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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240508BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240508BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240508BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240508BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/92
A61K8/81
A61K8/37
A61Q1/04
A61Q1/02
A61Q1/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021509424
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012862
(87)【国際公開番号】W WO2020196464
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019063691
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 史仁
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-199846(JP,A)
【文献】特開2008-115119(JP,A)
【文献】特開2012-214410(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199314(WO,A1)
【文献】特開2005-194220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0020263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体
(C)フェニル変性シリコーン
(D)揮発性油剤
を含有する油性化粧料。
【請求項2】
前記成分(B)の含有量が化粧料全量中3~20質量%である請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合((A)/(B))が0.5~10である請求項1または請求項2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
さらに成分(E)炭素数16以下のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する請求項1~3のいずれかに記載の油性化粧料。
【請求項5】
前記成分(E)が(VP/ヘキサデセン)コポリマーである請求項4に記載の油性化粧料。
【請求項6】
前記成分(B)が(VP/エイコセン)コポリマーおよび/またはトリコンタニルPVPである請求項1~のいずれかに記載の油性化粧料。
【請求項7】
さらに、成分(F)ワックスを含有する請求項1~のいずれかに記載の油性化粧料。
【請求項8】
油性固形であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の油性化粧料。
【請求項9】
成分(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル及び成分(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する、油性ゲル組成物。
【請求項10】
炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を有効成分とする重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステルに対する油性ゲル化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関し、特に、負担感を伴わずに優れた二次付着レス効果や色持ちが得られ、さらにべたつきのない軽くなめらかな伸び広がりを有し、良好なツヤ感がある化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口紅、チークやアイシャドウ等のメイク製品は、唇や頬、瞼といった塗布部に色味を付与し、顔の印象を華やかに仕上げるアイテムである。これらは、色の鮮やかさや化粧持ちの点から油性化粧料で提供されることが多い。発色やツヤ感、使用感に加えて、最近では化粧持ち機能がとても需要の高い機能となっている。その機能を発揮するために、様々な素材の組み合わせが検討されている。例えば、揮発性の化合物とポリビニルピロリドンのポリマーとの混合物を含有することで“転移のない”特性を発揮する技術(特許文献1参照)や、フェニル基を含むシリコーンレジンと(ビニルピロリドン/アルフェオレフィン)コポリマーを一定の比率で含有することで化粧持ちを上げる技術(特許文献2参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-67618号公報
【文献】特開2016-117701号公報
【0004】
しかしながら、揮発性化合物とポリビニルピロリドンのポリマーとの組み合わせで“転移のない”特性を発揮する技術では、膜ができる際の負担感が大きく、ツヤ感もそこまで上がらないなど満足のいくものが得られなかった。また、フェニル基を含むシリコーンレジンと(ビニルピロリドン/アルファオレフィン)コポリマーを含有する技術においては、使用感が重くなりやすく、負担感を感じる、二次付着レス効果も十分でないなど、満足のいくものが得られなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、使用性や仕上がりを損なうことなく、二次付着レス効果に優れ、色持ちが良い油性化粧料の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油性化粧料において、分子中に水酸基を2つ以上含む油剤と炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体とを組み合わせることでゲル化し得ること、またゲル化により皮膜が形成される際の負担感が従来のゲル化剤を用いた場合と比較して軽減されることを見出した。さらに、前記成分とフェニル変性シリコーン及び揮発性油剤とを組み合わせて使用することにより、負担感を伴わずに二次付着レス効果及び色持ちにおいてより優れたものとなり、加えて、なめらかな伸び広がりを有し、ツヤ感にも優れる油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下を含むものである。
[1]
次の成分(A)~(D);
成分(A)分子中に2つ以上の水酸基を有する油剤
成分(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体
成分(C)フェニル変性シリコーン
成分(D)揮発性油剤
を含有する油性化粧料。
[2]
前記成分(B)の含有量が化粧料全量中3~20質量%である[1]に記載の前記油性化粧料。
[3]
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量割合((A)/(B))が0.5~10である[1]または[2]に記載の前記油性化粧料。
[4]
さらに成分(E)炭素数16以下のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する[1]~[3]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[5]
前記成分(E)が(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーである[4]に記載の前記油性化粧料。
[6]
前記成分(A)が重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステルである[1]~[5]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[7]
前記成分(B)が(VP/エイコセン)コポリマーおよび/またはトリコンタニルPVPである[1]~[6]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[8]
さらに、成分(F)ワックスを含有する[1]~[7]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[9]
油性固形であることを特徴とする[1]~[8]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[10]
成分(A)分子中に2つ以上の水酸基を有する油剤及び成分(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する、油性ゲル組成物。
[11]
炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を有効成分とする分子中に2つ以上の水酸基を有する油剤に対する油性ゲル化剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油性化粧料は、負担感を伴わずに優れた二次付着レス効果及び色持ちを得ることができ、さらにべたつきのない軽くなめらかな伸び広がりを有し、ツヤ感にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味し、特に記載がない場合の「%」は「質量%」を指すものとする。
【0010】
本発明における成分(A)分子中に水酸基を2つ以上含む油剤は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定さない。そのような化合物としては、例えば、脂肪酸、アミノ酸等の酸と、グリセリンまたはそのポリマー、ペンタエリスリトールまたはそのポリマー、ショ糖またはそのポリマー等とのエステル等が挙げられ、最終生成物として分子中に2つ以上の水酸基を構造中に残すことを特徴とするものである。本発明における成分(A)の水酸基は、分子中に2つ以上存在していれば、その位置や水酸基の数は特に限定されない。例えば、エステルの場合、アルコールに水酸基を2つ以上有していても良く、脂肪酸に水酸基を2つ以上有していても良いが、アルコールに水酸基を2つ以上有しているものが好ましい。本発明において、分子中の水酸基数は2つ以上であれば特に限定されないが、他の成分と組み合わせた際の親和性の点から2~10が好ましく、2~7がより好ましく、2~3が特に好ましい。具体的には、デカイソステアリン酸デカグリセリル(水酸基2つ)、ノナイソステアリン酸デカグリセリル(水酸基3つ)、デカエチルヘキサン酸デカグリセリル(水酸基2つ)、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(水酸基7つ)、イソステアリン酸ジグリセリル(水酸基3つ)、ジイソステアリン酸ジグリセリル(水酸基2つ)等が挙げられ、それらの1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、成分(A)を重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステルとすることで、色持ちにより優れる為、より好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、色持ち等の観点から分岐があるものが好ましく、また炭素数が8~18の範囲にあるものが好適である。
【0011】
成分(A)の含有量は、特に限定されないが、5~50%が好ましく、8~40%がより好ましく、8~30%が更に好ましい。この範囲であれば、なめらかな伸び広がりや、負担感のなさ、色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0012】
本発明における成分(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンの共重合体は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、炭素数18以上のα-オレフィンとしては、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-トリコンテン等が挙げられ、ビニルピロリドンと共重合したものを使用できる。成分(B)のα-オレフィンは、炭素数20~30が好ましく、1-エイコセン、1-トリコンテンを用いた(VP/エイコセン)コポリマー、トリコンタニルPVPが二次付着レス効果や色持ちにより優れる為、より好ましく、特に(VP/エイコセン)コポリマーは、より負担感のなさや滑らかな伸び広がりの点で優れるため好ましい。
【0013】
成分(B)の含有量は、特に限定されないが3~20%が好ましく、5~15%がより好ましい。この範囲であれば、なめらかな伸び広がりや二次付着レス効果、色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0014】
本発明の油性化粧料では、成分(B)に対する成分(A)の含有質量割合((A)/(B))は限定されるものではないが、(A)/(B)が0.5~10であると好ましく、1~7.5であるとより好ましい。成分(A)と成分(B)の比率がこの範囲であると、負担感のなさや色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0015】
本発明における成分(C)フェニル変性シリコーンは、ポリシロキサンの一部にフェニル基を有するものである。本発明における成分(C)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、使用することができる。例えば、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニルトリメチコン、フェニルメチコンなどが挙げられる。市販品の例としては、ジフェニルジメチコン:KF-54(信越化学工業社製)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:KF-56(信越化学工業社製)、トリメチルシロキシフェニルジメチコン:BELSIL PDM 1000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン:DOWSIL PH-1555 HRI Cosmetic Fluid(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。また、これらは必要に応じて、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもジフェニルジメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサンがツヤ感により優れる為、より好ましい。
【0016】
成分(C)の含有量は、特に限定されないが10~40%が好ましく、20~35%がより好ましい。この範囲であれば、ツヤ感に優れ、二次付着レス効果により優れる為、より好ましい。
【0017】
本発明における成分(D)揮発性油剤は、引火点が約40~100℃の油剤である。本発明における成分(D)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されずに使用することができる。例えば、イソドデカンや軽質流動イソパラフィン等の炭化水素油類、シクロテトラジメチルシロキサンやシクロペンタジメチルシロキサン、トリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチコン等のシリコーン油類が挙げられる。また、これらは必要に応じて、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、揮発性炭化水素油が二次付着レス効果により優れる為好ましく、特にイソドデカンが二次付着レス効果により優れ、さらにツヤ感、負担感のなさ、滑らかな伸び広がり、色持ちにおいてもより良好なものとなる為、より好ましい。
【0018】
成分(D)の含有量は、特に限定されないが1~30%が好ましく、5~20%がより好ましい。この範囲であれば、なめらかな伸び広がりに優れ、負担感がなく、色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0019】
さらに、本発明には成分(E)炭素数16以下のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有することができる。本発明において、成分(E)を含有することで、ツヤ感や色持ちの点において好ましい。炭素数16以下のα-オレフィンとしては、1-ヘキサデセンや、1-テトラデセン、1-ドデセンなどが挙げられ、ビニルピロリドンと共重合したものを使用できる。成分(E)のα-オレフィンは、炭素数10~16が好ましく、1-ヘキサデセンとビニルピロリドンとの共重合体である(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーがツヤ感や色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0020】
成分(E)の含有量は、特に限定されないが、3~20%が好ましく、5~15%がより好ましい。この範囲であれば、なめらかな伸び広がりや色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0021】
さらに、本発明には成分(F)ワックスを含有することができる。本発明においてワックスとは、板状に形成された結晶のカードハウス構造の空隙に油剤を保持するものである。本発明において、成分(F)を含有することで、なめらかな伸び広がり、色持ちが良い点において好ましい。本発明における成分(F)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、合成炭化水素、天然及び合成ロウのいずれでも良い。その融点は、特に限定されないが、70℃以上のものが好ましく、更に好ましくは80℃以上である。本発明において、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm)とする。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、モクロウ、ゲイロウ、ジロウ、モンタンワックス、ステアリル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でもフィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス及びキャンデリラワックスよりなる群から選択される1種または2種以上がべたつきのない軽くなめらかな伸び広がりと形状安定性により優れる為、より好ましい。
【0022】
成分(F)の含有量は、特に限定されないが5~25%が好ましく、7~15%がより好ましい。この範囲であれば、色持ちにより優れる為、より好ましい。
【0023】
本発明の油性化粧料は、上記の成分(A)~(F)の他に、通常化粧料に使用される成分、成分(A)~(F)以外の油性成分、粉体、界面活性剤、繊維、水性成分、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で含有することができる。
【0024】
本発明の油性化粧料は、通常公知の製法で得ることができる。以下に製造方法の例を示すが、これに限定されるものではない。例えば、成分(A)~(F)を110℃に加熱溶解し、その他の成分を添加し、容器に充填、必要に応じて成型を経て得ることができる。
【0025】
本発明の油性化粧料は、特に限定されず、口紅、リップグロス、口紅ベースコート、口紅オーバーコート、チーク、アイカラー等が挙げられるが、特に口紅であることが好ましい。
【0026】
本発明の油性化粧料は、油剤を主成分とする油性、外層を油剤の連続相とする油中水型に適用されうるが、油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする、水の含有量が1%以下である、もしくは実質的に水を含まない油性が好ましい。性状としては、特に限定されないが、液状、半固形状、固形状等が挙げられ、固形状であることが好ましく、さらにはスティック状であることが最も好ましい。
【0027】
本発明の油性ゲル組成物は、上記成分(A)分子中に2つ以上の水酸基を有する油剤及び上記成分(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有するものである。成分(A)及び(B)として好ましい成分や、成分(A)と(B)の含有質量割合などは、上記油性化粧料と同様である。本発明の油性ゲル組成物は、皮膚に塗布し、ゲル化して皮膜を形成する際、柔軟で追随性が高く負担感の少ない皮膜を形成する。そのため、各種の化粧料に含有することができ、特に油性化粧料に好ましく使用することができ、特に上記成分(C)及び(D)を含有する油性化粧料中に用いると、二次付着レス効果や色持ちに優れ、さらに使用感やツヤ感にも優れたものとなる。化粧料中の油性ゲル組成物の含有量は特に制限されるものではないが、例えば、1~80%が好ましく、5~60%がより好ましい。本発明の油性ゲル組成物は、実施例に記載の油性ゲルの調整方法及びゲル強度の評価方法に従って調製・測定されたゲル強度が、色持ちという観点から、1N以上であることが好ましく、5N以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明の油性ゲル化剤は、(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を有効成分とするものであり、(A)分子中に2つ以上の水酸基を有する油剤に添加することによりゲルを形成する。成分(A)及び(B)の好ましい成分や成分(A)と(B)の含有質量割合などは、上記油性化粧料と同様である。形成された油性ゲルは、柔軟で追随性に富み肌に対する負担感の少ないものである。油性ゲルのゲル強度等の物性は特に制限されるものではなく任意に設定されるものであるが、例えば、実施例に記載の油性ゲルの調整方法及びゲル強度の評価方法に従って調製・測定されたゲル強度が、色持ち効果等の観点から、5N以上であることが好ましく、8N以上であることがより好ましい。
【実施例
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0030】
[油性ゲルの調整]
表1に示す組成の組成物をそれぞれ100℃に加熱溶融してジャー容器に流し込み得られたゲルについて、以下に示す方法により、ゲル強度を測定した。その結果も併せて表1に示す。

【0031】
【表1】
*1:ANTARON V-220(Ashland社製)
*2:KEH-1010(阪本薬品工業社製)
*3:Sフェイス IS-1005P(阪本薬品工業社製)
*4:コスモール43V(日清オイリオグループ社製)
*5:Liponate TDTM(Vantage Speciality Chemical社製)
*6:T.I.O(日清オイリオグループ社製)
【0032】
(評価方法)
ゲル強度について、各試料を25℃1時間静置後、FUDOH社製レオメーターを用いて、10mmのブランジャーを使い、6cm/minで2mmの距離を針入した際のゲル強度を測定した。本発明においては、5N以上になる組み合わせで用いると、色持ちの点でより好ましい。
【0033】
実施例1~15及び比較例1~7:油性固形口紅
表2及び表3に示す組成の油性固形口紅を下記の製造方法により製造して得られた油性固形口紅について、以下に示す方法により、(a)ツヤ感、(b)負担感のなさ、(c)なめらかな伸び広がり、(d)二次付着レス効果、(e)化粧持ちについて評価した。この結果も併せて表2及び表3に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
*7:ANTARON WP-660(Ashland社製)
*8:ANTARON V-216(Ashland社製)
*9:ユニフィルマ HVY(千葉製粉社製)
*10:KF-54(信越化学工業社製)
*11:KF-96A-100cs(信越化学工業社製)
*12:KF-96A-1.5cs(信越化学工業社製)
【0036】
(製造方法)
A:成分(1)~(13)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(14)~(23)を加えて、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(24)~(26)を加えて、均一に混合する。
D:Cを90℃に加熱して容器に直接流し込み、冷却後、油性固形口紅を得た。
【0037】
(評価方法)
下記評価項目(a)~(e)の項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人が各試料を口唇に塗布し、下記絶対評価基準にて評点をつけ、パネル全員の評点合計を算出し、下記階判定基準により判定した。
尚、評価項目(a)(b)(c)(d)は塗布直後に評価し、評価項目(e)については、試料を口唇に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらった後8時間後に評価した。
【0038】
<評価項目>
(a)ツヤ感
(b)負担感のなさ
(c)なめらかな伸び広がり
(d)二次付着レス
(e)色持ち
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
4点:非常によい
3点:よい
2点:やや悪い
1点:悪い
<判定基準>
(判定):(評点の合計)
◎ :65点以上
〇 :50点以上64点以下
△ :35点以上49点以下
× :34点以下
【0039】
表2および表3から明らかなごとく、本発明の実施例1~15は、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ち、すべての評価項目において優れた良好なものであった。一方、成分(A)を含有しない比較例1、2、3では、二次付着レス効果や色持ちが得られずに効果が不十分であった。成分(B)を含有しない比較例4でも二次付着レス効果や色持ちが得られずに効果が不十分であった。成分(B)の代わりに皮膜形成剤であるイソステアリン酸デキストリンを含有する比較例5では、使用感が重くべたつきを有してしまい、負担感も感じ、二次付着レス効果も十分でなかった。また成分(C)の代わりにジメチコンを含有する比較例6は、ツヤ感に乏しく、二次付着レスや色持ちの点でも十分満足いくものが得られなかった。成分(D)を含有しない比較例7では、口紅が硬くなり、滑らかな伸び広がりが得られず、二次付着レス効果も得られなかった。
【0040】
実施例16:油性流し込みアイカラー
(成分) (%)
1.(エチレン/プロピレン)コポリマー 3
2.マイクロクリスタリンワックス 2
3.ライスワックス 1.5
4.デカイソステアリン酸デカグリセリル(水酸基2つ) 22
5.(VP/エイコセン)コポリマー *1 10
6.(ヘキサデセン/VP)コポリマー *8 5
7.ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル 8
8.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル) 5
9.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
10.メチルフェニルポリシロキサン *13 5
11.トリメチルシロキシフェニルジメチコン *14 15
12.2,6-ジ-ターシャリーブチル-パラクレゾール 0.01
13.ジメチルシリル化シリカ *15 1
14.1,3-ブチレングリコール 0.5
15.赤色202号 0.2
16.群青 0.1
17.二酸化チタン 1
18.黒色酸化鉄 0.01
19.酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)*16 5
20.銀・酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)*17 3
21.酢酸トコフェロール 0.1
22.ヒアルロン酸 0.1
23.コラーゲン 0.1
24.ジメチコン(2CS)*18 5
25.香料 0.1
*13:KF-56(信越化学工業社製)
*14:BELSIL PDM 1000(旭化成ワッカーシリコーン社製)
*15:AEROSIL R976S(日本アエロジル社製)
*16:マイクログラス メタシャイン MT1080RB(日本板硝子社製)
*17:マイクログラス メタシャイン MC2080PS(日本板硝子社製)
*18:KF-96A-2cs(信越化学工業社製)
(製造方法)
A:成分(1)~(9)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(10)~(23)を加えて、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(24)・(25)を加えて、均一に混合する。
D:Cを110℃に加熱して金皿に直接流し込み、放冷後、油性流し込みアイカラーを得た。
実施例16のアイカラーは、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ちのすべての点で満足のいくものであった。
【0041】
実施例17:油性スティック状チーク
(成分) (%)
1.(エチレン/プロピレン)コポリマー 2.5
2.フィッシャートロプシュワックス 3.8
3.キャンデリラロウエステルズ 1
4.カルナウバロウ 0.2
5.ポリブテン 7.5
6.デカエチルヘキサン酸デカグリセリル(水酸基2つ) 8
7.イソステアリン酸ジグリセリル(水酸基3つ) 7
8.コンタニルPVP *7 5
9.トリイソステアリン酸ジグリセリル 5
10.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン *19 20
11.フェノキシエタノール 0.3
12.1,2-ペンチレングリコール 0.2
13.煙霧状シリカ *20 2
14.酸化亜鉛 1
15.ナイロン-12 *21 5
16.ポリメタクリル酸メチル *22 10
17.マイカ 残量
18.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理
雲母チタン 5
19.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理
酸化鉄被覆雲母チタン 2
20.トリエトキシカプリリルシラン2%処理ベンガラ 0.01
21.トリエトキシカプリリルシラン2%処理黄酸化鉄 0.1
22.トリエトキシカプリリルシラン2%処理黒酸化鉄 0.001
23.トリエトキシカプリリルシラン2%処理酸化チタン 0.2
24.ローズマリーエキス 0.1
25.水添ポリイソブテン *23 10
*19:FZ―3156(東レ・ダウコーニング社製)
*20:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)
*21:オルガソール 2002D(アルケマ社製)
*22:ガンツパール GM-2800(アイカ工業社製)
*23:IPソルベント 1620 MU(出光興業社製)
(製造方法)
A:成分(1)~(9)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(10)~(24)を加えて、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(25)を加えて、均一に混合する。
D:Cを110℃に加熱して容器に直接流し込み、冷却後、油性スティック状チークを得た。
実施例17のチークは、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ちのすべての点で満足のいくものであった。
【0042】
実施例18:油性液状口紅
(成分) (%)
1.(エチレン/プロピレン)コポリマー 2.5
2.ポリエチレンワックス 5
3.パルミチン酸デキストリン *24 1
4.デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル *2 15
5.(VP/エイコセン)コポリマー *1 15
6.ラウロイルグルタミン酸
ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)*25 5
7.トリエチルヘキサノイン 5
8.オクチルドデカノール 3
9.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
10.レシチン 0.2
11.ジフェニルジメチコン 15
12.ジメチコン(100CS) *11 5
13.タルク 4
14.赤色226号 0.5
15.赤色104号 0.5
16.赤色218号 0.03
17.黄色4号 1
18.天然ビタミンE 0.1
19.アルニカエキス 0.1
20.イソドデカン 15
*24:レオパール KL2(千葉製粉社製)
*25:エルデュウ PS-203(味の素社製)
(製造方法)
A:成分(1)~(10)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(11)~(19)を加えて、ロールミルにて均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(20)を加えて、均一に混合する。
D:Cを室温にて容器に直接流し込み、油性液状口紅を得た。
実施例18の液状口紅は、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ちのすべての点で満足のいくものであった。
【0043】
実施例19:油性固形アイブロウ
(成分) (%)
1.デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル 4
2.テトラ2-エチルヘキサン酸ジペンタエリスリチル 20
3.(VP/エイコセン)コポリマー *1 10
4.ジフェニルジメチコン 8
5.デカメチルシクロペンタシロキサン 35
6.(ヘキサデセン/VP)コポリマー 3
7.ポリエチレンワックス 4
8.マイクロクリスタリンワックス 1
9.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
10.中空シリカ 5
11.黒色酸化鉄 0.5
12.黄色酸化鉄 0.3
13.ベンガラ 0.2
14.パンテノール 0.001
15.サクラ葉エキス 0.001
16.緑茶エキス 0.001
17.アスコルビン酸グルコシド 0.01
(製造方法)
A:成分(1)~(4)、(6)~(9)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(10)~(13)を加えて、ロールミルにて均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(5)、(14)~(17)を加えて、90℃で均一に混合する。
D:Cを皿状容器に流し込み、室温に冷却し、油性固形アイブロウを得た。
実施例19の油性固形アイブロウは、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ちのすべての点で満足のいくものであった。
【0044】
実施例20:油性リップエッセンス
1.デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル 50
2.(VP/エイコセン)コポリマー 20
3.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 10
4.ジメチルポリシロキサン(25℃動粘度2CS) 1
5.(エチレン/プロピレン)コポリマー 4
6.イソステアリン酸デキストリン 3
7.スクワラン 0.1
8.オリーブ油 0.01
9.アルガンオイル 0.01
10.ツバキオイル 0.001
11.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 残量
12.煙霧状シリカ *20 0.5
13.赤色104号 0.001
14.アルミニウム末 0.1
15.シコンエキス 0.001
(製造方法)
A:成分(1)~(3)、(5)~(11)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(12)~(15)を加えて、ロールミルにて均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(4)を加えて、室温で均一に混合する。
D:Cをチューブ容器に室温で充填して、油性リップエッセンスを得た。
実施例20の油性リップエッセンスは、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ちのすべての点で満足のいくものであった。
【0045】
実施例21:リンクルオイル
1.デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル 20
2.(VP/エイコセン)コポリマー 25
3.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 残量
4.デカメチルシクロペンタシロキサン 1
5.(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー 20
6.キャンデリラワックス 3
7.ポリシリコーン-15 2
8.球状シリカ(平均粒子径7μm) 1
9.ナイアシンアミド 1
10.黄色酸化鉄 0.3
11.ベンガラ 0.15
12.黒色酸化鉄 0.05
(製造方法)
A:成分(1)~(3)、(5)~(7)を90℃~100℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(8)~(10)を加えて、ロールミルにて均一に混合する。
C:Bを脱泡後、成分(4)を加えて、室温で均一に混合する。
D:Cをジャー容器に室温で充填して、リンクルオイルを得た。
実施例21のリンクルオイルは、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、二次付着レス、色持ちのすべての点で満足のいくものであった。