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▶ ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ガラスセラミック物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/02 20060101AFI20240508BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240508BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C03C17/02 Z
H05B6/12 305
F24C15/10 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020542660
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 FR2019050362
(87)【国際公開番号】W WO2019158882
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】1851396
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ルー
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ フェラ
(72)【発明者】
【氏名】アメリー ボンタン
(72)【発明者】
【氏名】ティボー ゲドン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191567(JP,U)
【文献】特表2016-539892(JP,A)
【文献】特表2013-516382(JP,A)
【文献】米国特許第05326728(US,A)
【文献】特開2012-206871(JP,A)
【文献】特表2013-531776(JP,A)
【文献】特開平02-157173(JP,A)
【文献】特開2015-176753(JP,A)
【文献】特表2016-516650(JP,A)
【文献】特表2005-522394(JP,A)
【文献】特開2016-095050(JP,A)
【文献】特開2005-049050(JP,A)
【文献】特表2016-511212(JP,A)
【文献】特表2002-522348(JP,A)
【文献】米国特許第05633090(US,A)
【文献】特開2003-089546(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02732960(FR,A1)
【文献】特開2000-345096(JP,A)
【文献】特表2002-519727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C
H05B
F24C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの、ガラスセラミックで作られた基材を含み、前記基材が、少なくとも一つのエナメルコーティングで部分的に被覆された少なくとも一つの領域を有し、それによって、
1)前記エナメルが、60°で40未満の光沢を有し、
2)前記コーティングで部分的に被覆された前記領域における前記エナメルの被覆率が、40~80%であり、
3)前記エナメルが、金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された、雲母及び/又は酸化アルミニウム及び/又はシリカ粒子の形態の顔料を含み、
4)前記エナメルが、0.4μm以上の粗さRaを有し、
5)前記エナメルが、4μm超の粗さRtを有する、
ガラスセラミック物品。
【請求項2】
前記基材が、光源D65の下で40%未満の光透過率LT、及び波長625nmで0.5~3%の光透過率を本質的に有するガラスセラミックに基づく、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【請求項3】
前記エナメルコーティングで被覆された領域が、少なくとも5cm×5cmである、請求項1又は2に記載のガラスセラミック物品。
【請求項4】
前記エナメルコーティングのプロファイル又はパターンが、ランダムで等方性である、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項5】
粗さRaが0.4~0.7μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項6】
粗さRtが4~8μmである、請求項5に記載のガラスセラミック物品。
【請求項7】
前記エナメルが、25重量%以下の割合のBを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項8】
前記コーティングの厚さが1.5μm~3.5μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項9】
前記エナメルコーティングが、疎水性の特徴を欠いており、かつ疎油性の特徴を欠いている、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項10】
前記領域が、前処理なしに前記エナメルコーティングで被覆される、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項11】
前記物品又は前記基材が、クックトップ又はワークトップ又は中央アイランド又はコンソールである、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項12】
少なくとも一つのエナメルコーティングを、
ガラス基材の少なくとも一部に塗布して、その後、このように被覆されたガラス基材のセラミック化を実行するか、又は
ガラスセラミック基材の少なくとも一部に塗布して、その後、エナメルを焼成し、
それによって、
1)前記エナメルが、60°で40未満の光沢を有し、
2)前記コーティングで部分的に被覆された前記領域における前記エナメルの被覆率が、40~80%であり、
3)前記エナメルが、金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された、雲母及び/又は酸化アルミニウム及び/又はシリカ粒子の形態の顔料を含み、
4)前記エナメルが、0.4μm以上の粗さRaを有し、
5)前記エナメルが、4μm超の粗さRtを有する、
請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックの分野に関する。より正確には、本発明は、ガラスセラミック、特に家具表面及び/又は調理表面として機能するように意図されたガラスセラミックプレートでできた物品又は製品に関する。ガラスセラミック物品又はガラスセラミックで作られた物品という用語は、ガラスセラミック材料製の基材(プレート等)をベースとする物品を意味し、上記の基材は、必要に応じて、付属品又は追加の装飾又は最終用途に必要な機能的な要素を備えることができ、物品は、単独な基材及び追加の器具を備えたもの(例えば、コントロールパネル、加熱要素等を備えたクックトップ)の両方を指すことができる。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミックは、当初、前駆体ガラス又はグリーンガラスと呼ばれるガラスであり、その特有の化学組成は、セラミック化として知られている、適切な熱処理により、制御された結晶化を生じされることができる。この部分的に結晶化した特有の構造は、ガラスセラミックに独特な性質を付与する。
【0003】
現在、ガラスセラミックプレートには様々なタイプがあり、それぞれのバリエーションは広範な研究及び多くの試験の結果であり、所望の性質に悪影響を与えるリスクなしに、これらのプレート及び/又はその製造方法を変更することは非常に困難であるため:特に、クックトップとして用いることができるようにするためには、ガラスセラミックプレートは、通常、下部の加熱要素の少なくともいくつかを使用していないときに隠すのに十分に低く、かつ場合(放射加熱、誘導加熱等)によって、使用者が、安全のために、視覚的に正常に動作している加熱要素を見つけることができるのに十分に高い可視領域の波長における透過を有さなければならない;特に放射バーナーを有するプレートの場合には、ガラスセラミックプレートは、赤外領域の波長における高い透過も有なければならない。ガラスセラミックプレートはまた、その使用分野で要求される十分な機械的強度も有なければならない。特に、ガラスセラミックプレートは、家電機器の分野におけるクックトップとして、又は家具の表面として使用するために、圧力、衝撃(用具の支持及び落下等)等に対する優れた耐性を有さなければならない。
【0004】
最も一般的なガラスセラミッククックトップは、暗色、特に黒色又は茶色又はオレンジブラウン色であるが、より明るい外観(特に、仏国特許出願公開第FR2766816号明細書に記載されているように、例えば少なくとも50%のヘイズを有する白色)のプレートもあり、及び一般的に特殊な色効果のための不透明コーティング又はフィルターを有する透明プレートもある。
【0005】
従来、ガラスセラミックプレートは、クックトップとして使用されており、又は例えば暖炉インサートを形成するための加熱要素と関連づけることもできる。最近、それらの用途は、日常生活のその他の領域に拡大しており:ガラスセラミックプレートは、例えばワークトップ、中央アイランド、コンソール等を形成するための家具表面として使用することができ、それらの新しい応用で占める表面積は、従来よりも大きくなっている。それらの用途に応じて、ボタン、触覚領域、スイッチ又はその他のコントロールを備えることができ、それらの表面は、すべての場合(単純な家具の表面の場合でも)、それらの使用に関連した複数の接触対象であり、一般的に、接触した場所において見苦しい指紋が現れることをもたらし、特にプレートが暗色で光沢がある場合には、必要に応じて繰り返し洗浄を行うことになる。このようなマークや汚れは、ガラスセラミック製品の他の可能な構成要素(発熱要素、光源、ディスプレイ等)にも干渉する可能性がある。
【0006】
製品表面の指紋を避けるために、他の分野(例えばガラス窓スクリーンの分野)では、疎水性コーティング(水をはじく)及び疎油性コーティング(油をはじく)を塗布して、指と接触時に堆積する液体(水、皮脂)の量を制限する。しかしながら、保護のために表面全体に塗布しなければならないこのようなコーティングは、耐熱性がなく、クックトップタイプの応用に問題をもたらす。
【0007】
製品のガラス表面にテクスチャーを付けて、指紋の視認性を制限することも知られている。しかしながら、一般的に使用されるテクスチャーは壊れやすく、機械的ストレス(クリーニング、摩耗)に対する耐性が不十分である。
【0008】
ガラスセラミックの分野では、既存のテクスチャーやコーティングは、一般的に指紋の問題を体系的に修復するのには適していない。最も頻繁に使用されるコーティングは、特に、高温に耐えるように選択されたコーティング、例えば、装飾的なパターンを形成するために又は加熱領域を示すために局所的に使用されるエナメル、又は不透明材としてかなり平らに使用される塗料である。しかしながら、これらの従来のコーティングは、一般的に、被覆された基材の取り扱い及び使用による指紋を防げず、エナメルは、ガラスセラミックプレートの機械的抵抗性を局所に低減させ、剥がれ落ちることもあり、また塗料は、それらの抵抗性、特に耐熱性が低いため、クックトップの全ての加熱モードに適用していない。基材の表面の大部分に平坦に堆積された特に薄い金属層に基づくその他のコーティングを使用することも知られているが、そのような層は時々、逆に、指紋の問題に寄与する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、それらの表面上の指紋の視認性を制限する、改良されたガラスセラミック製品、特にクックトップのように一つ以上の加熱要素と共に使用するための新しいガラスセラミックプレート、又は家具の表面として機能することを意図した新しいガラスセラミックプレートの開発を模索している。これらのプレートは、指紋防止の特性があり、これらの用途のために求められる他の特性に悪影響を与えることなく、特にメンテンナンス及びクリーニングのしやすさに悪影響を与えることなく、またそれらの抵抗性、特にそれらの機械的、スクラッチ、及び摩耗に対する抵抗性、並びに必要な場合には適切な耐熱性に悪影響を与えることなく、及びそれらの耐用年数に対しても致命的ではなく、また必要に応じて、追加の装飾又は機能の追加を可能にするシンプルかつ可能な場合には柔軟なソリューションを提案することを確実にする。
【0010】
この目的は、本発明によって開発されたガラスセラミック製品によって達成され、ここでは、特定のエナメルコーティングを適用することによって、表面の指紋の視認性が低減される。このコーティング及びこのエナメルは、所望の防指紋効果を得るために、正確な基準にしたがって選択される。実際、本発明者らは、エナメル及び堆積したコーティングが以下に定義された制限内にある限り、エナメルの組成に一定の柔軟性を維持しながら(例えば、異なる色を得るために)、エナメルを選択し、以下に挙げた基準にしたがってそれを適用することによって、異なるタイプのガラスセラミック基材(多少暗く、又は異なる構成等)に対して防指紋効果が目に見えて得られることを実証した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、新しいガラスセラミック物品に関し、これは、少なくとも一つの、ガラスセラミックで作られたプレートのような基材を含み、前記基材が、少なくとも一つの以下のようなエナメルコーティング(又はエナメルの堆積物若しくは層)で少なくとも一つの領域において被覆されている:
1)前記エナメルが、60°で40未満の光沢(又は光沢度)を有し、
2)前記コーティングで被覆された前記領域における前記エナメル(又は前記エナメルコーティング)の被覆率が、40~80%であり、
3)前記エナメルが、金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された、雲母及び/又は酸化アルミニウム及び/又はシリカ粒子の形態の顔料を含み、
4)前記エナメルが、0.4μm以上の粗さRaを有し、
5)前記エナメルが、4μm超の粗さRtを有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
このように選択及び塗布されたエナメルコーティングは、前記コーティングの被覆された領域における指紋の視認性の低下を起こし、又は言い換えれば、前記領域に防指紋の特性(又は機能性)を付与する。
【0013】
本発明によるガラスセラミック物品(又は製品)は、特に、少なくとも一つのガラスセラミック(材料)の基材である(又は少なくとも一つのガラスセラミック(材料)の基材を含む、又は少なくとも一つのガラスセラミック(材料)の基材から形成される)クックトップ又は家具の任意の一部である(基材は、最も一般的には、プレートの形態であり、これは、家具の一部に結合され若しくは取り付けられ、及び/又は他の要素と組み合わされて、家具の一部を形成する)。前記基材は、必要に応じて、表示領域(例えば、発光源と組み合わせて)又は装飾領域を有するか、又は加熱要素と組み合わせることができる。最も一般的な用途では、本発明による物品は、クックトップとして機能することを意図し、このプレートは一般的に、例えば放射若しくはハロゲンバーナー若しくは誘導加熱要素等の加熱要素を含むホットプレート又はストーブに組み込まれることが意図されている。別の有利な用途では、本発明による物品は、必要な場合には、異なるディスプレイを備え、かつ必ずしも調理エリアを備えない、ガラスセラミックワークトップ又は中央アイランドであり、又は家具のコンソールタイプの部品(例えば基材は上部を形成する)等である。
【0014】
基材(又は基材のみからなる場合は、本発明による物品自体)は、一般的にプレート(の形態で)であり、これは特に、少なくとも一つの光源及び/又は加熱要素と共に使用すること、特にそれを覆い又は受け取るように意図されており、又は家具の表面として機能するように意図されている。この基材(又はそれぞれこのプレート)は、一般的に幾何学的形状、特に長方形、又は正方形、又は円形又は楕円形等であり、かつ一般的に使用の位置における使用者に面する一の側(又は目に見える側若しくは外側、一般的に使用の位置における上側)、例えば家具フレーム又はキャビネット等において、使用の位置における一般的に隠された他の側(又は内側、一般的に使用の位置における底側)、及び縁部(又は厚さ)を有する。上側又は外側は一般的に、平坦で滑らかであるが、局所的に少なくとも一つの隆起領域及び/又は少なくとも一つの陥凹領域及び/又は少なくとも一つの開口部及び/又は斜縁を有してもよく、このような形状の変化は、特にプレートの連続的な変化を構成する。底側又は内側は、平らで滑らかであってもよく又はピンを備えていてもよい。
【0015】
ガラスセラミック基材の厚さは、一般的に少なくとも2mm、特に少なくとも2.5mmであり、有利には15mm未満であり、特に約3~15mm、特に約3~8mm又は約3~6mmである。基材は、好ましくは平面又は準平面プレート(特に、プレートの対角線のたわみが0.1%未満、好ましくは約ゼロである)である。
【0016】
基材は、任意のガラスセラミックをベースとすることができ、この基材は有利には、ゼロ又はほぼゼロのCTE、特に20℃~700℃で30×10-7-1(絶対値で)未満、特に20℃~700℃で15×10-7-1未満又は5×10-7-1未満のCTEを有する。
【0017】
本発明は、より具体的には、暗い外観、低い透過率及び低い散乱を有する基材に関し、特に、厚さ6mmまでのガラスセラミックについて、本質的に40%未満、特に5%未満、特に0.2~2%の光透過率LTを有し、及び可視範囲の波長625nmでの光透過率(既知の方法で、特定の波長での透過強度及び入射強度の比率を計算することによって決められた)が0.5~3%である、任意のガラスセラミックに基づく基材に関する。「本質的に」とは、任意のコーティングが存在せずに、基材自体がそのような透過率を持っていることを意味する。光学測定は、基準EN410にしたがって行われる。特に、光透過率LTは、光源D65を用いて基準EN410にしたがって測定され、直接透過率及び可能性のある散乱透過率の両方を考慮に入れた総透過率(特に可視範囲に総合され、人間の目の感度曲線によって重み付けされた)であり、測定は、例えば積分球を備えた分光光度計(特にパーキンエルマー社によってラムダ950の名前で販売された分光光度計)を用いて行われる。
【0018】
特に、黒又は茶の外観を持つ基材が使用され、その下に配置された光源と組み合わせて、下にある要素を隠しながら、発光領域又は装飾を表示させる。それは、特に、残留ガラス質相内のβ-石英構造の結晶を含む黒ガラスセラミックに基づくことができ、その熱膨張係数の絶対値は、有利には15×10-7-1以下であり、又は更には5×10-7-1以下であり、例えばユーロケラ社によってKerablack+の名前で販売されたプレートのガラスセラミックに基づくことができる。それは、特に、特許出願EP0437228又はUS5070045又はFR2657079に記載されているように、ヒ素組成で精製されたガラスセラミックであってもよく、又は例えば国際公開第2012/156444号に記載されているような組成の、酸化ヒ素含有量が優先的に0.1%未満である錫で精製されたガラスセラミック、又は国際公開第2008053110号に記載されているような硫化物で精製されたガラスセラミックであってもよい。
【0019】
本発明はまた、例えばユーロケラ社によってKeralite(登録商標)名前で販売されたプレートのような、基材がより軽い場合、例えば、必要に応じて、その底側に不透明なコーティング、一般的には塗料、が塗布されている透明基材の場合にも適用することができる。
【0020】
本発明によれば、関わるガラスセラミック基材は、少なくとも一つの領域において被覆されており(又は前記基材の少なくとも一つの領域が被覆されている)、より具体的には、表面に、一の側の少なくとも一部に、有利には、使用の位置における使用者に面する側、及び/又は指紋の視認性の低減を必要とする側、一般的に使用の位置における上又は外側の、少なくとも一部に、被覆されており、又は一以上の側のいくつかの領域、又は一以上の側の全体において被覆されることができる。
【0021】
それは、本発明によって定義された少なくとも一つのエナメルコーティングで(又は少なくとも一つのエナメルコーティングによって)被覆され、すなわち、上述の特徴を有する(又は有するように選択及び適用された)少なくとも一つのエナメルコーティングで被覆される。本発明によるエナメルコーティングで被覆された領域は、好ましくは少なくとも5cm×5cmであり、特に少なくとも10cm×10cmであり、特に少なくとも20cm×20cmである(又は好ましくはその領域を占める)。前記エナメルコーティングの厚さは、優先的には1.5μm~3.5μmである。
【0022】
最初に示したように、エナメルはしたがって、60°で40(「光沢の単位」又は単位なしで表示された値)未満の光沢(又は光沢度)を有するように選択され、この光沢は、平らに堆積したエナメル(100%の被覆率で)について、基準ISO2813にしたがって、BYK Gardner社によって販売された分光ガイド45-0で測定される。
【0023】
光沢は、光-反射表面の光学特性であり、平らに堆積したエナメルの表面法線に対して傾斜した軸(ここでは、表面法線に対して60°の軸)に沿って測定される。したがって、本発明によって(試験されたエナメルの光沢の単純な測定及び基準を満たすものの選択によって)選択されたエナメルは、60°で基準ISO2813にしたがって0~40の光沢(又は光沢度)を含む。
【0024】
第2の選択基準にも示されているように、本発明にしたがって防指紋効果が求められかつ得られた領域(前記コーティングで被覆された)におけるエナメル又はコーティングの被覆率は、40~80%であり(又は両端の値を含んで40%~80%であり)、この割合は、エナメルで実際に被覆された表面を、前記領域の表面で割ったものとして定義されており、被覆率は、本発明にしたがって防指紋効果が求められ、かつ得られたコーティングが設けられた領域において、15×10mmの任意の分析表面で実際に測定可能であり、前記領域は少なくとも5cm×5cmである。被覆率は、SVS Vistek社によって販売された製品番号SVS ECO267の1024ピクセルカメラ付き光学ベンチを使用し、かつ、画像をキャプチャするためにサンプルの下に配置された発光ダイオード(TPL Vision社によって販売されたLEDバックライトコンパクトSBACKII51×51mm)によって背面照射し、かつ画像分析に無料のImageJソフトウエアを使用して測定される。
【0025】
(防指紋効果が求められた領域における)前記エナメルコーティングの被覆率は、好ましくは50%~80%であり、特に好ましくは55%~80%、特に58%から、79%、特に約59%又は約60%から約75%又は約76%までである。
【0026】
本発明によるエナメルコーティングのプロファイル又はパターン(エナメルコーティングが堆積された領域における被覆された部分と被覆されていない部分との混合又は交互)は、特に、有利には、ランダムで等方性である。
【0027】
その他の上記した基準の選択と組み合わせたこの被覆率(選択した堆積方法にしたがって調整でき、エナメル堆積は、本発明において一般的に、スクリーン印刷(比較的多く又は比較的少なく被覆するスクリーン印刷スクリーンを選択することができる)又はエナメルジェット(より大きい又はより小さい投影を選択することができる)によって行われる)は、特に満足的で、かつ望ましい領域での防指紋効果に関して改善された結果(特に、被覆されていない領域と比較して、又はより軽く若しくはより重く被覆された領域、例えば前記エナメルのフラット(連続堆積)で被覆されている領域と比較して、又はより光沢のあるエナメルで被覆された領域と比較して)を生み出す。
【0028】
エナメルコーティングはまた、上述した特徴5)~5)を組み合わせたコーティングである。したがって、エナメル(及びエナメルコーティング)は、下記の顔料を含む:
-金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された(又はコーティングされた)雲母粒子、特にTiOで被覆された又はFeで被覆された、又はTiO-Feの組合せ若しくはTiO-SnOの組合せ若しくはTiO-Fe-SnOの組合せで被覆された雲母粒子の形態の顔料;及び/又は
-金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された酸化アルミニウム(Al)粒子し、特にTiO-SnOの組合せ又はTiO-SnO-SiOの組合せで被覆されたAl粒子の形態の顔料;及び/又は
-金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆されたシリカ粒子、特にTiO-SnOの組合せ又はFe-ZrOの組合せで被覆されたシリカ粒子の形態の顔料;
-又は、更に、任意の他の「効果」顔料(すなわち、干渉顔料又は真珠光沢顔料とも呼ばれるメタリック効果顔料、これらの顔料は、従来の顔料と異なり吸収性ではなく反射性があるため、入射光の高い反射をもたらす)、すなわち、言い換えれば、エナメルコーティング(それぞれエナメル)が、所謂「金属」外観を持つエナメルコーティング(それぞれエナメル)である。
【0029】
上記の顔料は、例えば、とりわけ、メルクによって、イリオジン120、300、500、520、9602又はピリズマT40-23、T81-23、M40-58、又はカラーストリームF10-00、T10-01若しくはT10-02、又はシラリックF60-25、T60-23若しくはT60-10という参照名で、市販されている。
【0030】
好ましくは、乾燥形態のエナメル組成物中において、金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された、雲母及び/又は酸化アルミニウム及び/又はシリカ粒子の形態の顔料から選択された顔料の割合は、前記組成物の10~30重量%であり、エナメル組成物は、乾燥の形態で、本質的に、必要に応じて顔料が加えられたガラスフリットからなり、次に媒体を加えてコーティングの塗布を行い、この媒体はその後、熱処理(プレートのセラミック化熱処理又はリワーク熱処理)中に除去され、最終的なコーティングを形成することができる。
【0031】
関わる顔料の通常の形態に依存して、粒子という語は、フレーク又はプラークという語もカバーすることに留意されたい。
【0032】
好ましくは、本発明によれば、用いられるエナメルは更に有利には、25重量%以下、特に20重量%未満、優先的に15重量%未満、特に10重量%未満、又は更に6重量%未満の割合のBを含む(フリット及び顔料を含む乾燥組成物中で)。
【0033】
エナメル又は上述した顔料を有するエナメルコーティングの選択と組み合わせて、この場合、エナメルコーティングはまた、0.4μm以上の粗さRa及び4μm超の粗さRt(エナメル堆積平面の粗さ(100%の被覆率で))を有さなければならない。
【0034】
粗さRaは、よく知られた粗さパラメーターであり、評価長さにわたって定義された、プロファイルの算術平均粗さ(連続するピークとトラフの間の偏差の絶対値の算術平均)であり、かつ粗さRtは、評価長さにおいて、最も深い谷と最も高いピークとの間のプロファイルの総高さである。ここで考慮される粗さRa及び粗さRtは、ミツトヨモデルSJ401センサーを使用して、評価長さ4mmにわってISO4287に従って、測定される。
【0035】
好ましくは、粗さRaは、0.4~0.7μmであり(又は0.4及び0.7μmの間を含む)、かつ好ましくは、粗さRtは、4~8μmである。
【0036】
エナメルのこの粗さは、基材の表面の任意の初期微小粗さを置き換える。
【0037】
本発明によって選択されたエナメルコーティングは、疎水性の特徴を欠いており(このコーティングの水接触角は90°未満である)、かつ疎油性の特徴を欠いている(このコーティングのジヨードメタンの接触角は90°未満である)ことが観察できる。
【0038】
防指紋効果が望まれる領域は、コーティングの良好な接着性及び求められた効果の両方を得るために、任意の前処理(例えば浸漬又はプライミング)を行う必要なしに、選択されたエナメルコーティングで被覆されていることも観察できる。
【0039】
本発明による基材は、機能的及び/又は装飾的効果を有する他のコーティング又は層で任意に被覆されてもよく、特に、防指紋効果のエナメルで被覆された領域以外の領域に堆積している機能的及び/又は装飾的効果を有する他のコーティング又は層で任意に被覆されてもよく、このような他のコーティング又は層は、例えば、他のエナメルに基づく通常のパターン又は基材の他の部分における不透明ペイント層、又はスクラッチ防止層、オーバーフロー防止層、不透明化層等の1つ以上の機能性層である。
【0040】
本発明による物品は、基材と関連して又は組み合わせて、一般的に基材の底側に配置されている1つ以上の光源及び/又は1つ以上の加熱要素(1つ以上の放射線又はハロゲン要素及び/又は1つ以上の大気ガスバーナー及び/又は1つ以上の誘導加熱手段等)を更に含んでよい。1つ以上の光源は、1つ以上のディスプレイタイプの構造に統合又は結合されて、タッチセンサー式キー及びデジタルディスプレイを備えた電子制御ストリップ等にされていてもよく、また有利には、多少間隔を空けて配置された複数の発光ダイオードによって形成され、これらは随意に、1つ以上の光学ガイドと関連付けられていてもよい。
【0041】
物品は、追加的な機能要素(フレーム、コネクタ、ケーブル、制御要素等)を備える(又は関連付ける)こともできる。
【0042】
したがって、本発明は、ガラスセラミック製品の使用に特有の制約、特に熱的及び機械的制約を尊重しつつ、ガラスセラミック製品を長持ちさせかつ維持を容易に保ちながら、所望の位置(例えば制御又は表示領域又は加熱領域等の、取り扱い又は汚れに最もさらされる領域)において、表面が、防指紋効果を得るために選択された組成で被覆されたガラスセラミック製品を開発することを可能にした。したがって、本発明による解決策は、簡単でかつ経済的に、複雑な操作をせずに(後述するように、シルクスクリーン印刷等の従来のエナメル堆積技術によって堆積できるコーティング)、長期にわたって維持される様式で、かつ大きな柔軟性を伴って、製品の任意の所望の領域において、防指紋効果を持つ領域を、これらの領域が高温にさらされることを意図する場合でも、得ることを可能にした。本発明による物品は、特に、様々なタイプのヒーターの使用に適合する良好な耐熱性を有し、上述したように、メンテンナンス、スクラッチ又は摩耗の問題を引き起こさない。本発明による物品は、特に、400℃以上の温度で熱劣化を受けず、これは、特にクックトップとしての使用等の用途で達成することができる。
【0043】
本発明による物品はまた、ガラスセラミック基材へのコーティングの良好な接着力を有する(基材の前処理及び/又は接着促進剤、ボンドコート又はプライマーの使用なしで)。特に、このコーティングは、熱衝撃(例えば600℃付近で)後の層間剥離を示さず、高温に耐性がある。コーティングは、優れた耐スクラッチ性も有する。被覆された基材は、簡単に洗浄でき、かつ長寿命を有する。
【0044】
本発明はまた、本発明によるガラスセラミック物品を製造するための方法に関し、ガラス基材(セラミック化によってガラスセラミック基材を形成するためのクリーンガラス基材)から出発して、本発明によって選択されたエナメルの少なくとも一つのコーティング(本発明による物品の定義において上記に示された基準を満たしている)を、セラミック化前に前記ガラス基材(グリーンガラス)の少なくとも一部に塗布して、その後、このように被覆されたガラス基材(グリーンガラス基材)のセラミック化を実行し、そして、このセラミック化は、少なくとも部分的に(少なくとも一つの領域において)、上述した少なくとも一つの防指紋コーティングで被覆されたガラスセラミック基材を得ることを可能にする。
【0045】
又は、エナメルコーティングは、任意選択で、すでにセラミック化された基材に堆積され、かつ例えばトンネル炉中で再焼成されることができる。この場合、本発明によって選択されたエナメルの少なくとも一つのコーティングを、ガラスセラミック基材の少なくとも一部に塗布し、その後、エナメルを、例えば約850℃の温度にて焼成する。
【0046】
注意喚起として、ガラスセラミックプレートの製造は、一般的に以下のように実施する:選択した組成を有するガラスを、融解炉中で融解させ、ガラスセラミックを形成し、その後、圧延ローラーの間に融解ガラスを通過されることにより、融解ガラスを標準的なリボン又はシートへと巻き取り、ガラスリボンを所望の寸法へと切断する。その後、このように切断したプレートを、それ自体公知な方法でセラミック化する。このセラミック化は、ガラスを「ガラスセラミック」と呼ばれ、熱膨張係数がゼロ又はゼロ付近であり、かつ特に700℃までの耐熱衝撃性を有する多結晶材料へと変化させるために、セラミック化は、選択された熱プロファイルに従ってプレートを焼成することからなる。セラミック化は、一般的に、核形成範囲まで温度を徐々に上昇させ、核形成間隔(例えば650~830℃)を数分間(例えば5~60分)かけて横断し、結晶成長(例えば850℃から1000℃の範囲におけるセラミック化)を可能にするための追加的な温度上昇をし、セラミック化段階で数分間(例えば5~30分)温度を維持し、そしてその後、室温まで急速に冷却させることを含む。
【0047】
セラミック化前のグリーンガラスにおけるエナメルコーティングの塗布又は堆積は、エナメルを堆積するための任意の適切な迅速な技術によって行うことができ、塗布は、好ましくはスクリーン印刷又はエナメルジェットによる。
【0048】
次に、被覆された基材は、上記のように、通常数十分の間、セラミック化熱処理(850~1000℃に達することができる温度で)にかけられる。
【0049】
必要に応じて、この方法はまた、例えばウォータージェット、機械的スクライビング等による切断操作(一般的にセラミック化の前)と、それに続く成形操作(研削、面取り等)を含む。
【実施例
【0050】
以下の実施例は、本発明を例示するが、限定するものではない。
【0051】
これらの例では、ユーロケラ社によってKerablack+として販売された、半透明の黒いガラスセラミック製の同じ基材の10cm×10cmのプレートを用いた。これらのプレートは、平滑な上側、及びピンを備えている底側を有し、厚さ4mmである。これらのプレートは、比較される異なるエナメルコーティングの実施例にしたがって被覆された。エナメルコーティングは、グリーンガラス基材上にスクリーン印刷によって堆積されて、半透明の黒いガラスセラミックを与えた。その後、前記グリーンガラス基材は、セラミック化されて、ガラスセラミックを与えた。
【0052】
そして、参照として、エナメル被覆領域及びガラスセラミックにおいて、いくつかの印を施した。次の採点が用いられた。数字が大きいほど指紋がより見やすく、最も高いスコア(4)は、参照のスコア(被覆されていないガラスセラミック)であり:0は目に見える指紋がないことに対応し、1はほとんど識別できない指紋に対応し、2はよく見ると分かる指紋に対応し、3は、すぐに見ることができるが、ガラスセラミックの指紋よりは目立たない指紋に対応し、4はガラスセラミックの指紋と同一の指紋に対応している。これらのスコアは、法線に対して60°の角度で、(特に明記されていない限り)指を当てた同日において、エナメルあたり約10サンプルのシリーズごとに、各評価において同じ条件の下で、5人のパネルによってそれぞれの比較に割り当てられて、そして、異なる人によって割り当てられたこれらのスコアを、比較及び平均化した。
【0053】
最初の比較では、以下の組成のエナメルを使用した:Al:12.5~13.4%;LiO+NaO+KO:3.8~5.9%;B:18~19.8%、CaO+BaO+MgO:1.7~2.3%、ZrO:1.4~2%、TiOで被覆された雲母粒子、Feで被覆された雲母粒子、及びTiO-Fe-SnOの組み合わせで被覆された雲母粒子の混合物(メタリック効果のある顔料):30%、残り(100重量%まで)は、シリカSiOであり、このエナメルは、光沢(平面)が26.3、粗さRaが0.5μm、及び粗さRtが4.5μmであり、厚さ2.5μmのコーティングで、異なる被覆率で試験された。試験された被覆率はそれぞれ、10%、36%、42%、46%、48%、58%、59%、60%、72%、74%、78%、80%及び100%であった。1未満0までのスコア(平均)は、被覆率42~80%で与えられ、55~78%の範囲の被覆率で最も低いスコア及び最も小さい分散が観察され、最適は60%であった。
【0054】
次に、エナメルを、同じ厚さ(2.5μm)で、かつ試験された各エナメルの被覆率を80%にし、66の光沢、0.2μmの粗さRa、及び2.8μmの粗さRtを有し、以下の組成から選択された組成の、本発明によらない金属化エナメルと比較した:Al:15.2~16.2%;LiO+NaO+KO:4.6~7.1%;B:21.8~24.1%、CaO+BaO+MgO:2~2.8%、ZrO:1.7~2.5%、メルクによって販売されたシラリックF60-25顔料(メタリック効果のある顔料):15%、残り(100重量%まで)は、シリカSiOである。得られた平均スコアは2であった。
【0055】
次に、エナメルを、被覆率80%で、上記と同じ厚さで、15.7の光沢、0.3μmの粗さRa、及び4.4μmの粗さRtを有し、以下の組成から選択された組成の、本発明によらない非金属化エナメルと比較した:Al:5.4~6.5%;LiO+NaO+KO:4.8~7.4%;B:3.6~5.4%、CaO+BaO+MgO:17~20.3%、ZrO:1~1.7%、ZnO:5.9~7.4%、TiO粒子、Fe粒子、Fe-Cr-Co-Ni酸化物、及びAl-Co酸化物の混合物(メタリック効果のない顔料):15%、残り(100重量%まで)は、シリカSiOである。得られた平均スコアは2であった。
【0056】
次に、エナメルを、被覆率80%で、上記と同じ厚さで、38.4の光沢、0.6μmの粗さRa、及び4.6μmの粗さRtを有し、以下の組成から選択された組成の、本発明による別の金属化エナメルと比較した:Al:12.5~13.4%;LiO+NaO+KO:3.8~5.9%;B:18.0~19.8%、CaO+BaO+MgO:1.7~2.3%、ZrO:1.4~2%、メルクによって販売されたカラーストリームF10-00顔料(メタリック効果のある顔料):30%、残り(100重量%まで)は、シリカSiOである。得られた平均スコアは0であった。
【0057】
次に、エナメルを、被覆率80%で、上記と同じ厚さで、37.6の光沢、0.4μmの粗さRa、及び6μmの粗さRtを有し、以下の組成から選択された組成の、本発明による別の金属化エナメルと比較した:Al:14.3~15.3%;LiO+NaO+KO:4.3~6.7%;B:20.5~22.7%、CaO+BaO+MgO:1.9~2.6%、ZrO:1.6~2.3%、TiOで被覆された雲母粒子、Feで被覆された雲母粒子、及びTiO-Fe-SnOの組み合わせで被覆された雲母粒子の混合物(メタリック効果のある顔料):20%、残り(100重量%まで)は、シリカSiOである。得られた平均スコアは0であった。
【0058】
次に、エナメルを、被覆率80%で、上記と同じ厚さで、80の光沢、0.2μmの粗さRa、及び2.5μmの粗さRtを有し、以下の組成から選択された組成の、本発明によらない金属化エナメルと比較した:Al:16.1~17.2%;LiO+NaO+KO:4.9~7.6%;B:23.1~25.5%、CaO+BaO+MgO:2.2~3%、ZrO:1.8~2.6%、メルクによって販売されたシラリックT60-10顔料(メタリック効果のある顔料):10%、残り(100重量%まで)は、シリカSiOである。得られた平均スコアは1~2であった。
【0059】
本発明による条件を満たしているエナメルコーティングは、これらの条件を満たさない他のコーティングとは対照的に、指紋防止の特性を示した。また、指を当ててから7日又は14日後に試験を行った場合、採点に有意の差はなかった。
【0060】
更に、得られた基材及びコーティングは、620℃の熱衝撃後に層間剥離を示さず、580℃で100時間後に外観の劣化を示さなかった。
【0061】
本発明による物品は、特に、ストーブ若しくはホットプレート用のクックトップの新しい範囲、又はワークテーブル、コンソール、食器棚(credenzas)、中央アイランド等の新しい範囲を製造するのに有利に使用することができる。
本発明は、下記の態様を含む:
〈態様1〉
少なくとも一つの、ガラスセラミックで作られたプレートのような基材を含み、前記基材が、少なくとも一つのエナメルコーティングで少なくとも一つの領域において被覆されており、それによって、
1)前記エナメルが、60°で40未満の光沢を有し、
2)前記コーティングで被覆された前記領域における前記エナメルの被覆率が、40~80%であり、
3)前記エナメルが、金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された、雲母及び/又は酸化アルミニウム及び/又はシリカ粒子の形態の顔料を含み、
4)前記エナメルが、0.4μm以上の粗さRaを有し、
5)前記エナメルが、4μm超の粗さRtを有する、
ガラスセラミック物品。
〈態様2〉
前記基材が、光源D65の下で40%未満の光透過率LT、及び波長625nmで0.5~3%の光透過率を本質的に有するガラスセラミックに基づく、態様1に記載のガラスセラミック物品。
〈態様3〉
前記エナメルコーティングで被覆された領域が、少なくとも5cm×5cm、特に少なくとも10cm×10cm、特に少なくとも20cm×20cmである、態様1又は2に記載のガラスセラミック物品。
〈態様4〉
前記エナメルコーティングのプロファイル又はパターンが、ランダムで等方性である、態様1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様5〉
粗さRaが0.4~0.7μmである、態様1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様6〉
粗さRtが4~8μmである、態様5に記載のガラスセラミック物品。
〈態様7〉
前記エナメルが、25重量%以下、特に20重量%未満、優先的に15重量%未満、特に10重量%未満、又は更に6重量%未満の割合のB を含む、態様1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様8〉
前記コーティングの厚さが1.5μm~3.5μmである、態様1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様9〉
前記エナメルコーティングが、疎水性の特徴を欠いており、かつ疎油性の特徴を欠いている、態様1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様10〉
前記領域が、プライマーの塗布又は浸漬等の前処理なしに前記エナメルコーティングで被覆される、態様1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様11〉
前記物品又は前記基材が、クックトップ又はワークトップ又は中央アイランド又はコンソールである、態様1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
〈態様12〉
少なくとも一つのエナメルコーティングを、
ガラス基材の少なくとも一部に塗布して、その後、このように被覆されたガラス基材のセラミック化を実行するか、又は
ガラスセラミック基材の少なくとも一部に塗布して、その後、エナメルを焼成し、
それによって、
1)前記エナメルが、60°で40未満の光沢を有し、
2)前記コーティングで被覆された前記領域における前記エナメルの被覆率が、40~80%であり、
3)前記エナメルが、金属酸化物又は金属酸化物の組合せで被覆された、雲母及び/又は酸化アルミニウム及び/又はシリカ粒子の形態の顔料を含み、
4)前記エナメルが、0.4μm以上の粗さRaを有し、
5)前記エナメルが、4μm超の粗さRtを有する、
態様1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品を製造するための方法。