(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シリカまたは金属ケイ酸塩析出物を抑制または除去するためのフルオロ無機物
(51)【国際特許分類】
C02F 1/66 20230101AFI20240508BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20240508BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20240508BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20240508BHJP
C02F 5/00 20230101ALI20240508BHJP
C02F 5/10 20230101ALI20240508BHJP
C02F 5/12 20230101ALI20240508BHJP
C02F 5/14 20230101ALI20240508BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20240508BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20240508BHJP
C11D 3/06 20060101ALI20240508BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20240508BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240508BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20240508BHJP
C11D 7/04 20060101ALI20240508BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20240508BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240508BHJP
C11D 7/54 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C02F1/66 522A
C02F1/66 510A
B01D19/04 A
B01D19/04 B
C02F1/50 510A
C02F1/50 531M
C02F1/50 532D
C02F1/50 532K
C02F1/50 550H
C02F1/76 A
C02F5/00 620C
C02F5/10 610Z
C02F5/12
C02F5/14
C11D1/722
C11D3/04
C11D3/06
C11D3/26
C11D3/37
C11D3/395
C11D7/04
C11D7/22
C11D7/32
C11D7/54
(21)【出願番号】P 2020161834
(22)【出願日】2020-09-28
(62)【分割の表示】P 2017511270の分割
【原出願日】2015-08-27
【審査請求日】2020-10-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2015-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソンメーゼ アンソニー ジー
(72)【発明者】
【氏名】ギル ジャスバー エス
(72)【発明者】
【氏名】ミラー トーマス エム
(72)【発明者】
【氏名】ロッドマン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】バトン キャロル ビー
(72)【発明者】
【氏名】フーツ ジョン イー
(72)【発明者】
【氏名】ウェバースキー マイケル パトリック ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドフリー マーティン レイ
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0178405(US,A1)
【文献】特開2013-166093(JP,A)
【文献】特許第5631516(JP,B1)
【文献】特開2007-289817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F5/00-5/14
C11D1/00-19/00
C09K8/00-8/94
B01D19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄用組成物を1つの機器の内部表面と接触させることを含む、シリカもしくはケイ酸塩析出物を除去するかまたはシリカもしくはケイ酸塩析出を抑制する方法であって、
前記1つの機器が蒸発器または蒸気発生器であり、
前記内部表面が、
液体と接触し、前記液体は、シリカまたはケイ酸塩を含有し、前記内部表面との接触の結果、シリカまたはケイ酸塩析出物を有するかまたはそのような析出物を形成し易い液体であり、
前記洗浄用組成物が、消泡剤およびフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含み、
前記窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、またはその組合せであり、
前記フルオロ無機アニオンは、ホウ酸またはリン酸アニオンであり、
前記消泡剤は、シリコーン
、エトキシル化
およびプロポキシル化C
6~C
10アルコール、プロピレンオキシドグリコールポリマー、またはこれらの組合せを含
み、前記洗浄用組成物中の前記消泡剤の濃度が100~10000mg/Lとなるように前記消泡剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記窒素塩基は、尿素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記消泡剤は、シリコーンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記フルオロ無機アニオンがテトラフルオロホウ酸イオンを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記フルオロ無機アニオンがテトラフルオロホウ酸イオンを含み、前記窒素塩基が尿素を含み、前記塩を調製するのに使用される尿素対テトラフルオロホウ酸のモル比が1:3~3:1であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記液体中における前記洗浄用組成物の濃度は、5mg/L~300mg/Lであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記液体中における前記洗浄用組成物の濃度は、30mg/L~300mg/Lであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記液体中における前記洗浄用組成物の濃度は、30mg/L~100mg/Lであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法であって、
前記液体のpHは、3.06~4であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、析出物を抑制および/または除去し、水性流体のpHを低下させ、地下層からの石油の生産を増大する方法に関し、この方法は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む組成物を、液体と接触する表面に接触させることを含む。特に、析出物を除去し、pHを低下させるこれらの方法は、プラント単位操作で生産水およびその他の水源を含有する水組成物を使用する蒸気発生器、蒸発器、熱交換器、などで使用することができる。
【背景技術】
【0002】
石油産業において、酸は多くの機能、すなわち、無機および有機のスケールの除去、脱炭素、pH調節、一般洗浄、および消毒の機能を果たすが、これらの酸は取り扱いおよび輸送が極めて危険である可能性があり、金属表面に対して高度に腐食性である可能性があり、そして鉱物スケールの形成を引き起こす可能性がある。
【0003】
伝統的に、塩酸または抑制塩酸のような鉱酸がアルカリ度の高い水系を酸性化または中和するために使用される。鉱酸の使用は、パイプラインおよびその他の設備機器の腐食の問題を引き起こす可能性がある。また鉱酸は、水性混合物と接触する水性系内の析出物およびスケールで汚れた系の洗浄中に金属損失も引き起こす。このような系は熱交換器、冷却もしくは加熱系、パイプライン、水分配系、または油井および地熱井であることができる。非常に高いアルカリ度を有する可能性がある一部の水は、析出を予防するために使用前に中和しなければならない。鉱酸で中和されたかかる水は、中和用の鉱酸の対イオンの存在により、その後に非常に腐食性になり、金属損失を引き起こす。
【0004】
ケイ酸塩をベースとする析出物は多くの産業システムで生じる可能性がある。例えば、ケイ酸塩をベースとする析出物は、ある種のボイラー、蒸発器、熱交換器および冷却コイルにおいては問題である。シリカ/ケイ酸塩析出物の存在は、システムの熱効率および生産性を大いに低下させ、運転/維持費を上昇させ、幾つかの場合には機器の故障に至る可能性がある。蒸気発生器および蒸発器は、高まった温度、pHおよび増大した濃縮サイクル(COC)での作動により、殊にケイ酸塩析出物を生じやすい。
【0005】
化学的な処理プログラムを用いて析出を最小限に抑えることができるが、上記の全ての系が時間と共に汚れて来る可能性があり、洗浄が必要になる。洗浄の選択肢は化学的な現場プログラムまたは機械的なものである。
【0006】
原油生産が低下するとき、生産低下の原因が幾つかある。石油生産の低下の2つの理由は、(1)石油「貯留層」の透過性の低下、または(2)下層に含まれる水のこの貯留層への侵入である。
【0007】
透過性の低下は通例、微粒子が石油の流れにより生産井に向かって同伴されることによる。この生産井の辺りにこれらの粒子が蓄積し、次第に岩盤内の天然の穴を塞ぐ。すると、石油は効率的な速度でこの生産井を介して流出することができなくなる。これらの粒子の起源は様々であり得る(例えば、岩盤の種類、層に対する損傷、進行する岩盤の劣化、等)。
【0008】
これらの粒子を除去し、地層内の石油の移動性を改善するために、酸性の流体を生産井内に注入することができ、ここで層内の幾らかの粒子および幾らかの岩盤はこの酸性の流体に部分的に可溶性である。すなわち、この生産井刺激方法はこれらの粒子および岩盤を部分的に溶かし、層の岩盤をより多孔性にすることによって層内の石油の移動性を増大させ、石油生産性を増大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、石油産業において多くの機能、すなわち、無機および有機のスケールの除去、脱炭素、pH調節、一般洗浄、および消毒の機能を果たす、取り扱いおよび輸送が慣用の酸より安全である安全な酸を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、洗浄用組成物を表面と接触させることを含む、シリカまたはケイ酸塩析出物を除去するかまたはシリカまたはケイ酸塩の析出を抑制する方法である。この表面は、シリカまたはケイ酸塩を含有し、シリカまたはケイ酸塩の析出物を有するかまたはシリカまたはケイ酸塩の析出物を形成し易い液体と接触する。洗浄用組成物は消泡剤およびフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む。
【0012】
本発明の別の態様は、1つの機器の表面を酸組成物と接触させることにより水性系のpHを低下させる方法であり、ここで酸組成物はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む。
【0013】
さらに別の態様は、1つの機器の内部表面と接触する水性の混合物に酸組成物を接触させることを含む、水性系のpHを低下させる方法である。酸組成物はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含むことができる。
【0014】
本発明のさらなる態様は、地下の炭化水素含有層からの原油の回収を増大させる方法であり、この方法はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む酸組成物を地下の炭化水素含有層と接触する井に注入することを含む。
【0015】
本発明のさらにもう1つ別の態様は、酸組成物を井の内部表面と接触させることにより無機または有機の析出物を除去する方法であり、この表面は析出物を形成する化学種を含有する液体と接触し、ここで酸溶液はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】様々な組成物A、D、および抑制されたIを含むFのNCM平均対pHのグラフである。
【
図2】MVC作動に基づく蒸発器システムの概略図である。
【
図4】パイロット規模ボイラー(PSB)システムの概略図である。
【
図5A】それぞれ、詰まった分配器キャップおよび洗浄用組成物で洗浄された同じ分配器キャップの写真である。
【
図5B】それぞれ、詰まった分配器キャップおよび洗浄用組成物で洗浄された同じ分配器キャップの写真である。
【
図6】実施例18に記載されている実験室規模の実験で試験した洗浄用組成物の濃度(v/v%)に対する析出物の溶解率%のグラフである。
【
図7】実施例18に記載されている実験室規模の実験で試験した洗浄用組成物による洗浄プロセスの経過時間(時間)に対する除去されたシリカおよびカルシウム析出物の量(mg/L)のグラフである。
【
図8】実施例18に記載されている実験室規模の実験で試験した洗浄用組成物による洗浄プロセスの経過時間(時間)に対する除去されたシリカ、カルシウム、およびアルミニウム析出物の量(mg/L)のグラフである。
【
図9】実施例22に記載されている屋外実験で試験した洗浄用組成物を用いて除去されたシリカの濃度(mg/L)の時間に対するグラフである。グラフ中、シリカ濃度はシステムへの流体の添加に対して体積補正済および未補正である。
【
図10】実施例22に記載されている屋外実験で試験した洗浄用組成物を用いて除去されたアルミニウムの濃度(mg/L)の時間に対するグラフである。グラフ中、アルミニウム濃度は体積補正されている。
【
図11】実施例22に記載されている屋外実験で試験した洗浄用組成物を用いて除去されたカルシウムの濃度(mg/L)の時間に対するグラフである。グラフ中、カルシウム濃度は体積補正されている。
【
図12】実施例22に記載されている屋外実験で試験した洗浄用組成物を用いて除去されたマグネシウムの濃度(mg/L)の時間に対するグラフである。グラフ中、マグネシウム濃度は体積補正されている。
【
図13】実施例22に記載されている屋外実験で試験した洗浄用組成物を用いた腐食速度(平均mpy)の時間に対するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を通して対応する参照符号は対応する部分を示す。
【0018】
本発明は、シリカまたはケイ酸塩析出物を除去する方法に関する。本発明の洗浄用組成物は、析出物のより効果的な洗浄、設備機器のより迅速なターンアラウンドを可能にし、産業システムの影響を受けた表面を機械的に洗浄する必要性を低下させる。加えて、本洗浄用組成物は多くの代替の洗浄剤より危険性が少ない。さらに、本洗浄用組成物は、ボイラー、蒸気発生器、および蒸発器を洗浄するのに特に有効である。例えば、本洗浄用組成物は、生産水(SAGD、スチームフラッド、等)を処理するのに使用されるボイラー、蒸気発生器、および蒸発器を洗浄するのに有用である。
【0019】
本発明の1つの態様は、1つの機器の内部表面に酸組成物を接触させるか、または1つの機器の内部表面と接触する水性の混合物に酸組成物を接触させることを含む、水性系のpHを低下させることに関し、ここで酸組成物はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む。これらの方法は、金属表面の低下した腐食、金属原子のより少ない損失を提供し、システムの影響を受けた表面を機械的に洗浄する必要性を低下させる。加えて、本組成物は、水性系のpHを低下させるのに使用される多くの代替の酸より危険性が少ない。さらに、本組成物は、パイプ、タンク、蒸気発生器、加熱および冷却交換器、ならびに蒸発器をはじめとする設備機器の炭酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、鉄、マンガン、硫酸塩、および/またはシリカをベースとするスケールを防止するのに特に効果的である。
【0020】
生産水は、水性混合物のpHを上昇させる可能性がある炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、およびケイ酸塩が高度に濃縮されている可能性がある。リサイクルプロセス中、生産水は冷却塔および蒸発器に通され、そこで高品質の給水が生成する。アルカリ度および対イオン、すなわち炭酸イオンおよび硫酸イオンに対するCa、他のスケールを形成するイオンならびに塩素イオンのような腐食性のイオンも濃縮され、これらはスケールを形成する傾向があり、腐食を生じる。伝統的に、酸を用いてこのアルカリ度を中和するが、自身が腐食性であると知られている酸に表面を曝露すると共に塩素イオンおよび硫酸イオンのようなより腐食性の強いイオンを加えるという危険を冒すことになる。本発明を使用して、アルカリ度を中和することができ、CO2を放出させることができ、腐食の危険が減少する。
【0021】
本発明の別の態様は、地下の炭化水素含有層からの原油の回収を増大する方法および石油および地熱流体の生産に使用される井内の析出物を除去または抑制する方法に関する。これらの方法は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む酸組成物を使用する。この酸組成物は、様々な無機および有機の析出物を溶解することができ、水性環境のpHを低下することができ、慣用の酸組成物より取り扱いが簡単であるので、有利である。
【0022】
酸組成物を注入することによって、炭酸塩分野でトラップされた重質原油を除去するためのこの方法は、井を通って石油を持ち上げるのを助ける二酸化炭素を生成する。この処理はまた、様々な析出物を除去しかつ蒸気および電力生産を増大させるフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む酸組成物と地熱生産および注入井を接触させることによって、これらの井を復活させることもできる。
【0023】
さらに、砂岩層において、本明細書に記載されている方法は、層の損傷を除去することにより、穴を塞ぐ材料を溶解することにより、または孔隙を拡張することにより、裸孔の周りの天然の層の透過性を回復または改善することができる。伝統的に、この方法は、一般に塩酸プレフラッシュ、主処理流体(HClとHFの混合物)およびオーバーフラッシュ(弱酸溶液またはブライン)から構成される溶液を用いることを含んでいる。処理流体はある一定期間貯留層内に圧力下で維持され、その後井を掃除し、生産に復帰させる。本発明における組成物を使用することで、腐食性の酸であることが知られているHClおよびHFの使用が排除された。
【0024】
さらに、炭酸塩層において、本明細書に記載されている方法は、損傷を迂回する新しい極めて伝導性のチャンネル(ワームホール)を創り出すことができる。
【0025】
これらの方法は炭酸塩領域の水浸しに使用することができる。この処理中に、層は炭酸イオンに富む水を生成し、このイオンはカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、およびバリウムのようなスケール形成性カチオンと相互作用して厚いスケールを形成することができる。この生産水を酸で処理すると、二酸化炭素が形成され、スケールの形成を制限することができる。しかし、従来使用されている酸は腐食性の性質があり、下流の単位操作において腐食の問題を起こし得る。本明細書に開示されている方法は、従来の酸が示し得る下流の処理操作での腐食性の副作用を生じることなく、二酸化炭素を遊離させるのに使用することができる。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、酸による裸孔の処理方法であり、この処理は穴および井完成部品からスケールまたは類似の析出物を除去する助けになり得る。慣習上、抑制された酸が腐食速度を低下させるのに使用されるが、腐食速度は未だに容認できない可能性がある。本明細書に記載されている方法はスケールおよび類似の析出物を除去することができるが、一方慣用の酸より少ない腐食を示し、従って井を保護することができる。上に詳述したように、これらの方法は地熱井および生産井を復活させることができる。
【0027】
本発明のさらなる態様は、表面に洗浄用組成物を接触させることを含む、シリカまたはケイ酸塩析出物を除去する方法に関し、この表面はシリカまたはケイ酸塩を含有する液体との接触の結果シリカまたはケイ酸塩析出物を有するかまたはそのような析出物を形成し易く、ここで洗浄用組成物はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含む。洗浄用組成物はさらに消泡剤を含むことができる。
【0028】
本発明の組成物は、流体もしくは水性の媒質と共に提供することができ、すぐ使用できる形態で提供することができ、または別個の作用剤として提供することができ、また組成物は処理の現場で調製することができる。使用および用途の性質に応じて、組成物はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を高めの割合で含有する濃縮物の形態であることができ、この濃縮物は使用の前または使用中に水または別の溶媒または液体媒質または消泡剤、シリカもしくはケイ酸塩析出物の有機抑制剤、腐食抑制剤もしくは界面活性剤のような他の成分で希釈される。かかる濃縮物は、長期の貯蔵に耐えるように処方することができ、その後慣用の方法で適用することができるように充分な時間均質なままでいる調製物を形成するために水で希釈することができる。希釈後、かかる調製物は、意図した目的または最終用途に応じて、様々な量の酸組成物または洗浄用組成物を含有し得る。
【0029】
酸組成物または洗浄用組成物はフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含むことができる。
【0030】
フルオロ無機アニオンはホウ酸イオン、リン酸イオン、またはその組合せを含むことができる。好ましくは、フルオロ無機アニオンはホウ酸イオンを含む。
【0031】
フルオロ無機アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンまたはその組合せを含むことができる。さらに、フッ素原子を含むテトラフルオロホウ酸塩およびヘキサフルオロリン酸塩の加水分解生成物も使用することができる。
【0032】
好ましくは、酸組成物または洗浄用組成物のフルオロ無機アニオンはテトラフルオロホウ酸イオンを含む。
【0033】
酸組成物または洗浄用組成物はさらに水を含むことができる。
【0034】
酸組成物または洗浄用組成物は、テトラフルオロホウ酸イオンを含むフルオロ無機アニオンおよび尿素を含む窒素塩基を有することができ、塩を製造するのに使用される尿素対テトラフルオロホウ酸のモル比は1:3~5:1、好ましくは1:2~3:1である。窒素塩基(例えば尿素)はフルオロ-無機酸(例えばフルオロホウ酸)と反応してフルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩(例えば尿素テトラフルオロホウ酸塩)を形成することができる。しかしながら、本発明の組成物中のフルオロ-無機酸成分および塩基成分の相対量および/または濃度は、組成物の所望の機能および/または所要の洗浄活性に応じて広く変化することができる。このように、利用される重量比および/または濃度は、所望の洗浄ならびに健康および安全性特性を有する組成物および/またはシステムが得られるように選択することができる。
【0035】
窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンまたはその組合せであることができる。
【0036】
フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩は、米国特許第8,389,453号および同第8,796,195号に開示されており、Nalco-Championから製品番号EC6697Aとして市販されている。
【0037】
本明細書に記載されている地下の炭化水素含有層からの原油の回収を増大させる方法は、酸組成物を、地下の炭化水素含有層の、隣接する区域より流体に対する透過性が低い区域に向かわせることができる。
【0038】
地下の炭化水素含有層は砂岩貯留層または炭酸塩貯留層を含むことができる。
【0039】
地下の炭化水素含有層は炭酸塩貯留層を含むことができる。
【0040】
本明細書に記載されている方法は、油井、地熱井、処分井、および還元井である井で使用することができる。
【0041】
酸組成物または洗浄用組成物と接触する内部表面は1つの機器の内部表面であることができる。この1つの機器は蒸気発生器、蒸発器、熱交換器、冷却コイル、タンク、汚水槽、格納容器、ポンプ、分配器プレート、または管束であることができよう。
【0042】
本明細書に記載されている方法でその内部表面が洗浄される1つの機器はまた、パイプ、ドレン管路、または流体移送ラインであることもできよう。
【0043】
好ましくは、本明細書に記載されている方法を用いて洗浄される1つの機器は蒸発器または蒸気発生器である。
【0044】
蒸発器または蒸気発生器は地熱表面システム、熱処理回復システム、および製糖システム、またはエタノール生産システムに使用することができる。
【0045】
熱処理回復システムは蒸気支援重力排水システム、スチームフラッドシステム、または環状蒸気刺激システムであることができる。
【0046】
酸組成物を製糖システムに使用するとき、酸組成物はシュウ酸塩、シリカ、リン酸塩、または炭酸塩の析出を含む析出を抑制または除去する。
【0047】
酸組成物を地熱表面システムに使用するとき、酸組成物はシリカ、炭酸塩、または硫化物の析出を含む析出を抑制または除去する。
【0048】
酸組成物または洗浄用組成物はピグ処理に加えて使用することができる。ピグ処理は、析出物が形成され、当該ラインを通る流体の流れを部分的に塞いでいる管束、パイプ、ドレン管路、または流体移送ラインに使用することができる。ピグ処理は、ピグするラインまたは管の内径とおよそ同じ直径であるデバイス(すなわちピグ)を配置し、通常はピグの後に圧力をかけることによって、ラインまたは管を通してピグを前進させることを含む。酸組成物または洗浄用組成物は、ライン内に形成された析出物を除去または軟化することにより、ラインまたは管を通してピグを前進させるのに必要とされる圧力が低くなり、析出物の除去が増大することでピグ処理を補助する。
【0049】
水性システムは生産水、表面水、地下水、給水またはその組合せであることができる。
【0050】
水性システムは塩基性pH(すなわち、pH>7)を有することができる。
【0051】
酸組成物または洗浄用組成物は、慣用の酸組成物(例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、等)を用いる同じ方法と比べて1つの機器の内部表面の腐食を低減することができる。
【0052】
酸組成物または洗浄用組成物は、慣用の酸組成物(例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、等)を用いる同じ方法と比べて1つの機器の内部表面の金属損失を低減することができる。
【0053】
酸組成物または洗浄用組成物はさらに界面活性剤を含むことができる。好ましくは、界面活性剤は非イオン性の界面活性剤である。
【0054】
酸組成物または洗浄用組成物はさらにナトリウムの亜塩素酸塩/塩素酸塩、および追加の酸を含むことができる。この酸組成物は水性システムを消毒することができる。
【0055】
酸組成物または洗浄用組成物はさらに腐食抑制剤を含むことができる。
【0056】
酸組成物または洗浄用組成物はキレート剤を含むことができる。
【0057】
キレート剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、グルコネート、またはその組合せであることができる。
【0058】
井の無機または有機の析出物を除去する方法は、金属シュウ酸塩、金属炭酸塩、ケイ酸塩、金属硫酸塩、またはその組合せの析出物を除去することができる。
【0059】
注入に使用される酸の濃度は酸組成物の総重量を基準にして約5wt.%~約30wt.%であることができる。
【0060】
ニート酸組成物の濃度は約5wt.%~約85wt.%であることができる。
【0061】
井の析出物を除去するために、注入混合物中の酸組成物の濃度は約5wt.%~約30wt.%であることができる。好ましくは、酸組成物の濃度は井内に流し入れられる担体流体(例えば、水性混合物)の総重量を基準にして約15wt.%である。水性混合物を井および地層と24~36時間接触させた後、混合物を井または地層からポンプで汲み出す。
【0062】
シリカまたはケイ酸塩を含有する液体と接触する表面を洗浄する方法は、約0℃~約374℃、約20℃~約320℃、または約40℃~約100℃の温度で実施することができる。
【0063】
特に、組成物の用途は、石油および地熱流体の生産ならびにブラインおよび汎用処分井の再注入のために使用される井の洗浄および復活であることができる。
【0064】
注入される流体は、例えば、水、ブライン(塩水)、水圧破砕刺激流体(すなわち水圧破砕流体)、酸処理用添加剤、または他のあらゆる種類の水性流体であることができる。
【0065】
酸組成物は、井の寿命中掘削、完成、または刺激中のような殆どあらゆる段階において地層に注入することができる。酸組成物は坑井刺激法で、透過性を増大させ、生産を改善するのに役立てるために使用される。
【0066】
増粘剤、溶媒、アルカリ、フローバック助剤、非乳化剤、摩擦低減剤、破砕剤、架橋剤、殺生物剤、またはプロッパント(例えば砂)のような、通例、水圧破砕に使用されるかまたは一次破砕後に使用される追加の添加剤を井に注入することができる。これらの添加剤は通例、破砕流体体積の1%未満である。
【0067】
本発明の方法の注入ステップは井の水圧破砕後に行うことができる。
【0068】
本発明の方法の注入ステップは井の水圧破砕中に行うことができる。
【0069】
洗浄用組成物の消泡剤は、非イオン性シリコーン(Nalco,Inc.から製品番号336FGとして市販されている)、エトキシル化、プロポキシル化C14~C18アルコール(Nalco,Inc.から製品番号00PG-007として市販されている)、エトキシおよびプロポキシの両方の基を含む非イオン性アルコキシル化C6~C10アルコール(Nalco,Inc.から製品番号R-50360として市販されている)、非イオン性プロピレングリコール、エチレングリコールブロックコポリマー(Nalco,Inc.から製品番号PP10-3038として市販されている)、エトキシル化C11~C14アルコール(Nalco,Inc.から製品番号PP10-3148として市販されている)、プロピレンオキシドグリコールポリマー(Nalco,Inc.から製品番号7906として市販されている)、C16~C18アルコール(Nalco,Inc.から製品番号7465として市販されている)、またはその組合せを含むことができる。
【0070】
好ましくは、洗浄用組成物の消泡剤はNalco,Inc.から製品番号336FGとして市販されている非イオン性シリコーンを含む。
【0071】
消泡剤は、約1mg/L~約50,000mg/L、約1mg/L~約40,000mg/L、約1mg/L~約30,000mg/L、約1mg/L~約20,000mg/L、約1mg/L~約10,000mg/L、約5mg/L~約10,000mg/L、約5mg/L~約5,000mg/L、約5mg/L~約1,000mg/L、約5mg/L~約500mg/L、約5mg/L~約300mg/L、約5mg/L~約200mg/L、約10mg/L~約10,000mg/L、約10mg/L~約5,000mg/L、約10mg/L~約1,000mg/L、約10mg/L~約500mg/L、約10mg/L~約300mg/L、約10mg/L~約200mg/L、約50mg/L~約5,000mg/L、約50mg/L~約1,000mg/L、約50mg/L~約500mg/L、約50mg/L~約250mg/Lまたは約50mg/L~約150mg/Lの濃度で洗浄用組成物中に存在することができる。
【0072】
消泡剤は、洗浄用組成物の低いpHおよび非常に高い伝導率で、また汚れた表面から除去された硬水イオン、シリカ、有機物、または重金属(例えば、鉄)を含有する洗浄溶液中で有効である。
【0073】
酸組成物または洗浄用組成物はまた腐食抑制剤を含むことができる。本発明で使用される腐食抑制剤は、当業者に公知の、および/またはこれらに限定されることはないが、処理される表面の種類(金属、例えば、アルミニウム、鋼、鉄、真鍮、銅、セラミック、プラスチック、ガラス等)、システムに含まれるテトラフルオロホウ酸濃度、システムのpH、抑制剤の効率、抑制剤の溶解特性、表面に対するシステムの所望の曝露期間、環境要因、等をはじめとする幾つかの要因により具体的に指定されるあらゆる1種以上の腐食抑制剤であることができる。従って、かかる腐食抑制剤はスルホネート、カルボキシレート、アミン、アミド、ホウ酸塩ベースの抑制剤化合物、またはその組合せであることができる。
【0074】
好ましくは、腐食抑制剤はイミダゾリン、第四級アミン、脂肪酸、リン酸エステル、カルボン酸、アミン、リン酸塩、ポリリン酸塩、重金属、またはその組合せである。
【0075】
組成物に含ませるのに適した腐食抑制剤には、これらに限定されることはないが、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリールアミン第四級塩;単環式または多環式の芳香族アミン塩;イミダゾリン誘導体;モノ-、ジ-またはトリアルキルまたはアルキルアリールリン酸エステル;ヒドロキシルアミンのリン酸エステル;ポリオールのリン酸エステル;およびモノマー性またはオリゴマー性の脂肪酸がある。
【0076】
適切なアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリールアミン第四級塩には、式[N+R5aR6aR7aR8a][X-]のアルキルアリール、アリールアルキルおよびアリールアミン第四級塩があり、式中のR5a、R6a、R7a、およびR8aは1~18個の炭素原子を含有し、XはCl、BrまたはIである。幾つかの実施形態において、R5a、R6a、R7a、およびR8aは、各々独立して、アルキル(例えば、C1~C18アルキル)、ヒドロキシアルキル(例えば、C1~C18ヒドロキシアルキル)、およびアリールアルキル(例えば、ベンジル)からなる群から選択される。アルキルまたはアルキルアリールハロゲン化物との単環式または多環式の芳香族アミン塩には式[N+R5aR6aR7aR8a][X-]の塩があり、式中のR5a、R6a、R7a、およびR8aは1~18個の炭素原子を含有し、XはCl、BrまたはIである。
【0077】
適切な第四級アンモニウム塩としては、これらに限定されることはないが、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルトリエチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ジメチルアルキルベンジル第四級アンモニウム化合物、モノメチルジアルキルベンジル第四級アンモニウム化合物、トリメチルベンジル第四級アンモニウム化合物、およびトリアルキルベンジル第四級アンモニウム化合物があり、ここでアルキル基は約6~約24個の炭素原子、約10~約18個の炭素原子、または約12~約16個の炭素原子を含有することができる。適切な第四級アンモニウム化合物(quat)には、これらに限定されることはないが、トリアルキル、ジアルキル、ジアルコキシアルキル、モノアルコキシ、ベンジル、およびイミダゾリニウム第四級アンモニウム化合物、これらの塩、など、およびこれらの組合せがある。幾つかの実施形態において、第四級アンモニウム塩は、アルキルアミンベンジル第四級アンモニウム塩、ベンジルトリエタノールアミン第四級アンモニウム塩、またはベンジルジメチルアミノエタノールアミン第四級アンモニウム塩である。
【0078】
腐食抑制剤は、次の一般式で表わされるもののような第四級アンモニウムまたはアルキルピリジニウム第四級塩であることができる。
【0079】
【化1】
式中、R
9aはアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、ここで前記アルキル基は1~約18個の炭素原子を有し、またBはCl、BrまたはIである。これらの化合物の中には、アルキルピリジニウム塩およびアルキルピリジニウムベンジルquatがある。代表的な化合物として、塩化メチルピリジニウム、塩化エチルピリジニウム、塩化プロピルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、塩化オクチルピリジニウム、塩化デシルピリジニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンジルピリジニウムおよび塩化アルキルベンジルピリジニウムがあり、好ましくはアルキルはC
1~C
6ヒドロカルビル基である。幾つかの実施形態において、腐食抑制剤は塩化ベンジルピリジニウムを含む。
【0080】
腐食抑制剤はまた、ジアミン、例えばエチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)等および長鎖脂肪酸、例えばトール油脂肪酸(TOFA)から誘導されるイミダゾリンであることもできる。適切なイミダゾリンには、次式のものが含まれる。
【0081】
【化2】
式中、R
12aおよびR
13aは独立してC
1~C
6アルキル基または水素であり、R
11aは水素、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ヒドロキシアルキル、またはC
1~C
6アリールアルキルであり、R
10aはC
1~C
20アルキルまたはC
1~C
20アルコキシアルキル基である。好ましくは、R
11a、R
12aおよびR
13aは各々水素であり、R
10aはトール油脂肪酸(TOFA)で典型的なアルキル混合物である。
【0082】
腐食抑制剤化合物はさらに次式のイミダゾリニウム化合物であることができる。
【0083】
【化3】
式中、R
12aおよびR
13aは独立してC
1~C
6アルキル基または水素であり、R
11aおよびR
14aは独立して水素、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ヒドロキシアルキル、またはC
1~C
6アリールアルキルであり、R
10はC
1~C
20アルキルまたはC
1~C
20アルコキシアルキル基である。
【0084】
適切なモノ-、ジ-およびトリアルキルならびにアルキルアリールリン酸エステルならびにモノ、ジ、およびトリエタノールアミンのリン酸エステルは通例、1~約18個の炭素原子を含有する。好ましいモノ-、ジ-およびトリアルキルリン酸エステル、アルキルアリールまたはアリールアルキルリン酸エステルはC3~C18脂肪族アルコールを五酸化リンと反応させて調製されるものである。リン酸中間体はそのエステル基をリン酸トリエチルと交換してより広い分布のアルキルリン酸エステルを生成する。或いは、リン酸エステルはアルキルジエステルと共に低分子量アルキルアルコールまたはジオールの混合物を混合することによって作成してもよい。低分子量アルキルアルコールまたはジオールは好ましくはC6~C10アルコールまたはジオールを含む。さらに、1以上の2-ヒドロキシエチル基を含有するポリオールのリン酸エステルおよびそれらの塩、ならびにポリリン酸または五酸化リンをジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンのようなヒドロキシルアミンと反応させることにより得られるヒドロキシルアミンリン酸エステルが好ましい。
【0085】
腐食抑制剤化合物はさらにモノマー性またはオリゴマー性の脂肪酸であることができる。C14~C22の飽和および不飽和脂肪酸ならびにかかる脂肪酸の1種以上を重合することにより得られるダイマー、トリマーおよびオリゴマー生成物が好ましい。
【0086】
酸組成物または洗浄用組成物はまたスケール抑制剤も含むことができる。
【0087】
適切なスケール抑制剤には、これらに限定されることはないが、リン酸塩、リン酸エステル、リン酸、ホスホネート、ホスホン酸、ポリアクリルアミド、アクリルアミド-メチルプロパンスルホネート/アクリル酸コポリマー(AMPS/AA)の塩、ホスフィン化マレイン酸コポリマー(PHOS/MA)、およびポリマレイン酸/アクリル酸/アクリルアミド-メチルプロパンスルホネートターポリマー(PMA/AMPS)の塩がある。
【0088】
酸組成物または洗浄用組成物は、場合により、性能および経済性の両方を改善するために1種以上の非イオン性、アニオン性、カチオン性もしくは両性の界面活性剤またはこれらの混合物を含むことができる。選択される界面活性剤の種類は、例えば、特定の使用条件の性質(例えば、除去される残渣の種類または表面の種類)、および/または溶媒の性質(例えば、水性対アルコールまたは他の有機溶媒のようなより極性の低い溶媒)に応じて変化し得る。
【0089】
好ましくは、洗浄用組成物は非イオン性界面活性剤を含むことができる。非イオン性界面活性剤は、優れた関連動的表面張力プロフィールによって迅速な湿潤を示し、Vitech International.,Inc.から市販されているQ3(商標)界面活性剤であることができる。
【0090】
洗浄用組成物はさらにシリカまたはケイ酸塩析出の有機抑制剤を含むことができる。
【0091】
シリカまたはケイ酸塩析出の無機または有機抑制剤は、ホウ酸、ボレート、オリゴマー性およびポリマー性化合物(例えば、アクリル酸-ポリエチレングリコールモノメタクリレートコポリマー(製品番号3DT155、Nalcoから入手可能)および2-プロペン酸、すなわち2-プロペニル-w-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)を有するポリマー、ナトリウム塩(製品番号3DT156、Nalcoから入手可能)であることができる。
【0092】
本発明の組成物は、流体または水性の媒質と共に提供することができ、すぐ使用できる形態で提供することができ、または別個の作用剤として提供することができ、この組成物は処理の現場で調製することができる。使用および用途の性質に応じて、組成物は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を高めの割合で含有する濃縮物の形態であることができ、この濃縮物は使用の前または使用中に水または別の溶媒または液体媒質または消泡剤、シリカもしくはケイ酸塩析出物の有機抑制剤、腐食抑制剤、もしくは界面活性剤のような他の成分により希釈される。かかる濃縮物は、長期間の貯蔵に耐えた後、慣用の方法で適用することが可能なように充分な時間均質なままでいる調製物を形成するために水で希釈されるように処方することができる。希釈後かかる調製物は、意図する目的または最終用途に応じて様々な量の洗浄用組成物を含有し得る。
【0093】
その内部表面が本明細書に記載されている方法で洗浄される1つの機器はまた、パイプ、ドレン管路、流体移送ライン、生産井、または地下の炭化水素含有貯留層であることもできよう。
【0094】
シリカまたはケイ酸塩を含有する液体と接触する表面を洗浄する方法は約0℃~約374℃、約20℃~約320℃、または約40℃~約100℃の温度で実施することができる。
【0095】
蒸発器の場合、本方法は、約20℃~約100℃、約40℃~約100℃、約40℃~約90℃、約40℃~約80℃、または約60℃~約80℃の温度で実施することができる。
【0096】
ボイラーの場合、本方法は、約40℃~約340℃、約250℃~約330℃、または約300℃~約330℃、約310℃~約320℃、または約40℃~約100℃の温度で実施することができる。
【0097】
シリカまたはケイ酸塩析出物を除去するための本方法はまた有機析出物も除去することができる。表面から除去することができる有機析出物は水溶性有機物、ビチューメン、ナフテン酸、および部分的に熱的に劣化した可能性がある有機物であることができる。
【0098】
洗浄されるシステムが洗浄のためにオフラインであるとき、シリカまたはケイ酸塩を含有する液体と接触する表面を洗浄するための本方法は、洗浄用組成物の総重量を基準にして約1v/v%~約50v/v%、約3v/v%~約25v/v%、約10v/v%~約20v/v%、または約15v/v%の濃度の、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩を含有する組成物を有する洗浄用組成物を用いて実施することができる。
【0099】
1つの機器がオンラインのとき、酸組成物は酸組成物中約65~約85%の活性酸濃度であり、水性システムの体積を基準にして約10~約100ppmの活性酸としてシステムに供給される。同様に、薬品供給ポンプにより他の水性システムに加えることができる。1つの機器がオフラインのとき、酸組成物は水性混合物中に約10wt.%~約20wt.%の酸、好ましくは約15wt.%の酸を含み、洗浄されることが望まれる設備機器の内部表面に直接接触させるように供給ラインに添加される。
【0100】
さらに、システムが洗浄のためにオフラインであるとき、シリカまたはケイ酸塩を含有する液体と接触する表面を洗浄するための本方法は、酸組成物または洗浄用組成物の総重量を基準にして約1v/v%~約50v/v%、約3v/v%~約25v/v%、約10v/v%~約20v/v%、または約15v/v%の濃度の製品番号EC6697A(Nalco-Championから入手可能)を有する洗浄用組成物を用いて実施することができる。
【0101】
さらに、システムがオンラインであり、酸組成物または洗浄用組成物を用いる洗浄プロセスを使用するとき、給水中の洗浄用組成物の濃度は約5mg/L~約300mg/L、約30mg/L~約300mg/L、または約30mg/L~約100mg/Lである。好ましくは、システムがオンラインであり、洗浄プロセスが酸組成物または洗浄用組成物を用いるとき、給水中の酸組成物または洗浄用組成物の濃度は約30mg/L~約100mg/Lである。
【0102】
特に、酸組成物または洗浄用組成物を使用する適用現場は、並行して作動する4つの二段階蒸発器であることができる。蒸発器はMVC原理に基づいて作用する。各々の蒸発器の一次および二次段階は連続して作動し、同じ格納容器内に収容される。1つの蒸発器は他の3つの蒸発器より大きくすることができる。
【0103】
図2は、蒸発器システムの主要な部品を示す。蒸気圧縮蒸発器(またはブライン濃縮器)10は、管束およびブライン分配器を含めて様々な内部構造物を含有することができる。蒸気圧縮蒸発器10は圧縮機20、再循環ポンプ30、ベント62を有する脱気装置60、および留出物ポンプ40に連結されている。廃水52は熱交換器50を介して脱気装置60中に、そして蒸気圧縮蒸発器10中に供給される。留出物42は蒸気圧縮蒸発器10から出て留出物ポンプ40に入り、熱交換器50を通って出て行く。ブラインは再循環ポンプ30を介して再循環され、廃棄ブラインは廃棄ブラインライン32から出て行く。蒸気は、圧縮機20を通って循環することによって圧縮される。
【0104】
図2に示したもののような蒸発器システムのための典型的な作動特性を表1に列挙する。
【0105】
【0106】
流下膜式MVC蒸発器は他の蒸発器設計と比較して高い熱伝達特性および効率を有する(ハインツ(Heins,W.)(2008).Technical Advancements in SAGD Evaporative Produced Water Treatment,International Water Conference in San Antonio,Texas,October 26-30,IWC-08-55)。水を効果的に蒸発させ、温度を上昇させて(適用現場においてΔT約27℃)高品質の給水を生成するには高い熱伝導率が必要とされる。蒸発プロセスと共に、給水中に存在する物質の濃度はその初期濃度の45~55倍にもサイクルアップすることができる。より高い温度とより高い濃度の無機物および有機物との組合せは、逆に可溶性で微粒子状の物質が蒸発器システムの湿潤した部分に析出する可能性を増大させる。
【0107】
従って、きれいな熱伝達表面は、高いレベルの無機塩および有機汚染物質を含有する留出物の水からのエネルギー効率的な生産に極めて望ましい。析出物が蒸発器の熱交換器表面上に絶縁層を形成すると、U-値(熱伝導率)の低下が起こる。蒸発器の作動条件を限度内で調節してU-値の減少を補うことができるが、低いU-値はある時点で留出物流量の低減および蒸発器作動の負荷軽減に通じる。プラント作動に利用可能な留出物(OTSGおよび熱回収蒸気発生機(HRSG)への給水)が不充分であると、ビチューメンの生産が低下し得る。
【0108】
蒸発器の熱伝達効率および対応する留出物の生産の低下に加えて、析出物は熱伝達管、分配プレート、および流路を塞ぐ可能性がある。システムの閉塞は水の分配の悪さ、留出物生産のさらなる低下を招き得、機械的な手段によってもシステムの洗浄が極めて困難、高価、労働集約的で時間がかかることになり得る。
【0109】
ビチューメン操作の熱回収において、水(例えば、生産水、様々なリサイクル水流、および汽水)の複雑な混合物が混ざって蒸発器の給水を形成する。様々な水流の比およびそれらの化学的な組成は時間と共に大きく変化し得る。さらに、水のリサイクルレベルの増大によって水の利用効率を最大化し排水を少なくしようとすると、析出物を形成するイオンおよび物質のレベルが時間と共に増大することになり得る。これは蒸発器の作動を妨げるのに充分である。
【0110】
5ヶ月間の作動の平均蒸発器給水品質および45の総濃縮サイクルでの作動の影響を表2に示す。水化学物質の無機物部分を誘導結合プラズマ(ICP)分光分析法で測定した。
【0111】
【0112】
蒸発器システムは比較的高いpH(例えば、給水pHは約10.6であり、一次システムのpHは約12.0であり、二次システムは約12.3である)で作動するにも関わらず、表2に示したアルミニウム、硬水、およびシリカイオンの組合せは時間と共に析出物を形成する結果となる可能性があり、実際そうなった。システムを通過する給水の大きい体積(例えば、蒸発器当たりの目標速度250~300m3/時間)により、給水から析出する無機または有機の物質は単位mg/L毎に各々の蒸発器での析出物250~300グラム/時間または2.2~2.6メートルトン/年に対応する。
【0113】
水のリサイクルおよび水の利用を最大化する必要性により、給水中の析出物を形成する無機イオンおよび有機物のレベルは時間と共に増大した。
【0114】
ハイドロブラストを使用して内部の析出物を除去する場合、蒸発器システムをオフラインにし、冷却し、内部の水性流体を排水する。エントリーハッチを開放し、ハイドロブラストの要員/設備機器を蒸発器システム内に入れる。高圧水洗ランス(ハイドロブラスト)を用い、高圧水を使用して析出物を除去し内部表面の汚れを落とす。内部表面から除去された析出物を集め、処分のためにシステムから取り出した。より長い高圧水ランスを使用して、蒸発器の熱交換器(または管束)部分の長い管の内部(例えば、管側)から析出物を除去する。蒸発器を洗浄した後、システムのエントリーポートを密封し、給水を加えてシステム内で正常な作動レベルに達する。水再循環ポンプを始動させ、通例、蒸気を熱交換器のシェル側に加えて、再循環する水を加熱する。機械的な蒸気圧縮ポンプを始動させ、システムをオンラインに戻す。
【0115】
本明細書に記載されている方法で、蒸発器システムをオフラインにし、内部の水性流体を排水し、部分的に放冷して0℃~60℃、好ましくは40℃~60℃の作動範囲にする。留出物または比較的にきれいな水(例えば、ユーティリティー水)を使用して、蒸発器システムを部分的に充たすことによってシステムを濯ぐ。水ポンプを使用して、蒸発器内部の濯ぎ水を再循環させて、高いレベルの析出物を形成する物質(例えば、シリカ、硬水イオン、アルミニウム、鉄、など)を含有し得る残存量の水を除去する助けにする。水再循環ポンプを停止させ、濯ぎ水を蒸発器から排水する。次に、システムを留出物または比較的にきれいな水で部分的に充たし、再循環水ポンプを用いて循環させる。再循環水の試料を化学的に試験し、水の品質に対する適用指針が満たされていることを保証する。再循環水の温度を測定して、作動範囲にあることを保証する。
【0116】
酸組成物または洗浄溶液の所望の濃度に達するのにどの程度の濃縮された洗浄溶液を添加すべきか決定するために、水レベルモニターを用いて蒸発器システム内の水の体積を測定する(例えば、蒸発器内部の水体積が85m3であれば、15v/v%濃度の酸組成物または洗浄溶液を生成させるために、通例15m3の濃縮された洗浄溶液が添加される)。また、場合により、蒸発器内の発泡を最小限に抑えることを確実にするために消泡剤を加える(例えば、100m3または100,000リットルの15v/v%洗浄溶液中の4リットルの消泡剤生成物は約40mg/L濃度の消泡剤生成物を生成する)。先行経験に応じて、より多いまたはより少ない消泡剤を洗浄溶液に加えることができる。容認できないレベルの発泡が存続するならば追加の消泡剤を洗浄溶液中に注入することができる。洗浄溶液の目標レベルを維持することを確実にするために酸性度滴定方法によって酸組成物または洗浄溶液の濃度をモニターする。酸組成物または洗浄溶液の濃度が高過ぎる場合、追加の水を蒸発器システムに加えることができる。酸組成物または洗浄溶液の濃度が低過ぎる場合、追加の濃縮された酸組成物または洗浄溶液を加えることができる。再循環する酸組成物または洗浄溶液の試料を所定の間隔で採取し、比色分析、酸性度滴定、pH、およびICP(誘導結合プラズマ)により水化学物質を測定して、洗浄プロセスの進行を決定し、酸組成物または洗浄溶液の濃度が所望の作動限界内に維持されることを確実にする。
【0117】
システムが所要の限度内で作動することを確実にするために温度、および水レベルも測定する。システムの読みをチェックして発泡の証拠があるか否かを確かめる。作動限界に達したら(例えば、再循環する洗浄溶液の温度が推奨される最大限度に達したら)、酸組成物もしくは洗浄溶液またはシステム作動条件を調節する(例えば、追加の希釈水を加えて再循環する酸組成物または洗浄溶液を冷却し、追加の濃縮された酸組成物または洗浄溶液を加えて酸組成物または洗浄溶液の濃度を維持する)。再循環する酸組成物または洗浄溶液の試料の化学的な分析を使用して、洗浄プロセスが完了したとき(例えば、シリカ、硬水イオン、アルミニウムなどのような析出物を形成するイオンのレベルが実質的に一定のレベルに達し、洗浄プロセスが完了したことを示すとき)、および酸組成物または洗浄溶液による蒸発器の内部表面の腐食が所望の作動限界未満であることを決定する。
【0118】
次に、蒸発器の再循環水ポンプを停止させ、酸組成物または洗浄溶液をシステムから排水する。必要に応じてシステム内に残留する残存量の酸組成物または洗浄溶液を除去するために追加の濯ぎ水を加え、再循環し、排水することができる。次いで、蒸発器を給水で充填してシステム内を正常な作動レベルにする。水再循環ポンプを始動させ、通例、蒸気を熱交換器のシェル側に加えて再循環する水を加熱し、機械的な蒸気圧縮ポンプを始動させ、システムをオンラインに戻す。
【0119】
システムから排水される使用済の酸組成物または洗浄溶液は処分される。処分方法は適用現場に基づいて変化し得る。1つの処分方法は、酸組成物または洗浄溶液を、およそ中性のpHに達するまで濃縮された苛性剤で中和することである。中和された酸組成物または洗浄溶液は、現場から離れた処分施設に送ることによって処分することができる。もう1つの処分方法は、使用された酸組成物または洗浄溶液を他の水流と混合し、混合物を中和してシリカ、硬水イオン、およびその他の析出物を形成する物質を沈殿させ、沈殿させた固体(これが処分される)をろ過し、次に液体ろ液を深い廃棄現場に注入することにより処分する。蒸発器の洗浄および使用した洗浄溶液の処分に必要なステップの数と順序は適用現場およびシステムの設計に応じて変化し得る。
【0120】
本発明を詳細に説明して来たが、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱することなく変形および変化が可能であることは明らかである。
【実施例】
【0121】
以下、本発明をさらに例証するために制限することのない実施例を挙げる。
【0122】
実施例1:析出物の元素分析
4つの析出物の化学組成を、元素組成についてX-線蛍光(XRF)の標準的な組成分析により、有機物濃度についてC/H/N/S元素分析により、そして有機物/水和水およびその他の揮発性物質の濃度について規定の期間925℃に加熱することにより決定した。結果を表3に示す。
【0123】
【0124】
実施例2:材料の溶解
試験方法は数グラム(約3g)の標準的な固体を秤量して4オンスのプラスチックジャーに入れた。次に、100mLの蒸留水を添加した。試験酸は蒸留水中5、10、または15wt.%の生成物として調製した。キャップをジャーに取り付け、ジャーを数回激しく振盪して固体を完全に濡らした。必要ならば、キャップを緩めて増大した圧力を下げた。室温試験の間、ジャーを週に約3回振盪した(方法1)。より高い温度(特に断らない限り75℃)の試験中は、ジャーを一体型シェーカーと共に循環水浴に保存した(方法2)。定期的に、振盪の少なくとも1時間後試料(3mL)を取った。次に、試料(2g)を0.45μのフィルターに通してシリンジろ過した。次いで、ろ過した試料を98mLの蒸留水で希釈し、X-線蛍光(XRF)およびX-線散乱(XRD)法を用いる固体組成分析にかけた。元素分析結果を表4~13に示す。
【0125】
試験した酸は、尿素テトラフルオロホウ酸塩(Nalco-Championから製品番号EC6697A/R-50975として市販されている、以後組成物Aとして特定する)、尿素硫酸塩(Vitech International,Inc.からA85として市販されている、以後組成物Bとして特定する)、変性尿素テトラフルオロホウ酸塩(Vitech International,Inc.から製品APWとして市販されている、以後組成物Cとして特定する)、尿素塩酸塩(Vitech International,Inc.から製品BJS-Iとして市販されている、以後組成物Dとして特定する)、尿素メタンスルホン酸塩(Vitech International,Inc.から製品M5として市販されている、以後組成物Eとして特定する)、塩酸(以後組成物Fとして特定する)、尿素テトラフルオロホウ酸塩(Vitech Internationally,Inc.から製品ALBとして市販されている、以後Gとして特定する)、および変性尿素塩酸塩(Vitech International,Inc.から製品BJS-HTとして市販されている、以後Hとして特定する)、製品N2560(Nalco-Championから市販されている、以後組成物Iとして特定する)、Nalco ChampionからN2560として市販されている抑制塩酸、ならびに尿素フッ化水素酸塩(Nalco Championから製品DC14として市販されている、以後組成物Jとして特定する)であった。
【0126】
試験した固体は、タルク、非晶質ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、フッ化カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マグネタイト、二酸化マンガン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、硫酸バリウム、および硫酸ストロンチウムであった。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
実施例3:腐食速度滴定研究
滴定に使用した様々なニート酸を、その腐食速度を評価するために検討した。試験流体は、炭酸ナトリウム(35.3g)および塩化ナトリウム(14.4g)を2Lの蒸留水に溶解することによって調製した。次に、試験流体を、磁気撹拌棒を備えた5Lのビーカーに入れた。撹拌速度を調節して、試験流体中に泡を入れることなく良好な混合を確保した。Nalco Corrosion Monitor(NCM)軟鋼およびpHプローブを流体内に設置した。次いで、プローブを3D TRASAR(登録商標)コントローラに連結してデータを記録した。ニート酸のアリコートを試験流体に加え、読みを得た。流体のpHが目的の範囲を超えるまで滴定を続けた。pHをpH値4に調節した。この試験に使用したニート酸は組成物A、H、およびIであった。この研究の結果を
図1に示す。
【0138】
NCMプローブの読みは各々約9分かかったので、滴定アリコートは少なくとも20分の平衡化を必要としたことに留意されたい。
【0139】
35.3gの炭酸ナトリウムおよび14.4gの塩化ナトリウムを2Lの蒸留水に溶解するように変更する以外は上に記載したようにして、もう1つ別の組の腐食速度滴定を行った。pHは酸によりpH4に調節した。
【0140】
実施例4:棒状クーポンによる腐食速度の決定
軟鋼クーポン(Nalco製品番号P5035A)を使用して、様々な酸および腐食抑制剤と組み合わせた酸の腐食速度を評価した。試験酸は蒸留水中5、15、または25wt.%の溶液として調製した。腐食抑制剤は蒸留水中0.5、1.0、2.0または3.0wt.%の溶液として調製した。試験流体(約450mL)を広口プラスチックボトル(500mL)に加えた。様々な量の腐食抑制剤をジャーに加え、ジャーに蓋をし、ジャーを振盪して2つの液体を混合した。3つの軟鋼クーポンを非金属の取付具により孔の開いたキャップに取り付け、高さを調節して流体の表面の下に吊り下げた。クーポンをキャップの周りで均一に間隔をあけて、互いに接触しないようにした。孔の開いたキャップおよびクーポンを広口ジャー上に設置し、ジャーを循環水浴内に入れた。循環水浴を65、75、または90℃に設定した。次に、エアラインに連結したプラスチック管をキャップの中心の穴に挿入した。空気流を5~10mL/分に設定した。
【0141】
各時点(6、24、および48時間)後、クーポンを取り出し、軟らかいプラスチックたわしで洗浄し、蒸留水で一回、アセトンで二回濯ぎ、乾燥した。次にクーポンをデシケーターに入れて温度を平衡化させた。
【0142】
洗浄および温度平衡化の後クーポンを秤量し、腐食速度を計算した。腐食速度は、クーポンの重量損失、曝露時間、およびクーポンの表面積から計算した。
【0143】
試験した酸腐食抑制剤は、Nalco championから製品EC1509A、EC9374A、ASP542、3DT129、などとして市販されている第四級アミン、脂肪酸、イミダゾリン、およびアルキル-誘導体化イミダゾリン、有機リン酸イオン、ならびに亜鉛またはこれらの混合物のブレンドであった。
【0144】
実施例5:48-時間腐食速度滴定研究
腐食速度滴定研究の第3の例において、176.7gの炭酸ナトリウムおよび72.0gの塩化ナトリウムを10Lの蒸留水に溶解した。クーポンを10X生成物により72時間90℃で前処理した。およそ8Lの調製した溶液を酸で3.8~4.0のpHに滴定し、全てのCO2を排除し、9Lに希釈して一晩40℃で平衡化させた。平衡化の後、溶液をさらに10Lに希釈し、温度を90℃に上昇させた。クーポンおよびpHおよびNCMプローブを試験セル内に設置した。この研究に使用した酸は組成物DおよびEを含む。この研究に使用した腐食抑制剤は、有機第四級アミン、トール油、脂肪酸、などのブレンド(Nalco Championから製品TX16010として市販されている、以後組成物Kとして特定する)を包含する。4つの試験条件D、F、DプラスKおよびDプラスLをセットアップした。48時間後、実施例4に記載したようにして、クーポンを取り出し、洗浄し、秤量した。
【0145】
実施例6:棒状クーポンおよび組成物Dを用いた混成腐食速度決定
混成腐食速度研究において、既に記載した実施例5を実施した。試験流体は8.8gの炭酸ナトリウム、3.6gの塩化ナトリウムを用いて調製し、27.153gの組成物Dを500mLの蒸留水に溶解した。平衡化させた溶液のpHは3.06であった。溶液を広口プラスチックボトルに加え、クーポン(Nalco P5035A)を孔の開いたキャップの周りに均一に取り付けた。ボトルに蓋をし、エアラインを5mL/分の流量で、100%の湿度で取り付けた。研究は75℃の温度で行った。腐食速度はミリメートル/年(mmpy)およびミル/年(mpy)で測定した。
【0146】
【0147】
実施例7:棒状クーポンおよび組成物Aを用いた混成腐食速度決定
40.0046gの組成物Aを試験流体に使用したことを除いて、実施例6に記載したようにして混成腐食速度研究を行った。溶液のpHは3.75であった。
【0148】
【0149】
実施例8:棒状クーポンおよび組成物Bを用いた混成腐食速度決定
16.535gの組成物Bを試験流体に使用したことを除いて、実施例6に記載したようにして混成腐食速度研究を行った。溶液のpHは3.75であった。
【0150】
【0151】
実施例9:棒状クーポンおよび組成物Fを用いた混成腐食速度決定
43.89gの組成物Fを試験流体に使用したことを除いて、実施例6に記載したようにして混成腐食速度研究を行った。溶液のpHは3.75であった。
【0152】
【0153】
実施例10:棒状クーポン、組成物B、および腐食抑制剤を用いた腐食速度決定
棒状クーポン、酸、および腐食抑制剤を用いて腐食速度決定研究を行った。15wt.%の組成物Bは、75gの組成物Bを423gの蒸留水に加えることによって調製した。これに、2.5gの組成物Hを加えた。溶液を広口プラスチックボトルに入れ、クーポン(Nalco P5035A)を孔の開いたキャップに均一に取り付けた。ボトルに蓋をし、流量5mL/min、100%湿度のエアラインを取り付けた。研究は温度75℃で行った。
【0154】
【0155】
実施例11:棒状クーポンおよび組成物Eを用いた腐食速度決定
75gの組成物Eおよび420gの蒸留水を使用したことを除いて、実施例6に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0156】
【0157】
実施例12:棒状クーポン、組成物C、および腐食抑制剤を用いた腐食速度決定
75gの組成物C、5gの組成物I、および420gの蒸留水を使用したことを除いて、実施例9に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0158】
【0159】
実施例13:棒状クーポン、組成物C、および腐食抑制剤を用いた腐食速度決定
75gの組成物C、5gの組成物I、および415gの蒸留水を使用したことを除いて、実施例9に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0160】
【0161】
実施例14:棒状クーポンおよび組成物Dを用いた腐食速度決定
75gの組成物D、425gの蒸留水、および8.24gの塩化ナトリウムを使用し、腐食抑制剤を使用しなかったことを除いて、実施例9に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0162】
【0163】
実施例15:棒状クーポンおよび組成物Aを用いた腐食速度決定
75gの組成物A、425gの蒸留水、および4.12gの塩化ナトリウムを使用し、腐食抑制剤を使用しなかったことを除いて、実施例9に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0164】
【0165】
実施例16:棒状クーポンおよび組成物Bを用いた腐食速度決定
75gの組成物B、425gの蒸留水、および4.12gの塩化ナトリウムを使用し、腐食抑制剤を使用しなかったことを除いて、実施例9に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0166】
【0167】
実施例17:棒状クーポンおよび組成物Eを用いた腐食速度決定
75gの組成物E、425gの蒸留水、および4.12gの塩化ナトリウムを使用し、腐食抑制剤を使用しなかったことを除いて、実施例9に記載したようにして腐食速度決定研究を行った。
【0168】
【0169】
実施例18:実験室規模の試験
これらの試験で使用した洗浄用組成物は水中15v/v%の組成物Aであった。
【0170】
新しい洗浄化学物質を動的条件下で評価するために簡単な実験室ベンチ装置を設計し作成した。この実験室ベンチ装置は
図2で表される。試験のための析出物250を、洗浄溶液容器230と流体連通している試験容器240に入れた。洗浄溶液容器230は温度調節された水浴210に入っている。洗浄溶液はポンプ220により洗浄溶液容器230から試験容器240に送ることができる。
【0171】
試験装置は様々な洗浄化学物質を評価して、性能および可能な洗浄方法に関するデータ(温度、濃度、および時間を含む)を得た。さらに、特定の析出物に対するプログラムおよび推奨を設定することができる。結果は、改善された屋外性能に翻訳された。
図3は実験室規模の動的試験装置の概略図である。
【0172】
試験方法は、洗浄溶液を一定の温度に保持しながら屋外析出物試料を通過して洗浄用組成物を再循環させることからなっていた。実験に使用した屋外試料の組成を分析した後105℃で乾燥した。乾燥した受領したままの析出物を初期試料重量とした。析出物試料または析出物が付着した物体を流れている洗浄溶液に所定の試験期間浸した。洗浄溶液は典型的に使用する60℃または80℃の試験温度で加熱することができた。析出物試料の容器全体も加熱浴に浸すことができた。試験が完了したとき、残存する析出物を脱イオン水で濯ぎ、拭き取って乾燥した。次いで回収した残存析出物を105℃で乾燥した。乾燥した析出物の最終重量を取り、溶解率%を決定した。試験中試験溶液のアリコートを取り出し、ICP分光分析法を用いてイオン濃度を評価し、洗浄の進行に合わせて処理性能を測定することができた。この手順により、温度および回数を変えて複数の洗浄が可能であった。
【0173】
試験方法は、洗浄溶液を一定の温度に保持しながら屋外析出物試料を通過して洗浄用組成物を再循環させることからなっていた。実験に使用した屋外試料の組成を分析した後105℃で乾燥した。乾燥した受領したままの析出物を初期試料重量とした。析出物試料または析出物が付着した物体を流れている洗浄溶液に所定の試験期間浸した。洗浄溶液は典型的に使用する60℃または80℃の試験温度で加熱することができた。析出物試料の容器全体も加熱浴に浸すことができた。試験が完了したとき、残存する析出物を脱イオン水で濯ぎ、拭き取って乾燥した。次いで回収した残存析出物を105℃で乾燥した。乾燥した析出物の最終重量を取り、溶解率%を決定した。試験中試験溶液のアリコートを取り出し、ICP分光分析法を用いてイオン濃度を評価し、洗浄の進行に合わせて処理性能を測定することができた。この手順により、温度および時間を変えて複数の洗浄が可能であった。
【0174】
析出物が付いたより大きい物体(例えば、水分配器キャップ)を試験する必要がある状況においては、試料容器を大きくして、被験物体全体を再循環する洗浄溶液に浸すことができるようにした。蒸発器水分配器キャップの
図5Aおよび4B(試験前および後の写真)は洗浄用組成物の非常に優れた洗浄能力を示している。分配器キャップには機械的な洗浄を使用しなかった。
【0175】
適用現場からの金属ケイ酸塩および有機物をベースとする蒸発器析出物の溶解を測定するために実験室研究を行った。
図6は、析出物溶解結果が洗浄溶液の濃度(0~15v/v%)に強く依存していたことを示す。15v/v%の濃度の洗浄用組成物により析出物の85%溶解が起こるという極めて良好な結果が60℃で22時間後に得られた。
【0176】
図7は、硬水イオンおよびシリカが、60℃での処理の最初の5~10時間で水分配器キャップの蒸発器析出物試料から急速に放出されたことを示している。この迅速な析出物溶解期間に続いて、低下した溶解速度が10~22時間の間続いた。これは、殆ど全ての析出物が溶解し、析出物のより抵抗性の部分が攻撃されるためであった。
【0177】
図8は、洗浄用組成物による汚水槽析出物溶解が
図6(分配器キャップ析出物溶解)と同様な傾向を示すことを実証している。
【0178】
実施例19:溶解試験
異なる組成、粒度、および表面積のために、各々の析出物を乳鉢と乳棒で粉砕した後#14の篩に通して篩い分けして、各々の試料が同様な粒度と表面積を有するようにした。各々の試験溶液は、500.00グラムの各々の溶液を既知重量の密封可能な高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに入れることによって調製した。溶液を温度55~60℃、混合スピード5.5に設定した攪拌機ホットプレート上で既知重量の2インチの八角形撹拌棒により90分混合した後5.0グラムのスケール析出物を加えた。
【0179】
スケール析出物(5.0g)を予熱した試験溶液に加え、同じ温度および混合スピードで16時間混合した。16時間後溶液を、真空ろ過システムを用いて既知重量のろ紙に通してろ過した。ろ紙およびHDPEボトルを強制空気オーブン内で乾燥するまで乾燥した。ボトル、撹拌棒、およびろ紙の乾燥重量を記録した。次に溶解した材料の百分率割合を次のようにして計算した。
溶解した析出物の百分率割合=
{[初期スケール重量-総残渣重量(TRW)]/初期スケール重量}*100
【0180】
【0181】
実施例20:パイロット規模ボイラー試験
パイロット規模ボイラー(PSB)設備機器を使用して処理化学物質およびそのような処理の組合せの有効性を評価する。この設備機器はまた、水質および作動条件の変化の影響を評価するためにも使用される。PSB設備機器は、より大きいプラント単位操作における長期の挙動の迅速な指示(5日以内)を提供するように設計されている。
【0182】
図4のPSBは、給水タンク310から供給される給水、給水タンク310を脱気装置320に連結するポンプ、脱気装置320をボイラー340に連結するボイラー給水(BFW)ポンプ330、ボイラー340内に含有されるファイヤーロッド350、凝縮水出口流360およびブローダウン流370を有する。
【0183】
処理化学物質および作動条件の試験中、結果を決定するのに必要とされる時間を短縮するために、SAGDプラントボイラーおよび蒸気発生機より厳しい/ストレスがかかった条件下(水化学物質、熱流束、滞留時間)でPSB設備機器を作動させた(表27)。
【0184】
【0185】
PSB試験に使用した水化学物質をまとめて表28に示す。試験は10サイクルの濃縮で実施し、PSB内部の水(ブローダウンとして測定される)は析出が起こらなければ全ての給水化学物質で10X以上濃縮される。給水化学物質およびPSB濃縮サイクルは、オイルサンド適用におけるOTSGブローダウン水化学物質を代表するブローダウン水化学物質を提供するように選択した。幾つかのプラントはOTSGブローダウンにおいてより高いかまたはより低い濃度の特定の化学物質を有し得、PSB試験は広範囲の水化学物質および作動条件を試験するように容易に適合できる。
【0186】
【0187】
表28に示されているように、10濃縮サイクルでPSB試験に使用した水質は一般に75%蒸気品質(4濃縮サイクル)で作動するSAGD位置#1より厳しく、PSBのような設備機器での促進試験をするのに適している。蒸気中へのシリカ揮発は、これらの作動条件で、ボイラー水またはブローダウン(Nalco(2004)、Selective Silica Carryover,Technifax TF-5,1-3.)でのシリカ濃縮に対して小さい(およそ0.5%)。様々なSAGDプラント位置または他のタイプのボイラー(例えば、パッケージまたはユーティリティー)に関連する作動条件および処理プログラムを評価するのにPSB設備機器を使用するとき、上記の水および作動条件は変形することができる。
【0188】
【0189】
表29に挙げた全体の性能結果は、熱的析出速度と析出速度(mg/hr)の最も低い組合せが、PSBの給水に加えられた洗浄溶液(用量約30mg/L)および界面活性剤の処理の組合せを用いて得られたことを示している。
【0190】
実施例21:消泡剤試験
水中15v/v%の組成物Aを含む洗浄用組成物を使用して様々な消泡剤の有効性を評価した。洗浄用組成物(10グラム)および所定量の消泡剤を各々の試験管に入れた。振盪の前に、各々の試験管内の液体の高さをmmで測定し記録した。各々の管をパラフィルムで覆い、1分間激しく振盪し、泡の高さをmmで測定し記録した。1分間の試験溶液振盪後および1分間の試験溶液静置後の泡の高さ%を、泡の高さを初期の液体の高さで割り、100をかけることで決定した。この泡の高さ%を記録した。次に、試験溶液を30分静置し、試験溶液中の泡の持続を存否で記録した。
【0191】
試験した消泡剤は、非イオン性シリコーン(Nalco,Inc.から製品番号336FGとして市販されている、以後Mとして特定する)、エトキシル化、プロポキシル化C14~C18アルコール(Nalco,Inc.から製品番号00PG-007として市販されている、以後Nとして特定する)、エトキシおよびプロポキシ基を両方とも含む非イオン性アルコキシル化C6~C10アルコール(Nalco,Inc.から製品番号R-50360として市販されている、以後Oとして特定する)、非イオン性プロピレングリコール、エチレングリコールブロックコポリマー(Nalco,Inc.から製品番号PP10-3038として市販されている、以後Pとして特定する)、エトキシル化C11~C14アルコール(Nalco,Inc.から製品番号PP10-3148として市販されている、以後Qとして特定する)、プロピレンオキシドグリコールポリマー(Nalco,Inc.から製品番号7906として市販されている、以後Rとして特定する)、C16~C18アルコール(Nalco,Inc.から製品番号7465として市販されている、以後Sとして特定する)であった。
【0192】
【0193】
【0194】
表30および31に示されているように、最も有利な結果を示した消泡剤はM、O、およびRであった。これらの結果から分かるように、幾つかの消泡剤は洗浄溶液の発泡を低下する上で有効ではない。特に、消泡剤MおよびNは試験した消泡剤のうちで最も有効であった。洗浄の環境は高い酸、高い伝導率、洗浄溶液の高い濃度および普通でない尿素テトラフルオロホウ酸塩化合物、ならびに高温の蒸発器内の他の作動条件および汚染物質イオンの存在の1つであった。
【0195】
実施例22:屋外試験
プラント蒸発器で得られた析出物の溶解の極めて肯定的な実験室結果に基づき、蒸発器の全面的な洗浄を行った。洗浄を開始するために、システムをオフラインにし、排水し、ユーティリティー水でフラッシュした。既知体積のユーティリティー水を蒸発器に加えた後、濃縮された洗浄用組成物をおよそ15%v/vの濃度を提供するように加えた。蒸発器はオフラインにしたばかりだったので、システムは洗浄プロセスの始動時にはまだ熱かった。最初、洗浄溶液のオンラインの温度の読みを推奨される80℃の限界未満に保つことには幾らかの困難が見られた。
【0196】
洗浄溶液の初期添加後、水レベルの測定の広い変動に基づいて、重大な発泡状況が蒸発器内部で検出された。発泡は、回避しなければならず、検出されたときは速やかに改善しなければならない重大な問題である。なぜならば、安全警報/スイッチが稼動させられる可能性があり、再循環ポンプ内にキャビテーションが起こる可能性があり、内部の流体の再循環が制限される可能性があり、システム振動が生じる可能性があり、デミスターシステムが詰まる可能性があり、その結果として蒸発器留出物の汚染および蒸発器システムに対する重大な結果となる。生じた発泡は予想外のことであり、およそ40mg/Lの用量割合のMと類似の組成を有する消泡剤の添加によって改善された。蒸発器システム内部の発泡が弱まり、15v/v%の組成物A洗浄用組成物を用いた化学的な洗浄プロセスを続けることが可能であった。
【0197】
洗浄プロセス中、洗浄溶液を連続的に再循環するためにシステムに加えられるポンプエネルギーに基づいて洗浄溶液の温度は2~3℃/時間上昇する傾向があったことも注目される。洗浄プロセス中システムを冷却するために、追加の量のユーティリティー水および洗浄用組成物を25時間の期間にわたってシステムに加えた。温度の目立った低下は、有意な量の冷却するユーティリティー水+新鮮な洗浄用組成物を既存の洗浄溶液に加えた期間を表す。洗浄手順における後の改善はシステムを冷却するためにより多くのユーティリティー水を加える必要性を有意に低下させた。
【0198】
蒸発器洗浄プロセスの進行を、一次および二次汚水槽からの洗浄溶液のグラブ試料を分析することによってモニターした。ICP分光分析法を使用して、析出物溶解からのアルミニウム、カルシウム、マグネシウムおよびシリカの濃度を測定した。また、ICP分光分析法(クロムおよび鉄)を使用して、洗浄中蒸発器システムの内部表面上に有意な腐食が起こっていないかどうかも決定した。洗浄用組成物の濃度は簡単な滴定法により決定し、必要に応じて追加の処理を加えて洗浄剤のおよそ15%v/vの濃度を維持した。
【0199】
洗浄溶液の体積は洗浄プロセス中増大するので、ICP分光分析法の結果は、分析される化学種の濃度の希釈を生じるシステム体積の変化を補償する必要がある。洗浄溶液の試料からのシリカ濃度に対するICP分光分析法の読みの比較(未補正対システム体積補正済)を
図9に示す。
【0200】
蒸発器洗浄中のシステム体積の変化に対するICP分光分析法の読みの補正は、結果を適切に解釈する上で極めて重要であることは明らかである。未補正の分析結果は、洗浄が数時間後に完了したことを示唆する。未補正の分析結果を使用すると、洗浄プロセスが完了する前にその終了を決定する可能性がある。実際には、ケイ酸塩をベースとする析出物の除去は25時間の洗浄期間全体中に起こっていた。析出物からのシリカは最初の数時間の洗浄の間に殆どが放出されたが、よりしつこい析出物はおそらく5~25時間の洗浄中に除去されたようである。さらに、体積補正された結果の使用は、未補正のICP分光分析法結果と比べてシリカをベースとする析出物の約70%のより多くの溶解を示した。上記傾向に基づき、以下の説明ではシステム体積補正された結果を使用する。
【0201】
アルミニウム、カルシウム、およびマグネシウムに対するシステム体積補正されたICP分光分析法の結果(
図10~12参照)はシリカに対する分析の読みと同様な傾向を示した。
【0202】
洗浄プロセス中に得られた洗浄溶液グラブ試料は極めて暗色であったが、これはおそらく洗浄用組成物により析出物から除去された高いレベルの有機物を示している。時間と共に洗浄試料から沈殿する暗色の物質を集めてC/H/N分析機で測定した。分析結果は約700mg/Lの有機物が存在していたことを示し、これは洗浄用組成物が無機および有機系の析出物を除去することができるということを示している。
【0203】
無機物および有機析出物の溶解を定量化するための洗浄溶液試料の分析に加えて、同じ試料で蒸発器の内部表面上の一般腐食の化学的な証拠も測定した。洗浄される蒸発器の最大の内部表面積はAL-6XN(登録商標)であり、これは23.5~25.5%のニッケル、20~22%のクロム、6~7%のモリブデン含量、痕跡量元素および残部のおよそ41~51%の鉄含量からなるスーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金(Allegheny Technologies Inc.,2014)である。蒸発器熱交換器管束はAL-6XN合金から製造され、およそ12,000m
3の表面積を有していた。誘導結合プラズマ(ICP)分光分析法を使用して洗浄用組成物試料中のクロムおよび鉄濃度を測定した。AL-6XNの一般腐食速度を評価するために上記分析を蒸発器表面積、AL-6XN比重および洗浄溶液体積に関する情報と組み合わせた。
図12は、洗浄プロセス中のAL-6XNの評価された一般腐食速度および洗浄溶液の温度(一次および二次の読みの平均)を示す。
【0204】
評価された腐食速度(
図13参照)は、洗浄溶液の温度が上昇するにつれて増大しており、妥当な応答である。洗浄流体分析から評価されたAL-6XNに対する最大の一般腐食速度は1.9mpy(48μm/yr)であり、これは顧客により設定される50mpy(1270μm/yr)の可能な限界よりずっと低い。洗浄処理「A」の使用は、通例1~2日の処理であるから、洗浄毎に約0.005~0.01mpy(約0.13~0.26μm/yr)の無視できる増大がAL-6XNの1年全体の腐食速度に加わるであろう。
【0205】
洗浄用組成物の15v/v%溶液は蒸発器全体で析出物を除去することができ、高圧洗浄を用いた機械的洗浄による除去に抵抗する析出物を除去することができる。
【0206】
本発明の洗浄用組成物の最初の使用で非常に優れた結果が得られたが、検査中蒸発器の二次システムに幾らかの残存する析出物が観察された。しかしながら、化学的な洗浄後いかなる残存する析出物も機械的な洗浄により除去することがずっと容易であったことが注目された。洗浄用組成物の適用におけるさらなる改良および蒸発器システムの経時的な多数の洗浄はおそらく、化学的な洗浄後蒸発器の湿潤した部分におけるしつこい析出物の形成を抑制するであろう。洗浄用組成物の15v/v%溶液を使用した蒸発器の検査は、一次システムおよび二次システムの全体にわたって裸の金属表面を洗浄することが可能なことを示した。
【0207】
蒸発器析出物を除去するのに洗浄用組成物の15v/v%溶液を利用した後、蒸発器をオンラインに戻す前に、相当な体積使用された洗浄溶液(200m3までまたはそれ以上)を除去する必要があり得る。プラント蒸発器の初期洗浄中使用された洗浄溶液は苛性剤で中和した後、処分のために現場から離れたところまでトラック輸送により除去した。現場内のシステムを利用する使用済洗浄溶液の処分が好ましく、より安価である。洗浄用組成物の使用済15v/v%溶液が下流の処分水処理システムと十分に適合性であることを保証するために試験を行った。処分に最適なpHが過度の熱を発生することなく可能な限り急速に得られることを確実にするために、使用済洗浄溶液の苛性剤中和プロセスに関する試験も行った。洗浄用組成物の15v/v%溶液のプラント蒸発器への初期適用後、その後の全ての洗浄は、使用済の中和された洗浄用組成物の処分のための現場内の処分水処理システムを使用した。この結果、より容易な洗浄方法および廃棄処分コストの節約が得られた。
【0208】
実施例23:貫流式蒸気発生器(OTSG)からのピグ析出物の溶解
試験方法は、数グラム(約3g)のOTSGピグ析出物固体を秤量して4オンスのプラスチックジャーに入れることからなっていた。次に、100mLの蒸留水を添加した。試験酸は蒸留水中の15wt.%の組成物Aとして調製した。キャップをジャーに取り付け、ジャーを数時間激しく振盪して固体を完全に湿潤させた。必要ならば、キャップを緩めて、圧力の増大を抜いた。ジャーを75℃に加熱した一体型シェーカー付きの循環水浴中に保存した。定期的に、振盪の少なくとも1時間後に試料(3mL)を採取した。次に、試料(2g)を0.45μのフィルターに通してシリンジろ過し、乾燥し、パーセント溶解率を計算した。
【0209】
【0210】
本発明またはその好ましい実施形態の要素を紹介する際、冠詞「a」、「an」、「the」および「前記」は1つ以上のその要素があることを意味している。用語「含む」、「包含する」および「有する」は包括的であって、列挙された要素以外に追加の要素があり得ることを意味している。
【0211】
上記に鑑み、本発明の幾つかの目的が達成され、またその他の有利な結果が獲得されることが分かる。
【0212】
本発明の範囲から逸脱することなく上記組成物および方法に様々な変更をなすことができるので、上記説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は例示として解釈するべきであって限定する意味で解釈すべきではないことと了解されたい。