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特許7483626クロマトグラフ性能に関する空試験の分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】クロマトグラフ性能に関する空試験の分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01N30/86 V
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020555863
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019022858
(87)【国際公開番号】W WO2019203972
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】62/659,464
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】クルフカ,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ダイヒ,シュリダール
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ウィリアム
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518314(JP,A)
【文献】特開2007-139623(JP,A)
【文献】特表平08-500898(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037487(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00969283(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を出力するように動作可能な検出器を有するクロマトグラフシステムの性能を評価する方法であって、
空試験の1つ以上の許容基準を受信することと、
前記クロマトグラフシステムの実行可能性が分からないときに実行された空試験からの検出器信号を前記検出器から受信することと、
前記検出器信号の属性を抽出することと、
前記抽出された属性を、対応する空試験の許容基準と比較することと、
前記比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することと
を含み、
前記検出器信号の属性を抽出する前に、前記受信された信号を別個のベースライン信号と残余信号に分けることを更に含む方法。
【請求項2】
信号を出力するように動作可能な検出器を有するクロマトグラフシステムの性能を評価する方法であって、
空試験の1つ以上の許容基準を受信することと、
前記クロマトグラフシステムの実行可能性が分からないときに実行された空試験からの検出器信号を前記検出器から受信することと、
前記検出器信号の属性を抽出することと、
前記抽出された属性を、対応する空試験の許容基準と比較することと、
前記比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することと
を含み、
前記検出器信号の属性を抽出する前に、
メディアンフィルタを用いて1つ以上のピークを有する曲線を取得することと、
ピーク積分器を用いて前記曲線のピークの高さと、前記曲線のピーク面積の総和とを求めることと
を更に含む方法。
【請求項3】
抽出された属性及び空試験の判断を追跡して、メンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを前記判断が示す場合には、試験のシーケンス又は分析は、停止、破棄、又は一時停止される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記空試験は、非注入空試験又は溶媒空試験である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの抽出された属性は、前記検出器信号における関心領域に関するものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
信号を出力するように動作可能な検出器を有するクロマトグラフシステムの性能を評価する方法であって、
空試験の1つ以上の許容基準を受信することと、
前記クロマトグラフシステムの実行可能性が分からないときに実行された空試験からの検出器信号を前記検出器から受信することと、
前記検出器信号の属性を抽出することと、
前記抽出された属性を、対応する空試験の許容基準と比較することと、
前記比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することと
を含み、
前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを前記判断が示す場合には、試験のシーケンス又は分析は、停止、破棄、又は一時停止され、
前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを前記判断が示す場合には、解釈が提供される方法。
【請求項8】
属性は、以下のもの、すなわち、
初期ベースライン、最終ベースライン、ベースラインオフセット、初期ベースラインノイズ、最終ベースラインノイズ、総ピーク面積、総ピーク高さ、最大ピークの高さ、保持時間、ピーク面積、ピーク幅、又はピーク対称性のうちの1つである、請求項1、2、7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分離カラムと、
前記分離カラムに試料を導入するための注入ポートと、
前記分離カラムに結合され、検出器信号を出力するように動作可能である検出器と、
前記クロマトグラフシステムの実行可能性が分からないときに実行された空試験からの検出器信号を受信するように動作可能である空試験分析ユニット(BRAU)と
を備えるクロマトグラフシステムであって、前記BRAUは、
前記検出器信号の属性を抽出する属性抽出器と、
前記抽出された属性を対応する許容基準と比較することと、該比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することとを行う判断モジュールと
を備え、
前記BRAUは、前記検出器信号の属性を抽出する前に、前記受信された検出器信号を、別個のベースライン信号と残余信号に分けるデカプラを更に備えるクロマトグラフシステム。
【請求項10】
前記BRAUは、空試験の抽出された属性及び判断を追跡してメンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供する、抽出属性及び判断履歴ストレージを更に備える、請求項に記載のクロマトグラフシステム。
【請求項11】
前記許容基準は、ユーザに定義された許容基準を含む、請求項に記載のクロマトグラフシステム。
【請求項12】
前記クロマトグラフシステムが実行可能ではないことを前記判断が示す場合には、解釈を提供する報告器を更に備える、請求項に記載のクロマトグラフシステム。
【請求項13】
前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを前記判断が示す場合には、試験のシーケンス又は分析は、停止、破棄、又は一時停止される、請求項に記載のクロマトグラフシステム。
【請求項14】
前記空試験は、非注入空試験又は溶媒空試験である、請求項に記載のクロマトグラフシステム。
【請求項15】
クロマトグラフシステムの検出器から、空試験からの検出器信号を受信するように動作可能である空試験分析ユニット(BRAU)であって、
実行可能命令を記憶するメモリと、
属性抽出器と、
判断器と、
前記属性抽出器に前記検出器信号の属性を抽出させることと、前記判断器に、対応する許容基準と前記抽出された属性を比較させ、該比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供させることとを行わせる前記命令を実行するプロセッサと
を備え、
前記空試験は前記クロマトグラフシステムの実行可能性が分からないときに実行されるものであり、
前記プロセッサが前記属性抽出器に前記検出器信号の属性を抽出させる前に、前記受信された検出器信号を、別個のベースライン信号と残余信号に分けるデカプラを更に備えるBRAU。
【請求項16】
空試験の抽出された属性及び判断を追跡してメンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供する、抽出属性及び判断履歴のストレージを更に備える、請求項15に記載のBRAU。
【請求項17】
前記クロマトグラフシステムが実行可能ではないことを前記判断が示す場合には、解釈を提供する報告器を更に備える、請求項15に記載のBRAU。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、クロマトグラフィの分野における空試験(blank runs)及びシステム性能に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィは、1種以上の成分から構成される試料を分析して、試料成分(複数の場合もある)のアイデンティティ(identity)を定性的に特定するとともに、成分(複数の場合もある)の量を定量的に特定する一方法である。以降の論述はガスクロマトグラフィに焦点を当てているものの、その概念は、全ての分離技法に拡張可能である。
【0003】
典型的なガスクロマトグラフ(GC)は、試料が注入される注入ポート又は注入口、試料の様々な成分が具体的な成分の特性に関係付けられた速度で通過するカラム、カラムの温度を制御するオーブン又は他のタイプの加熱及び/又は冷却デバイス、及び各成分の溶出を観察する検出器を備える。キャリアガス、又は移動相は、試料を注入口からGCカラムを通して検出器に搬送する。カラムは、コーティングの示差親和性に基づいて試料成分を分離する固定相を含有する。GCカラムは、粒子を含有する固定相で充填することができ(充填カラム)、又は、固定相をコーティングされた小径の開口チューブを用いて作成することができる(キャピラリカラム)。液体試料は、オートサンプラ又は手動シリンジを介して注入口に注入することができる。試料導入の他の例は、ヘッドスペースサンプリング(headspace sampling)、熱的脱着(thermal desorption)、気体若しくは液体試料弁、又は固体試料導入デバイスを含むことができる。
【0004】
GC方法として知られているものは、特定の分析について、GCの動作に関連付けられたパラメータを指定する。パラメータのうちのいくつかは、流量、圧力、種々のGC構成要素の温度、注入パラメータ、及び他のパラメータを含む。シーケンスとは、順次に試験されることになる分析の集合を指し、各分析は、あるGC方法に従って試験される。クロマトグラフ分離の結果は、当該技術分野においてクロマトグラムとして一般に知られている検出器信号対時間のプロットとして表示される。単数又は複数種の試料成分がカラムから検出器に溶出すると、検出器信号は、その正常値から変化する。その単数又は複数種の成分がカラムから溶出し切って検出器を通過すると、検出器信号レベルは、その元の値に戻るか又はその値に非常に接近する。この結果として得られる歪みは、典型的には、鋭い釣鐘型曲線として形成され、ピークと称される。クロマトグラムは、典型的には、1つ以上のピークを含み、各ピークは、被分析試料の或る特定の成分に対応する。試料の注入と、特定の成分を表すピークの観測される最大値との間の時間は、その成分の保持時間(retention time)と呼ばれる。ピークの面積又は高さは、或る程度、試料内に存在するそれぞれの成分の量の特性であり、ピークを積分することによって計算することができる。
【0005】
クロマトグラムは、ピーク保持時間及び面積に加えて、豊富な情報を含む。クロマトグラフシステムの連続的な稼動は、クロマトグラムの或る特定のパラメータを検討することによって評価することができる。この評価の価値は長年知られており、典型的には、システム適合性、システム検証、又はシステム性能と称される。この概念は、1980年代~1990年代において医薬品開発に定式化されたが、他の分離科学応用においても既知であった。参考として、FDA医薬品評価研究センター(CDER:Center for Drug Evaluation and Research)は、非特許文献1の刊行物を公刊している。この文書では、システム適合性仕様及び試験が、セクションIV、サブセクションJにおいて記載されている。
【0006】
通常、システム適合性を決定するのに用いられる試料は、容易に検出可能な量の単数又は複数種の関心成分と、実際の試料内で観測することができる任意の追加干渉物とを含む。例えば、医薬品製剤分析において、試料は、追加成分と医薬品有効成分を含むことができる。これらの追加成分は、医薬品成分の近くで溶出する場合があり、これらの2つの成分の分解を監視する必要がある。サブセクションJは、GC方法の性能を評価する以下の基準を列挙している。
-容量係数(capacity factor)(システム無効時間に対する化合物の相対保持時間)、
-精度/注入再現可能性(有効な結果を生成するためのクロマトグラフシステムの一貫性)、
-相対保持(試料内の別の化合物の保持と比較される関心化合物の相対保持)、
-分解(2つのピークがいかに良好に分離されるかの測定値)、
-テーリング係数(Tailing Factor)(化合物ピークの歪みの測定値)、及び、
-理論段数(クロマトグラフシステムがいかに効率的に化合物遷移に対して動作するのかの測定値)。
【0007】
その初期の刊行物以降、クロマトグラフシステムの性能を評価するのに以下のパラメータ等の他のパラメータも用いられている。
-ピーク幅(効率性及びカラム/システム劣化の指標)、
-ピーク面積(検出器感度の指標))、
-ピーク応答係数(試料内の標準的な成分と比較される相対感度)、
-スキュー(三次のピークモーメント分析)、及び、
-尖度(四次のピークモーメント分析)。
【0008】
システム適合性を評価する1つのパラダイムは、レファレンス試料又は品質管理試料を試験し、結果として得られるクロマトグラムを評価することである。上記で列挙されたパラメータのうちの一部若しくは全て、又はFDA刊行物において列挙されていない更なる追加パラメータが決定され、後続の分析のためのレファレンス値として機能する。測定値の統計的精度を確立するとともに、システムが適切に動作しているか否かを判断する合格/不合格基準を判断するために複数の複製試験が行われる。特定の分析のために、ユーザによって許容基準が確立される。特定の例として、特定の化合物の保持時間は、5.00±0.01分であると決定される。後続のシステム適合性分析では、測定される保持時間が許容可能範囲に入らない場合、クロマトグラフシステムは、適合外であるとみなされ、性能を回復するためにメンテナンスが要求される場合がある。許容基準は、片側(one sided)(性能パラメータは、ユーザによって決定されるか又は調節されるクロマトグラフィ方法値よりも大きく又は小さくなければならない)、又は、管理記録(control charting)において典型的に見られるような両側(two sided)のいずれかとすることができる。例えば、ピーク面積又はピーク応答の再現可能性は、5つの複製分析の場合1% RSDよりも良好であるべきである等の、提案される基準がFDA刊行物において提供されている。
【0009】
機器性能を評価するためにレファレンス試料を用いるというこの概念は、多数の規範的に標準化されたクロマトグラフィ方法においても用いられている(例えば、US EPA 8270、半揮発性有機化合物のGC/MS分析)。このレファレンス試料は、分析のシーケンス中に分析されて、機器がその性能指数に依然として適合していることが検証される。機器がこの性能チェックに不合格した場合、ユーザは、シーケンスを停止し、機器を適合するように戻るように修理することが要求される。一例として、非特許文献2の場合、較正チェック試料は、以下の基準を満たさなければならない。
-応答係数:元の値の80%~120%
-内部標準応答:-50%~+100%
-内部標準保持時間:±30秒
-相対保持時間が許容可能範囲(±0.06)内にある
-検出器線形性応答:RSD≦15%
【0010】
前述の説明から、機器性能を示すために保持時間及び相対保持時間(及び拡張保持インデックス)を用いるという概念は、長年既知である。
【0011】
厳密に探求されていないクロマトグラフ分析の一態様は、システムが意図されたように動作しているか否かを評価するための空試験の使用である。クロマトグラファ(Chromatographers:クロマトグラフ実行者)は、典型的には、システムが「クリーン」であり、後続の試料において識別される成分が実際にその試料から由来し、前回の試料から由来していないことを確認するのに空試験(blank run)を行う。一方で、空試験は、以下で示されるように、システム性能又はシステム実行可能性を決定するためにも分析することができる。空試験は、レファレンス試料を用いて得られる情報とは異なる情報を提供する。
【0012】
機器性能を評価するために、2つのタイプの空試験が存在する。第1のタイプは、非注入空試験であり、カラム流量、圧力、オーブン温度、検出器データ収集、及び他のパラメータ等のGC方法パラメータが実行されるが、注入は行われない。単一のオーブン温度上昇を有する非注入空試験の一例示のプロファイルが図1に示されている。図1の非注入空試験において、ベースライン上でいくつかのアーティファクトが明確に現れている。まず、試料試験中の試料ピークの定量化に影響を与え得る測定可能ピーク101がベースライン上に現れている。これのための潜在的な原因は、以前の試験からの、注入口からカラムに溶出する化学化合物、又は注入口ライナ又はセプタムから「ブリーディング」して漏れる化学化合物である。次に、ベースラインは、オーブン温度が高まるにつれて上昇する。これは、温度上昇につれて固定相が徐々に破損し、カラムから出て、検出器によって検知されるために生じるカラムブリードとして知られている現象に起因する。この最終ベースライン102は、用いられるカラム温度に依存して、初期ベースライン103よりも実質的に高くなり得る。最後に、試験の最後においてベースラインノイズが増加する。これは、カラム経年劣化、及び検出器に継続的にブリーディングする劣化した固定相に起因する場合がある。
【0013】
空試験の第2のタイプでは、GC方法を実行する間、「クリーンな」溶媒(関心成分又は分析に干渉する成分を含まない溶媒)が注入される。これは、溶媒空試験と称される。溶媒のいくつかの例は、ジクロロメタン、アセトン、ヘキサン、アセトニトリル、及び酢酸エチルを含む。試料分析の場合、これらの溶媒は、一般的に、関心成分の前に溶出し、溶媒ピーク201と称される。溶媒が溶出した後に平坦なベースラインによって明確に示されるようにクロマトグラフが干渉物質を含まないことを検証することに加えて、このタイプの空試験は、オートサンプラ及び注入口も「クリーン」であり、適切に機能しており、検出器応答が安定していることを検証することができる。図2は、溶媒空試験からの結果として得られるクロマトグラムを示している。
【0014】
空試験の使用の極端な例が、乱用に関連した医薬品の分析において見られる。適用されるシーケンスは、溶媒空試験、第1の実際の試料試験、溶媒空試験、第2の実際の試料試験、及びその後の溶媒空試験からなる。これにより、システムが第1の実際の試料から第2の実際の試料へのキャリーオーバを有しないという正当な証明が与えられる。専門のクロマトグラファは、システムがクリーンであった(すなわち、キャリーオーバ、汚染、スプリアスベースライン擾乱を含まない)か否かのマニュアルの決定を行う。これは、何らかの干渉が観測されるか否かを確認するために空試験の結果をマニュアルで検査することによって行われる。一方で、このマニュアルの決定は、このプロセスが時間が掛かるものであることに加えて、試料が試験された後の後処理においてなされるので、限定される。問題が存在した場合、試料(複数の場合もある)は、再度調製され、再試験されなければならないことがある。加えて、データを点検する専門家は、典型的には、何らかの較正される化合物(この場合、乱用された医薬品)が観測されるか否かを判断するために積分結果をレビューする。実際のベースラインは評価されない。非特許文献3等のいくつかの文献では、これらの2つのタイプの空試験は、機器空試験とも称される場合がある。これは、試料調製空試験(例えば、方法ブランクや研究室制御ブランク)、及び分析プロトコル全体を検証するのに用いられる他の品質管理試料との混同を回避するためである。簡潔にするために、本明細書では、空試験という語は、非注入空試験又は溶媒空試験のいずれをも意味するように用いられる。レファレンス試料は、関心成分が、正確な保持時間において溶出し、十分に分離され、分析目標に適合するために必要な検出器応答を有することを検証するためのものである。EPAの較正及び品質管理のためのガイダンス文書である非特許文献3は、これらの要件をセクション9.3.3において詳細に記載している。空試験の使用は、セクション4.4において記載されている。このセクションは上昇するベースライン及びそれらが定量化において引き起こし得る誤差を記載しているものの、データを評価するための基準は与えられない。空試験の解釈は、セクション9.2.6.8~9.2.6.12において与えられている。同様に、検出器信号又はノイズに関する論述、及び機器実行可能性を評価するためにこれをいかに用いることができるかに関する論述は存在しない。
【0015】
別の使用事例は、クロマトグラファが、試料信号から、ベースラインノイズ又は汚染物質ピークへのシステム寄与を除去することを望む場合である。一例として、システム寄与は、ベースラインの上昇を引き起こす、検出器へのカラム固定相の「ブリーディング」からもたらされる検出器信号の増加を含むかもしれない。同様に、いくつかの成分が注入口ライナ、カラム接続継手、及び注入口を封止するのに用いられるセプタムから熱的に抽出されるかもしれない。これらも、検出器信号の上昇をもたらすことになる。この事例では、まず基準として非注入空試験が行われる。この空試験は、システムに応じた検出器ベースラインのみを示すべきである。模擬蒸留のような応用の場合、この空試験からの検出器信号は、実際の試料の全てのクロマトグラムから除去されて、より平坦なベースラインと、試料ピークの面積を決定するときの積分がより容易になる。これは、ガスクロマトグラフ又はデータ後処理において利用可能なカラム補償機能を利用することによって行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】CDER、「Reviewer Guidance -Validation of Chromatographic Methods」、1994年11月
【文献】US EPA Method 8270C、1996年発行
【文献】EPA Method 8000D
【発明の概要】
【0017】
本明細書において、信号を出力するように動作可能な検出器を有するクロマトグラフシステムの性能を評価する方法が説明される。この方法は、空試験の1つ以上の許容基準を受信することと、検出器から、空試験からの検出器信号を受信することと、検出器信号の属性を抽出することと、対応する空試験の許容基準と抽出された属性を比較することと、比較の結果に基づいてクロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することとを含む。
【0018】
また、本明細書において、分離カラムと、分離カラムに試料を導入するための注入ポートと、分離カラムに結合され、検出器信号を出力するように動作可能である検出器と、空試験からの検出器信号を受信するように動作可能である空試験分析ユニット(BRAU)とを備えるクロマトグラフシステムが説明される。BRAUは、検出器信号の属性を抽出する属性抽出器と、抽出された属性を対応する許容基準と比較することと、比較の結果に基づいてクロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することとを行う判断モジュールとを備える。
【0019】
また、本明細書において、クロマトグラフシステムの検出器から、空試験からの検出器信号を受信するように動作可能である空試験分析ユニット(BRAU)が説明される。BRAUは、実行可能命令を記憶するメモリと、属性抽出器と、判断器と、プロセッサであって、属性抽出器に検出器信号の属性を抽出させることと、判断器に、対応する許容基準と抽出された属性を比較させ、この比較の結果に基づいてクロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供させることとを行わせる命令を実行するプロセッサとを備える。
【0020】
本明細書において開示される或る特定の実施形態の利点は、データの正確性を確認するために空試験データを開き、目視で検査する必要性からユーザを開放することを含む。この骨の折れるプロセスは、クロマトグラフィ分析の完了を遅れさせるとともに、誤差及び検証問題を引き起こす傾向にある。
【0021】
他の利点は、クロマトグラフシステムが、空試験を評価するとともに、ユーザにより命令されるアクションを、ユーザの介入を要求することなく行うことを可能にすることを含む。例えば、1つ以上の属性について許容基準に不合格した空試験を有するシステムは、試料の分析シーケンスの試験を一時停止し、問題が正されることができるようになるまで待機することができる。シーケンスを継続しないようにすることによって、残りの試料は、非適合機器を用いて試験されないことになる。これにより、ユーザが試料を再試験する必要性、又は非適合状況下で既に注入された試料から置き換えるために新たな試料を調製する必要性が回避される。
【0022】
他の利点は、クロマトグラフシステムが、シーケンスを一時停止するとともに、シーケンスを再開する前にメンテナンスステップを実行することを可能にすることを含む。通常、カラムベークアウトは、システムを修理し、空試験が合格するのを許可する。この能力を用いると、これらのタスクは、完全に自動化することができる。
【0023】
他の利点は、システムが、空試験の結果を追跡することを可能にすることを含み、メンテナンスが必要になる前の試料分析の数の管理記録を提供することができる。
【0024】
他の利点は、空試験分析がシステムが実行可能ではないと判断する場合、システムが自動的にトラブルシューティングすることを可能にすることを含む。例えば、溶媒空試験では、溶媒ピーク保持時間は、評価されるべき基準のうちの1つである。保持時間が期待されるよりも長いがカラムヘッド圧力が正しい場合、これは、カラムが部分的に差し込まれており、メンテナンスを要求することを示す。
【0025】
本発明の更なる実施形態、特徴、及び利点、並びに本発明の種々の実施形態の構造及び動作が、添付図面を参照して以下で詳細に説明される。
【0026】
本明細書において用いられる場合、「システム適合性」、「システム検証」、「システム性能」、「システム実行可能性」は、典型的には保持時間、ピーク面積、及びクロマトグラフが有効な分析の動作が可能であるか否かを判断するための他のパラメータを用いる、クロマトグラフシステムのクロマトグラフィ性能の評価を意味する。「干渉物」は、単数又は複数種の関心成分の正確な分析を複雑化し得る試料成分を意味する。「レファレンス試料」又は「品質管理試料」は、システムクロマトグラフィ性能を評価するのに用いられる成分を含む試料を意味する。「許容基準」は、満たされる場合、クロマトグラフシステムが実行可能である属性についての1つ以上の範囲又は閾値を意味する。「非注入空試験」は、試料が機器に導入されないがGC方法状況が実行されるクロマトグラフィ分析を意味する。「ブリード」は、検出器信号レベルを上昇させるカラムからの追加の化学的溶出を意味する。ブリードは、複数の源から由来する可能性があり、通常、システム内の相対的に高い温度に起因して上昇する。「クリーンな溶媒」は、溶媒のみから構成される化学試料を意味する。「溶媒空試験」は、単数又は複数種のクリーンな溶媒が機器に導入されるクロマトグラフィ分析を意味する。「抽出された属性」は、所与の空試験についての属性の値を意味する。この値は、クロマトグラフシステムが実行可能であるか否かを判断するために許容基準と比較することができる。「検出器信号」は、何らかのフィルタリング又は抽出が適用される前の元の検出器出力である。「ベースライン信号」は、ノイズ及び他のピークを除去するための元の検出器信号データに対するフィルタを適用することからの結果として得られる信号データを意味する。「残余信号」は、ベースライン抽出が完了した後の残りの検出器信号を意味する。典型的には、これは、幅狭のピーク及び高周波数成分を含むことになる。
【0027】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす添付図面は、実施形態の1つ以上の例を示し、例示の実施形態の説明とともに、実施形態の原理及び実施態様を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】単一のオーブン温度上昇を有する非注入空試験のクロマトグラムである。
図2】溶媒空試験のクロマトグラムである。
図3】一実施形態による、空試験分析ユニット(BRAU)を備える一例示のガスクロマトグラフシステムの概略図である。
図4】1つの実施形態による、BRAUを更に詳細に示すブロック図である。
図5a】検出器信号の処理の一例を示している。図5aは、未加工検出器信号を示している。
図5b】検出器信号の処理の一例を示している。図5bは、切り分けられたベースライン成分と残余成分を示している。初期ベースライン、最終ベースライン、及び関心領域等の属性抽出器によって計算される結果が、図5bにおいて示されている。
図5c】検出器信号の処理の一例を示している。図5cは、切り分けられたベースライン成分と残余成分を示している。初期ベースライン、最終ベースライン、及び関心領域等の属性抽出器によって計算される結果が、図5cの双方において示されている。
図6a】一実施形態による、対応する不合格条件、及びそれらの不合格条件の解釈とともに、種々の関心属性を列挙している表である。
図6b】一実施形態による、対応する不合格条件、及びそれらの不合格条件の解釈とともに、種々の関心属性を列挙している表である。
図6c】一実施形態による、対応する不合格条件、及びそれらの不合格条件の解釈とともに、種々の関心属性を列挙している表である。
図7】一実施形態による一例示の使用事例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
例示の実施形態は、本明細書では、クロマトグラフ性能を評価するための空試験の分析の文脈で説明される。当業者であれば、以下の説明は、単に例示のものであり、いかようにも限定するように意図されないことを理解するであろう。本開示の利益を有する当業者には、他の実施形態が容易に念頭に浮かぶであろう。ここで、添付図面において示されるような例示の実施形態の実施態様に対して詳細に参照が行われる。同じ又は同様のアイテムを参照するために図面及び以下の説明全体を通して、可能な範囲で同じ参照指示子が用いられることになる。
【0030】
下記の実施形態の詳細な説明において、「1つの実施形態」、「一実施形態」、「一例示の実施形態」等と言うとき、これは、説明される実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができるが、あらゆる実施形態がその特定の特徴、構造、又は特性を必ずしも含んでいるとは限らない場合があることを示す。その上、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が一実施形態に関して説明されるとき、明示的に説明されているか否かを問わず、そのような特徴、構造、又は特性を他の実施形態に関して実施することが当業者の知識の範囲内にあることを述べておく。
【0031】
明確にするために、本明細書において説明される実施態様のルーチン的な(routine)特徴のうちの全てのものが図示及び説明されるわけではない。そのような任意の実際の実施態様の開発において、応用及び事業に関連した制約と適合すること等の開発者の固有目標を達成するために、実施態様に固有の多数の判断を行わなければならないこと、及び、これらの固有目標は、実施態様ごとに、また、開発者ごとに変動することが理解されよう。その上、そのような開発努力は、複雑かつ時間が掛かるものである可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとっては工学技術の通常の仕事であろうことが理解されよう。
【0032】
図3は、或る特定の実施形態による一例示のガスクロマトグラフシステム300の概略図である。注入ポート301が、被分析試料(図示せず)を受け取る。試料は、キャリアガス(図示せず)によって、圧力、温度及び流動の注意深く制御された条件の下で、分離カラム302を通して搬送され、検出器303に到達する。カラム302は、成分分離を達成する1つ又は多数のカラムからなることができる。オーブン304が、カラムを所望の温度まで加熱するために設けられる。図示されていないものの、他のタイプの加熱及び/又は冷却も想定される。検出器303は、試料の様々な検知されたパラメータに関する測定信号を生成し、これらの出力信号を分析のためにプロセッサ305に送達する。指定されていないものの、検出器303は、任意のGC適合検出器とすることができる。プロセッサ305は、限定はしないが、シングルコアプロセッサ若しくはマルチコアプロセッサ、又は他のタイプのロジック若しくはデータ処理回路部を含む1つ以上のマイクロプロセッサ又は処理ユニットとすることができる。或る特定の実施形態では、分析は、メモリ306に記憶された実行可能なコードに従って、プロセッサ305によって実行される。メモリ306は、揮発性(例えば、DRAM)若しくは不揮発性(例えば、フラッシュ)メモリ、又はこれらの組み合わせの形式とすることができる。ユーザインタフェース(UI)307により、オペレータが、プロセッサから情報を受信すること、及びプロセッサに情報及びパラメータを入力することが可能になる。そのような情報は、メモリ306を通じて記憶及びアクセスすることができる。例えば、UI307は、ディスプレイ、キーボード、タッチスクリーン、音声作動入力、触覚デバイス、及び/又は、制御入力及び/又は出力を提供する他の周辺機器を含むことができる。
【0033】
ガスクロマトグラフシステム300は、プロセッサ305及びメモリ306に結合されることが示されるとともに、一般に、空試験を用いてクロマトグラフシステムの性能又は実行可能性を評価するのに用いられる、空試験分析ユニット(BRAU)308も備える。BRAU308は、プロセッサ305とは別個の又はプロセッサ305と一体化された、1つ以上のハードウェア、ソフトウェア、若しくはファームウェアコンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせとすることができる。或る特定の実施形態では、BRAU308は、命令を実行する自身のプロセッサ(308a)と、命令及びデータを記憶する自身のメモリ(308b)とを備えることができ、データは、例えば、検出器303からのデータ及びユーザからのデータであり、例えば、以下で更に詳述される空試験の許容基準が含まれる。或る特定の実施形態では、BRAU308は、以下で更に詳細に論述されるように、メモリ306に記憶することができるコードを実行し、メモリ306内でファイル309として編成することができる出力結果を生成する。或る特定の実施形態では、BRAU308は、例えば自身のプロセッサ、メモリ、ユーザインタフェース、及び他のサポートコンポーネント(図示せず)を有する外部診断デバイス310(BRAU308’)の一部として、ガスクロマトグラフシステム300とは別個の、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの任意の組み合わせから構成された1つ以上のコンポーネントとすることができる。
【0034】
空試験分析ユニット(BRAU)400の動作を説明するブロック図が図4に示されている。図4における各ブロックは、本明細書において説明される機能を有するディスクリートハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアコンポーネントに対応することができる。代替的に、説明される機能は、図示されるブロックの任意の組み合わせ、又は明確にするために図示されていない追加ブロック若しくはサブブロックによって達成することができる。限定されることなく、一般に、BRAU400は、例えば、空試験が完了したときに検出することと、空試験からの検出器信号を抽出することと、空試験からの検出器信号を評価することと、信号の抽出された属性が許容基準内に入るか否かを判断することとによって、クロマトグラフシステムの性能又は実行可能性を評価する。或る特定の実施形態では、BRAU400は、システムを監視し、システムが利用可能になると空試験データを処理する。或る特定の実施形態では、BRAU400は、検出器信号をベースライン信号及び残余信号に切り分け、信号の切り分けられたペアの一方又は双方から属性の値のセットを計算し、これらの抽出された属性を許容基準と比較する。或る特定の実施形態では、BRAU400は、結果を、クロマトグラフシステムの実行可能性及びクロマトグラフシステムが正常に機能しているのか否かを示す合格(PASS)又は不合格(FAIL)とともに報告して戻す。
【0035】
空試験に関する情報が、BRAU400に提供される。この情報は、クロマトグラムを構築するのに用いられる検出器信号を含む。図4においてユーザ入力としてまとめて示されている、BRAU400に提供することができる追加情報は、GC方法、検出器信号の関心領域(複数の場合もある)、ユーザに定義された許容基準、及び行われる空試験のタイプを含む。この例の文脈では、「GC方法」は、その下で試験が行われる機器パラメータを指すことに留意されたい。関心領域(複数の場合もある)は、属性の評価を適用するための、ユーザが検出器信号の特定の部分(複数の場合もある)に関心がある時間範囲(複数の場合もある)を規定することができる。この関心領域(複数の場合もある)は、典型的には、関心成分が試料試験中に溶出することになる(なぜならば、これは、汚染に起因したノイズ及びピークが試料分析に関する大半の問題を引き起こすことになるため)時間範囲となる。或る特定の実施形態では、空試験のタイプは、非注入又は溶媒空試験とすることができる。クロマトグラファID、シーケンス及び試験名又は一意のID、試験の日時、並びに試験に対応する他の機器固有情報を含む追加情報を受信することができる。例えばUI307(図3)を介して、オペレータ入力を用いて、或る特定の実施形態では、空試験が非注入空試験であったのか又は溶媒空試験であったのかを含むこの情報の一部又は全てを提供することができる。加えて、オペレータ入力は、GCの動作を制御すること、並びに上述した情報を入力及び記憶することを可能とすることができる、診断デバイス310(図3)等の外部デバイスを通じて行うこともできる。
【0036】
或る特定の実施形態では、BRAU400は、この情報を受信し、任意選択的に検証すると、検出器からの出力信号の処理を開始する。図5aは、18分~23分の関心領域501が分析に基づいてユーザによって指定される(いくつかの実施形態では、これは、ユーザによってではなく、システムによって自動的に指定することができる)、汚染されたシステムからの非注入空試験からの検出器信号の一例を示している。一例示の実施態様では、検出器303からの出力信号は、フィルタ401及び次にデカプラ402に送達され、デカプラ402は、検出器信号をベースライン信号及び残余信号を含む2つの分離信号に分ける。図5b及び図5cは、それぞれ、図5aの検出器信号から抽出されたベースライン信号及び残余信号を示している。図5bは、属性抽出器によって処理されることになる初期ベースライン領域512及び最終ベースライン領域513も示している。或る特定の実施形態では、ベースライン信号がまず抽出され、その後、検出器信号から減算されて取り除かれ、残りの信号が残余信号を形成する。理想的な事例では、ベースライン信号は、カラムから溶出するキャリアガスによって引き起こされる検出器信号のみを含む。現実では、ベースラインは、長い期間にわたってカラムから溶出する何らかのものによって引き起こされる検出器信号のシフトを示すことになる。ベースラインに対する顕著な因子は、固定相カラムブリードである。大半のGCカラムは、固定相としてカラム内で固定した高分子量シリコーンポリマーを利用する。非常に高い温度において、少量の固定相が劣化し、長い期間にわたって溶出する可能性がある。これは、図5bにおけるクロマトグラフ試験の最後において示されるベースライン内の上昇をもたらす。残余信号は、ピーク又は増加した高周波数ノイズとして顕在化する、より迅速に溶出する材料に起因した、検出器応答における逸脱を含む。残余信号の例は、キャリアガス内の汚染物質、又は、カラムの注入口上に蓄積し、クロマトグラフ試験が行われるときに溶出する、注入口内の汚染物質である。これらの2つの信号の和は、元の検出器データになる。
【0037】
或る特定の実施形態では、ベースライン抽出は、例えば図4におけるフィルタ401において、非線形メディアンフィルタリングを用いることによって実行される。他のタイプのフィルタリングも同様に用いることができる。図5aの例では、図5bを生成するために、検出器信号は、40秒のウィンドウを用いてメディアンフィルタでフィルタリングされた。このフィルタは、比較的低い計算複雑度及び有益な特性に起因して選択された。メディアンフィルタは、データ内でスパイク又はピークとして顕在化する裾が大きい統計分布(heavily tailed statistical distributions)からのノイズの優れた抑制を提供する。これは、メディアンフィルタを、尖鋭なピークを無視しながらベースラインを抽出する良好な選択肢とする。また、メディアンフィルタは、温度上昇中の急峻な上昇を呈するとともに、その後最終温度に達すると一定を保つ、空試験において見られるようなデータ内のベースラインシフトを維持する。
【0038】
デカップリングにより、各個別のピークを識別する必要なくピークの和又は最大値を伴う、属性、又は抽出された属性に基づいた値の計算が可能になる。これにより、より迅速なアルゴリズム開発及びより低い計算複雑度が可能になる。デカップリングは、より容易なピーク同定、積分及びより複雑な属性の計算も可能にする。しかしながら、クロマトグラフピーク積分器を用いる手法は、実行可能な代替形態である。この代替的な手法では、元の検出器信号をクロマトグラフピーク積分器403によって処理して、ピーク保持時間及びピーク面積又は高さを求めることができる。クロマトグラフピーク積分器403からのピークは、その後、他の全てのピークからのピークと組み合わせて、属性抽出器404によって最大高さ又は総和属性を求めることができる。この代替ステップは、図4に示され、ピーク積分器403が、検出器信号を受信するとともにその出力を属性抽出器404に提供する。そのような手法は、任意のタイプのフィルタリングとともに、又はいずれのタイプのフィルタリングも伴わずに用いることができる。具体的な実施態様では、ピーク積分器は、メディアンフィルタを用いて、全てのピークを含む曲線を得る。或る特定の実施形態では、計算上の単純さのために、個々のピークは識別されず、別個に特徴付けされない。
【0039】
ベースライン抽出は、上記で説明されたメディアンフィルタに限定されず、他のフィルタリング又は平滑化技法を適用することができることに留意するべきである。これらの技法の選択は、設計者によって望まれる計算複雑度及び速度、抑制すべきノイズの特性、信号が広義の定常過程(wide-sense stationary process)に由来するのか否か、並びに活用することができる検出器信号(又はシステム)に関する他の事前情報(a priori information)が利用可能であるのか否かに依存する。フィルタリング技法は、一般に、リアルタイム処理を要求する応用の場合最良であるが、それらの応答において遅延又はラグを含み得る。平滑化等の他の手法は、一般に、より良好なノイズ抑制を有し、応答遅延を伴わずに容易に実施することができる。しかしながら、それらの手法は、リアルタイムにおいて実施することができず、後処理に限定される。ベースライン抽出の他の可能なフィルタ及び平滑化器が以下で論述される。
【0040】
有限及び無限のインパルス応答フィルタ及び平滑化器(FIR及びIIR)は、おそらく、最もよく知られており、実施が単純であり、計算的に高速であり、周波数の或る範囲にわたって正弦波状のノイズを抑制するのに良好に適合されている。これは、それらのフィルタ及び平滑化器を、高周波数(又は周波数固有)ベースラインノイズを抑制するのに適したものとする。分析化学の分野において広く用いられている1つの特定のFIRフィルタは、サビツキー-ゴーレイ(Savitzky-Golay)フィルタである。このフィルタは、信号のピークの形状及び高さを維持しながらこの信号から高周波数ノイズを低減するその能力で知られている。しかしながら、このフィルタは、信号内のピークを保つように設計されており、それらのピークをフィルタリング除去しないので、ベースライン信号を推定するのに良好に適合されていない。実際、FIRフィルタ全般は、ピークとして顕在化するノイズ、より正確には、広くかつ平坦なパワースペクトル密度を含むノイズを抑制することが可能ではない。上述したメディアンフィルタ等の順序統計フィルタが、これらのピーク形状の擾乱を抑制するのがより良好に可能であるが、一方、これらのフィルタは、クロマトグラフ試験において典型的に見られる高周波数ノイズ、周期的ノイズ、又はランダムホワイトノイズを抑制するためには準最適である場合がある。ノイズの特性が未知であるか、又は経時的に変化する(定常又は広義の定常ではない)である場合、アダプティブフィルタ及び平滑化器が有用である。このクラスのフィルタは、ノイズの数学的モデル又は統計的モデルを使用し、ノイズ特性を推定する最適化技法を利用し、経時的にノイズを最も良好に抑制するようにフィルタを適応させる。これらのアルゴリズムの適応的性質は、ノイズ特性が経時的に変化する場合有用であることが証明されているが、一方、これらのアルゴリズムは、一般に、設計するのが比較的困難であるとともに、かなりの処理パワーを要求する。平滑化又はフィルタ技法の任意の組み合わせを、ノイズを最も良好に抑制するのに用いることができる。
【0041】
図4に戻ると、切り分けられたベースライン信号と残余信号は、これらの信号の各々の属性を抽出するために、属性抽出器404に送達される。属性抽出器は、空試験の任意の定義された属性の値を計算する。これらの抽出された属性のうちのいくつかは、ベースライン信号、残余信号、元の検出器信号、又はこれらの信号の任意の組み合わせを用いて計算することができる。
【0042】
図5bには、属性初期ベースライン512、最終ベースライン513、及びベースライン信号を用いて図4の属性抽出器404によって計算することができる関心領域511の一例が示されている。これらの計算の目的は、検出器信号の開始及び最後並びにまた関心領域に対応する障害を検出することである。これらの障害は、機能不良の検出器、検出器がオフである場合、又はカラムが破損している場合を含む。初期ベースライン属性及び最終ベースライン属性、並びに検出器信号又はベースライン信号に関与する属性の他の例が、図6aにおける表において列挙及び定義されている。属性のこれらの例は、全体として又は一部、分析を行うためにクロマトグラフシステムの実行可能性の指示を与えることができる。
【0043】
同様に、属性抽出器404によって計算することができる残余信号の抽出された属性の図が図5cに示されている。初期ベースラインノイズ522の計算及び最終ベースラインノイズ523の計算は、それぞれ、残余信号の開始及び最後において行われる。これらは、データの統計的ばらつきを測定する任意の計算を含むことができる。標準偏差(又は複数の標準偏差)、四分位範囲、範囲若しくはピークツーピーク、又はASTMによって定義されるノイズ計算等の計算を用いることができる。最大ピークの高さ及び総ピーク面積計算は、ユーザによって定義された関心領域、例えば521ごとに行われる。領域ごとに、最大ピークの高さは、範囲内の最大データ点を取得することによって推定することができる。総ピーク面積は、各領域の数値積分によって発見することができ、それらの領域内の全てのピークの総面積の推定値が結果として得られる。残余信号内のランダムノイズは、数値積分に対してほとんど影響がないことに留意されたい。これは、ノイズがゼロ平均を有する(切り分け動作中に除去される)ので、積分がノイズを平均化して取り除くためである。これらの属性及び他の例は、図6bにおける表内で列挙及び定義されている。図5cにおける関心領域は、521と指定される。
【0044】
再び図4に戻ると、抽出された属性は、属性抽出器404から判断器405に送達される。判断器405には、抽出された属性が比較される対象である空試験の許容基準も送達される。ブロック406において決定される空試験の許容基準は、クロマトグラフシステムが実行可能であるとみなされるための、抽出された属性が収まらなければならない範囲、又は満たす必要がある閾値若しくは基準を定義する。ユーザは、事前定義されたデフォルトの空試験の許容基準をロードすることもできるし、例えばUI307(図3)を通じて、それらを手動で設定することもできる。1つの実施形態では、図4におけるデフォルト空試験の許容基準記憶ブロック407によって示されているように、ユーザは、システムに、GC方法の特性に基づいて事前定義されたデフォルトの空試験の許容基準をロードすることを促すことができる。例えば、特有の検出器タイプごとに異なる空試験の許容基準を定義することができる。空試験の許容基準は、評価が、GC方法における検出器タイプ、GCカラムタイプ、及び/又は機器条件を用いて大半のGC方法と良好に機能するように選択することができる。デフォルトの空試験の許容基準は、GC方法が通常に適合しない特別な事例ではユーザによって調整することができる。この事例では、デフォルトの空試験の許容基準は、ユーザが自身のニーズに合わせて調整するためのガイダンス又は良好な開始点として機能する。
【0045】
したがって、空試験の許容基準は、ブロック406から呼ばれ、属性抽出器404からの抽出された属性に適用され、それにより、抽出された属性が許容基準を満たすのか又は違反するのかと、或る特定の実施形態によれば、システムが空試験の分析に合格するのか又は不合格するのかとが判断される。或る特定の実施形態では、この比較の結果が出力され、クロマトグラフシステムが実行可能である(すなわち、正常に動作しており、使用に適している)のか否か、又は、修理、警告又は他の対策が必要であるのか否かの指示が提供される。修理、警告又は他の対策の必要性を示す結果の解釈を、報告器408によって提供し、UI307、自動送信電子メール、テキスト、若しくはボイスメール、又は他の通信手段を通じてユーザに出力することができる。
【0046】
或る特定の実施形態では、判断器405が、システムが空試験の分析に不合格(すなわち、クロマトグラフシステムが実行可能ではない)と判断した場合、システムは、そのシーケンスを継続するか、そのシーケンスを一時停止してユーザの介入を待機するか、シーケンスを破棄するか、又は空試験を再試験するかを選択することができる。この選択肢は、ユーザ入力に基づいて指定することができる。システムは、ユーザに、障害の考えられ得る単数又は複数の理由及び/又は不合格の条件を引き起こした問題を解決することができるものを提案することもできる。いくつかの実施形態では、システムは、許容基準に不合格した原因を自動的に修復することができる。例えば、システムは、オーブン温度を上昇させて、機器を洗浄することができる。システムは、潜在的な修復が実施された後に、抽出された属性が許容基準をこの時点で満たすことを確認するために、追加の空試験を試験することができる。
【0047】
或る特定の実施形態では、許容基準が或る属性について提供されない場合、BRAU400は、ユーザが空試験を分析するためにそれを使用することを望まないと仮定する。属性抽出器404は、自身の履歴、及び任意選択的に、ユーザによる後続の分析のためにいくつかの属性又は全ての属性を依然として計算することができる。しかしながら、これは、空試験を用いるクロマトグラフシステムの性能を評価する際にはその属性を考慮しない。加えて、ユーザが或る属性について関心領域(複数の場合もある)を提供しない場合、属性抽出器404は、クロマトグラフ試験時間全体を関心領域として用いてその属性を計算することができる。逆に、システムは、空試験データを単純に記憶し、ユーザが、後の時点で、同じ又は新たな許容基準を用いて空試験の分析のためにそのデータを再処理することを可能にすることができる。
【0048】
図6a、6b、及び6cにおける表は、例として、或る特定の実施形態による空試験に関する種々の属性を列挙している。また、属性の説明、これらの属性が評価される不合格の条件(満たされていない許容基準)(最大限度及び最小限度が例えば許容基準によって定義される)、及び、空試験の許容基準の不合格を引き起こした可能性があるものの解釈が列挙されている。「図6cにおける溶媒空試験属性」の下に列挙されているもの等の或る特定の属性のみを溶媒空試験に適用することができる。
【0049】
図6aにおける表から見て取ることができるように、一例として初期ベースライン属性を検討すると、初期状態におけるベースライン信号は、信号が許容基準を超えた場合にシステム汚染を示すことができ、又は、信号が許容基準未満である場合に検出器機能不良又は破損したカラムを示すことができる。いずれの場合でも、機器は、許容可能な分析を提供するほど十分に良好に機能していない。別の例として、図6bにおける総ピーク面積属性を検討すると、残余信号の総和されたピーク面積は、値が許容基準を超えた場合、注入口若しくはガスの汚染、前回の試験からのキャリーオーバ、又はカラムヘッド汚損を示すことができる。
【0050】
或る特定の実施形態では、例えば属性抽出器404からの抽出された属性及び判断器405からの判断を含む分析データの記憶及び集約を望む場合がある。抽出された属性及び判断履歴ストレージ409は、この機能を提供し、例えばメモリ306(図3)に抽出された属性及び判断が記憶される。同じ方法、又は方法及び溶媒タイプ、又は他の任意のグループ化に属する抽出された属性及び判断は、ファイル309(図3)においてまとめてグループ化して編成することができる。より一般的には、編成は、ファイル、フォルダ、ディレクトリ、若しくは他のグループ化、又は他の任意のデータ構造若しくはレコードの形式とすることができる。或る特定の実施形態では、BRAU400は、空試験に関するユーザ履歴情報を提供して機器の健全性を判断することを支援することができ、又は、ユーザがその健全性を分析及び推測することができるように情報を記憶することができる。これの1つの応用は、メンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供することを含むことができる。
【0051】
図7は、或る特定の実施形態による一例示の使用事例を示すフロー図である。701において、ユーザは、選択された許容基準を用いて方法を作成する。これは、UI307(図3)を通じて入力することができる。ユーザは、次に、702において、単一の分析又はシーケンスの一部として、作成された方法を試験し、試験は、空試験として、及び或る特定の実施形態では非注入又は溶媒空試験として識別される。試験中又は試験後、(703において、図3における検出器303から)信号データが収集され、空試験は、(704において)許容基準に基づいて評価される。次に、空試験が「合格」であるのか又は「不合格」であるのかに関する判断が行われる。判断が合格である場合、例えば、分析が完了し、次の試験を待機され、又は、機器が試験のシーケンス内の次のラインに進む。また、他のアクションが合格に引き続いて想定される。他方、判断が不合格である場合、ユーザは、通知を受けることができ、所定のアクションを実行することができる。例えば、機器は、「一時停止」し、ユーザの介入を待機することができる。機器の他の選択肢は、空試験を再試験するか、再試験のシーケンスを停止するか、シーケンスを破棄するか、カラムベークアウトを実行するか、又は次の試料のためにシーケンスを継続するかである。
【0052】
実施形態及び応用が図示及び説明されてきたが、本開示の利益を有する当業者であれば、本明細書において開示された発明の概念から逸脱することなく、上記で言及されたものよりも更に多くの変更が可能であることは明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨以外には制限されない。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
信号を出力するように動作可能な検出器を有するクロマトグラフシステムの性能を評価する方法であって、
空試験の1つ以上の許容基準を受信することと、
空試験からの検出器信号を前記検出器から受信することと、
前記検出器信号の属性を抽出することと、
前記抽出された属性を、対応する空試験の許容基準と比較することと、
前記比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することと
を含む、方法。
請求項2:
前記受信された信号を別個のベースライン信号と残余信号に分けることを更に含む、請求項1に記載の方法。
請求項3:
メディアンフィルタを用いて1つ以上のピークを有する曲線を取得することと、
ピーク積分器を用いて前記曲線の下の結果として得られる面積の総和を求めることと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
請求項4:
抽出された属性及び空試験の判断を追跡して、メンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
請求項5:
前記判断は、前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを示す場合、試験のシーケンス又は分析が停止、破棄、又は一時停止される、請求項1に記載の方法。
請求項6:
前記空試験は、非注入空試験又は溶媒空試験である、請求項1に記載の方法。
請求項7:
少なくとも1つの抽出された属性は、関心領域のためのものである、請求項1に記載の方法。
請求項8:
前記判断は、前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを示す場合、解釈が提供される、請求項5に記載の方法。
請求項9:
属性は、以下のもの、すなわち、
初期ベースライン、最終ベースライン、ベースラインオフセット、初期ベースラインノイズ、最終ベースラインノイズ、総ピーク面積、総ピーク高さ、最大ピークの高さ、保持時間、ピーク面積、ピーク幅、又はピーク対称性のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
請求項10:
分離カラムと、
前記分離カラムに試料を導入するための注入ポートと、
前記分離カラムに結合され、検出器信号を出力するように動作可能である検出器と、
空試験からの検出器信号を受信するように動作可能である空試験分析ユニット(BRAU)と
を備えるクロマトグラフシステムであって、前記BRAUは、
前記検出器信号の属性を抽出する属性抽出器と、
前記抽出された属性を対応する許容基準と比較することと、該比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供することとを行う判断モジュールと
を備える、クロマトグラフシステム。
請求項11:
前記BRAUは、前記受信された検出器信号を、別個のベースライン信号と残余信号に分けるデカプラを更に備える、請求項10に記載のクロマトグラフシステム。
請求項12:
前記BRAUは、空試験の抽出された属性及び判断を追跡してメンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供する、抽出属性及び判断履歴ストレージを更に備える、請求項10に記載のクロマトグラフシステム。
請求項13:
前記許容基準は、ユーザに定義された許容基準を含む、請求項10に記載のクロマトグラフシステム。
請求項14:
前記判断は、前記クロマトグラフシステムが実行可能ではないことを示す場合に、解釈を提供する報告器を更に備える、請求項10に記載のクロマトグラフシステム。
請求項15:
前記判断は、前記クロマトグラフシステムが実行可能でないことを示す場合、試験のシーケンス又は分析が停止、破棄、又は一時停止される、請求項10に記載のクロマトグラフシステム。
請求項16:
前記空試験は、非注入空試験又は溶媒空試験である、請求項10に記載のクロマトグラフシステム。
請求項17:
クロマトグラフシステムの検出器から、空試験からの検出器信号を受信するように動作可能である空試験分析ユニット(BRAU)であって、
実行可能命令を記憶するメモリと、
属性抽出器と、
判断器と、
前記属性抽出器に前記検出器信号の属性を抽出させることと、前記判断器に、対応する許容基準と前記抽出された属性を比較させ、該比較の結果に基づいて前記クロマトグラフシステムの実行可能性に関する判断を提供させることとを行わせる前記命令を実行するプロセッサと
を備える、BRAU。
請求項18:
前記受信された出力信号を、別個のベースライン信号と残余信号に分けるデカプラを更に備える、請求項17に記載のBRAU。
請求項19:
空試験の抽出された属性及び判断を追跡してメンテナンスが必要とされるまでの試験の数の管理記録を提供する、抽出属性及び判断履歴のストレージを更に備える、請求項17に記載のBRAU。
請求項20:
前記判断は、前記クロマトグラフシステムが実行可能ではないことを示す場合に、解釈を提供する報告器を更に備える、請求項17に記載のBRAU。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7