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特許7483702分散型光ファイバセンシングのための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンシングのための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20240508BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G01D5/353 B
G01H9/00 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021526397
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 AU2019051249
(87)【国際公開番号】W WO2020097682
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】2018904319
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521040466
【氏名又は名称】ファイバー センス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エングルンド、マーク アンドリュー
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0205253(US,A1)
【文献】特表2010-515094(JP,A)
【文献】特開平9-189655(JP,A)
【文献】国際公開第2018/045433(WO,A1)
【文献】特開2003-344148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
G01B 11/16
G01M 11/00-11/08
G01J 9/00-9/02
G02B 6/00
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地理的領域に分散された複数の光ファイバを含む光ファイバネットワーク上で分散型光ファイバセンシングを行うシステムであって、
前記光ファイバネットワークを介して光信号の列を繰り返し送信するための少なくとも1つの光信号送信機を備えた光信号送信装置と、
前記複数の光ファイバからの後方散乱光信号を受信するための少なくとも1つの対応する光信号受信機を含む光信号受信装置と、
前記後方散乱光信号からデータを復調し、前記データを処理して、前記光ファイバネットワーク内の光ファイバに局所的な歪み変化を誘起する前記後方散乱光信号内の重量誘起圧縮波を識別し、識別された前記重量誘起圧縮波に基づいて前記光ファイバに沿って固定位置を通過する物体の存在を検出する、プロセッサと、
を含み、
前記重量誘起圧縮波は、0~2Hzの周波数範囲にある、
システム。
【請求項2】
対応する光ファイバポートを介して前記複数の光ファイバに前記列内の光信号を順次分配するための光スイッチ装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光スイッチ装置が、複数の光ファイバポートを予め定めたスイッチング比率又は多重化比率で提供するための少なくとも1つの光スイッチを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光信号受信装置が、複数の光信号受信機を備え、前記複数の光信号受信機は、対応する前記光ファイバから前記後方散乱光信号を受信するように構成される、請求項2又は請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の光ファイバのうちの少なくとも1つは、対応する光ファイバポートを介して複数の分岐光ファイバに信号列内の光信号を順次分配するための追加の光スイッチ装置を含む、幹線用光ファイバである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の光ファイバが幹線用光ファイバであり、前記複数の光ファイバの各々が、対応する光ファイバポートを介して複数の分岐光ファイバに信号列内の光信号を順次分配するための追加の光スイッチ装置を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記光信号受信機が、前記分岐光ファイバを介して前記幹線用光ファイバから前記後方散乱光信号を受信するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
複数の光ファイバポートの予め定めた多重化比率又はスイッチング比率は、4、6、8、及び16を含む群から選択される、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの前記光信号受信機の帯域幅又は音響周波数範囲が、0Hz~20Hz、0Hz~30Hz、0Hz~80Hz、0Hz~100Hz、0Hz~250Hz、及び0Hz~1250Hzのうちの少なくとも1つの周波数範囲から選択される後方散乱光信号を検知するように構成される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記後方散乱光信号は、高周波数の音響外乱に由来する高周波数の音響信号を含み、
前記プロセッサが、前記後方散乱光信号からデータを復調し、前記データを処理して、前記重量誘起圧縮波と併せて、前記高周波数の音響外乱の少なくとも一部を識別するように構成される、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記高周波数の音響外乱は2Hzより大きい、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記高周波数の音響外乱は、2Hz~1250Hz、2Hz~100Hz、2Hz~80Hz、10Hz~1250Hz、10Hz~100Hz、10Hz~80Hz、20Hz~80Hz、及び40Hz~80Hzのうちの少なくとも1つに対応する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記重量誘起圧縮波高周波数の音響信号とを相関させて、低周波数及び高周波数の両方の外乱の発生源である物体に関する追加データを抽出する、請求項10から請求項12までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
地理的領域に分散された複数の光ファイバを含む光ファイバネットワーク上で分散型光ファイバセンシングを行う方法であって、
少なくとも1つの光信号送信機を用いて、光信号の列を前記光ファイバネットワークを介して繰り返し送信することと、
少なくとも1つの対応する光信号受信機を用いて、前記複数の光ファイバからの後方散乱光信号を受信することと、
前記後方散乱光信号からデータを復調し、前記データを処理して、前記光ファイバネットワーク内の光ファイバに局所的な歪み変化を誘起する前記後方散乱光信号内の重量誘起圧縮波を識別し、識別された前記重量誘起圧縮波に基づいて前記光ファイバに沿って固定位置を通過する物体の存在を検出することと、を含み、
前記重量誘起圧縮波は、0~2Hzの周波数範囲にある、
を含む方法。
【請求項15】
対応する光ファイバポートを介して前記複数の光ファイバに前記列内の光信号を順次分配することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの前記光信号受信機の帯域幅又は音響周波数範囲が、0Hz~20Hz、0Hz~30Hz、0Hz~80Hz、0Hz~100Hz、0Hz~250Hz、及び0Hz~1250Hzのうちの少なくとも1つの周波数範囲から選択される後方散乱光信号を検知するように構成される、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記後方散乱光信号は、2Hzを超える高周波数の音響外乱に由来する高周波数の音響信号を含み、
前記方法が、前記後方散乱光信号からデータを復調し、前記データを処理して、前記重量誘起圧縮波と併せて、前記高周波数の音響外乱の少なくとも一部を識別することを含む、
請求項14から請求項16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記重量誘起圧縮波前記高周波数の音響信号とを相関させて、低周波数及び高周波数の両方の外乱の発生源である物体に関する追加データを抽出する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシングのための方法及びシステムに関するものであり、特に、複数の対応する光ファイバ経路を有する複数の光ファイバポートにわたる、分散型光ファイバセンシングのための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた分散型音響センシングは、光ファイバに沿った周囲領域の音響イベントを検出することができる。音響イベントは、ガス管、水道管、又は電力ケーブルの近くでの地下掘削や、歩行者及び道路交通活動などのインシデントによって引き起こされ得る。異なるタイプのインシデントは、音響イベントに関して異なる音響シグネチャを発生させ得る。したがって、音響イベントの監視は、これらのインシデントの防止や識別のために、あるいは歩行者及び道路交通の場合には道路利用者の追跡のために、警報を生成することを可能にする。
【0003】
音響検出のための従来の直感的なアプローチは、対象物又は対象物の範囲の音響シグネチャを識別し、そのような対象物に対して最も高いエネルギーに対応する周波数帯域を特定し、次いでその周波数帯域に検出器を設定するというものであった。例えば、車両の場合、タイヤ騒音に支配される典型的な高エネルギー帯域は、10~80Hzである。都市環境のような密集した音響環境では、多くの他の周囲雑音がこの帯域を占有するため、信号の比較的高い振幅にもかかわらず、低い信号対雑音比が得られる。
【0004】
さらに、より高い周波数帯域の検出には、対応する高いサンプリングレートが必要となる。このため、特に、複数の光ファイバ経路を使用する場合は、光送信機及び光受信機の容量が制限される。
【0005】
本明細書における任意の従来技術の参照は、この従来技術が任意の法域においても一般的な知識の一部であることを、又は、この従来技術が当業者によって他の従来技術と関連すると理解され、見なされ、及び/又は組み合わされることが合理的に期待され得ることを、承認するものでも、任意の形態で示唆するものでもなく、また承認や示唆と解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、地理的領域に分散された複数の光ファイバを含む光ファイバネットワーク上で分散型光ファイバセンシングを行うシステムが提供され、このシステムは、光ファイバネットワークを介して光信号の列を繰り返し送信するための少なくとも1つの光信号送信機を備えた光信号送信装置と、対応する光ファイバポートを介して複数の光ファイバに列内の光信号を順次分配するための光スイッチ装置と、複数の光ファイバからの後方散乱光信号を受信するための少なくとも1つの対応する光信号受信機を含む光信号受信装置であって、後方散乱光信号が光ファイバセンシング信号を誘起する外乱の影響を受ける光信号受信装置と、後方散乱光信号からデータを復調し、データを処理して外乱を識別するプロセッサと、を含み、少なくとも1つの光信号受信機の帯域幅又は周波数範囲は、0Hz~100Hz、0Hz~80Hz、0Hz~60Hz、0Hz~40Hz、0Hz~30Hz、0Hz~20Hz、又は0Hz~2Hzのうちの少なくとも1つから選択された低減された周波数範囲で後方散乱光信号を検知するように構成されており、それにより対応する必要なサンプリングレートを低減し、予め定めた多重化比率又はスイッチング比率、又は光信号送信機/光信号受信機あたりに提供される光ファイバポートの数を増加させる。
【0007】
いくつかの実施形態では、光スイッチ装置が、複数の光ファイバポートを予め定めたスイッチング比率又は多重化比率で提供するための少なくとも1つの光スイッチを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、光信号受信装置が、複数の光信号受信機を備えることができ、複数の光信号受信機は、対応する光ファイバから後方散乱光信号を受信するように構成される。複数の光ファイバのうちの少なくとも1つは、対応する光ファイバポートを介して複数の分岐光ファイバ(optical branch fibre)に信号列内の光信号を順次分配するための追加の光スイッチ装置を含む、幹線用光ファイバ(optical trunk fibre)であってもよい。複数の光ファイバが幹線用光ファイバであってもよく、複数の光ファイバの各々が、対応する光ファイバポートを介して複数の分岐光ファイバに信号列内の光信号を順次分配するための追加の光スイッチ装置を含んでいてもよい。光信号受信機は、分岐光ファイバを介して幹線用光ファイバから後方散乱光信号を受信するように構成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、予め定めた多重化比率又はスイッチング比率は、4、6、8、及び16を含む群から選択されてもよい。
【0010】
本開示の第2の態様によれば、地理的領域に分散された複数の光ファイバを含む光ファイバネットワーク上で分散型光ファイバセンシングを行うシステムが提供され、このシステムは、光ファイバネットワークを介して光信号の列を繰り返し送信するための少なくとも1つの光信号送信機を備えた光信号送信装置と、複数の光ファイバからの後方散乱光信号を受信するための少なくとも1つの対応する光信号受信機を含む光信号受信装置であって、後方散乱光信号が、低周波数の重量誘起外乱を含む光ファイバセンシング信号を誘起する外乱の影響を受ける、光信号受信装置と、後方散乱光信号からのデータを復調し、データを処理して低周波数の重量誘起外乱の少なくとも一部を識別するプロセッサと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、低周波数の重量誘起外乱は、0Hz~2Hzの周波数範囲にあってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光信号受信機の帯域幅又は音響周波数範囲が、0Hz~20Hz、0Hz~30Hz、0Hz~80Hz、0Hz~100Hz、0Hz~250Hz、及び0Hz~1250Hzのうちの少なくとも1つの周波数範囲から選択される後方散乱光信号を検知するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、光ファイバセンシング信号は、高周波数の音響外乱に由来する高周波数の音響信号を含んでもよく、プロセッサが、後方散乱光信号からデータを復調し、データを処理して、重量誘起外乱と併せて、高周波数の音響外乱の少なくとも一部を識別するように構成されてもよい。高周波数の音響外乱は2Hzより大きくてもよい。高周波数の音響外乱は、2Hz~1250Hz、2Hz~100Hz、2Hz~80Hz、10Hz~1250Hz、10Hz~100Hz、10Hz~80Hz、20Hz~80Hz、及び40Hz~80Hzのうちの少なくとも1つに対応し得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、低周波数の音響外乱と高周波数の音響外乱とを相関させて、両方の外乱の発生源である物体に関する追加データを抽出することができる。
【0014】
本開示の第3の態様によれば、地理的領域に分散された複数の光ファイバを含む光ファイバネットワーク上で分散型光ファイバセンシングを行う方法が提供され、この方法は、少なくとも1つの光信号送信機を用いて、光信号の列を光ファイバネットワークを介して繰り返し送信することと、対応する光ファイバポートを介して複数の光ファイバに列内の光信号を順次分配することと、少なくとも1つの対応する光信号受信機を用いて、複数の光ファイバからの後方散乱光信号を受信することであって、後方散乱光信号が光ファイバセンシング信号を誘起する外乱の影響を受けることと、後方散乱光信号からデータを復調し、データを処理して前記外乱を識別することと、0Hz~100Hz、0Hz~80Hz、0Hz~60Hz、0Hz~40Hz、0Hz~30Hz、0Hz~20Hz、又は0Hz~2Hzのうちの少なくとも1つから選択された低減された周波数範囲で後方散乱光信号を検知し、それにより対応する必要なサンプリングレートを低減し、予め定めた多重化比率又はスイッチング比率、又は光信号送信機/光信号受信機あたりに提供される光ファイバポートの数を増加させることと、を含む。
【0015】
本開示の第4の態様によれば、地理的領域に分散された複数の光ファイバを含む光ファイバネットワーク上で分散型光ファイバセンシングを行う方法が提供され、この方法は、光信号の列を光ファイバネットワークを介して繰り返し送信することと、複数の光ファイバからの後方散乱光信号を受信することであって、後方散乱光信号が、低周波数の重量誘起外乱を含む光ファイバセンシング信号を誘起する外乱の影響を受けることと、後方散乱光信号からのデータを復調し、データを処理して低周波数の重量誘起外乱の少なくとも一部を識別することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、低周波数の重量誘起外乱は、0Hz~2Hzの低周波数範囲にあってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの前記光信号受信機の帯域幅又は音響周波数範囲が、0Hz~20Hz、0Hz~30Hz、0Hz~80Hz、0Hz~100Hz、0Hz~250Hz、及び0Hz~1250Hzのうちの少なくとも1つの周波数範囲から選択される後方散乱光信号を検知するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、光ファイバセンシング信号は、2Hzを超える高周波数の音響外乱に由来する高周波数の音響信号を含み、本方法が、後方散乱光信号からデータを復調し、データを処理して、重量誘起外乱と併せて、高周波数の音響外乱の少なくとも一部を識別することを含む。
【0019】
本発明のさらなる態様、及び前段落で説明された態様のさらなる実施形態は、例示として与えられ、添付の図面を参照して、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aは、単一の受信機を備えた分散型音響センシングシステムの一例を示す概略ブロック図である。
図1B図1Bは、図1のシステムの一部を形成する光送信機の一実施形態のより詳細な概略図を示す。
図1C図1Cは、光受信機の一実施形態の概略図を示す。
図2図2は、複数の受信機を備えた分散型音響センシングシステムの別の一例を示す概略図である。
図3図3は、ポート数が多く、複数の受信機を備えた分散型音響センシングシステムの別の一例を示す概略図である。
図4図4は、光ファイバケーブルに沿って固定位置を通過する車両用の生信号、ACタイプの信号及びDCタイプの信号の時間対振幅プロットを示す図である。
図5A図5Aは、0~2Hzの帯域においてシステムによって生成された電気信号の経時的な密度プロットのいくつかの例を示す。
図5B図5Bは、0~2Hzの帯域においてシステムによって生成された電気信号の経時的な密度プロットのいくつかの例を示す。
図6A図6Aは、0~2Hz帯域、2~20Hz帯域、及び20~250Hz帯域において、システムによって生成される電気信号の経時的な密度プロットの例を示す。
図6B図6Bは、0~2Hz帯域、2~20Hz帯域、及び20~250Hz帯域において、システムによって生成される電気信号の経時的な密度プロットの例を示す。
図6C図6Cは、0~2Hz帯域、2~20Hz帯域、及び20~250Hz帯域において、システムによって生成される電気信号の経時的な密度プロットの例を示す。
図7A図7Aは、システムによって生成された電気信号の経時的な密度プロットに関する、0~2Hz(DCタイプ)帯域と10~80Hz帯域との比較の別の例を示す。
図7B図7Bは、システムによって生成された電気信号の経時的な密度プロットに関する、0~2Hz(DCタイプ)帯域と10~80Hz帯域との比較の別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
開示されたシステム及び方法は、光ファイバによる分散型音響センシングを利用して、都市などの地理的エリア内の空間的及び時間的な監視とモニタリングデータとを提供するものであり、地理的エリア全体に分散された光ファイバのアレイを利用する。このようなセンシング技術は、近くで発生した音響イベントが、光ファイバに沿って対応する屈折率の局所的な摂動(perturbation)を引き起こすことに依存している。音響イベントの必要な近さは、センシング機器のノイズフロア、背景ノイズ、及び音響イベントと光ファイバとの間にある媒体(又は複数の媒体)の音響特性に依存する。屈折率の摂動により、光ファイバに沿って伝送され、光ファイバの長さに沿って(例えば、レイリー後方散乱又は他の同様の散乱現象によって)分散して後方散乱された光質問信号は、反射光の経時的な(例えば、強度及び/又は位相の)変動(fluctuations)として現れる。変動の大きさは、音響外乱の激しさ又は近さに関係している。分散した後方散乱の時間スケールに沿った揺らぎのタイミングは、音響イベントの場所に関係する。
【0022】
本開示における光ファイバ検出信号とは、センシング用光ファイバの光学特性に検出可能な変化を与えるあらゆる伝搬波又は信号を含むものと解釈すべきであり、一般には、光ファイバに歪みを誘起し、その結果として屈折率が変化することである。システムで検出されるこれらの伝搬信号には、従来の音響信号に加えて、低周波の地震波、その他の低周波の振動、及び、例えば光ファイバに局所的な歪み変化を誘起する重み誘起の圧縮波のような、ゆっくりと変化する超低周波の(DCタイプの)信号が含まれ得る。
【0023】
1つの高レベルの例では、分散型ファイバセンシング(DFS)で使用するためのシステム100が、図1Aに示されている。DFSシステム100は、受信機、例えば、コヒーレント光時間領域反射率計(C-OTDR)102を含む。C-OTDR102は光源104を含み、光源104は、複数の光パルスを含む光パルス列の形態で光質問フィールド106を放出する。
【0024】
C-OTDR102は、光源104からの光をポート119-1を介してポート119-2に導くように構成された光サーキュレータ119を含むか、又は光サーキュレータ119に接続することができる。また、光サーキュレータ119は、後方反射光をポート119-2を介してポート119-3に導く。ポート119-3から出力された反射光は、C-OTDR102に含まれる光受信機108に供給される。光信号受信機と光ファイバとの接続には、他のデバイスを使用してもよいことが理解されよう。他のデバイスには、光カプラ及びアレイ導波路グレーティングが含まれるが、これらに限定される訳ではない。
【0025】
光受信機108は、分散して散乱された反射光110を検出し、時間的に分解された反射光強度に比例した振幅を有する対応する電気信号112を生成するように構成された光検出器の形態である。時間スケールは、光受信機108に対する距離スケールに変換することができる。図1Aの挿入図は、ある特定の瞬間における距離に対するそのような信号の振幅の概略的プロットを示している。
【0026】
また、DFSシステム100は、電気信号112の変動116を処理するように構成された、C-OTDR102内の又はそれとは別個の処理ユニット114を含む。これらの変動は、任意の1点において、また一連の異なる空間点に沿って、多数の異なる周波数を含む信号であり、処理ユニットは、その信号を、光ファイバグリッド周囲の音響や他の外乱の性質及び動きのデジタル表現に変換することになる。
【0027】
デジタル化された電気信号112、任意の測定された変動116、及び/又はそれに関連する処理されたデータは、記憶ユニット115に格納されてもよい。記憶ユニット115は、処理ユニット114が命令を実行し、計算し、演算し、又は他の方法でデータを処理するための、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリを含んでいてもよい。記憶ユニット115は、処理ユニット114が信号処理の前後にデータを格納するため、及び/又は後でデータを検索するために、1つ又は複数のハードディスクドライブなどの不揮発性メモリをさらに含んでいてもよい。処理ユニット114及び記憶ユニット115は、多数の物理ユニットに分散させることができ、クラウドストレージやクラウド処理のように、遠隔ストレージや遠隔処理を含んでいてもよい。この場合、処理ユニット114及び記憶ユニット115は、より一般的にはクラウドコンピューティングサービスとして定義することができる。
【0028】
保存されている光ファイバ検出信号から得られた生の音響データ及び他のデータに加えて又はその代替として、生の光信号をA/Dコンバータによってデジタル化し、生の光データとして保存することができる。これには実質的により多くの記憶容量を必要となるが、サンプリング周波数などにより分解能の低下を招くことなく、後方散乱されたすべての光信号/データの完全性を維持すると共に、すべての時間及び位置に基づくデータを保持することができるという利点がある。次いで、この保存された光データは、後の段階で分析のために取り出すことができる。保存されている場合、光データを取り出し、処理し、及び再処理して、分析のための新しい音響データ及び他のデータを提供することができる。システム100は、1つ又は複数の遠隔携帯端末又は固定端末から検索要求を受信するための通信インターフェース117(例えば、無線又は有線)を含んでいてもよい。
【0029】
光スイッチ500は、DFSユニット100と、複数の光ファイバ設備(105A、105B及び105N)のうちのいずれか1つとの間で、それぞれの光ファイバポート502A、502B及び502Cを介して、光を結合するように構成される。ファイバ設備又は経路は、1つ又は複数のファイバ経路終端領域111で終端してもよい。1つの構成では、光スイッチ500は、複数の光ファイバポート502A~502N及び対応する光ファイバ経路105A~105Nを介して、光パルス列106を、順次、時間多重化する。従って、光ファイバ経路当たりのパルスレートは、パルス列106のソースレートをNで割ったものに等しい。ここで、Nは、光ファイバ経路の数である。パルスレートが低下すると、それに対応して、各光ファイバ設備で検出される信号の光信号対雑音比(OSNR)の低下をもたらすことになる。
【0030】
図1Bは、光源104、即ち、光送信機のより詳細な配置を示す。光源104は、例えば分布帰還型レーザ(DFB)などのレーザ202を含み、このレーザ202は、第1のアイソレータ204Aを介してレーザビームを向ける。一構成では、レーザ202からの光の一部は、処理目的のための参照信号として光/光学(light/optical)受信機108に供給される。例えば、レーザ202からの光は、例えば90/10光カプラ206のようなカプラに入射することができ、光の10%は、直接経路を介して光受信機108に供給され、光の残りの部分(90%)は、第2のアイソレータ204Bを介して音響光学変調器208に供給される。音響光学変調器208は、光のパワー、周波数、位相、及び/又は空間方向を制御するように構成されている。音響光学変調器、及びニオブ酸リチウム電気光学変調器などの電気光学変調器を含むが、これらに限定されない様々なタイプの変調器を使用することができる。
【0031】
次いで、変調された出力信号は、光増幅器210に供給され、その結果、変調された信号が全体的に増幅されて、質問信号の到達範囲を広げることができる。光増幅器の1段のみが図示されているが、他の実施形態では多段の光増幅器が組み込まれてもよい。一例では、光増幅器210は光カプラ210Bを含み、光カプラ210Bは、ラマン増幅のためにポンプレーザ210Aと変調信号とを伝送路で結合することができる。ポンプ波長と信号波長との間の光子-光子相互作用がファイバ内で発生し、その結果、信号光子が放出され、信号の増幅が行われる。別の例では、光増幅器210は、ポンプ源210A、カプラ210B、及びエルビウムのような希土類不純物を添加した光ファイバ210Cを含む、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)であってもよい。光増幅器210の出力は、出力変調信号をフィルタリングするために光フィルタ212に供給されてもよい。また、光減衰器214を使用して、出射光のパワーを調節してもよい。
【0032】
図1Cは、単一の光又は光学受信機108の配置を示す。光受信機108は、カプラ206からの45度偏光ビームスプリッタ108G、光カプラ(108A、108B、108C及び108D)、及び光検出器(108E及び108F)を含んでもよい。光カプラ108Aは、サーキュレータポート119-3から受信した反射光を、光カプラ108C及び108Dにそれぞれ提供される2つの45度偏光部分に分割することができる。また、光カプラ108Bは、図1Cに示すように、光源104から直接得られ、45度偏光ビームスプリッタ108Gを通過した参照信号を、光カプラ108C及び108Dにそれぞれ供給される2つの部分に分割することができる。一例では、光カプラ108C及び108Dは、3dBカプラであってもよく、3dBカプラは、2つの入力(一方は受信した反射光の一部であり、他方は参照信号の一部である)をそれぞれ組み合わせて、2つの入力の組み合わせを2つのポートを介して出力してもよい。光カプラ108Cの2つの出力は光検出器108Eに供給され、光カプラ108Dの2つの出力は光検出器108Fに供給される。光学検出器(optical detector)(108E及び/又は108F)は、光検出器(photodetector)であってもよい。
【0033】
別の構成では、分散型音響センシングのためのシステムは、図2に示すように、複数の光受信機109A、109B、...及び109Nを含んでいてもよい。図1Aに示すように、光スイッチ500の前に光サーキュレータ119を設ける代わりに、光ファイバ設備(105A、105B及び105N)の各々に、対応する光サーキュレータ(119A、119B及び119N)を設けてもよい。光ファイバ設備(105A、105B及び105N)の各々を透過し、対応する光サーキュレータ(119A、119B及び119N)から出力された反射光は、対応する光受信機109A、109B及び109Nに供給される。光受信機(109A、109B及び109N)の各々は、図1Cに示すように、光受信機108と同様の構造を有している。このマルチ受信機の構造によれば、光ファイバ設備の各々が独自の受信回路を有しているので、後方散乱パルスが飛行時間によって制限されることがないため、システムの全体的な入射パルスレート及び後方散乱パルスレートを増加させることができ、各光ファイバ設備で動作するOSNRを向上させ得ることが、当業者には理解されよう。これは、入射パルスレートを最大10倍まで増加させるだけで達成されるため、複数のポートに順次分配されるパルス列は、依然として比較的高い周波数を有している。比較的高いパルスレートでは、光ファイバケーブルを通過する飛行時間を超える可能性があり、単一の受信経路では、出力パルスと入力パルスとが互いに干渉することになる。別個の戻り経路を有する別個の受信機は、このような状況が発生するのを防止するか、又は少なくともその可能性を低減する傾向がある。
【0034】
図3に示す別の構成では、光ファイバ設備(105A、105B及び105N)の各々が、対応する光サーキュレータ(119A、119B及び119N)の後に、対応する光スイッチ(500A、500B及び500N)を備えることで、複数の受信機を備えた高ポート数の構造を形成することができる。光スイッチ(500A、500B及び500N)の各々は、DFSユニット100と複数の光ファイバ設備のうちのいずれか1つとの間で、光を結合するように構成されており、例えば、集合的に105A-1、105A-2…105A-Nは、光スイッチ500Aと共に構成され、集合的に105N-1、105N-2…105N-Nは、光スイッチ500Nと共に構成されている。この構成では、スイッチ500A~500Nの数にスイッチ1個当たりの光ファイバ105A-1~105A-N設置数を乗じた関数として、ファイバポートの数が劇的に増加する可能性があり、光受信機の数は、図2の実施形態のものよりも増加しないことが、当業者には理解されよう。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表1~表4は、ファイバあたりに必要とされる音響周波数の範囲の低下の影響により、システムに必要な光受信機の数を実質的に減らし、光受信機の数の関数としての光ファイバの光伝送(fibre lit)の全長を実質的に増加させることができる例を提供する。各ファイバの想定長さ(A)は50km、最大サンプリングレートでのシステムの音響周波数の範囲(B)は250Hzとした。各表のC列は、1本のファイバあたりに必要な3つの異なる音響周波数の範囲、即ち、250Hz、100Hz、30Hzを示している。D列に示すdB単位のSNRヘッドルームは、パルスレートの低下に伴うSN比の低下に対するシステムの許容範囲(tolerance)を示している。ファイバあたりの周波数範囲が250Hzの場合、時分割多重方式で任意のファイバポートを追加するためのSNRヘッドルーム(3dB)がないことが顕著にわかる。したがって、E列はナイキスト基準

に基づいて計算された理論上の最大ファイバポートを示しており、250Hzで3dBのヘッドルームの場合は1に等しい。F列は、システム内の光受信機の数を示しており、即ち、表1では2個、表2では4個、表3では6個、及び表4では16個となる。G列は、理論上の最大ファイバポート(E)とD列のSNRヘッドルームとを比較したときの、光受信機あたりのファイバポート数の最悪のケースをまとめたものである。したがって、H列に記載されるように、システム(即ち、センシングノード)によってサポートされるポート数は、光受信機あたりの最大の多重化比率(Mux ratio)とシステム内の光受信機の数との丸められた積、即ち、

の関数として計算される。したがって、システムで光伝送されるファイバの全長は、各ファイバの長さ(A)とシステム内のファイバポートの総数(H)との積、即ち、

の関数として計算される。
【0040】
C列から明らかなように、ファイバ1本あたりの音響周波数の範囲を最初に100Hzに下げ、次に30Hzに下げると、システム内の帯域幅とノイズの減少により、SNRヘッドルームがそれぞれ6dBと9dBに増加する。ストローブ(be strobed)できるファイバポートの最大理論数は、それぞれ2.5及び8.3に増加する。表1で光受信機の数が2個である場合、センシングノードのファイバポートの数は、それぞれ5個と16個に増加する。表2~表4から、センシングノードのファイバポートの数が、光受信機の数に比例して増加し、光受信機が16個の場合は40個、126個まで増加することが明らかに分かる。表4の最終的な構成では、16個の光受信機のみを使用して最大6320kmのファイバに光伝送させることができ、これは光受信機1個あたり395kmに相当する。これは、特に既存の光ファイバネットワークを利用する場合に、ハードウェア及びリソースを最適化するという点で大きな利点を表す。その結果、特に光受信機1個あたりに提供されるファイバの長さ(km)に関して、ハードウェアリソースを効率的に使用することで、より広範囲で高密度なカバレッジを提供することができる。
【0041】
図4は光ファイバケーブルに沿って固定位置を通過する車両の生の又はフィルタリングされていない受信音響信号400の例を示す。受信音響信号400は、主にACタイプの信号401(例えば、約2Hzより高い又は実質的に高い周波数を含む)と、主にDCタイプの信号402(0~約2Hzの間の周波数を含む)とを含む。DCタイプの帯域は、ケーブルに直接的にかかる歪みを示す。この歪みは、光ファイバケーブルの上の領域で生じる総重量の変化に関連しており、重量と車両のケーブルからの近接度との積の関数として示されている。
【0042】
DC帯域では、車両の信号振幅が著しく小さい一方で、この周波数帯には、ノイズを導入し、これにより検出性能を低下させるような、他の周囲音源がほとんど存在しない。これは、例えば、振幅が大きいにもかかわらず、高周波数信号を覆い隠すような大量の周囲ノイズが存在する、10~90Hzの高周波数帯域とは対照的である。これにより、DC帯域では平均信号振幅が小さいにもかかわらず、より高い周波数のACタイプの帯域と比較して、DCタイプの帯域での移動物体検出の信号対雑音比(SNR)がより高くなるという結果をもたらす可能性がある。
【0043】
高周波数帯域の高ノイズクラッタ(high noise clutter)に対して、DCタイプの帯域が物体追跡に使用され得ることを、当業者であれば理解できるであろうが、これは、実質的に小さい振幅を有する低周波数信号を識別し分離する動機は前もってないという意味で、直観的ではない。AC及びDCという用語は、電気工学用語から借用されたもので、電流が一定であるか交流であるかに関連しており、したがって、DCの周波数成分は漸近的にゼロに近づき、一般に0~2Hzであり、ACの周波数成分は2Hzより大きく、典型的には40Hzより大きいが、40Hz以下でもよいことが理解されよう(低周波数の音響信号では10Hz以下であってもよい)。DCの周波数範囲は、この帯域の信号がケーブル上の物体の重量の移動に起因することを考慮して設定される。このため、信号の周波数は、例えば、車両が所定のDASチャネルを通過するのに要する時間周期の逆数である。例えば、チャネル幅が10mの場合、時速60kmで物体が通過するのに要する時間は0.6秒であり、これに対応する周波数範囲は2Hz未満のオーダとなる。車両速度が増加するに従い、チャネル幅は減少する(時速120km、チャネル幅5mの場合、時間周期は0.15秒で、周波数は約6.7Hzという結果となる)。この周波数では、ノイズレベルが高くなるため、質量の大きい車両の場合でも、0~2Hzの範囲よりも重量誘起信号を拾い難くなる。逆に、ケーブルが深く埋まっておらず、ケーブル周囲の材料の重量又や応力伝達特性が良好であるという条件下では、ゆっくり移動する物体は、歩行者のように質量の小さい物体であっても、一般に重量誘起信号を拾い易くなる。
【0044】
また、所与の移動物体に対するDCタイプの信号振幅は、移動物体の速度に対する依存性が制限されている可能性があり、これも選択されない別の理由であり、この低周波数帯域の選択は直観に反するものである。しかしながら、この周波数帯域は、低速で移動する比較的重い物体や、上述したような特定の条件下でのより軽い物体の検出や観察に使用することができる。対照的に、AC信号の振幅は、移動物体の速度の二乗に比例して増減する。例えば、時速60kmで走行する同じ車両が、時速15kmで走行する車両よりも16倍多くのタイヤノイズを発生させる可能性がある。従って、特に高周波数のタイヤノイズがそれほど顕著でない場合に、低速で密度の高いトラフィックにDC帯域を使用することができることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0045】
更に、DC信号の振幅は、光ファイバケーブルに対する横方向のオフセットによって急激に減少する。DC帯域での測定は、光ファイバの歪みの変化を通して、物体の直接的な重量(応力)を測定することを指す場合はある。応力とひずみの関係は一般に線形ではなく、対象物と光ファイバとの間の材料に依存する。走行中の車両の例では、主にタイヤノイズからのAC信号がDC信号よりも遠くまで伝搬することがある。特に、高速道路の車線のように、横方向にオフセットしたさまざまな位置が可能である場合には、同じ物体についてAC帯域とDC帯域とを比較することで、対象物体とケーブルとの間の距離を推定することができる。また、デュアルセンシング方式も使用することができる。この場合、低速で移動するトラフィックの検知にはDCセンシングが使用され、より高速で移動する疎なトラフィックの検知にはACセンシングが使用される。AC信号とDC信号の両方を同時に取り出して処理することで、最適な結果を得ることができる。これらの信号は、高速フーリエ変換によって処理され、DC帯域(例えば、0Hz-0.2Hz、0Hz-2Hz)とAC帯域(例えば、2Hz-20Hz、10Hz-80Hz、又は10Hz-1250Hz、40Hz-1250Hz、40Hz-80Hzなどの任意の他の選択されたAC帯域)の周波数が分離される。最適な周波数範囲は、検出用光ファイバの位置と、検出用光ファイバの近傍にある材料の伝送特性の関数である。また、最適範囲は、外乱を発生させている物体と検出用光ファイバとの歪み結合伝達関数の性質にも関係している。次に、2つの出力を合計するか、又はその他の方法で組み合わせて、特定の位置に対する出力信号を最適化することができる。一般に、DC信号は、近接位置に対してより高い精度を提供すし、一方、AC信号は、一般化された位置を提供し、これはより遠くの物体の場合に役立つ可能性がある。
【0046】
さらに、特にパイプラインのような重要なインフラの近くでは、掘削機のような動きの遅い重い物体を効果的に追跡することができ、掘削からの音響AC信号や重量と距離の関数としてのDC信号を検知し、監視することができる。また、DC帯域が、滑走路を走行する航空機の追跡のような、他の重くて動きの遅い用途にも実用的であることを、当業者であれば理解できるであろう。航空機のエンジンからの著しい騒音にもかかわらず、エンジンから空気を通って地面への、さらには光ファイバへの音響結合は、車輪を介した航空機の重量による光ファイバの歪みの直接的な変調と比較して比較的弱い。
【0047】
図5A及び図5Bは、DC帯域の検出能力を実証するために、0Hz~2HzのDCタイプの帯域内でシステムによって生成された電気信号の経時的な密度プロットのいくつかの例を示す。図において、比較的一定の勾配を有する直線のトレースなどの特徴は、DFSユニット100によって検出された関連する音響イベントを引き起こす、比較的一定の速度で移動する物体(勾配は速度を示す)と関連している。図5Aは、高いSN比を有する背景交通に対する、低速で移動する物体のトレース510A及び510Bを明確に示しており、これは時速3kmのゴミ収集車として観察される。DCバンドの別の例では、図5Bは、ゆっくりとUターンを行う車のトレース511を提供する。図6A図6B及び図6Cは、それぞれ0Hz~2Hzの帯域、2Hz~20Hzの帯域、及び20Hz~250Hzの帯域において、システムによって生成される電気信号の経時的な密度プロットの例を示す。この比較は、トレース610を提供するゆっくりと移動する物体が、高周波数帯域(即ち、AC帯域)と比較して、DC帯域においてより高いSN比を有することを示している。図7A及び図7Bは、それぞれ0Hz~2Hzの帯域及び10Hz~80Hzの帯域において、システムによって生成される電気信号の経時的な密度プロットの他の例を示す。図示するように、比較的垂直なトレース710を提供するゆっくりと移動する物体は、高周波数帯と比較して、DC帯域(0Hz~2Hz)においてより高いSN比を有する。
【0048】
本明細書に開示され、定義された本発明は、本文、例、又は図面から言及され、又は明らかな個々の特徴のうちの2つ以上の代替的な組合せのすべてに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせのすべては、本開示の様々な代替物を構成する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B