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特許7483569柱の外殻PCa部材片及び柱の外殻PCa部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】柱の外殻PCa部材片及び柱の外殻PCa部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/16 20060101AFI20240508BHJP
   E04B 2/86 20060101ALI20240508BHJP
   E04C 3/34 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E04B1/16 M
E04B2/86 601T
E04C3/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020154121
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022048018
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】田野 健治
(72)【発明者】
【氏名】松永 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 樹里也
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-105836(JP,A)
【文献】特開昭61-146968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
E04B 2/00 - 2/54
E04B 2/84 - 2/86
E04C 3/00 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形断面を有する柱の外殻部の一部をなす外殻PCa部材片であって、
前記柱の外周面に沿って配置される平板状のPCa部と、
前記PCa部に一体に設けられ、少なくとも帯筋を含む柱筋とを備え、
前記PCa部は、断面において、前記柱の前記外周面の1辺の全体のみをなす外面と、前記外面と略平行に延在する内面と、前記外面と前記内面とを接続し、前記柱の主筋のうち前記柱の隅部に配置される隅主筋を当該PCa部に埋設させないように、前記外面に対して90°よりも小さい傾斜角度をもって傾斜する1対の傾斜側面とを有し、
前記帯筋が、前記PCa部から延出する両端を有する直線状の帯筋主部と、前記帯筋主部の前記両端から前記柱の内方へ折り曲げられ、前記隅主筋に係合する1対のフックとを備えることを特徴とする外殻PCa部材片。
【請求項2】
前記傾斜側面のそれぞれが、前記外面から連続し、前記多角形断面の対応する頂点の内角の半分の角度をもって前記外面に対して傾斜する外側面部と、前記外側面部から連続し、前記外側面部の延長線に対して凹陥する内側面部とを有することを特徴とする請求項1に記載の外殻PCa部材片。
【請求項3】
多角形断面を有する柱の外殻部をなす外殻PCa部材であって、
前記柱の断面において周方向に分割された複数の外殻PCa部材片を含み、
前記外殻PCa部材片のそれぞれが、前記柱の外周面に沿って配置される平板状のPCa部と、前記PCa部に一体に設けられ、少なくとも帯筋を含む柱筋とを備え、
前記PCa部は、断面において、前記柱の前記外周面の1辺の全体のみをなす外面と、前記外面と略平行に延在する内面と、前記外面と前記内面とを接続し、前記柱の主筋のうち前記柱の隅部に配置される隅主筋を当該PCa部に埋設させないように、前記外面に対して90°よりも小さい傾斜角度をもって傾斜する1対の傾斜側面とを有し、
前記帯筋が、前記PCa部から延出する両端を有する直線状の帯筋主部と、前記帯筋主部の前記両端から前記柱の内方へ折り曲げられ、前記隅主筋に係合する1対のフックとを備え、
隣接配置される1対の前記外殻PCa部材片の互いに隣接する前記傾斜側面の間に、前記隅主筋を配置するための空隙が形成されることを特徴とする外殻PCa部材。
【請求項4】
前記外殻PCa部材片の前記柱筋が、前記主筋のうち前記隅部以外の部分に配置される中間主筋を含み、
前記外殻PCa部材片のそれぞれが、関連する前記中間主筋に係合する外フック及び前記柱の中心に配置される芯筋に係合する内フックを有するフック付き鉄筋を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の外殻PCa部材。
【請求項5】
前記柱が偶数の辺からなる偶数角形断面を有し、
前記外殻PCa部材片の前記柱筋が、前記主筋のうち前記隅部以外の部分に配置される中間主筋を含み、
互いに対向して配置される1対の前記外殻PCa部材片のそれぞれが、関連する前記中間主筋に係合する外側フックを有し、内側部分にて互いに継ぎ合わされる中子筋片を更に含むことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の外殻PCa部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、柱の断面の一部をなす外殻PCa部材片及び、複数の外殻PCa部材片を含む外殻PCa部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の柱(以下、RC柱という)をプレキャストコンクリート(以下、PCaという)により構成する場合には、柱の全断面をPCa化したフルPCa構造にする方法と、柱の断面の一部をPCa化したハーフPCa構造とする方法との2種類がある。RC柱をハーフPCa構造にすると、フルPCa構造にする場合に比べてPCa部材を軽量化できるため、クレーンの大型化を防ぐことができる。柱をハーフPCa構造にする場合には、柱の外殻部をPCa化した外殻PCa部材とすることが多い。外殻PCa部材は現場打ちコンクリートの型枠代わりになるため、現場での型枠組立工程が不要になる。そのため、柱の全体を現場打ちコンクリートにより構築する従来工法に比べて工期の短縮が図れる。
【0003】
柱の外殻PCa部材(外殻PCa柱部材)として、中空で断面が矩形形状のPCaコンクリート部の内部に柱主筋とせん断補強筋(帯筋)とが埋設されたものが公知である(例えば、特許文献1の図5参照)。この外殻PCa部材では、せん断補強筋がコ字形状をなす2本の同形状の鉄筋によって矩形に形成され、それぞれの鉄筋の両端部が立ち上り部として内側に折り曲げられてPCaコンクリート部の内表面から延出するように配置される。立ち上り部分の先端が現場打ちコンクリートに埋設されることにより、外殻PCa部材と現場打ちコンクリートとの充分な一体性が得られる。
【0004】
また、柱の外殻PCa部材が、断面において分割された2つのPCa部材片から構成されたものが公知である(例えば、特許文献2の図1及び図3参照)。この外殻PCa部材は、両PCa部材片を対向して当接配置することによって断面ロ形に形成され、その内部に打設される現場打ちコンクリートの型枠を兼ねる。各PCa部材片は、コ字形断面やL字形断面等に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-67701号公報
【文献】特開平8-42059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の柱用の外殻PCa部材を用いることにより、現場での工数を減らし、人工を減らすことができる。一方、PCa部材を製造する工場での人工を減らすことはできない。ここで、PCa工場での人工を減らし、生産性を向上させるために、PCa部材の製造工程の一部をロボット化することが考えられる。しかしながら、従来の外殻PCa部材の鉄筋は立体的な形状をしているため、そのような複雑な作業を伴う配筋工程のロボット化は困難であった。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、柱用の外殻PCa部材について、PCa工場での配筋工程のロボット化を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、多角形断面を有する柱(1)の外殻部の一部をなす外殻PCa部材片(4)であって、前記柱の外周面(1a)に沿って配置される平板状のPCa部(5)と、前記PCa部に一体に設けられ、少なくとも帯筋(9)を含む柱筋(6)とを備え、前記PCa部は、断面において、前記柱の前記外周面の1辺をなす外面(13)と、前記外面と略平行に延在する内面(14)と、前記外面と前記内面とを接続し、前記柱の主筋(7)のうち前記柱の隅部に配置される隅主筋(7A)を当該PCa部に埋設させないように傾斜する1対の傾斜側面(15)とを有し、前記帯筋が、前記PCa部から延出する両端を有する直線状の帯筋主部(10)と、前記帯筋主部の前記両端から前記柱の内方へ折り曲げられ、前記隅主筋に係合する1対のフック(11)とを備える。
【0009】
この構成によれば、PCa部に一体に設けられる帯筋の帯筋主部が直線状をなすため、外殻PCa部材片の配筋工程のロボット化が容易である。PCa部が平板状であっても、複数の外殻PCa部材片を多角形状に配置して閉断面形状の外殻PCa部材にすることができる。その際、1対の傾斜側面が隅主筋を埋設させないように傾斜しているため、互いに近接するPCa部の傾斜側面間に空隙が形成され、この空隙に隅主筋が配置可能になる。また、帯筋が隅主筋に係合するフックを介して連続する多角形の閉環状になる。
【0010】
好ましくは、前記傾斜側面(15)のそれぞれが、前記外面(13)から連続し、前記多角形断面の対応する頂点の内角(θ)の半分の角度(θ/2)をもって前記外面に対して傾斜する外側面部(16)と、前記外側面部から連続し、前記外側面部の延長線(17)に対して凹陥する内側面部(18)とを有するとよい。
【0011】
この構成によれば、複数の外殻PCa部材片を多角形状に配置する際に、互いに近接するPCa部の外側面部同士を面接触の態様で当接させることができる。したがって、互いに近接する外殻PCa部材片の相対位置の調整が容易である。また、当接によるPCa部の破損が抑制される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のある実施形態は、多角形断面を有する柱(1)の外殻部をなす外殻PCa部材(2)であって、前記柱の断面において周方向に分割された複数の外殻PCa部材片(4)を含み、前記外殻PCa部材片のそれぞれが、前記柱の外周面(1a)に沿って配置される平板状のPCa部(5)と、前記PCa部に一体に設けられ、少なくとも帯筋(9)を含む柱筋(6)とを備え、前記PCa部は、断面において、前記柱の前記外周面の1辺をなす外面(13)と、前記外面と略平行に延在する内面(14)と、前記外面と前記内面とを接続し、前記柱の主筋(7)のうち前記柱の隅部に配置される隅主筋(7A)を当該PCa部に埋設させないように傾斜する1対の傾斜側面(15)とを有し、前記帯筋が、前記PCa部から延出する両端を有する直線状の帯筋主部(10)と、前記帯筋主部の前記両端から前記柱の内方へ折り曲げられ、前記隅主筋に係合する1対のフック(11)とを備え、隣接配置される1対の前記外殻PCa部材片の互いに隣接する前記傾斜側面の間に、前記隅主筋を配置するための空隙(G)が形成される。
【0013】
この構成によれば、PCa部に一体に設けられる帯筋の帯筋主部が直線状をなすため、外殻PCa部材を構成する外殻PCa部材片の配筋工程のロボット化が容易である。各外殻PCa部材片のPCa部が平板状であっても、複数の外殻PCa部材片を多角形状に配置して閉断面形状の外殻PCa部材にすることができる。その際、1対の傾斜側面が隅主筋を埋設させないように傾斜しているため、互いに近接するPCa部の傾斜側面間に空隙が形成され、この空隙に隅主筋が配置可能になる。また、帯筋が隅主筋に係合するフックを介して連続する多角形の閉環状になる。
【0014】
好ましくは、前記外殻PCa部材片(4)の前記柱筋(6)が、前記主筋(7)のうち前記隅部以外の部分に配置される中間主筋(7B)を含み、前記外殻PCa部材片(4)のそれぞれが、関連する前記中間主筋(7B)に係合する外フック(32)及び前記柱(1)の中心に配置される芯筋(34)に係合する内フック(33)を有するフック付き鉄筋(31)を更に含むとよい。
【0015】
この構成によれば、複数の外殻PCa部材片がフック付き鉄筋によって拘束される。そのため、外殻PCa部材の形状維持が容易である。
【0016】
好ましくは、前記柱(1)が偶数の辺からなる偶数角形断面を有し、前記外殻PCa部材片(4)の前記柱筋(6)が、前記主筋(7)のうち前記隅部以外の部分に配置される中間主筋(7B)を含み、互いに対向して配置される1対の前記外殻PCa部材片(4)のそれぞれが、関連する前記中間主筋に係合する外側フック(42)を有し、内側部分にて互いに継ぎ合わされる中子筋片(41)を更に含むとよい。
【0017】
この構成によれば、対向配置される1対の外殻PCa部材片同士が互いに継ぎ合わされた中子筋片によって連結され複数の外殻PCa部材片によって構成される外殻PCa部材の形状が維持される。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、柱用の外殻PCa部材について、PCa工場での配筋工程のロボット化を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る柱の断面図
図2図1に示す外殻PCa部材片の断面図
図3図1に示す柱の構築手順を示す断面図
図4】第2実施形態に係る柱の梁接合部の斜視図
図5図4に示す柱の断面図
図6】第3実施形態に係る柱の構築手順を示す断面図
図7】第4実施形態に係る柱の構築手順を示す断面図
図8】第5実施形態に係る柱の構築手順を示す断面図
図9】第6実施形態に係る柱の構築手順を示す断面図
図10】第7実施形態に係る柱の外殻PCa部材の断面図
図11】第8実施形態に係る柱の外殻PCa部材の断面図
図12】第9実施形態に係る柱の外殻PCa部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。
【0021】
≪第1実施形態≫
まず、図1図3を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る柱1の断面図である。図1に示すように、柱1は、鉄筋によってコンクリートを補強された鉄筋コンクリート(RC)造である。柱1は、プレキャストコンクリートによって構成された外殻部(以下、外殻PCa部材2という)と、現場打ちコンクリートによって外殻PCa部材2の内側に構成された現場打ち部3とを有している。柱1は断面矩形状をなし、本実施形態では断面正方形をなしている。他の実施形態では、柱1の断面が四角形以外の多角形(例えば五角形や、六角形、八角形など)をなしていてもよい。なお、柱1の断面は、正多角形である必要はなく、例えば長方形であってもよい。
【0022】
外殻PCa部材2は、断面における柱1の外周面1aの辺の数に応じた数の外殻PCa部材片4によって構成されている。本実施形態では、柱1の断面が四角形であるため、4つの外殻PCa部材片4によって外殻PCa部材2が構成されている。柱1の断面が正方形であるため、4つの外殻PCa部材片4はすべて同一形状とされている。各外殻PCa部材片4は、柱1の外周面1aに沿って配置される平板状のプレキャストコンクリート部(以下、PCa部5という)と、PCa部5に一体に設けられる柱筋6の一部とを備えている。柱筋6の一部は、大半の部分においてPCa部5に埋設され、一部においてPCa部5から延出して現場打ち部3に埋設されている。
【0023】
柱筋6は、周方向に間隔を空けて配置された複数の柱主筋7(7A、7B)と、これらの柱主筋7を取り囲むように柱主筋7の外側に配置された閉環状の環状帯筋8とを含む。柱筋6は柱1の内部、具体的には柱1の外周面1aから所定の被り厚を確保した位置に埋設されている。環状帯筋8は柱1の長手方向に所定間隔をもって複数配置されている。
【0024】
柱主筋7は、柱1の断面における隅部に配置される複数の隅主筋7Aと、隅部以外の部分、すなわち周方向に隣接する1対の隅主筋7Aの間に配置される複数の中間主筋7Bとを含んでいる。本実施形態では、柱1の断面が四角形であるため、4本の隅主筋7Aが設けられている。中間主筋7Bは1対の隅主筋7Aの間に3本ずつ配置され、合計で12本の中間主筋7Bが設けられている。隅主筋7Aは現場打ち部3に配置され、中間主筋7Bは外殻PCa部材片4のPCa部5に配置されている。
【0025】
環状帯筋8は、4つの外殻PCa部材片4のPCa部5に一部を埋設された4本の帯筋9(環状帯筋8の一部を構成する帯筋片)によって閉環状に形成される。4本の帯筋9は同一形状をなしており、それぞれ、PCa部5から延出する両端を有する直線状の帯筋主部10と、帯筋主部10の両端から柱1の内方へ折り曲げられ、隅主筋7Aに係合する1対のフック11とを備えている。帯筋主部10は、柱1の外周面1aの1辺に平行に延在している。フック11は、折り曲げ角度が135°である135°フックとされている。
【0026】
図2の断面図に示すように、外殻PCa部材片4のPCa部5は、柱1の外周面1aの1辺をなす外面13と、外面13と略平行に延在する内面14と、1対の傾斜側面15とを有している。1対の傾斜側面15は、外面13と内面14とを接続し、近接する柱1の隅部に配置される2本の隅主筋7AをPCa部5に埋設させないように傾斜している。傾斜側面15のそれぞれは、外面13から連続する外側面部16と、外側面部16から連続する内側面部18とを有している。外側面部16は、四多角形断面の対応する頂点の内角θ(=90°)の半分の角度θ/2(=45°)をもって外面13に対して傾斜している。内側面部18は、外側面部16の延長線17に対して凹陥している。
【0027】
次に、柱1の構築手順について、図3を参照して説明する。図3(A)に示すように、4つの外殻PCa部材片4を用意し、これらを図3(B)に示すように、四角形状に配置する。この際、互いに近接するPCa部5の外側面部16同士を面接触の態様で当接させる。これにより、4つの外殻PCa部材片4によって正方形の中空断面の外殻PCa部材2が形成され、互いに隣接するPCa部5の内側面部18間に空隙Gが形成される。帯筋9は、フック11がこの空隙Gに納まり、且つ互いに隣接する帯筋9のフック11が重なりあって両者間に隅主筋7Aを配置可能な隙間が生じるように構成されている。
【0028】
図3(C)に示すように、4本の隅主筋7Aを柱1の隅部、具体的には互いに隣接する帯筋9のフック11の間に配置する。その後、外殻PCa部材2の中空部に現場打ちコンクリートを打設することにより、図1に示す柱1が構築される。
【0029】
このように、各外殻PCa部材片4のPCa部5が平板状であっても、4つの外殻PCa部材片4を四角形状に配置して閉断面形状の外殻PCa部材2にすることができる。その際、1対の傾斜側面15が隅主筋7AをPCa部5に埋設させないように傾斜しているため、互いに近接するPCa部5の傾斜側面15間に空隙Gが形成され、この空隙Gに隅主筋7Aが配置可能になる。また、帯筋9が隅主筋7Aに係合するフック11を介して連続する四角形の閉環状になる。
【0030】
本実施形態では、上記のように、傾斜側面15の外側面部16が、外面13から連続し、四角形断面の対応する頂点の内角θの半分の角度θ/2をもって外面13に対して傾斜している。そのため、4つの外殻PCa部材片4を四角形状に配置する際に、互いに近接するPCa部5の外側面部16同士を面接触の態様で当接させることができる。したがって、互いに近接する外殻PCa部材片4の相対位置の調整が容易である。また、当接によるPCa部5の破損が抑制される。
【0031】
なお、本実施形態では、傾斜側面15の外側面部16から連続する内側面部18が、外側面部16の延長線17に対して凹陥している。これにより、4つの外殻PCa部材片4を四角形状に配置した際に、隣接配置される1対の外殻PCa部材片4の互いに隣接する傾斜側面15の間に、隅主筋7Aを配置するための空隙Gが形成される。
【0032】
そして外殻PCa部材片4のPCa部5が柱1の外周面1aに沿って配置される平板状をなし、PCa部5に一体に設けられる帯筋主部10がPCa部5から延出する両端を有する直線状をなすため、外殻PCa部材片4の配筋工程のロボット化が容易である。
【0033】
≪第2実施形態≫
次に、図4及び図5を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と形態又は機能が同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略し、説明をしない符号の一部は図示省略する。以降の実施形態においても同様とする。
【0034】
図4は、第2実施形態に係る柱1の梁接合部20の斜視図である。図4に示すように、柱1は第1実施形態と同様にRC造である一方、梁21は鉄骨(S)造とされている。柱1の梁接合部20は、梁21が柱1を貫通するように設けられた梁貫通型と呼ばれる柱RC梁S構造となっている。柱1の梁接合部20において、梁21が十字状に交差している。柱1の柱主筋7は、梁21によって区分された柱1の4隅に配置されている。柱1の梁接合部20の外周部には、溶接により梁21と一体化した4つのふさぎ板22が環状をなして柱1を取り囲むように配置されている。
【0035】
図5図4に示す柱1の断面図である。図5に示すように、本実施形態では、中間主筋7Bは1対の隅主筋7Aの間の隅主筋7Aに近い位置に2本ずつ配置され、合計で8本の中間主筋7Bが設けられている。すなわち、梁21によって区分された柱1の4隅のそれぞれに、1本の隅主筋7Aと2本の中間主筋7Bとが配置されている。
【0036】
外殻PCa部材片4や外殻PCa部材2がこのように構成されていても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0037】
≪第3実施形態≫
次に、図6を参照して本発明の第3実施形態について説明する。図6(A)に示すように、本実施形態では、外殻PCa部材片4が、第1実施形態と同様の3本の中間主筋7B及び帯筋9に加え、フック付き鉄筋31をPCa部5に一体に備えている。フック付き鉄筋31は、4つの外殻PCa部材片4について、柱1の長手方向の同じ位置に設けられる。フック付き鉄筋31は、帯筋9と同じ間隔で設けられる必要はなく、より大きな間隔で設けられてよい。
【0038】
フック付き鉄筋31は、中央に配置された中間主筋7Bに係合する外フック32を外端に備え、内端に内フック33を備えている。外フック32及び内フック33はそれぞれ、折り曲げ角度が180°である180°フックとされている。外フック32の大部分はPCa部5に埋設されている。フック付き鉄筋31は、外フック32から柱1の内方に向けて延出し、PCa部5の内面14に直交している。
【0039】
図6(B)に示すように、4つの外殻PCa部材片4を四角形状に配置すると、4本のフック付き鉄筋31の内フック33は互いに重なり、柱1の中心に円形の空間を形成する。図6(C)に示すように、この空間には芯筋34が配置される。すなわち、芯筋34が所定位置に配置されることにより、4本のフック付き鉄筋31の内フック33が芯筋34に係合する。
【0040】
このように外殻PCa部材片4が、柱筋6が柱1の中心に配置される芯筋34に係合する内フック33を有するフック付き鉄筋31を更に備えることにより、各外殻PCa部材片4がフック付き鉄筋31によって拘束される。そのため、外殻PCa部材2を四角形に維持することが容易である。
【0041】
≪第4実施形態≫
次に、図7を参照して本発明の第4実施形態について説明する。図7(A)に示すように、本実施形態では、各フック付き鉄筋31の内フック33が、折り曲げ角度が90°である90°フックとされている。内フック33がこのように構成されることにより、芯筋34が柱1の中心に予め配置されていても、図7(B)に示すように、4つの外殻PCa部材片4を所定位置に配置して四角形の中空断面の外殻PCa部材2を形成することができる。
【0042】
本実施形態においても、外殻PCa部材片4のそれぞれが、関連する中間主筋7Bに係合する外フック32及び柱1の中心に配置される芯筋34に係合する内フック33を有するフック付き鉄筋31を更に含んでいる。そのため、各外殻PCa部材片4がフック付き鉄筋31によって拘束され、外殻PCa部材2の形状維持が容易である点は第3実施形態と同様である。
【0043】
≪第5実施形態≫
次に、図8を参照して本発明の第5実施形態について説明する。図8(A)に示すように、本実施形態では、外殻PCa部材片4が、第1実施形態と同様の3本の中間主筋7B及び帯筋9に加え、中子筋片41をPCa部5に一体に備えている。柱1は、図示例では四角形断面を有しているが、偶数の辺からなる偶数角形断面を有していればよい。中子筋片41は、対向配置される2つの外殻PCa部材片4について、柱1の長手方向の同じ位置に設けられる。図8には、2つの外殻PCa部材片4のみについて中子筋片41が示されているが、残りの2つの外殻PCa部材片4についても、これらとは柱1の長手方向について異なる位置であって、互いに柱1の長手方向の同じ位置に中子筋片41が設けられる。中子筋片41は、帯筋9と同じ間隔で設けられる必要はなく、より大きな間隔で設けられてよい。
【0044】
中子筋片41は、中央に配置された中間主筋7Bに係合する外側フック42を外端に備え、内端に内側フック43を備えている。外側フック42及び内側フック43はそれぞれ、折り曲げ角度が180°である180°フックとされている。外側フック42の大部分はPCa部5に埋設されている。中子筋片41は、外側フック42から柱1の内方に向けて延出し、PCa部5の内面14に直交している。
【0045】
図8(B)に示すように、4つの外殻PCa部材片4を四角形状に配置すると、2本の中子筋片41の内側部分は互いに重なる。本実施形態では、2本の中子筋片41は内側部分において重ね継手を構成し、外殻PCa部材2の中空部に現場打ちコンクリートが打設されることで互いに継ぎ合わされ、せん断補強筋として機能する1本の中子筋44となる。
【0046】
このように対向配置される1対の外殻PCa部材片4は、関連する中間主筋7Bに係合する外側フック42を有し、内側部分にて互いに継ぎ合わされる中子筋片41を更に備えることにより、中子筋片41によって連結される。したがって、4つの外殻PCa部材片4によって構成される外殻PCa部材2の形状が維持される。
【0047】
≪第6実施形態≫
次に、図9を参照して本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態では、図9(A)に示すように、対向配置される1対の外殻PCa部材片4に設けられた中子筋片41が、内側部分において溶接によって互いに継ぎ合わされる。柱1の長手方向の異なる位置に配置される図示されない1対の中子筋片41は、第5実施形態と同様に内側フック43を有し、重ね継手を構成する。
【0048】
四角形断面の外殻PCa部材2を構築する際には、図9(A)に示すように、3つの外殻PCa部材片4を所定位置に配置してU字形にした状態で、1対の中子筋片41の内側部分を溶接により継ぎ合わせる。その後、図9(B)に示すように、残りの1つの外殻PCa部材片4を所定位置に配置して、四角形断面の外殻PCa部材2を構築する。
【0049】
中子筋片41がこのように構成されても、2本の中子筋片41が内側部分において互いに継ぎ合わされることで、せん断補強筋として機能する1本の中子筋44となる。
【0050】
≪第7実施形態≫
次に、図10を参照して本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、対角に位置する2本の隅主筋7Aを連結する補強筋51が外殻PCa部材2の中空部に設けられている。本実施形態では、柱1の断面が四角形であるため、4本の隅主筋7Aに対して2本の補強筋51が設けられている。柱1の断面が六角形の場合には3本の補強筋51が設けられ、柱1の断面が八角形の場合には4本の補強筋51が設けられる。各補強筋51は両端にフック52を有し、対応する2本の隅主筋7Aにフック52が係合するように配置される。補強筋51は、外殻PCa部材2の中空部に現場打ちコンクリートが打設されることで柱1の現場打ち部3に埋設される。
【0051】
≪第8実施形態≫
次に、図11を参照して本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、各外殻PCa部材片4のPCa部5の内面14に凹凸61が設けられている。このように凹凸61が設けられることにより、外殻PCa部材片4と現場打ち部3との一体性が向上する。
【0052】
≪第9実施形態≫
次に、図12を参照して本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、中間主筋7BがPCa部5の内側に配置され、外殻PCa部材片4に一体とされていない。すなわち、外殻PCa部材片4のPCa部5に一体に設けられる柱筋6は、帯筋9を含む一方、柱主筋7を含んでいない。PCa部5に一体に設けられる柱筋6は、複数の帯筋9の相対位置を定めるために図示しない組立鉄筋を含むとよい。
【0053】
図示例では、帯筋主部10がPCa部5の内面14に露出しておらず、中間主筋7BがPCa部5の内面14に沿って配置されている。そのため、中間主筋7Bは両側に位置する2本の隅主筋7Aに対して柱1の内側にオフセットしている。中間主筋7Bは、4つの外殻PCa部材片4の配置前に配置されてもよく、4つの外殻PCa部材片4の配置後に配置されてもよい。或いは、1つ~3つの外殻PCa部材片4の配置後に中間主筋7Bが配置されてもよい。
【0054】
このように柱筋6が中間主筋7Bを含まないことにより、外殻PCa部材片4をより薄く形成でき、外殻PCa部材片4の更なる軽量化が可能である。
【0055】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしもすべてが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 柱
1a 外周面
2 外殻PCa部材
3 現場打ち部
4 外殻PCa部材片
5 PCa部
6 柱筋
7 主筋
7A 隅主筋
7B 中間主筋
8 環状帯筋
9 帯筋
10 帯筋主部
11 フック
13 外面
14 内面
15 傾斜側面
16 外側面部
17 延長線
18 内側面部
31 フック付き鉄筋
32 外フック
33 内フック
34 芯筋
41 中子筋片
42 外側フック
θ 頂点の内角
G 空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12