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特許7483674カテーテルからの漏洩を低減するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】カテーテルからの漏洩を低減するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/13 20210101AFI20240508BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20240508BHJP
   A61M 60/411 20210101ALI20240508BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20240508BHJP
   A61M 60/829 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
A61M60/13
A61M60/216
A61M60/411
A61M60/531
A61M60/829
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021502896
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019042330
(87)【国際公開番号】W WO2020018742
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】62/700,683
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャハーンギール エミリア
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0277803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/13
A61M 60/216
A61M 60/411
A61M 60/531
A61M 60/829
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと該ハウジング内に配置されたロータとを備えるポンプ;
近位端と遠位端と中心ルーメンとを有する細長いマルチルーメンカテーテルであって、該遠位端は該ハウジングに隣接している、該細長いマルチルーメンカテーテル;
第一の開口部と1つまたは複数のサイドポートとを備えるコンパートメントであって、該コンパートメントの該第一の開口部は、該細長いマルチルーメンカテーテルの該近位端に接続されており、該コンパートメントの該1つまたは複数のサイドポートは、該コンパートメントの該第一の開口部の近位に位置付けられている、該コンパートメント;
該コンパートメント内の少なくとも1つの電子的要素;
外部供給源から、該コンパートメントの該1つまたは複数のサイドポートを通り、該コンパートメントの該第一の開口部を通って、該細長いマルチルーメンカテーテルの該遠位端へと液体を移送するよう構成された、該細長いマルチルーメンカテーテルの第一のルーメン;
該コンパートメントと該マルチルーメンカテーテルとの間の境界部を通って延びる導管であって、該導管は、該第一の開口部の近位に位置付けられた第一の端部と、該第一の開口部の遠位に位置付けられた第二の端部とを備え、該導管の該第一の端部から該コンパートメントの該第一の開口部を通って該導管の該第二の端部へと気体を移送するよう構成されており、該導管の該第二の端部は、該細長いマルチルーメンカテーテルの該中心ルーメンと流体連通している、該導管;および
該導管内に配置されたフィルタであって、該マルチルーメンカテーテルから該コンパートメント内への該液体の流出を防止するよう構成された、該フィルタ
を備える、心臓内血液ポンプシステム。
【請求項2】
フィルタが、マルチルーメンカテーテルからコンパートメント内への液体の流出を防止しながら、導管の第一の端部から該導管の第二の端部を通って該マルチルーメンカテーテル内に入る気体の流れを可能にするよう構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
第一のルーメンがコンパートメントを通過しており、
フィルタが、導管を通過して該コンパートメントに到達する、中心ルーメンからの液体の漏洩を防止するよう構成されている、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項4】
フィルタが、コンパートメントの第一の開口部の近位に位置付けられている、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
フィルタが、コンパートメントの第一の開口部の遠位に位置付けられている、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項6】
フィルタが、コンパートメントの第一の開口部を横切って延びている、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
フィルタの一部分がコンパートメント内に延びている、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項8】
液体が、血液、生理食塩水、パージ流体、ヘパリン、およびグルコースのうちの少なくとも1つを含む、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項9】
液体がパージ流体を含み、該パージ流体が、第一のルーメンを通ってロータへと流れ、ポンプに実質的に血液が含まれていない状態を維持する、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項10】
フィルタが、液体に曝露された時に自己封止する、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項11】
フィルタが、液体への曝露前は気体透過性である、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項12】
フィルタが、多孔質基材の孔壁に付着したヒドロゲルを含む、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの電子的要素が、回路基板、ワイヤ、はんだ付けされたまたは表面実装された電気接続部、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、銅電気接続部、メモリ、圧力トランスデューサ、および圧力センサのうちの少なくとも1つを含む、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
導管によって移送される気体が滅菌ガスである、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項15】
コンパートメントとカテーテルとの間の第一の開口部にコネクタをさらに備え、第一のルーメンおよびフィルタが該コネクタを通過している、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
コネクタが、ある内部体積を有し、フィルタが、該コネクタの該内部体積の少なくとも50パーセントを占める、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
フィルタが、導管内にフィットするようサイズ決めおよび成形されている、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項18】
フィルタが、錐台または細い円柱の形状である、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項19】
第一のルーメンが中心ルーメン内にある、前記請求項のいずれか一項記載のシステム。
【請求項20】
あるルーメン断面を有する少なくとも1つのルーメンを画定するカテーテルを備える心臓内血液ポンプシステムを製造する方法であって、以下の工程を含む、方法:
濾過材をヒドロゲルでコーティングする工程;
該ルーメン断面のそれと等しいフィルタ断面を有するようサイズ決めおよび成形された自己封止フィルタを形成するために、コーティングされた該濾過材をアセンブルする工程;
該自己封止フィルタを密封コンパートメントの遠位端に配置する工程;
該自己封止フィルタが該密封コンパートメントと細長いカテーテルの一部分との間に延びるように該細長いカテーテルを配置する工程であって、該細長いカテーテルが少なくとも1つのルーメンを画定する、該工程;および
該密封コンパートメントの少なくとも一部分を通って延びる中空チューブを介して、該細長いカテーテルへ滅菌ガスを送達する工程。
【請求項21】
濾過材が、繊維、顆粒、および粉末のうちの少なくとも1つを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
マルチルーメンカテーテルの中心ルーメンを滅菌するために、導管の第一の端部を通り、コンパートメントの第一の開口部を通って、該導管の第二の端部へと滅菌ガスを貫通させる工程であって、該導管は、該コンパートメントの該第一の開口部を横切って配置されており、該コンパートメントは、該カテーテルの近位端に隣接して配置されている、該工程;および
外部供給源から該マルチルーメンカテーテルの遠位端へと第一のルーメンを通して液体を通過させる工程であって、フィルタが、該マルチルーメンカテーテルから該コンパートメント内への該液体の流出を防止する、該工程
を含む、心臓内血液ポンプシステム用のカテーテルにおける漏洩を防止する方法。
【請求項23】
フィルタが、導管の第一の端部から該導管の第二の端部への気体の流れを可能にした後で、マルチルーメンカテーテルからコンパートメント内への液体の流出を防止する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
心臓内血液ポンプシステムが請求項1~19のいずれか一項記載のシステムである、請求項20~23のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年7月19日に出願された"SYSTEMS AND METHODS FOR REDUCING LEAKS FROM A CATHETER"という名称の米国仮特許出願第62/700,683号に対する優先権および恩典を主張する。前記出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
心臓内心臓ポンプアセンブリは、外科的または経皮的に心臓内に導入することができ、心臓または循環系内のある場所から心臓または循環系内の別の場所へ血液を送達するために使用される。例えば、心臓内ポンプは、心臓内に配置された場合、心臓の左心室から大動脈内へ血液をポンピングするか、または右心室から肺動脈へ血液をポンピングすることができる。心臓内ポンプは、患者の体外に位置付けられたモータまたは患者の体内に位置付けられたモータによって駆動される。いくつかの心臓内血液ポンプシステムは、自己心臓(native heart)と並行して動作し、心拍出量を補い、心臓の構成部分の負荷を部分的または十分に軽減することができる。このようなシステムの例には、IMPELLA(登録商標)系列の装置が含まれる(Abiomed, Inc.、マサチューセッツ州ダンバース)。
【0003】
血液ポンプシステムはポンプとコンパートメントとを含む。カテーテルの一方の端部がポンプに、他方の端部がコンパートメントに取り付けられている。カテーテルは、典型的には、液体を遠位方向にポンプまで移送する複数の流体ルーメンを含む。コンパートメントは多機能であってもよい。いくつかの適応形態において、コンパートメントは、機械的構成要素と、ポンプが動作し維持されることを可能にする電子装置とを含む。カテーテル内のルーメンからの漏洩物は、コンパートメントに到達してコンパートメント内の電子的要素を危険にさらす可能性がある。例えば、漏洩は、ポンプの停止または全システム圧力の減少につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
心臓内血液ポンプシステムにおける漏洩を防止するためのシステム、方法および装置が本明細書に記載される。そのようなシステムは、ポンプの機能性を維持しながら、カテーテルからの、電子的要素を収容する血液ポンプシステムのコンパートメント内への流体の流出を防止することができる。本明細書に記載されるように、有利には、別個にコンパートメントを密封するために、血液ポンプシステムのカテーテルとコンパートメントとの間にフィルタが設置される。例えば、フィルタは、滅菌ガスがフィルタを通過してカテーテルに至ることを許容するが、カテーテルからの液体(例えば、漏洩の結果としての)がフィルタを通過してコンパートメント内に入ることを防止する。
【0005】
いくつかの実施形態において、心臓内血液ポンプシステムは、ポンプ;ポンプの近位にあるカテーテル;カテーテルの近位にあるコンパートメント;コンパートメントとカテーテルとの間の境界部を通って延びる導管;および導管内のフィルタを備える。例えば、血液ポンプシステムは、Abiomed, Inc.のImpella(登録商標)装置または任意の他の適切なシステムであってもよい。いくつかの実施形態において、制御装置は、本明細書に記載の血液ポンプシステムの操作を容易にするよう構成される。例えば、制御装置は、Abiomed, Inc.のAutomated Impella Controller(AIC)(登録商標)、または入力信号を受信しそれを操作信号に変換してポンプを操作する任意の他の適切な制御装置であってもよい。心臓内血液ポンプシステムの操作を容易にするよう構成された、分離された制御装置の少なくとも1つの利点は、システムの厳密な制御、およびシステムに関連したデータの取得である。
【0006】
いくつかの実施形態において、ポンプは、ハウジング;およびハウジング内に配置されたロータを備える。ロータは、少なくとも1つのブレードを有してもよい。特に、ロータは、回転力を受けた時に流体流を発生させるよう成形されたインペラブレードを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記ロータは、ロータとステータとを有する植込み型モータによって駆動される。前記ロータの近位端を駆動シャフトに連結してもよい。いくつかの実施形態において、モータは患者の体外にあり、細長い機械式動力伝達要素、例えば可撓性駆動シャフト、駆動ケーブルまたは流体継手によってロータを駆動する。
【0007】
いくつかの実施形態において、カテーテルは、近位端と遠位端と中心ルーメンとを有する細長いマルチルーメンカテーテルである。細長いマルチルーメンカテーテルの遠位端は、ポンプハウジングに隣接していてもよい。例えば、血液ポンプシステムを使用している時、ポンプハウジングは患者の心臓の内部に設置されており、細長いマルチルーメンカテーテルは、カテーテルの第一部分が患者の体内にありかつカテーテルの第二部分が患者の体外にあるように、患者の心臓から患者の脈管構造を通って延びていてもよい。カテーテルは、2つ、3つ、4つ、5つ、または任意の適切な数のルーメンを含んでもよい。例えば、2つの別個のチューブがカテーテルの中心ルーメンを通過し、したがって、最初の中心ルーメンと、第一のチューブを通るルーメンと、第二のチューブを通るルーメンという、合計3つのルーメンが画定されてもよい。いくつかのルーメンはカテーテルの全長に延びていてもよく、一方、他のルーメンはカテーテルを部分的にだけ通って延びていてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、コンパートメントはカテーテルの近位端の近位にある。例えば、コンパートメントの遠位端は、カテーテルの近位端に隣接して位置付けられてもよい。コンパートメントをカテーテルの近位端に隣接して配置することの少なくとも1つの利点は、管類がコンパートメントを通って延びてカテーテルのルーメンに入り得るということである。いくつかの例において、カテーテルは、(例えば、カテーテルとコンパートメントとの間の接続点において構造的支持を提供するために)コンパートメント内に部分的に延び得る。いくつかの例において、カテーテルの近位端はコンパートメントの遠位端に接している。
【0009】
いくつかの実施形態において、血液ポンプシステムは、コンパートメントとカテーテルとの間の境界部にコネクタをさらに備える。第一のルーメンおよび導管はコネクタを通過してもよい。いくつかの実施形態において、コネクタはある内部体積を有し、フィルタはコネクタの内部体積の少なくとも50パーセントを占める。いくつかの例において、コネクタはコンパートメント内に部分的に延びる。いくつかの例において、カテーテルはコネクタ内に部分的に延びる。コンパートメントとカテーテルとの間にコネクタを設けることの少なくとも1つの利点は、これら2つの要素の間の接続点において追加的な構造安定性を提供するということである。例えば、コネクタは、カテーテルがコンパートメントに接続する場所でカテーテルが急角度で曲がることまたはよじれることを防止し得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、コンパートメントは、第一の開口部;および1つまたは複数のサイドポートを備える。コンパートメントの第一の開口部は、コンパートメントの遠位端に位置付けられ、カテーテルの近位端に接続していてもよい。コンパートメントの1つまたは複数のサイドポートは、コンパートメントの第一の開口部の近位に位置付けられていてもよい。例えば、1つまたは2つのサイドポートがコンパートメントの遠位端と近位端の間に位置付けられていてもよい。サイドポートを設けることの少なくとも1つの利点は、流体を移送するルーメンがコンパートメント内に入り、次いでカテーテルの近位端の中に延びることが可能になるということである。特に、サイドポートは、カテーテルを通してポンプまたは患者に流体を提供し得る外部流体供給源との接続を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの電子的要素がコンパートメント内に存在する。少なくとも1つの電子的要素は、メモリ、圧力トランスデューサ、および/または圧力センサを含んでもよい。例えば、トランジスタ、インダクタ、抵抗器、コンデンサ、センサまたは任意の他の適切な要素を備えたプリント回路板が、コンパートメント内に配置されていてもよい。コンパートメント内の電子装置はまた、ポンプをポンプ制御装置に接続することを可能にし得る。コンパートメント内に記憶素子を収容することの少なくとも1つの利点は、ポンプが、異なる時点で複数の制御装置に接続される場合に、血液ポンプシステムが動作パラメータを格納し得るということである。コンパートメント内に圧力トランスデューサおよび/または圧力センサを収容することの少なくとも1つの利点は、圧力信号または関連パラメータを制御装置に送信し、ユーザに対して表示できるように、ポンプシステムが(例えば、圧力トランスデューサからの)圧力読み取り値を「変換」し得るということである。
【0012】
いくつかの実施形態において、細長いマルチルーメンカテーテルの第一のルーメンは、外部供給源からの流体を移送するよう構成される。流体は、コンパートメントの1つまたは複数のサイドポートを通り、コンパートメントの第一の開口部を通って、細長いマルチルーメンカテーテルの遠位端へと移送されてもよい。いくつかの実施形態において、第一のルーメンはコンパートメントを通過する。例えば、第一のルーメンは、コンパートメントの外部の第一の端点によって画定され、コンパートメントの一部分を通ってカテーテル内に延び、カテーテル内の第二の端点またはカテーテルの遠位端で終端してもよい。いくつかの実施形態において、第一のルーメンは中心ルーメン内にある。第一のルーメンを中心ルーメン内に設置することの少なくとも1つの利点は、コンパートメントから延びるすべての他のチューブを含む単一のチューブを提供して、管類のからまりおよび/またはよじれを防止するということである。加えて、第一のルーメンを中心ルーメン内に設置することによって、第一のルーメンは、管類の追加の層によって外力(例えば、切り傷など)から保護される。
【0013】
いくつかの実施形態において、流体は、血液、生理食塩水、パージ流体、グルコース、ヘパリンもしくは任意の他の適切な物質、またはそれらの組み合わせである。例えば、流体はデキストロースおよびヘパリンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、流体はパージ流体を含み、パージ流体は、第一のルーメンを通ってロータへと流れて、ポンプに実質的に血液が含まれていない状態を維持する。パージ流体を使用することの少なくとも1つの利点は、パージ流体の流れが、さもなくば血液の損傷(例えば、溶血)またはモータの損傷(例えば、摩擦の増加、過熱、および/もしくは焼き付き(seizing))を引き起こし得る、ロータとモータステータまたはポンプハウジングとの間の間隙への血液の進入に対する障壁を提供できるということである。例えば、パージ流体はデキストロースおよびヘパリンを含んでもよい。デキストロースとヘパリンの組み合わせを使用することの少なくとも1つの利点は、生体適合性および流動を維持しながら、血栓の形成を(例えば、抗凝固薬であるヘパリンにより)適正量の活性剤で防止するということである。
【0014】
いくつかの実施形態において、血液ポンプシステムは、細長いマルチルーメンカテーテルの第二のルーメンをさらに備える。第二のルーメンは、第二の液体を移送するよう構成されてもよい。いくつかの例において、第二のルーメンはコンパートメントを通って延びる。第二の流体もまた、外部供給源から、コンパートメントの1つまたは複数のサイドポートを通り、コンパートメントの第一の開口部を通って、細長いマルチルーメンカテーテルの遠位端へと移送されてもよい。いくつかの例において、第二のルーメンは圧力ルーメンであり、第二の流体は生理食塩水である。第二のルーメンは、コンパートメントの遠位に位置付けられた開口部を有してもよい。第二のルーメンの少なくとも1つの利点は、第二のルーメンが、異なる外部供給源を介して提供され得る、第一のルーメンとは異なる流体を移送し得るということである。例えば、第一のルーメンはパージ流体を移送してもよく、一方、第二のルーメンは生理食塩水を移送し、パージ流体および生理食塩水は互いに分離されて維持され得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、導管は、コンパートメントとマルチルーメンカテーテルとの間の境界部を通って延びている。導管は、コンパートメントの第一の開口部にまたがるように、コンパートメントの第一の開口部の近位に位置付けられた第一の端部と、コンパートメントの第一の開口部の遠位に位置付けられた第二の端部とを備えてもよい。導管をコンパートメントとカテーテルの両方の内部に配置することによって、液体または気体をコンパートメントからカテーテル内に挿入することが可能になり、したがってカテーテルの中心ルーメンへのアクセスが提供される。導管は、導管の第一の端部からコンパートメントの第一の開口部を通って導管の第二の端部へと気体を移送するよう構成される。導管の第二の端部は、細長いマルチルーメンカテーテルの中心ルーメンと流体連通していてもよい。例えば、導管の近位端は、コンパートメント内に短い距離だけ延びていてもよく、導管の遠位端は、カテーテル内に短い距離だけ延びていてもよい。システムは、外部気体供給源を介して導入された気体で満たされた環境内に入れられてもよく、導管は、カテーテル内部への気体の浸透を可能にしてもよい。カテーテル内部に気体を移送することの少なくとも1つの利点は、カテーテル内のいかなる流体(例えば、患者と接触する可能性がある流体)も無菌状態で維持されるように、カテーテルの中心ルーメンを滅菌するということである。
【0016】
いくつかの実施形態において、フィルタは導管内に配置される。フィルタは、導管の第一の端部から導管の第二の端部を通ってマルチルーメンカテーテル内に入る気体の流れを可能にしながら、マルチルーメンカテーテルからコンパートメント内への流体の流出を防止するよう構成されてもよい。フィルタを導管内に設置することの少なくとも1つの利点は、カテーテルの中心ルーメン内からのいかなる流体漏洩も、コンパートメント内の任意の電子的要素に到達する前にフィルタに到達する(導管を介して)ということである。
【0017】
いくつかの実施形態において、導管によって移送される気体は滅菌ガスである。滅菌ガスは、中心ルーメンを滅菌するために使用されてもよい。例えば、前記ガスは、エチレンオキシド、二酸化窒素、オゾン、気化過酸化水素、または任意の他の適切な気体であってもよい。滅菌ガスを使用することの少なくとも1つの利点は、カテーテル内のいかなる流体(例えば、患者と接触する可能性がある流体)も無菌状態で維持されるように、カテーテルの中心ルーメンを滅菌するということである。
【0018】
いくつかの実施形態において、フィルタは、場合によっては導管を通過してコンパートメントに到達する、中心ルーメンからの液体の漏洩を防止するよう構成される。血液ポンプシステムの動作中、第一のルーメンは損傷する可能性があり、そのため、液体が第一のルーメンからカテーテルの中心ルーメン内に漏洩する。例えば、パージ流体がルーメンからカテーテルの中心ルーメン内に漏洩する可能性がある。フィルタがないと、漏洩した液体はカテーテルからコンパートメント内へ流れ、これは問題になるであろう。しかしながら、導管中に位置付けられたフィルタは、漏洩した液体がコンパートメントの内部に到達することを防止し、したがって、流体が前記少なくとも1つの電子的要素に到達することを防止する。適切なシールを実現しながらも滅菌を容易にするために、フィルタは液体の選別を提供するよう構成され、そのため、フィルタは、任意の液体接触の前に気体流がフィルタを横切って移送されることを可能にする。漏洩物がフィルタを通過することを防止することの少なくとも1つの利点は、液体がコンパートメント内の電子的要素に到達することを防止するということである。例えば、もしも液体がコンパートメント内の任意の露出した電子的要素と接触したならば、液体はショートを引き起こすかまたは他の方法で電子装置を損傷させ、ポンプの動作を停止または変化させる可能性がある。気体がフィルタを通過することを可能にすることの少なくとも1つの利点は、カテーテルの中心ルーメンを滅菌することを可能にするということである。
【0019】
フィルタを配置することは、液体シールの実現に役立ち得る。いくつかの実施形態において、フィルタはコンパートメントの第一の開口部の近位に位置付けられる。例えば、フィルタは、全体がコンパートメント内に設置されてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタは、コンパートメントの第一の開口部の遠位に位置付けられる。例えば、フィルタは、全体がコンパートメントの外側に設置されてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタは、コンパートメントの第一の開口部を横切って延びる。いくつかの実施形態において、フィルタの一部分がコンパートメント内に延びる。例えば、フィルタは、フィルタの第一の部分がコンパートメント内に存在し、フィルタの第二の部分がコンパートメントの外側に存在するように、コンパートメントの第一の開口部にまたがってもよい。フィルタがコンパートメントの開口部を横切ってまたは開口部の近くに延びるようにフィルタを設置することの少なくとも1つの利点は、液体がコンパートメントの内部(およびその中に位置付けられた電子的要素)に接触することをフィルタが防止し得るということである。
【0020】
いくつかの実施形態において、フィルタは、多孔質基材の孔壁に付着したヒドロゲルを含む。例えば、フィルタは、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2004/0052689号に記載されたフィルタのようなフィルタであってもよい。ヒドロゲルは、親水性ポリウレタン、親水性ポリウレア、親水性ポリウレアウレタン、または任意の適切な材料であってもよい。ヒドロゲル(例えば、親水性ポリマー)を使用することの少なくとも1つの利点は、ヒドロゲルは水溶液中で膨潤して、溶解することなく、曝露されている水溶液のかなりの割合を保持するということである。多孔質基材は、金属、セラミック、ガラス、有機物、非有機物、有機ポリマー、アクリルポリマー、ポリオレフィンもしくは任意の適切な材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。多孔質基材の少なくとも1つの利点は、多孔質基材は、気体が流れることができるチャネルを有しており、これが滅菌を容易にするということである。ヒドロゲルと多孔質基材とを含むフィルタを使用することの少なくとも1つの利点は、フィルタが、管類の2つの部分の間に設置された時に、それら2つの部分の間で水溶液による流れを遮断することによって、それらの部分間での混入を防止し得るということである。
【0021】
いくつかの実施形態において、フィルタは、液体に曝露された時に自己封止する。例えば、フィルタは、水性媒体に曝露された時に自己封止してもよい。いくつかの実施形態において、フィルタは気体透過性である。いくつかの実施形態において、自己封止フィルタは、液体に曝露された時に急速に反応して(すなわち、封止して)、フィルタに接触する溶液の混入をほとんどまたは全く生じさせず、再び気体または液体の通過が可能になるまで高い背圧(例えば、約7psi超)に耐えることができる。いくつかの実施形態において、フィルタは生体適合性である。自己封止フィルタの少なくとも1つの利点は、短い反応時間、それらに接触する水溶液の混入がほとんどまたは全く起こらないこと、および高い背圧に耐える能力である。
【0022】
いくつかの実施形態において、フィルタは、細い円柱の形状であり、導管内にフィットするようサイズ決めおよび成形されている。いくつかの実施形態において、導管は細いチューブであってもよい。フィルタは、導管内にぴったりフィットするように導管の内径と等しい外径を有してもよい。いくつかの実施形態において、フィルタは錐台の形状であり、導管内にフィットするようサイズ決めおよび成形されている。フィルタは、第一の端部において導管内にぴったりフィットし、その後、導管の形状に従って先細になるように、導管の内径と等しい第一の外径を有してもよい。導管内にぴったりフィットするようにフィルタを成形およびサイズ決めすることの少なくとも1つの利点は、導管を通過するあらゆる気体または液体がフィルタと接触し、したがって、液体が導管の一方の端部から他方へと(例えば、カテーテルの中心ルーメンからコンパートメントの内部へと)流れることをフィルタが防止し得るということである。フィルタは、導管の形状に対応する任意の他の形状(例えば、円板、角柱など)を有してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、血液ポンプシステム(例えば、本明細書に記載のシステム)用のフィルタの製造は、支持材の濾過材をヒドロゲルでコーティングすることを含む。例えば、濾過材は、繊維、顆粒、粉末、または任意の他の適切な物質であってもよい。ヒドロゲルと濾過材を含むフィルタを使用することの少なくとも1つの利点は、フィルタが、導管の2つの部分の間に設置された時に、それら2つの部分の間の気体流を許容してそれらの部分のうちの一方の内側を滅菌することを可能にし、かつそれら2つの部分の間を水溶液が流れようとする場合は液体の混入を防止し得るということである。血液ポンプシステムは、あるルーメン断面を有する少なくとも1つのルーメンを画定するカテーテルを備える。コーティングされた濾過材をアセンブルして、ルーメン断面のそれと等しい断面を有するようサイズ決めおよび成形された自己封止フィルタを形成することができる。このようにフィルタをアセンブルすることの少なくとも1つの利点は、導管を通過する任意の気体または液体をフィルタが遮断または妨害することができるようにフィルタがルーメン内にぴったりフィットすることを保証するということである。自己封止フィルタは、密封コンパートメントの遠位端に配置されてもよい。自己封止フィルタが密封コンパートメントと細長いカテーテルの一部分との間に延びるように、(ルーメンを画定する)細長いカテーテルが配置される。したがって、フィルタは、液体が導管の一方の端部から他方へと(例えば、カテーテルの中心ルーメンからコンパートメントの内部へと)流れることを防止し得る。滅菌ガスが、密封コンパートメントの少なくとも一部分を通って延びる中空チューブを介して細長いカテーテルに送達される。滅菌ガスを使用することの少なくとも1つの利点は、カテーテル内のいかなる流体(例えば、患者と接触する可能性がある流体)も無菌状態で維持されるように、カテーテルの中心ルーメンを滅菌するということである。
【0024】
いくつかの実施形態において、マルチルーメンカテーテルの中心ルーメンを滅菌するために導管に気体を貫通させる。導管は、コンパートメントの第一の開口部を横切って配置される。コンパートメントは、カテーテルの近位端に隣接して配置される。外部供給源からマルチルーメンカテーテルの遠位端へと、第一のルーメンを通して流体を通過させる。自己封止フィルタが、導管の第一の端部から導管の第二の端部への気体の流れを可能にしながら、マルチルーメンカテーテルからコンパートメント内への流体の流出を防止する。漏洩物がフィルタを通過することを防止することの少なくとも1つの利点は、液体がコンパートメント内の電子的要素に到達することを防止するということである。もしも液体がコンパートメント内の任意の露出した電子的要素と接触したならば、液体はショートを引き起こすかまたは他の方法で電子装置を損傷させ、ポンプの動作を停止または変化させる可能性がある。気体がフィルタを通過することを可能にすることの少なくとも1つの利点は、カテーテルの中心ルーメンを滅菌することを可能にするということである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】特定の実施形態による、例示的な血液ポンプシステムを示す。
図2】特定の実施形態による、1つのサイドポートを有するコンパートメントを示す。
図3】特定の実施形態による、2つのサイドポートを有するコンパートメントを示す。
図4図4A~Cは、特定の実施形態による、滅菌ガスの通過を可能にする自己封止フィルタおよび液体の流れを防止する自己封止フィルタを示す。
図5】特定の実施形態による、コンパートメント内のルーメンを示す。
図6】特定の実施形態による、漏洩防御性を備えた心臓内血液ポンプシステムの製造のための流れ図を示す。
図7】特定の実施形態による、血管内血液ポンプのカテーテルからの漏洩を防止するための流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本明細書に記載されるシステム、方法および装置の全体的理解を提供するために、特定の例示的態様を記載する。本明細書に記載される態様および特徴は、経皮的血液ポンプシステムに関連した使用について具体的に記載されるが、以下に概説されるすべての構成要素および他の特徴は、任意の適切な様式で互いに組み合わされてもよく、かつ、外科的切開を使用して埋め込まれる心臓補助装置などを含む他のタイプの心臓治療法および心臓補助装置に適合および適用されてもよいことが理解されよう。加えて、本明細書にはポンプ要素の適用が血液ポンプに関して記載されているが、該ポンプ要素は、遠位方向へ送られる任意のタイプの流体流が近位方向へ流れて電子的構成要素を損傷させ得る他のポンプに適用されてもよいことが理解されるべきである。例えば、酸性環境または他の腐食環境において使用されるポンプは、ポンプ構成要素を損傷させるであろう酸の進入を防止するためにパージ流を必要とし得る。本明細書に記載される態様および特徴は心臓内血液ポンプシステムに関連した使用について具体的に記載されるが、本明細書に記載される態様および特徴による血液ポンプシステムは、任意の脈管構造内で、および/または他のシステムと組み合わせて使用されてもよいことが理解されよう。例えば、以下に記載されるフィルタのシステムおよび配置は、尿道もしくは膀胱カテーテル留置システム、右心心臓支援システム、大動脈内バルーンポンプ、体外式膜型人工肺装置、左室補助装置、腎臓の自己調節能を調整するための心臓補助装置などの腎臓支援システム、注入システム、中心静脈カテーテル、または任意の他の適切なシステムにおいて使用されてもよい。
【0027】
図1は、図2および図3に関連して以下でさらに記載されるフィルタ216および316などのフィルタと共に使用するための、心臓内血液ポンプシステム150を示す。システム150は、細長いカテーテル本体(細長いマルチルーメンカテーテルとも称される)110、ポンプ140、コンパートメント100、パージ用サイドアーム120、および圧力用サイドアーム130を含む。パージ用サイドアーム120は、継手122、圧力リザーバ124、注入フィルタ128、およびチューブ126を含む。圧力用サイドアーム130はチューブ136を含む。ポンプ140は、ポンプハウジング134、モータハウジング102、カニューレ173、吸引ヘッド174、および可撓性突出部176を含む。種々の方法によってポンプ140を患者の体内に挿入することができる。
【0028】
ポンプ140を患者に挿入することができる方法は、オーバーワイヤ(over-wire)技術およびサイドリガー(side-rigger)技術を用いることを含むが、これに限定されない。例えば、第一のガイドワイヤを患者の脈管構造内に挿入し、次いでガイドカテーテルを第一のガイドワイヤに通す。次に第一のガイドワイヤを取り除き、それによってガイドカテーテル内に第二のガイドワイヤを導入することが可能になる。例えば、第二のガイドワイヤは、ポンプをガイドワイヤにバックロード(backload)することを容易にするために、第一のガイドワイヤよりも堅い。より堅いガイドワイヤを所定の場所に置いたら、標準オーバーワイヤ技術またはサイドリガー技術のいずれかを用いてポンプをワイヤに通す。ポンプの作動前にガイドワイヤを取り除く。あるいは、作動前にガイドワイヤは取り除かない。あるいは、ポンプインペラの空き空間を通して挿入されたガイドワイヤにポンプをバックロードすることができる。一実施形態において、例えば全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,814,776号、同第9,402,942号および同第9,750,861号に記載されている簡単ガイドルーメン132を、ガイドワイヤと組み合わせて用いて、インペラの空き空間を通過するガイドワイヤによって、インペラを損傷させることなく、より簡単にポンプをバックロードすることができる。ポンプを作動させる前に、ガイドワイヤと同様に簡単ガイドルーメン132を取り除く。別の実施形態において、簡単ガイドルーメンを使用せずに、ポンプをガイドワイヤにバックロードする。
【0029】
いくつかの実施形態において、ポンプに実質的に血液が含まれていない状態を維持するために、パージ流体をポンプ140内のロータへ送達する。以下で詳述されるように、パージ流体を使用することの少なくとも1つの利点は、パージ流体の流れが、さもなくば血液の損傷(例えば、溶血)またはモータの損傷(例えば、摩擦の増加、過熱、および/もしくは焼き付き)を引き起こし得る、ロータとモータステータまたはポンプハウジングとの間の間隙への血液の進入に対する障壁を提供できるということである。パージ流体は、細長いカテーテル本体110の第一のルーメン(例えば、図5のチューブ512によって画定されるもの)を通り、モータハウジング102を通って、カニューレ173の近位端へと送達されてもよい。細長いカテーテル本体110の第一のルーメンは、パージ流体を流体リザーバ(図示せず)からパージ用サイドアーム120を介してポンプ140へ供給する。チューブ126は、細長いカテーテル本体110の第一のルーメンを部分的に画定する。第一のルーメンは、コンパートメント100(例えば、コンパートメント200、300および500、それぞれ図2、3および5)を通過して細長いカテーテル本体110内に入り、かつ、コネクタまたは継手を含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、図1に示されるように、モータは「内臓」されており、ポンプの動作中に患者の体内に位置付けられていてもよく、ポンプを駆動するためにモータに電力を伝送する電気リード線と共に構成されていてもよい。あるいは、前述したように、モータは患者の体外に位置付けることができ、駆動シャフト、駆動ケーブルまたは動力伝達装置を介してロータを作動させることができる。例えば、モータは、ポンプシステムの(例えば、コンパートメント100に接続された)ハンドル内に位置付けられてもよい。いくつかの例において、駆動ケーブルは、細長いカテーテル本体110を通って、カニューレ173の近位端の近くに位置付けられたロータまで延びてもよい。いくつかの実施形態において、駆動シャフト、駆動ケーブルまたは動力伝達装置は、本明細書に記載の(例えば、図5のチューブ512を通した)パージ流体の送達と組み合わせて動作する。
【0031】
パージ流体は、ポンプを通って流れて、ポンプ内への血液細胞の進入を防止する。代替的に、または追加的に、パージ流体は、ポンプの軸受(図示せず)のための潤滑剤として、またはモータステータの電磁モータコイルによって生じる熱を放散するための冷却剤として機能してもよい。パージ流体は、潤滑剤、冷却剤、薬物、または任意の適切な血液適合性流体であってもよい。例えば、パージ流体は、生理食塩水、リンガー液、グルコース溶液、ヘパリン、または任意の他の適切な流体であってもよい。パージ流体は、ポンプ140の動作中に血液がモータハウジング102に入ることを防止する。パージ流体はまた、細長いカテーテル本体110内への血液の進入も防止し得る。いくつかの実施形態において、グルコース溶液などの高粘性のパージ流体は、ポンプ140の内部の軸受を潤滑するために使用される。他の実施形態において、薬理学的作用物質がパージ流体として使用されて、ポンプから血液をパージするとともに医療目的を果たす。例えば、パージ流体は、血液凝固を防止するためにヘパリンを含んでもよい。パージ流体は、細長いカテーテル本体110の第一のルーメンを通って流れ、ポンプ140の近位端部分の近くの出口開口部においてポンプ140から流出する。パージ流体は、患者の血流内に安全に分散する。
【0032】
細長いカテーテル本体110の別のルーメン(例えば、図5のチューブ516によって画定されるもの)は、圧力用サイドアーム130を介してポンプに圧力流体を供給し得る。圧力用サイドアーム130は、モータハウジング102の近位端に入口を有する流体充填圧力ルーメンに流体を提供する。流体充填圧力ルーメンは、コンパートメント100内に位置付けられた電子的要素と組み合わされて、患者の大動脈弁に対するポンプの配置を決定するために使用されてもよい。例えば、電子的要素は、圧力ルーメンからの圧力を数値に「変換」する圧力トランスデューサであってもよく、数値は外部システムまたはディスプレイに出力され得る。いくつかの実施形態において、圧力流体を提供するために第二の流体リザーバまたは圧力バッグ(図示せず)が圧力用サイドアーム130の近位端に接続される。圧力流体は、パージ流体と同じものであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、圧力流体は、生理食塩水、リンガー液、グルコース、ヘパリン、または任意の血液適合性流体であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、血液ポンプシステム150は、モータの遠位に位置付けられた光学式圧力センサ(例えば、ファブリ・ペロー光学式圧力センサ)を含む。光ファイバが、光学式圧力センサからカテーテルに沿って近位方向へ延びる。光学式圧力センサは、終端に薄い感圧ガラス膜を有するキャビティを含む。光ファイバから出た光は、ガラス膜によって反射されて光ファイバに入る。反射光は、光ファイバの長さに沿って電子制御要素(例えば、コンパートメント100内または接続コンソール内)へ伝送され、電子制御要素は、反射光の干渉縞に基づいて圧力信号を決定する。
【0034】
図5に関連して以下でさらに詳細に記載されるように、コンパートメント100のサイドポートは、コンパートメント100との流体接続を可能にする。パージ用サイドアーム120および圧力用サイドアーム130は、それぞれ、第一のサイドポート(例えば、図5のチューブ526)および第二のサイドポート(例えば、図5のチューブ524)においてコンパートメント100と接続している。第一のルーメン(チューブ126によって部分的に画定される)および第二のルーメン(チューブ136によって部分的に画定される)はコンパートメント100を通って延び、細長いカテーテル本体110に入る。いくつかの実施形態において、第一のルーメンが、ポンプ140にパージ流体を送達するためにチューブ126を通りコンパートメント100を通り細長いカテーテル本体110を通って延びるように、チューブ126は、第一のサイドポートでまたは第一のサイドポートの近くで、接着接合部においてコンパートメント100内のチューブ(例えば、図5のチューブ512)につながる。いくつかの実施形態において、同様に、第二のルーメンが、ポンプ140に圧力流体を送達するためにチューブ136を通りコンパートメント100を通り細長いカテーテル本体110を通って延びるように、チューブ136は、第二のサイドポートでまたは第二のサイドポートの近くで、接着接合部においてコンパートメント100内の異なるチューブ(例えば、図5のチューブ516)につながる。
【0035】
いくつかの実施形態において、細長いカテーテル本体110の第一のルーメンおよび第二のルーメンは、互いに分離されて維持される。第一および第二のルーメンは、細長いカテーテル本体110の中心ルーメンを通って延びてもよく、細長いカテーテル本体110の中心ルーメンにパージ流体および圧力流体がない状態を保ちながら流体を移送するよう構成されてもよい。しかしながら、細長いカテーテル本体110の中心ルーメンは、第一または第二のルーメンのいずれかから漏洩した場合は流体を移送し得る。例えば、ポンプの動作中、第一のルーメンはよじれるかまたは偶発的に損傷する可能性があり、そのため、パージ流体が第一のルーメンから細長いカテーテル本体110の中心ルーメン内へ漏れ出す。漏洩物が細長いカテーテル本体110の中心ルーメンに到達した場合、問題となる可能性のある状況が2つ生じ得る:(1)漏洩した流体が(例えば、ポンプ140に設けられた入口および出口を通して)患者に到達し得ること、および(2)漏洩した流体がコンパートメント100の内部に到達し得ること。
【0036】
細長いカテーテル本体110の中心ルーメン内に流体が漏洩した場合に患者に危険を及ぼす可能性を低減するかまたはなくすために、滅菌ガスを使用して中心ルーメンを滅菌する。第一のルーメン中の流体(パージ流体)と第二のルーメン中の流体(圧力流体)は血液適合性であるため、流体が(例えば、中心ルーメン中の微生物によって)汚染されない限り、第一のルーメンまたは第二のルーメンからの漏洩物がそれだけで患者のリスクをもたらすことはない。この潜在的リスクのため、通常は流体を中心ルーメンに通して流しポンプ140に到達させることはなくても、中心ルーメンを滅菌する。
【0037】
中心ルーメンを滅菌するために、滅菌ガスを、コンパートメント100の開口部を通って延びて細長いカテーテル本体110内に入る導管(例えば、図2の導管214、図3の導管314)を介して、細長いカテーテル本体110の中心ルーメンに入れる。導管は、コンパートメント100の第一の開口部の近位に位置付けられた近位端と、第一の開口部の遠位に位置付けられた遠位端とを備える。導管214の近位端は、例えば、血液ポンプシステムの最終組み立ての前にコンパートメント100の内部を通じてアクセスしてもよい。滅菌ガスを導管の近位端を通して挿入することによって、滅菌ガスは細長いカテーテル本体110の中心ルーメンに到達する。万一、パージ流体または圧力流体が中心ルーメン内に漏洩した場合は、滅菌ガスのおかげで、漏洩した液体は無菌のままであると考えられる。中心ルーメンを滅菌することの少なくとも1つの利点は、任意の漏洩した液体が(例えば、心臓内血液ポンプシステム150の遠位端を通して)患者に到達した場合に、該流体は依然として無菌であり、細菌を患者の体内に導入することはないだろうということである。
【0038】
導管の近位端がコンパートメント100の内部に位置付けられており、一方で、導管の遠位端が細長いカテーテル本体110の中心ルーメン内に位置付けられているため、万一、液体が細長いカテーテル本体110の中心ルーメン内に漏洩した場合、漏洩した液体は潜在的に導管に到達し得る。漏洩した液体が導管を通ってコンパートメント100の内部(およびその中に配置された電子的要素)に到達することを防止するために、自己封止フィルタ(例えば、図2のフィルタ216、図3のフィルタ316)が導管(例えば、図2の導管214、図3の導管314)内に設置される。自己封止フィルタは、気体が導管を通って流れることを可能にしながら、液体が導管を通って少なくとも1つの方向に流れることを防止する。自己封止フィルタは、気体が導管を通って流れることを可能にするが、液体と接触した時に封止することによって液体が導管を通って少なくとも1つの方向に流れることを防止する。したがって、液体への任意の曝露の前に装置に曝露される滅菌ガスは、導管を通って細長いカテーテル本体110の中心ルーメンに到達することが可能であるが、細長いカテーテル本体110の中心ルーメン内のいかなる漏洩液体も、コンパートメント100の内部に到達することはできない。フィルタおよび血液ポンプアセンブリの様々な実施形態を、図2~5に関連して以下でさらに記載する。
【0039】
図2は、特定の実施形態による、1つのサイドポート228を有するコンパートメント200を示す。コンパートメント200は、図1のコンパートメント100と類似しているが、上記の2つのサイドアームではなくパージ用サイドアームのための単一のサイドポートを備える。コンパートメント200は、コンパートメント200の内部に到達するカテーテル210からの流体漏洩を防止するための自己封止フィルタ216と共に、カテーテル210に接続されている。例えば、コンパートメントは、Abiomed, Inc.のImpella(登録商標)プラグであってもよい。チューブ226および212によって画定される第一のルーメンは、コンパートメント200の外側からサイドポート228を通って延びる。例えば、チューブ226は、図1に関連して上で記載したチューブ126と同様のものであってもよく、パージ用サイドアーム120と同様のパージ用サイドアームの一部であってもよい。第一のルーメンは、コンパートメント200の内部の一部分を通過して、コンパートメントの第一の開口部250を通って延び、コネクタ260を通って延び、カテーテル210へと入る。いくつかの態様において、チューブ212は、第一の開口部250を通り、カテーテル210の全長を通って延びる。いくつかの態様において、コネクタ260は、カテーテル210の近位端に支持を提供するよう構成されたプラスチック部品である。
【0040】
導管214は、開口部250を通り、コネクタ260を通って、カテーテル210内へと延びる。上に記載したとおり、導管214は、気体がカテーテル210の中心ルーメンに浸透することを可能にし得る。例えば、気体は、カテーテル210の中心ルーメンを滅菌するよう構成された滅菌ガスであってもよい。導管214は、細い円筒の形状であり、カテーテル210の長さと比較して相対的に短い長さである。導管214の近位端は、コンパートメント200内に位置付けられており、開口部250の近位にある。導管214の遠位端は、カテーテル210内に位置付けられており、開口部250の遠位にある。いくつかの態様において、導管214は、カテーテル210の中心ルーメンと流体連通している。導管214は、円筒形チューブとして示されている。しかしながら、導管214は、錐台、細い円筒、湾曲した円筒、直方体、または任意の適切な形状であってもよい。
【0041】
フィルタ216は導管214内に位置付けられている。いくつかの実施形態において、フィルタ216は細い円柱の形状である。いくつかの実施形態において、図5に関連して以下でさらに詳細に記載されるように、導管214を通って流れる気体または液体がフィルタ216に接触するように、フィルタ216は導管214の内径を完全に埋めるようサイズ決めおよび成形される。フィルタ216は、気体が導管214の近位端から導管214の遠位端へと流れることを可能にするが、導管214の遠位端からの液体が導管214の近位端に到達することを防止する。この構成は、液体への任意の曝露の前に気体(例えば、滅菌ガス)がカテーテル210の中心ルーメンに到達することを可能にするが、液体(例えば、上に記載した、漏洩したパージ流体)がコンパートメント200内に到達することを防止する。チューブ226および212によって画定される第一のルーメンを通って流れるパージ流体が導管214を通過せず、したがってフィルタ216に接触しないように、導管214およびフィルタ216が設置される。したがって、パージ流体は、引き続き、フィルタ216によって遮断されることなくカテーテル210を通ってポンプ(例えば、ポンプ140)に到達し得る。
【0042】
少なくとも1つの電子的要素240が、コンパートメント200内に配置される。電子的要素240は、圧力トランスデューサ、ポンプ制御回路、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、配線、または任意の他の適切な要素を含んでもよい。他の電子的要素、例えば、プリント回路板(PCB)の要素もまた、コンパートメント200内に配置されてもよい。コンパートメント200の近位端(開口部250の反対側に位置付けられる)は、例えば、電子的要素240に電力供給するよう構成された電源に接続されてもよい。液体(例えば、カテーテル210の中心ルーメンに到達した、第一のルーメンから漏洩したパージ流体)がコンパートメント200の内部に入った場合、液体は電子的要素240をショートさせるかまたは他の方法で損傷させる可能性がある。例えば、流体による損傷のために電子的要素が腐食した場合、ポンプの動作および機能性が損なわれ得るかまたは完全に停止し得、これは患者にとって危険である可能性がある。フィルタ216は、流体が電子的要素に到達することを防止する。いくつかの実施形態において、フィルタ216は、液体を透過させないが気体を透過させる。フィルタ216は導管214の内径を埋めるようサイズ決めおよび成形されるので、さもなくば導管214を通って流れ得る液体(例えば、カテーテル210の中心ルーメン内に漏洩したパージ流体)は、フィルタ216によって「遮断」されるであろう。フィルタ216は(カテーテル210とコンパートメント200との間に延びる)導管214内にあるので、液体が導管214を介してコンパートメント200の内部(電子的要素240を保持する)に到達することを効果的に阻止する。
【0043】
図3は、特定の実施形態による、2つのサイドポートを有するコンパートメント300を示す。図3は、上記の図1および図2と類似している。図1との関連では、圧力用サイドアーム330は圧力用サイドアーム130に、パージ用サイドアーム320はパージ用サイドアーム120に、カテーテル310は細長いカテーテル本体110に対応している。図2との関連では、電子的要素340は240に、サイドポート328はサイドポート228に、導管314は導管214に、フィルタ316はフィルタ216に対応している。図3が追加のサイドポート332を有するという点で、図3図2とは異なる。サイドポート332は、図1に関連して上で記載した圧力用サイドアーム130などの圧力用サイドアーム330の接続を可能にする。
【0044】
図4A~Cは、特定の実施形態による半透過性フィルタを示す。図4Aは、液体との任意の接触の前に、矢印412で表示される気体流が導管410を通過することを可能にしている半透過性フィルタ416を示す。矢印412で表示される気体流は、導管410の近位部分414に入って通過し、次いでフィルタ416を通過し、次いで導管410の遠位部分418を通過する。図4Bは、矢印422で表示される液体流が導管410を通過することを防止しているフィルタ416を示す。矢印422で表示される液体流は、導管410の遠位部分418に入り、フィルタ416において抵抗を受け、そのため液体流はフィルタ416を透過して近位部分414に到達することができない。その代わりに、液体流は遠位部分418を通って導管410から出る。フィルタ416の材料特性によって、液体がフィルタの全長を通過できないようにフィルタ416の要素が膨潤するので、矢印422で表示される液体流は導管410の近位部分414に到達しない。図4Cは、矢印422で表示される液体流が導管410を通過することを防止しながら、矢印412で表示される気体流が導管410を通過することを可能にしている、フィルタ416を示す。図4Cに示されているように、いくつかの実施形態において、フィルタ416は、導管410を横切る液体の流れを防止しながら、同時に気体の流れを可能にしてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタ416は液体に曝露された時に自己封止する。いくつかの実施形態において、フィルタ416が液体との接触に反応して封止した時、フィルタ416は、気体流に対しても完全にまたは部分的に封止される。例えば、フィルタ416の濾過材が膨潤して、導管410を通る液体の流れを防止した場合、膨潤した濾過材は、導管410を通る気体の流れも防止し得る。いくつかの実施形態において、フィルタ416は気体を透過させるが液体は透過させない。
【0045】
いくつかの実施形態において、フィルタ416は、多孔質基材の孔壁に付着することができるヒドロゲルを含んでもよい。ヒドロゲルは、親水性ポリウレタン、親水性ポリウレア、親水性ポリウレアウレタン、または任意の適切な材料であってもよい。ヒドロゲルは、水中で膨潤して、水に溶解することなく、水のかなりの割合を保持する材料である。多孔質基材は、金属、セラミック、ガラス、有機物、非有機物、有機ポリマー、アクリルポリマー、ポリオレフィンもしくは任意の適切な材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。フィルタ416を作製することができる多孔質基材は、水に不溶性であり、かつ、気体または液体分子が通過することができる1つまたは複数のチャネルまたは孔を含有する。これによって、気体がチャネルを通過することが可能である。ヒドロゲルは多孔質基材に付着する。ヒドロゲルは、液体と接触した時に膨潤し、そのため、液体がチャネルを通過できないようになる。フィルタは、液体と接触すると不透過性になる。
【0046】
フィルタ416の機械的、物理的、および化学的特性は、基材およびヒドロゲルの材料、ならびにフィルタ材料を作製するために使用する方法の適切な選択によって調整することができる。例えば、迅速な自己封止が望ましい場合は、直径が小さな孔またはチャネルを使用してもよい。自己封止フィルタを横切る圧力勾配がより小さいことが望まれる場合は、直径が大きな孔またはチャネルを使用してもよい。ヒドロゲルは、多孔質基材の多孔率および組成を考慮するよう選択してもよい。多孔質基材およびヒドロゲルの材料は、フィルタ416の物理的特性(例えば、強度、可撓性、耐久性、耐腐食性、または任意の他の適切な特性)にも影響を及ぼし得、特定の適用において必要な物理的特性のために選択されてもよい。例えば、フィルタ416の材料は、導管410の可撓性に適合するよう選択されてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタ416の材料は、小さな形状における(例えば、導管410内の)実装を容易にするために選択されてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタ416の材料は、システム製造時の導管410との完全なシールの形成を容易にするために選択されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、フィルタ416は選択透過性である。フィルタ416は膨潤してもよく、いくつかの場合においては、様々な種類の分子または結合を選択的に引き寄せることにより、特定の物質に接触した時にこの特定の物質を封止してもよい。例えば、フィルタ416は、水または気体(例えば、滅菌ガス)の流れを可能にしながら、糖分子を引き寄せることによってデキストロースの流れを遮断してもよい。いくつかの実施形態において、フィルタ416は、混合物をクロマトグラフィにより(すなわち、フィルタを通る混合物の1つの成分の流れを可能にする一方で、フィルタを通る混合物の別の成分の流れを妨げるかまたは少なくとも大幅に遅らせることによって)分離してもよい。
【0048】
図5は、特定の実施形態による、コンパートメント500内のルーメンを示す。図5図3と類似しているが、以下に記載されるようにコンパートメント300内の管類のさらなる詳細を示している。コンパートメント500はコンパートメント300に対応し、導管520は導管314に対応し、カテーテル510はカテーテル310に対応している。いくつかの実施形態において、サイドジョイント502は、圧力用サイドアーム(例えば、圧力用サイドアーム330)をサイドポート524に通してコンパートメント500に取り付け、サイドジョイント504は、パージ用サイドアーム(例えば、パージ用サイドアーム320)をサイドポート526に通してコンパートメント500に取り付ける。
【0049】
コンパートメント500は繊細な電子装置を収容していてもよい。PCB 540は、コンパートメント500の内部で電子的要素(例えば、電子的要素340)を保持する。PCB 540から電子装置ケーブル514に配線が延びている。いくつかの実施形態において、電子装置ケーブル514は、電力および電子信号をポンプ(例えば、図1のポンプ140)の駆動システムに提供するよう構成された少なくとも1つのワイヤを含む絶縁ケーブルである。電子装置ケーブル514は、細長いマルチルーメンカテーテル510の中心ルーメンの近位端の中へ延びる。いくつかの実施形態において、電子装置ケーブル514は、カテーテル510の中心ルーメンを通ってカテーテル510の遠位端へ延びる。
【0050】
図5のシステムは、コンパートメント500と接続している一連のサイドジョイントおよびルーメンを含み、これらはそれぞれカテーテル510への直接的または間接的な接続を容易にする。第一のルーメンはサイドジョイント504を通り、サイドポート526を通り、コンパートメント500の一部分を通って延び、カテーテル510の中心ルーメンの近位端の中へ延びる。第一のルーメンの一部分はチューブ512によって画定される。チューブ512は開口部508を通ってコンパートメント500から出て、コネクタ560を通って延びる(その間、チューブ512はカテーテル510内にある)。いくつかの実施形態において、チューブ512はカテーテル510の近位端からカテーテル510の遠位端へと延びる。例えば、図1に関連して以下で記載されるように、チューブ512は、流体がポンプハウジング内のロータに送達されるようにポンプハウジング(例えば、図1のポンプハウジング134)で終端してもよい。いくつかの実施形態において、チューブ512は、カテーテル510の遠位端の近位にある開口部で終端する。いくつかの実施形態において、チューブ512は、カテーテル510の遠位端を越えて延びる。いくつかの実施形態において、第一のルーメン(チューブ512によって部分的に画定される)はパージ流体を移送する。例えば、第一のルーメンは、グルコース、生理食塩水、ヘパリン、または任意の他の適切な流体を移送してもよい。
【0051】
第二のルーメンはサイドジョイント502を通り、サイドポート524を通り、コンパートメント500の一部分を通って延び、カテーテル510の中心ルーメンの近位端の中へ延びる。第一のルーメンの一部分はチューブ516によって画定される。チューブ516は開口部508を通ってコンパートメント500から出て、コネクタ560を通って延びる(その間、チューブ516はカテーテル510内にある)。いくつかの実施形態において、チューブ516はカテーテル510の近位端からカテーテル510の遠位端へと延びる。例えば、図1に関連して以下で記載されるように、チューブ516は、流体がモータハウジング内のモータに送達されるようにモータハウジング(例えば、図1のモータハウジング102)で終端してもよい。いくつかの実施形態において、チューブ516は、カテーテル510の遠位端の近位にある開口部で終端する。いくつかの実施形態において、チューブ516は、カテーテル510の遠位端を越えて延びる。いくつかの実施形態において、図1に関連して以下で記載されるように、第二のルーメン(チューブ516によって部分的に画定される)は圧力流体を移送する。例えば、第一のルーメンは、グルコース、生理食塩水、ヘパリン、または任意の他の適切な流体を移送してもよい。
【0052】
導管520の近位端はコンパートメント500内に位置付けられている。導管520は、カテーテル510の中心ルーメン内に延びている中空チューブであり、カテーテル510の中心ルーメンと流体連通している。カテーテル510の近位端の断面は、チューブ512によって画定される第一のルーメンと、チューブ516によって画定される第二のルーメンと、電子装置ケーブル514と、導管520によって画定される第三のルーメンとを取り囲む中心ルーメンを示す。いくつかの実施形態において、導管520はカテーテル510よりも著しく短い。例えば、導管520は、カテーテル510の1パーセント、2パーセント、5パーセント、10パーセント、20パーセント、または任意の他の適切な量の長さを通って延びてもよい。いくつかの実施形態において、導管520は、カテーテル510の中心ルーメンへの、中心ルーメンを滅菌するよう構成された気体の送達を可能にする。例えば、導管520の近位端は、エチレンオキシド、二酸化窒素、オゾン、気化過酸化水素または任意の他の適切な気体などの滅菌ガスの外部供給源に対して曝露されてもよい。
【0053】
コンパートメント500の拡大部506に示されているように、導管520によって画定される第三のルーメンはフィルタ528(例えば、図4のフィルタ416および426と類似のもの)を保持する。いくつかの実施形態において、フィルタ528は、気体透過性であり、かつ/または液体と接触した時に自己封止する。フィルタは、滅菌ガスが導管520の近位端から遠位端へと通過することを可能にする。フィルタは、カテーテル510の中心ルーメンからの液体がコンパートメント500の内部およびそこに位置付けられた電子部品に到達することを防止する。例えば、チューブ512またはチューブ516が損傷し、パージ流体または圧力流体がカテーテル510の中心ルーメン内に漏洩した場合、フィルタ528によって、漏洩した液体が導管520を介してコンパートメントに到達することが阻止されるであろう。
【0054】
図6は、特定の実施形態による、漏洩防御性を備えた心臓内血液ポンプシステムの製造のための流れ図を示す。方法600は、支持材の基材をヒドロゲルでコーティングする工程602から開始される。ヒドロゲルは、親水性ポリウレタン、親水性ポリウレア、親水性ポリウレアウレタン、または任意の適切な材料であってもよい。支持材は、多孔質基材、例えば、金属、セラミック、ガラス、有機物、非有機物、有機ポリマー、アクリルポリマー、ポリオレフィンもしくは任意の適切な材料、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0055】
方法600は、コーティングされた濾過材をアセンブルして自己封止フィルタを形成する工程604へ進む。いくつかの実施形態において、コーティングされた濾過材は、細い円柱の形状にアセンブルしてもよい。例えば、コーティングされた濾過材は、中空チューブ(例えば、図5の導管520)内にぴったりフィットするようにアセンブルしてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングされた濾過材は、錐台の形状にアセンブルしてもよい。例えば、コーティングされた濾過材から作製したフィルタは、中空チューブ(例えば、図5の導管520)の端部に詰めてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタのサイズおよび形状は、以下で記載される中空チューブのサイズおよび形状に一致するよう選択される。フィルタを中空チューブのサイズにフィットさせることの少なくとも1つの利点は、中空チューブを通って流れる液体または気体がフィルタを通過するということである。いくつかの実施形態において、フィルタは、中空チューブの長さの20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、75パーセント、100パーセント、または任意の他の適切な割合を占めてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタの断面の外周は、中空チューブの断面の内周に一致するよう選択されてもよい。例えば、フィルタは、中空チューブ内に有効に詰められて、中空チューブの一方の端部と中空チューブの他方の端部との間に水性液体シールを形成してもよい。いくつかの実施形態において、フィルタの断面は、フィルタの全長にわたり中空チューブの断面に一致している。いくつかの実施形態において、フィルタの断面は、第一の位置では中空チューブの断面に一致し、第二の位置では中空チューブの断面とは異なっていてもよい。
【0056】
方法600は、自己封止フィルタを密封コンパートメント(例えば、図1のコンパートメント100)の遠位端に配置する工程606へ進む。方法600は、自己封止フィルタが密封コンパートメント(例えば、図1のコンパートメント100)と細長いカテーテル(例えば、図1の細長いカテーテル本体110)の一部分との間に延びるように細長いカテーテルを配置する工程608へ進む。
【0057】
方法600は、中空チューブ(例えば、図5の導管520)を介して細長いカテーテルへ滅菌ガスを送達する工程610へ進む。いくつかの実施形態において、中空チューブは、カテーテルの全長と比較して相対的に短い長さを有する細い中空の円筒である。いくつかの実施形態において、中空チューブは錐台の形状である。自己封止フィルタ(工程606および608に記載)および中空チューブの設置により、滅菌ガスが中空チューブを通って流れる時、該ガスは密封コンパートメントの遠位端からフィルタを通って細長いカテーテルへと通過して、コンパートメントとカテーテルとの間の流体連通が可能になっている。しかしながら、フィルタは、上記の図1~5に関連して記載したように、気体が中空チューブを通過することを可能にしながら、液体が中空チューブを通過することを防止する。
【0058】
方法600の工程は特定の順番で記載されているが、任意の順番でこれらの工程を完了することができる。
【0059】
図7は、特定の実施形態による、心臓内血液ポンプのカテーテルからの漏洩を防止するための流れ図を示す。方法700は、導管をコンパートメントの第一の開口部を横切って配置する工程702から開始される。コンパートメントは、マルチルーメンカテーテルの近位端に隣接して配置される。いくつかの実施形態において、導管は、コンパートメントの内部からカテーテルの中心ルーメンへ延びる。導管は、近位端と遠位端を有していてもよい。例えば、コンパートメントおよびカテーテルは、導管の近位端がコンパートメント内にありかつ導管の遠位端がカテーテル内にあるように、コンパートメント内およびカテーテル内でコンパートメントとカテーテルとの間に延びる導管と接続されていてもよい。
【0060】
方法700は、導管に滅菌ガスを貫通させる工程704へ進む。滅菌ガスは、マルチルーメンカテーテルの中心ルーメンを滅菌する。いくつかの実施形態において、マルチルーメンカテーテルは、第一の直径を有し中心ルーメンを画定する主要チューブであり、少なくとも1つの二次チューブが、主要チューブの全長にわたって中心ルーメン内に通っており、二次チューブは第一の直径よりも小さい第二の直径を有する。滅菌ガスは、カテーテルの中心ルーメン(主要チューブによって画定される)に入るように、導管を通して供給されてもよい。いくつかの実施形態において、ポンプは、気体飽和環境内に入れられることによって滅菌ガスに曝露される。次いで、該ガスは、コンパートメント内に位置付けられ得る導管の近位端を貫通することができる。このように、滅菌ガスはカテーテルの内部へ送達されて中心ルーメンを滅菌する。
【0061】
方法700は、第一のルーメンに流体を通過させる工程706へ進む。流体は、外部供給源から第一のルーメンに入ってもよい。第一のルーメンは、コンパートメントを通ってマルチルーメンカテーテルの遠位端へ延びる。例えば、外部供給源からマルチルーメンカテーテルの遠位端へと、第一のルーメンを通して流体を通過させてもよい。
【0062】
方法700は、フィルタが導管の第一の端部から導管の第二の端部への気体の流れを可能にしながら、マルチルーメンカテーテルからコンパートメント内への液体の流出を防止する工程708へ進む。例えば、フィルタは、滅菌ガスがカテーテルの中心ルーメンに到達することを可能にし得るが、滅菌後に中心ルーメン内の任意の液体がコンパートメントに到達することを防止し得る。
【0063】
方法700の工程は特定の順番で記載されているが、任意の順番でこれらの工程を完了することができる。いくつかの実施形態において、気体の貫通は、フィルタが液体に接触する前に行われなければならない。
【0064】
以上は本開示の原理を例示したものにすぎず、本機器は、限定ではなく例示の目的で提示された本説明の局面以外によっても実施され得る。本明細書に開示される機器は、血液ポンプの経皮的挿入における使用について示したが、止血を必要とする他の用途における機器に適用されてもよいことが理解されるべきである。
【0065】
当業者は、本開示の検討後に変形形態および修正形態を思い付くであろう。開示された特徴は、本明細書に記載される1つまたは複数の他の特徴との、任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属的な組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)において実施されてもよい。上で説明または例示した様々な特徴は、その任意の構成要素も含めて、他のシステムに組み合わされるかまたは統合されてもよい。さらに、特定の特徴が省略されるかまたは実施されなくてもよい。
【0066】
変更、置換、および改変の例は当業者によって確認可能であり、かつ、本明細書に開示される情報の範囲から逸脱することなく行われ得る。本明細書に引用されるすべての参考文献は、全体として参照により組み入れられ、かつ本出願の一部をなす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7