給と、現像ローラ54、絞りローラ52、現像クリーニングローラ58の回転駆動を同時に開始したケース(
図4でT1=T2に相当)で、現像ローラ54表面の弾性層の表面粗さRaの耐久変化を確認した。結果は
図7中点線で示されているように、現像ローラ54表面の弾性層の表面粗さRaは2000k枚相当の動作時間で0.79μmまで増加していた。
【0095】
上記より、本実施の方法を用いることにより、現像ローラ54表面の弾性体層表面に対して加えられる機械的ストレス(主に摩擦)が抑制され、現像ローラ54の長寿命化が達成されることが示された。
【符号の説明】
【0096】
100 画像形成装置
20 感光体ドラム
40 露光ユニット
50 現像装置
52 絞りローラ
53 現像剤供給槽
54 現像ローラ
58 現像クリーニングローラ
110 現像剤循環ポンプ