(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20240508BHJP
F04B 41/02 20060101ALI20240508BHJP
F04B 39/16 20060101ALI20240508BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B01D53/26 230
F04B41/02 A
F04B39/16 F
F04B39/12 101A
(21)【出願番号】P 2021502263
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007464
(87)【国際公開番号】W WO2020175465
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019031989
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 卓也
(72)【発明者】
【氏名】除田 和也
(72)【発明者】
【氏名】片山 祐作
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517611(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190418(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/170737(WO,A1)
【文献】特開昭62-298424(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2690633(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
B60T 17/00
F04B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を駆動源として圧縮空気を送出するコンプレッサと圧縮乾燥空気を貯留するエアタンクとの間に設けられており、水分を捕捉する乾燥剤を含むフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに通過させて前記エアタンクに前記圧縮乾燥空気を貯留する供給動作を実行し、
前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行し、
前記再生動作の実行後に、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記空気乾燥回路に充填する充填動作を実行するように構成されている、
空気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記再生動作の実行後に、前記エンジンが停止すると前記充填動作を実行し、
前記エンジンが再始動するときに、前記コンプレッサに空気圧信号を送ることによって前記コンプレッサを停止させるエンジンスタートヘルプ動作を実行するように構成されている、
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記空気乾燥回路の前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに前記逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を前記排出口から排出するパージ動作を実行し、
前記パージ動作の実行後に、前記充填動作を実行するように構成されている、 請求項1又は2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記パージ動作の実行後に、前記エンジンが停止すると前記充填動作を実行し、
前記エンジンが再始動するときに、前記コンプレッサに空気圧信号を送ることによって前記コンプレッサを停止させるエンジンスタートヘルプ動作を実行するように構成されている、
請求項3に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記充填動作の実行後に、前記排出口からの流体の排出を停止したまま、前記コンプレッサに空気圧信号を送ることによって前記コンプレッサを停止するパージレス供給停止動作を実行するように構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記エンジンが無負荷状態であるときに前記コンプレッサが駆動して前記圧縮空気が前記フィルタに対し送出されて前記エアタンクに対し供給される回生供給動作を、前記パージレス供給停止動作の実行後に実行するように構成されている、
請求項5に記載の空気供給システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記回生供給動作が所定時間行われたときには、前記パージレス供給停止動作を実行するように構成されている、
請求項6に記載の空気供給システム。
【請求項8】
前記空気乾燥回路に接続された分岐路と前記排出口とを連通する排出弁と、
前記フィルタから前記エアタンクに向かう順方向の流れと前記エアタンクから前記フィルタに向かう逆方向の流れとを切り替える再生制御弁と、
前記コンプレッサを停止する空気圧信号を送るコンプレッサ制御弁と、を備え、
前記制御装置は、前記排出弁、前記再生制御弁、及び前記コンプレッサ制御弁を制御するように構成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項9】
エンジンの動力を駆動源として圧縮空気を送出するコンプレッサと圧縮乾燥空気を貯留するエアタンクとの間に設けられており、水分を捕捉する乾燥剤を含むフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御方法であって、
前記制御装置が、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに通過させて前記エアタンクに前記圧縮乾燥空気を貯留する供給動作を実行し、
前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行し、
前記再生動作の実行後に、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記空気乾燥回路に充填する充填動作を実行するように構成されている、
空気供給システムの制御方法。
【請求項10】
エンジンの動力を駆動源として圧縮空気を送出するコンプレッサと圧縮乾燥空気を貯留するエアタンクとの間に設けられており、水分を捕捉する乾燥剤を含むフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御プログラムであって、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに通過させて前記エアタンクに前記圧縮乾燥空気を貯留する供給動作を実行する供給動作実行部、
前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行する再生動作実行部、及び
前記再生動作の実行後に、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記空気乾燥回路に充填する充填動作を実行する充填動作実行部、として機能させる、
空気供給システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキシステム及びサスペンションシステム等を含む、空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分及びコンプレッサ内を潤滑する油分等、液状の不純物が含まれている。水分及び油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生及びゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる可能性がある。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去する圧縮空気乾燥装置が設けられている。
【0003】
圧縮空気乾燥装置は、乾燥剤及び各種バルブを備えている。圧縮空気乾燥装置は、圧縮空気から水分等を除去するロード運転(除湿動作)を行う。除湿動作によって生成された圧縮乾燥空気は、貯留部に貯留される。また、圧縮空気乾燥装置の清浄機能は、圧縮乾燥空気の通過量に応じて低下する。このため、圧縮空気乾燥装置は、乾燥剤に吸着された油分及び水分を乾燥剤から取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして排出弁を開いて放出するアンロード運転(再生動作)を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一部の圧縮空気乾燥装置では、排出弁を開くことによってコンプレッサと乾燥剤との間の圧縮空気が排出されて、コンプレッサと乾燥剤との間の圧力が低下すると、コンプレッサ側の圧力と乾燥剤側の圧力との差が大きくなり、コンプレッサの運転時の負荷が大きくなる。
【0006】
本開示の目的は、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することのできる空気供給システム及び空気供給システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する空気供給システムは、エンジンの動力を駆動源として圧縮空気を送出するコンプレッサと圧縮乾燥空気を貯留するエアタンクとの間に設けられており、水分を捕捉する乾燥剤を含むフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに通過させて前記エアタンクに前記圧縮乾燥空気を貯留する供給動作を実行し、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行し、前記再生動作の実行後に、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記空気乾燥回路に充填する充填動作を実行するように構成されている。
【0008】
上記課題を解決する空気供給システムの制御方法は、エンジンの動力を駆動源として圧縮空気を送出するコンプレッサと圧縮乾燥空気を貯留するエアタンクとの間に設けられており、水分を捕捉する乾燥剤を含むフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備える空気供給システムの制御方法であって、前記制御装置が、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに通過させて前記エアタンクに前記圧縮乾燥空気を貯留する供給動作を実行し、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行し、前記再生動作の実行後に、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記空気乾燥回路に充填する充填動作を実行する。
【0009】
上記課題を解決する空気供給システムの制御プログラムは、エンジンの動力を駆動源として圧縮空気を送出するコンプレッサと圧縮乾燥空気を貯留するエアタンクとの間に設けられており、水分を捕捉する乾燥剤を含むフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置を、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに通過させて前記エアタンクに前記圧縮乾燥空気を貯留する供給動作を実行する供給動作実行部、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行する再生動作実行部、及び、前記再生動作の実行後に、前記エアタンクに貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記空気乾燥回路に充填する充填動作を実行する充填動作実行部、として機能させる。
【0010】
上記構成によれば、再生動作の実行後に、エアタンクに貯留された圧縮乾燥空気を空気乾燥回路に充填する充填動作が実行される。このため、再生動作によって大気圧となった空気乾燥回路の圧力を充填動作によって大気圧よりも高くすることができる。よって、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができる。
【0011】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記再生動作の実行後に、前記エンジンが停止すると前記充填動作を実行し、前記エンジンが再始動するときに、前記コンプレッサに空気圧信号を送ることによって前記コンプレッサを停止させるエンジンスタートヘルプ動作を実行するように構成されてよい。
【0012】
上記構成によれば、エンジンが停止するとエアタンクに貯留された圧縮乾燥空気を空気乾燥回路に充填する充填動作が行われ、エンジンの再始動時にコンプレッサを停止させるエンジンスタートヘルプ動作行われる。このため、再生動作によって大気圧となった空気乾燥回路の圧力を充填動作によって大気圧よりも高くすることによって、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができるとともに、エンジン始動時の負荷を低減することができる。よって、燃費を低減することができる。
【0013】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記空気乾燥回路の前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに前記逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を前記排出口から排出するパージ動作を実行し、前記パージ動作の実行後に、前記充填動作を実行するように構成されてよい。
【0014】
上記構成によれば、パージ動作の実行後に、エアタンクに貯留された圧縮乾燥空気を空気乾燥回路に充填する充填動作が行われる。このため、パージ動作によって大気圧となった空気乾燥回路の圧力を充填動作によって大気圧よりも高くすることができる。よって、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができる。
【0015】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記パージ動作の実行後に、前記エンジンが停止すると前記充填動作を実行し、前記エンジンが再始動するときに、前記コンプレッサに空気圧信号を送ることによって前記コンプレッサを停止させるエンジンスタートヘルプ動作を実行するように構成されてよい。
【0016】
上記構成によれば、パージ動作の実行後に、エンジンが停止するとエアタンクに貯留された圧縮乾燥空気を空気乾燥回路に充填する充填動作が行われ、エンジンの再始動時にコンプレッサを停止させるエンジンスタートヘルプ動作が行われる。このため、パージ動作によって大気圧となった空気乾燥回路の圧力を充填動作によって大気圧よりも高くすることによって、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができるとともに、エンジン始動時の負荷を低減することができる。よって、燃費を低減することができる。
【0017】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記充填動作の実行後に、前記排出口からの流体の排出を停止したまま、前記コンプレッサに空気圧信号を送ることによって前記コンプレッサを停止するパージレス供給停止動作を実行するように構成されてよい。
【0018】
上記構成によれば、空気乾燥回路に圧縮空気を充填する充填動作の実行後に、空気乾燥回路の圧力が維持された状態でコンプレッサが停止されるため、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができる。
【0019】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記エンジンが無負荷状態であるときに前記コンプレッサが駆動して前記圧縮空気が前記フィルタに対し送出されて前記エアタンクに対し供給される回生供給動作を前記パージレス供給停止動作の実行後に実行するように構成されてよい。
【0020】
回生供給動作時にはエンジンが無負荷状態であるときにコンプレッサが駆動されるのでコンプレッサの負荷を極力抑制することが望ましい。そこで、上記構成によれば、空気乾燥回路の圧力が維持された状態でコンプレッサが停止されたパージレス供給停止動作の実行後に、回生供給動作が実行される。このため、エンジンが無負荷状態でのコンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができる。
【0021】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記回生供給動作が所定時間行われたときには、前記パージレス供給停止動作を実行するように構成されてよい。
上記構成によれば、回生供給動作が所定時間行われた後に、空気乾燥回路の圧力が維持された状態でコンプレッサが停止されたパージレス供給停止動作が実行される。このため、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができる。
【0022】
上記空気供給システムについて、前記空気乾燥回路に接続された分岐路と前記排出口とを連通する排出弁と、前記フィルタから前記エアタンクに向かう順方向の流れと前記エアタンクから前記フィルタに向かう逆方向の流れとを切り替える再生制御弁と、前記コンプレッサを停止する空気圧信号を送るコンプレッサ制御弁とを備えてよく、前記制御装置は、前記排出弁、前記再生制御弁、及び前記コンプレッサ制御弁を制御するように構成されてよい。
【0023】
上記構成によれば、排出弁と再生制御弁とコンプレッサ制御弁とを制御装置が制御することによって、各再生動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、コンプレッサの運転開始時の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】空気供給システムの一実施形態の概略構成を示す構成図。
【
図2】
図2Aは
図1の実施形態の空気乾燥回路の第1動作モード及び第7動作モードを示す図、
図2Bは
図1の実施形態の空気乾燥回路の第2動作モードを示す図、
図2Cは
図1の実施形態の空気乾燥回路の第3動作モード及び第8動作モードを示す図、
図2Dは
図1の実施形態の空気乾燥回路の第4動作モードを示す図、
図2Eは
図1の実施形態の空気乾燥回路の第5動作モード及び第9動作モードを示す図、
図2Fは
図1の実施形態の空気乾燥回路の第6動作モードを示す図。
【
図3】
図1の実施形態の空気乾燥回路の動作の遷移を示す遷移図。
【
図4】
図1の実施形態の空気乾燥回路の第1動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【
図5】
図1の実施形態の空気乾燥回路の第2動作モード及び第3動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【
図6】
図1の実施形態の空気乾燥回路の第5動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【
図7】
図1の実施形態の空気乾燥回路の第7動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【
図8】
図1の実施形態の空気乾燥回路の第8動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【
図9】同実施形態の空気乾燥回路の第9動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【
図10】同実施形態の空気乾燥回路の第10動作モードからの遷移を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~
図8を参照して、空気供給システムの一実施形態について説明する。空気供給システムは、トラック、バス、建機等の車両に搭載されている。空気供給システムにより供給された圧縮乾燥空気は、車両に搭載されたブレーキシステム等の空圧機器に用いられる。
【0027】
<空気供給システム10>
図1を参照して空気供給システム10について説明する。空気供給システム10は、コンプレッサ4と、空気乾燥回路11と、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)80とを備える。
【0028】
ECU80は、複数の配線E61~E67を介して空気乾燥回路11に接続されている。ECU80は、演算部、通信インターフェース部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部を備えている。演算部は、コンピュータプロセッサであって、不揮発性記憶部(記憶媒体)に記憶された空気供給プログラムにしたがって、空気乾燥回路11を制御するように構成されている。演算部は、自身が実行する処理の少なくとも一部を、ASIC等の回路により実現してもよい。空気供給プログラムは、一つのコンピュータプロセッサによって実行されてもよいし、複数のコンピュータプロセッサによって実行されてもよい。また、ECU80は、空気乾燥回路11の動作の結果を記憶する記憶部80Aを備える。記憶部80Aは、不揮発性記憶部又は揮発性記憶部であり、上記制御プログラムが記憶された記憶部と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0029】
ECU80は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介して、例えばエンジンECU、ブレーキECU等、車両に搭載された他のECU(図示略)に接続されている。ECU80は、それらのECUから、車両状態を示す情報を取得する。車両状態を示す情報には、例えば、イグニッションスイッチのオフ情報、車速、エンジンの駆動情報等が含まれる。
【0030】
コンプレッサ4の状態は、ECU80からの指令値に基づいて、空気を圧縮して送出する稼働状態(負荷運転)と、空気の圧縮を行わない非稼働状態(空運転)との間で切り替えられる。コンプレッサ4は、エンジン等の回転駆動源から伝達された動力で稼働する。
【0031】
空気乾燥回路11は、いわゆる、エアドライヤである。空気乾燥回路11は、ECU80に接続され、負荷運転中のコンプレッサ4から送られた圧縮空気から該圧縮空気に含まれる水分等を除去する。空気乾燥回路11は、乾燥された後の圧縮空気(以下、圧縮乾燥空気)を、供給回路12へ送出する。供給回路12に対し供給された圧縮乾燥空気は、エアタンク30に貯留される。
【0032】
エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気は、車両に搭載されたブレーキシステム等の空圧機器に供給される。例えば、車両が降坂路又は市街地を走行する状況等、ブレーキが作動される頻度が高い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が多くなる。逆に、ブレーキが作動される頻度が低い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が少なくなる。
【0033】
空気乾燥回路11は、メンテナンス用ポートP12を有している。メンテナンス用ポートP12は、メンテナンスの際にそれを通じて空気乾燥回路11に空気を供給するためのポートである。
【0034】
<空気乾燥回路11>
空気乾燥回路11は、ケース11A(
図2A参照)の内部等にフィルタ17を備えている。フィルタ17は、コンプレッサ4と供給回路12とを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。なお、フィルタ17は、乾燥剤を含む。また、フィルタ17は、乾燥剤とは別に、油分を捕捉する油分捕捉部を含んでいてもよい。油分捕捉部は、ウレタンフォーム等の発泡体、多数の通気孔を有する金属材、ガラス繊維フィルタ等、空気を通過させながら油分を捕捉可能なものであればよい。
【0035】
フィルタ17は、コンプレッサ4から送出された圧縮空気を乾燥剤に通過させることによって、圧縮空気に含まれる水分を圧縮空気から除去して圧縮空気を乾燥させる。また、乾燥剤又は油分捕捉部は、圧縮空気に含まれる油分を捕捉して圧縮空気を清浄化する。フィルタ17を通過した圧縮空気は、フィルタ17に対して下流への空気の流れのみを許容する逆止弁としての下流チェックバルブ19を介して供給回路12へ供給される。つまり、下流チェックバルブ19は、フィルタ17側を上流、供給回路12側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。なお、下流チェックバルブ19は、所定の開弁圧(封止圧)を有していることから、圧縮空気が流れるとき、上流の圧力は下流の圧力よりも開弁圧だけ高くなる。
【0036】
また、フィルタ17の下流には、下流チェックバルブ19を迂回する迂回路としてのバイパス流路20が下流チェックバルブ19に対して並列に設けられている。バイパス流路20には、再生制御弁21が設けられている。
【0037】
再生制御弁21は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E64を介して再生制御弁21の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、再生制御弁21の動作を切り替える。再生制御弁21は、電源が切れた状態において閉弁してバイパス流路20を封止し、電源が入った状態において開弁してバイパス流路20を連通させる。ECU80は、例えば、エアタンク30内の空気圧の値を受けて、空気圧の値が所定の範囲を越えたとき再生制御弁21を動作させる。
【0038】
バイパス流路20には、再生制御弁21とフィルタ17との間にオリフィス22が設けられている。再生制御弁21が通電されると、供給回路12側の圧縮乾燥空気が、バイパス流路20を介して、オリフィス22によって流量を規制された状態でフィルタ17に送られる。フィルタ17に対し送られた圧縮乾燥空気は、フィルタ17を下流から上流に向けて逆流し、フィルタ17を通過する。このような処理は、フィルタ17を再生させる動作であり、ドライヤの再生動作という。このとき、フィルタ17に対し送られる圧縮乾燥空気は、空気供給通路18からフィルタ17等を通過して供給回路12に供給された乾燥及び清浄化された空気であるため、フィルタ17等に捕捉された水分及び油分をフィルタ17から除去することができる。ECU80は、通常の制御において、エアタンク30内の圧力が上限値(カットアウト圧)に到達すると、再生制御弁21を開弁する。一方、エアタンク30内の圧力が下限値(カットイン圧)に到達すると、開弁した再生制御弁21を閉弁する。
【0039】
コンプレッサ4とフィルタ17との間の部分から、分岐通路16が分岐している。分岐通路16にはドレン排出弁25が設けられており、分岐通路16の末端にはドレン排出口27が接続されている。
【0040】
フィルタ17から除去された水分及び油分を含む流体であるドレンは、圧縮空気とともにドレン排出弁25に対し送られる。ドレン排出弁25は、空気圧により駆動される空気圧駆動式の弁であって、分岐通路16において、フィルタ17とドレン排出口27との間に設けられている。ドレン排出弁25は、閉弁位置及び開弁位置の間で位置を変更する2ポート2位置弁である。ドレン排出弁25が開弁位置にあるとき、ドレンはドレン排出口27へ送られる。ドレン排出口27から排出されたドレンは、図示しないオイルセパレータによって回収されてもよい。なお、ドレンがフィルタ17を逆方向に通過した流体に相当する。
【0041】
ドレン排出弁25は、ガバナ26Aによって制御される。ガバナ26Aは、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E63を介してガバナ26Aの電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、ガバナ26Aの動作を切り替える。ガバナ26Aは、電源が入れられると、ドレン排出弁25に空気圧信号を入力することによって、ドレン排出弁25を開弁させる。また、ガバナ26Aは、電源が切られると、ドレン排出弁25に空気圧信号を入力せずに大気圧に開放することによって、ドレン排出弁25を閉弁させる。
【0042】
ドレン排出弁25は、ガバナ26Aから空気圧信号が入力されていない状態では、閉弁位置に維持され、ガバナ26Aから空気圧信号が入力されると、開弁位置に切り替わる。また、ドレン排出弁25においてコンプレッサ4に接続されている入力ポートの圧力が上限値を超えた場合、ドレン排出弁25が強制的に開弁位置に切り替えられる。
【0043】
コンプレッサ4とフィルタ17との間であって、かつ、コンプレッサ4と分岐通路16の間には、上流チェックバルブ15が設けられている。上流チェックバルブ15は、コンプレッサ4側を上流、フィルタ17側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。上流チェックバルブ15は、所定の開弁圧(封止圧)を有していることから、圧縮空気が流れるとき、上流の圧力は下流の圧力よりも開弁圧だけ高くなる。なお、上流チェックバルブ15の上流には、コンプレッサ4の出口のリード弁が設けられている。上流チェックバルブ15の下流には、分岐通路16やフィルタ17が設けられている。
【0044】
<コンプレッサ4>
コンプレッサ4は、アンロード制御弁26Bによって制御される。アンロード制御弁26Bは、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E62を介してアンロード制御弁26Bの電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、アンロード制御弁26Bの動作を切り替える。アンロード制御弁26Bは、電源が切られると、開放位置に切り替わり、アンロード制御弁26Bとコンプレッサ4との間の流路を大気開放する。また、アンロード制御弁26Bは、電源が入れられると、供給位置に切り替わり、コンプレッサ4に圧縮空気からなる空気圧信号を送る。なお、アンロード制御弁26Bがコンプレッサ制御弁として機能する。
【0045】
コンプレッサ4の状態は、アンロード制御弁26Bから空気圧信号が入力されると、非稼働状態(空運転)に切り替わる。例えば、供給回路12の圧力がカットアウト圧に到達したとき、圧縮乾燥空気の供給は不要である。供給回路12側の圧力がカットアウト圧に到達し、ECU80がアンロード制御弁26Bの電源を入れる(アンロード制御弁26Bを駆動する)と、アンロード制御弁26Bは、供給位置に切り替わる。これにより、アンロード制御弁26Bから、コンプレッサ4に空気圧信号が供給され、コンプレッサ4の状態が非稼働状態に切り替わる。
【0046】
<センサ>
コンプレッサ4と上流チェックバルブ15との間には、圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50は、空気供給通路18に対し接続されており、空気供給通路18の空気圧を測定して、測定した結果を配線E61を介してECU80に伝達する。
【0047】
下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、湿度センサ51及び温度センサ52が設けられている。湿度センサ51は、フィルタ17の下流の圧縮乾燥空気の湿度を測定して、測定した結果を、配線E65を介してECU80に出力する。温度センサ52は、フィルタ17の下流の圧縮乾燥空気の温度を測定して、測定した結果を、配線E66を介してECU80に出力する。ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された圧縮乾燥空気の湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の乾燥状態を判定する。すなわち、圧縮乾燥空気の湿度及び温度は、圧縮乾燥空気の乾燥状態を示す指標である。
【0048】
ECU80は、エアタンク30への圧縮乾燥空気の供給時の湿度及び温度から供給空気含有水分量を算出するとともに、エアタンク30から圧縮乾燥空気を逆流させる再生時の湿度及び温度からタンク空気含有水分基準量を算出する。タンク空気含有水分量は、式(1)で求められる。なお、供給空気含有水分量は、供給時にエアタンク30に対し送入される水分量であって、供給時の湿度と温度と、供給サイクル間の供給空気量とから算出可能である。タンク空気含有水分基準量は、水分量の更新時にエアタンク30内に存在する水分量であって、再生時の湿度及び温度又はタンク空気含有水分量から算出可能である。消費空気含有水分量は、圧縮乾燥空気の消費によりエアタンク30から送出される水分量であって、タンク空気含有水分量と消費サイクル間の消費空気量とから算出可能である。
【0049】
(タンク空気含有水分量)=(タンク空気含有水分基準量)+(タンク空気含有水分変化量)…(1)
(タンク空気含有水分変化量)=(供給空気含有水分量)-(消費空気含有水分量)
さらに下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、圧力センサ53が設けられている。圧力センサ53は、例えば、圧縮乾燥空気が貯留されるエアタンク30内の空気圧を検出可能に設けられ、配線E67を介してECU80に接続されている。下流チェックバルブ19と供給回路12との間の圧力はエアタンク30の圧力と同じであり、圧力センサ53の検出結果はエアタンク30内の圧力として用いることができる。なお、圧力センサ53は、供給回路12に設けられてもよいし、エアタンク30に設けられてもよい。
【0050】
<空気乾燥回路11の動作説明>
図2A~
図2Fに示すように、空気乾燥回路11は、少なくとも第1動作モード~第10動作モードを含む、複数の動作モードを有する。
【0051】
(第1動作モード)
図2Aに示すように、第1動作モードは、通常の除湿(ロード)を行う「供給」動作を行うモードである。この第1動作モードでは、再生制御弁21及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ閉弁し(図において「CLOSE」と記載)、ガバナ26Aを、コンプレッサ4に空気圧信号を入力しない開放位置とする(図において「CLOSE」と記載)。このとき、再生制御弁21、ガバナ26A、及びアンロード制御弁26Bには、電源が供給されない。また、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bは、それらの下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ大気開放する。第1動作モードでは、コンプレッサ4から圧縮空気が供給されているとき(図において「ON」と記載)、フィルタ17で水分等が除去され、供給回路12に対し圧縮空気が供給される。
【0052】
(第2動作モード)
図2Bに示すように、第2動作モードは、空気乾燥回路11内の圧縮乾燥空気をフィルタ17に通過させてフィルタ17を浄化する「パージ」動作を行うモードである。この第2動作モードでは、再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ開弁する(図において「OPEN」と記載)。このとき、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bにはそれぞれ、電源が供給されるとともに、それらの下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートはそれぞれ上流(供給回路12側)に接続される。これにより、コンプレッサ4が非稼働状態に切り替わり(図において「OFF」と記載)、ドレン排出弁25が開弁される。その結果、下流チェックバルブ19とフィルタ17との間の圧縮乾燥空気が、フィルタ17内を第1動作モード(供給)の空気の流れとは逆方向に流れ(逆流)、フィルタ17によって捕捉された水分等が、ドレンとしてドレン排出口27から排出される。また、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0053】
(第3動作モード)
図2Cに示すように、第3動作モードは、フィルタ17を再生する「再生」動作を行うモードである。この第3動作モードでは、再生制御弁21及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ開弁し、ガバナ26Aを入力位置とする。このとき、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bに加え、再生制御弁21にも電源が供給される。第3動作モードでは、コンプレッサ4を非稼働状態とさせるとともに、供給回路12又はエアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気をフィルタ17に逆流させて、ドレン排出口27から排出させる。これによって、フィルタ17に捕捉された水分等が除去される。第2動作モード及び第3動作モードは、いずれもフィルタ17を浄化させるモードであるが、第3動作モードは、少なくとも再生制御弁21を開弁する点で第2動作モードと異なる。これにより、第3動作モードでは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気を、供給回路12及びバイパス流路20を介して、フィルタ17に通過させることができる。そのため、フィルタ17を浄化する効果が第2動作モードよりも高い。また、第3動作モードでも、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0054】
(第4動作モード)
図2Dに示すように、第4動作モードは、コンプレッサ4を稼働させながらコンプレッサ4から供給された圧縮空気を排出する「オイルカット」動作を行うモードである。コンプレッサ4が非稼働状態である場合、コンプレッサ4の圧縮室に油分が溜まることがある。圧縮室内に油分が溜まった状態でコンプレッサ4の状態が稼働状態に切り替えられると、圧縮室から送られる圧縮空気に含まれる油分量が多くなることがある。オイルカット動作は、フィルタ17への負荷を軽減するために、この油分過多な圧縮空気を、ドレン排出弁25を介して排出する目的で実行される。この第4動作モードでは、再生制御弁21及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ閉弁するとともに、ガバナ26Aを一定期間の開弁後に閉弁する。第4動作モードでは、コンプレッサ4の状態が稼働状態であるとき、一定期間、コンプレッサ4の供給する圧縮空気がドレン排出口27から排出される。したがって、コンプレッサ4が非稼働状態から稼働状態に切り替えられた直後にフィルタ17の水分捕捉量及び油分捕捉量が増大することを抑制することができる。稼働状態でエンジン回転数が大きくなるとき及びエンジンの高負荷時等にコンプレッサ4からの油分が増加するときには、オイルカット動作を行うこともできる。
【0055】
(第5動作モード)
図2Eに示すように、第5動作モードは、エンジンが動いているときにパージ無しでコンプレッサ4を停止させる「パージレス供給停止」動作を行うモードである。この第5動作モードでは、再生制御弁21及びガバナ26Aをそれぞれ閉弁するとともに、アンロード制御弁26Bを開弁する。第5動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18又はフィルタ17の乾燥剤中に残留する圧縮空気又は圧縮乾燥空気をドレン排出口27から排出させないことで空気圧が維持される。
【0056】
(第6動作モード)
図2Fに示すように、第6動作モードは、与圧処理を行う「コンプレッサアシスト」動作を行うモードである。この第6動作モードでは、再生制御弁21及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ開弁するとともに、ガバナ26Aを開放位置とする。第6動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18及びフィルタ17の乾燥剤中に供給回路12の圧縮空気を供給する(逆流させる)ことで、空気供給通路18及びフィルタ17の圧力を大気圧よりも高くして、上流チェックバルブ15の背圧(空気圧)を大気圧よりも高い圧力に維持する。よって、シリンダ内の負圧の発生を抑制して、空運転時のコンプレッサ4の運転負荷の軽減を図ることができる。具体的には、コンプレッサ4が空運転しているとき、ドレン排出弁25を封止して、コンプレッサ4によって供給された圧縮空気によりフィルタ17の乾燥剤中及び空気供給通路18内の空気圧を大気圧より高い圧力に維持する。なお、第6動作モードが充填動作に相当する。
【0057】
(第7動作モード)
図2Aに示すように、第7動作モードは、エンジンが無負荷状態であるときにコンプレッサ4が駆動する回生時に除湿(ロード)を行う「回生供給」動作を行うモードである。この第7動作モードでは、第1動作モードと同様に、再生制御弁21、ガバナ26A、及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ閉弁する(図において「CLOSE」と記載)。
【0058】
(第8動作モード)
図2Cに示すように、第8動作モードは、フィルタ17を強制的に再生する「強制再生」動作を行うモードである。この第8動作モードでは、第3動作モードと同様に、再生制御弁21、ガバナ26A、及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ開弁する。
【0059】
(第9動作モード)
図2Eに示すように、第9動作モードは、エンジンの再始動時にパージ無しでコンプレッサ4を停止させる「エンジンスタートヘルプ」動作を行うモードである。この第9動作モードでは、再生制御弁21及びガバナ26Aをそれぞれ閉弁するとともに、アンロード制御弁26Bを開弁する。第9動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18又はフィルタ17の乾燥剤中に残留する圧縮空気又は圧縮乾燥空気をドレン排出口27から排出しないことによって空気圧を維持する。
【0060】
(第10動作モード)
第10動作モードは、空気乾燥回路11及びフィルタ17内の圧力を、コンプレッサアシストを効率よく実施するために最適な圧力に低下させる「減圧」動作を行うモードである。この第10動作モードでは、再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26Aを開放位置とする。これにより、ドレン排出弁25が開弁する。第10動作モードでは、空気乾燥回路11及びフィルタ17内の圧縮乾燥空気は、該圧縮乾燥空気の圧力が所定の圧力に減圧されるように、ドレン排出弁25から排出される。
【0061】
(動作モードの遷移)
図3に示すように、空気乾燥回路11が有する10個の動作モードは、ECU80による各判定に基づいて変更される。
【0062】
図4~
図10を参照して、各動作モードからの遷移を説明する。
ECU80は、コンプレッサ4によって出力される圧縮空気を供給回路12に供給する供給工程を行う。供給工程は、例えばエンジンが駆動されたとき等の条件にしたがって開始される。供給工程では、空気乾燥回路11が供給(第1動作)モードM1にある。
【0063】
図4に示すように、供給(第1動作)モードM1では、ECU80は、供給回路12の圧力がカットアウト圧よりも高いか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30の圧力を取得し、圧力がカットアウト圧に到達したか否かを判定する。
【0064】
そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットアウト圧に到達したと判定すると(ステップS11:YES)、エアタンク30の水分量が多いか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、ECU80は、エアタンク30の水分量が所定値以上であるときにはフィルタ17の乾燥剤を再生させる必要があるため、エアタンク30の水分量を判定する。
【0065】
そして、ECU80は、エアタンク30の水分量が所定値以上と判定すると(ステップS12:YES)、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気をフィルタ17に通過させてフィルタ17の乾燥剤を再生させる再生(第3動作)モードM3に移行する。
【0066】
また、ECU80は、エアタンク30の水分量が所定値未満と判定すると(ステップS12:NO)、下流チェックバルブ19とフィルタ17との間の圧縮乾燥空気をフィルタ17に通過させて、フィルタ17に捕捉された水分等がドレンとしてドレン排出口27から排出されるパージ(第2動作)モードM2に移行する。
【0067】
一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットアウト圧に到達していないと判定すると(ステップS11:NO)、供給回路12の圧力がカットイン圧以上であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0068】
そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧以上であると判定すると(ステップS13:YES)、エンジン回転数が低いか否かを判定する(ステップS14)。すなわち、ECU80は、エンジンの再始動に備えるため、エンジンが停止するほどのエンジン回転数(例えば数百rpm以下)に低下したか否かを判定する。
【0069】
そして、ECU80は、エンジン回転数が高い(例えば数百rpmよりも高い)と判定すると(ステップS14:NO)、ステップS15に進む。
一方、ECU80は、エンジン回転数が低い(例えば数百rpm以下)と判定すると(ステップS14:YES)、エンジンスタートヘルプ(第9動作)モードM9に移行する。
【0070】
一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いと判定すると(ステップS13:NO)、オイルカット(第4動作)モードM4への移行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、ECU80は、オイルカット(第4動作)モードM4への移行条件として、所定時間の経過、オイルカットの実施回数が規定回数未満、及びコンプレッサ4の稼働率が低い、の全てが成立しているか否かを判定する。そして、ECU80は、オイルカット(第4動作)モードM4への移行条件が成立していないと判定すると(ステップS15:NO)、処理をステップS11に戻す。
【0071】
一方、ECU80は、オイルカット(第4動作)モードM4への移行条件が成立していると判定すると(ステップS15:YES)、コンプレッサ4を稼働させながらコンプレッサ4から供給された圧縮空気を排出するオイルカット(第4動作)モードM4に移行する。
【0072】
オイルカット(第4動作)モードM4への移行後、ECU80は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。すなわち、ECU80は、オイルカット(第4動作)モードM4を所定時間行う。そして、ECU80は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS16:YES)、供給(第1動作)モードM1に移行する。
【0073】
図5に示すように、パージ(第2動作)モードM2及び再生(第3動作)モードM3では、ECU80は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS21)。すなわち、ECU80は、パージ(第2動作)モードM2及び再生(第3動作)モードM3を所定時間行う。
【0074】
そして、ECU80は、所定時間が経過していないと判定すると(ステップS21:NO)、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いか否かを判定する(ステップS24)。すなわち、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30の圧力を取得し、圧力がカットイン圧に到達したか否かを判定する。
【0075】
そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達したと判定すると(ステップS24:YES)、圧縮乾燥空気が足りていないため、供給(第1動作)モードM1に移行する。一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達していないと判定すると(ステップS24:NO)、処理をステップS21に戻す。
【0076】
一方、ECU80は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS21:YES)、コンプレッサアシスト(第6動作)処理を有効としているか否かを判定する(ステップS22)。
【0077】
そして、ECU80は、コンプレッサアシスト(第6動作)処理を無効としていると判定すると(ステップS22:NO)、パージ無しでコンプレッサ4を停止させるパージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。
【0078】
また、ECU80は、コンプレッサアシスト(第6動作)処理を有効としていると判定すると(ステップS22:YES)、与圧処理を行うコンプレッサアシスト(第6動作)モードM6に移行する。
【0079】
コンプレッサアシスト(第6動作)モードM6への移行後、ECU80は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS23)。すなわち、ECU80は、コンプレッサアシスト(第6動作)モードM6を所定時間行う。そして、ECU80は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS23:YES)、パージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。
【0080】
図6に示すように、パージレス供給停止(第5動作)モードM5では、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いか否かを判定する(ステップS31)。すなわち、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30の圧力を取得し、圧力がカットイン圧に到達したか否かを判定する。
【0081】
そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達したと判定すると(ステップS31:YES)、圧縮乾燥空気が足りていないため、供給(第1動作)モードM1に移行する。
【0082】
一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達していないと判定すると(ステップS31:NO)、回生供給(第7動作)モードM7への移行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、ECU80は、回生供給(第7動作)モードM7への移行条件として、車両が走行中である、燃料消費なし、及び供給回路12の圧力が閾値未満、の全てが成立しているか否かを判定する。そして、ECU80は、回生供給(第7動作)モードM7への移行条件が成立していないと判定すると(ステップS32:NO)、処理をステップS31に戻す。
【0083】
一方、ECU80は、回生供給(第7動作)モードM7への移行条件が成立していると判定すると(ステップS32:YES)、回生時に除湿(ロード)を行う回生供給(第7動作)モードM7に移行する。
【0084】
図7に示すように、回生供給(第7動作)モードM7では、ECU80は、パージレス供給停止(第5動作)モードM5への移行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS41)。すなわち、ECU80は、パージレス供給停止(第5動作)モードM5への移行条件として、供給回路12の圧力がカットアウト圧よりも高い、所定時間が経過した、エンジンの燃料消費が多い、の少なくとも一つが成立しているか否かを判定する。そして、ECU80は、パージレス供給停止(第5動作)モードM5への移行条件が成立していると判定すると(ステップS41:YES)、パージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。
【0085】
一方、ECU80は、パージレス供給停止(第5動作)モードM5への移行条件が成立していないと判定すると(ステップS41:NO)、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いか否かを判定する(ステップS42)。すなわち、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30の圧力を取得し、圧力がカットイン圧に到達したか否かを判定する。
【0086】
そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達したと判定すると(ステップS42:YES)、圧縮乾燥空気が足りていないため、供給(第1動作)モードM1に移行する。
【0087】
一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達していないと判定すると(ステップS42:NO)、強制再生(第8動作)モードM8への移行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS43)。すなわち、ECU80は、強制再生(第8動作)モードM8への移行条件として、供給回路12の圧力が閾値よりも高い、エアタンク30の水分量が多い、の両方が成立しているか否かを判定する。ECU80は、回生供給(第7動作)モードM7では、圧縮乾燥空気の乾燥状態をエアタンク30内のタンク空気含有水分量によって判定する。すなわち、エアタンク30内のタンク空気含有水分量は圧縮乾燥空気の乾燥状態を示す指標である。ECU80は、タンク空気含有水分量が所定値以上であればエアタンク30の水分量が多いと判定し、タンク空気含有水分量が所定値よりも少なければエアタンク30の水分量が少ないと判定する。そして、ECU80は、強制再生(第8動作)モードM8への移行条件が成立していないと判定すると(ステップS43:NO)、処理をステップS42に戻す。
【0088】
一方、ECU80は、強制再生(第8動作)モードM8への移行条件が成立していると判定すると(ステップS43:YES)、フィルタ17を強制的に再生する強制再生(第8動作)モードM8に移行する。ECU80は、水分量が多いと判定された場合であって他の条件が成立したときに、圧縮乾燥空気を逆方向に流す強制再生(第8動作)モードM8を実行する。
【0089】
図8に示すように、強制再生(第8動作)モードM8では、ECU80は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS51)。すなわち、ECU80は、強制再生(第8動作)モードM8を所定時間行う。
【0090】
そして、ECU80は、所定時間が経過していないと判定すると(ステップS51:NO)、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いか否かを判定する(ステップS55)。すなわち、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30の圧力を取得し、圧力がカットイン圧に到達したか否かを判定する。
【0091】
そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達したと判定すると(ステップS55:YES)、圧縮乾燥空気が足りていないため、供給(第1動作)モードM1に移行する。一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧に到達していないと判定すると(ステップS55:NO)、処理をステップS51に戻す。
【0092】
一方、ECU80は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS51:YES)、コンプレッサ4の稼働率が高いか否かを判定する(ステップS52)。すなわち、ECU80は、コンプレッサ4の稼働率に基づきコンプレッサ4の駆動時の負荷が高いか否かを判定している。
【0093】
そして、ECU80は、コンプレッサ4の稼働率が高いと判定すると(ステップS52:YES)、コンプレッサアシスト(第6動作)は不要であるため、供給(第1動作)モードM1に移行する。
【0094】
一方、ECU80は、コンプレッサ4の稼働率が低いと判定すると(ステップS52:NO)、コンプレッサアシスト(第6動作)を行うため、コンプレッサアシスト(第6動作)処理を有効としているか否かを判定する(ステップS53)。
【0095】
そして、ECU80は、コンプレッサアシスト(第6動作)処理を無効としていると判定すると(ステップS53:NO)、パージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。また、ECU80は、コンプレッサアシスト(第6動作)処理を有効としていると判定すると(ステップS53:YES)、コンプレッサアシスト(第6動作)モードM6に移行する。
【0096】
コンプレッサアシスト(第6動作)モードM6への移行後、ECU80は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS54)。すなわち、ECU80は、コンプレッサアシスト(第6動作)モードM6を所定時間行う。そして、ECU80は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS54:YES)、パージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。
【0097】
図9に示すように、エンジンスタートヘルプ(第9動作)モードM9では、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧以上であるか否かを判定する(ステップS61)。そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧未満であると判定すると(ステップS61:NO)、供給(第1動作)モードM1に移行する。
【0098】
一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧以上であると判定すると(ステップS61:YES)、エンジン回転数が高い(例えば数百rpmよりも高い)か否かを判定する(ステップS62)。そして、ECU80は、エンジン回転数が低い(例えば数百rpm以下)と判定すると(ステップS62:NO)、ステップS61に戻る。
【0099】
一方、ECU80は、エンジン回転数が高い(例えば数百rpmよりも高い)と判定すると(ステップS62:YES)、パージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。
【0100】
図10に示すように、減圧(第10動作)モードM10では、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いか否かを判定する(ステップS71)。そして、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧よりも低いと判定すると(ステップS71:YES)、供給(第1動作)モードM1に移行する。
【0101】
一方、ECU80は、供給回路12の圧力がカットイン圧以上であると判定すると(ステップS71:NO)、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS72)。すなわち、ECU80は、減圧(第10動作)モードM10で、所定時間の間、動作する。そして、ECU80は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS72:YES)、パージレス供給停止(第5動作)モードM5に移行する。
【0102】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)再生(第3動作)の実行後に、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気を空気供給通路18に充填するコンプレッサアシスト(第6動作)が実行される。このため、再生(第3動作)によって大気圧となった空気供給通路18の圧力をコンプレッサアシスト(第6動作)によって大気圧よりも高くすることができる。よって、コンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができる。
【0103】
(2)エンジンの再始動時にコンプレッサ4を停止させるエンジンスタートヘルプ(第9動作)が行われる。このため、再生(第3動作)によって大気圧となった空気供給通路18の圧力をコンプレッサアシスト(第6動作)によって大気圧よりも高くすることによって、コンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができるとともに、エンジン始動時の負荷を低減することができる。よって、燃費を低減することができる。
【0104】
(3)パージ(第2動作)の実行後に、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気を空気供給通路18に充填するコンプレッサアシスト(第6動作)が行われる。このため、パージ(第2動作)によって大気圧となった空気供給通路18の圧力をコンプレッサアシスト(第6動作)によって大気圧よりも高くすることができる。よって、コンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができる。
【0105】
(4)エンジンの再始動時にコンプレッサ4を停止させるエンジンスタートヘルプ(第9動作)が行われる。このため、パージ(第2動作)によって大気圧となった空気供給通路18の圧力をコンプレッサアシスト(第6動作)によって大気圧よりも高くすることによって、コンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができるとともに、エンジン始動時の負荷を低減することができる。よって、燃費を低減することができる。
【0106】
(5)空気供給通路18に圧縮空気を充填するコンプレッサアシスト(第6動作)の実行後に、空気供給通路18の圧力が維持された状態でコンプレッサ4が停止されるため、コンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができる。
【0107】
(6)空気供給通路18の圧力が維持された状態でコンプレッサ4が停止されたパージレス供給停止(第5動作)の実行後に、回生供給(第7動作)が実行される。このため、エンジンが無負荷状態であるときのコンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができる。
【0108】
(7)回生供給(第7動作)が所定時間行われた後に、空気供給通路18の圧力が維持された状態でコンプレッサ4が停止されたパージレス供給停止(第5動作)が実行される。このため、コンプレッサ4の運転開始時の負荷を低減することができる。
【0109】
(8)ドレン排出弁25と再生制御弁21とアンロード制御弁26BとをECU80が制御することによって、供給(第1動作)、パージ(第2動作)、再生(第3動作)、オイルカット(第4動作)、パージレス供給停止(第5動作)、コンプレッサアシスト(第6動作)、及び回生供給(第7動作)、強制再生(第8動作)、エンジンスタートヘルプ(第9動作)、及び減圧(第10動作)を行うことができる。
【0110】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0111】
・上記実施形態では、タンク空気含有水分量をタンク空気含有水分基準量やタンク空気含有水分変化量等から算出した。しかしながら、エアタンク30内の圧縮乾燥空気の湿度及び温度からタンク空気含有水分量を推定してもよい。
【0112】
・上記実施形態において、パージ(第2動作)モードM2、再生(第3動作)モードM3、オイルカット(第4動作)モードM4、コンプレッサアシスト(第6動作)モードM6、回生供給(第7動作)モードM7、強制再生(第8動作)モードM8、及び減圧(第10動作)モードM10を所定時間行うようにした。しかしながら、各モードにおける所定時間は、任意に設定してもよい。
【0113】
・上記実施形態のステップS15において、オイルカット(第4動作)モードM4への移行条件は、オイルカットの実施回数が規定回数未満、及びコンプレッサ4の稼働率が低い、の全てが成立していることであった。これに代えて、ECU80は、それらのうちの少なくとも一つが成立しているときに、オイルカット(第4動作)モードM4へ移行してもよい。すなわち、ECU80は、ステップS15において、オイルカット(第4動作)モードM4への移行条件として、所定時間の経過、オイルカットの実施回数が規定回数未満、及びコンプレッサ4の稼働率が低い、の少なくとも一つが成立しているか否かを判定する。
【0114】
・上記実施形態のステップS32において、回生供給(第7動作)モードM7への移行条件は、車両が走行中である、燃料消費なし、及び供給回路12の圧力が閾値未満の全てが成立していることであった。これに代えて、ECU80は、それらのうちの少なくとも一つが成立しているときに、回生供給(第7動作)モードM7へ移行してもよい。すなわち、ECU80は、ステップS32において、回生供給(第7動作)モードM7への移行条件として、車両が走行中である、燃料消費なし、及び供給回路12の圧力が閾値未満、の少なくとも一つが成立しているか否かを判定する。
【0115】
・上記実施形態のステップS43において、強制再生(第8動作)モードM8への移行条件は、供給回路12の圧力が閾値よりも高いこと、エアタンク30の水分量が多いこと、の両方が成立していることであった。これに代えて、ECU80は、少なくともエアタンク30の水分量が多いこと、が成立しているときに、強制再生(第8動作)モードM8へ移行してもよい。すなわち、ECU80は、ステップS43において、強制再生(第8動作)モードM8への移行条件として、エアタンク30の水分量が多いが成立しているか否かを判定する。
【0116】
・上記実施形態では、フィルタ17は、油分捕捉部を含むが、フィルタ17から油分捕捉部を省略してもよい。
・上記実施形態において、空気乾燥回路は、上記構成のものに限られない。空気乾燥回路は、要は、供給(第1動作)モードM1とパージ(第2動作)モードM2と再生(第3動作)モードM3とパージレス供給停止(第5動作)モードM5とコンプレッサアシスト(第6動作)モードM6と回生供給(第7動作)モードM7とを実行可能な構成であればよい。したがって、空気乾燥回路は、オイルカット(第4動作)モードM4、強制再生(第8動作)モードM8、エンジンスタートヘルプ(第9動作)モードM9、減圧(第10動作)モードM10を必須の動作とするものではない。
【0117】
・上記実施形態において、パージ(第2動作)モードM2を省略してもよい。
・さらに、回生供給(第7動作)モードM7を省略してもよい。
・また、パージレス供給停止(第5動作)モードM5を省略してもよい。
【0118】
・上記実施形態では、空気供給システム10は、トラック、バス、建機等の車両に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システムは、乗用車、鉄道車両等、他の車両に搭載されてもよい。
【0119】
・ECU80は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、ECU80は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、ECU80は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0120】
4…コンプレッサ、10…空気供給システム、11…空気乾燥回路、12…供給回路、15…上流チェックバルブ、16…分岐通路、17…フィルタ、18…空気供給通路、19…下流チェックバルブ、20…バイパス流路、21…再生制御弁、22…オリフィス、25…ドレン排出弁、26A…ガバナ、26B…アンロード制御弁、27…排出口としてのドレン排出口、30…エアタンク、50…圧力センサ、51…湿度センサ、52…温度センサ、53…圧力センサ、80…ECU、80A…記憶部、E61~E67…配線。