(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】光学機器を備えるグレイジング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240508BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240508BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20240508BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240508BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C03C27/12 D
G01S7/481 A
G01S17/93
G01S17/89
C03C27/12 F
B60J1/00 J
(21)【出願番号】P 2021505933
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019069521
(87)【国際公開番号】W WO2020025360
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リ, メイジエ
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】フラセレ, クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトニー, マレク
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0199674(US,A1)
【文献】特開2015-024930(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C
B60J 1/00
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に透明な領域(22)を備える積層グレイジングにおいて、
- 各々が内面と外面を有し、高レベルの近赤外放射透過ガラスシートである少なくとも1つの内側ガラスシート(13)及び1つの外側ガラスシート(14)と、
- 少なくとも第一のゾーン(11)と第二のゾーン(12)を含み、前記第二のゾーン(12)が前記光学的に透明な領域(22)によって分界される、少なくとも前記内側ガラスシート及び前記外側ガラスシートを積層するための少なくとも1つの熱可塑性中間層(20)と、
- 前記光学的に透明な領域(22)内に統合された前記内側ガラスシートの内面に与えられる少なくとも1つの光センサ機器(2)と、
を含み、
前記熱可塑性中間層が、前記光学的に透明な領域によって分界される第二のゾーン(12)を含み、前記第二のゾーン(12)において、前記積層グレイジングが、前記光センサ機器の動作波長について前記第一のゾーン(11)の赤外透過率の値TIR2より高い赤外透過率の値TIR1を有すること、前記熱可塑性中間層(20)は、前記グレイジングの主表面をカバーし、かつフレームを与えられた、ポリビニルブチラールで作られた第一のゾーン(11)を含み、エチレン酢酸ビニル、環状オレフィンポリマー(COP)、及びポリウレタンから選択される第二のゾーン(12)の熱可塑性中間層の一部分は、前記フレーム内に設置されること、及び前記少なくとも1つのガラスシートが、750~1650nmの波長範囲において5m
-1~15m
-1の吸収係数を有することを特徴とする積層グレイジング。
【請求項2】
1つの光センサ機器(2)は、750~1650nmの波長範
囲の赤外線型遠隔感知機器であり、前記内側ガラスシートの内面に設置されることを特徴とする、請求項1に記載の積層グレイジング。
【請求項3】
赤外線フィルタのシステムが、前記内側ガラスシートと前記外側ガラスシートとの間に与えられ、前記光学的に透明な領域(22)内に赤外線フィルタのないゾーンがあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層グレイジング。
【請求項4】
前記赤外線フィルタシステムの層はコーティングであり、赤外線型遠隔感知機器が設置される領域に除膜ゾーンが与えられることを特徴とする、請求項
3に記載の積層グレイジング。
【請求項5】
前記赤外線フィルタシステムの層は銀に基づくことを特徴とする、請求項
3に記載の積層グレイジング。
【請求項6】
少なくとも1つのガラスシートは、可視光を吸収及び/又は反射する少なくとも1つの近赤外透過コーティングで被覆されることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の積層グレイジング。
【請求項7】
前記赤外線型遠隔感知機器は、スキャニング、回転式、又はソリッドステート式LiDARに基づく、車両の周囲の3Dマッピングが可能なLIDARシステムであることを特徴とする、請求項
2又は4に記載の積層グレイジング。
【請求項8】
前記赤外線型遠隔感知機器は、前記積層グレイジングの内面に光学的に連結されることを特徴とする、請求項
2又は4に記載の積層グレイジング。
【請求項9】
反射防止コーティングが前記積層グレイジングの表面に与えられることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の積層グレイジング。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの総重量のパーセンテージで表して、以下の含有量:
- 全鉄(Fe
2O
3と表す)0.002~1%
- Cr
2O
3 0.0001~1%
- Co 0.0001~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載の積層グレイジング。
【請求項11】
前記積層グレイジングは、フロントガラスであることを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載の積層グレイジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサ、より詳しくは、LiDARセンサ等の赤外線型遠隔感知機器を含むガラスに関する。より詳しくは、本発明は、自律走行車の積層グレイジングの背後に統合されることになる、光センサを含むガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの自動車、航空機、ヘリコプタ、及び船舶は、様々な光センサを装備している。光センサの例はカメラシステム、例えばビデオカメラ、ナイトビジョンカメラ、残光増幅器、FUR(赤外線前方監視装置(forward looking infrared))等の受動型赤外線検出器、又はLiDAR検知機器等の赤外線型遠隔感知機器である。カメラシステムは、紫外線(UV)、可視光(VIS)、及び赤外線波長範囲(IR)の光を使用できる。
【0003】
自動車では、これらのカメラシステム又は赤外線型遠隔感知機器、例えばLiDAR感知機器は、車室内のフロントガラスの背後に設置できる。それゆえ、これらは、道路上を走行中であっても危険な状況及び障害物をタイムリーに検出することを可能にする。
【0004】
光センサを使用するその他の分野には、例えば、他の自動車までの距離を特定できるレーザ距離メータを使用する電子距離測定器が含まれる。このようなシステムは、軍事利用分野では一般的であるが、民生用としても多くの可能性がある。先行する自動車までの距離を測定することによって、必要な安全距離を特定し、交通上の安全を大幅に向上させることができる。自動警告システムを用いれば、追突の危険性が大きく低下する。
【0005】
フロントガラスは内蔵LiDARを有することも知られている。しかしながら、新世代のLiDARは、光学特性の点で要求がより厳しく、したがって、従来のフロントガラス構成とは十分に両立しない。特に、サーミックガラス又はコーティングガラス及び特にコーティングフロントガラスは、熱的快適性の理由から、自動車メーカによってますます使用されている。
【0006】
フロントガラスの上部の背後にセンサを統合することには、幾何学的測距にとって良好な位置、路面の見えやすさ、及び交通状況の適切な概観等、他の利点も含まれることも知られている。それに加えて、この位置により、ワイパによる反復的な開口クリーニング、石による損傷リスクの低さ、継ぎ目のない審美性、及びより一般的に、センサ動作のためのよりよく制御された環境も提供される。それゆえ、自律走行車用の「マッシュルーム」等の目立つ、見た目の悪いLiDARセンサ、又はバンパ若しくはヘッドライトシステム等のその他の感知位置に統合されるLiDARの使用に代わるものが求められている。
【0007】
本発明によれば、赤外線型遠隔感知機器LiDARセンサは、スキャニング、回転式、点滅式、又はソリッドステート式LiDARに基づく、車両の周囲の3Dマッピングを可能にする新世代LiDARである。それゆえ、IR型センサにより、車両の周囲の精密なマッピングの作成が可能となり、これは自律走行車を正確に運転し、障害物とのあらゆる衝撃を防止するために使用される。
【0008】
LiDAR(Lidar、LIDAR、又はLADARとも表記される)は、ターゲットに赤外線(IR)レーザ光を当てることによって距離を測定する技術である。これらは特に、スキャニング、回転式、点滅式、又はソリッドステート式LiDARである。スキャニング又は回転式LiDARは移動するレーザビームを使用しており、他方で、点滅式及びソリッドステート式LiDARは物体で反射する光パルスを発する。
【0009】
それゆえ、先行技術による解決策ではLiDAR新世代に対する要求事項に応えることができず、これは特に、LiDAR搭載ガラスが可能性のある解決策とは考えられなかったからである。
【0010】
より詳しくは、幾つかの光センサは、適正に動作するために特定の波長での高い透過性を要求する。このようなセンサは、このスペクトル範囲内で適当な透明性を呈する専用のガラス組成のおかげで、自動車用グレイジングの背後に統合することができる。しかしながら、安全上の理由により積層グレイジングが必要である場合、中間層材料が追加的な吸光を誘導するかもしれず、これは適正なセンサ動作を妨害する可能性がある。
【0011】
現在、IR信号が車体、又は、自動車のフロントガラス若しくは積層バックライト若しくは積層サイドライト等のガラス部分の何れかを通過できるようにする解決策はない。
【発明の概要】
【0012】
それゆえ、本発明は、高い検出範囲、最小限の設計変更、及びより高い安全性と組み合わせて、光学機器、及びより詳しくはLiDAR新世代センサが自律走行車の内部に統合されることができる解決策を提案する。
【0013】
この解決策は、センサが適正に動作するために十分なIR透過性を示す積層グレイジング、及びより詳しくはフロントガラス、又は、より一般的には積層自動車用グレイジング上にLiDARセンサを統合することによって可能となる。
【0014】
簡潔にするために、以下の説明の中のガラスシートの番号は、グレイジングについて従来使用される番号付け規則に関する。積層グレイジングの場合、車両の外部環境と接触するガラスシートはサイド1と呼ばれ、内側部分、すなわち車室と接触する表面は、フェース4と呼ばれる。
【0015】
疑義の発生を避けるために、「外側」及び「内側」という用語は、車両にグレイジングとして取付け中のグレイジングの向きに関する。
【0016】
同じく疑義の発生を避けるために、本発明は、自動車、列車、飛行機等のあらゆる交通手段のほか、ドローン等のその他の輸送手段にも適用可能である。
【0017】
それゆえ、本発明は光学的に透明な領域を有する積層グレイジングに関し、これは、
- 各々が内面及び外面を有する、高レベルの近赤外放射透過ガラスシートである、少なくとも1つの内側ガラスシート及び1つの外側ガラスシートと、
- 少なくとも第一のゾーンと第二のゾーンを含み、第二のゾーンが光学的に透明な領域により分界される(delimited)、少なくとも内側ガラスシート及び外側ガラスシートを積層するための少なくとも1つの熱可塑性中間層と、
- 光学的に透明な領域に統合された内側ガラスシートの内面上に与えられる少なくとも1つの光学機器と、
を含む。
【0018】
本発明によれば、熱可塑性中間層は、光学的に透明な領域により分界される第二のゾーンを含み、第二のゾーンにおいて、積層グレイジングが、前記光学機器の動作波長について第一のゾーンの赤外透過値TIR2の値より高い赤外透過値TIR1を有する。
【0019】
本発明によれば、TIRとは、赤外透過率、すなわち製品により透過される赤外放射(750~2500nm)のパーセンテージを意味し、標準ISO 9050:2003に従って計算される。本発明に関して、「光学的に透明なセンサ領域」という表現は、グレイジングのうち、関係する光及び電磁データ又は信号を光センサに供給する部分を指す。これは、ガラスシート又は挿入されたガラスシートセグメントの、関係する光及び電磁信号に対して高い透過率を有する何れの部分でもあり得る。光学的に透明なセンサ領域は好ましくは、ガラスシート表面の10%未満、特に5%未満、より好ましくはガラスシート表面の2%未満、より好ましくは1%未満を占める。例えば、自動車用グレイジングの場合、光学的に透明なセンサ領域には、光学機器及びより詳しくはLidarが設置される。
【0020】
光センサ機器は好ましくは、400nm~750nmの波長の可視光及び750nm~1650nmの波長の赤外線用カメラを含む。
【0021】
本発明によれば、ガラスシートは平坦又は湾曲したガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスであってよい。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、積層グレイジングは、第一のゾーンにおいて、一般的に積層グレイジングのために、及びより詳しくは自動車用グレイジング、平面グレイジング等のために使用されるポリビニルブチラールで作られる熱可塑性中間層を含み、第二のゾーンの熱可塑性中間層の材料は、ポリビニルブチラールより高いTIRを有する材料で作られる。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、光学機器の動作波長におけるTIR1はTIR2より高いものであるべきであり、好ましくは90%より高いものであるべきであり、これはフレネルの式により定められる理論上の限度に近い。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、光学機器の動作波長はIR範囲内、好ましくは750nm~1650nm、好ましくは1530~1560nmである。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、積層グレイジングは少なくとも1つの熱可塑性中間層を含み、熱可塑性中間層の第一の層はPVBとしてよく知られているポリビニルブチラールで作られ、第二のゾーンの熱可塑性中間層の材料は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、環状オレフィンポリマー(COP)、及びポリウレタン(PU)から選択される。
【0026】
要求される特性を満たす何れの適当な熱可塑性中間層も使用してよいと理解されたい。
【0027】
エチレン酢酸ビニル(EVA)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン(PU)等の熱可塑性中間層は、光センサが最適に動作するのを助ける高いTIRを有する。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、積層グレイジングは少なくとも1つの熱可塑性中間層を含み、これは、グレイジングの主表面をカバーするポリビニルブチラールで作られる第一のゾーンを含み、第一のゾーンにはフレームが与えられ、フレームの中には、エチレン酢酸ビニル、環状オレフィンポリマー(COP)、及びポリウレタンから選択される熱可塑性中間層の第二のゾーンに対応する熱可塑性中間層の一部分が設置される。
【0029】
それゆえ、光センサが最適に動作できるような最適な特性を有する、熱可塑性中間層の光学的に透明な領域の小さい寸法の一部分は、PVB等の標準的材料を保持しながら、局所的に、特に光センサが設置される光学的に透明な領域に適用される。フロントガラスの主要視野領域は依然として、低コスト化と機械的抵抗力の向上を確実にし、また、自動車の標準とも適合するように、標準的なPVBと組み付けられる。実際に、PVBは、特にEC43標準を満たすために自動車用フロントガラスを積層するために古典的に使用されている。
【0030】
古典的に、積層グレイジングにおいて、グレイジングの表面全体に少なくとも2つのガラスシートを積層するための標準的解決策は、熱可塑性中間層としてPVBを使用することである。しかしながら、前述のように、PVBは、特定の波長における透過性の点で、光センサ及びより詳しくはLiDAR等のより進化した光センサを適正に動作させるのに十分ではない。それゆえ、この問題を解決するための解決策は、グレイジング全体への代替的な中間層材料、すなわちグレイジング全体への同じ特性の同じ中間層を使用することである。しかしながら、これは技術的(機械的特性、ヘイズ等)又はコスト面での欠点を含むかもしれない。したがって、本発明は、本発明による光センサにより検出される画像/情報の品質を改善するための単純で容易な解決策を提供する。
【0031】
近年、例えば自動車の軽量さ又はアメニティを改善するための高機能フロントガラスに対する要求の高まりにより、様々な機能を有するフロントガラスが考案された。このような高機能フロントガラス用の積層ガラス、例えば防音性の高い積層ガラス(以下、積層防音ガラスともいう)の中間層の場合、様々な機能を有する樹脂層を積層することによって形成される多層中間層が使用されることが多い。例えば、多層中間層には、ヘッドアップディスプレイ(HUD)と共に使用するための楔角が設けられてよい。このような多層中間層は、欧州特許第1800855B号明細書に記載されている。
【0032】
それゆえ、本発明は、例えば、積層プロセスの前に相応に組み付けられるダイカットされた中間層材料インサート(=第二のゾーン)を使用することにより、代替的な中間層を光学的に透明な領域に、すなわちセンサ統合領域の領域に局所的にのみ適用し、それ以外の部分では標準的な材料のままとすることによって、光センサの性能を改善する解決策を提案した。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、光学機器は、750~1650nmの波長範囲で動作する赤外線型遠隔感知機器である。光学機器は、ガラスシートの、赤外線フィルタのないゾーンの内面に設置される。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、ガラスシートの吸収係数は750~1650nmの波長範囲で5m-1~15m-1である。赤外範囲のガラスシートの低い吸収を定量化するために、本明細書において、吸収係数は750~1650nmの波長範囲で使用される。吸収係数は、吸収率と、ある環境中で電磁放射が移動する光路長との比により定義される。これはm-1で表わされる。したがって、それは材料の厚さには無関係であるが、吸収された放射の波長及び材料の化学的性質に依存する。
【0035】
ガラスの場合、選択された波長λでの吸収係数(μ)は、材料(thick=厚さ)の透過率(T)及び屈折率nの測定値から計算でき、n、ρ、及びTの値は選択された波長λに依存する:
ただし、ρ=(n-1)
2/(n+1)
2である。
【0036】
本発明のある実施形態によるガラスシートは好ましくは、本発明に関する光学技術で一般的に使用される750~1650nmの波長範囲で、従来のガラスと比較して非常に低い吸収係数を有する。特に、本発明によるガラスシートの750~1650nmの波長範囲の吸収係数は、5m-1~15-1である。
【0037】
好ましくは、ガラスシートの750~1650nmの波長範囲の吸収係数は、5m-1~10m-1である。
【0038】
低い吸収には、最終的なIR透過が材料の光路によって影響を受けにくいという別の利点がある。これは、大きい開口角の広い視野角(FOV)センサの場合、様々な角度で(画像の異なる領域で)認識される強度が、特にセンサがグレイジングに光学的に連結されている場合、より均一となることを意味する。
【0039】
それゆえ、自律走行車が、道路工事又は障害物等、自律動作に適していない予想外の走行環境に遭遇すると、本発明によるグレイジングを通じた車両センサは、車両及び予想外の運転環境に関するデータを捕捉できる。捕捉されたデータは、遠隔オペレータに、又は中央知的ユニットに送信できる。遠隔オペレータ又はユニットは、車両を操作するか、又は各種の車両システム上で実行される自律走行車へのコマンドを発行することができる。遠隔オペレータ/ユニットに送信された捕捉データは、例えば捕捉データの限定的な一部を送信すること等によって、バンド幅を維持するために最適化できる。
【0040】
本発明のある実施形態によれば、ガラスシートは、750~1650nm波長範囲で5m-1~15m-1の吸収係数を有するという特徴を持つ異なるカテゴリに属していてよいガラスで製作される。それゆえ、ガラスはソーダ石灰シリカ系ガラス、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩等とすることができる。
【0041】
好ましくは、近赤外放射透過率の高いガラスシートは超透明ガラスである。
【0042】
好ましくは、本発明の基本ガラス組成は、ガラスの重量パーセンテージで表して、以下の総含有量を含む:
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
【0043】
より好ましくは、基本ガラス組成は、本発明によれば、ガラスのパーセンテージの総重量として表して、以下の含有量を含む:
SiO2 55~78%
Al2O3 0~18%
B2O3 0~18%
Na2O 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
【0044】
より好ましくは、製造コストの削減を理由に、本発明による少なくとも1つのガラスシートはソーダ石灰ガラスで作られる。有利には、本発明によれば、基本ガラス組成は、ガラスの総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む:
SiO2 60~75%
Al2O3 0-6%
B2O3 0~4%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
Na2O 5~20%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
【0045】
この基本組成に加えて、ガラスは所望の効果の数量に応じて調整される性質のその他の成分を含んでいてよい。
【0046】
本発明において提案される、その審美性又はその色に対する影響の弱い、又は全くない、高赤外線(IR)で非常に透明なガラスを得るための解決策は、ガラス組成の中で、特定の含有量範囲の少量の鉄とクロムを組み合わせることである。
【0047】
それゆえ、第一の実施形態によれば、ガラスシートは好ましくは、ガラス総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む組成を有する:
全Fe(Fe2O3と表す) 0.002~0.06%
Cr2O3 0.0001~0.06%
【0048】
少量の鉄とクロムを組み合わせたこのようなガラス組成は、赤外反射の点で特に良好な性能を示し、また、可視光において高い透明性と、「超透明」と呼ばれるガラスに近いわずかに目立つ色合いを示した。これらの組成は、国際出願国際公開第2014128016A1号パンフレット、同第2014180679A1号パンフレット、同第2015011040A1号パンフレット、同第2015011041A1号パンフレット、同第2015011042A1号パンフレット、同第2015011043A1号パンフレット、及び同第2015011044A1号パンフレットに記載されており、これらを参照により本願に援用する。この第一の特定の実施形態によれば、組成は好ましくは、ガラスの総重量に関して0.002~0.06重量%のクロム含有量(Cr2O3と表される)を含む。このようなクロムの含有量により、赤外反射をさらに改善することが可能である。
【0049】
第二の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む:
全Fe(Fe2O3と表す) 0.002~0.06%
Cr2O3 0.0015~1%
Co 0.0001~1%
【0050】
このようなクロム及びコバルトに基づくガラス組成は、赤外透過の点で特に良好な性能を示し、他方で審美性/色の点で興味深い可能性を提供した(青色がかった中立状態から強い着色、さらには不透明な状態まで)。このような組成は、欧州特許出願第13 198 454.4号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0051】
第三の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む:
全鉄(Fe2O3と表す) 0.02~1%
Cr2O3 0.002~0.5%
Co 0.0001~0.5%
【0052】
好ましくは、この実施形態によれば、組成は以下を含む:0.06%<全鉄≦1%
【0053】
クロムとコバルトに基づくこのような組成は、色及び光透過の点で市販の青及び緑のガラスに匹敵するが、赤外透過において特に良好な性能を有する青-緑範囲の色付きガラスシートを得るために使用される。このような組成は、欧州特許出願第15172780.7号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0054】
第四の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む:
全鉄(Fe2O3と表す) 0.002~1%
Cr2O3 0.001~0.5%
Co 0.0001-0.5%
Se 0.0003~0.5%
【0055】
クロム、コバルト、及びセレニウムに基づくこのようなガラス組成は、赤外透過において特に良好な性能を有する一方で、審美性/色の点で興味深い可能性を提供する(灰色の中立状態から、灰色-青銅色範囲で強くなる若干の着色)。このような組成は、欧州特許出願第15172779.9号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0056】
第一の代替的な実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む:
全鉄(Fe2O3と表す) 0.002~0.06%
CeO2 0.001~1%
【0057】
このような組成は、欧州特許出願第13 193 345.9号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0058】
他の代替的な実施形態によれば、ガラスは、ガラスの総重量のパーセンテージとして表して、以下の含有量を含む:
全鉄(Fe2O3と表す) 0.002-0.06%
以下の成分のうちの1つ:
- マンガン(MnOとして計算)を0.01~1重量%の量だけ
- アンチモン(Sb2O3と表す)を0.01~1重量%の量だけ
- ヒ素(As2O3と表す)を、0.01~1重量%の量だけ
又は
- 銅(CuOと表す)を0.0002~0.1重量%の量だけ
【0059】
このような組成は、欧州特許出願第14 167 942.3号明細書に記載されており、同出願は参照によって本願に援用される。
【0060】
本発明によれば、自動車用グレイジングは平坦シートの形態であってよい。グレイジングは、湾曲していてもよい。これは通常、リアウインドウ、サイドウインドウ、若しくはルーフ、又は特にフロントガラスのための自動車用グレイジングの場合である。
【0061】
自動車の用途において、赤外範囲における透過性の高いガラスシートの存在は、車両が日光にさらされたときに、熱的快適性を維持することにとって有利とはならない。本発明が提案する手段は、高い選択性(TL/TE)を有する、好ましくは1より大きい、又は1.3より大きい選択性を有するグレイジングを提供することである。それゆえ、エネルギー伝達の適当な条件下で熱的快適性を保持するために、すでに明示した要素とは別に、本発明によるグレイジングは赤外線を太陽からの放射から選択的にフィルタリングするための手段を含む。
【0062】
代替的に、本発明によるガラスと共に、50、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、又は1%未満のIR透過率を有するフィルタリング層を使用することが有利であることがある。
【0063】
有利には、赤外線フィルタは、赤外放射を反射する材料に基づくn層の機能(n≧1)と、各機能層が誘電コーティングにより取り囲まれるように、n+1の誘電コーティングを含む多層スタックを有する反射層である。
【0064】
赤外反射層の一部である機能層は、有利には、貴金属から形成される。これらは、銀、金、パラジウム、プラチナ、又はこれらの混合物若しくは合金のほか、単独の銅又はアルミニウム、合金、若しくは1つ又は複数の貴金属との合金に基づくことができる。好ましくは、すべての機能層が銀に基づく。これは、赤外放射の反射効率が非常に高い貴金属である。これは、マグネトロンデバイスに容易に実装され、そのコストも、特にその有効性を考えれば法外ではない。有利には、銀は、数%のパラジウム、アルミニウム、又は銅で、例えば1~10質量%だけドープされるか、又は銀合金として使用できる。
【0065】
赤外反射層の一部である誘電透明コーティングは、スパッタリングにより堆積される膜の分野でよく知られている。適当な材料は数多く、ここですべてを挙げることは無益である。これらは一般に、酸化物、酸窒化物、又は金属窒化物である。最も一般的なものは例えば、SiO2、TiO2、SnO2、ZnO、ZnAlOx、Si3N4、AlN、Al2O3、ZrO2、Nb2O5、YOx、TiZrYOx、TiNbOx、HfOx、MgOx、TaOx、CrOx、及びBi2O3、並びにそれらの混合物である。以下の材料も挙げることができる:AZO、ZTO、GZO、NiCrOx、TXO、ZSO、TZO、TNO、TZSO、TZAO、及びTZAYO。AZOという用語は、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物又は亜鉛とアルミニウムの混合酸化物に関し、好ましくは中性又は弱酸化性雰囲気中の何れかにおける噴霧により堆積される酸化物系セラミックターゲットから得られる。同様に、ZTO又はGZOの表現はそれぞれ、チタンと亜鉛又は亜鉛とガリウムの混合酸化物に関し、中性又は弱酸化性雰囲気中の何れかのセラミックターゲットから得られる。TXOという用語は、酸化チタンセラミックターゲットから得られるチタン酸化物に関する。ZSOという用語は、酸化性雰囲気中で堆積される合金の金属ターゲットから、又は中性若しくは弱酸化性雰囲気中の対応する酸化物のセラミックターゲットから得られる亜鉛錫混合酸化物を指す。TZO、TNO、TZSO、TZAO、又はTZAYOの表現はそれぞれ、チタンジルコニウム酸化物、チタンニオビウム、チタンジルコニウム錫、チタンジルコニウムアルミニウム、又はチタンジルコニウムアルミニウムイットリウムの混合酸化物に関し、中性又は弱酸化性雰囲気中の何れかのセラミックターゲットから得られる。上述の材料はすべて、本発明で使用される誘電膜の形成に使用できる。
【0066】
好ましくは、1つ又は各機能層の下に堆積される誘電コーティングには、1つ又は複数の機能層と直接接触する、亜鉛酸化物に任意選択により例えばアルミニウム又はガリウムをドープしたもの、又は錫酸化物との合金に基づく層が含まれる。亜鉛酸化物は、機能層の安定性及び耐腐食性に対して、特に金銭的な面で特に有利な効果を有する。これはまた、銀に基づく層の導電性の向上にも有益であり、それゆえ、低い放射率が得られる。
【0067】
スタック中の異なる層は、例えば既知のマグネトロンデバイスにおいて、減圧マグネトロンスパッタリングでスパッタリングされる。しかしながら、本発明はこの特定の成膜方法に限定されない。
【0068】
本発明の特定の実施形態によれば、アセンブリのこれらの層は、積層体に挿入されるキャリアシート、特にPET上に配置されるか、又はガラスシート上に直接堆積される。
【0069】
上記に基づく金属層の代替案として、赤外反射層は複数の非金属層を含むことができ、それによってこれはバンドパスフィルタ(バンドは赤外電磁スペクトル領域付近を中心とする)として動作する。
【0070】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車用グレイジングは、少なくとも1つの熱可塑性中間層と共に積層された外側及び内側ガラスシートを含む積層グレイジングであり、外側及び内側ガラスシートは、750~1650nmの波長範囲の吸収係数が5m-1~15m-1の近赤外透過率の高いガラスシートである。すると、赤外線を反射する層は、好ましくはフェース2、すなわち車両に取り付けられ、外部環境と接触する第一のガラスシートの内面に設置される。
【0071】
本発明の他の実施形態によれば、赤外線フィルタは赤外光を吸収する熱可塑性中間層である。このような熱可塑性中間層は例えば、ITOがドープされたPVBである。
【0072】
本発明の他の実施形態によれば、赤外線フィルタは着色ガラスである。
【0073】
本発明の1つの実施形態によれば、ガラスシートは、赤外透過率の値より低い光透過率の値を有する。特に、本発明の他の実施形態によれば、可視範囲の光透過率の値は10%未満であり、近赤外透過率の値は50%より高い。
【0074】
本発明の他の有利な実施形態によれば、ガラスシートは良好なレベルの動作性能を確保しながら、センサの見た目の悪い要素を外側から隠すために、少なくとも1つのIR透過吸収(着色)及び/又は反射コーティングで被覆される。このコーティングは、例えば可視光範囲では透過率を持たない(又は非常に低い)が、本願の関心対象の赤外範囲においては高い透過性を有する黒インクの少なくとも1つの層で構成されてよい。このようなインクは、400~750nmの範囲で<5%、750~1650nmの範囲で>70%の透過率を実現できる株式会社セイコーアドバンス又は帝国インキ製造株式会社により製造される市販の製品のように、有機化合物から製造できる。コーティングは、その耐久性に応じて、自動車用積層グレイジングのフェース1又は/及び4に与えられることができる。
【0075】
本発明の他の実施形態によれば、ガラスシートは、高いIR透過率を保持しながら、可視範囲を選択的に反射するように最適化された多層コーティングで被覆されてもよい。それゆえ、Kromatix(登録商標)製品で見られるような幾つかの特性が求められる。これらの特性は、そのような層が適切なガラス組成の上に堆積されたときに、システム全体のIR吸収率を全体的に確実に低くする。コーティングは、その耐久性に応じて、自動車用積層グレイジングのフェース1又は/及び4に与えられることができる。
【0076】
本発明によれば、LiDAR機器は、少なくともレーザ送信機、少なくとも集光器(テレスコープ又はその他の光学系)を含む受信器、及び少なくとも光を電気信号及び、求められる情報を抽出する電子処理チェーン信号に変換するフォトディテクタで構成される光電子システムである。
【0077】
好ましくは、LiDARは、グレイジングの上側部分、より好ましくはミラーホルダの付近に設置される。
【0078】
本発明の他の実施形態によれば、自動車用グレイジングは積層グレイジングであり、LiDARは内側ガラスシートの内面、すなわちフェース4の、ガラスシートのIRフィルタリング手段の存在しないゾーンに設置される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車用グレイジングはフロントガラスである。それゆえ、赤外線型遠隔感知機器はフロントガラスのフェース4の、赤外反射層のないゾーンに設置される。実際、赤外反射コーティングの場合、コーティングのないゾーンは、例えば、LiDARがフェース4上のコーティングのないこの領域に位置付けられて、その機能性が確保されるような方法で除膜又はマスキングによって与えられる。コーティングのない領域は概して、赤外線型遠隔感知機器の形状と寸法を有する。赤外線吸収フィルムの場合、フィルムはLiDARの寸法にカットされ、LiDARはフィルムのないこの領域に位置付けられて、その機能性が保証される。
【0080】
本発明の1つの実施形態によれば、自動車用グレイジングは超薄型グレイジングである。
【0081】
有利には、IR型遠隔感知機器は任意選択により、グレイジングの内面に光学的に連結される。例えば、ガラス及びLiDARの外側レンズの屈折率に適合する柔軟材料が使用されてよい。
【0082】
本発明の他の有利な実施形態によれば、ガラスシートは少なくとも1つの反射防止層でコーティングされる。本発明による反射防止層は、例えば低い屈折率を有する多孔質シリカに基づく層であってよく、又はこれは複数の層(スタック)、特に低い、及び高い屈折率を有する誘電材料が交互に配置され、低屈折率の層で終わる、層スタックで構成されることができる。このようなコーティングは、積層グレイジングのフェース1又は/及び4に与えられることができる。テクスチャを有するガラスシートも使用されることができる。エッチング又はコーティング技術もまた、反射を回避するために使用されることができる。
【0083】
本発明はまた、本発明による積層体の製造方法にも関する。
【0084】
疑義の発生を避けるために、「外側」及び「内側」という用語は、ガラスシート基板の向き、又はより詳しくは、車両にグレイジングとして取付け中のガラスシート基板に関する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】本発明による光学的に透明なセンサ領域を備える本発明によるグレイジングの平面図である。
【
図2】本発明による光学的に透明なセンサ領域を備える本発明によるグレイジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1及び2は、本発明の実施形態により、自動車用グレイジングを表す。自動車用グレイジング1は、光センサ機器としてLiDARセンサ2を備える少なくとも1つの熱可塑性中間層と積層された外側ガラスシート14と内側ガラスシート13を含み、フロントガラス1に統合される積層グレイジングである。本発明によれば、前から見たときに、熱可塑性中間層20は2つのゾーン、すなわちフロントガラスの主表面内の第一のゾーン11と、光学的に透明な領域22が存在する第二のゾーン12に分けられる。主表面に関して、熱可塑性中間層はPVBで作られ、第二のゾーン12はEVA又はCOP又はPUで作られる。第二のゾーン12は、赤外放射に対して、PCVより透明である。LiDARセンサ2が統合される光学的に透明な領域22において、これは使用されるIR光をできるだけ多く透過させて、LiDARセンサの最適な性能が確保されるようにする必要がある。本発明によれば、LiDAR 2及び、より一般的に言えば光学装置は、フェース4とも呼ばれる内側ガラスシートの内面に与えられる。
【0087】
本発明のこの実施形態によれば、熱可塑性中間層の第二のゾーン12は、ダイカットされたEVA、COP、又はPU中間層材料インサートであり、これが、コスト節減のために、積層プロセス中に熱可塑性中間層20の第一のゾーン11に組み付けられる。例えば、光学的に透明な領域22の大きさ、より詳しくは光センサ機器2の大きさにカットされたフレームは、第一のゾーン11より高いIR透過性を有する熱可塑性中間層の「第二のゾーン」12を、カットされたフレームの中に挿入するために作られる。
【0088】
その後、光センサ機器がフェース4の、光学的に透明な領域22の背後に設置される。
【0089】
本発明の他の実施形態によれば、熱可塑性中間層20の第一のゾーン11は、赤外光も吸収する、例えば、IRカットPVBとも呼ばれる、無機又は有機材料がドープされたPVB等の熱可塑性中間層である。
【0090】
無機材料に基づく赤外線熱可塑性中間層としては、例えばSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、及びMoの金属、酸化物、窒化物、及び硫化物から選択される材料又は、これらにSb又はFをドープして得られる材料が考えられる。無機材料に基づく赤外線熱可塑性中間層は、特に好ましくは、アンチモンがドープされた錫酸化物、又は錫がドープされたインジウム酸化物であることができる。赤外線材料が微粒子状である場合、その粒径は特に限定されない。しかしながら、それは例えば0.2μm以下であることができ、例えば0.0001μm~0.15μmの範囲内とすることができる。
【0091】
有機材料に基づく赤外線熱可塑性中間層としては、例えば以下が考えられる:ジイモニウム系色素、アントラキノン系色素、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、プリリウム系色素、フタロシアン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトロクタム(naphtholoctam)系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリコン(quinacricone)系色素、イソインドリノン(isoindlinone)系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素、ジチオール系色素金属錯体色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、その他。有機材料系赤外線熱可塑性中間層は、特に好ましくは、フタロシアニン系色素であることができる。
【0092】
この実施形態によれば、熱可塑性中間層の第二のゾーン12は、「古典的なPVB」又は、EVA、COP、又はPU等のその他の中間層で作られることができる。第二のゾーン12は、ダイカットされたPVB中間層材料インサートであることができ、これはコスト節減のために、積層プロセス中に熱可塑性中間層20の第一のゾーン11に組み付けられる。例えば、光学的に透明な領域22の大きさ、より詳しくは光センサ機器2の大きさにカットされたフレームは、第一のゾーン11より高いIR透過性を有する熱可塑性中間層の「第二のゾーン」12をカットされたフレームの中に挿入するために作られる。
【0093】
次に、光センサ機器がフェース4の、光学的に透明な領域22の背後に設置される。
【0094】
本発明のある実施形態によれば、フロントガラスは湾曲していて、見た目の悪い構成要素を隠し、フロントガラスに一般的に使用される何れかの構成要素を固定するために使用されるUVグルーから保護するために、マスキングバンド(図示せず)が与えられる。
【0095】
本発明によれば、光センサを含む幾つかの光学機器が基板上に与えられることができる。その場合、継ぎ合わされる「第二のゾーン」の数はそれに従って調整されるべきである。