(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】整流器に基づく電力スイッチ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240508BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2021528889
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 GB2019053293
(87)【国際公開番号】W WO2020104803
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521219132
【氏名又は名称】マクラーレン、アプライド、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MCLAREN APPLIED LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100187160
【氏名又は名称】副田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、マニュエル、ド、ソウサ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージオス、シー. クリスティディス
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシオス、ナナコス
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0197511(US,A1)
【文献】特開2017-222203(JP,A)
【文献】特開2006-081309(JP,A)
【文献】特開平10-248237(JP,A)
【文献】特開2018-042431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0309357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギ貯蔵装置と電気機械との間を仲立ちするように構成された電力変換機構であって、
第1の複数のパワーモジュールを備えており、前記電気エネルギ貯蔵装置と前記電気機械との間の電流の方向を第1の方向または前記第1の方向とは反対の第2の方向のいずれかに制御するように構成された
、前記電気エネルギ貯蔵装置と接続される電子スイッチング装置と、
第2の複数のパワーモジュールを備えており、前記電気エネルギ貯蔵装置と前記電気機械との間で前記電流を整流するように構成された
、前記電子スイッチング装置と前記電気機械の間に接続されるパワーインバータと
を備えており、
前記電子スイッチング装置および前記パワーインバータの各パワーモジュールは、パワーコンポーネントの同一の配置を備えている、電力変換機構。
【請求項2】
前記電子スイッチング装置は、2つのパワーモジュールを備える、請求項1に記載の電力変換機構。
【請求項3】
前記パワーインバータは、3つのパワーモジュールを備える、請求項1または2に記載の電力変換機構。
【請求項4】
前記
電子スイッチング装置の前記パワーモジュールは、並列構成にて配置され、前記パワーインバータの前記パワーモジュールは、並列構成にて配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項5】
第1のパワーインバータおよび第2のパワーインバータを備えており、前記2つのパワーインバータは、パワーモジュールの同じ構成を備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項6】
前記電子スイッチング装置および前記パワーインバータの各パワーモジュールは、ハーフブリッジの構成にて配置された2つのパワー半導体スイッチを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項7】
前記パワー半導体スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタである、請求項6に記載の電力変換機構。
【請求項8】
前記パワー半導体スイッチは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である、請求項6に記載の電力変換機構。
【請求項9】
各々の絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、対応するダイオードとの逆平行の構成にて配置されている、請求項7または8に記載の電力変換機構。
【請求項10】
1つ以上のパワーモジュールとやり取りをするように構成された第1のドライバ基板、第2のドライバ基板、および冷却システムをさらに備えており、
前記電子スイッチング装置および前記1つ以上のパワーインバータの両方は、前記第1のドライバ基板、前記第2のドライバ基板、および前記冷却システムに電気的に接続されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項11】
前記電力変換機構の前記パワーモジュールは、パワーモジュールの2つの別個の列へと配置され、冷却装置が、水平に、かつパワーモジュールの2つの隣接する列の平坦な表面の間に配置されている、請求項10に記載の電力変換機構。
【請求項12】
前記パワーモジュールおよび対応する共通コンポーネントの配置は、実質的に平坦な構成で構成されている、請求項10または11に記載の電力変換機構。
【請求項13】
パワーモジュールの第1の列が、前記第1のパワーインバータの前記3つのパワーモジュールおよび前記電子スイッチング装置の第1のパワーモジュールを含み、
パワーモジュールの第2の列が、前記第2のパワーインバータの3つのパワーモジュールおよび前記電子スイッチング装置の第2のパワーモジュールを含む、
請求項5
を引用する請求項11に記載の電力変換機構。
【請求項14】
1つ以上のパワーモジュールが、前記パワーモジュールに供給される電流を制御するように構成された電流制御機構を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項15】
前記電流制御機構は、コンデンサを備える、請求項14に記載の電力変換機構。
【請求項16】
前記電子スイッチング装置を通過する電流の速度が、電流が前記第1の方向に流れているとき、前記第2の方向に流れる電流と異なる、請求項1から15のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項17】
前記電子スイッチング装置は、前記電子スイッチング装置を通る電圧の極性を正の電圧値と負の電圧値との間で制御するようにさらに構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項18】
前記電気エネルギ貯蔵装置は、バッテリである、請求項1から17のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項19】
前記電気機械は、モータジェネレータユニットである、請求項1から18のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項20】
前記
電子スイッチング装置を開放して前記
電子スイッチング装置および前記パワーインバータを電気的に絶縁することが可能であり、前記
電子スイッチング装置と前記パワーインバータとの間の電圧の異常な変化速度を検出したときに、前記
電子スイッチング装置の開放を開始させるように構成されたコントローラをさらに備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の電力変換機構。
【請求項21】
前記コントローラは、所定の時間期間にわたって電圧の変化の速度を検出し続け、(i)電圧の変化の速度が異常である場合に、前記
電子スイッチング装置の開放を継続し、前記電気エネルギ貯蔵装置と前記電気機械を完全に絶縁し、(ii)電圧の変化の速度が許容可能である場合に、前記
電子スイッチング装置の開放を終了させ、前記電気エネルギ貯蔵装置と前記電気機械との間の接触を維持する、請求項20に記載の電力変換機構。
【請求項22】
電気エネルギ貯蔵装置と、電気エネルギ貯蔵装置と仲立ちするように構成された機構と、前記電気エネルギ貯蔵装置と
電気機械との間を仲立ちするように構成された電力変換機構とを備えており、前記電力変換機構は、
第1の複数のパワーモジュールを備えており、前記電気エネルギ貯蔵装置と前記電気機械との間の電流の方向を第1の方向または前記第1の方向とは反対の第2の方向のいずれかに制御するように構成された
、前記電気エネルギ貯蔵装置と接続される電子スイッチング装置と、
第2の複数のパワーモジュールを備えており、前記電気エネルギ貯蔵装置と前記電気機械との間で前記電流を整流するように構成された
、前記電子スイッチング装置と前記電気機械の間に接続されるパワーインバータと
を備え、
前記電子スイッチング装置および前記パワーインバータの各パワーモジュールは、パワーコンポーネントの同一の配置を備えている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換機構に関し、とくにはエネルギ回収システム用の電力変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のレース車両は、一般に、運動エネルギ回生システム(KERS)を備えている。これらのシステムは、減速時に車両のブレーキから回収される運動エネルギを電気エネルギに変換し、このエネルギを、後に加速下で使用するために、バッテリなどの電気エネルギ貯蔵装置に貯蔵する。KERシステムの発明に続いて、KERシステムからの運動エネルギ回収機構を熱エネルギの回収システムと組み合わせて、より専門化したエネルギ回収システム(ERS)が開発された。ERSは、2つのモータジェネレータユニット、すなわち運動エネルギユニット(MGU-K)および熱エネルギユニット(MGU-H)を備える。レース条件の最中に制動が加えられるとき、MGU-Kは、運動エネルギを電気エネルギ貯蔵装置に蓄えられる電気に変換する。また、このユニットは、車両が加速しているときにモータとして働き、エネルギ貯蔵装置から駆動系へと動力をもたらす。MGU-Hは、車両のエンジンのターボチャージャに接続され、排気ガスから受け取った熱エネルギを電気エネルギに変換する。2つの別個の供給源から電気エネルギを回収することによって、ERSは、KERシステムよりもはるかに多くの動力を集めて車両の駆動系へともたらすことができ、著しい利点を提供する。
【0003】
2つのモータジェネレータユニットに加えて、従来からのERSは、得られたエネルギを蓄積するための1つ以上の入力コンデンサと、電気エネルギ貯蔵装置とモータジェネレータユニットとの接続または切り離しを遠隔にて行うためのコンタクタなどの1つ以上の電気制御式スイッチとをさらに備える。したがって、スイッチは、車両の運転者によって要求されるとおりに、パワーユニットのさまざまな設定間の切り替えを作動させることができる。エネルギ貯蔵装置は、発弧およびその後のコンタクタの損傷を防止するために、ユニットから充分に大量のエネルギが収集された後にのみ、発電機ユニットに接続されるべきである。コンタクタが閉じられる前に入力コンデンサが充分に充電されることを保証するために、プリチャージシステムが設けられる。このシステムは、ERSの入力コンタクタに並列に配置され、一般に、抵抗器と直列に配置された第2のより小さいコンタクタで構成される。しかしながら、この第2のコンタクタは、電流を主コンタクタから避けて短絡させるための十分な遮断能力を有していない可能性がある。したがって、必要な遮断能力が満たされることを保証し、システムの致命的な短絡を回避するために、ヒューズを使用しなければならない。
【0004】
上述の欠点に加えて、従来からのERSのレイアウトに関連するさらなる問題は、バッテリシステムを電動駆動部に接続するために使用される電気コンタクタに、重量およびサイズの両方が著しいという特性が関連することである。さらに、コンタクタは、サイズが大きいがゆえに、ERSの電気回路内に実装することが困難である。これらの属性は、全体的な重量およびサイズが性能に実質的に結び付くレース車両に用いられる構成要素にとって、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のシステムよりも改善された電気的特性ならびに低減された重量およびサイズ特性を備えるERSの代案の構成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、電気エネルギ貯蔵装置と電気機械との間を仲立ちするように構成された電力変換機構であって、第1の複数のパワーモジュールを備えており、電気エネルギ貯蔵装置と電気機械との間の電流の方向を第1の方向または第1の方向とは反対の第2の方向のいずれかに制御するように構成された電子スイッチング装置と、第2の複数のパワーモジュールを備えており、電気エネルギ貯蔵装置と電気機械との間で電流を整流するように構成されたパワーインバータと、を備えており、電子スイッチング装置およびパワーインバータの各パワーモジュールは、パワーコンポーネントの同一の配置を備えている、電力変換機構が提供される。
【0007】
電子スイッチング装置およびパワーインバータの各パワーモジュールは、ハーフブリッジの構成にて配置された2つのパワー半導体スイッチを備えることができる。
【0008】
パワー半導体スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタであってよい。パワー半導体スイッチは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であってもよい。
【0009】
各々の絶縁ゲートバイポーラトランジスタを、対応するダイオードとの逆平行の構成にて配置することができる。
【0010】
電子スイッチングデバイスは、2つのパワーモジュールを備えることができる。
【0011】
パワーインバータは、3つのパワーモジュールを備えることができる。
【0012】
スイッチング装置のパワーモジュールは、並列構成にて配置されてよく、パワーインバータのパワーモジュールは、並列構成にて配置されてよい。
【0013】
この電力変換機構は、第1のパワーインバータおよび第2のパワーインバータを備えることができ、これら2つのパワーインバータは、パワーモジュールの同じ構成を備える。
【0014】
この電力変換機構は、1つ以上のパワーモジュールとやり取りをするように構成された第1のドライバ基板、第2のドライバ基板、および冷却システムをさらに備えることができ、電子スイッチング装置および1つ以上のパワーインバータの両方は、第1のドライバ基板、第2のドライバ基板、および冷却システムに電気的に接続される。
【0015】
この電力変換機構のパワーモジュールを、パワーモジュールの2つの別個の列へと配置することができ、冷却装置は、水平に、パワーモジュールの2つの隣接する列の平坦な表面の間に配置される。
【0016】
パワーモジュールおよび対応する共通コンポーネントの配置を、実質的に平坦な構成に構成することができる。
【0017】
パワーモジュールの第1の列が、第1のパワーインバータの3つのパワーモジュールおよび電子スイッチング装置の第1のパワーモジュールを含むことができ、パワーモジュールの第2の列が、第2のパワーインバータからの3つのパワーモジュールおよび電子スイッチング装置の第2のパワーモジュールを含むことができる。
【0018】
1つ以上のパワーモジュールが、パワーモジュールに供給される電流を制御するように構成された電流制御機構を備えることができる。
【0019】
電流制御機構は、コンデンサを備えることができる。
【0020】
電子スイッチング装置を通過する電流の量は、電流が第1の方向に流れているとき、第2の方向に流れる電流と異なってよい。
【0021】
電子スイッチング装置を、電子スイッチング装置を通る電圧の極性を正の電圧値と負の電圧値との間で制御するようにさらに構成することができる。
【0022】
電気エネルギ貯蔵装置は、バッテリであってよい。
【0023】
電気機械は、モータジェネレータユニットであってよい。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、電気エネルギ貯蔵装置と、電気エネルギ貯蔵装置と電気エネルギ貯蔵装置と電気機械とを仲立ちするように構成された電力変換機構とを仲立ちするように構成された機構と、を備える車両が提供され、電力変換機構は、第1の複数のパワーモジュールを備えており、電気エネルギ貯蔵装置と電気機械との間の電流の方向を第1の方向または第1の方向とは反対の第2の方向のいずれかに制御するように構成された電子スイッチング装置と、第2の複数のパワーモジュールを備えており、電気エネルギ貯蔵装置と電気機械との間で電流を整流するように構成されたパワーインバータと、を備え、電子スイッチング装置およびパワーインバータの各パワーモジュールは、パワーコンポーネントの同一の配置を備えている。
【0025】
次に、本発明を、図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来からのERSのレイアウトを示している。
【
図3】改良されたERSのパワーモジュール内の電流制御機構の構成を示している。
【
図4】ERSモジュールおよび関連の構成要素の物理的配置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1が、電気エネルギ貯蔵装置102と、第1のモータジェネレータユニット104と、第2のモータジェネレータユニット106とを備える従来からのERS100の構成を示しており、各々のモータジェネレータユニットは、それぞれのインバータ108、110および入力コンデンサ112、114に電気的に接続されている。両方のモータジェネレータユニット104、106は、第1の端部において電気エネルギ貯蔵装置102の正端子に電気的に接続され、第2の端部において電気エネルギ貯蔵装置102の負端子に電気的に接続される。システムは、電気エネルギ貯蔵装置102の正端子とインバータ108、110との間に配置された第1のコンタクタ116、および電気エネルギ貯蔵装置102の負端子とインバータ108、110との間に配置された第2のコンタクタ118をさらに備える。第3のコンタクタ120が、第1のコンタクタ116に並列かつ電気抵抗器122と直列に配置されている。電気ヒューズ124、126が、電気エネルギ貯蔵装置102の第1の端部および第2の端部にそれぞれ隣接して配置されている。
【0028】
図1に示される構成において、第1のコンタクタ116は、電気エネルギ貯蔵装置102とモータジェネレータユニット104、106との接続または切り離しを遠隔にて行うために使用される。第1のコンタクタ116は、外部の要求に応じてコンタクタ116の開閉を生じさせるために、コントローラ(図示せず)に電気的に接続されている。外部の要求は、車両の運転者によって開始されてよく、あるいは車両または環境条件のいずれかによって開始されてもよい。第2のコンタクタは、モータジェネレータユニット104、106からの電気エネルギ貯蔵装置102の完全な分離を可能にするために設けられる。これにより、作業者が、例えばシステムの整備中に通電中の電源に接触するリスクなしに、モータジェネレータユニット104、106にアクセスすることができる。第3のコンタクタ120および電気抵抗器122は、プリチャージシステム128を協働して形成する。このシステムは、第1のコンタクタ116が閉じられる前に少量の電流が流れることを可能にし、モータジェネレータユニット104、106が電気エネルギ貯蔵装置102に接続されるときにコンデンサ112、114によって過剰な電荷の放出を緩和する。
【0029】
すでに述べたように、従来からのERSのレイアウトには、プリチャージシステム128の第3のコンタクタ120が追加のヒューズを使用せずに電気エネルギ貯蔵装置102からの電流をそらすことができないなどの問題がつきまとう。これに加えて、システムには、発弧およびその後のスイッチング部品の損傷を防止するために必要な構成部品の数および位置ゆえに、サイズおよび重量が大きいという特性がつきまとう。
【0030】
図2が、改良されたERS200の構成要素の電気的構成を示している。従来からのERSと同様に、このシステムは、電気エネルギ貯蔵装置202と、第1のモータジェネレータユニット204と、第2のモータジェネレータユニット206と、第1のインバータ208と、第2のインバータ210とを備える。第1のインバータ208は、第1の端部において第1のモータジェネレータユニット204に電気的に接続され、第2の端部において電気エネルギ貯蔵装置202に電気的に接続される。第2のインバータ210は、第1の端部において第2のモータジェネレータユニット206に電気的に接続され、第2の端部において電気エネルギ貯蔵装置202に電気的に接続される。システムは、電気エネルギ貯蔵装置202とモータジェネレータユニット204、206との接続または切り離しを遠隔にて行うためのスイッチング装置212をさらに備える。
【0031】
電気エネルギ貯蔵装置202は、伝統的に、車両のモータジェネレータユニット204、206のうちの1つ以上に電気エネルギを供給するために設けられる。ERSにおいて、電気エネルギ貯蔵装置202は、1つ以上のモータジェネレータユニット204、206によって供給される電流を受け取るためにさらに設けられる。貯蔵装置202は、バッテリであってよい。自動車のバッテリは、任意の数のセルを備えることができる。本発明の一実施形態においては、
図2に示されるように、バッテリが、直列に配置された2つのセル214、216を備える。本発明の別の実施形態において、電気エネルギ貯蔵装置は、スーパーキャパシタであってよい。本発明の代案の実施形態において、ERSは、フライホイールなどの機械式貯蔵装置を備えてもよい。
【0032】
電気エネルギ貯蔵装置202は、1つ以上の電気安全装置218、220に電気的に接続される。そのような安全装置は、ERSを通る過剰な電流の流れを防止するために設けられる。1つ以上の電気安全装置218、220は、電気エネルギ貯蔵装置202に隣接して配置され、装置の正端子または負端子のいずれかとインターフェースする。本発明の一実施形態においては、電気安全装置を、貯蔵装置202の正端子および負端子の両方に隣接して設けることができる。本発明の好ましい実施形態において、1つ以上の電気安全装置218、220は、ヒューズである。
【0033】
ERSは、電気エネルギ貯蔵装置とエネルギを交換する1つ以上のモータジェネレータユニットを備える。本発明の好ましい実施形態において、車両は、2つのモータジェネレータユニット204、206を備える。この実施形態において、第1のモータジェネレータユニット204を、運動エネルギを電気エネルギに変換するように構成することができる。運動エネルギを、車両のブレーキからもたらすことができる。あるいは、運動エネルギは、車両の任意の可動部品からもたらされてよい。さらに、第2のモータジェネレータユニット206を、熱エネルギを電気エネルギに変換するように構成することができる。熱エネルギを、車両のエンジンのターボチャージャからもたらすことができる。あるいは、熱エネルギは、車両の任意の高温の構成要素からもたらされてよい。
【0034】
本発明の代案の実施形態において、ERSは、1つのモータジェネレータユニットを備えてもよい。この実施形態において、モータジェネレータユニットを、運動エネルギを電気エネルギに変換するように構成することができる。本発明の代案の実施形態において、ERSは、2つ以上のモータジェネレータユニットを備えてもよい。
【0035】
図2において、ERS200の各々のモータジェネレータユニット204、206は、それぞれのインバータ208、210に電気的に接続される。インバータ208、210は、電気エネルギ貯蔵装置202とそれぞれのモータジェネレータユニットとの間を流れる電流を、直流から交流へと変換するように構成される。具体的には、電気エネルギ貯蔵装置202とインバータ208、210との間を流れる電流は、直流である。モータジェネレータユニット204、206とそれぞれのインバータ208、210との間を流れる電流は、交流である。本発明の好ましい実施形態において、インバータ208、210は、3つのパワーモジュール222、224、226、および228、230、232の並列配置を備える三相インバータである。三相インバータは、他のインバータと比較してエネルギ効率が高く、サイズが小さく、自己始動が可能であるため好都合である。しかしながら、インバータを、任意の数のパワーモジュールを含むように拡張することができる。
【0036】
図2において、各々のインバータ208、210は、互いに電気的に接続された3つのパワーモジュールを備える。各々のパワーモジュールは、モータジェネレータユニットの異なる負荷端子(図示せず)に電気的に接続される。さらに、各々のパワーモジュールは、パワーコンポーネントの同一の配置を備える。本発明の好ましい実施形態において、各々のパワーモジュールは、ハーフブリッジ構成で配置される。このハーフブリッジ構成は、双方向の電流の流れを可能にする。電流が第1の方向に流れる場合、電気エネルギを、電気エネルギ貯蔵装置202からモータジェネレータユニット204、206のうちの1つ以上へと供給することができる。電流が第2の方向に流れる場合、電気エネルギを、モータジェネレータユニット204、206のうちの1つ以上から電気エネルギ貯蔵装置202へと供給することができる。双方向電流は、+/-400Aの間でさまざまであってよい。さらに、阻止電圧、またはパワーコンポーネントをまたいで印加され得る最大電圧は、本質的に双方向性である。双方向電圧は、+/-1200Vの間でさまざまであってよい。各々のインバータ208、210は、各々のインバータのパワーモジュールに制御を提供するための制御ユニットに電気的に接続されてよい。インバータ208、210を、共通の制御ユニットに接続することができる。あるいは、各々のインバータ208、210を、別個の制御ユニットに接続してもよい。
【0037】
インバータ208、210の各々のパワーモジュール222、224、226、228、230、232におけるパワーコンポーネントの配置は、互いに電気的に接続され、パワーモジュールとモータジェネレータユニットとの間の接続の両側に配置された2つの単純なオン-オフ電気スイッチを含むことができる。本発明の好ましい実施形態において、各々のパワーモジュールは、互いに電気的に結合され、パワーモジュールとモータジェネレータユニットとの間の電気的接続の両側に配置された2つのトランジスタを備える。本発明の一実施形態において、トランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。このようなトランジスタは、高い電圧および電流特性を処理することができるがゆえに、インバータ機構における使用に好都合である。本発明の代案の実施形態において、トランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。各々のトランジスタは、逆並列位置にてトランジスタの端子間に配置されるダイオードに電気的に接続されてよい。そのようなダイオードは、フライバック(または、「フリーホイーリング」)ダイオードと呼ばれ、第1の電流方向とは反対の方向に電流を伝導できるように配置される。
【0038】
ERSの各々のインバータ208、210は、それぞれのコンデンサ234、236にさらに接続される。各々のコンデンサ234、236は、それぞれのモータジェネレータユニット204、206によって回収された電気エネルギを受け取り、貯蔵するように構成される。電気エネルギは、コンデンサ234、236に蓄えられ、電気エネルギ貯蔵装置202へと供給される。さらに、各々のインバータ208、210は、インバータ、したがってモータジェネレータの遠隔制御を確立可能にするコントローラ(図示せず)に電気的に接続される。第1のインバータ208を、第1のコントローラに電気的に接続することができる。第2のインバータ210を、第2のコントローラに電気的に接続することができる。第1および第2のインバータ208、210を、共通のコントローラに接続してもよい。
【0039】
ERS200は、電気エネルギがモータジェネレータユニット204、206から電気貯蔵装置202に渡され、あるいは電気貯蔵装置202からモータジェネレータユニット204、206のうちの1つ以上に渡されるように、電流を交互にするためのスイッチング装置212をさらに備える。
図2において、スイッチング装置212は、一端においてERS200の電気エネルギ貯蔵装置202に隣接し、第1の端部の反対側の第2の端部において1つ以上のモータジェネレータユニット204、206の1つ以上のインバータ208、210に隣接するように配置される。スイッチング装置212は、第3のコントローラ(図示せず)に電気的に接続される。本発明のいくつかの実施形態において、第3のコントローラは、第1および第2のインバータを制御するために使用される第1および第2のコントローラと同じであってもよい。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、スイッチング装置212は、ソリッドステートリレーとして配置され、インバータ208、210を形成するパワーモジュールのパワーコンポーネントの配置と同じパワーコンポーネントの配置を有する2つのパワーモジュール238、240の並列配置を含む。各々のパワーモジュールは、ソリッドステートリレーの半分を形成し、電気エネルギ貯蔵装置202に最も近いパワーモジュールは、リレーのハイサイドを形成し、モータジェネレータユニット204、206に最も近いパワーモジュールは、リレーのローサイドを形成する。スイッチング装置212の各々のパワーモジュールは、1つ以上のインバータ208、210と同一のパワーモジュールの配置を備える。すでに述べたように、各々のパワーモジュールは、2つのIGBTまたは2つのMOSFETを備えることができる。さらに、各々のトランジスタは、逆並列位置にてトランジスタの2つの端子間に配置されるダイオードに電気的に接続されてよい。
【0041】
パワーモジュールの各々のIGBTまたは同様のトランジスタは、コントローラからの低電力の入力をトランジスタのゲートのための高電流の駆動入力へと変換するゲートドライバ(図示せず)に電気的に接続される。このシステムの好都合な特徴は、ゲートドライバをバッテリの短絡の発生に対する保護のために設計できることである。本発明の一実施形態において、ゲートドライバは、トランジスタのターンオンおよびターンオフ速度が異なるように設計される。本発明の好ましい実施形態において、ゲートドライバは、トランジスタのターンオン速度がターンオフ速度よりも遅くなるように設計される。遅いターンオン速度は、突入電流を低減するので有利である。突入電流は、電気接点の速度についての制御が存在しない従来からのリレー回路において直面される。これらの従来からの回路においては、電源がコンデンサに接続されるときに電流を減速させるものが存在しない。したがって、この構成は、エネルギシステムの回路を損傷させかねない大きな初期電流または突入電流をもたらす。より速いターンオフ速度は、大電流が流れているときでもソリッドステートリレーを開くことができるため、有利である。
【0042】
IGBTおよび同様のトランジスタなどのパワーコンポーネントに関連する1つの問題は、ドレイン-ゲート容量に起因するデバイスの寄生ターンオンである。デバイスのソースとドレインとの間に急速な電圧変化が生じ、ゲートへの電流の流れを発生させる。これは、デバイスをまたぐ電圧降下およびゲート電圧の上昇を引き起こし、これがデバイスの自己始動ターンオンをもたらす可能性がある。この問題を克服するために、ERSの各々のパワーモジュールは、パワーモジュール内のスイッチング部品のターンオンを減速させ、したがってパワーモジュールを通る初期電流を制御するための電流制御機構をさらに備えることができる。
【0043】
ERSなどのシステムは、例えば、短絡の結果としての構成要素の損傷、ならびにERSの構成要素の短絡またはモニタジェネレータユニットの異常動作に起因するバッテリまたはモータジェネレータユニットのいずれかの破壊を被りやすい。この損傷の可能性を克服するために、本発明は、バッテリの短絡を検出するためのシステムをさらに備えることができる。第4のコントローラが、スイッチング装置212とインバータ208、210の間の電気的接続を監視するために使用される。このコントローラは、すでに述べた第1のコントローラ、第2のコントローラ、または第3のコントローラであってよい。あるいは、このコントローラは、ERSのさらなる構成要素を制御しない別個のコントローラであってよい。ERSのうちの第4のコントローラによって監視される部分を通って流れる電流は、直流である。コントローラが電圧の異常な変化率を検出すると、スイッチング装置のソリッドステート機構が開き始め、電流の流れを終わらせる。ブランキング時間と呼ばれる確立された時間期間の後で、電圧が低下し続けている場合、ソリッドステート機構を開くコマンドが確立され、バッテリへの電流の通過が禁止される。ブランキング時間後に電圧が低下し続けていない場合、ソリッドステート機構を開くコマンドは終了する。このシステムは、モータジェネレータユニットの短絡に対するバッテリの保護を可能にし、逆もまた同じである。
【0044】
図3が、例示的なパワーモジュール300の一部分における電流制御機構の配置を示している。本発明のこの実施形態において、パワーモジュール300は、2つのパワーコンポーネント302、304を備え、パワーコンポーネントはIGBTである。IGBT302は、ゲート306およびコレクタ308を備える。パワーコンポーネントがMOSFETである本発明の代案の実施形態において、MOSFETは、コレクタの代わりにドレインを備える。電流制御機構312が、パワーモジュール300の第1のIGBT302に電気的に接続されている。本発明の代案の実施形態において、電流制御機構は、パワーモジュール300の第2のパワーコンポーネント304に接続されてもよい。あるいは、所与のパワーモジュールのパワーコンポーネントのそれぞれに電流制御機構を設けてもよい。
【0045】
図3に示される電流制御機構312は、パワーコンポーネントに並列に配置されたコンデンサ310を備え、第1の端部においてスイッチング装置の入力に取り付けられ、第2の端部においてゲート306に取り付けられる。この配置は、回路への「ミラー容量」の導入を可能にし、コンデンサ310は、ドレインとゲートとの間を流れる電流を吸収し、したがって寄生ターンオンの開始を禁止することができる。IGBT302のゲート電流が増加するとき、それに応じて電流制御機構における電流が増加することを、理解できるであろう。さらに、電流制御機構312は、パワーコンポーネントの初期ターンオンを減速するために利用されうる。
【0046】
図4が、ERSモジュールおよび関連の構成要素の物理的配置400を示している。スイッチング装置212がインバータ208、210と同じパワーモジュールを備えることを保証することによって、モジュールのコンパクトな機械的統合を確立させることができる。これに加えて、すべてのモジュールは、共通の冷却構成要素およびドライバ基板に電気的に接続される。
【0047】
図4に示される配置は、パワーモジュールの配置を含み、パワーモジュールは、2つの実質的に平行な列に配置される。この構成において、ERSの各々のモジュールは、長方形の構成であり、各々のモジュールのコンパクトな積み重ねを可能にする。ERSが2つのインバータを含む場合、第1のインバータ208のパワーモジュールが、パワーモジュールの第1の列に位置し、第2のインバータ210のパワーモジュールが、第2の列に位置する。スイッチングモジュール212が同じパワーモジュールを2つ備える場合、これらのパワーモジュールのうちの第1のモジュールが、第1の列に位置し、パワーモジュールのうちの第2のモジュールが、第2の列に位置する。スイッチングモジュール212の2つのパワーモジュールを、それらが横断面において互いに平行であるように配置することができる。
図4に示される実施形態において、ERSは、2つの三相インバータを備え、各々の三相インバータは、3つのパワーモジュールを備える。しかしながら、これらのインバータの各々が任意の数のパワーモジュールを備えてもよく、この状況において、各々のインバータのすべてのパワーモジュールが、それぞれの列に互いに隣接して配置されることを、理解すべきである。
【0048】
本発明の代案の実施形態において、ERSは、3つ以上のインバータを備えてもよい。この実施形態において、追加のインバータのパワーモジュールは、パワーモジュールの第1の列または第2の列のいずれかのモジュールに隣接して配置されてよい。あるいは、追加のインバータのパワーモジュールは、モジュールの1つ以上の追加の列に配置されてもよい。
【0049】
図4において、冷却システム402が、パワーモジュールの各列の間に配置されている。冷却システム402は、ERSのすべてのパワーモジュールが冷却に等しくアクセスできるため、有利に配置される。本発明の代案の実施形態において、冷却システムは、パワーモジュールの第1の列404または第2の列406のいずれかの外側に配置されてもよい。
【0050】
図4の構成は、水平に配置されてインバータモジュールの列の外面に位置する2つのドライバ基板408、410をさらに備える。第1のドライバ基板408は、インバータモジュールの第1の列404の外面の上方に位置し、第2のドライバ基板410は、インバータモジュールの第2の列406の外面の下方に位置する。第1および第2の基板408、410は、上述の第1および第2のコントローラと同等であってよく、それぞれ第1および第2のインバータ208、210に制御をもたらすように構成される。第1および第2の基板408、410を、スイッチング装置212のパワーモジュールに制御をもたらすようにさらに構成することができる。すでに述べたように、スイッチング装置212およびインバータ208、210に同様のモジュールを使用することにより、これらの構成要素間でドライバ基板および冷却機構の両方を共有することが可能になる。これにより、含まれる構成要素がより少ないERSのよりコンパクトな機械的統合が可能になる。
【0051】
本出願人は、単独での本明細書に記載した各々の個別の特徴、およびそのような特徴のうちの2つ以上の特徴の任意の組合せを、そのような特徴または組合せを当業者の共通の一般的知識に照らして全体としての本明細書に基づいて実行できる限りにおいて、そのような特徴または特徴の組合せが本明細書に開示されたいずれかの課題を解決するかどうかにかかわらず、特許請求の範囲の技術的範囲を限定することなく、ここに開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のそのような個別の特徴または特徴の組合せで構成されてよいことを示す。以上の説明に照らして、本発明の技術的範囲においてさまざまな変更を行うことができることが、当業者には明らかであろう。