(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム及び情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/904 20190101AFI20240508BHJP
G06F 16/9038 20190101ALI20240508BHJP
【FI】
G06F16/904
G06F16/9038
(21)【出願番号】P 2021509413
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012831
(87)【国際公開番号】W WO2020196445
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019061619
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 俊治
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 明子
(72)【発明者】
【氏名】岡村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】巾嶋 良幸
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-113254(JP,A)
【文献】特開2019-192091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの嗅覚又は味覚を刺激する物体の位置を特定する位置特定部と、
特定された前記物体の位置に対応する表示領域に、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する複数の表現を表示する表示制御部であって、各々の前記表現を当該物体と当該表現との関係の強弱又は関係の仕方に応じた表示態様で表示する表示制御部と
を備え
、
前記表示制御部は、表示した複数の前記表現のうちいずれかがユーザにより選択されると、選択された当該表現と、当該表現に関連する嗅覚又は味覚に対応する他の物体との関係を示す画像である関係画像を表示する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記ユーザの嗅覚又は味覚に関する嗜好と、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する表現との関係に応じた表示態様で、当該表現を表示する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記物体によって刺激される嗅覚又は味覚の属性に応じた表示態様で、当該表現を表示する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する表現の属性に応じた表示態様で、当該表現を表示する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、選択された前記表現に関連する嗅覚又は味覚と、前記ユーザの嗅覚又は味覚に関する嗜好とに応じた表示態様で、前記関係画像を表示する
ことを特徴とする請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータに、
ユーザの嗅覚又は味覚を刺激する物体の位置を特定する位置特定部と、
特定された前記物体の位置に対応する表示領域に、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する複数の表現を表示する表示制御部であって、各々の前記表現を当該物体と当該表現との関係の強弱又は関係の仕方に応じた表示態様で表示する表示制御部と
を実現させるためのプログラム
であって、
前記表示制御部は、表示した複数の前記表現のうちいずれかがユーザにより選択されると、選択された当該表現と、当該表現に関連する嗅覚又は味覚に対応する他の物体との関係を示す画像である関係画像を表示する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
操作装置と、
表示装置と、
前記操作装置においてユーザの嗅覚又は味覚を刺激する物体が置かれる操作がなされた位置を特定する特定部と、前記表示装置を制御して、特定された前記物体の位置に対応する表示領域に、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する複数の表現を表示する表示制御部であって、各々の前記表現を当該物体と当該表現との関係の強弱又は関係の仕方に応じた表示態様で表示する表示制御部と備える情報処理装置と
を有
し、
前記表示制御部は、表示した複数の前記表現のうちいずれかがユーザにより選択されると、選択された当該表現と、当該表現に関連する嗅覚又は味覚に対応する他の物体との関係を示す画像である関係画像を表示する
ことを特徴とする情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の香り又は味を表現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
香りは、人間の感情や行動、記憶を司る大脳辺縁系に働きかけることで様々な効用を人間に与えることが知られている。例えば特許文献1には、香りを嗅いだ被験者に対し、その香りを嗅いだことによって想起された心的事象について質問を提示し、その回答を数値として取得することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、或る香りがどのようなものであるかを的確に表現して他人に伝えることは、それほど簡単ではない。これは、大半の人間にとっては香りに関して表現する機会が少ないために、香りを表現する語彙に乏しかったり、また、香りとその香りの表現との対応関係を正確に認識できていなかったり、という事情があるためだと考えられる。このような事情は、物体の香りに限らず、物体の味についても同様である。
【0005】
そこで、本発明は、物体の香り又は味と、その香り又は味の表現との関係を、視覚的に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ユーザの嗅覚又は味覚を刺激する物体の位置を特定する位置特定部と、特定された前記物体の位置に対応する表示領域に、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する1以上の表現を表示する表示制御部であって、各々の前記表現を決められた表示態様で表示する表示制御部とを備えることを特徴とする情報処理装置を提供する。
【0007】
前記表示制御部は、前記物体と、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する表現との関係に応じた表示態様で、当該表現を表示するようにしてもよい。
【0008】
前記表示制御部は、前記ユーザの嗅覚又は味覚に関する嗜好と、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する表現との関係に応じた表示態様で、当該表現を表示するようにしてもよい。
【0009】
前記表示制御部は、前記物体によって刺激される嗅覚又は味覚の属性に応じた表示態様で、当該表現を表示するようにしてもよい。
【0010】
前記表示制御部は、前記物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する表現の属性に応じた表示態様で、当該表現を表示するようにしてもよい。
【0011】
前記表示制御部は、表示した1以上の前記表現のうちいずれかがユーザにより選択されると、選択された当該表現と、当該表現に関連する嗅覚又は味覚に対応する他の物体との関係を示す画像である関係画像を表示するようにしてもよい。
【0012】
前記表示制御部は、選択された前記表現に関連する嗅覚又は味覚と、前記ユーザの嗅覚又は味覚に関する嗜好とに応じた表示態様で、前記関係画像を表示するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、コンピュータに、ユーザの嗅覚又は味覚を刺激する物体の位置を特定する位置特定部と、特定された前記物体の位置に対応する表示領域に、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する1以上の表現を表示する表示制御部であって、各々の前記表現を決められた表示態様で表示する表示制御部とを実現させるためのプログラムを提供する。
【0014】
また、本発明は、操作装置と、表示装置と、前記操作装置においてユーザの嗅覚又は味覚を刺激する物体が置かれる操作がなされた位置を特定する特定部と、前記表示装置を制御して、特定された前記物体の位置に対応する表示領域に、当該物体によって刺激される嗅覚又は味覚に関する1以上の表現を表示する表示制御部であって、各々の前記表現を決められた表示態様で表示する表示制御部と備える情報処理装置とを有することを特徴とする情報提供システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、物体の香り又は味と、その香り又は味の表現との関係を、視覚的に把握できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの全体構成を例示するブロック図である。
【
図2】情報提供システムの構造を例示する側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】情報処理装置が記憶する表現DBの一例を示す図である。
【
図5】情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】情報提供システムの利用時において、センサ装置のセンシング面を上方から見たときの様子を例示する平面図である。
【
図8】情報提供システムの利用時において、センサ装置のセンシング面を上方から見たときの様子を例示する平面図である。
【
図9】情報提供システムの利用時において、センサ装置のセンシング面を上方から見たときの様子を例示する平面図である。
【
図10】情報提供システムの利用時において、センサ装置のセンシング面を上方から見たときの様子を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[構成]
まず、本発明の一実施形態に係る情報提供システム1の全体構成について説明する。情報提供システム1は、物体の香りとその香りの表現との関係をユーザが視覚的に把握できるようにするための情報提供を行うシステムである。
図1に示すように、情報提供システム1は、情報処理装置10と、プロジェクタ装置20と、センサ装置40と、複数のサンプル60とを備えている。情報処理装置10、プロジェクタ装置20及びセンサ装置40は、有線又は無線によって通信可能に接続されている。情報処理装置10は、本発明に係る情報処理装置の一例であり、情報提供システム1において中枢的な制御を司る装置である。プロジェクタ装置20は、ユーザに対して情報を表示する表示装置の一例である。センサ装置40は、ユーザの操作を受け付ける操作装置の一例である。複数のサンプル60はいずれも、ユーザの嗅覚を刺激する香りを発する物体である。例えば、サンプル60は、香りを発する自然物(例えばラベンダーという植物そのもの)であってもよいし、その香りを含む人工生成物(例えばラベンダーの香りが抽出された揮発性の液体や、その液体をしみこませたシートなど)であってもよい。本実施形態では、サンプル60として、香りを発する自然物から抽出された香りを含むアロマオイルと呼ばれる液体を収容した円筒状の蓋付き小瓶を用いる。各サンプル60には、そのサンプルの名称(例えば「ラベンダー」という植物の名称)が記されたシールや札が付されている。ユーザはこの名称を参照することによって、各サンプルを視覚的に識別する。
【0018】
図2は、情報提供システム1の構造を例示する側面図、より具体的には、プロジェクタ装置20、センサ装置40及びサンプル60を水平方向から見たときの位置関係を例示する図である。センサ装置40は、例えば薄い矩形の板状であり、その上面が水平なセンシング面となっている。サンプル60には、各サンプルを識別する識別情報(サンプルIDという)を記憶した記憶媒体であるタグ61が設けられている。センサ装置40は、センシング面にサンプル60が置かれると、例えばNFC(Near Field Communication)と呼ばれる近距離無線通信規格を用いて、そのサンプル60のタグ61に記憶されたサンプルIDを読み取るとともに、そのサンプル60が置かれた位置(つまりセンシング面におけるタグ61の読み取り位置)を検出する。また、センサ装置40は、いわゆるタッチスクリーンとしても機能し、例えばユーザの指や所定の操作子でセンシング面がタッチされると、センシング面においてタッチされた位置を検出する。サンプル60が置かれた位置やユーザによりタッチされた位置は、センシング面の或る位置を原点とした2次元座標平面におけるX,Y座標として表現される。
【0019】
プロジェクタ装置20は、センサ装置40の上方(例えば部屋の天井)に設置されている。プロジェクタ装置20は、
図2の破線で示すようにセンサ装置40のセンシング面の全範囲を投影範囲としており、上記X,Y座標に基づいて、センシング面の任意の位置に光を投影して画像を表示することができるようになっている。つまり、センサ装置40のセンシング面は、画像が表示される表示面としても機能する。
【0020】
図3は、情報処理装置10のハードウェア構成を例示する図である。情報処理装置10は、CPU101(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)102、
RAM(Random Access Memory)103、補助記憶装置104及び通信IF(Interface)105を有するコンピュータである。
【0021】
CPU101は、各種の演算を行うプロセッサである。ROM102は、例えば情報処理装置10の起動に用いられるプログラム及びデータを記憶した不揮発性メモリである。RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する揮発性メモリである。補助記憶装置104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置であり、情報処理装置10において用いられるプログラム及びデータを記憶する。CPU101はこのプログラムを実行することにより、後述する機能を実現し、また、後述する動作を実行する。通信IF105は、所定の通信規格に従って通信を行うためのインターフェースである。この通信規格は、有線通信の規格であってもよいし、無線通信の規格であってもよい。なお、情報処理装置10は、
図3に例示した構成以外に、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置やキーボード等の操作装置などの、他の構成を含んでいてもよい。
【0022】
補助記憶装置104は、
図4に示すような表現データベース(以下、データベースをDBと表現する)を記憶している。この表現DBにおいては、各々のサンプルIDと、そのサンプルIDに対応するサンプル60によって刺激される嗅覚に関する1以上の表現(つまりサンプル60の香りを文字で表した1以上の表現)が対応付けられている。つまり、この表現は、ユーザがサンプル60の香りを嗅いだときに、その香りを他人に伝えるための手段として用いられる。この表現は、例えば名詞や形容詞等のあらゆる品詞を用いた表現であってもよいし、また、その香りの直接的表現から間接的表現までをも網羅している。ここでいう直接的な表現とは、例えば「甘い」とか「フルーティ」というように、香りのイメージを想起させるときに慣用される表現のことであり、間接的な表現とは、例えば「春」とか「朝」とか「散歩」といったように、上記の直接的な表現に比べると、香りの表現としては慣用されていない表現のことである。間接的表現とは、直接的表現を基準としてその直接的表現から想起される二次的な表現であり、直接的表現と比べて香りを抽象的に表す表現と言ってもよい。
【0023】
さらに、この表現DBには、各表現を表示するときの表示態様が含まれている。この表示態様は、例えば、表現を表示する位置、表現を表示する位置とサンプル60との距離、サンプル60に対する表現の表示位置の方向、表現を表示するときの色、表現を表示するときの大きさ、表現を表示するときのフォント、表現を表示するときの修飾、表現を表示する時間、表現を表示する時期、表現の動き(表現の空間的な変化又は時間的な変化を含む)、又は、表現に用いられる言語等を含む。
【0024】
この表示態様は、サンプル60と表現との関係に応じて変わる。サンプル60と表現との関係とは、そのサンプル60においてその表現によって表される香り(より厳密にいうとそのサンプルの香りに含まれる成分)の強度や量、或いは、その香りに対するその表現の抽象度等である。例えば「甘い」という香りが強いサンプル60の近くには、「甘い」という表現を表示するとか、「甘い」という香りが強いサンプル60に対しては、大きく又は目立つ色で「甘い」という表現を表示するとか、「甘い」という香りが強いサンプル60に対しては、振動するように動くことで目立つように「甘い」という表現を表示するといった例が、サンプル60と表現との関係に応じて変わる表示態様の一例である。また、例えば「甘い」という香りが強く、且つ、「フルーティ」という香りが弱いサンプルに対しては、そのサンプルの近くに「甘い」という表現を表示し、そのサンプルの遠くに「フルーティ」という表現を表示するという例も、サンプル60と表現との関係に応じて変わる表示態様の一例である。また、或るサンプルに対して直接的表現と間接的表現とが対応付けられている場合には、そのサンプルの近くに直接的表現を表示し、そのサンプルの遠くに間接的表現を表示するというように、表現の抽象度に応じてサンプル60と表現との距離を変えるという例も、サンプル60と表現との関係に応じて変わる表示態様の一例である。要するに、サンプル60と表現との関係の内容(具体的には関係の強弱や関係の仕方)が視覚的に認識し得るような表示態様で表現を表示する、ということである。
【0025】
図4の例では、サンプルID「ID001」のサンプル60については、表現1として「甘い」、表現2として「フレッシュ」、表現3として「花」…が設定されている。これらの表現のうち、「甘い」という表現1の表示態様は、表現を表示する位置とサンプルとの距離が「2単位」であり(1単位は、センシング面において任意に決められる長さ)、色は「赤」であり、フォントは「ゴシック体」であり、サイズ(大きさ)は「25ポイント」であり、動きは「点滅」である。
【0026】
次に、
図5は、情報処理装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置10は、サンプル特定部11、位置特定部12、表現DB記憶部13及び表示制御部14という機能を実現する。
【0027】
サンプル特定部11は、センサ装置40のセンシング面にサンプル60が置かれると、そのサンプル60のタグ61に記憶されたサンプルIDの読み取り結果に基づいて、どのサンプル60がセンシング面に置かれたかを特定する。
【0028】
位置特定部12は、センサ装置40のセンシング面にサンプル60が置かれると、そのサンプル60のタグ61に記憶されたサンプルIDが読み取られた位置に基づいて、サンプル60がセンシング面のどの位置に置かれたか(つまりセンサ装置40においてサンプル60が置かれる操作がなされた位置)を特定する。また、位置特定部12は、センサ装置40のセンシング面がユーザによりタッチされると、センシング面のどの位置がタッチされたかを特定する。
【0029】
表示制御部14は、プロジェクタ装置20を制御して、位置特定部12により特定されたサンプル60の位置に対応する表示領域に、サンプル特定部11により特定されたサンプル60によって刺激される嗅覚に関する1以上の表現を表示する。このとき、表示制御部14は、表現DB記憶部13に記憶された表現DBにおいて、サンプル特定部11により特定されたサンプルに対応する表示態様で表示する。サンプル60の位置に対応する表示領域とは、例えばそのサンプル60の位置から決められた距離の範囲内のセンシング面上の領域であり、具体的には、センシング面においてサンプル60の位置を中心とした半径10センチ以内の円形の領域であるという例が考えられる。ただし、サンプル60の位置に対応する表示領域はこの例に限らず、表示された表現がどのサンプルに関する表現であるかをユーザが認識することができるような領域であればよい。
【0030】
さらに、表示制御部14は、表示した1以上の表現のうちいずれかがユーザにより選択されると、選択された表現と、その表現に関連する嗅覚に対応する他のサンプル60との関係を示す画像である関係画像を表示する。これについては、
図10を参照しながら後で詳述する。
【0031】
[動作]
次に、
図6のフローチャートに沿って、本実施形態の動作を説明する。まず、ユーザは、サンプル60に付されたサンプルの名称を参考にして、興味があるサンプル60をいくつか選び、これらをセンサ装置40のセンシング面に置く。
【0032】
ここで、
図7は、センサ装置40のセンシング面を上方から見たときの様子を例示する平面図である。この例では、センサ装置40のセンシング面に、7つのサンプル60a~60gが置かれている。このとき、情報処理装置10のサンプル特定部11は、センサ装置40によるサンプルIDの読み取り結果に基づいて、どのサンプル60がセンシング面に置かれているかを特定する(
図6のステップS11)。さらに、情報処理装置10の位置特定部12は、センサ装置40によるサンプルIDの読み取り位置に基づいて、どのサンプル60がセンシング面のどこに置かれているかを特定する(ステップS12)。これにより、サンプル60a~60gが
図7に例示した各々の位置に置かれたことが特定される。なお、ステップS11及びS12の処理の順番は
図6の例とは逆であってもよいし、両者の処理が実質的に同時に行われてもよい。
【0033】
ユーザは、センサ装置40のセンシング面に置かれたサンプル60a~60gのうち、香りに関する表現を知りたいと思うサンプル(ここではサンプル60gとする)を、センシング面の決められた位置に置く。この決められた位置とは、
図7に示すように、プロジェクタ装置20によってセンシング面上に表示される破線画像で閉じられたエリアであり、解析対象位置Aという。解析対象位置Aの位置、形状、大きさは任意に決められるが、センシング面上のどの範囲が解析対象位置Aであるかをユーザが予め知っておくか、又は、表示や音声案内等の方法でユーザに知らせる必要がある。
【0034】
これにより、
図8に示すように、センシング面において、サンプル60gが解析対象位置Aに置かれた状態となる。このとき、位置特定部12は、サンプル60gがセンシング面の解析対象位置にあると判断する(
図6のステップS13;YES)。なお、
図7の状態では、位置特定部12は、いずれのサンプル60もセンシング面の解析対象位置にはないと判断するから(
図6のステップS13;NO)、サンプル60の特定に関する処理(ステップS11)とそのサンプル60の位置の特定に関する処理(ステップS12)がなされたまま、処理は待機状態となる。
【0035】
サンプル60Gが解析対象位置にあると判断されると、表示制御部14は、サンプル60gのサンプルIDをキーにして、表現DBにおいてそのサンプルIDに対応する表現を検索する(
図6のステップS14)。さらに、表示制御部14は、表現DBを参照して、検索した表現の各々に対応する表示態様を決定する(
図6のステップS15)。そして、表示制御部14は、プロジェクタ装置20を制御して、位置特定部12により特定されたサンプル60gの位置に対応する表示領域に、ステップS14で検索した表現を、ステップS15で決定した表示態様で表示する(
図6のステップS16)。
【0036】
これにより、
図9に例示するように、サンプル60gの香りに関する表現が、例えばそのサンプル60gの位置を中心とした任意の大きさの円の内部に表示される。このときの各表現の表示態様は、前述したとおり、その表現とサンプル60gとの関係に応じた表示態様である。ユーザは、これらの表現を見ながらサンプル60gの蓋を開けてその香りを嗅ぐことで、そのサンプル60gの香りに対する表現のしかたを知ることができる。このとき同時に、ユーザは各表現の表示態様を参考にして、サンプル60gの香りと各表現の関係についても知ることができる。例えば
図9の例では、ユーザは、サンプル60gの香りは、代表的には「甘い」と表現される香りであるが、「フレッシュ」、「華やか」、「リラックス」、「まろやか」、「花」、「果物」と表現されるような香りの成分も含んでおり、さらには、それらの香りから「春」や「朝」、「ピンク」、「散歩」、「軽い」といった事象が連想されるものだということを認識することができる。
【0037】
さらに、ユーザは、表示されている表現群のうち、自身が気になる表現とか、もっとよく知りたい表現があれば、その表現をセンシング面に対してタッチする操作を行うことで選択する。表示制御部14は、このようなタッチ操作がなされると(
図6のステップS17;YES)、そのタッチ操作がなされた位置と各表現の表示位置とに基づいて、ユーザにより選択された表現を特定する。このとき、どの表現の選択が受け付けられたかをユーザが分かるように、その表現をその表現の背景を特定の色で表示したり、その表現を反転表示したりすることが望ましい。
【0038】
そして、表示制御部14は、表現DBにおいて、ステップS11において特定したサンプルID群のうち、選択された表現に対応付けられているサンプルIDを検索する。この検索の結果、選択された表現に対応付けられたサンプルIDがあれば、表示制御部14は、選択された表現に関係するサンプルがセンシング面に置かれていると判断して(ステップS18;YES)、プロジェクタ装置20を制御して関係画像を表示する(ステップS19)。この関係画像は、例えば、センシング面においてユーザにより選択された表現の表示位置と、検索されたサンプルIDに対応するサンプルが置かれた位置とを結ぶ線状の画像である。
【0039】
これにより、
図10に例示するように、ユーザにより選択された「甘い」という表現に対して、その「甘い」という表現によって表される他のサンプル(ここでは、サンプル60a及びサンプル60dとする)とを結ぶ関係画像R1,R2が表示される。この関係画像R1,R2により、ユーザは、「甘い」と表現される香りとして、サンプル60gの他に、サンプル60a及びサンプル60dがあることが分かる。
【0040】
この関係画像の色、太さ、大きさ、動き等の表示態様は、ユーザにより選択された表現と、その表現によって表される他のサンプルとの関係に応じたものである。例えば、ユーザにより選択された表現とその表現によって表される他のサンプルとの関係が強い場合には、関係画像がより目立つような色、太さ、大きさ、動き等の表示態様となるし、関係が弱い場合にはその逆の表示態様となる。
図10の例では、「甘い」という表現に対してサンプル60dはより強い関係があるため、「甘い」という表現とサンプル60dとを結ぶ関係画像R1は、「甘い」という表現とサンプル60aとを結ぶ関係画像R2よりも太い画像になっている。なお、ユーザにより選択された表現とその表現によって表される他のサンプルとの関係は、表現DBにおいて決められている表示態様に基づいて判断される。
図10の例では、表現DBにおいて「甘い」という表現とサンプル60dとに対応する表示態様は、「甘い」という表現とサンプル60aとに対応する表示態様に比べて、より関係が強いときに用いられる表示態様となっている。
【0041】
ユーザがさらに他の表現について知りたい場合には、その表現をセンシング面に対してタッチする操作を行うことで(ステップS20;NO)、今度は別の表現について上記のステップS17~S19が繰り返される。そして、ユーザが新たなサンプル60に関する表現を知りたい場合には、所定の終了操作を行い(ステップS20;YES)、解析対象位置Aに置くサンプルを入れ替える。これにより、上記のステップS11~S19が再度繰り返される。このようにして、ユーザは様々なサンプルの香りを試しながら、その表現を見ていくことが可能となる。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、ユーザは物体の香りとその香りの表現との関係を視覚的に把握することが可能となる。
【0043】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態を以下のように変形してもよい。また、以下の2つ以上の変形例を組み合わせて実施してもよい。
【0044】
[変形例1]
本発明は、嗅覚を対象としたものに限らず、味覚を対象としたもの(例えばワイン、日本酒、スパイス、調味料等)にも適用可能である。つまり、実施形態における「香り」を「味」に置き換えて本発明を実施してもよい。
【0045】
[変形例2]
各表現を表示するときの表示態様は、表現とその表現の表示を見るユーザとの関係に応じたものであってもよい。表現とユーザとの関係とは、例えば、その表現によって表される香りの香りと香りに関するユーザの嗜好との一致度や、ユーザがその表現を香りの表現として用いた履歴等を含む。例えば「甘い」という香りを好むユーザに対しては、解析対象位置Aに置かれたサンプル60の近くに「甘い」という表現を表示するとか、大きく又は目立つ色で「甘い」という表現を表示するとか、振動するように動くことで目立つように「甘い」という表現を表示するといった例が考えられる。この場合、香りに関するユーザの嗜好は予め収集及びデータベース化されて補助記憶装置104等に記憶されており、表示制御部14はそれを参照するものとする。
【0046】
また、例えば「甘い」という表現を過去に多く用いたことがあるユーザに対しては、解析対象位置Aに置かれたサンプル60の近くに「甘い」という表現を表示するとか、大きく又は目立つ色で「甘い」という表現を表示するとか、振動するように動くことで目立つように「甘い」という表現を表示するといった例が考えられる。この場合、ユーザが香りに対して用いた表現の履歴は予め収集及びデータベース化されて補助記憶装置104等に記憶されており、表示制御部14はそれを参照するものとする。
【0047】
[変形例3]
各表現を表示するときの表示態様は、その表現によって表される香りの属性に応じたものであってもよい。香りの属性とは、例えばトップノート・ミドルノート・ラストノートの別であるとか、香りの刺激の強さ/弱さとか、香りの魅惑度や特殊性、希少性といったものを含む。トップノート・ミドルノート・ラストノートとは、香りが変化していくときに、時間的に最初に認知される香り、その次に認知される香り、さらにその次に認知される香りのことである。例えば、解析対象位置Aに置かれたサンプル60の近くから遠くへと順に、トップノート・ミドルノート・ラストノートに相当する表現を表示する例や、トップノート・ミドルノート・ラストノートに相当する表現の表示を時系列に切り替えていく例が考えられる。また、刺激が強い香りとか希少な香りに関する表現は、特定の色やフォント、動きで表示する例が考えられる。
【0048】
[変形例4]
各表現を表示するときの表示態様は、その表現の属性に応じたものであってもよい。表現の属性とは、例えば、表現から受けるイメージ、表現の品詞の別、表現に用いる文字の種別(ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット等)、表現を構成する文字数/単語数等を含む。例えば「甘い」という表現は暖色で表示する例が考えられる。
【0049】
[変形例5]
表示制御部14は前述した関係画像を表示する場合に(
図10参照)、センシング面においてユーザにより選択された表現によって表される香りに関するユーザの嗜好に応じた表示態様でその関係画像を表示するようにしてもよい。例えば、ユーザにより選択された「甘い」という表現と、その表現によって表される他のサンプルとを結ぶ関係画像において、その色、太さ、大きさ、動き等の表示態様を、「甘い」香りに対するユーザの嗜好に応じて変える。具体的には、ユーザが「甘い」香りを好む場合は、関係画像がより目立つような色、太さ、大きさ、動き等の表示態様とする例が考えられる。この場合、香りに関するユーザの嗜好は予め収集及びデータベース化されて補助記憶装置104等に記憶されており、表示制御部14はそれを参照するものとする。なお、関係画像は、
図10に例示した線状の画像に限らず、ユーザにより選択された表現とその表現によって表されるサンプルとが関係していることが分かるような画像であればよい。例えば、ユーザにより選択された「甘い」という表現を囲む第1の円環画像と、その「甘い」という表現によって表される他のサンプル60の位置を囲む第2の円環画像とを、関係画像としてもよい。
【0050】
[変形例6]
表示装置や操作装置は、
図1で例示したプロジェクタ装置20やセンサ装置40に限定されない。例えば表示装置は、実施形態のように操作装置であるセンサ装置40のセンシング面に画像を投影するものに限らず、例えば操作装置自体が表示装置であってもよい。また、表示装置は壁面に画像を表示するものであってもよい(壁面に画像を投影する場合や壁面自体が表示装置である場合を含む)。また、表示装置はいわゆる拡張現実を実現する表示装置であってもよい。具体的には、スマートホンやタブレット或いはグラス型ウェアラブル装置の撮像装置でサンプル60を撮像すると、その撮像画像中のサンプル60の周囲に、対応する表現群を表示するものであってもよい。また、操作装置は、ユーザの操作を画像認識技術によって検知する装置であってもよい。
【0051】
[変形例7]
実施形態においては、サンプル60を解析対象位置Aに置くとそのサンプル60に関する表現を表示していたが、例えばサンプル60に相当するアロマオイルを収容した蓋付き小瓶の蓋を開けたときに、そのサンプル60に関する表現を表示するようにしてもよい。同様に、例えば自然物そのものを皿に置いた状態で透明カバーを被せておき、ユーザがその透明カバーを外したときに、その自然物の香りに関する表現を表示するようにしてもよ
い。
【0052】
[変形例8]
解析対象位置に置くサンプル60は1つに限らず、同時に複数置いてもよい。この場合、それぞれのサンプル60の位置に対応する表示領域に、それぞれのサンプルに関する表現が表示されることになる。
【0053】
[変形例9]
表現の表示形態は、2次元表示でもよいし、3次元表示であってもよい。また、表示される「表現」は、文字に限らず、色、抽象画、或いは人物/景色等の画像であってもよい。
【0054】
本発明は、情報処理装置10において行われる処理のステップを備える情報処理方法として提供されてもよい。また、本発明は、情報処理装置10において実行されるプログラムとして提供されてもよい。かかるプログラムは、光ディスク等の記録媒体に記録した形態で提供されたり、インターネット等のネットワークを介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されたりすることが可能である。
【0055】
以上、本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0056】
1…情報提供システム、20…プロジェクタ装置、40…センサ装置、60…サンプル、61…タグ、101…CPU、102…ROM、103…RAM、104…補助記憶装置、105…通信IF、11…サンプル特定部、12…位置特定部、13・・・表現DB記憶部、14…表示制御部。