(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】箱桁橋の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20240508BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D21/00 A
E01D1/00 C
(21)【出願番号】P 2020189696
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正道
(72)【発明者】
【氏名】三保 雄司
(72)【発明者】
【氏名】竹之井 勇
(72)【発明者】
【氏名】清水 公将
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-218316(JP,A)
【文献】特開2010-059748(JP,A)
【文献】特開2017-179925(JP,A)
【文献】特開2010-37725(JP,A)
【文献】特開2009-108633(JP,A)
【文献】特開2003-328320(JP,A)
【文献】米国特許第3989218(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上床版、下床版、及び前記上床版の幅方向の中間部と前記下床版の幅方向の端部とを連結する少なくとも1対のウェブを備え、前記上床版が両側方へ張り出すように橋脚に一体に構築されるコンクリート造の箱桁の構築方法であって、
前記箱桁における前記橋脚上に位置する柱頭部の一部をなすハーフプレキャスト柱頭部を用意するステップと、
前記橋脚の上に前記ハーフプレキャスト柱頭部を配置するステップと、
前記ハーフプレキャスト柱頭部の内側にコンクリートを打設し、前記柱頭部における前記下床版、少なくとも1対の前記ウェブ及び前記ウェブ間の横桁を含む部分を構築するステップと、
前記ハーフプレキャスト柱頭部の左右の側面のそれぞれにブラケットを設け、前記ブラケットの上に前記上床版の左右の床版張出部のための型枠・支保工を組み立ててコンクリートを打設し、前記柱頭部の前記上床版を構築するステップと、
前記柱頭部から橋軸方向の両側へ張り出す前後の張出架設部をブロックごとに構築するための前後の架設作業車を、一体に連結した連結架設作業車として前記上床版の上に配置するステップ
であって、前記架設作業車のそれぞれは、前記橋軸方向に延在する複数のガーダーと、前記ガーダーのそれぞれに固定され、前記橋軸方向に走行可能な走行装置と、前記ガーダーのそれぞれに前記橋軸方向に移動可能に設けられ、前記上床版に支持されるジャッキとを有し、前記連結架設作業車は、前後の前記架設作業車が橋幅方向に対応する前記ガーダー同士を互いに連結されて構成された該ステップと、
前記連結架設作業車を用いて、前後の前記張出架設部を少なくとも1ブロック構築するステップと、
少なくとも1ブロックの前記張出架設部の構築後、前記連結架設作業車を前後の前記架設作業車に分割するステップと、
前後の前記架設作業車のそれぞれ
について、前記ジャッキを前記ガーダーにおける張り出し側へ移動させた後、対応する側の前記張出架設部の最新の構築済みブロックの上へ移動させるステップと、
前後の前記架設作業車を用いて、最新の前記構築済みブロックに隣接する前後の次のブロックについて前記張出架設部を構築するステップと
を備えることを特徴とする構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱桁橋の構築方法に関し、詳細には、コンクリート造の橋脚と、上床版、下床版、及び上床版の幅方向の中間部と下床版の幅方向の端部とを連結する少なくとも1対のウェブを備え、上床版が橋脚から両側方へ張り出すように橋脚上に一体に構築されるコンクリート造の箱桁とを備える箱桁橋の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート箱桁橋の架設方法として、橋脚上に一体に構築された箱桁の一部をなす柱頭部から橋軸方向の両側へ所定長さの施工ブロックごとに箱桁を張り出して構築してゆく、いわゆる片持張出架設工法がある。片持張出架設工法では、移動作業車の配置スペースを確保するために、柱頭部が、橋脚上に構築される大断面部(横桁部)と、横桁部から橋軸方向の両側に張り出す1対の張出部(箱桁部)とを備えるように構築される。
【0003】
横桁部と1対の張出部(箱桁部)とを備える柱頭部を構築するためには、橋脚の橋軸方向の両面に大がかりなブラケットを設ける必要がある。このブラケットの組み立てを不要にするために、小さな柱頭部から橋体(橋桁)の張出架設を可能にした柱頭部の構築方法が提案されている(特許文献1)。この構築方法では、柱頭部上に構築される右向きの架設作業車の主構は規定幅に設定され、左向きの架設作業車の主構は、規定よりも狭い幅に設定され、右向きの架設作業車の主構の内部に入り組ませて配置される。橋体の張出架設に合わせて両作業車は前進し、左向きの架設作業車の主構が右向きの架設作業車の主構から抜け出た後、左向きの架設作業車の主構は規定幅に変更される。
【0004】
特許文献1に記載の構築方法においては、架設作業車の配置後に、架設作業車の主構の幅を変更する組み替え作業が必要になる。これを不要にし得る橋桁架設方法を本出願人は提案している(特許文献2)。この架設方法では、柱頭部の上に橋軸方向の両側へ張り出す支持構造体が設けられ、この支持構造体を用いて橋桁の張出架設部を形成した後、支持構造体が中央部で分割されて2つの移動支保工とされる。この支持構造体は、分割前においては2つの移動支保工が上部と下部とで互いに連結した構成とされ、各移動支保工の下部前方部は柱頭部よりも前方に張り出した位置でブラケットにより支持される。
【0005】
一方、柱頭部が1対の張出部(箱桁部)を備えないとしても、橋脚の最上部である柱頭に横桁部を構築するためにはある程度長い工期が必要になる。それを解決し得る柱頭部の構築方法として、柱頭部の外周面の少なくとも一部をなすハーフプレキャスト柱頭部を用い、ハーフプレキャスト柱頭部の内側にコンクリートを打設して横桁部の少なくとも下床版及びウェブを含む部分を構築する方法を本出願人は提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-218316号公報
【文献】特開2010-059748号公報
【文献】特開2017-179925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の柱頭部の構築方法では、横桁部から橋軸方向に張り出す1対の張出部(箱桁部)や横桁部において橋軸直角方向に張り出す上床版の左右の床版張出部を構築するためには、大がかりなブラケットや支保工を設ける必要がある。ここで、特許文献1や特許文献2に記載の構築方法を特許文献3に記載の構築方法に適用し、1対の張出部(箱桁部)を構築せずに張出架設作業を開始する構成にすることが考えられる。しかしながらその場合には、架設作業車の組み替え作業や架設作業車を柱頭部上に支持するためのブラケットが必要になる。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑み、工期を短縮できる上、架設作業車の組み替え作業や架設作業車を支持するためのブラケットを必要としない箱桁橋の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、上床版(5)、下床版(6)、及び前記上床版の幅方向の中間部と前記下床版の幅方向の端部とを連結する少なくとも1対のウェブ(7)を備え、前記上床版が両側方へ張り出すように橋脚(2)に一体に構築されるコンクリート造の箱桁(3)の構築方法であって、前記箱桁における前記橋脚上に位置する柱頭部(8)の一部をなすハーフプレキャスト柱頭部(17)を用意するステップと、前記橋脚の上に前記ハーフプレキャスト柱頭部を配置するステップ(
図2(A))と、前記ハーフプレキャスト柱頭部の内側にコンクリートを打設し、前記柱頭部における前記下床版、少なくとも1対の前記ウェブ及び前記ウェブ間の横桁(11)を含む部分を構築するステップ(
図2(E))と、前記ハーフプレキャスト柱頭部の左右の側面のそれぞれにブラケット(20)を設け、前記ブラケットの上に前記上床版の左右の床版張出部(10)のための型枠・支保工を組み立ててコンクリートを打設し、前記柱頭部の前記上床版を構築するステップ(
図2(F))と、前記柱頭部から橋軸方向の両側へ張り出す前後の張出架設部(9)をブロックごとに構築するための前後の架設作業車(40)を、一体に連結した連結架設作業車(30)として前記上床版の上に配置するステップと、前記連結架設作業車を用いて、前後の前記張出架設部を少なくとも1ブロック構築するステップと、少なくとも1ブロックの前記張出架設部の構築後、前記連結架設作業車を前後の前記架設作業車に分割するステップと、前後の前記架設作業車のそれぞれを、対応する側の前記張出架設部の最新の構築済みブロックの上へ移動させるステップと、前後の前記架設作業車を用いて、最新の前記構築済みブロックに隣接する前後の次のブロックについて前記張出架設部を構築するステップとを備える。
【0010】
この構成によれば、ハーフプレキャスト柱頭部を用いて柱頭部を構築するため、柱頭部の構築に要する工期を短縮することができる。また、柱頭部における上床版の床版張出部を構築するために、ハーフプレキャスト柱頭部の側面に設けるブラケットは、小さくてよく、容易に取り付け・取り外しをすることができる。更に、連結架設作業車を用いて張出架設部の前後のブロックを構築し、その後、連結架設作業車を前後の架設作業車に分割して次のブロックを順次構築できるため、架設作業車の組み替え作業や架設作業車を支持するためのブラケットが必要ない。
【0011】
好ましくは、前記架設作業車(40)は、前記橋軸方向に延在する複数のガーダー(41)をそれぞれ有し、前記連結架設作業車(30)は、前後の前記架設作業車が橋幅方向に対応する前記ガーダー同士を互いに連結されて構成されているとよい。
【0012】
この構成によれば、前後の架設作業車を高い曲げ剛性をもって互いに連結することができ、張出架設部の前後のブロックを構築可能な態様にて、連結架設作業車を上床版の上に容易に配置することができる。
【0013】
好ましくは、前記架設作業車(40)は、前記ガーダー(41)のそれぞれに固定され、前記橋軸方向に走行可能な走行装置(34)と、前記ガーダーのそれぞれに前記橋軸方向に移動可能に設けられ、前記上床版(5)に支持されるジャッキ(32)とを更に有し、前記連結架設作業車(30)を用いて前後の前記張出架設部(9)を少なくとも1ブロック構築した後、前後の前記架設作業車を最新の前記構築済みブロックの上へ移動させるまでに、前記ジャッキを前記ガーダーにおける張り出し側へ移動させるとよい。
【0014】
この構成によれば、張出架設部の施工ブロックの寸法に合わせて適切な位置にジャッキを配置することができる。また、連結架設作業車の前後のジャッキの間隔を柱頭部の長さ(橋軸方向寸法)に合わせて可能な限り大きくすることで、連結架設作業車の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、工期を短縮できる上、架設作業車の組み替え作業や架設作業車を支持するためのブラケットを必要としない箱桁橋の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1に示す箱桁橋の柱頭部周辺の構築手順の説明図
【
図3】
図2(E)に対応する柱頭部周辺の(A)正面図、(B)側面図
【
図4】
図2(F)に対応する柱頭部周辺の(A)正面図、(B)側面図
【
図5】
図2(F)の後に柱頭部上に設けられる連結架設作業車の側面図
【
図10】箱桁の張出架設部の変形例に係る構築手順の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係る構築方法を適用して構築された箱桁橋1の側面図である。
図1に示されるように、箱桁橋1は、橋軸方向に離間するように配置された3つ以上の橋台や橋脚2等の支持台間の多径間に箱桁3が連続するように設けられた連続桁形式の多径間連続橋である。図示例では、箱桁3は左側の橋脚2に剛結合され、右側の橋脚2にも剛結合されている。なお、全ての橋脚2に箱桁3が剛結合されている必要はない。
【0019】
橋脚2は、地盤G中に構築されて基礎をなすフーチング4の上に鉄筋コンクリートにより構築され、概ね一定の断面形状を有している。本実施形態の橋脚2は、橋軸方向長さが幅(橋軸直角方向長さ)よりも若干小さな矩形の外輪郭を有している。本実施形態では、橋脚2は中実に形成される。他の実施形態では、橋脚2が中空とされ、頭部(脚頭部)が中実に形成されてもよい。箱桁3は、上床版5と下床版6とを複数のウェブ7により連結したコンクリートからなる橋桁である。
【0020】
ここで、本明細書において、「コンクリートからなる」とは、コンクリートのみからなることを意味するのではなく、構造体としてコンクリートを含むことを意味する。したがって、箱桁3は、鉄筋により補強された鉄筋コンクリート造や、PC鋼線やPCケーブルにより補強されたプレストレストコンクリート構造、鋼繊維や炭素繊維、アラミド繊維、アラミド筋等により補強された構造であってよい。箱桁3は、橋脚2の上に位置する柱頭部8と、柱頭部8から橋軸方向の両側に片持張出架設工法により構築される張出架設部9とにより構成される。
【0021】
図2は、
図1に示す箱桁橋1の柱頭部周辺の構築手順の説明図であり、
図3は、
図2(E)に対応する柱頭部8周辺の(A)正面図、(B)側面図である。
図2(G)及び
図3に示されるように、箱桁3は、橋軸直角方向に離間する2つのウェブ7を有する単一箱桁とされている。2つのウェブ7は、それぞれ鉛直方向に延在しており、下端が下床版6の橋軸直角方向の端部に、上端が上床版5の橋軸直角方向の中間部に結合している。下床版6及び1対のウェブ7の幅は橋脚2の幅よりも小さく、上床版5の幅は橋脚2の幅よりも大きくされている。他の実施形態では、下床版6及び1対のウェブ7の幅は橋脚2の幅と同一であってもよい。上床版5は左右のウェブ7から側方へ張り出す床版張出部10を有しており、この左右の床版張出部10は橋脚2から更に両側方へ張り出している。
【0022】
柱頭部8は、1対のウェブ7間に構築されて箱桁3の中空部を閉塞する横桁11を有するように構成され、上床版5の下方においては、橋脚2の外輪郭を上方へ連続させるように橋脚2と同一の外輪郭を有している。言い換えれば、柱頭部8は、張出架設部9と同様に上床版5と下床版6と1対のウェブ7とを有する他、1対のウェブ7間に構築される横桁11、及び、ウェブ7から側方へ突出する左右の突出部12を有している。突出部12は、ウェブ7よりも外側に配置された橋脚2の主鉄筋を定着させる機能と、橋脚2の輪郭形状を箱桁3に一体化させる意匠的な機能とを果たす。
【0023】
横桁11には、橋脚2の橋軸方向の一方から他方に人が通行できるようにするために人通孔13が設けられる。また、横桁11には、箱桁3の内部空間に設けられる外ケーブル方式のPCケーブルを定着させるための定着部14が設けられる。定着部14は、横桁11に形成されたケーブル挿通孔と、ケーブル挿通孔に挿入されたPCケーブルの端部を横桁11に定着させるための定着具とにより構成される。
【0024】
図2(F)及び
図3に示すように、橋脚2は、ハーフプレキャスト部材及びプレキャストパネルと、現場打ちコンクリートとを用いて構築される。具体的には、橋脚2は、左右1対のハーフプレキャスト橋脚15と、前後1対のプレキャスト橋脚パネル16とにより閉断面形状に形成される。プレキャスト橋脚パネル16は、ハーフプレキャスト橋脚15の高さよりも大きな高さを有していてよい。
【0025】
柱頭部8も、ハーフプレキャスト部材及びプレキャストパネルと、現場打ちコンクリートとを用いて構築される。具体的には、柱頭部8は、左右1対のハーフプレキャスト柱頭部17と、前後1対のプレキャスト柱頭部パネル18とにより閉断面形状に形成される。プレキャスト柱頭部パネル18は、ハーフプレキャスト柱頭部17の高さよりも大きな高さを有していてよく、人通孔13及び定着部14に対応する開口又は切欠を有している。
【0026】
次に、箱桁橋1の構築手順の概略について説明する。箱桁橋1の構築に先立ち、橋脚2の一部をなすハーフプレキャスト橋脚15及びプレキャスト橋脚パネル16がプレキャスト工場にて制作される。また、柱頭部8の一部をなすハーフプレキャスト柱頭部17及びプレキャスト柱頭部パネル18がプレキャスト工場にて制作される。これらのプレキャスト部材は、工場制作により予め用意され、工事の進捗に合わせて適宜現場へ搬入される。
【0027】
フーチング4(
図1)が構築された後、ハーフプレキャスト橋脚15及びプレキャスト橋脚パネル16は揚重設備を用いてフーチング4の上の所定の位置に配置される。フーチング4には上面から橋脚主筋が突出するように埋設されている。ハーフプレキャスト橋脚15及びプレキャスト橋脚パネル16は、橋脚主筋がそれらの内部に挿入される位置に配置される。橋脚主筋の長さに応じ、複数層のハーフプレキャスト橋脚15が配置される。プレキャスト橋脚パネル16によってハーフプレキャスト橋脚15間が閉鎖された後、その内側にコンクリートが打設される。その後、必要に応じ、鉄筋継手を用いて橋脚主筋が上方へ延長される。このような作業の繰り返しにより、橋脚2が構築される。橋脚2は、埋設された橋脚主筋が上面から突出するように構築される。
【0028】
次に、
図2(A)に示されるように、揚重設備を用いてハーフプレキャスト柱頭部17及びプレキャスト柱頭部パネル18が橋脚2の上の所定の位置に配置される。ハーフプレキャスト柱頭部17及びプレキャスト柱頭部パネル18は、橋脚2の上面から突出する橋脚主筋がそれらの内部に挿入されるように配置される。ハーフプレキャスト柱頭部17は、上床版5よりもわずかに低い高さまで、複数層配置される。また、下床版6の鉄筋(図示省略)が組み立てられ、その上方に人通孔13を形成するためのプレキャストトンネル又はトンネル型枠が配置される。更に、1対のウェブ7の鉄筋が組み立てられる。ウェブ7の鉄筋は、橋軸方向に延在する軸方向鉄筋と、鉛直方向に延在するスターラップ19とを含む。軸方向鉄筋は、ハーフプレキャスト柱頭部17を貫通するようにハーフプレキャスト柱頭部17に一体に設けられるとよい。スターラップ19は、ハーフプレキャスト柱頭部17を複数層配置した後に組み立てられるとよい。
【0029】
次に、
図2(B)に示されるように、横桁11の鉄筋が組み立てられる。続いて、
図2(C)に示されるように、プレキャスト柱頭部パネル18が2つのハーフプレキャスト柱頭部17の間に配置され、ハーフプレキャスト柱頭部17が閉断面形状とされる。プレキャスト柱頭部パネル18の配置後、
図2(D)に示されるように、1対のプレキャスト柱頭部パネル18の間に定着部14として、外ケーブル挿通孔を画定するシース(図示省略)が架設される。その後、
図2(E)に示されるように、ハーフプレキャスト柱頭部17の内側にコンクリートを打設し、柱頭部8における下床版6と1対のウェブ7とウェブ7間の横桁11とを含む部分が構築される。コンクリートの打設は、柱頭部8の高さに応じて複数回に分けられてもよい。
【0030】
ここまでの作業は、図示しない橋脚施工用の外周足場を上方へ延長しながら行われる。このように、ハーフプレキャスト柱頭部17を用いて柱頭部8が構築されるため、柱頭部8の構築に要する工期の短縮が可能である。
【0031】
その後、
図2(F)に示されるように、ハーフプレキャスト柱頭部17の左右の側面のそれぞれにブラケット20が設けられる。ブラケット20の上には上床版5の左右の床版張出部10のための型枠・支保工が組み立てられ、コンクリートが打設される。これにより、柱頭部8の上床版5が構築される。上床版5の構築後、ブラケット20は取り外される。
【0032】
図4は、
図2(F)に対応する柱頭部8周辺の(A)正面図、(B)側面図である。
図4に示されるように、ブラケット20は、床版張出部10のハーフプレキャスト柱頭部17の側面からの突出寸法に応じた張出寸法を有しており、大がかりな従来ブラケットに比べて小さなものとされている。ハーフプレキャスト柱頭部17の側面の所定の位置には、ブラケット20を取り付けるための取付部材21が埋め込まれている。したがって、ブラケット20は、ハーフプレキャスト柱頭部17の側面に対して容易に取り付け・取り外しをすることができる。
【0033】
その後、
図2(G)に示されるように、柱頭部8から橋軸方向の両側へ張り出す前後の張出架設部9がブロックごとに構築される。
図2(G)では、従来の片持張出架設工法において移動作業車の配置スペースを確保するために横桁11と一緒に構築される張出部(箱桁部)が、張出架設工法によって第0ブロックの張出架設部9として構築されている。第0ブロックの張出架設部9は連結架設作業車30(
図5参照)を用いて構築される。連結架設作業車30は、柱頭部8から橋軸方向の両側へ張り出す前後の張出架設部9をブロックごとに構築するために上床版5の上に配置される前後の架設作業車40(
図10参照)を一体に連結して構成される。
【0034】
図5は、
図2(F)の後に柱頭部8上に設けられる連結架設作業車30の側面図であり、
図6は
図5中のVI-VI断面図、
図7は
図5中のVII-VII断面図、
図8は
図5中のVIII-VIII断面図である。
図5~
図8に示されるように、連結架設作業車30は、橋軸方向に延在する複数(図示例では2つ)のガーダー41(
図5、
図9)をそれぞれ有する前後の架設作業車40(
図9)がガーダー41同士を互いに連結されて構成されている。互いに連結された橋幅方向(橋軸に直交する水平な方向)に対応する2本のガーダー41によって連結ガーダー31が構成される。
【0035】
連結架設作業車30は、張出架設工法によって張出架設部9をブロックごとに構築する際に用いる前後の箱桁架設部50を支持する。各箱桁架設部50は、下床版6を構築するための下スラブ支保工51と、左右のウェブ7間の上床版5の中間部を構築するための中スラブ支保工52と、ウェブ7から張り出す上床版5の床版張出部10を構築するための左右の張出スラブ支保工53とを含んでいる。また箱桁架設部50は、下スラブ支保工51の下方に水平に設けられる下部足場54を含んでいる。
【0036】
図5に示されるように、2本の連結ガーダー31は、ウェブ7の上方に配置されたガーダー41の近位端同士が分離可能に連結されることによって橋軸方向に直線状に延び、柱頭部8から前後方向へ延出している。
図6に併せて示されるように、連結ガーダー31は、柱頭部8の前端及び後端に配置された2つのジャッキ32によって上床版5上に支持されている。各ジャッキ32は連結ガーダー31に対して橋軸方向に移動可能に設けられている。上床版5上の各ジャッキ32の両側方には橋軸方向に延在する1対のレール33が配置されている。レール33は、柱頭部8から前後方向へ延出し且つ連結ガーダー31よりも短い長さとされている。
【0037】
下スラブ支保工51の後端部は、柱頭部8の橋軸方向を向く外面に取り付けられた左右の下スラブ受梁用ブラケット55により支持されている。下スラブ受梁用ブラケット55は、ハーフプレキャスト柱頭部17に埋設された取付金具によって柱頭部8に着脱可能に取り付けられる。中スラブ支保工52の後端部は、柱頭部8の橋軸方向を向く外面に取り付けられた左右の中スラブ受梁用ブラケット56により支持されている。中スラブ受梁用ブラケット56は、ハーフプレキャスト柱頭部17に埋設された取付金具によって柱頭部8に着脱可能に取り付けられる。張出スラブ支保工53の後端部は、構築済みの床版張出部10に橋軸方向にオーバーラップしており、床版張出部10を貫通するように設けられた張出スラブ支持部材57により支持されている。
【0038】
図5及び
図7に示すように、連結ガーダー31の2つのジャッキ32の近傍且つ柱頭部8から前後にオフセットした位置には、レール33上の橋軸方向に走行可能な走行装置34が設けられている。走行装置34は、レール33が直下に位置する上床版5によって支持されたときに、レール33を介してガーダー41の荷重を上床版5に伝達する荷重伝達手段である。したがって、レール33及び走行装置34は第0ブロックの張出架設部9の構築後に設けられてもよい。
【0039】
連結ガーダー31の走行装置34が設けられた位置の上方には、橋軸直角方向に延在する後部横梁35が設けられている。後部横梁35は、箱桁3の幅(上床版5の幅)よりも大きな長さを有し、左右のガーダー41を連結している。後部横梁35の左右の端部はそれぞれ上床版5よりも外方に位置し、後部吊り部材36を支持している。両後部吊り部材36は下スラブ支保工51の後部及び下部足場54の後部を吊り支持している。
【0040】
図5及び
図8に示すように、連結ガーダー31の橋軸方向構の先端上方には、橋軸直角方向に延在する前部横梁37が設けられている。前部横梁37は、箱桁3の幅(上床版5の幅)よりも大きな長さを有し、左右のガーダー41を連結している。前部横梁37の左右の端部はそれぞれ上床版5よりも外方に位置し、前部吊り部材38を支持している。両前部吊り部材38は下スラブ支保工51の前部及び下部足場54の前部を吊り支持している。
【0041】
このように構成された連結架設作業車30を用いて、型枠・支保工及び鉄筋を組み立て、コンクリートを打設することにより、第0ブロックの張出架設部9が構築される。
【0042】
第0ブロックの張出架設部9の構築後、連結架設作業車30は前後の架設作業車40に分割される。
図9は、
図5に示す連結架設作業車30の分割後の側面図である。
図9に示されるように、前後の架設作業車40は前後対称(
図5紙面において左右対称)に構成されている。
【0043】
前後の架設作業車40のそれぞれは、対応する側の張出架設部9の最新の構築済みブロック、すなわち第0ブロックの張出架設部9の上へ移動される。架設作業車40の移動に先立ち、ガーダー41の後端には、上床版5に係合するワーゲンアンカー42と、レール33上を橋軸方向に移動可能な後車輪を備えたアンカージャッキ43とが設けられる。また、ジャッキ32がガーダー41における張り出し側へ移動される。具体的には、ジャッキ32は橋軸方向において走行装置34に整合する位置まで張り出し側へ移動される。レール33は適宜延長される。
【0044】
架設作業車40は、このように修正を加えられ、ジャッキ32が構築済みの張出架設部9の先端に位置するように配置される。そして、前後の架設作業車40を用いて、最新の構築済みブロックに隣接する前後の次のブロックについて張出架設部9が構築される。ガーダー41の後端にワーゲンアンカー42が設けられているため、架設作業車40が前方に転倒することはない。架設作業車40の移動及び次のブロックの張出架設部9の構築が繰り返されることにより、箱桁3の張出架設部9は延長され、対向する側から延長されてくる張出架設部9と閉合される。これにより、箱桁3の構築が完了する。箱桁3の構築後、架設作業車40は解体され、撤去される。
【0045】
このように、連結架設作業車30を用いて張出架設部9の前後のブロックが構築され、その後、連結架設作業車30を前後の架設作業車40に分割して次のブロックが順次構築される。そのため、架設作業車40の組み替え作業や架設作業車40を支持するための別ブラケットを設ける必要がない。
【0046】
また、上記のように連結架設作業車30は、前後の架設作業車40が橋幅方向に対応するガーダー41同士を互いに連結されて構成されている。そのため、前後の架設作業車40が高い曲げ剛性をもって互いに連結され、張出架設部9の前後のブロックを構築可能な態様にて、容易に連結架設作業車30を上床版5の上に配置することができる。
【0047】
更に、第0ブロックの張出架設部9の構築後、橋軸方向に移動可能に設けられたジャッキ32がガーダー41における張り出し側へ移動される。そのため、張出架設部9の施工ブロックの寸法に合わせて適切な位置にジャッキ32を配置することができる。また、連結架設作業車30の前後のジャッキ32の間隔を柱頭部8の長さ(橋軸方向寸法)に合わせて可能な限り大きくすることが可能であり、これにより、連結架設作業車30の安定性が向上する。
【0048】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0049】
例えば、上記実施形態では、柱頭部8が中実の構造とされているが、下部の少なくとも一部に中空部や切欠部が形成されてもよい。また、箱桁3は、連続する複数の箱形断面部を形成するように3つ以上のウェブ7を有する多重箱桁や、離間した複数の箱形断面部を形成するように4つ以上のウェブ7及び複数の下床版6を有する多主桁箱桁であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、下床版6及び1対のウェブ7の幅が橋脚2の幅よりも狭いが、橋脚2の幅と同じか同等であってもよい。すなわち、柱頭部8が左右の突出部12を有していなくてよい。この場合、1対のウェブ7(箱桁3が3つ以上のウェブ7を有する場合には左右両端のウェブ7)が、橋軸方向の両側の張出架設部9のウェブ7を連続させる機能に加え、橋軸方向に配列された橋脚主筋を定着させる機能を果たす。
【0051】
上記実施形態では、ブロックごとに施工される張出架設部9が、型枠・支保工及び鉄筋を組み立て、コンクリートを打設することによって構築される。一方、
図10に示されるように、下床版6及びウェブ7にプレキャスト部材が用いられてもよい。
図10(A)に示されるように、この例では1ブロックの張出架設部9に、下床版6を構成すべく橋軸方向に並べられる2つのプレキャスト下床版60と、各ウェブ7を構成すべく橋軸方向に並べられる2つのプレキャストウェブ61とが用いられている。互いに隣接するプレキャスト部材同士は、鉄筋ループ継手や機械式鉄筋継手などの適宜な連結手段を介して、
図10(B)に示されるようにコンクリートの打設によって互いに連結される。このコンクリートは、上床版5を構築する際に同時に打設されてよい。
【0052】
或いは、上床版5にもプレキャスト部材が用いられてもよい。この場合、上床版5のプレキャスト部材同士も、鉄筋ループ継手や機械式鉄筋継手などの適宜な連結手段を介して、コンクリートの打設によって互いに連結される。このコンクリートは、下床版6及びウェブ7のプレキャスト部材の連結時に同時に打設されてもよく、その後に打設されてもよい。
【0053】
この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。一方、上記実施形態に示した各構成要素や手順は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 箱桁橋
2 橋脚
3 箱桁
5 上床版
6 下床版
7 ウェブ
8 柱頭部
9 張出架設部
10 床版張出部
11 横桁
17 ハーフプレキャスト柱頭部
20 ブラケット
40 架設作業車
41 ガーダー
32 ジャッキ
34 走行装置
30 連結架設作業車
31 連結ガーダー