(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240508BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14 611
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2021074246
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 了
(72)【発明者】
【氏名】岩野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】安間 弘雅
(72)【発明者】
【氏名】奥島 真吾
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0124022(US,A1)
【文献】特開2019-130678(JP,A)
【文献】特開2016-185683(JP,A)
【文献】特開平07-314849(JP,A)
【文献】特開2009-012412(JP,A)
【文献】特開2018-176717(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出部と、
記録媒体の搬送方向に関し前記液体吐出部の上流に設けられ、前記液体吐出部に搬送される記録媒体の前端部をガイドするガイド部と、を有し、
前記液体吐出部は、液体を吐出する吐出口を備えた記録素子基板と、前記記録素子基板を支持する支持部材と、を有し、
前記ガイド部は、前記液体吐出部から離れるに従い前記記録媒体の搬送経路から離間するように傾斜した傾斜面を備え
、前記記録媒体の搬送方向に関し前記支持部材の後端に設けられている液体吐出ヘッドであって、
前記記録素子基板を露出させる開口を備え、前記支持部材に支持されたカバー部材と、
前記記録素子基板と電気的に接続され、前記支持部材に支持された電気配線部材と、
前記支持部材の前記後端側の側面と対向するように設けられた保護部材と、を有し、
前記カバー部材の一部が前記ガイド部を構成し、
前記電気配線部材は、前記支持部材と前記カバー部材および前記保護部材との間に位置することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部が前記ガイド部の前記傾斜面の先端部と近接して配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部と前記ガイド部の前記傾斜面の先端部が互いに対向することを特徴とする、請求項
2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部と前記ガイド部の前記傾斜面の先端部が互いに重なることを特徴とする、請求項
2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部が、前記ガイド部の前記傾斜面の先端部と前記支持部材の前記側面との間に位置することを特徴とする、請求項
4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部と前記ガイド部の前記傾斜面の先端部が互いに密着していることを特徴とする、請求項
4または
5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部を前記ガイド部の前記傾斜面の先端部に向けて付勢する付勢部材を有することを特徴とする、請求項
4乃至
6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記保護部材の前記搬送経路側の端部と前記ガイド部の前記傾斜面の先端部との隙間を封止する封止材を有することを特徴とする、請求項
2乃至
5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記カバー部材が樹脂からなり、前記保護部材が金属からなることを特徴とする、請求項
1乃至
8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記電気配線部材は、前記保護部材で覆われる部分の面積が、前記カバー部材で覆われる部分の面積よりも大きいことを特徴とする、請求項
9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記ガイド部は、前記記録媒体の搬送経路の幅方向に所定の間隔で配置された複数のガイドを備え、各ガイドが前記傾斜面を備えることを特徴とする、請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記傾斜面が平面であることを特徴とする、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記傾斜面が曲面であることを特徴とする、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに向けて記録媒体を搬送する搬送部と、を有し、
前記液体吐出ヘッドのガイド部が前記記録媒体の搬送方向の上流側に位置することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の液体吐出装置は、ヘッドカバーを備えた液体吐出ヘッドを有する。液体吐出ヘッドは、液体を吐出する吐出口を有するノズルプレートを備えており、ヘッドカバーは、吐出口を露出させるための開口を備えている。ヘッドカバーは、ノズルプレートの外周部を覆うようにヘッドに固定される。記録紙等の記録媒体が、液体吐出ヘッドと対向する位置に搬送される。液体吐出ヘッドが、記録媒体に向かって液体を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した液体吐出ヘッドでは、ヘッドカバーで覆われたヘッド部分の側面が記録媒体の搬送方向と略直交している。このため、記録媒体の先端が湾曲(カール)していると、搬送時に、記録媒体の先端がヘッド部分の側面に接触して、ジャミング(紙詰まり)を生じる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、記録媒体の先端が湾曲していてもジャミングを生じ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、液体を吐出する液体吐出部と、記録媒体の搬送方向に関し前記液体吐出部の上流に設けられ、前記液体吐出部に搬送される記録媒体の前端部をガイドするガイド部と、を有し、前記液体吐出部は、液体を吐出する吐出口を備えた記録素子基板と、前記記録素子基板を支持する支持部材と、を有し、前記ガイド部は、前記液体吐出部から離れるに従い前記記録媒体の搬送経路から離間するように傾斜した傾斜面を備え、前記記録媒体の搬送方向に関し前記支持部材の後端に設けられている液体吐出ヘッドであって、前記記録素子基板を露出させる開口を備え、前記支持部材に支持されたカバー部材と、前記記録素子基板と電気的に接続され、前記支持部材に支持された電気配線部材と、前記支持部材の前記後端側の側面と対向するように設けられた保護部材と、を有し、前記カバー部材の一部が前記ガイド部を構成し、前記電気配線部材は、前記支持部材と前記カバー部材および前記保護部材との間に位置することを特徴とする液体吐出ヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録媒体の先端が湾曲していてもジャミングを生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用可能な液体吐出装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】液体吐出ヘッドに液体を供給するための液体循環経路を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドの構成を示す模式図である。
【
図4】カバー部材のガイド部の一例を示す模式図である。
【
図6】保護部材とカバー部材の配置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0010】
図1は、本発明を適用可能な液体吐出装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。液体吐出装置1000は、記録媒体2を搬送する搬送部1と、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッド3とを備える。搬送部1は、記録媒体2を支持する支持面1aを備え、記録媒体2を液体吐出ヘッド3に向けて搬送する。後述する
図3中、矢印Aが記録媒体2の搬送方向を示す。液体吐出装置1000は、記録媒体2を搬送方向Aに沿って搬送する搬送経路を備える。インクは、液体の一例である。
液体吐出ヘッド3は、記録媒体2の幅に対応した長さを有し、長手方向が記録媒体2の搬送方向Aと略直交する方向を向く、所謂ライン型ヘッドである。例えば、搬送部1が複数の記録媒体2を連続的もしくは間欠的に搬送しながら、液体吐出ヘッド3が連続的に記録を行うことができる。記録媒体2には、カット紙(所定のサイズに切り揃えられた用紙)や連続したロール状の用紙を用いることができる。
【0011】
図2は、液体吐出ヘッド3に液体を供給するための液体循環経路を示す模式図である。液体吐出ヘッド3は、液体供給ユニット220、負圧制御ユニット230および液体吐出ユニット300を有する。液体供給ユニット220は、排出側および供給側にそれぞれ液体接続部111を備え、これら液体接続部111が循環ポンプ1002、1004を介してバッファタンク1003に流体的に接続されている。バッファタンク1003は、補助ポンプ1005を介してメインタンク1006に流体的に接続されている。液体供給ユニット220には、ヘッド内部への異物混入を防止するためのフィルター221が設けられている。
【0012】
負圧制御ユニット230は、液体吐出ヘッド3内の圧力を制御するものであって、高圧側の流路(H)と低圧側の流路(L)を備える。高圧側の流路(H)と低圧側の流路(L)の負圧の調整が可能である。液体吐出ユニット300は、液体を吐出する吐出口を備えた記録素子基板10を有する。液体は、フィルター221を通過後、高圧側の流路(H)と低圧側の流路(L)に供給される。高圧側の流路(H)と低圧側の流路(L)は、各記録素子基板10を通じて合流する。循環ポンプ1002、1004が動作すると、負圧制御ユニット230によって液体吐出ヘッド3内に差圧が生じ、液体吐出ヘッド3の全体が液体で満たされる。
なお、
図2では、説明を簡略化するため、1色の液体が流れる循環経路のみを示しているが、複数の色の液体を用いる場合は、液体の色毎に循環経路が設けられる。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色の液体を用いる場合は、4色分の循環経路が設けられる。
【0013】
図3は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッド3の構成を模式的に示す図である。
図3(a)は、保護部材30を外した状態の液体吐出ヘッド3を吐出側から見た場合の斜視図である。
図3(b)は、保護部材30を外した状態の液体吐出ヘッド3を吐出側とは反対の方向から場合の斜視図である。
図3(c)は、保護部材30を取り付けた状態の液体吐出ヘッド3の斜視図である。
図3(a)及び
図3(c)に示すように、液体吐出ヘッド3は、液体を吐出する液体吐出部3aを有する。液体吐出部3aは、液体を吐出する吐出口を備えた記録素子基板10と、記録素子基板10を支持する支持面50aを備えた支持部材50と、を有する。支持面50aは支持部材50の表面に対して凹んだ位置に設けられる(
図4(a))。吐出口を露出させるための開口20aを備えたカバー部材20が、支持部材50に取り付けられている。ここでは、15個の記録素子基板10が直線上に配列されており、これら記録素子基板10の吐出口がカバー部材20の開口20aから露出している。なお、記録素子基板10の数は適宜に変更可能である。
【0014】
液体吐出ヘッド3は、電気配線部材であるフレキシブル配線基板40、電気配線基板90、信号入力端子91及び電力供給端子92をさらに有する。フレキシブル配線基板40は、記録素子基板10毎に設けられている。フレキシブル配線基板40の両端部に端子が設けられており、一方の端部の端子が記録素子基板10に電気的に接続され、他方の端部の端子が電気配線基板90に電気的に接続されている。信号入力端子91及び電力供給端子92は、液体吐出装置1000の制御部と電気的に接続されている。記録素子基板10を駆動するための駆動信号及び駆動電力が、信号入力端子91、電力供給端子92、フレキシブル配線基板40及び電気配線基板90を介して記録素子基板10に供給される。
例えば、電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号入力端子91及び電力供給端子92の数を記録素子基板10の数に比べて少なくすることができる。これにより、液体吐出装置1000において、液体吐出ヘッド3を組み付ける時や液体吐出ヘッド3を交換する時に、取り外しが必要な電気接続部の数を削減することができる。
【0015】
カバー部材20は、フレキシブル配線基板40の一部を覆う。記録素子基板10及びフレキシブル配線基板40を支持部材50に取り付けた後、カバー部材20を支持部材50に取り付ける。保護部材30は、フレキシブル配線基板40の一部や電気配線基板90を保護する。保護部材30は、電気的なシールドの役割を果たすように、金属で構成することが好ましい。
図3(b)に示すように、複数の液体接続部111が液体吐出ヘッド3の片側に設けられている。これら液体接続部111を介して、複数の色の液体が液体吐出ヘッド3に供給される。ここでは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色の液体が用いられる。
【0016】
カバー部材20は、記録媒体2をガイドするガイド部20bを備える。以下に、ガイド部20bの構成を詳細に説明する。
図4は、カバー部材20のガイド部20bを説明するための模式図である。
図4(a)及び
図4(b)はいずれも、保護部材30を取り付けた状態の、
図3(a)のA-A線における液体吐出ヘッド3の断面の構造を示す模式図である。
図4(a)には、記録媒体2の先端がガイド部20bに到達した状態が示されている。
図4(b)には、記録媒体2の先端がガイド部20bを通過して支持面1aと液体吐出ヘッド3との間の空間に到達した状態が示されている。
【0017】
図4に示すように、支持部材50の支持面50aは、搬送部1の支持面1aと対向する。記録媒体2が液体吐出部3aと支持面1aとの間の空間に搬送され、記録素子基板10が記録媒体2に向かって液体を吐出する。ガイド部20bは、記録媒体2の搬送方向Aに関し液体吐出部3aの上流に位置する。ガイド部20bは、液体吐出部3aに搬送される記録媒体2の先端部をガイドする。具体的には、ガイド部20bは、液体吐出部3aから離れるに従い記録媒体2の搬送経路から離間するように傾斜した傾斜面20cを備える。
図4中、矢印Bが液体吐出部3aから離れる方向を示し、矢印Cが搬送経路から離間する方向を示す。矢印Bは、記録媒体2の搬送方向Aとは逆の方向である。矢印Cは、記録媒体2の搬送方向Aと交差する方向(本実施形態では搬送方向Aと略直交する方向)である。
【0018】
図4(a)に示すように、記録媒体2の先端が湾曲している場合、記録媒体2を搬送すると、記録媒体2の先端がガイド部20bの傾斜面20cに接触する。傾斜面20cは、記録媒体2の先端を支持面1aと液体吐出ヘッド3との間の空間に誘導するように作用する。記録媒体2の先端は、傾斜面20cを滑りながら移動し、
図4(b)に示すように、支持面1aと液体吐出ヘッド3との間の空間に到達する。このように、記録媒体2の先端が湾曲している場合でも、ガイド部20bは記録媒体2を支持面1aと液体吐出ヘッド3との間の空間に誘導することができる。これにより、ジャミングを抑制することができる。
【0019】
図5は、比較例としてのカバー部材20-1を説明するための模式図である。
図5(a)及び
図5(b)はいずれも、
図4(a)及び
図4(b)に示した液体吐出ヘッド3の断面に対応する構造を示す。
図5に示すように、カバー部材20-1は、ガイド部20bに代えて、支持面1aに略垂直な面を備えた端部20-1cを有する。端部20-1cは、記録媒体2の搬送方向Aの上流側に位置する。
図5(a)に示すように、先端が湾曲した記録媒体2を搬送すると、記録媒体2の先端が端部20-1cの垂直な面に当接する。この場合、記録媒体2は支持面1aと液体吐出ヘッド3との間の空間へは搬送されず、
図5(b)に示すように、ヘッド手前側で記録媒体2が変形し、ジャミングを生じる。ジャミングを生じると、記録媒体2を取り除く為に、印刷動作を停止する必要がある。また、記録媒体2の先端が端部20-1cに当接した際の衝撃によって、液体吐出ヘッド3が損傷する可能性もある。
【0020】
上述のように、本実施形態の液体吐出ヘッド3によれば、先端が湾曲した記録媒体2を支持面1aと液体吐出ヘッド3との間の空間に誘導することができるので、ジャミングを抑制することができ、印刷動作を継続することができる。
加えて、記録媒体2の先端が傾斜面20cを滑りながら移動することで、液体吐出ヘッド3への衝撃を緩和する。これにより、液体吐出ヘッド3が損傷することを抑制することができる。
【0021】
本実施形態の液体吐出ヘッド3において、支持部材50は、搬送方向Aに関し後端側に側面50bを有する。フレキシブル配線基板40を支持する支持面50dと側面50bとが角部を形成し、この角部近傍に、ガイド部20bが設けられている。具体的には、ガイド部20は、記録媒体2の搬送方向Aに関し支持部材50の後端に設けられている。ガイド部20は、液体吐出部3aに向けて搬送される記録媒体2の前端部が支持面1aから浮き上がった際に、記録媒体2の前端部が当接する当接部に、傾斜面20cを備える。この構成によれば、傾斜面20c(当接部)は、記録媒体2の前端部が液体吐出部3aと支持面1aとの間の空間に確実に進入するように記録媒体2をガイドすることができる。
【0022】
また、フレキシブル配線基板40は、支持部材50の支持面50dから側面50bに沿って配置されている。保護部材30は、支持部材50の側面50bと対向するように設けられている。フレキシブル配線基板40は、支持部材50とカバー部材20および保護部材30との間に位置する。保護部材30の搬送経路側の端部が、ガイド部20bの傾斜面20cの先端部と近接して配置されている。この構成によれば、記録素子基板10が吐出した液体のうち、記録媒体2に付着せずに周囲に浮遊する微小な液滴が、フレキシブル配線基板40等の電気部材に付着することを抑制することができる。なお、微小な液滴が電気部材に付着すると電気的な不具合を生じる可能性がある。
【0023】
以下、保護部材30とカバー部材20とを互いに近接して配置した構造について具体的に説明する。
図6は、保護部材30とカバー部材20の配置例を示す模式図である。
図6には、
図4に示した液体吐出ヘッド3の断面に対応する構造が示されている。
図6(a)は第1の配置例を示す。第1の配置例では、保護部材30の搬送経路側の端部30aとガイド部20bの傾斜面20cの先端部20dが互いに対向する。保護部材30の端部30aとガイド部20bの先端部20dの間隔が狭いほど、浮遊する微小な液滴の電気部材への付着を抑制する効果が増大する。
【0024】
図6(b)は第2の配置例を示す。第2の配置例では、保護部材30の搬送経路側の端部30aとガイド部20bの傾斜面20cの先端部20dが互いに重ねられている。この場合、第1の配置例と比較して、浮遊する微小な液滴が電気部材へ向かう経路を長くすることができるので、微小な液滴の電気部材への付着を抑制する効果をさらに増大することができる。
上記の場合、保護部材30の端部30aが、ガイド部20bの先端部20dと支持部材50の側面50bとの間に位置することが好ましい。この場合、傾斜面20cの近傍において、記録媒体2の誘導の妨げとなる部材がカバー部材20よりも下流側に存在しない。よって、記録媒体2を支持面1aと液体吐出部3aとの間の空間に確実に誘導することができる。
また、保護部材30の端部30aとガイド部20bの先端部20dが互いに密着しても良い。これにより、浮遊する微小な液滴の電気部材への付着をより効果的に抑制することができる。
上記の場合、保護部材30の端部30aをガイド部20bの先端部20dに向けて付勢する付勢部材を設けても良い。
図6(b)中、矢印Dは、付勢部材の付勢方向を示す。付勢部材は、例えば、ばねやゴムなどの弾性部材で構成されても良い。例えば、ばね部材の一端が支持部材50の側面50bに接し、ばね部材の他端が保護部材30の端部30aに接するように構成することで、保護部材30の端部30aをガイド部20bの先端部20dに確実に密着させることができる。ただし、この場合、ばね部材は、フレキシブル配線基板40を避けるように支持部材50の側面50bに取り付ける必要がある。
【0025】
図6(c)は第3の配置例を示す。第3の配置例では、保護部材30の端部30aとガイド部20bの先端部20dとの隙間を封止する封止材60を設けている。封止材60を設けることで、浮遊する微小な液滴の電気部材への付着をより確実に抑制することができる。封止材60として、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を用いても良い。
【0026】
(変形例)
上述した本実施形態の液体吐出ヘッド3において、ジャミングを抑制するという観点から、カバー部材20のガイド部20bは、先端が湾曲した記録媒体2を支持面1aと液体吐出部3aとの間の空間に誘導できるのであれば、どのような構造であっても良い。
図7は、カバー部材20の変形例を示す模式図である。ガイド部20bは、記録媒体2の搬送経路の幅方向(
図7中、矢印D)に所定の間隔で配置された複数のガイド2eを有する記録媒体2の搬送経路の幅方向Dは、カバー部材20の長手方向と同じである。各ガイド20eは、傾斜面20cを備える。このようにガイド部20bの傾斜部分を長手方向に複数に分割することで、記録媒体2の先端が傾斜面20cに接触した際の摩擦抵抗を軽減することができ、その結果、ジャミングをより効果的に抑制することができる。なお、ガイド20eの数や幅、ガイド20eの間隔は、適宜に変更することができる。
【0027】
以上説明した液体吐出ヘッド3において、カバー部材20の材質として、板金等の金属や樹脂材料を用いることができる。カバー部材20を樹脂で形成する場合は、多様な形状のカバー部材20を構成することが可能である。したがって、上述したような傾斜面20cを備えるカバー部材20を形成しやすい。また、カバー部材20を樹脂で構成する場合であっても、上述のようにカバー部材20とは別の部材である保護部材30を金属で構成することで、フレキシブル配線基板40や電気配線基板90に対するシールド効果を得ることができる。その際、効果的なシールド効果を得るために、フレキシブル配線基板40のうちの保護部材30で覆われる部分の面積が、フレキシブル配線基板40のうちのカバー部材20で覆われる部分の面積よりも大きいことが好ましい。
カバー部材20を金属で形成する場合は、保護部材30とともに電気的なシールドを構成することができる。これにより、例えば、フレキシブル配線基板40や電気配線基板90などの電磁放射ノイズを抑制するシールド効果を得ることができる。
また、傾斜面20cは平面であっても、曲面であっても良い。
さらに、カバー部材20の一部がガイド部20bを構成しているが、これに限定されない。ガイド部20bは、カバー部材20とは別の部材で形成されてもよい。なお、カバー部材20の一部がガイド部20bを構成する場合、製造コストの削減が可能である。
また、液体吐出ヘッド3は、発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式のものであるが、これに限定されない。液体吐出ヘッド3は、ピエゾ方式やその他の各種液体吐出方式のものであってもよい。
タンクと液体吐出ヘッド3の間で液体を循環させるように構成されているが、これに限定されない。例えば、液体を循環せずに、液体吐出ヘッド3の上流側と下流側にそれぞれタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへ液体を流すように構成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
2 記録媒体
3a 液体吐出部
10 記録素子基板
20b ガイド部
20c 傾斜面