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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】平らな標識表示面を有するシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20240508BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240508BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/31 530
A61M5/315
A61M5/32 500
A61M5/32 510H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020552232
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019024361
(87)【国際公開番号】W WO2019191285
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】15/940,305
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513066638
【氏名又は名称】リトラクタブル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Retractable Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】511 Lobo Lane Little Elm, TX 75068, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】508328486
【氏名又は名称】ショー,トーマス ジェイ.
【氏名又は名称原語表記】SHAW,Thomas J.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショー,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スモール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ,ニ
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196714(US,A1)
【文献】特表2006-519042(JP,A)
【文献】米国特許第02860635(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/315
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
療用のシリンジ(20)であって、
プランジャー(72)と、
前部アタッチメント(24)と、
一体型バレル(22)と、を具えており、
前記一体型バレル(22)は、
(A)近位端と、(B)遠位端と、(C)湾曲部及び略平らな標識表示部(23)を有する外壁と、(D)前記外壁の内部に配備され、第1の円筒形の側壁部及び第2の円筒形の側壁(25)を有する流体チャンバ(75)と、(E)前記外壁の内部に配備され、横方向にオフセットされた針引込みキャビティであって、前記流体チャンバ(75)とは前記第1の円筒形の側壁部によって分離された針引込みキャビティ(92)、を含み、
前記横方向にオフセットされた針引込みキャビティ(92)は、前記流体チャンバ(75)と平行に配置され、かつ前記流体チャンバ(75)と長手方向に同一又は前記流体チャンバ(75)よりも長い広がりを有し、
前記外壁、前記流体チャンバ(75)及び前記横方向にオフセットされた針引込みキャビティ(92)は一体的にモールド成形されており、
前記第2の円筒形の側壁部は、前記外壁の前記湾曲部を形成し、
前記略平らな標識表示部は、前記湾曲部から横方向に延びて、前記横方向にオフセットされた針引込みキャビティ(92)の少なくとも一部分を形成し
前記略平らな標識表示部(23)には、投与量の体積目盛を含む標識(27)が付され、前記投与量の体積目盛は、前記流体チャンバ(75)の長手方向に揃えられて長手方向長さと同一の広がりを有しており、
前記プランジャー(72)、前記流体チャンバ(75)とスライド可能に係合するプランジャシール(76)を含み、
前記前部アタッチメント(24)は、前記流体チャンバ(75)の長手方向軸線の横方向において前記一体型バレル(22)の前記遠位端とスライド可能に係合し、前記前部アタッチメント(24)の内部には、前方に突出し後方に付勢されて引込み可能な針(34)が配備され、
前記引込み可能な針(34)は、引込み前は、前記流体チャンバ(75)と同軸線上に配置され、次いで前記針引込みキャビティ(92)の長手方向と揃うように再配置されて、前記引込み可能な針の引込みが開始される、シリンジ。
【請求項2】
前記略平らな標識表示部(23)は、対向する2つの面を有する平らな標識表示面を含み前記対向する2つの面の各面は、前記流体チャンバ(75)の外側壁部の少なくとも一部と前記針引込みキャビティ(92)の外側壁部の少なくとも一部にまたがっており、前記投与量の体積目盛は前記外側壁部に付されている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記略平らな標識表示部は、前記湾曲部から前記針引込みキャビティに向けて横方向に延びている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記略平らな標識表示部は、前記湾曲部から前記針引込みキャビティに向けて一方向に横方向に延びている、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記針引込みキャビティは、非円形の断面形状を有する内周を含む、請求項1のシリンジ。
【請求項6】
前記針引込みキャビティは、前記流体チャンバの全長に沿って非円形の断面形状を有する外周を含む、請求項5のシリンジ。
【請求項7】
前記針引込みキャビティは、非円形の断面形状を有する外周を含む、請求項6のシリンジ。
【請求項8】
前記略平らな標識表示部は、どの部分も、前記外壁の前記湾曲部を超えて前記針引込みキャビティから横方向に離れる方向に延在しない、請求項7のシリンジ。
【請求項9】
前記略平らな標識表示部は、どの部分も、前記外壁の前記湾曲部を超えて前記針引込みキャビティから横方向に離れる方向に延在しない、請求項1のシリンジ。
【請求項10】
前記外壁の前記湾曲部は1つだけであり、前記1つの湾曲部は前記第2の円筒形の側壁部によって形成されている、請求項1のシリンジ。
【請求項11】
前記標識の少なくとも一部が、前記略平らな標識表示部から前記外壁の湾曲部まで延びている、請求項1のシリンジ。
【請求項12】
前記投与量の体積目盛の少なくとも一部は、前記略平らな標識表示部から前記外壁の前記湾曲部まで延びている、請求項1のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、流体を吸引又は注入する際に用いる医療用に構成されたシリンジに関する。シリンジは、好ましくは、バレルと、バレルの一部と摺動可能に係合するプランジャーと、前方に突出した針と、バレルに配置された略平らな標識表示面とを含む。本発明の一態様は、バレルの流体チャンバの長さと略同一の広がりを有する針引込みキャビティが横方向にオフセットされたバレルである。十分な長さを有する針引込みキャビティが横方向にオフセットされていることにより、引込み可能な針を有する従来の安全シリンジに使用される長尺の引込み可能な針の選択的な使用が可能になり、シリンジの長さ全体を増大させることなく、デバイスの使用及び処置の実施可能な範囲を拡大することができる。デバイスのこの使用及び処置には、針の長さに応じて、例えば、脊髄穿刺を行うこと、硬膜外麻酔を投与すること、嚢胞を吸引することなどがあり、その他にも、皮内、皮下又は筋肉へ注射することを含む。
【0002】
本発明の別の態様は、バレルを有するシリンジに関するもので、前記バレルは、略円筒状の流体チャンバと、該流体チャンバに平行かつ横方向に間隔を存して配置された針引込みキャビティと、略平らで外向きの少なくとも1つの表示面と、を具えており、前記表示面には、投与量目盛等の標識(indicia)を、従来のパッド印刷プロセスを用いて貼り付けることができる。本発明のさらに別の態様は、対向する2つの略平らな表面を有するバレルを具えるシリンジに関するもので、前記表面には、同じ標識又は異なる標識が、1mL、0.5mL又はそれより小さいシリンジに印刷する場合でも、バレルを回転させることなく、パッド印刷されることができる。略平らな表示面は、エンボス加工、射出成形などの他のプロセスによっても、シリンジへの標識の貼付けが可能である。
【0003】
本発明の別の態様は、前述したバレル及びプランジャーを具える医療用シリンジと、前方に突出し、後方に付勢された針を有する前部アタッチメントとの組合せに関する。前部アタッチメントとバレルは、前部アタッチメントが、針を通る長手方向軸線に対して横方向の軸線に沿ってバレルの前部分とスライド可能に係合するように、協働作用するよう構成されることが好ましい。
【0004】
<関連技術の説明>
医療用シリンジは通常、略円筒形の内壁と外壁を具えるバレルを有するが、これは、投与量目盛や他のマーキング等の標識が、製造中に円弧状の外表面に施されることを意味する。これは困難な作業であり、バレルの直径や外壁の曲率半径が小さくて(例えば、1mL、0.5mL及びそれより小さい容量のシリンジ)利用可能な外表面領域が非常に限られている場合、又はバレルの反対側の面に異なる投与量目盛或いは他のマーキングが施されるシリンジの場合には、特に困難である。このような場合、印刷中にバレルを回転させなければならないことが多い。また、投与量の目盛線及び関連する数値又は他のマーキングなどの標識の読み取りが困難であることも多い。その理由は、これら標識がバレルの外周をぐるりと巻いているためであり、また、一方の面に付された表示又はマーキングがシリンジを通して見えることがあり、使用者を混乱させたり、医療過誤行為に至ることがあるためである。少なくともこれらの理由から、投与量その他の表示を施すのに使用するための略平らな表面を有するシリンジが必要とされている。
【0005】
後方に付勢された針が、プランジャー内部にて同軸線上に配置された引込みキャビティの中に引き込む医療用シリンジは知られており、これまでに、例えば、米国特許第5,049,133号、第5,053,010号、第5,084,018号及び第6,090,077号に開示されている。さらに最近では、後方に付勢された針が入れられた前部アタッチメントを有する医療用シリンジにおいて、前記針が、前部アタッチメントの一部である針引込みキャビティの中に引き込む医療用シリンジが、例えば、米国特許第9,381,309号に開示されている。
【0006】
さらに最近では、針引込みキャビティを有するバレルとスライド可能に係合する前部アタッチメントを有する医療用シリンジについて、前記針引込みキャビティが、バレルと一体的にモールド成形され、流体チャンバと平行に配置されたものが開示されている。例えば、米国特許第9,814,841号(図37図42)では、針引込みキャビティは、その長さがバレル内の流体チャンバの長さよりも実質的に短いため、バレルの外壁と協働作用して、流体チャンバに隣接し、かつ流体チャンバと略同じ広がりを有する略平らな外面を形成することができない。
【発明の概要】
【0007】
開示される医療用シリンジは、流体チャンバと横方向にオフセットされた針引込みキャビティとを有する一体型のバレルを具え、前記流体チャンバと前記針引込みキャビティは、略平行であって共通の壁によって分離されている。針引込みキャビティは、非円形の断面を有し、好ましくは流体チャンバと略同じ長さである。これによって、バレルの全長を増大させることなく、より長尺の針の引込みに対応することができ、使用後に針がバレル内に引き込む安全シリンジのように、より長尺の針を使用することができる。バレルは、少なくとも1つの略平らな外向きの表示面(substantially flat, outwardly facing display surface)を有する外壁をさらに具えており、例えば投与量の体積目盛等の標識を、前記表示面に、従来のパッド印刷技術又は同様の効果を有する別の代替手段を用いて付すことができる。少なくとも1つの略平らな表示面は、好ましくは流体チャンバに近接して配置され、好ましくは計量目盛を含む。計量目盛は、流体を注入又は吸引するのに有用な流体チャンバの少なくとも注入又は吸引する部分と長手方向に同一直線上に揃えて設けられる。本発明の好ましい一実施形態では、長手方向に同一の広がりを持つ2つの略平らな表面が対向して配備され、各表面は、流体チャンバの外壁の少なくとも一部と、針引込みキャビティの外壁の少なくとも一部とにまたがっている。
【0008】
本発明は、使用可能な容積が、1mL又はそれより小さいシリンジに特に有用である。これらのシリンジは一般的にバレル直径が小さいため、外表面に施される投与量体積の標識は、バレル外周部の大部分に巻き付けられる。本発明の別の好ましい実施形態では、投与体積標識又は他のマーキングをシリンジの略平らな表示面に施すためにパッド印刷技術(「タンポグラフィ(tampography)」と称されることもある)が用いられる。針引込みキャビティは、(好ましくは、適当なポリマー材からモールド成形される)非円形の断面を有し、バレルから横方向にオフセットされており、製造中に、幅広で外向きの略平らな表示面が作成される。略平らな表示面は、好ましくは、バレルの流体チャンバに近接する少なくとも1つの面を含む。この面により、必要であれば、投与体積量のマーキング又は他の標識を、他の平らな表示面上にモールド成形するか、又は、表示面上若しくは表示面内に標識をエンボス加工することが可能になる。
【0009】
本発明のシリンジの別の実施形態では、前述したバレル及びプランジャーと、前方に突出し、後方に付勢される針を有する前部アタッチメントとの組合せを含む。前部アタッチメントとバレルは、前部アタッチメントが、針を通る長手方向軸線に対して横向きの軸線に沿って、バレルの前部分とスライド可能に係合するように協働作用することが好ましい。シリンジが使用位置に配置されると、針は、バレルの前部分の第1の開口と同一直線上に位置し、前記開口により、バレル内の略円筒形の流体チャンバに連通して、流体チャンバと針との間で同軸線上に流体流路が形成される。前部アタッチメントとバレルとの間で流体が漏洩し難くするために、流体シールが第1の開口の周囲に着座している。針引込みキャビティは、バレルの前部分の第2の開口から、バレルの流体チャンバと平行かつ間隔を存して後方に延びており、好ましくは、流体チャンバの少なくとも一部と共通の壁を共有する。シリンジの使用後、バレルと前部アタッチメントとの間で相対的な横方向の動きにより、後方に付勢された針は、針引込みキャビティと同軸直線上に揃うように再配置される。これによって、針は、典型的には圧縮ばねなどの付勢手段によって引込み位置へ押し込まれるので、針はシリンジから前方に突出することはない。
【0010】
本発明のシリンジの別の実施形態は、一体のバレルと針引込みキャビティが、周囲フランジの略平らな縁部と協働作用することにより、シリンジがトレイ又は他の平らな面から転落するのを防止する医療用シリンジにおいて、幅広で略平らな表示面をシリンジに設けるものである。また、略平らな表面は、管状のバレルを有する従来のシリンジのフランジと比べて、バレルの周囲のフランジを比例的に狭くすることができるので、提供される表面領域が大きくなり、使用者による表示面の理解が容易になる。略平らな対向する表面は、安定性を向上させるので、使用者が注射又は他の処理中にシリンジに対して行う操作の制御度が向上する。本発明のシリンジは、横方向にオフセットされた針引込みキャビティを有するバレルが、流体チャンバと一体的にモールド成形されることができるので、少なくとも1つ、好ましくは2つの(対向する)略平坦で外向きの表面領域が提供される。この表面領域は、体積目盛(volumetric scale)その他の標識の配置に有用であり、使用者による読取りが容易となり、吸引又は注射の際に投与過誤の起こる可能性が低減される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、本発明のシリンジを選択的に取外し可能な針カバーと組み合わせるもので、当該針カバーはロッキング部材を含み、該ロッキング部材は、バレルの一部と係合して、前部アタッチメントに対するバレルの横方向へのスライド移動を阻止し、シリンジ使用前に、針の偶発的な引込みが防止されるよう構成される。シリンジの使用後に針が引き込むことにより、注射器の再使用可能性、偶発的に針が刺さる可能性、及び血液媒介病原体による偶発的感染の可能性が低下する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、本発明のシリンジをプランジャーキャップと組み合わせるもので、当該プランジャーキャップは、シリンジの後部、典型的には、フィンガーフランジの背後に着脱可能に取り付けられ、流体を吸引又は使用する前に選択的に取り外し可能である。針カバーとプランジャーキャップの両方が所定位置にあるとき、シリンジが別のパッケージ内に封入されているかどうかに拘わらず、針とシリンジ内部の流体接触部は取り囲まれて、汚染から保護される。このため、シリンジは、パッケージング及び殺菌を行う前に、大量に組み立てられ出荷されることができる。
【0013】
本発明のシリンジは、比較的少量のインスリン又はワクチン等の薬液を注射又は輸液によって使用者に投与するのに特に有用であるが、装置の構造及び操作は、特定のサイズ、用量又は工程に限定されない。例えば、本明細書に開示されるシリンジは、膝又は脊髄穿刺等の臨床処置において患者から流体サンプルを吸引するのに使用するように構成されることもできる。前部アタッチメントを本発明の新規なバレルと組み合わせて使用することにより、シリンジ全体の長さが減少するので、長尺の針を使用することができ、使用後もシリンジ内に引き込むことができる。この開示で使用される「引き込まれる(retracted)」又は「引込み(retraction)」の用語は、針に作用する力が、針先を、前方に突出した位置から後方に向けて押すこと又は引くことにより、針先が、前方に突出した使用位置から、前部アタッチメントから前方に突出しない使用後の位置に移動されるプロセスのことを言う。
【0014】
本発明のこれら及び他の特徴は、様々な実施形態における以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面と共に検討することにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のシリンジを、以下の図面に関連してさらに説明する。
図1図1は、本発明の一実施形態を上から見た正面斜視図であり、本発明のシリンジがパッケージング、出荷及び保管される位置に、針カバー(ロッキング部材を含む)及びプランジャー端部キャップが配備され、針カバーのロッキング部材が、使用前に、前部アタッチメントに対するバレルの横方向のスライド移動を制限している。
図2図2は、図1の実施形態を上から見た正面斜視図であり、針カバーが外されている。
図3図3は、図1の実施形態を上から見た正面斜視図の分解図である。
図4図4は、図2の実施形態の右側面図である。
図5図5は、図4の5-5線に沿う断面図である。
図6図6は、図3の実施形態のバレルの前部分に並置して示された前部アタッチメントを、一部破断して示す詳細な分解斜視図である。
図7図7は、図3の前部アタッチメントを上から見た後方斜視図である。
図8図8は、図4の実施形態の右側面図であって、プランジャーキャップが取り外され、プランジャーが吸引位置に引き込まれた図である。
図9図9は、図8の9-9線に沿う断面図である。
図10図10は、図8の実施形態の右側面図であって、針が引き込まれ、プランジャーがバレル内で完全に前進した図である。
図11図11は、図10の11-11線に沿う断面図である。
図12図12は、図2の実施形態の正面図である。
図13図13は、図12の実施形態の正面図であって、前部アタッチメントがバレルに対して再配置され、針が図10及び図11に示す位置に引き込まれた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、シリンジ20はバレル22を具え、該バレルは、略平らな表示面23、前部アタッチメント24、流体チャンバ75図9に見える)の外壁25、選択的に取外し可能な針カバー26、体積計測標識(volumetric measuring indicia)27、フィンガーフランジ28、取外し可能なプランジャーキャップ30、及びロッキング部材40をさらに具える。図1に示されるように、主たる体積測定標識27が表示面23に施される。体積計測標識は、例えば流体単位を示すアラビア数字及びそれに関連する主たる計量標識を少なくとも含む。なお、図面に付された数字は例示のためのものであって、正確な縮尺で描かれておらず、副次的な単位であるマーク27のような幾つかの特徴について、略平らな表示面23に関する配置は、図示の位置から変えることができる。副次的な(個々の)単位標識又はマークの各々の少なくとも一部は、表示面23又は表示面23の縁部の近接位置で開始することが好ましく、任意選択的に、流体チャンバ75の湾曲した外壁25に少しだけ延在する。このような配置は、公知のパッド印刷技術の運用能力の範囲内であると認識され、現在では、当業者にとって容易に利用可能である。
【0017】
図1では、シリンジ20の前部アタッチメント24は、「使用前」の状態が示されている。圧力がテクスチャ状タッチパッド46又はバレル22の反対側の面に不注意で作用することがあるため、使用前は、前部アタッチメント24がバレル22に対して横方向に移動しないように、針カバー26とロッキング部材40が配置される。プランジャー(図示されていない)がバレル22から誤って引き抜かれないようにし、また、バレル22の後部開口内部又はプランジャーの後方に延びるハンドル部分(図9参照)の周囲が不注意で汚染されないようにするために、取外し可能なプランジャーキャップ30がフィンガーフランジ28の後方に配備されており、これについては後で説明する。
【0018】
図2図4-5及び図12を参照すると、シリンジ20のバレル22と前部アタッチメント24は、図1と同じ位置に示されており、針カバー26(ロッキング部材40を有する)が取り外されていることが図1とは異なる。針引込みキャビティ92の前部開口が示されており、針34は、前部アタッチメント24の針支持部材32から前方に突出している。周方向に間隔を有し、軸方向にテーパ状のリブ33が、針支持部材32の周りに配備される。リブ33は、取り外される前の針カバー26の内面と摩擦係合するための面を提供する。図2において、針34は、好ましくは、流体チャンバ75(図9)を通る長手方向軸線と同軸線上に配置される。
【0019】
図3を参照すると、シリンジ20の針キャップ26は、前向きでかつ内向きテーパ状の略円筒形の側壁をさらに含み、該側壁は、前端部36と、後向きの環状カラー38と、該環状カラー38から後方に突出するロッキング部材40とを有する。前方アタッチメント24は、前部開口42を有し前方に突出しする略管状の針支持部材32と、上部ガイド部材44と、下部ガイド部材45(図7を参照)と、横方向に突出するテクスチャ状タッチパッド46と、をさらに含む。
【0020】
シリンジ20は、好ましくは、前向きの斜め針先48を有する針34と、圧縮コイルばね50及び針ホルダー52を有する針引込み機構と、含む。針ホルダー52は、ばね50の後部に挿入可能な管状のボア58を有する細長いシャフト54を含む。針ホルダー52のヘッド56の直径は、ばね50の内径よりも十分に大きく、前部アタッチメント24がバレル22の前部分64とスライド可能に係合するとき、ばね50はヘッド56によって圧縮状態に保持されることができる。これについては、図6及び図7に関連して以下で説明する。針34の後端部は、針ホルダー52の管状ボア58内に挿入可能であり、接着剤等の市販されているあらゆる適当な手段により、細長いシャフト54の内部に固定された関係で取り付けられることができる。本明細書に開示される針引込み機構は、シリンジ20内での使用に十分なものであるが、同様の効果をもたらし、シリンジ20の内部で針34を後方に付勢するために有用であれば、他の同様な要素及び機構も、本発明の実施に使用できることは理解されるであろう。
【0021】
図3を再び参照すると、管状ボア62を有する環状ポリマー流体シール60は、好ましくは、バレル22の前部分64の凹部66内に挿入可能である。前部アタッチメント24内に配備された針引込み機構において、前部アタッチメント24がバレル22の前部分64とスライド可能に係合するとき、シール60の前向きの端部が針ホルダー52の後向きヘッド56と接した状態にある。製造に際して、シリンジ20の前部アタッチメント24がバレル22の前部分64に組み付けられると、連続的で略直線的な流体流路が、針34、針ホルダー52、及び環状流体シール60を通り、管状で長手方向に延びる流体チャンバ75の中へ形成される(図9参照)。
【0022】
バレル22は、前部分64の他に、略平らな表示面23、湾曲した外壁面25、フィンガーフランジ28、及び後方に突出する環状カラー70をさらに含む。シリンジ20の組立てに際しては、後向きのプランジャー親指パッド78の反対側にあって、プランジャーハンドル72の前端部で前方に突出するボス74に対して、エラストマー製プランジャーシール76を配備することが好ましく、次いで、プランジャーハンドル72が、環状カラー70によって画定された後向きの開口内に挿入される。シリンジ20の組立ては、略円筒形のプランジャーキャップ30をバレル22の後向きの端部に取り付けることによって完了する。プランジャーキャップ30は、開放された前端部80、円筒状のボア82、及び閉じた後端部84をさらに含む。プランジャーキャップ30は、プランジャー親指パッド78の周囲に取り付けられ、環状カラー70の外壁と摩擦係合している。図1に関連して説明した体積計測標識27は、略平らな表示面23及び湾曲した外側壁面25の外向きの部分にも見られる。
【0023】
図3図6及び図11は、バレル22の前部分64に関して、針引込みキャビティ92内の前向き開口をさらに示している。針引込みキャビティ92は、フィンガーフランジ28に隣接する閉じた後端部を有し、側壁90、95、底壁94、及び上壁によって境界が形成されており、上壁は、バレル22の上向きの略平らな表示面23を含む。
【0024】
前部アタッチメント24のシリンジ20のバレル22の前部分64への組み付けを、図6及び図7を参照してさらに説明する。図6を参照すると、まず最初に、環状流体シール60(図3を参照)が、バレル22の前部分64の凹部66内に挿入される。前部分64は、横向きに延びる上部レール68及び下部レール69をさらに含み、これらのレールは、バレル22の流体チャンバ75(図9)を通る長手方向軸に対して横向きに配置される。丸みのある取付けガイド96、98が、それぞれ、上部レール68及び下部レール69の前方に配置されており、前部アタッチメント24は、テクスチャ状タッチパッド46に繋がるアームの上下を前部アタッチメント24の背面まで通過させることにより、バレル22の前部分64への組付けが行われるよう構成されている。
【0025】
図7を参照すると、環状の開口112が前部アタッチメント24の背面に開設されている。開口112により、図3に関して記載したばね50及び針ホルダー52の挿入が可能となる。ばね50は、前部開口42内の環状肩部(図11を参照)の間で圧縮されるのが好ましく、前部アタッチメント24がバレル22の前部分64を摺動する間、針ホルダー52のヘッド56の背後で圧縮状態が保持される。前部アタッチメント24は、下向きで横方向に延びる凹部100を有する上部ガイド44と、上向きで横方向に延びる凹部102を有する下部ガイド45をさらに含む。前部アタッチメント24の上部傾斜面(upper ramp)104及び下部傾斜面(lower ramp)106は、それぞれ、ブロッキングショルダー(blocking shoulders)77、79を有し、横方向に間隔を存して対向する2つの傾斜面の上をスライドするように構成されている(図6では、下部傾斜面は見えない)。前部アタッチメント24及び前部分64が図6に示される位置にあるとき、前部アタッチメント24をバレル22の前部分64上にスライドさせることにより、バレル22の前部分64の横方向に延びる上部レール68及び下部レール69は、それぞれ、上部凹部100及び下部凹部102と協働して係合することが好ましい。テクスチャ状タッチ表面46に圧力が加えられると、前部アタッチメント24はレール68、69に沿って移動し、上部ガイド44の上部及び下部ブロッキングショルダー108が上部及び下部ブロッキングショルダー77の上を通り、その後、上部及び下部ブロッキングショルダー77と対向する。この時、針支持部材32と針ホルダー52(図6及び図7には示されていない)は、流体チャンバ75の長手方向軸線(図9参照)と同軸線上に位置することが好ましい。前部分64の上部及び下部ブロッキングショルダー77と、前部アタッチメント24の上部ブロッキングショルダー108及び下部ブロッキングショルダー110とが対向して接触しているから、前部アタッチメント24を、取り外された位置(図6)に戻そうとしても、戻らない。
【0026】
図4及び図5は、図2のシリンジについて、針カバーが取り外され、プランジャーキャップ30が所定の位置に維持され、テクスチャ状タッチ面46がバレル22に対して上述した初期位置にあるときの図である。針34は、前部アタッチメント24の針支持部材32内に着座する針ホルダー52のボア58内に配備され、ばね50は針ホルダー52のヘッド56(図3)間で圧縮された状態にある。針ホルダー52と針34は、ばね50によって後方向に付勢され、針34は、環状流体シール60の前面と対向して当接する。これによって、針34、針ホルダー52及び流体シール60を通り、略円筒形のバレル22の流体チャンバ75(図9参照)に至る流体通路が同一直線状に形成される。図4及び図5に示されるように、プランジャーシール76は、バレル22の略円筒形の流体チャンバ75の中に完全に押し込まれる。
【0027】
図8図9を参照すると、テクスチャタッチパッド46が再び前述の初期位置にある状態で、流体はシリンジ20の中に吸引される。流体チャンバ75に流体を吸引する間、プランジャーキャップ30(図2図4図5を参照)が取り外され、プランジャーハンドル72が後退している。図9では、針引込みキャビティ92は流体チャンバ75と略同じ長さである。これによって、体積計測標識27を略平らな表面23(図3参照)に配置することができるので、流体チャンバ75の容積をフル活用することができ、針34(図11の針引込みキャビティ92内で見られる)よりも実質的に長い生検針などの針の引込みも可能になる。流体が流体チャンバ75内に吸引されると、プランジャー親指パッド78を前方に押してフランジ28の前向きの面に対して指で圧力を加えることにより、流体を患者に注入するか、又は流体チャンバ75から流体を注出することもできる。
【0028】
図10図11及び図13を参照すると、流体チャンバ75を空にするために、プランジャーハンドル72とプランジャーシール76は前方に押されている。針の引込みを開始するために、テクスチャ状タッチパッド46に圧力が加えられ、これによって、前部アタッチメントが移動して、針支持部材32が針引込みキャビティ92と同一直線上に揃えられる。針引込みキャビティ92の前部開口は、再配置された針ホルダー52のヘッド56よりも大きいので、針ホルダー52は圧縮バネ52の付勢力によって後方に押され、針ホルダー52と針34は、針引込みキャビティ92の遠位側端部内に移動する。
【0029】
図6及び図7を再び参照すると、図10図11に関して説明したバレル22に対して、前部アタッチメント24のテクスチャ状タッチ面46へさらに力を加えると、前部アタッチメント24とバレル22の前部分64は相対的にスライド移動する。この移動によって、上部傾斜面104と下部傾斜面106が、第2の対向する傾斜面及びブロッキングショルダー79の上をスライドするので、上部ブロッキングショルダー108及び下部ブロッキングショルダー110が、上部及び下部ブロッキングショルダー79と対向して当接する。これによって、前部アタッチメント24がバレル22に対して使用位置に戻ることはない。
【0030】
当該分野の専門家であれば、本明細書を添付の図面と共に読むことにより、本明細書に開示された実施形態に対して他の様々な修正及び変更を成し得るであろう。本明細書に開示された発明の範囲は、発明者が法的に権利を有する添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ制限される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13