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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ポリフェノール化合物を含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240508BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20240508BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240508BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240508BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240508BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/011
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/13
B60C1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021515088
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 FR2019052139
(87)【国際公開番号】W WO2020058613
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】1858590
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】チュリエ アンヌ-リーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガヴァール-ロンシェ オディル
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0126489(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面を含む少なくとも1種の補強要素と、
少なくとも1種のエラストマー、補強充填剤、架橋系および少なくとも1種のポリフェノール化合物をベースとするゴム組成物と
をベースとする複合材料であって、
金属表面の金属が、鉄、銅、スズ、亜鉛またはこれらの金属の少なくとも1種を含む合金であり、ポリフェノール化合物が、6つの炭素原子を含む芳香族環を少なくとも3つ含み、それぞれが少なくとも2つの隣接ヒドロキシル基を有し、ポリフェノール化合物がガロタンニンから選択され
ゴム組成物のポリフェノール化合物の含有量が5~30phrの間であり、
架橋系が亜鉛または酸化亜鉛を含まないか、1phr未満の亜鉛または酸化亜鉛を含み、
ここでphrはエラストマー100質量部あたりの質量部を意味する、
複合材料。
【請求項2】
ポリフェノール化合物が没食子酸とペントースおよびヘキソースから選択されるポリオールとのエステルから選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
ポリフェノール化合物が、グルコースと没食子酸のエステルから選択され、請求項1~2のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項4】
ゴム組成物のポリフェノール化合物の含有量が25phrの間である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
コバルト塩を有さないか、または1phr未満のコバルト塩を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
ジエン、オレフィンおよび熱可塑性エラストマーならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種のエラストマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
分子状硫黄を有さないか、または1phr未満の分子状硫黄を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
架橋系が、亜鉛または酸化亜鉛を有さないか、または0.5phr未満の亜鉛または酸化亜鉛を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
補強充填剤が、カーボンブラック、シリカまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の複合材料を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーをベースとするゴム組成物、そのような組成物を含む複合材料、さらにそのような組成物またはそのような複合材料を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの補強用プライは通常、ゴム混合物、および多くの場合金属性であり、表面が黄銅で被覆された補強用コードを含む。このようなプライは、タイヤの回転中に高い応力を受けるため、ゴムと補強要素の間の接着が重要な特性であることが理解される。
接着機能は一般的に、ゴム混合物に対して特定の配合、特に高含有量の硫黄および酸化亜鉛、低量のステアリン酸、コバルト塩の存在および長い遅延段階を有する促進剤の使用の必要性を強いる。実際のところ、硫黄含有量が高いこれらの加硫系は、半製品の製造時に、特に時期尚早の架橋現象を回避するために大きな制約となる。
したがって、タイヤ製造業者にとって、複合材料の硫黄含有量を低減させ、またさらには硫黄を省くこともできると同時に、それらが特定の金属または合金で被覆されるかどうかにかかわらず、補強用コードに対する良好な接着を可能にするゴム組成物配合物を見出すことが有用である。
文献国際公開第2017/081387号および国際公開第2017/081388号は、官能性ジエンポリマーを含むポリマーマトリックスをベースとするゴム組成物および複合材料を提示している。この官能性ジエンポリマーは、少なくとも2つの隣接ヒドロキシル官能基によって置換される少なくとも1つの芳香族基を有する。ゴム組成物の架橋は、加硫系または1種もしくは複数の過酸化物化合物をベースとする系によって実行される。ゴム組成物の金属に対する良好な接着特性が得られるが、グラフト化ポリマーの使用が必要である。
出願特開第2011252107号公報は、金属に対する接着が良好なゴム組成物について記載しており、この組成物はジエンエラストマーおよびコバルト塩を含む。没食子酸または没食子酸水和物によってコバルト塩の解離が促進される。組成物は、硫黄ベースの系によって架橋される。この組成物は良好な接着特定を示すが、硫黄とコバルト塩の両方を用いる。
【発明の概要】
【0003】
研究試験を継続する中で、本出願人の会社は、硫黄含有量が低いものを含む硫黄ベースの架橋系と、硫黄を含有しない架橋系の両方を用いて非常に良好な接着特性を示す特定のポリフェノール化合物を含むゴム組成物を発見した。本発明による組成物は、特にコバルト塩の存在を伴わずに優れた接着を得ることを可能にし、これは、コードが特定の金属または合金で被覆されるかどうかにかかわらず当てはまる。
本発明は、少なくとも1種のエラストマー、補強充填剤、架橋系および少なくとも1種のポリフェノール化合物をベースとするゴム組成物であって、ポリフェノール化合物が、6つの炭素原子を含む芳香族環を少なくとも3つ含み、それぞれが少なくとも2つの隣接ヒドロキシル基を有する、ゴム組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
定義
「をベースとする組成物」という表現は、使用される種々の構成要素の混合物および/またはin situ反応の生成物を含む組成物であって、これらの構成要素の一部が、組成物の製造の種々の段階中に少なくとも部分的に互いに反応できるかつ/または反応することが意図されている組成物を意味すると理解されるべきである。したがって、この組成物は、完全にもしくは部分的に架橋された状態または非架橋状態にあることが可能である。
【0005】
「エラストマー100重量部(parts by weight)あたりの重量部(part by weight)」(またはphr)という表現は、本発明の意味の範囲内では、エラストマー100質量部(parts by mass)あたりの質量部(part by mass)を意味すると理解されるべきである。
本文献では、別段明示的に示されない限り、示されるすべてのパーセンテージ(%)は質量パーセンテージ(%)である。
さらに、「a~bの間」という表現によって表される値の任意の区間は、a超~b未満(すなわち、限界値aおよびbは除外される)に及ぶ値の範囲を表し、一方で「a~b」という表現によって表される値の任意の区間は、a~最大b(すなわち、厳密な限界値aおよびbを含む)に及ぶ値の範囲を意味する。
本明細書で言及される炭素を含む化合物は、化石起源のものであってもよく、または生物由来であってもよい。後者の場合、これらは、部分的にまたは完全にバイオマスから生じてもよく、またはバイオマスから生じる再生可能出発材料から得られてもよい。ポリマー、可塑剤、充填剤などが特に該当する。
【0006】
エラストマー
本発明による組成物は、好ましくはジエン、オレフィン系および熱可塑性エラストマーおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1種のエラストマーを含む。
【0007】
ジエンエラストマー
「ジエン」エラストマー(または区別することなく、ゴム)は、天然か合成かにかかわらず、公知の方法では、少なくとも部分的にジエンモノマー単位(2つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から構成されるエラストマー(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味すると理解されるべきである。
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー:「本質的に不飽和」または「本質的に飽和」に分類されうる。「本質的に不飽和」は、一般的に15%(mol%)より大きいジエン起源の単位(共役ジエン)の含有量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に生じるジエンエラストマーを意味すると理解される。したがって、ブチルゴムまたはEPDM型のジエンとα-オレフィンのコポリマーなどのジエンエラストマーは前述の定義の範囲内に入らず、特に「本質的に飽和」ジエンエラストマー(ジエン起源の単位の含有量が低いまたは非常に低い、常に15%未満)と記載されうる。本発明による組成物に含まれるジエンエラストマーは、優先的には本質的に不飽和である。
本発明による組成物に使用可能なジエンエラストマーは、特に:
(a)4~18個の炭素原子を有する共役または非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、
(b)4~18個の炭素原子を有する共役または非共役ジエンと少なくとも1種の他のモノマーの任意のコポリマー
を意味すると理解される。
【0008】
他のモノマーは、エチレン、オレフィンまたは共役もしくは非共役ジエンであってもよい。
共役ジエンとして好適なものは、4~12個の炭素原子を有する共役ジエン、特に、とりわけ1,3-ブタジエンおよびイソプレンなどの1,3-ジエンである。
オレフィンとして好適なものは、8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物および3~12個の炭素原子を有する脂肪族α-モノオレフィンである。
ビニル芳香族化合物として好適なものは、例えばスチレン、オルト-、メタ-もしくはパラ-メチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物またはパラ-(tert-ブチル)スチレンである。
脂肪族α-モノオレフィンとして好適なものは、特に3~18個の炭素原子を有する非環式脂肪族α-モノオレフィンである。
【0009】
優先的には、ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。ブタジエンコポリマーは、特にブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)からなる群から選択される。
好ましくは、ジエンエラストマーはイソプレンエラストマーである。
「イソプレンエラストマー」という用語は、公知の方法では、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、言い換えると天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味すると理解される。イソプレンコポリマーの中でも、イソブテン/イソプレン(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレン(SIR)、イソプレン/ブタジエン(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーが特に挙げられる。イソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴム、合成シス-1,4-ポリイソプレンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、これらの合成ポリイソプレンの中でも、シス-1,4結合の含有量(mol%)が90%より大きい、さらにより優先的には98%より大きいポリイソプレンが使用される。好ましくは、かつ本文献の構成のいずれか1つによると、ジエンエラストマーは天然ゴムである。
【0010】
優先的には、ジエンエラストマー、好ましくはイソプレンエラストマー、好ましくは天然ゴムの含有量は50~100phr、より優先的には60~100phr、より優先的な観点では70~100phr、さらにより優先的には80~100phr、非常に優先的な観点では90~100phrである。特に、ジエンエラストマー、好ましくはイソプレンエラストマー、同様に好ましくは天然ゴムの含有量は、非常に優先的には100phrである。
1つのジエンエラストマーのみを含有するか、または複数のジエンエラストマーの混合物を含有するかにかかわらず、本発明のゴム組成物は、あまり重要でない観点では、ジエンエラストマー以外の任意の種類の合成エラストマー、またさらにはエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーを含有することもできる。好ましくは、本発明によるゴム組成物は、ジエンエラストマー以外の合成エラストマーまたはエラストマー以外のポリマーを含有しない、またはこれらを10phr未満、好ましくは5phr未満含有する。
【0011】
オレフィン系エラストマー
オレフィン系エラストマーは、本発明の意味の範囲内では、そのエラストマー鎖が、Oと表記されるオレフィンモノマー単位を主に含む炭素ベースの鎖であるエラストマーを意味すると理解される。
モノマーOは、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンなどの当業者に公知の任意のオレフィンから生じてもよく、これらのモノマーは、直鎖または分岐アルキル基によって置換されてもよい。
優先的には、Oはエチレン[-CH2-CH2-]単位であり、この優先的な場合では、オレフィン系エラストマーはエチレン系エラストマーである。
Oのモル含有量は、50%より大きい。より詳細には、Oのモル含有量は50%~100%の間、優先的には50%~95%の間、優先的には65%~85%の間である。したがって、オレフィン系エラストマーは、本発明の意味の範囲内では、0~50mol%の非オレフィン系単位、すなわちO以外の単位も含むコポリマーである。
【0012】
A’と表記される非オレフィン系単位は、モノマーOおよびA’によって占められる全モル含有量が100%に等しくなるように炭素ベースの鎖に存在する。オレフィン系エラストマーの調製に有用な非オレフィン系モノマーは、不飽和をもたらさない非オレフィン系モノマー、およびひとたび重合されると、エラストマー鎖によって有される不飽和をもたらすモノマー(ジエンモノマー以外)から選択されうる。
不飽和をもたらさない非オレフィン系モノマーは、本質的にビニルおよびアクリル系/メタクリル系モノマーである。例えば、そのようなモノマーは、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、またはメタクリル酸メチルから選択されてもよく、これらのモノマーは、アルキルもしくはアリール基または他の官能化基によって置換されてもよい。
また、例えば、共重合による不飽和を有するオレフィン系エラストマーの調製に有用な非ジエンモノマーは、例えばメタクリル酸ジシクロペンタジエニルオキシエチルなどの不飽和エラストマーを形成するために当業者に公知のものすべてである。
【0013】
熱可塑性エラストマー(TPE)
熱可塑性エラストマーは、本発明の意味の範囲内では、熱可塑性ポリマーとエラストマーの中間の構造を有する熱可塑性エラストマー(TPEと略記される)を意味すると理解される。これらは、軟質エラストマーブロックによって接続された硬質熱可塑性ブロックからなるブロックコポリマーである。
本発明による組成物に優先的に含まれる熱可塑性エラストマーは、その熱可塑性ブロックとエラストマーブロックの化学的性質が異なりうるブロックコポリマーである。
公知の方法では、TPEは、2つのガラス転移温度(「Tg」、ASTM規格 D3418によって測定される)ピークを示し、最低温度はTPEのエラストマー部分に関連し、最高温度はTPEの熱可塑性部分に関連する。したがって、TPEの軟質ブロックは周囲温度(25℃)未満のTgによって定義され、一方で硬質ブロックは80℃より大きいTgを有する。
本特許出願では、TPEのガラス転移温度に言及する場合、エラストマーブロックに関連するTgに関する。TPEは、優先的には25℃未満またはそれに等しい、より優先的には10℃未満またはそれに等しいガラス転移温度を示す。これらの最低値より大きいTg値は、非常に低い温度で使用されたとき、本発明による組成物の性能品質を低減させる可能性がある。そのような使用では、TPEのTgは、さらにより優先的には-10℃未満またはそれに等しい。同様に優先的には、TPEのTgは-100℃より大きい。
エラストマー性と熱可塑性の両方の性質であるために、TPEは、エラストマーブロックまたは熱可塑性ブロックのそれら自身の特性を保持するのに十分に不適合性(すなわち、それらのそれぞれの質量、それらのそれぞれの極性またはそれらのそれぞれのTg値の結果として異なる)であるブロックを有さなければならない。
【0014】
TPEは、少数のブロック(5未満、典型的には2つまたは3つ)を有するコポリマーであってもよく、この場合、これらのブロックは、好ましくは15000g/molより大きな高い質量を有する。これらのTPEは、例えば、熱可塑性ブロックおよびエラストマーブロックを含むジブロックコポリマーでありうる。これらは多くの場合、軟質セグメントによって接続された2つの硬質セグメントを有するトリブロックエラストマーでもある。硬質および軟質セグメントは、線状に、星型分岐配置でまたは分岐配置で位置してもよい。典型的に、これらのセグメントまたはブロックのそれぞれは、最低5より多い、一般的には10より多い基本単位(例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーではスチレン単位およびブタジエン単位)を含有することが多い。
【0015】
TPEはまた、多数の比較的小さいブロック(30より多い、典型的には50~500)を含んでもよく、この場合これらのブロックは、好ましくは例えば500~5000g/molの相対的に低い質量を有する。これらのTPEは、以下でマルチブロックTPEと称され、エラストマーブロック/熱可塑性ブロックの配列である。
【0016】
TPEは、線状形態、少なくとも3つの分岐を有する星型分岐形態、分岐形態またはデンドリマー形態で提供されてもよい。
例えば、TPEは、以下の群:スチレン/イソブチレン/スチレン(SIBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、ポリブタジエン/ポリウレタン(TPU)、ポリエーテル/ポリエステル(COPE)およびポリエーテル/ポリアミド(PEBA)から選択されるコポリマーである。
上記で例として示されるTPEは、本発明による組成物の範囲内で互いに混合されることも可能である。
【0017】
市販のTPEエラストマーの例としては、Kurarayによって名称Hybrar5125で販売されている、もしくはKratonによって名称D1161で販売されているSIS型のエラストマー、またはさらにPolimeri Europaによって名称Europrene SOLT166で販売されている線状SBS型の、もしくはKratonによって名称D1184で販売されている星型分岐SBS型のエラストマーを挙げることができる。Dexco PolymersによってVectorの名称(例えばVector4114またはVector8508)で販売されているエラストマーも挙げることができる。マルチブロックTPEの中でも、Exxonによって販売されているVistamaxxTPE、DSMによって名称Arnitelで、もしくはDuPontによって名称Hytrelで、もしくはTiconaによって名称Riteflexで販売されているCOPE TPE、Arkemaによって名称PEBAXで販売されているPEBA TPE、またはSartomerによって名称TPU7840で、もしくはBASFによって名称Elastogranで販売されているTPU TPEを挙げることができる。
【0018】
官能化
特定の構成では、本発明による組成物は、少なくとも1種の官能化エラストマーを含む。「官能化」という用語は、官能基、優先的には共役ジエン官能基、エポキシド官能基、カルボニル官能基、無水物官能基または酸エステル官能基などの官能基を含む官能基を有することを意味すると理解される。
エラストマーに存在する官能基は、当業者に公知の方法では、共重合または重合後修飾によって得られ、調製方法に応じて、鎖の骨格が直接有するか、または側基が有するかのいずれかである。
好ましい構成では、本発明による組成物は、共役ジエン官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーを含む。
当業者に周知の「共役ジエン官能基」は、エラストマーの鎖に沿って、またはこの場合ペンダント官能基が言及される、エラストマー鎖の分岐上のいずれかに位置しうる2つの連続した炭素-炭素二重結合の存在を意味すると理解される。
【0019】
別の好ましい構成では、本発明によるゴム組成物は、少なくとも1種のエポキシド官能化エラストマーおよび好ましくは1種のエポキシ化ジエンエラストマーを含む。
エラストマーに存在するエポキシド官能基は、共重合または重合後修飾によって得られ、例えば共重合後のエラストマー鎖に存在するジエン官能基のエポキシ化または任意の他の修飾による、調製方法に応じて、鎖の骨格が直接有するか、または側基が有するかのいずれかである。
エポキシ化エラストマーは、例えば、当量の非エポキシ化エラストマーのエポキシ化によって、例えばクロロヒドリンもしくはブロモヒドリンに基づくプロセスによって、または過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシド、もしくは過酸(過酢酸または過ギ酸など)に基づくプロセスによって公知の方法で得ることができる。特にKautsch. Gummi Kunstst., 2004, 57(3), 82を参照されたい。その場合、エポキシド官能基はポリマー鎖に存在する。エポキシ化天然ゴム(ENRと略記される)を特に挙げることができ、そのようなENRは、例えば名称ENR-25およびENR-50(それぞれエポキシ化度25%および50%)でGuthrie Polymerによって販売されている。Sartomerによって名称Poly Bd(例えばPoly Bd 605E)で販売されているエポキシ化BRもまた、それ自体周知である。エポキシ化SBRは、当業者に周知のエポキシ化技術によって調製されてもよい。
【0020】
エポキシ化エラストマーはまた、ペンダントエポキシド官能基を示してもよい。この場合、これらは、重合後修飾によって(例えばJ. Appl. Polym. Sci., 1999, 73, 1733を参照されたい)、またはモノマーと、エポキシド官能基、特に、例えばメタクリル酸グリシジルなどのエポキシド官能基を含むメタクリル酸のエステルを有するモノマーとのラジカル共重合によって(ポリマー合成の技術分野の当業者に周知のラジカル重合、例えばMacromolecules, 1998, 31, 2822または米国特許第20110098404号を参照されたい)、またはエポキシド官能基を有するニトリルオキシドの使用によってのいずれかで得ることができる。
エポキシド基を有するジエンエラストマーは、例えば米国特許出願第2003/120007号または欧州特許第0763564号、米国特許第6903165号または欧州特許第1403287号に記載されている。
【0021】
エポキシ化オレフィン系エラストマーおよびそれらの調製プロセスは当業者に周知である。エポキシド基を有するオレフィン系エラストマーは、例えば、文献欧州特許第0247580号および米国特許第5576080号に記載されている。Arkemaは、エポキシ化ポリエチレンを商品名Lotader AX8840およびLotader AX8900で市販している。
エポキシ化エラストマーがエポキシ化ジエンエラストマーである好ましい場合では、エポキシ化エラストマーは優先的には、エポキシ化天然ゴム(NR)(ENRと略記される)、エポキシ化合成ポリイソプレン(IR)、優先的には90%より多くのシス-1,4結合の含有量を有するエポキシ化ポリブタジエン(BR)、エポキシ化ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
【0022】
架橋系
架橋系は、タイヤゴム組成物の分野の当業者に公知の任意の種類の系であってもよい。
当業者に公知の方法においては、エラストマーは、前記エラストマーの性質に応じて複数の方法で架橋されてもよい。
エラストマーが主に熱可塑性エラストマーである特定の構成では、架橋系を使用しないことが可能であり、熱可塑性ブロックの固化が、エラストマーを熱可塑性ブロックの物理的架橋の形態で有効に強固にするのに十分でありうる。エラストマーが主に熱可塑性エラストマーである別の特定の構成では、架橋系は、優先的には例えば文献国際公開第2017/103387号に記載されるものなどの1種または複数の過酸化物化合物ベースとしていてもよく、そうでなければ例えば文献国際公開第2017/064091号に記載されるものなどの放射線照射によって架橋が実行されてもよい。
【0023】
本発明によるゴム組成物を構成するエラストマーが主にジエンエラストマーを含む特定の構成では、架橋系は、硫黄または1種もしくは複数の過酸化物化合物ベースとしていてもよく、あるいはチウラムポリスルフィド型の1種もしくは複数の化合物ベースとしていてもよい。
本発明による組成物のエラストマーが官能化される場合、エラストマーが有する官能基の性質に応じて特定の架橋剤が使用されてもよい。したがって、特に上記に記載されたエポキシ化エラストマーをポリ酸によって架橋すること、または上記に記載された共役二重結合を示すエラストマーをポリジエノフィルによって架橋することが可能である。
【0024】
硫黄
本発明による組成物がジエンエラストマーを含む特定の場合では、架橋系は、優先的には硫黄ベースとしていてもよい。この場合、加硫系が言及される。硫黄は任意の形態、特に分子状硫黄または硫黄供与物質の形態で与えられてもよい。また、優先的には少なくとも1種の加硫促進剤が存在し、さらに優先的には酸化亜鉛、ステアリン酸またはステアリン酸塩などの同等の化合物および遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)などの種々の公知の加硫活性化剤、またはさらには公知の加硫抑制剤が使用されてもよい。
硫黄は、0.5~12phrの間、特に1~10phrの間の優先的な含有量で使用される。加硫促進剤は、0.5~10phrの間、より優先的には0.5~5phrの間、非常に優先的には0.5~3phrの間の優先的な含有量で使用される。
促進剤として、硫黄の存在下でのジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用できる任意の化合物、特にチアゾール型の促進剤、さらにはそれらの誘導体、またはスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオ尿素およびキサントゲン酸型の促進剤が使用されてもよい。そのような促進剤の例としては、以下の化合物:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTSと略記される)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンソチアゾールスルフェンアミド(DCBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(TBSI)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、ジベンジルジチオカルバメート亜鉛(ZBEC)およびこれらの化合物の混合物を特に挙げることができる。
【0025】
過酸化物
本発明による組成物がジエンエラストマーまたは熱可塑性エラストマーを含む特定の場合では、架橋系は、優先的には1種または複数の過酸化物化合物をベースとし、前記過酸化物化合物は、0.01~10phrである。
本発明によって使用されてもよい過酸化物は、当業者に公知の任意の過酸化物であってもよい。
好ましくは、過酸化物は有機過酸化物から選択される。
「有機過酸化物」は、有機化合物、すなわちO-O-基(単一の共有結合によって結合された2つの酸素原子)を含む、炭素を含有する化合物を意味すると理解される。
架橋プロセスの間、有機過酸化物はその不安定なO-O結合で分解し、フリーラジカルを生じる。これらのフリーラジカルにより、架橋結合の創出が可能になる。
一実施形態によると、有機過酸化物はジアルキルペルオキシド、モノペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
好ましくは、ジアルキルペルオキシドはジクミルペルオキシド、ジ(t-ブチル)ペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、α,α’-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、α,α’-ジ[(t-アミルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、ジ(t-アミル)ペルオキシド、1,3,5-トリ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0027】
ジクミルペルオキシドと1,3-および1,4-イソプロピルクミルクミルペルオキシドの混合物(例えばArkemaによって商品名Luperox(登録商標)DC60で販売されている)も有利である。
OO-tert-ブチルO-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、OO-tert-ブチルO-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、OO-tert-アミルO-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートおよびこれらの混合物などの一部のモノペルオキシカーボネートも使用することができる。
【0028】
ジアシルペルオキシドの中でも、好ましい過酸化物はベンゾイルペルオキシドである。
ペルオキシケタールの中でも、好ましい過酸化物は1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(またはメチルエチルケトンペルオキシド環状三量体)、3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン、n-ブチル4,4-ビス(t-アミルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
好ましくは、ペルオキシエステルはtert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
特に好ましくは、有機過酸化物はジクミルペルオキシド、アリールまたはジアリールペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、OO-(t-ブチル)O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,3(4)-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンおよびこれらの混合物からなる群、より優先的にはジクミルペルオキシド、n-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、OO-(t-ブチル)O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,3(4)-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
チウラムポリスルフィド
本発明による組成物がジエンエラストマーを含む特定の場合では、架橋系は、優先的には1種または複数のチウラムポリスルフィド型の化合物をベースとし、前記チウラムポリスルフィド化合物は0.5~15phrである。
硬化後、そのような架橋剤は、組成物に真の架橋を付与することなく十分な凝集性を与えることが証明されている。当業者に公知の従来の膨潤法によって測定されうる架橋は、実際は検出閾値に近い。好ましくは、チウラムポリスルフィドの含有量は0.5~10phrの間、より優先的には1~5phrの範囲内である。そのような化合物は当業者に公知であり、例えば文献国際公開第2011/092124号に記載される。化学的架橋系として使用されてもよいチウラムポリスルフィド化合物としては、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)およびそのような化合物の混合物を挙げることができる。
【0031】
ポリ酸
本発明による組成物がエポキシド官能化エラストマーを含む特定の場合では、架橋系は、優先的には1種または複数のポリ酸化合物をベースとし、前記ポリ酸化合物は0.2~100phr、好ましくは0.2~50phr、より優先的には0.9~25phrである。
二酸などのポリ酸化合物は、A基の両側に有される複数のカルボン酸官能基、例えば2つのカルボン酸官能基を含む化合物を意味すると理解され、Aは1~1800個の炭素原子を含む二価炭化水素基である。そのような化合物は、例えば出願国際公開第2014/095582号に記載される。1種または複数のポリ酸化合物をベースとする前記架橋系はまた、ポリ酸化合物に存在するカルボン酸官能基に対して0.01~4モル当量、好ましくは0.01~3モル当量のイミダゾールを含む。化学的架橋系に使用されてもよいイミダゾール化合物としては、1,2-ジメチルイミダゾール、1-デシル-2-メチルイミダゾールまたは1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを挙げることができ、後者が優先的である。
当業者に周知の「モル当量」という表現は、関係する化合物または官能基のモル数の基準化合物または基準官能基のモル数に対する比率を意味すると理解されるべきである。したがって、化合物または官能基Aに対して2当量の化合物または官能基Bは、1モルの化合物または官能基Aが使用される場合、2モルの化合物または官能基Bを表す。
【0032】
ポリジエノフィル
本発明による組成物が、共役ジエン官能基を含む官能化エラストマーを含む特定の場合では、架橋系は、優先的には1種または複数のポリジエノフィルをベースとする。
特に好適なものは、一般式(I):
【化1】
(式中、
- Aは共有結合、または1つもしくは複数のヘテロ原子によって置換されてもよく、かつ中断されてもよい少なくとも1つの炭素原子を含む炭化水素基を表し、
- R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して水素原子および炭化水素基から選択される同一または異なる基を表し、一方でR1およびR2、ならびに他方でR3およびR4は、それらが結合する環の炭素原子と一緒になって環を形成することができる)
の化合物である。
【0033】
好ましくは、一般式(I)のポリジエノフィルでは、Aは共有結合、または1~1800個の炭素原子、優先的には2~300個の炭素原子、より優先的には2~100個の炭素原子、非常に優先的には2~50個の炭素原子を含む二価炭化水素基を表す。炭素原子が1800個を超えると、ポリジエノフィルは架橋剤として有効性が低くなる。したがって、Aは、好ましくは3~50個の炭素原子、優先的には5~50個の炭素原子、より優先的には8~50個の炭素原子、さらにより優先的には10~40個の炭素原子を含む二価炭化水素基を表す。
【0034】
優先的には、Aは脂肪族もしくは芳香族型の二価基または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基、好ましくは芳香族型の二価基または少なくとも脂肪族部分および芳香族部分を含む基である。より優先的には、Aは少なくとも脂肪族部分およびアリーレン-ジアルキレンまたはアルキレン-ジアリーレン型の芳香族部分を含む二価基であり、特に、Aは優先的にはフェニレン-ジアルキレン(フェニレン-ジメチレンまたはフェニレン-ジエチレンなど)基またはアルキレン-ジフェニレン(メチレン-ジフェニレンなど)基である。
好ましくは、Aが中断されるとき、酸素、窒素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは酸素によって中断される。
優先的な実施形態によると、Aは、アルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノおよびカルボニルラジカルから選択される少なくとも1つのラジカルによって置換される。
【0035】
ラジカルR1、R2、R3およびR4は、互いに独立して水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル、6~30個の炭素原子を有するアリールおよび7~25個の炭素原子を有するアラルキルから選択される同一または異なる基、1つまたは複数のヘテロ原子によって中断および/または置換されてもよい基を表し、一方でR1およびR2、ならびに他方でR3およびR4は、それらが結合する環の炭素原子と一緒になり、5~12個の炭素原子、好ましくは5または6個の炭素原子を含む芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環から選択される環を形成することができる。好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して水素原子、および1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルから選択される同一または異なる基、置換されてもよい基を表す。
【0036】
好ましくは、本発明による組成物では、ポリジエノフィルの含有量は0.2~100phr、好ましくは0.2~50phrに及ぶ範囲内である。これは、ポリジエノフィルが0.2phrを下回ると架橋の効果が実質的でなく、一方でポリジエノフィルが100phrを上回ると、架橋剤であるポリジエノフィルがポリマーマトリックスに対して質量で優勢となるためである。したがって、優先的には、ポリジエノフィルの含有量は0.4~27phr、好ましくは0.9~20phrに及ぶ範囲内である。
【0037】
本発明の要件に有用なポリジエノフィルは、市販されるか、または例えば文献Walter W. Wright and Michael Hallden-Abberton, "Polyimides", in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2002, Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a21_253に記載される方法などの周知の技術に従って当業者によって容易に調製されるかのいずれかである。
例えば、本発明の要件に有用な市販のポリジエノフィルとしては、ビスマレイミドおよびビスシトラコンイミドを挙げることができる。
好ましい構成では、本発明によるゴム組成物は、上記に記載されたもののうちの1つ以外の架橋系を有さない。特に、架橋系が1種もしくは複数の過酸化物化合物をベースとする、1種もしくは複数のポリジエノフィル化合物をベースとする、または1種もしくは複数の二酸化合物をベースとする場合、ゴム組成物は優先的には加硫系を有さない、またはそれらを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含有する。同様に、組成物は、好ましくは加硫活性化剤もしくは当業者に公知の促進剤を有さない、またはそれらを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含有する。
【0038】
本発明による組成物に優先的に含まれる架橋系が、1種または複数のチウラムポリスルフィド型の化合物をベースとする場合、組成物は、優先的には別の架橋剤または硫黄もしくは他のさらなる加硫剤(硫黄供与体、加硫活性化剤または促進剤)の存在を必要としない。したがって、本発明の組成物は、優先的には硫黄またはそのようなさらなる加硫剤を有さなくてもよいか、そうでなければそれらを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満の非常に少量のみ含む。
別の好ましい実施形態によると、本発明の組成物は、亜鉛または酸化亜鉛(加硫活性化剤としても公知)も有さなくてもよいか、そうでなければそれらを優先的には1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満の非常に少量のみ含む。
架橋系が硫黄をベースとしない好ましい構成では、本発明によるゴム組成物は、好ましくは分子状硫黄を有さないか、またはそれらを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含む。
【0039】
補強充填剤
本発明のゴム組成物は、1種または複数の補強充填剤を含んでもよい。
特にタイヤの製造に使用されうる、ゴム組成物を補強するその能力のために公知の任意の種類の「補強」充填剤、例えばカーボンブラックなどの有機充填剤、シリカなどの無機充填剤、またはさらにはこれら2種の充填剤の混合物が使用されてもよい。
すべてのカーボンブラック、特にタイヤまたはそのトレッドに従来使用されるブラックがカーボンブラックとして好適である。これらの中でも、より特定すると、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683およびN772ブラックなどの100、200および300シリーズの補強用カーボンブラック、または500、600もしくは700シリーズのブラック(ASTM D-1765-2017グレード)を挙げることができる。これらのカーボンブラックは市販の単離された状態で、または任意の他の形態で、例えば使用されるゴム添加剤の一部の支持剤として使用されてもよい。カーボンブラックは、例えばマスターバッチの形態で、ジエンエラストマー、特にイソプレンエラストマーに既に組み込まれている場合がある(例えば、出願国際公開第97/36724号および国際公開第99/16600号を参照されたい)。
【0040】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願国際公開第2006/069792号、国際公開第2006/069793号、国際公開第2008/003434号および国際公開第2008/003435号に記載されるものなどの官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
「補強無機充填剤」は、その色およびその起源(天然または合成)にかかわらず、「白色」充填剤、「透明」充填剤またはさらにはカーボンブラックとは対照的に「非ブラック」充填剤としても公知であり、中間カップリング剤以外の手段を伴わずに、タイヤの製造用のゴム組成物をそれ自体単独で補強することができる任意の無機または鉱物充填剤を意味すると本明細書で理解されるべきである。公知の方法では、ある特定の補強無機充填剤は、特にそれらの表面のヒドロキシル(-OH)基の存在によって特徴付けられてもよい。
シリカ型、優先的にはシリカ(SiO2)、またはアルミナ型、特にアルミナ(Al23)の鉱物充填剤が補強無機充填剤として特に好適である。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強用シリカ、特にいずれも450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、とりわけ60~300m2/gに及ぶ範囲内のBET比表面積およびCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであってもよい。任意の種類の沈降シリカ、特に高度に分散性の沈降シリカ(「高度に分散性」または「高度に分散性のシリカ」から「HDS」と称される)が使用されてもよい。高度に分散性であるまたは高度に分散性ではないこれらの沈降シリカは当業者に周知である。例えば、出願国際公開第03/016215号および国際公開第03/016387号に記載されるシリカを挙げることができる。市販のHDSシリカの中でも、EvonikからのUltrasil(登録商標)5000GRおよびUltrasil(登録商標)7000GRシリカまたはSolvayからのZeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1115 MP、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)Premium 200MPおよびZeosil(登録商標)HRS 1200 MPシリカが特に使用されてもよい。非HDSシリカとして、以下の市販のシリカ:EvonikからのUltrasil(登録商標)VN2GRおよびUltrasil(登録商標)VN3GRシリカ、SolvayからのZeosil(登録商標)175GRシリカまたはPPGからのHi-Sil EZ120G(-D)、Hi-Sil EZ160G(-D)、Hi-Sil EZ200G(-D)、Hi-Sil 243LD、Hi-Sil 210およびHi-Sil HDP 320Gシリカが使用されてもよい。
【0041】
本説明では、BET比表面積は、"The Journal of the American Chemical Society" (Vol. 60, page 309, February 1938)に記載されるブルナウアー-エメット-テラー法を使用するガス吸着によって、より詳細には2010年6月の規格NF ISO 5794-1、付録E[多点(5点)容積法-ガス:窒素-真空下脱気:160℃で1時間-相対圧p/po範囲:0.05~0.17]から適合された方法によって決定される。
シリカなどの無機充填剤では、例えばCTAB比表面積値は、2010年6月の規格NF ISO 5794-1、付録Gによって決定された。方法は、CTAB(N-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド)の、補強充填剤の「外部」表面への吸着に基づく。
カーボンブラックでは、ASTM規格 D6556-2016によってSTSA比表面積が決定される。
【0042】
本発明のゴム組成物に使用可能である無機充填剤の他の例としては、アルミナ型の鉱物充填剤、特にアルミナ(Al23)、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化チタン、炭化ケイ素または窒化ケイ素、例えば出願国際公開第99/28376号、国際公開第00/73372号、国際公開第02/053634号、国際公開第2004/003067号、国際公開第2004/056915号、米国特許第6610261号および米国特許第6747087号に記載される補強型のすべてをまた言及できる。特に、アルミナBaikalox A125もしくはCR125(Baikowski)、APA-100RDX(Condea)、Aluminoxid C(Evonik)またはAKP-G015(Sumitomo Chemicals)を挙げることができる。
【0043】
補強無機充填剤が提供される物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒の形態にあるか、そうでなければビーズまたは任意の他の適切な高密度化形態にあるかにかかわらず重要ではない。当然ながら、補強無機充填剤は、異なる補強無機充填剤、特に上記に記載されたシリカの混合物を意味することも理解される。
当業者であれば、関係する使用に応じて、特に関係するタイヤの種類、例えばバイク用、乗用車用またはバンもしくは大型車両などの多目的車用タイヤに応じて補強充填剤の全含有量を調整する方法を熟知している。優先的には、全補強充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカなどの補強無機充填剤)の含有量は10~200phrの間、より優先的には25~180phrの間であり、公知の方法において、最適条件は、標的とされる特定の用途によって異なる。
【0044】
補強無機充填剤をジエンエラストマーと組み合わせるために、周知の方法では、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーの間に化学的および/または物理的性質の良好な接続をもたらすことを意図する、少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)が使用されてもよい。少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが特に使用される。「二官能性」は、無機充填剤と相互作用可能な第1の官能基およびジエンエラストマーと相互作用可能な第2の官能基を有する化合物を意味すると理解される。例えば、そのような二官能性化合物は、ケイ素原子を含む第1の官能基であって、無機充填剤のヒドロキシル基と相互作用可能な第1の官能基、および硫黄原子を含む第2の官能基であって、ジエンエラストマーと相互作用可能な第2の官能基を含んでもよい。
【0045】
優先的には、オルガノシランは、TESPTと略記される、名称Si69でEvonikによって販売されているビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略記される、名称Si75でEvonikによって販売されているビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのオルガノシランポリスルフィド(対称または非対称)、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、Momentiveによって名称NXT Silaneで販売されているS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエートなどのブロックメルカプトシランからなる群から選択される。より優先的には、オルガノシランはオルガノシランポリスルフィドである。
本発明の組成物のカップリング剤の含有量は、優先的には35phr未満またはそれに等しく、それらを可能な限り少なく使用することが一般的に望ましいことが理解される。典型的に、カップリング剤の含有量は、補強無機充填剤の量に対して0.5質量%~15質量%である。その含有量は、優先的には0.5~20phrに及ぶ範囲内、より優先的には3~10phrに及ぶ範囲内である。この含有量は、本発明の組成物に使用される補強無機充填剤の含有量に応じて当業者によって容易に調整される。
当業者であれば、上記に記載された補強無機充填剤の代替として別の性質の補強充填剤が使用されてもよく、ただしこの別の性質の補強充填剤がシリカなどの無機層で被覆されるか、そうでなければその表面に官能性部位、特にヒドロキシル部位を含むことを条件とし、これによりこの補強充填剤とジエンエラストマーの間に結合を確立するためにカップリング剤の使用が必要とされることを理解する。例として、シリカで部分的または完全に被覆されたカーボンブラック、または限定することなく、Cabot CorporationからのEcoblack(登録商標)型のCRX2000シリーズまたはCRX4000シリーズの充填剤などの、シリカによって改質されたカーボンブラックを挙げることができる。
【0046】
ポリフェノール化合物
本発明による組成物は、少なくとも1種のポリフェノール化合物を含み、ポリフェノール化合物は、6つの炭素原子を含む芳香族環を少なくとも3つ含み、それぞれが少なくとも2つの隣接ヒドロキシル基を有する。
隣接は、芳香族環が有する2つのヒドロキシル基が互いに対してオルト位にあることを意味すると理解される。
ポリフェノール化合物のモル質量は、優先的には600g/molより大きい、優先的には800g/molより大きい、好ましい観点では1000g/molより大きい、非常に好ましい観点では1200g/molより大きい。
好ましくは、ポリフェノール化合物は、ガロタンニン、すなわち没食子酸とポリオールのエステルから選択され、ポリオールは好ましくは、ペントースおよびヘキソースから選択される。好ましくは、ポリフェノール化合物はグルコースと没食子酸のエステルから選択され、好ましい観点では、3~10個のガロイル単位を含む、好ましくは5~10個のガロイル単位を含むポリガロイルグルコースから選択される。好ましい観点では、ポリフェノール化合物は、トリガロイルグルコース、ペンタガロイルグルコースおよびデカガロイルグルコース、好ましくは1,2,6-トリガロイルグルコース、1,3,6-トリガロイルグルコース、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースおよびタンニン酸(またはベータ-D-グルコースペンタキス(3,4-ジヒドロキシ-5-((3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ)安息香酸))から選択される。非常に好ましくは、ポリフェノール化合物はタンニン酸である。
【0047】
本発明によるゴム組成物は、とりわけ、特に複合材料、非常に詳細にはタイヤ用複合材料を構成するためのポリフェノール化合物の存在のために金属補強要素への特に有利な接着特性を示し、これは補強要素が特定の金属または合金で被覆されるかされないかにかかわらず当てはまる。
本発明によるゴム組成物は、優先的には0.1~30phr、優先的には2~30phr、非常に優先的には5~25phrのポリフェノール化合物を含む。0.1phrを下回ると、ポリフェノール化合物は、本発明によるゴム組成物の接着特性に認識可能な影響を及ぼさない。30phrを上回ると、顕著な利益はそれ以上観察されない。
驚くべきことに、本発明による組成物の補強用コードに対する非常に良好な接着は、コバルト塩を使用する必要なく得られる。したがって、本発明による組成物は、優先的には、当業者に公知であるように、その公知の効果が接着の改善であるコバルト塩を有さない、またはそれらを1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満、非常に優先的には0.1phr未満含有する。
【0048】
種々の添加剤
本発明によるゴム組成物はまた、例えば可塑剤(可塑化オイルおよび/または可塑化樹脂)、上記に言及されたもの以外の補強または非補強充填剤、顔料、抗オゾンワックス、化学的抗オゾン物質または抗酸化物質などの保護剤、抗疲労剤または補強樹脂(例えば、出願国際公開第02/10269号に記載されるものなど)などの、当業者に公知であり、かつタイヤ用ゴム組成物、特に内部層の組成物に一般的に使用される、本特許出願において後に定義される通りの通常の添加剤のすべてまたは一部を含んでもよい。
これらの組成物はまた、必要に応じたカップリング剤に加えて、カップリング活性化剤、無機充填剤を被覆する薬剤、またはより一般的には、公知の方法で、ゴムマトリックスへの充填剤の分散の改善および組成物の粘度の低減によって、生の状態で加工されるそれらの能力を改善することができる加工助剤を含有してもよく、これらの薬剤は、例えばアルキルアルコキシシラン(例えばオクチルトリエトキシシランまたはシランocteo)などの加水分解性シラン、ポリオール、ポリエーテル、第一級、第二級もしくは第三級アミン、またはヒドロキシル化もしくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0049】
ゴム組成物の調製
本発明によるゴム組成物は、当業者に周知の調製段階を使用して適切な混合機で製造される:
- すべての必要な構成要素、特にエラストマーマトリックス、ポリフェノール化合物、充填剤および必要に応じた他の種々の添加剤が、標準内部混合機(例えば「バンバリー」式のもの)などの適切な混合機に導入される単一の熱機械的工程で実行されてもよい熱機械的作業または混錬段階。エラストマーへの充填剤の組込みは、熱機械的な混錬によって1回または複数回で実行されてもよい。例えば出願国際公開第97/36724号および国際公開第99/16600号に記載されるように、充填剤、特にカーボンブラックがすべてまたは部分的に、マスターバッチの形態で既にエラストマーに組み込まれている場合では、直接混錬されるのはマスターバッチであり、適切な場合、マスターバッチ形態に存在しない、組成物に存在する他のエラストマーまたは充填剤、さらに必要に応じた他の種々の添加剤が組み込まれる。
熱機械的混錬は、高温、最大110℃~200℃の間、好ましくは130℃~185℃の間の最高温度で、一般的に2~10分の間の期間にわたって実行される。
- その後、機械的作業の第2の段階が、開放型ロール機などの外部混合機で、第1の段階で得られた混合物を典型的には120℃未満、例えば40℃~100℃の間のより低い温度に至るまで冷却した後で実行されてもよい。
【0050】
必要に応じた架橋系は、当業者の知識に従い、第1の、または実行される場合は第2の段階中に添加される。例えば、ポリ酸またはポリジエノフィルをベースとする架橋系は、典型的に第1の段階中に添加される。過酸化物または硫黄をベースとする架橋系は、典型的に第2の段階中に添加される。
このようにして得られた最終組成物はその後、例えば、特に実験室特徴付けのためにシートまたはプラークの形態でカレンダー加工され、そうでなければゴム半製品(または異形要素)の形態で押出される。
組成物は、生の状態(架橋または加硫前)または硬化状態(架橋または加硫後)のいずれかであってもよく、タイヤに使用されうる半製品であってもよい。
硬化は、当業者に公知の方法で、一般的に130℃~200℃の間の温度で、圧力下において、特に硬化温度の、利用される架橋系の、考慮される組成物の架橋の速度論の、またはさらにはタイヤのサイズの関数として、例えば5~90分の間で異なりうる十分な時間にわたって実行されてもよい。
【0051】
複合材料
本発明はまた、少なくとも1種の補強要素および本発明によるゴム組成物をベースとする複合材料に関する。
「少なくとも補強要素および本発明による組成物をベースとする」複合材料という表現は、補強要素および前記組成物を含む複合材料を意味すると理解されるべきであり、組成物は、複合材料の製造の種々の段階中、特に組成物の架橋中または組成物の架橋前の複合材料の製造中に補強要素の表面と反応することが可能であった。
前記補強要素は、トレッド様要素である。これは、全体的または部分的に金属性または織物であってもよい。
特に、前記補強要素は織物の性質であってもよく、すなわち有機材料、特にポリマー材料、または例えばガラス、石英、玄武岩もしくは炭素などの無機材料から作製されてもよい。ポリマー材料は、例えば脂肪族ポリアミド、特にポリアミド6,6およびポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性型のものであってもよい。ポリマー材料は、例えば芳香族ポリアミド、特にアラミドおよび天然または人工のいずれかのセルロース、特にレーヨンなどの非熱可塑性型のものであってもよい。
特定の構成では、前記補強要素は金属表面を含む。
補強要素の金属表面は、前記要素の表面の少なくとも一部、優先的には全体を構成し、かつ本発明による組成物と直接接触することが意図される。好ましくは、補強要素は金属性であり、すなわち金属材料から形成される。
【0052】
本発明による組成物は、補強要素の少なくとも一部、優先的には前記要素の全体をコーティングする。
本発明の第1の代替形態によると、補強要素の金属表面は、補強要素の残部とは異なる材料から作製される。言い換えると、補強要素は、金属表面を構成する金属層によって少なくとも部分的に、優先的には完全に被覆される材料から作製される。金属表面によって少なくとも部分的に、優先的には完全に被覆される材料は、金属性または非金属性、好ましくは金属性の性質である。
本発明の第2の代替形態によると、補強要素は全く同じ材料から作製され、この場合補強要素は、金属表面の金属と同一の金属から作製される。
本発明の一実施形態によると、金属表面は鉄、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびこれらの金属の少なくとも1種を含む合金からなる群から選択される金属を含む。合金は、例えば鋼、青銅および黄銅などの二元または三元合金であってもよい。好ましくは、金属表面の金属は鉄、銅、スズ、亜鉛またはこれらの金属の少なくとも1種を含む合金である。より優先的には、金属表面の金属は、鋼、黄銅(Cu-Zn合金)、亜鉛または青銅(Cu-Sn合金)、さらにより好ましくは黄銅または鋼、非常に好ましくは黄銅である。
【0053】
本特許出願では、「金属表面の金属は以下に示される金属である」という表現は、金属表面が以下に示される金属から作製されることを述べることを意味する。例えば、上記に記述された「金属表面の金属は黄銅である」という表現は、金属表面が黄銅から作製されることを意味する。ある特定の金属は、周囲空気との接触の際に酸化を受けるため、金属は部分的に酸化される場合がある。
金属表面が鋼から作製される場合、鋼は、優先的には炭素鋼またはステンレス鋼である。鋼が炭素鋼である場合、その炭素含有量は、好ましくは0.01%~1.2%の間、または0.05%~1.2%の間、そうでなければ0.2%~1.2%の間、特に0.4%~1.1%の間である。鋼がステンレスである場合、好ましくは少なくとも11%のクロムおよび少なくとも50%の鉄を含む。
好ましい実施形態によると、複合材料は、上記で定義された複数の補強要素、および補強要素が埋め込まれるカレンダー加工用ゴムであって、本発明によるゴム組成物からなるカレンダー加工用ゴムを含む補強された生成物である。この実施形態によると、補強要素は、一般的に主方向に沿って並んで配置される。タイヤにおいて想定される用途では、複合材料は、これによってタイヤ補強を構成することができる。
本発明による複合材料は、生の状態(ゴム組成物の架橋前)または硬化状態(ゴム組成物の架橋後)であってもよい。複合材料は、補強要素を本発明によるゴム組成物に接触させた後で硬化される。
【0054】
複合材料は、以下の工程:
- 本発明による組成物の2つの層を生成する工程と、
- 補強要素を、2つの層の間に置くことによって2つの層で把持する工程と、
- 適切な場合、複合材料を硬化する工程と
を含む方法によって製造されてもよい。
代替的には、複合材料は、補強要素を層の一部分に置き、次いで層を折り返して補強要素を被覆し、これにより補強要素がその全長またはその長さの一部にわたって把持されることによって製造されてもよい。
層は、カレンダー加工によって生成されてもよい。複合材料の硬化中、ゴム組成物が架橋される。
複合材料がタイヤの補強として使用されることが意図される場合、複合材料の硬化は、一般的にタイヤのケーシングの硬化中に行われる。
【0055】
タイヤ
本発明の別の主題であるタイヤは、本発明による組成物または複合材料を含むという本質的な特徴を有する。タイヤは、生の状態(ゴム組成物の架橋前)または硬化状態(ゴム組成物の架橋後)であってもよい。一般的に、タイヤの製造中、組成物または複合材料は、生の状態(すなわち、ゴム組成物の架橋前)で、タイヤの硬化工程前のタイヤの構造体に堆積される。
本発明は特に、乗用車型の自動車、SUV(「スポーツ用多目的車」)、または二輪車(特にオートバイ)、または航空機、またはさらにはバン、大型車両、すなわち地下鉄、バス、重量物輸送車両(トラック、トラクター、トレーラー)またはオフロード車両、例えば大型農業車両もしくは土木車両から選択される産業車両などに装備することが意図されるタイヤに関する。
【0056】
タイヤの中では、3種類の領域を定義することができる:
・周囲空気と接触する半径方向外側領域、この領域は、トレッドおよびタイヤの外部側壁から本質的になる。外部側壁は、クラウンとビードの間の、タイヤの内部キャビティに対してカーカス補強の外側に位置し、クラウンからビードに伸長するカーカス補強の領域を完全または部分的に被覆するエラストマー層である。
・膨張ガスと接触する半径方向内側領域、この領域は一般的に、膨張ガスに対して気密であり、場合によっては内側気密層またはインナーライナーとしても公知の層からなる。
・タイヤの内部領域、すなわち外側領域と内側領域の間。この領域は、本明細書でタイヤの内部層と称される層またはプライを含む。これらは例えば、カーカスプライ、トレッド下層、タイヤベルトプライまたは周囲空気もしくはタイヤの膨張ガスと接触しない任意の他の層である。
【0057】
本明細書で定義される組成物は、タイヤの内部層に特に良好に適合する。
したがって、本発明はまた、本発明による組成物または複合材料を含む内部層を含むタイヤに関する。本発明によると、内部層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードワイヤ充填材、クラウン基部(crown feet)、デカップリング層、トレッド下層およびこれらの内部層の組合せからなる群から選択されてもよい。好ましくは、内部層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードワイヤ充填材、クラウン基部、デカップリング層およびこれらの内部層の組合せからなる群から選択される。
上記に記載された主題に加え、本発明は、以下の項目に記載される主題のうちの少なくとも1つに関する。
1.少なくとも1種のエラストマー、補強充填剤、架橋系および少なくとも1種のポリフェノール化合物をベースとするゴム組成物であって、ポリフェノール化合物が、6つの炭素原子を含む芳香族環を少なくとも3つ含み、それぞれが少なくとも2つの隣接ヒドロキシル基を有する、ゴム組成物。
2.前記ポリフェノール化合物のモル質量が600g/molより大きい、前記項目に記載の組成物。
3.ポリフェノール化合物がガロタンニンから、好ましくは没食子酸とペントースおよびヘキソースから選択されるポリオールのエステルから選択される、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
4.ポリフェノール化合物が、グルコースと没食子酸のエステルから選択される、好ましい観点では3~10個、好ましくは5~10個のガロイル単位を含むポリガロイルグルコースから選択される、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
5.ポリフェノール化合物が、トリガロイルグルコース、ペンタガロイルグルコースおよびデカガロイルグルコースから選択される、好ましくは1,2,6-トリガロイルグルコース、1,3,6-トリガロイルグルコース、1,2,3,4,6-ペンタガロイルグルコースおよびタンニン酸から選択される、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
6.ゴム組成物のポリフェノール化合物の含有量が0.1~30phrの間である、前記項目のいずれか1つに記載の組成物。
7.前記組成物がコバルト塩を有さないか、またはそれを1phr未満含有する、前記項目のいずれか1つに記載の組成物。
8.ジエン、オレフィンおよび熱可塑性エラストマーならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種のエラストマーを含む、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
9.少なくとも1種のジエンエラストマーまたは1種の熱可塑性エラストマーを含む、前記項目に記載のゴム組成物。
10.1種または複数の過酸化物化合物をベースとする架橋系を含み、前記過酸化物化合物が0.01~10phrである、前記項目に記載のゴム組成物。
11.チウラムポリスルフィド型の1種または複数の化合物をベースとする架橋系を含み、前記チウラムポリスルフィド化合物が0.5~15phrである、前記項目に記載のゴム組成物。
12.少なくとも1種の官能化エラストマーを含む、項目1~9のいずれか1つに記載のゴム組成物。
13.少なくとも1種のエポキシド官能化エラストマーを含む、前記項目に記載のゴム組成物。
14.1種または複数のポリ酸化合物をベースとする架橋系を含み、前記ポリ酸化合物が0.2~100phrである、前記項目に記載のゴム組成物。
15.共役ジエン官能基を含む少なくとも1種の官能化エラストマーを含む、項目12に記載のゴム組成物。
16.1種または複数のポリジエノフィルをベースとする架橋系を含む、前記構目に記載のゴム組成物。
17.少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含む、項目8に記載のゴム組成物。
18.架橋系を含まない、項目1~17に記載のゴム組成物。
19.分子状硫黄を有さないか、またはそれを1phr未満含む、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
20.0.5~12phrの間の優先的な含有量で使用される、硫黄ベースの架橋系を含む、項目9に記載のゴム組成物。
21.亜鉛または酸化亜鉛を有さないか、そうでなければそれらを非常に少量のみ、優先的には1phr未満、好ましくは0.5phr未満、より優先的には0.2phr未満含む、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
22.補強充填剤が、カーボンブラック、シリカまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
23.補強充填剤の含有量が20~200phrの間である、前記項目のいずれか1つに記載のゴム組成物。
24.少なくとも1種の補強要素、および前記項目のいずれか1つに記載の組成物をベースとする複合材料。
25.補強要素が金属表面を含む、前記項目に記載の複合材料。
26.前記補強要素の金属表面が、鉄、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびこれらの金属の少なくとも1種を含む合金からなる群から選択される金属を含む、項目24および25のいずれか1つに記載の複合材料。
27.金属表面の金属が、鉄、銅、スズ、亜鉛またはこれらの金属の少なくとも1種を含む合金である、項目24~26のいずれか1つに記載の複合材料。
28.金属表面の金属が黄銅または鋼である、項目24~27のいずれか1つに記載の複合材料。
29.項目1~23のいずれか1つに記載の組成物を含むタイヤ。
30.項目1~23のいずれか1つに記載の組成物を含む内部層を含むタイヤ。
【実施例
【0058】
以下の手順を使用して様々なゴム組成物を調製する:エラストマー、次に混合物の他の構成要素すべてを、その初期容器温度がおよそ60℃である内部混合機に順番に導入する(最終充填度:およそ70容積%)。次に、熱機械的作業を150℃の最大「降下」温度に達するまで1回の工程で行う。このようにして得られた混合物を回収して冷却し、30℃の外部混合機(ホモフィニッシャー)ですべて混合する。
当業者の知識に従って架橋系を添加し、第1の段階中にポリ酸架橋系、および第2の段階中に過酸化物および硫黄をベースとする架橋系を添加する。
調製されるゴム組成物を表1、2および3に提示する。
架橋ゴム組成物から金属表面を示す個々の糸の房を抽出するのに必要とされる力が測定される試験により、ゴム組成物と補強要素の間の結合の品質を決定する。この目的のために、一方では金属表面を示す補強要素としての個々の金属糸を含有し、他方では補強要素と接触された後の、架橋したゴム組成物を含むエラストマー混合物を含有する試験片の形態の複合材料を調製する。
【0059】
試験片の調製
ゴム組成物を使用して、以下のプロトコールに従って試験片の形態の複合材料を調製する:
硬化前の、互いに貼り合わせた2枚のプラークからなるゴムブロックを調製する。ブロックの2枚のプラークは同じゴム組成物からなる。ブロックの調製中に、個々の糸を生の状態の2枚のプラークの間に等距離を空けて捕捉するとともに、これらのプラークの両側に、後続の引張試験のために十分な長さを有する個々の糸の端を突出させる。次に、個々の糸を含むブロックを硬化させる。例としてこの場合では、ブロックは、170℃で組成物に応じて5分~90分の異なる時間にわたって、5.5トンの圧力下で硬化される。
個々の糸は光沢鋼から作製されるか、または黄銅もしくは亜鉛で被覆される糸である。これらの直径は1.75mmであり、黄銅または亜鉛コーティングの厚さは200nm~1μmである。
【0060】
接着試験
硬化終了後、結果として架橋ブロックおよび個々の糸から形成される試験片を、所与の速度および所与の温度(例えば、この場合では100mm/分および周囲温度)で各房を別々に試験することができるように適合された引張試験機のジョーに入れる。
房を試験片から引き剥がすための「引き剥がし」力を測定することにより、接着レベルを特徴付ける。
結果は、試験された試験片と同一の性質の個々の糸を含有する対照試験片に対して100を基準として表す。表1~3では、この対照試験片は、それぞれ組成物「C1」「C3」および「C7」から作製される。
恣意的に100と設定される対照試験片のものより大きい値は、改善された結果、すなわち試験片のものより大きい引き剥がし力を示す。
【0061】
本発明に従い、対照試験片および試験片に対して実行された接着試験の結果を表1~3に提示する。
接着試験で100より大きい値を示すことから、本発明による複合材料は、補強要素が特定の金属または合金で被覆されるかされないかにかかわらず、引き剥がしに対して大幅に改善した耐性を示す。
【0062】
過酸化物架橋
【表1】


すべての組成物はphrで示される;n.m.=測定されず
(1)天然ゴム
(2)N326
(3)Sigma-Aldrichによって供給
(4)ポリ(イソプレン co ジヒドロキシケイ皮酸メタクリレート)、Mn=6500g/mol、Mw=15300g/mol、3,4-ジヒドロキシアリール基 0.92meq/g、Specific Polymersによって供給
(5)CAS1401 55 4、Simga-Aldrichによって供給
組成物「C1」は特定のポリフェノール化合物を含まないことに留意する。カテコールグラフト化ジエンポリマーは、国際公開第2017/081387号の教示に対応する。
【0063】
二酸架橋
【表2】


すべての組成物はphrで示される
(1)エポキシ化天然ゴム、Guthrie PolymerからのENR25、
(2)シリカ160MP、RhodiaからのZeosil 1165MP、
(3)DegussaからのDynasylan Octeo、
(4)N(1,3 ジメチルブチル)N フェニル パラ フェニレンジアミン(FlexsysからのSantoflex 6PPD)、
(5)ポリ(アクリロニトリル co ブタジエン)、ジカルボキシ末端、Sigma Aldrich、Ref.418870、Mn=3800g/mol、
(6)1 ベンジル 2 メチルイミダゾール、Sigma AldrichからのCAS=13750 62 4、
(7)Sigma AldrichからのCAS=1078 61 1、
(8)Sigma AldrichからのCAS=50 99 7、
(9)Sigma AldrichからのCAS=149 91 7、
(10)Sigma AldrichからのCAS=1401 55 4。
組成物「C3」は特定のポリフェノール化合物を含まないことに留意する。
【0064】
硫黄架橋
【表3】


すべての組成物はphrで示される
(1)天然ゴム、
(2)カーボンブラックN326(ASTM規格 D 1765による)、
(3)N (1,3 ジメチルブチル) N フェニル パラ フェニレンジアミン(FlexsysからのSantoflex 6 PPD)、
(4)酸化亜鉛、工業グレード、Umicore、
(5)ステアリン(UniqemaからのPrinsterene4931)、
(6)FlexsysからのN シクロヘキシル 2 ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Santocure CBS)、
(7)Sigma AldrichからのCAS=1401 55 4。
組成物「C7」は特定のポリフェノール化合物を含まないことに留意する。