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特許7483629貫通された搬送材料を有するヒーター組立品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】貫通された搬送材料を有するヒーター組立品
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20240508BHJP
   A24F 40/44 20200101ALI20240508BHJP
   A24F 40/70 20200101ALI20240508BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/44
A24F40/70
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020562121
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019064114
(87)【国際公開番号】W WO2019229197
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】18175387.2
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェストリーニ パトリック チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトマー ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】ジノヴィク イハル ニコラエヴィチ
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102861694(CN,A)
【文献】特表2017-506509(JP,A)
【文献】国際公開第2016/198417(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3104182(JP,U)
【文献】国際公開第2017/093535(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136156(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システム用のヒーター組立品であって、
液体エアロゾル形成基体を気化するように構成された流体透過性発熱体と、
液体エアロゾル形成基体を前記流体透過性発熱体に搬送するよう構成された搬送材料であって、前記搬送材料の第一の表面と前記搬送材料の反対側の第二の表面との間に画定された厚さを有し、前記第一の表面が前記流体透過性発熱体と流体連通して配設されていて、また前記第二の表面が液体エアロゾル形成基体を受容するように配設されていて、
前記搬送材料の前記第二の表面には、液体エアロゾル形成基体のための形成された流体チャネルを画定するために、前記搬送材料の前記厚さの少なくとも一部に対応する深さまで前記搬送材料の中に延びる少なくとも一つの穴が提供されていて、
前記搬送材料が、細長い繊維を有する毛細管材料を含み、前記細長い繊維の平均的な方向が、前記第一の表面および第二の表面と実質的に平行な方向であり、
前記少なくとも一つの穴が、前記細長い繊維の前記平均的な方向と実質的に直角を成す方向に延びる、搬送材料と、を備える、ヒーター組立品。
【請求項2】
前記少なくとも一つの穴の前記深さが、前記搬送材料の前記厚さの半分より大きい、請求項1に記載のヒーター組立品。
【請求項3】
前記少なくとも一つの穴が前記第二の表面の中心に形成されている、請求項1または請求項2に記載のヒーター組立品。
【請求項4】
前記少なくとも一つの穴が、前記搬送材料の前記第二の表面にて、0.5mm~2.5mmの入口直径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項5】
前記少なくとも一つの穴が前記搬送材料の前記第一の表面に向かってテーパー付きである、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項6】
前記少なくとも一つの穴が前記搬送材料の厚さ全体を通って延びて、前記搬送材料内に貫通穴を提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項7】
前記少なくとも一つの穴が、前記搬送材料の前記第一の表面にて、0.2mm~0.4mmの出口直径を有する、請求項5または請求項6に記載のヒーター組立品。
【請求項8】
前記搬送材料の前記第一の表面が凸状である、請求項1~7のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項9】
前記搬送材料がディスクを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項10】
前記搬送材料には複数の穴が提供されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項11】
エアロゾル発生システム用のヒーター組立品の製造方法であって、
流体透過性発熱体を提供する工程と、
搬送材料を提供する工程であって、前記搬送材料が、前記搬送材料の第一の表面と前記搬送材料の反対側の第二の表面との間に画定された厚さを有し、前記搬送材料が、細長い繊維を有する毛細管材料を含み、かつ前記細長い繊維の平均的な方向が前記第一の表面および第二の表面と実質的に平行な方向である、提供する工程と、
前記搬送材料の前記第二の表面に、液体エアロゾル形成基体のための形成された流体チャネルを画定するために、少なくとも一つの穴を形成する工程であって、前記少なくとも一つの穴が、前記搬送材料の前記厚さの少なくとも一部に対応する深さまで前記搬送材料の中に延び、前記少なくとも一つの穴が、前記細長い繊維の前記平均的な方向と実質的に直角を成す方向に延びる、形成する工程と、
前記搬送材料の前記第一の表面を、前記流体透過性発熱体と流体連通するように配設する工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記搬送材料が、移動材料のセクションからポンチを用いてディスクを切断する工程によって提供されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポンチの切断端が、前記少なくとも一つの穴を形成するための円錐貫通部を備え、これによって前記少なくとも一つの穴を形成する前記工程が、搬送材料の前記ディスクを切断する前記工程中に実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記円錐貫通部が、その最も広い部分にて0.5~2.5mmの直径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エアロゾル発生システム用のカートリッジであって、
請求項1~10のいずれかに記載のヒーター組立品と、
液体エアロゾル形成基体を貯蔵するための液体貯蔵部分と、を備える、カートリッジ。
【請求項16】
エアロゾル発生システムであって、
主本体部と、
請求項15に記載のカートリッジと、を備え、
前記カートリッジが前記主本体部に取り外し可能に連結されている、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生システム用のヒーター組立品、およびエアロゾル発生システム用のヒーター組立品を製造する方法に関する。特に、本発明は、加熱によって液体エアロゾル形成基体を気化して、ユーザーによる吸入のためのエアロゾルを発生する手持ち式エアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池および制御電子機器を備える装置部分と、液体貯蔵部分の中に保持された液体エアロゾル形成基体の供給を備えるカートリッジ部分と、気化器として働く電気的に作動するヒーター組立品とから成る、手持ち式の電気的に作動するエアロゾル発生システムが周知である。液体貯蔵部分の中に保持されたエアロゾル形成基体の供給と気化器の両方を備えるカートリッジは、時に「カトマイザー」と呼ばれる。気化器は典型的に、液体エアロゾル形成基体に浸された細長い芯の周りに巻かれたヒーターワイヤのコイルを備える。エアロゾル形成基体に浸された毛細管材料は、液体を芯に供給する。カートリッジ部分は典型的に、液体エアロゾル形成基体の供給および電気的に作動するヒーター組立品だけでなく、マウスピースも備え、ユーザーはこのマウスピースを通してエアロゾルを口の中に引き出しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
「乾燥加熱」の状況、すなわち不十分な液体エアロゾル形成基体しか存在しない状態で流体透過性発熱体が加熱される状況を避けるために、最小限の量の液体エアロゾル形成基体が毛細管材料に存在することを確実にすることが一般的に望ましい。この状況はまた、「ドライ吸煙」として知られていて、また過熱、および潜在的に液体エアロゾル形成基体の熱分解をもたらす可能性があり、これはホルムアルデヒドなどの望ましくない副産物を生成する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願の第一の態様によると、エアロゾル発生システム用のヒーター組立品が提供されていて、ヒーター組立品は、液体エアロゾル形成基体を気化するように構成された流体透過性発熱体と、液体エアロゾル形成基体を流体透過性発熱体に搬送するように構成された搬送材料と、搬送材料の第一の表面と搬送材料の反対側の第二の表面との間に画定された厚さを有する搬送材料とを備え、第一の表面は流体透過性発熱体と流体連通して配設されていて、かつ第二の表面は液体エアロゾル形成基体を受容するように配設されていて、搬送材料の第二の表面には、液体エアロゾル形成基体用の形成された流体チャネルを画定するために、搬送材料の厚さの少なくとも一部に対応する深さまで搬送材料の中に延びる少なくとも一つの穴が提供されている。
【0005】
製造中、搬送材料は流体透過性発熱体と流体連通して定置されている。搬送材料は、ハウジングまたはヒーターマウント内に位置してもよく、これはカートリッジ部分の一部を成すことができ、また小さい細孔またはマイクロチャネルのネットワークを有する多孔性または流体透過性材料を典型的に含み、この小さい細孔またはマイクロチャネルのネットワークを通して液体エアロゾル形成基体が搬送される、または透過する。搬送材料の寸法は一般的に、ヒーターマウントと搬送材料の間に締まり嵌めを提供するために、ヒーターマウントの内部寸法よりわずかに大きく、これは搬送材料の縁の周りの漏れの可能性を低減するのに役立つ。結果として、挿入中に、搬送材料は、搬送材料の厚さ方向と直交するように、かつ搬送材料の中心に向かって圧縮されていて、これは搬送材料の細孔またはマイクロチャネルの閉鎖または少なくともある割合のサイズの減少を生じさせる場合がある。その結果として、搬送材料を通した液体エアロゾル形成基体の搬送は、中断または低減される場合があり、これは流体透過性発熱体にて不十分な液体エアロゾル形成基体しか存在しない状態およびドライ吸煙をもたらす場合がある。
【0006】
上述の本発明の第一の態様において、液体エアロゾル形成基体のための形成された流体チャネルを画定する搬送材料の中に少なくとも一つの穴が提供されている。少なくとも一つの穴は、ハウジングの中に挿入された時に搬送材料が圧縮された時でさえも、開いたままであり、これによって液体エアロゾル形成基体は穴に自由に入ることができる。少なくとも一つの穴は、材料の厚さの少なくとも一部に対応する深さまで搬送材料の中に延び、これによって搬送材料の厚さ、よって流体流れに対する抵抗は、穴の領域において低減される。これは、液体エアロゾル形成基体が流体透過性発熱体に到達するのを支援し、またドライ吸煙およびホルムアルデヒドの生成の可能性を低減する。出願人は、特許請求される配設が、搬送材料内に提供された穴を有しないヒーター組立品と比較して、ホルムアルデヒド生成の90%の低減をもたらすことができることを見いだした。
【0007】
本明細書で使用される「形成された流体チャネル」という用語は、搬送材料、すなわち少なくとも一つの穴の中に提供されていて、またその多孔性または流体透過性特性のおかげで搬送材料に属する細孔またはマイクロチャネルとは異なる流体チャネルを指す。言い換えれば、形成された流体チャネルは、搬送材料に固有の細孔またはマイクロチャネルとは異なる。さらに、形成された流体チャネルは、搬送材料の厚さ全体を通過する必要はない。形成された流体チャネルは、液体エアロゾル形成基体がチャネルに入ることができるように十分に延びる必要があるのみである。
【0008】
搬送材料は、流体透過性発熱体と接触していてもよい。これは、液体エアロゾル形成基体を搬送材料から発熱体に搬送するのに役立つ。別の方法として、搬送材料と流体透過性発熱体の間に介在層があってもよく、介在層は搬送材料と流体透過性発熱体の間の流体連通の提供を支援する。
【0009】
流体透過性発熱体は実質的に平坦であってもよく、また導電性フィラメントを備えてもよい。これは、毛細管芯の周りのヒーターワイヤコイルの巻線の必要性を回避する。導電性フィラメントは、単一の平面内に置かれてもよい。平面状の発熱体は、製造中に簡単に取り扱うことができ、かつ頑丈な構造を提供する。他の実施形態において、実質的に平坦な発熱体は一つ以上の寸法に沿って湾曲していてもよく、例えばドーム形状またはブリッジ形状を形成してもよい。
【0010】
導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定してもよく、隙間は10μm~100μmの幅を有してもよい。フィラメントは、隙間内に毛細管作用を生じさせる場合があり、これによって使用時に、気化される液体が隙間の中に引き出されて、発熱体と液体の間の接触面積を増大する。
【0011】
導電性フィラメントは160~600メッシュUS(±10%)(すなわち、1インチ当たりのフィラメント数が160~600本(±10%))のサイズのメッシュを形成してもよい。隙間の幅は75μm~25μmであることが好ましい。隙間の面積とメッシュの総面積の比であるメッシュの開口面積の割合は25~56%であることが好ましい。メッシュは、異なるタイプの織り構造または格子構造を使用して形成されてもよい。別の方法として、導電性フィラメントは、互いに平行に配設されたフィラメントのアレイから成る。
【0012】
導電性フィラメントは10μm~100μmの直径を有してもよく、8μm~50μmの直径を有することが好ましく、また8μm~39μmの直径を有することがより好ましい。フィラメントは丸い断面を有してもよく、または扁平な断面を有してもよい。ヒーターフィラメントは、シート材料(箔など)のエッチングによって形成されてもよい。これは、ヒーター組立品が平行のフィラメントのアレイを備える時に、特に有利である場合がある。ヒーター組立品がフィラメントのメッシュまたは織物を備える場合、フィラメントは個別に形成され、まとめて編まれてもよい。
【0013】
流体透過性発熱体の面積は小さくてもよく、例えば50平方ミリメートル以下であってもよく、25平方ミリメートル以下であることが好ましく、約15平方ミリメートルであることがより好ましい。サイズは、発熱体を手持ち式システムの中に組み込むように選ばれる。50平方ミリメートル以下の発熱体のサイズ設定は、発熱体を加熱するために必要とされる総電力量を減少させ、一方で発熱体の液体エアロゾル形成基体への十分な接触を依然として確実にする。発熱体は、例えば長方形であってもよく、また2ミリメートル~10ミリメートルの長さ、および2ミリメートル~10ミリメートルの幅を有してもよい。メッシュは、約5ミリメートル×3ミリメートルの寸法を有することが好ましい。
【0014】
発熱体のフィラメントは、適切な電気特性を有する任意の材料で形成されてもよい。適切な材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料と金属材料とで作製された複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。
【0015】
適切な合金の例としては、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル含有、コバルト含有、クロム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオビウム含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、および鉄含有合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄-アルミニウム系合金、鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporationの登録商標である。フィラメントは一つ以上の絶縁体で被覆されていてもよい。導電性フィラメント用の好ましい材料はステンレス鋼および黒鉛であり、AISI 304、316、304L、316Lなどの300シリーズのステンレス鋼であることがより好ましい。追加的に、導電性発熱体は上記の材料の組み合わせを含んでもよい。流体透過性発熱体の抵抗の制御を改善するために、材料の組み合わせが使用されてもよい。例えば、固有抵抗が高い材料を、固有抵抗が低い材料と組み合わせてもよい。これは、材料のうちの一つが他の観点、例えば価格、機械加工性、またはその他の物理的および化学的パラメータの観点から、より有益である場合に、有利である場合がある。有利なことに、増加した抵抗を有する実質的に平坦なフィラメント配設は、寄生損失を低減する。有利なことに、抵抗が高いヒーターは、電池エネルギーのより効率的な使用を可能にする。
【0016】
フィラメントはワイヤで作製されることが好ましい。ワイヤは金属で作製されることがより好ましく、ステンレス鋼で作製されることが最も好ましい。
【0017】
発熱体の導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、0.3オーム~4オームであってもよい。電気抵抗は0.5オーム以上であることが好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、0.6オーム~0.8オームであることがより好ましく、約0.68オームであることが最も好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、導電性接点区域の電気抵抗よりも少なくとも1桁大きいことが好ましく、また少なくとも2桁大きいことがより好ましい。これは、発熱体に電流を通過させることによって発生した熱が、導電性フィラメントのメッシュまたはアレイに局在化されることを確実にする。システムが電池によって電力供給される場合、発熱体に対する全体抵抗が低いことは有利である。低抵抗で大電流のシステムは、発熱体に高電力を送達することを可能にする。これは、発熱体が導電性フィラメントを望ましい温度に素早く加熱することを可能にする。
【0018】
少なくとも一つの穴の深さは、搬送材料の厚さの半分より大きくてもよい。これは、液体エアロゾル形成基体が、少なくとも一つの穴の領域内で搬送材料の厚さの半分未満しか通過する必要がないことを意味し、これは少なくとも一つの穴の領域内で流体透過性発熱体への液体エアロゾル形成基体の搬送を支援する。
【0019】
少なくとも一つの穴は、搬送材料の中央領域に形成されてもよい。少なくとも一つの穴は、搬送材料の第二の表面の中心または質量中心に形成されてもよいことが好ましい。搬送材料がハウジングの中に挿入されている時に、圧縮は搬送材料の中心に向かって最大になる傾向がある。従って、搬送材料の中央領域に少なくとも一つの穴を位置させることは、最も必要とされるところに、形成された流体チャネルを提供し、かつ搬送材料の中央領域の中で液体エアロゾル発生基体を搬送することを支援する。
【0020】
少なくとも一つの穴は、搬送材料の第二の表面にて0.5mm~2.5mmの入口直径、より具体的には0.8mm~2mmの入口直径、なおより具体的には1.3mmの入口直径を有してもよい。これらの穴サイズは、吸い出し、すなわち毛細管作用によって穴の中に引き出される液体エアロゾル形成基体を搬送するために適切であることが分かっている。さらに、このサイズの穴は、搬送材料がハウジングの中に挿入されている時に、開いたままであり、すなわち強制的に閉じられないことが分かっている。
【0021】
少なくとも一つの穴は、搬送材料の第一の表面に向かってテーパー付きであってもよい。収斂するチャネルの中に吸い出すことによる液体吸収は、円筒状のチャネルまたは分岐チャネルと比較してより速いことが分かっている。さらに、テーパー付きの穴の壁は必ずしも真っ直ぐである必要はなく、湾曲していてもよい。湾曲した壁、特に内向きに湾曲する壁(すなわち壁が凸状である)は、液体の表面張力が相互作用するチャネルの壁の表面積を増大するので、液体が吸収される速さをさらに増加させることが分かっている。湾曲の程度は、液体の特性、特にその表面張力に依存する。
【0022】
少なくとも一つの穴は、搬送材料の厚さ全体を通って延びて、搬送材料内に貫通穴を提供してもよい。この配設は、搬送材料全体を最初から最後まで通る、形成された流体チャネルを提供し、このチャネルを通って液体エアロゾル形成液体が搬送されうる。
【0023】
少なくとも一つの穴は、搬送材料の第一の表面にて0.2mm~0.4mmの出口直径、より具体的には0.28mm~0.32mmの出口直径、なおより具体的には0.3mmの出口直径を有してもよい。これらの出口の直径の範囲は、液体エアロゾル形成基体を流体透過性発熱体に搬送するために適切なサイズであることが分かっている。
【0024】
搬送材料の第一の表面は、凸状であってもよく、特に凸状のドームであってもよい。この形状は、第一の表面に追加されてもよく、または少なくとも一つの穴を有する搬送材料の製造の(例えば打ち抜き加工および貫通による)副産物であってもよい。上記で考察した通り、搬送材料の第一の表面は、流体透過性発熱体と流体連通して配設されていて、これによって凸状表面は発熱体に向かう向きにされる。発熱体は、一部の製造プロセスの結果として残留するたわんだ形状を有する場合があり、従って凸状の第一の表面は発熱体の形状に、より良好に適合する。これは、特に搬送材料が流体透過性発熱体と接触している配設において、発熱体への液体エアロゾル発生基体の搬送を改善する場合がある。
【0025】
搬送材料はディスクを備えてもよい。ディスクは、打ち抜き加工によって製造することが簡単であり、かつ管状ハウジングの中に適合するため、特に好都合な形状であることが分かっている。しかしながら、当然のことながら、搬送材料は、正方形、長方形、または楕円形、または別の湾曲した形状、または多角形形状、または不規則な形状など、その他の適切な形状で形成されることができる。搬送材料の厚さは、搬送材料の長さまたは幅または直径より小さくてもよい。搬送材料の長さまたは幅または直径と、搬送材料の厚さとのアスペクト比は、3:1より大きくてもよい。
【0026】
搬送材料は毛細管材料を含んでもよい。毛細管材料は、毛細管作用によって材料を通して液体を運ぶ材料である。搬送材料は線維状の構造または多孔性の構造を有してもよい。搬送材料は毛細管の束を含むことが好ましい。例えば、搬送材料は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含んでもよい。搬送材料は、搬送材料の厚さ方向と直交する、またはこれと垂直な方向に液体を主に搬送するように構成されてもよい。
【0027】
毛細管材料は、細長い繊維を含むことが好ましく、これによって毛細管作用が繊維間の小さい空間またはマイクロチャネルの中で生じる。細長い繊維の平均的な方向は、第一の表面および第二の表面と実質的に平行な方向であってもよく、また少なくとも一つの穴は、細長い繊維の平均的な方向と実質的に直角を成す方向に延びてもよい。細長い繊維のこの配設は、毛細管作用が主に第一の表面および第二の表面と実質的に平行に起こり、これによって液体エアロゾル形成基体が搬送材料および流体透過性発熱体にわたって広がることを意味する。その結果として、搬送材料の厚さを通した液体エアロゾル形成基体の移動は比較的低い。しかしながら、少なくとも一つの穴を、細長い繊維の平均的な方向と実質的に直角を成す方向に延びるように提供することは、形成された流体チャネルが少なくとも部分的に搬送材料の厚さを通して延び、かつ搬送材料の厚さを通して流体透過性発熱体に流体を運ぶのを支援することを意味する。
【0028】
搬送材料は、少なくとも摂氏160度以上(摂氏約250度など)の熱分解温度を有する耐熱材料を含んでもよい。搬送材料は、綿または処理された綿(例えばアセチル化綿)の繊維または糸を含んでもよい。その他の適切な材料、例えばセラミック系もしくは黒鉛系の繊維状材料、または繊維ガラス、セルロースアセテート、もしくは任意の適切な耐熱性のポリマーなどの紡糸繊維、延伸繊維、または押出成形繊維から作製された材料も使用することが可能である。搬送材料の繊維は各々、10μm~40μmの厚さ、より具体的には15μm~30μmの厚さを有してもよい。搬送材料は異なる液体物理特性で使用されるように、任意の適切な毛細管および空隙率を有してもよい。液体エアロゾル形成基体は粘性、表面張力、密度、熱伝導率、沸点および蒸気圧を含むがこれに限定されない物理的特性を有し、これら特性は液体エアロゾル形成基体が毛細管作用によって搬送材料を通して移動するのを可能にする。
【0029】
搬送材料には、複数の穴が提供されてもよい。二つ以上の穴を提供することによって、搬送材料の厚さを通した液体エアロゾル発生基体の移動を増大させる場合がある追加的な形成された流体チャネルが作り出される。複数の穴は、第二の表面に形成されてもよく、また第二の表面から搬送材料の中に延びてもよい。別の方法として、第一の穴は、第二の表面に形成されてもよく、また第二の表面から搬送材料の中に延びてもよく、および第二の穴は、第一の表面に形成されてもよく、また第一の表面から搬送材料の中に延びてもよい。第一の穴および第二の穴は、搬送材料の中に貫通穴を作り出すように接続されていてもよい。別の方法として、第一の穴および第二の穴は、穴が接続されていないように、第一の表面および第二の表面と平行な方向で離隔していてもよい。しかしながら、流体は毛細管作用によって第一の穴と第二の穴の間を通ることができてもよい。
【0030】
ヒーター組立品は、搬送材料および流体透過性発熱体を据え付けるために、ヒーターマウントをさらに備えてもよい。加えて、ヒーター組立品は、液体エアロゾル発生基体を保持するために、かつ搬送材料に運ぶために保持材料をさらに備えてもよい。保持材料はまた、複数の小さい穴またはマイクロチャネルを形成する繊維状または多孔性の構造を有する毛細管材料も備えてもよく、この複数の小さい穴またはマイクロチャネルを通して液体エアロゾル形成基体を毛細管作用によって搬送することができる。保持材料は、毛細管の束、例えば複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含んでもよい。繊維または糸は、液体エアロゾル形成基体を搬送材料に向かって運ぶために概して整列していてもよい。別の方法として、保持材料は、海綿体様または発泡体様の材料を含んでもよい。保持材料は、任意の適切な材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例は、海綿体材料もしくは発泡体材料、繊維もしくは焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属材料もしくはプラスチック材料、繊維状材料、例えば紡糸繊維または押出成形繊維(セルロースアセテート、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンもしくはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)で作製された繊維状材料である。保持材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエチレンテレフタラート(PET)を含んでもよい。保持材料は、搬送材料と比較して優れた吸い出し性能を有してもよく、これによって保持材料は搬送材料よりも単位体積当たりの液体を多く保持する。さらに、搬送材料は、保持材料より高い熱分解温度を有してもよい。
【0031】
本発明の第二の態様によると、エアロゾル発生システム用のヒーター組立品の製造方法が提供されていて、方法は、流体透過性発熱体を提供することと、搬送材料を提供することであって、搬送材料が搬送材料の第一の表面と搬送材料の反対側の第二の表面との間に画定された厚さを有する、提供することと、少なくとも一つの穴を搬送材料の第二の表面に形成することであって、少なくとも一つの穴が搬送材料の厚さの少なくとも一部に対応する深さまで搬送材料の中に延びる、形成することと、搬送材料の第一の表面を流体透過性発熱体と流体連通して配設することとを含む。
【0032】
搬送材料は、搬送材料の切片からポンチを用いてディスクを切断することによって提供されてもよい。打ち抜き加工は、それ自体が大量製造技法に役立つ適切な製造プロセスである。さらに、打ち抜き加工動作は、搬送材料の第一の表面に凸状の形状を付与するのに役立つ場合がある。
【0033】
ポンチの切断端は、少なくとも一つの穴を形成するための円錐貫通部を備えてもよい。円錐貫通部は、穴を形成するための適切なツールであることに加えて、円錐形状が穴にテーパー付きの形状を付与するために役立つ場合があることが分かっている。しかしながら、当業者であれば、必要とされる穴の形状に応じて他の形状の貫通部を使用することが可能であることを理解するであろう。その上、穴を形成するために他の技法、例えば成形、ドリル加工、打ち抜き加工、およびレーザードリル加工などを使用することができる。ポンチおよび貫通部を組み合わせることによって、少なくとも一つの穴を形成する工程は、搬送材料のディスクを切断する工程中に実行することができ、これは製造効率を改善する。
【0034】
円錐貫通部は、その最も広い部分にて0.5~2.5mmの直径、より具体的には0.8~2mmの直径、そしてなおより具体的には1.3mmの直径を有してもよい。この寸法の範囲は、少なくとも一つの穴を形成するために適切な直径であることが分かっている。
【0035】
本発明の第三の態様によると、エアロゾル発生システム用のカートリッジが提供されていて、カートリッジは、上述の第一の態様のヒーター組立品と、液体エアロゾル形成基体を貯蔵するための液体貯蔵区画または部分とを備える。
【0036】
カートリッジは、ヒーター組立品の構成要素および液体エアロゾル発生基体を保持するためのキャップまたは保持部をさらに備えてもよい。
【0037】
本発明の第四の態様によると、主本体部と、上述の第三の態様のカートリッジとを備えるエアロゾル発生システムが提供されていて、カートリッジは主本体部に取り外し可能に連結されている。
【0038】
一態様に関して説明された特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
【0039】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
図2図2は、本発明によるカートリッジ(マウスピースを含む)の第一の断面の概略図である。
図3図3は、図2のヒーターマウントを図示する。
図4図4は、搬送材料の内部構造の区域の拡大図を示す、図2および図3の搬送材料の断面図である。
図5図5は、本発明の様々な実施形態による搬送材料の断面図である。
図6図6は、本発明の様々な実施形態による搬送材料の断面図である。
図7図7は、本発明の様々な実施形態による搬送材料の断面図である。
図8図8は、本発明の様々な実施形態による搬送材料の断面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態による搬送材料を製造するために使用されるポンチ工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。システムは、二つの主構成要素、カートリッジ100、および主本体部200を備える。カートリッジ100の接続端115は、主本体部200の対応する接続端205に取り外し可能に接続されている。主本体部200は、電池210(この例では再充電可能リチウムイオン電池である)と、制御回路220とを包含する。エアロゾル発生システムは携帯型であり、また従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有する。マウスピースは、接続端115とは反対側のカートリッジ100の端に配設されている。
【0042】
カートリッジ100は、ヒーター組立品120と、第一の部分130および第二の部分135を有する液体貯蔵区画とを包含するハウジング105を備える。液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵区画の中に保持されている。図1には図示していないが、液体貯蔵区画の第一の部分130は、第一の部分130の中の液体が第二の部分135に移動することができるように、液体貯蔵区画の第二の部分135に接続されている。ヒーター組立品120は、液体貯蔵区画の第二の部分135から液体を受容する。この実施形態において、ヒーター組立品120は流体透過性発熱体を備える。
【0043】
気流通路140、145は、ハウジング105の側面に形成された空気吸込み口150からヒーター組立品120を通り過ぎ、そしてヒーター組立品120から、接続端115とは反対のカートリッジ100の端にてハウジング105の中に形成されたマウスピース開口110に、カートリッジ100を通って延びる。
【0044】
カートリッジ100の構成要素は、液体貯蔵区画の第一の部分130がヒーター組立品120とマウスピース開口110の間にあるように配設されていて、また液体貯蔵区画の第二の部分135は、マウスピース開口110とは反対の、ヒーター組立品100の側に位置付けられている。言い換えれば、ヒーター組立品120は、液体貯蔵区画の二つの部分130、135の間に置かれ、液体を第二の部分135から受容する。液体貯蔵区画の第一の部分130は、液体貯蔵区画の第二の部分135よりもマウスピース開口110に近い。気流通路140、145はヒーター組立品110を通り過ぎ、また液体貯蔵区画の第一の部分130と第二の部分135の間に延びる。
【0045】
システムは、ユーザーがカートリッジのマウスピース開口110を吸煙するかまたはそれを吸って、エアロゾルを自分の口の中に引き出すことができるように構成されている。動作時、ユーザーがマウスピース開口110を吸煙する時に、空気は空気吸込み口150から気流通路140、145を通して、ヒーター組立品120を通り過ぎて、マウスピース開口110に引き出される。制御回路220は、システムが起動された時に、電池210からカートリッジ100への電力の供給を制御する。これは結果として、ヒーター組立品120によって生成されるベイパーの量および特性を制御する。制御回路220は気流センサー(図示せず)を含んでもよく、また制御回路220は、ユーザーによるカートリッジ100の吸煙が気流センサーによって検出された時に、ヒーター組立品120に電力を供給してもよい。このタイプの制御配設は、吸入器およびeシガレットなどのエアロゾル発生システムで良好に確立される。そのため、ユーザーがカートリッジ100のマウスピース開口110を吸煙する時に、ヒーター組立品120が起動されて、気流通路140を通過する気流中に同伴されるベイパーを発生する。ペイパーは通路145の中の気流内で冷めてエアロゾルを形成し、次いでこれはマウスピース開口110を通してユーザーの口の中に引き出される。
【0046】
動作時、マウスピース開口110は典型的に、システムの最高点である。カートリッジ100の構造、および特に液体貯蔵区画の第一の部分130と第二の部分135の間のヒーター組立品120の配設は、液体貯蔵区画が空になり始めていてさえも重力を活用して液体基体がヒーター組立品120に送達されることを確実にし、それでも気流通路140の中への液体の漏れにつながる場合があるヒーター組立品120への液体の過剰供給を防止するので、有利である。
【0047】
図2は、本発明の実施形態によるカートリッジ100の概略断面である。カートリッジ100は、マウスピース開口110を有するマウスピースを有する外部ハウジング105と、マウスピースとは反対側の接続端115とを備える。ハウジング105内には液体エアロゾル形成基体131を保持する液体貯蔵区画がある。液体貯蔵区画は、第一の部分130および第二の部分135を有し、また液体は、三つのさらなる構成要素、すなわち上方貯蔵区画ハウジング137、ヒーターマウント134、および端部キャップ138によって、液体貯蔵区画の中に包含されている。流体透過性発熱体122および搬送材料124を備えるヒーター組立品120は、ヒーターマウント134の中に保持されている。保持材料136は、液体貯蔵区画の第二の部分135の中に提供されていて、かつヒーター組立品120の搬送材料124に当接する。保持材料136は、液体をヒーター組立品120の搬送材料124に搬送するように配設されている。
【0048】
液体貯蔵区画の第一の部分130は、貯蔵区画の第二の部分135より大きく、かつヒーター組立品120とカートリッジ100のマウスピース開口110との間の空間を占める。貯蔵区画の第一の部分130の中の液体は、ヒーター組立品120の両側の液体チャネル133を通して液体貯蔵区画の第二の部分135に移動することができる。この実施例では二つのチャネルが提供されていて、対称的な構造を提供するが、一つのチャネルのみが必要である。チャネルは、上方貯蔵区画ハウジング137とヒーターマウント134の間に画定された囲まれた液体流路である。
【0049】
流体透過性発熱体122は概して平面状であり、かつ液体貯蔵区画の第一の部分130およびマウスピース開口110に面するヒーター組立品120の側の上に配設されている。搬送材料124は、流体透過性発熱体122と保持材料136の間に配設されている。搬送材料124の第一の表面は、流体透過性発熱体122と接触し、また搬送材料の第二の表面は、保持材料136および貯蔵区画の中の液体131と接触する。搬送材料124の第二の表面は、カートリッジ100の接続端115に面する。ヒーター組立品120は接続端115により近くにあり、これによって電源へのヒーター組立品120の電気的接続を、簡単かつ頑丈に達成することができる。
【0050】
気流通路140は、貯蔵区画の第一の部分と第二の部分の間に延びる。気流通路140の底部壁は、流体透過性発熱体122を備える。気流通路140の側壁はヒーターマウント134の部分を備え、また気流通路の上部壁は上方貯蔵区画ハウジング137の表面を備える。気流通路は、液体貯蔵区画の第一の部分130を通して、マウスピース開口110に向かって延びる垂直部分(図示せず)を有する。
【0051】
当然のことながら、図2の配設は、エアロゾル発生システム用のカートリッジの単なる一例である。その他の配設も可能である。例えば、液体貯蔵区画をもう一方の端に配設して、流体透過性発熱体、搬送材料、および保持材料を、カートリッジハウジングの一方の端に配設することが可能である。
【0052】
図3は、図2のヒーターマウント134の断面図であり、その特徴をより詳細に示す。搬送材料124および保持材料136の一部は、ヒーターマウント134の中に形成された管状陥凹部132内に位置する。流体透過性発熱体122は、管状陥凹部132を横切って延びる。搬送材料124の第一の表面124aは、液体エアロゾル発生基体用の搬送材料124と発熱体122の間の流体連通を提供するように、流体透過性発熱体122の下側と接触する。保持材料136の第一の部分は、管状陥凹部132内に位置し、かつ搬送材料124の第二の表面124bに当接し、これによって搬送材料124は保持材料136から液体エアロゾル発生基体を受容することができる。保持材料136の第二の部分は、管状陥凹部132の外側に延び、かつ液体チャネル133と流体連通していて、これによって保持材料136の第二の部分は液体チャネル133から液体エアロゾル発生液体を受容することができる。保持材料136の第二の部分は、ヒーターマウント134の下方端を密封する端部キャップ138に当接する。ヒーターマウント134は射出成形され、かつポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはLCP(液晶ポリマー)などのエンジニアリングポリマーで形成されている。
【0053】
流体透過性発熱体122は、複数のフィラメントから形成された平面状のメッシュヒーター要素を備える。このタイプのヒーター要素構造の詳細は、公開PCT特許出願番号第WO2015/117702号において見いだすことができる。発熱体は、管状陥凹部132の外側に、図2の平面の中および外への方向に延び、これによって発熱体の対向する両端はヒーターマウント134の外側に位置する。発熱体122に電力を供給するために、接点パッドが、発熱体122の対向する両端の各々に提供されている。
【0054】
搬送材料124と保持材料136の両方は、液体エアロゾル形成基体を保持し、かつ運ぶ毛細管材料から形成されている。上述の通り、搬送材料124は、発熱体122と直接接触し、かつ保持材料136より高い熱分解温度(少なくとも摂氏160度以上、摂氏約250度など)を有する。搬送材料124は、発熱体122を保持材料136から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たし、これによって保持材料136はその熱分解温度を上回る温度に曝露されない。搬送材料124を横切る熱勾配は、保持材料136がその熱分解温度を下回る温度に曝露されるのみであるような熱勾配である。保持材料136は、搬送材料124より優れた吸い出し性能を有するように選ばれてもよく、これによって搬送材料124よりも単位体積当たりの液体を多く保持する。この例において搬送材料124は、綿または処理された綿を含有する材料などの耐熱材料であり、また保持材料136は、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリマーである。
【0055】
搬送材料124は、約5.8mmの直径および約2.5mmの厚さを有するディスクとして形成されている。この直径は管状陥凹部132の内径よりわずかに大きく、これによって搬送材料124が管状陥凹部132の中に挿入されている時に、搬送材料124はディスクの中心に向かって半径方向内向きに圧縮される。これは、搬送材料124の外側の周りの液体エアロゾル発生基体の漏れを抑止するために、ディスクの外周と管状陥凹部132の内周との間の密封を提供するために行われる。しかしながら、ディスクを圧縮することは、搬送材料124が作製される毛細管材料のマイクロチャネルを圧縮する。これは、搬送材料124を通した液体エアロゾル形成基体の搬送を阻害することができるので、問題となる可能性がある。
【0056】
この問題を軽減しようとするために、搬送材料124の第二の表面124bには、搬送材料124の厚さ全体を通って、すなわち第二の表面124bから第一の表面124aに延びる穴126が提供されている。穴126は、圧縮が最大である搬送材料124の中心に提供されていて、また液体エアロゾル発生基体用の形成された流体チャネルを画定する。これは、圧縮が最大である搬送材料124の中央領域を液体が通過するのを支援する。穴は搬送材料124の第一の表面124aに向かってテーパー付きであり、搬送材料124および液体エアロゾル発生基体の特徴に応じて様々な異なるサイズを有することができる。この実施例において、穴126は、管状陥凹部132の中に圧縮される前に、第二の表面124bにて1.3mmの入口直径と、第一の表面124aにて0.3mmの出口直径を有する。穴126は、下記に説明する円錐形の貫通ツールを用いて搬送材料124を貫通することによって提供されている。
【0057】
図4は、図2および図3の搬送材料124の断面図を示す。搬送材料124の断面積は100倍に拡大されていて、その内部構造を示す。搬送材料124は、搬送材料124の第一の表面124aおよび第二の表面124bと実質的に平行に整列されている細長い繊維で形成されている。液体は、搬送材料124を通して、細長い繊維124cの間の小さい空間またはマイクロチャネルの中で毛細管作用によって運ばれる。一部の液体は搬送材料124の厚さを通して搬送されるが、液体搬送の主たる方向は、繊維に沿っている、すなわち搬送材料124の第一の表面124aおよび第二の表面124bと実質的に平行である。この配設は、気流通路の中に堆積されている液体エアロゾル形成基体の漏れと滴りをもたらす場合がある、過多な液体が流体透過性発熱体に搬送されることを防止する。さらに、発熱体の均一な湿潤を支援するために、液体エアロゾル形成基体を流体透過性発熱体の面積にわたって広げるのに役立つ。しかしながら、上述の搬送材料124の圧縮に起因して、搬送材料124の中心にあるマイクロチャネルは締め付けられる可能性があり、これは、搬送材料124を通る、すなわち保持材料から流体透過性発熱体への液体エアロゾル発生基体の搬送を阻害する。穴126は、ドライ吸煙の状況を回避するために十分な液体エアロゾル発生基体が流体透過性発熱体に到達することを可能にするために、搬送材料の中央領域に、形成された流体チャネルを提供することによって、この問題の克服しようとする。穴126は、細長い繊維124cの平均的な方向と実質的に直角を成す方向に延びる。
【0058】
図5は、本発明の別の実施形態による搬送材料224を示す。搬送材料224は、凸状の第一の表面224a、特に凸状のドーム形状を有することを除き、図4に示すものと類似している。この形状は、搬送材料224を製造するために使用される打ち抜き加工および貫通プロセスからもたらされる場合があり、このプロセスは第二の表面224bに適用され、また打ち抜き加工力および貫通力の加力に起因して第一の表面224aを外向きに撓ませる傾向がある。別の方法として、例えば成形型の中に押し込むことによって、搬送材料224に追加されることができる。この配設は、搬送材料224が、湾曲した流体透過性発熱体の形状に適合するのに役立ち、この形状は、流体透過性発熱体を作製するために使用される一部の製造プロセスの副産物である場合がある。テーパー付きの穴226は、搬送材料224の厚さ全体を通過する。搬送材料は、約5.8mmの直径およびその最も厚い点にて約2.5mmの厚さを有するディスクとして形成されている。
【0059】
図6は、本発明の別の実施形態による搬送材料324を示す。搬送材料324は、穴326が搬送材料324の厚さを通して部分的にのみ延びることを除き、図5に示すものと類似している。この例において、穴326は、搬送材料324の厚さの半分より大きい深さまで搬送材料324の中に延びる。この配設は、液体が通って流れるための貫通穴を搬送材料324の中に提供しないものの、液体が通って流れる必要がある穴の領域内の搬送材料の厚さを、この例において、厚さの半分未満に低減することによって、搬送材料を通した液体エアロゾル発生基体の流れを依然として増大させる。言い換えれば、穴326の中に流れる液体は、厚さ全体を通して浸透する必要がある場合と比較して、搬送材料324の厚さの残りの部分を通して、より簡単に透過することができる。
【0060】
図7は、本発明の別の実施形態による搬送材料424を示す。この場合も、搬送材料424は、約5.8mmの直径および約2.5mmの厚さを有するディスクとして形成されている。搬送材料424は、複数の穴を備え、第一の穴426aは第一の表面424aに提供されていて、また第二の穴426bは第二の表面424bに提供されている。第一の穴426aおよび第二の穴426bの各々は、搬送材料424の厚さの半分より大きい深さまで搬送材料424の中に延びる。第一の穴426aおよび第二の穴426bは整列されていて、これによってこれらの穴は接続して搬送材料424の中に貫通穴を形成し、この貫通穴を通して液体エアロゾル発生基体が通ることができる。
【0061】
図8は、本発明の別の実施形態による搬送材料524を示す。搬送材料524は、第一の穴526aおよび第二の穴526bが整列されていないが、第一の表面524aおよび第二の表面524bと平行な方向で離隔していることを除き、図7に示すものと類似している。第一の穴526aおよび第二の穴526bの各々は、搬送材料524の厚さの半分より大きい深さまで搬送材料524の中に延びる。穴526bの中に流れる液体エアロゾル発生基体は、毛細管作用によって搬送材料524の細長い繊維に沿って、第一の表面524aおよび第二の表面の524bに平行な方向で、流体透過性発熱体に通ることができる穴526aの中に移動することができる。
【0062】
本発明の実施形態によるヒーター組立品を製造する方法は、流体透過性発熱体と流体連通する搬送材料を配設することを含む。流体連通を達成する一実施例は、流体透過性発熱体と接触する搬送材料を配設することである。搬送材料は、より大きい一片の搬送材料からディスクを打ち抜き加工することによって提供することができる。
【0063】
図9は、搬送材料のディスクを提供するためのポンチ600の実施例を示す。ポンチ600は、ポンチをプレス(図示せず)に取り付けるための内部ねじ652を一方の端に有する円筒状のカラム650を備える。長軸方向のねじ652は、円筒状のカラム650の中に長軸方向に延びる。円筒状のカラム650のもう一方の端は、搬送材料のディスクを切断するように構成されているポンチ600の切断端654を備える。切断端は、搬送材料のディスクと同一の直径、すなわち約5.8mmの直径を有する。搬送材料を貫通して穴を形成するように構成されている円錐貫通部656は、切断端に位置する。円錐貫通部656は、その最も広い部分にて1.3mmの直径を有し、約4.3mmの長さである。円錐貫通部656をポンチ600の切断端に定置することによって、搬送材料のディスクを切断する工程中に、搬送材料を貫通することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9