(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】スキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20240508BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240508BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240508BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q19/00
A61K8/55
A61K8/891
(21)【出願番号】P 2021505769
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2019068739
(87)【国際公開番号】W WO2020025290
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/098520
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ウェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】グー,イェィ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ナー
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0123579(US,A1)
【文献】特開2013-103885(JP,A)
【文献】特表2015-520216(JP,A)
【文献】国際公開第2018/095704(WO,A1)
【文献】Wrinkle Correcting Eye & Lip Cream, MINTEL GNPD [ONLINE], 2006.10,[検索日 2023.04.14],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.605460)
【文献】Perfect Master Cream, MINTEL GNPD [ONLINE], 2017.04,[検索日 2023.04.14],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.4620037)
【文献】Air Cushion Cover SPF 50+ PA+++, MINTEL GNPD [ONLINE], 2017.05,[検索日 2023.04.14],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.4798685)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組成物の0.0001~10重量%のリン脂質、
(b)組成物の0.01~10重量%の多孔質粒子、および
(c)シリコーンエラストマー
を含むスキンケア組成物であって、
(i)前記多孔質粒子対前記シリコーンエラストマーの重量比が、
1:15~15:1であり、
(ii)前記リン脂質対前記多孔質粒子の重量比が、
1:25~8:1であり、
(iii)前記多孔質粒子が、平均直径200nm~40ミクロンを有し、
(iv)前記シリコーンエラストマーは、前記多孔質粒子とは異なる、スキンケア組成物。
【請求項2】
前記リン脂質が、レシチンおよび/または水素化レシチンに由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記レシチンおよび/または水素化レシチンが、大豆もしくは卵由来のレシチンおよび/または水素化レシチンのものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記リン脂質の量が、前記組成物の0.001~8重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記リン脂質の量が、前記組成物の0.1~3重量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記多孔質粒子が、平均直径1~20ミクロンを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記多孔質粒子が、多孔質シリカである、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記多孔質粒子が、前記組成物の0.1~7重量%の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記多孔質粒子が、前記組成物の0.3~4重量%の量で存在する、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記リン脂質対前記多孔質粒子の重量比が、
1:10~2:1である、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記リン脂質対前記多孔質粒子の重量比が、1:4~1.5:1である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記シリコーンエラストマーの量が、前記組成物の0.05~8重量%である、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記シリコーンエラストマーの量が、前記組成物の0.5~2重量%である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記シリコーンエラストマーが、ビニルジメチコン/ジメチコンクロスポリマーである、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記多孔質粒子対前記シリコーンエラストマーの重量比が、1:6~6:1である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
エアロゲル粒子をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記エアロゲル粒子がシリル化シリカである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記エアロゲル粒子が前記組成物中に、前記組成物の0.01~10重量%存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記エアロゲル粒子が前記組成物中に、前記組成物の0.3~4重量%存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、アクリレートコポリマーである増粘剤を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
所望の皮膚表面に、請求項1~20のいずれかに一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、皮膚上の細線、しわ、孔および/またはしみの斑点の外観;夕方の皮膚の色調、または、それらの組合せを減少させる方法。
【請求項22】
所望の皮膚表面において、細線、しわ、孔および/またはしみの斑点の外観;夕方の皮膚の色調、または、それらの組合せを減少させるための、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、スキンケア組成物に関する。特に、本発明は、組成物の0.0001~10重量%のリン脂質、多孔質粒子およびシリコーンエラストマーを含むスキンケア組成物に関し、ここで、多孔質粒子対シリコーンエラストマーの重量比は、1:30~30:1である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
老化により、皮膚の外観には多くの変化が生じる。若々しい外観を維持したいと望む個人にとっての関心事は特に、シワ、加齢斑、または皮膚の色調の全般的な不均等といった皮膚の不完全さの減少または排除である。
【0003】
このように、化粧品業界は、皮膚の不完全性を隠すか、または、少なくとも弱めることのできる組成物を提供するためにかなりの努力を払ってきた。多くの場合、これは、タルク、シリカ、カオリンおよび他の無機微粒子のような物質を用いたマット効果の創出によって達成される。これらの無機微粒子は、その光学特性によりマット効果を達成する。
【0004】
別のアプローチは、ぼかし効果を達成することだと言われる。ここで、入射光は散乱(レンズ化)によって歪められる。このメカニズムにおいて化粧品組成物の成分は、さまざまな方向に光を曲げたりねじったりするレンズとして動作する。
【0005】
残念ながら、従来のアプローチでは、ラジアンス(radiance)なしに不完全を隠すか、または、ラジアンスおよび健康的な光沢をもたらすかのいずれかであるが、例えば、皮膚トポグラフィーの視認性を高めることにより、審美的に不均衡な皮膚外観を呈する。
【0006】
公開番号が国際公開第2017/071886号(ユニリーバ)である国際特許出願は、ターボ層状の(turbostratic)硝化ホウ素、比表面積が300m2/gを超える多孔質シリカ、及び美容上許容可能な担体を含入するパーソナルケア組成物を開示している。このような組成物は、明度を損なうことなく、より高いぼかし効力を提供することができる。
【0007】
ぼかし効果を改善する必要が依然として存在することを本発明者らは認識している。本発明者らは、組成物の0.0001~10重量%のリン脂質、多孔質粒子およびシリコーンエラストマーを含むスキンケア組成物であって、当該多孔質粒子対当該シリコーンエラストマーの重量比は1:30~30:1である組成物を開発した。驚くべきことに、ぼかし効力が有意に改善された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
発明の概要
第1の局面において、本発明は、組成物の0.0001~10重量%のリン脂質、多孔質粒子およびシリコーンエラストマーを含むスキンケア組成物を対象とし、ここで、当該多孔質粒子対当該シリコーンエラストマーの重量比は、1:30~30:1である。
【0010】
第2の局面において、本発明は、所望の皮膚表面に本発明の組成物を塗布する工程を含む、皮膚上の細線、しわ、孔および/またはしみの斑点の外観;夕方の皮膚の色調、または、それらの組合せを減少させる方法を対象とする。
【0011】
第3の局面において、本発明は、所望の皮膚表面において、細線、しわ、孔および/またはしみの斑点の外観;夕方の皮膚の色調、または、それらの組合せを減少させるための本発明の組成物の使用を対象とする。
【0012】
本発明の他の全ての局面は、以下の詳細な記載および実施例を考慮することで、より容易に明らかとなるであろう。
【0013】
発明の詳細な説明
実施例中、または別途明示的に示されている場合を除き、本記述中の、反応の材料または条件の量、材料および/または使用の物理的特性を示す全ての数は、任意に「約」の語によって修飾されたものとして理解され得る。
【0014】
特段規定する場合を除き、その量はすべて組成物の重量による。
【0015】
任意の範囲の値を規定するにあたり、任意の特定の上限値は、任意の特定の下限値と関連し得ることに留意すべきである。
【0016】
疑義を回避すべく、「含む(comprising)」という言葉は、必ずしも「からなる(consisting of)」または「から構成される(composed of)」ことではなく、「含む(including)」ことを意味するよう意図される。言い換えれば、列挙された工程や選択肢は網羅的である必要はない。
【0017】
本明細書中に見出される本発明の開示は、請求項が多項従属であるか、または、重複性なしに見出され得るという事実に関係なく、互いに従属しているとして請求項中に見出された全ての実施形態を網羅するものと考えられる。
【0018】
本発明の特定の局面(例えば、本発明の組成物)に関して構成が開示される場合、そのような開示は、以下についても本発明の他の局面(例えば、本発明の方法)のいずれかに適用されると考えられる。
【0019】
本明細書で使用する「多孔質粒子」とは、粒子の全容積にわたって空隙が分散した粒子をいう。空隙は、より大きな空間を分離する細孔開口と同様に、個々に、または、小さなサイズの開口によって連結することができる。
【0020】
本明細書中で使用される「シリコーンエラストマー」は、粘弾性特性を有する変形可能なオルガノポリシロキサンを指す。
【0021】
本明細書中で使用される「比表面積」とは、Brunauer-Emmett-Teller法に従って決定された比表面積を指す。比表面積の値は、ASTM規格D 3663-78に定められた要件を充足して測定した。
【0022】
本明細書中で使用される「直径」とは、特段記載しない限り、非凝集状態の粒子径をいう。直径1μm未満の粒子を有する多分散試料については、特に断りのない限り、例えばゼタサイザーNano(商標)(Malvern Instruments Ltd、UK)などの機器を用いた動的光散乱法(国際規格ISO 13321参照)を用いて測定したz平均直径を意味する。直径1μm以上の粒子を有する多分散試料の場合、直径とは、特に明記しない限り、ISO 13320に定められた要件を満たすシステム(Malvern Instruments Ltd.から入手可能なMastersizer(商標)2000など)を用いたレーザー回折法により測定可能な、粒子の見かけの容積中央径(D50、x50またはときにd(0.5)としても既知)を意味する。
【0023】
好ましくは、リン脂質は、レシチンおよび/または水素化レシチンに由来し、より好ましくはリン脂質は、レシチンに由来する。好ましくは、レシチンおよび/または水素化レシチンは、大豆または卵由来である。
【0024】
好ましくは、組成物の0.001~8重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらに好ましくは0.1~3重量%、さらに好ましくは0.2~1.5重量%の量のリン脂質を含む。
【0025】
好ましくは、組成物は、(a)レシチンおよび/または水素化レシチン、(b)多孔質粒子、および(c)シリコーンエラストマーを含み、ここでレシチンおよび水素化レシチンの総量は組成物の0.0001~10重量%である。より好ましくは、レシチンおよび水素化レシチンの総量は、より好ましくは組成物の0.05~7重量%、さらに好ましくは0.1~4重量%、さらに好ましくは0.2~2重量%である。
【0026】
本発明の多孔質粒子の要件は、多孔質粒子が多量の油を吸収する能力を有することである。好ましくは、多孔質粒子は、50g/100g超、より好ましくは200g/100g超、さらに好ましくは300g/100g超の油吸収値を有する。吸油量は、50g/100g~1500g/100gの範囲が好ましく、200g/100g~1200g/100gの範囲がより好ましく、300g/100g~1100g/100gの範囲がさらに好ましい。吸油値とは、ASTM Method D281-84に準拠して測定した値をいう。
【0027】
多孔質粒子の比表面積は、少なくとも100m2/gが好ましく、200~1000m2/gがより好ましく、550~880m2/gがさらに好ましく、590~810m2/gが最も好ましい。
【0028】
本発明の多孔質粒子は、油吸収能力を保証するために高い孔容積を有する。好ましくは、多孔質粒子の孔容積値は0.02cc/g超、より好ましくは0.7cc/g超、さらに好ましくは1.5cc/g超である。細孔容積値は、0.02cc/g~7cc/gの範囲が好ましく、0.7cc/g~6cc/gの範囲がより好ましく、1.5cc/g~5.6cc/gの範囲がさらに好ましい。孔容積値は、ASTM D4222-03に準拠して測定した値を指す。
【0029】
多孔質粒子は、好ましくは、平均直径200nm~50ミクロン、より好ましくは500nm~10ミクロン、および最も好ましくは1~6ミクロンである。より良好な官能性を有するために、多孔質粒子は、好ましくは実質的に均一なサイズであり、ここでは、5%未満の多孔質粒子が平均直径の0.5倍未満の直径を有し、5%未満の多孔質粒子が平均直径の1.5倍を超える直径を有する。別の局面において、多孔質粒子の直径の範囲は、好ましくは平均直径の0.8~1.2倍であり、より好ましくは平均直径の0.9~1.1倍である。
【0030】
好ましくは、多孔質粒子は親水性である。多孔質粒子は、好ましくはシリカ、セルロース、デンプン、アクリルポリマー、ナイロン、またはそれらの混合物を含む。アクリルポリマーは、重合モノマーとしてのアクリル酸、その同族体、および/またはその誘導体を含むポリマーを意味し、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、これらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を意味する。より好ましくは、多孔質粒子は、シリカ、ナイロン、重合モノマーとしてメタクリレートおよび/またはアクリレートを含有するポリマー、またはそれらの混合物を含み、さらにより好ましくは、多孔質シリカは、シリカ、ナイロン、またはそれらの混合物から選択される。最も好ましくは、多孔質粒子は多孔質シリカである。本発明で用いることができる市販の多孔質シリカは、コボからのMSS-500/3HおよびMSS-500/Hである。
【0031】
好ましくは、多孔質粒子は組成物の0.01~10重量%、より好ましくは0.1~7重量%、さらに好ましくは0.3~4重量%、さらに好ましくは組成物の0.5~2重量%の量で組成物中に存在する。
【0032】
本発明に用いるシリコーンエラストマーは、シリコーンエラストマーの粉末であることが好ましい。シリコーンエラストマーは多孔質粒子とは異なる。
【0033】
シリコーンエラストマーは、架橋されていることが非常に好ましい。シリコーンエラストマーは、硬化性オルガノポリシロキサンから得ることができる。この点に関する例としては、SiH含有ジオルガノポリシロキサンとケイ素結合ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの付加反応による付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物;ヒドロキシル末端ジオルガノポリシロキサンと加水分解可能なオルガノシランとの縮合反応によるヒドロキシル末端ジオルガノポリシロキサンとSiH含有ジオルガノポリシロキサンとの間の脱水素反応により硬化する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物(この縮合反応は脱水、アルコール遊離、アミン遊離、アミド遊離、カルボキシル遊離)が挙げられ;有機ペルオキシド触媒の存在下で熱的に硬化するオルガノポリシロキサン組成物、ガンマ線、紫外線、電子線などの高エネルギー放射線によって硬化するオルガノポリシロキサン組成物シリコーンエラストマーは、SiH含有ジオルガノポリシロキサンとケイ素結合ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの付加反応により白金金属触媒下で硬化する付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物によって得られることが好ましい
【0034】
シリコーンエラストマーは、乳化性または非乳化性架橋シリコーンエラストマーまたはそれらの組み合わせのいずれであってもよいが、好ましくは、シリコーンエラストマーは非乳化性である。本明細書中で用いる「非乳化性」という用語は、ポリオキシアルキレン単位が存在しない架橋シリコーンエラストマーを定義し、本明細書中で用いる「乳化性」という用語は、少なくとも1つのポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレン)単位を有する架橋オルガノ-ポリシロキサンエラストマーを意味する。
【0035】
好ましいシリコーンエラストマーは、ジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマーおよびポリシリコン-11のINCI名の下で入手可能なオルガノポリシロキサンである。より好ましくは、シリコーンエラストマーは、ジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマーである。
【0036】
典型的には、シリコーンエラストマーの平均直径は0.2~50ミクロンであり、より好ましくは0.5~20ミクロンであり、さらにより好ましくは0.8~10ミクロンであり、さらにより好ましくは1.5~6ミクロンである。
【0037】
シリコーンエラストマーは、好ましくは0.001~15重量%、より好ましくは0.05~8重量%、さらに好ましくは0.3~3重量%、さらになおより好ましくは組成物の0.5~2重量%の量で存在する。
【0038】
組成物のさらなる改良および/またはぼかし効率および/または感覚を改善するために、好ましくは、リン脂質対多孔質粒子の重量比は、1:60~20:1、より好ましくは1:25~8:1、さらに好ましくは1:10~2:1、および最も好ましくは1:4~1.5:1である。好ましくは、リン脂質対シリコーンエラストマーの重量比は、1:60~20:1、より好ましくは1:25~8:1であり、さらにより好ましくは1:10~2:1であり、最も好ましくは1:4~1.5:1である。多孔質粒子対シリコーンエラストマーの重量比は、1:30~30:1、好ましくは1:15~15:1であり、より好ましくは1:6~6:1であり、最も好ましくは1:3~3:1である。
【0039】
組成物のおよび/またはぼかし効率および/または感覚をさらに改善するために、好ましくは、レシチンと水素化レシチンとの総量対多孔質粒子の重量比は、1:60~20:1、より好ましくは1:25~8:1、さらに好ましくは1:10~2:1、および最も好ましくは1:4~1.5:1である。好ましくは、レシチンと水素化されたものの総量対シリコーンエラストマーの重量比は、1:60~20:1、より好ましくは1:25~8:1であり、さらにより好ましくは1:10~2:1、および最も好ましくは1:4~1.5:1である。
【0040】
好ましくは、組成物はさらにエアロゲル粒子を含む。エアロゲル粒子は多孔質粒子とは異なる。エアロゲル粒子もシリコーンエラストマーとは異なる。好ましくは、エアロゲル粒子の直径対多孔径の直径の重量比は1:1~10:1であり、より好ましくは1.2:1~6:1である。
【0041】
典型的には、エアロゲル粒子は、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース誘導体、キトサン、デンプン、シリカ、またはそれらの混合物を含む。好ましくは、エアロゲル粒子は無機材料を含む。より好ましくは、エアロゲル粒子はシリカを含む。さらに好ましくは、エアロゲル粒子はシリル化シリカを含み、最も好ましくはエアロゲル粒子はシリル化シリカのINCI名を有する。
【0042】
エアロゲル粒子の比表面積は、少なくとも100m2/gが好ましく、200から1500m2/gがより好ましく、500から1000m2/gがさらに好ましく、590から810mm2/gが最も好ましい。エアロゲル粒子は、好ましくは、平均直径1~70ミクロン、より好ましくは3~25ミクロン、最も好ましくは5~15ミクロンを有する。
【0043】
好ましくは、エアロゲル粒子は組成物の0.01~10重量%、より好ましくは0.1~7重量%、さらに好ましくは0.3~4重量%、さらに好ましくは0.5~2重量%の量で組成物中に存在する。
【0044】
好ましくは、組成物は増粘剤を含む。種々の増粘剤が組成物中に含まれ得る。アクリルアミド/アクリロイルジメチル酒石酸ナトリウム共重合体(アリストフレックスAVC)、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸ナトリウムコポリマー、コハク酸アルミニウムデンプン、ポリアクリル酸アルミニウムデンプン(カルボポール(登録商標)980、カルボポール(登録商標)1342、ペミュレンTR-2(登録商標)およびウルトレス(登録商標)増粘剤を含むカルボマー)、多糖類(キサンタンガム、グアー、ペクチン、カレージナンおよびスクレロチウムガムを含む)、セルロース(カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシメチルセルロースを含む)、ミネラル(タルク、シリカ、アルミナ、雲母および粘土を含む、後者はベントナイト、ヘクトライトおよびアタプルギトに代表される)、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよびその混合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、増粘剤は、カルボマー、タウレートコポリマー、アクリレートコポリマーまたはそれらの混合物から選択される。より好ましくは、増粘剤はアクリレートコポリマーである。
【0045】
増粘剤の量は、例えば組成物の0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、さらに好ましくは0.3~2重量%の範囲とすることができる。
【0046】
本発明の組成物は、化粧用に許容される担体を含むことができる。担体は液体であることが望ましい。水が最も一般的な担体である。組成物は、エマルションが好ましく、より好ましくは水中油型エマルションである。
【0047】
組成物は、組成物の35~95重量%、より好ましくは45~92重量%、さらにより好ましくは50~90重量%、最も好ましくは68~88重量%の量の水を含むことができる。
【0048】
組成物は、美白顔料、皮膚軟化剤、保湿剤、有機日焼け止め剤、皮膚美白剤、芳香剤、天然抽出物、またはそれらの組み合わせを含む任意の成分を含み得る。
【0049】
美白顔料は、典型的には、高屈折率物質の粒子である。例えば、美白顔料は、1.3超、より好ましくは1.8超、そして最も好ましくは2.0~2.7の屈折率を有し得る。このような美白顔料の例は、酸化ビスマス-塩化物、亜硝酸ホウ素、硫酸バリウム、雲母、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛またはそれらの組合せを含むものである。より好ましい美白顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、酸化鉄またはそれらの組合せを含む粒子である。さらに好ましい美白顔料は、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタンまたはそれらの組合せを含む粒子であり、これらの材料は特に高い屈折率を有するためである。さらにより好ましくは、美白顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛またはそれらの混合物から選択され、最も好ましい美白顔料は二酸化チタンである。美白顔料の平均直径は、典型的には、15nm~1ミクロン、より好ましくは35nm~800nm、さらにより好ましくは50nm~500nm、さらにより好ましくは100~300nmである。
【0050】
適当な皮膚軟化剤には、シリコーン、炭化水素、トリグリセリドまたはそれらの混合物が含まれる。これらのシリコーンは、有機、シリコーン含有またはフッ素含有、揮発性または不揮発性、極性または非極性であり得る。炭化水素は、鉱油、ワセリンおよびポリα-オレフィンを含むことができる。好ましい揮発性炭化水素の例には、イソドデカンおよびイソデカン(例えば、Presperse社から入手可能なPermethyl-99A)のようなポリデカン、およびC7-C8~C12-C15イソパラフィン(例えば、Exxon Chemicalsから入手可能なIsoparシリーズ)が含まれる。例示的なトリグリセリドは、ヒマワリ種子油、綿油、キャノーラ油、大豆油、ヒマシ油、ボレージ油、オリーブ油、シーバター、ホホバ油およびそれらの混合物であるが、これらに限定されない。モノ-およびジグリセリドも有用なことがある。特に好ましいのは、モノステアリン酸グリセリルおよびジステアリン酸グリセリルである。
【0051】
特に好ましい保湿剤には、ワセリン、アクアポリン操作活性剤、オート麦粒粉、ヒドロキシエチル尿素のような置換尿素、ヒアルロン酸および/またはその前駆体N-アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸および/またはその前駆体N-アセチルグルコサミン、またはそれらの混合物が含まれる。
【0052】
本発明の必須成分と組み合わせて使用するのに、多種多様な有機サンスクリーンが適している。適切なUV-A/UV-Bサンスクリーンには、2ヒドロキシ-4-メトキシベンゾアシッド、オクチルジメチルp-アミノ安息香酸、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、エチル-4-(ヒドロキシプロピル)アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-3,3-ジフェニルヘキシルシアレート、p-アミノベンゾアート、p-ジメチルアミノベンゾアート、2-(p-ジメチルアミノフェニル)-5-スルホニクベンゾオキサジン酸、2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチル-p-アミノ安息香酸及びこれらの混合物が含まれる。最も適切な有機日焼け止め剤は、2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイルメタンまたはそれらの混合物である。
【0053】
ビタミンB3化合物(ビタミンB3の誘導体を含む)、例えば、ナイアシン、ニコチン酸またはナイアシンアミドが、本発明に従って好ましい皮膚美白剤であり、最も好ましいのはナイアシンアミドである。
【0054】
本発明の組成物は、広範囲の他の任意成分を含み得る。例としては、抗酸化剤、着色剤、芳香剤、および保存剤が挙げられる。
【0055】
好ましくは、組成物は、少なくとも-50%のL&W(線および皺)指数を有する。より好ましくは、組成物は、0%~300%のL&W指数を有する。さらに好ましくは、スキンケア組成物は、25%~200%のL&W指数を有する。L&W指数と明度の測定値を例2に記載する。
【0056】
スキンケア組成物は、ヒト皮膚への局所適用に適した組成物を指し、好ましくはリーブオン製品である。本明細書における組成物に関連してここで使用される「リーブオン」の語は、皮膚上に塗布されるかまたはこすりつけられ、かつ、皮膚上に残される組成物を意味する。本明細書中で使用する「皮膚」は、顔面(眼瞼および口唇を除く)、頸部、胸部、腹部、背部、腕、脇の下(under arms)、手、脚の皮膚を含む。好ましくは「皮膚」とは、顔面(眼瞼および口唇を除く)および脇の下の皮膚を含み、より好ましくは、皮膚とは、口唇および眼瞼以外の顔面の皮膚を意味する。
【0057】
本発明の理解を容易にするべく、以下の例を提供する。この例は、特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。
【0058】
例
材料
【0059】
【0060】
例1
【0061】
【0062】
一連のスキンケア組成物を、表1中の材料を使用することによって、表2に示されるように処方した。
【0063】
例2
この例によって、本発明のスキンケア組成物の即時ぼかし効果が改善したことが実証された。
【0064】
(1). スキンケア組成物塗布前後での人工皮膚の光沢度の測定を行った。
ポリウレタンエラストマーで作られたシワ付きバイオスキンプレート(BP-EW1 #BSC、ビーラックス株式会社、東京、日本)を基材として、シワのあるヒト皮膚を模倣した。SAMBA (Bossa Nova Technologies、米国)と呼ばれる二重偏光画像システムを用いて、松原明[皮膚透光性:何がどのように測定されているか、どのように測定されているか、国際化粧品連合(IFSCC)会議2006、大阪、日本]が記載した方法と原理に従ってシワのあるバイオスキンプレートの光沢度を測定した。解析にはSAMBA face system(Version 4.3)と名付けたソフトウェアを装備した。Wrinkled Bio―skinプレートを80msecの曝露時間で入射光に対して試験した。動作モードは平行偏波および交差偏波モードであった。
【0065】
次に、例1で調製した1つの試料28mgを、光沢試験用に7cm2の面積で円内のフィンガーコットに貼付して広げて30分間自然乾燥させた。試料を適用した後のしわのあるBioスキンプレートの光沢を、SAMBAシステムを用いて再度測定した。
【0066】
(2). L&W指数の算出
入射光を、Bio‐skinプレートによって反射および散乱した。鏡面反射光は入射光と同じ偏光を保ち、一方、体積(拡散光)からの散乱光は非偏光であった。SAMBAカメラは偏光の二つの状態(平行と交差)に対応する二つの画像を逐次取得した。平行画像強度(P)には反射光と散乱光の両方が寄与し、交差画像強度(C)は散乱光のみが寄与する。平行画像に交差画像を加えたものは、従来のカメラで配信された画像、または人間の目で知覚された画像の合計に等しい。
【0067】
光沢度は、(P-C)/(P+C)で算出した。ピクセルごとに光沢度の算出を行った。光沢度の標準偏差(STD)は皮膚外観の均一性の尺度である。STDが高いほど均一性は低い。ここでは、スキンケア組成物のぼかし効果の程度を示すために、L&W(線としわ)指標を定義した。L&W指数は、(検体適用前の光沢度のSTD-検体適用後の光沢度のSTD)/(検体適用前の光沢度のSTD)により算出した。L&W指数が高いほど、試料のぼかし効果が高くなる。
【表3】
【0068】
ぼかし効果のデータを表3に列挙する。データは、本発明による組成物が、20個(試料1対試料B)を含む組成物よりも優れた即時ぼかし効果を提供したことを示す。リン脂質が多孔質粒子とシリコーンエラストマーとを含むスキンケア組成物の即時ぼかし効果を高めることができることは驚くべきことであった。