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特許7483708予混合ケイ酸ストロンチウム系生物学的水硬性セメントペースト組成物及びその製造方法ならびにその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】予混合ケイ酸ストロンチウム系生物学的水硬性セメントペースト組成物及びその製造方法ならびにその応用
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/02 20060101AFI20240508BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20240508BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20240508BHJP
   A61K 6/76 20200101ALI20240508BHJP
   A61K 6/74 20200101ALI20240508BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20240508BHJP
   A61K 6/75 20200101ALI20240508BHJP
【FI】
A61L27/02
A61L27/12
A61L27/10
A61K6/76
A61K6/74
A61K6/818
A61K6/75
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021531162
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2019097075
(87)【国際公開番号】W WO2020029785
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】201810902541.1
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521055666
【氏名又は名称】ベイジン シー-ルート デンタル メディカル デヴァイシーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing C-ROOT Dental Medical Devices Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】301, Building 10, No.12, Juyuan Middle Road, Mapo Town, Shunyi District, Beijing, 101300, China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ビンミン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第101668550(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第105311680(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/02
A61L 27/12
A61L 27/10
A61K 6/76
A61K 6/74
A61K 6/818
A61K 6/75
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物であって、
成分(a):少なくとも1つのケイ酸ストロンチウム化合物と、
成分(b):上記少なくとも1つのケイ酸ストロンチウム化合物と混合する、少なくとも1つの実質的に無水の液体担体と、
成分(c):少なくとも1つの放射線抵抗材と、
を含み、
上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)及び、(c)はセメントペースト組成物の全質量に対して60%~92%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることを特徴とする、予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物、
上記ケイ酸ストロンチウム化合物は、ケイ酸二ストロンチウム、ケイ酸三ストロンチウム、またはそれらの混合物から選ばれる。
【請求項2】
上記実質的に無水の液体担体は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体グリセリン、エタノール、シリコーンオイル、クローブ油、動物油、植物油、有機酸及びそれらの混合物から選ばれ、
上記放射線抵抗材は、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化タンタルの少なくとも1つから選ばれる
上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)はセメントペースト組成物の全質量に対して20%~82%であり、固体成分(c)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~40%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることを特徴とする、請求項1に記載の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物。
【請求項3】
成分(d):少なくとも1つのリン酸カルシウム化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物。
【請求項4】
上記リン酸カルシウム化合物は、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ヒドロキシアパタイトの少なくとも1つから選ばれ、
上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~42%であり、固体成分(c)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~40%であり、固体成分(d)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~40%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることを特徴とする、請求項3に記載の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物を原料とする整形外科用又は歯科用充填材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学的用途に供する水硬性セメントペーストに関し、具体的に、骨科、歯科及び外科矯正のような用途に供する、生物学的水硬性を具備する予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物及びその製造方法ならびにその応用に関する。本発明は医薬技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸カルシウムは、水と混合している場合に水和し、ゲル状のケイ酸ストロンチウム、ケイ酸カルシウム水和物(SrーSーH、CーSーH)の沈殿によって凝固硬化し、一般的なポルトランドセメント(OPC)と類似することが周知されている。
【0003】
これらのケイ酸塩系生物セメント材料は、生物医学分野で良好な用途を有し、特に歯科充填材として歯科臨床で使用されており、既に広く利用されている。理想的な歯科充填材は、良好な生体適合性、抗菌性及び臨床作業性を具備している必要がある。それに加えて、生物活性は、材料と歯本体との結合能力を判断するための根拠となり、そのため、生物学的セメント材料は、ますます多くの歯科医師及び研究者から注目を浴びるようになる。
【0004】
現在、歯科充填材に最も広く使用されているケイ酸カルシウム系材料はミネラルトリオキシドアグリゲート材料(Mineral Trioxide Aggregate、MTA)である。Mahmoud Torabinejadは、1998年にMTA材料にて虫歯を修復する方法を最初に開示する(米国特許第5,769,638号)。該MTA材料は、主成分がケイ酸三カルシウム及びケイ酸二カルシウムであり、ポルトランドセメントと類似し、根管充填材に用いられるが、配合が煩雑であり、また材料の無駄となる。発明の名称が「予混合生物学的水硬性セメントペースト組成物及びその応用」である中国出願(出願番号:CN200880011743.1)には、医師が使いやすいようにケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム及び有機溶媒を予め混合してなる医療用又は歯科用の予混合セメントペーストを公開しているが、凝固時間が長すぎ、硬化するのに72時間を必要とするものもあり、凝固時間が長くなると、患者の待ち時間が長くなるだけでなく、さらに手術過程がより煩雑になる。
【0005】
発明の名称が「注射可能な効率的に懸濁安定なリン酸カルシウム骨セメント及びその製造方法ならびにその応用」である中国出願(出願番号:CN200910197934.8)には、気相シリカおよびその修飾製品を加えることによってリン酸カルシウム骨セメント予備混合系の懸濁安定性を向上させる注射可能なリン酸カルシウム骨セメント材料体系を公開している。しかし、リン酸カルシウム骨セメントは、強度が不足であり、破砕しやすいという問題がある。
【0006】
そのため、凝固時間が短く、生物活性が高く、圧縮強度が十分であり、臨床での作業性に優れた予混合生物学的水硬性セメントペーストをさらに開発することは非常に重要である。
【0007】
ストロンチウムは人体に不可欠な微量元素であり、人体骨格及び歯に必要な構成成分であり、ストロンチウムは、人体骨格における濃度の正常値が360ppmであり、体内のストロンチウムの99.0%は骨や歯に存在し、ストロンチウムは、人体に対する機能が主に骨の形成に密接に関連している。研究によると、ストロンチウムは、MSCS(骨髄間葉系幹細胞)の骨芽細胞への分化を調節し、骨基質タンパク質の合成及び沈殿を促進できるので、ストロンチウムは、骨芽細胞の分化及び骨生成を促進するように機能している。ストロンチウムは、さらに組織石灰化される骨及び歯のヒドロキシアパタイト結晶における少量のカルシウムを置換することができ、少量のストロンチウム元素の置換により、格子欠陥を減らし、原子間の配列をより密にし、一定の強化作用を果たして、歯骨強度を改善することができる。ケイ酸ストロンチウム水和物(SrーSーH)複合ヒドロキシアパタイト組成物は、充填密封作用を果たすとともに、ケイ酸カルシウム水和物(CーSーH)よりも優れた生体適合性を有し、さらに骨生成を促進し、骨強度を向上させる作用を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、凝固時間が短く、生物活性が高く、臨床作業性に優れた予混合ケイ酸ストロンチウム系生物学的水硬性セメントペースト組成物及びその製造方法ならびにその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を採る。
【0010】
本発明は、成分(a):少なくとも1つのケイ酸ストロンチウム化合物であって、好ましくは、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸三ストロンチウム、ケイ酸二ストロンチウム及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1つのケイ酸ストロンチウム化合物と、成分(b):上記少なくとも1つのケイ酸ストロンチウム化合物と混合する少なくとも1つの実質的に無水の液体担体であって、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体グリセリン、エタノール、シリコーンオイル、クローブ油、動物油、植物油、有機酸及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1つの実質的に無水の液体担体と、を含む、予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物に関する。
【0011】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)はセメントペースト組成物の全質量に対して60%~92%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることが好ましい。
【0012】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物は、さらに成分(c):少なくとも1つの放射線抵抗材を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記放射線抵抗材は、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化タンタルの少なくとも1つから選ばれることが好ましい。
【0014】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)、(c)はセメントペースト組成物の全質量に対して60%~92%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることが好ましい。上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)はセメントペースト組成物の全質量に対して20%~82%であり、固体成分(c)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~40%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることがより好ましい。
【0015】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物は、成分(a)及び(b)又は成分(a)、(b)及び(c)に加えて、さらに成分(d):少なくとも1つのリン酸カルシウム化合物を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記リン酸カルシウム化合物は、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ヒドロキシアパタイトの少なくとも1つから選ばれることが好ましい。
【0017】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物において、固体成分(a)、(c)及び(d)はセメントペースト組成物の全質量に対して60%~92%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることが好ましい。固体成分(a)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~42%であり、固体成分(c)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~40%であり、固体成分(d)はセメントペースト組成物の全質量に対して10%~40%であり、液体成分(b)はセメントペースト組成物の全質量に対して8%~40%であることがより好ましい。
【0018】
本発明の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物は、各成分を順次ガラス容器に入れ、ステンレス攪拌棒で機械的に混合し、十分に調合し、その後に混合ペーストを注入ホース針付き医療用注射器に移して、懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストが得られる、ように調製することができる。
【0019】
さらに、本発明は、上記予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト組成物の、骨科用又は歯科用充填材の調製における応用に関する。
【0020】
本発明の予混合ケイ酸ストロンチウム系生物学的水硬性セメントペーストは、ケイ酸ストロンチウムを主相とし、さらに少なくとも1つの、水と混合溶解可能な非水相溶媒を含むものであり、好ましくは、さらに少なくとも1つのリン酸カルシウム、少なくとも1つの放射線抵抗材を含むものであるので、優れた注射特性を有する生物学的水硬性セメントペーストを調製することができる。該材料は密封条件で流動性を保ち、骨又は歯に充填して生理体液に接触した後、水和反応し凝固硬化する。本発明は、ケイ酸ストロンチウム系生物学的水硬性セメントペーストの優れた生体適合性、生物活性を活用して、ケイ酸ストロンチウム系生物学的水硬性セメントペーストを調製し、当該ペーストは医学的用途に適用できるものであり、特にパルプキャッピング、根管治療、歯科修復などの分野で充填材として適用できるものである。
【0021】
従来技術と比較して、本発明の利点は次のとおりである。
【0022】
(1)リン酸カルシウムセメントに比べて、本発明の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストは、凝固時間が短く、医師が操作するのに便利となり、反応温度の上昇が明らかではない。
【0023】
(2)予混合ケイ酸カルシウム歯科充填材に比べて、本発明の予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストは、以下の利点を有する。
【0024】
(A)凝固が速い。
【0025】
(B)ケイ酸ストロンチウムは、ケイ酸カルシウムよりも生体適合性が高く、リン酸カルシウム塩と併用し、骨生成を促進するヒドロキシアパタイトを形成しやすい。
【0026】
(C)骨強度を向上させる。例えば、図3から分かるように、ケイ酸ストロンチウムの水和生成物は、多くが緻密で小毛玉のようなミクロ組織であり、針状の水和生成物がより細かく、互いに架橋度がよく、より緻密な構造であり、また、ヒドロキシアパタイトの毛玉状構造と類似しているので、材料強度及び靭性がよりよく、生物相溶性が優れる。さらに、リン酸カルシウムとケイ酸ストロンチウムとの比率を調整することにより、異なる要望を満足することができる。例えば、30~40MPaに調整して根管充填材に用いられる場合に、ケイ酸カルシウムペーストよりも強度が低く、再治療に良好に用いることができる。硬質に調製すると、修復に用いられる。
(D)ストロンチウムは人体に不可欠な微量元素であり、ストロンチウムは、骨芽細胞の分化及び骨生成を促進するように機能している。さらに、ストロンチウムは、組織石灰化される骨及び歯のヒドロキシアパタイト結晶における少量のカルシウムを置換することができ、ケイ酸ストロンチウムの使用によって、ストロンチウム元素を補充し、歯の格子欠陥を減少させ、それにより歯の骨強度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1で得られた予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料を示す図である。
図2】実施例1で得られたケイ酸ストロンチウム系セメントペーストの水凝固後の写真である。
図3】実施例1で得られた水凝固後の材料の顕微鏡写真である。
図4】実施例1で得られた水凝固後の材料のXRD元素分析パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明し、本発明の利点及び特徴は下記の説明に従ってより明らかになる。ただし、実施例はただ例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、本発明の技術的範囲の詳細及び形態を変更又は置換することが可能であり、これらの変更及び置換がいずれも本発明の範囲に収まることが自明である。
【0029】
凝固時間の測定方法
1、器具
1.1、恒温恒湿チャンバー:温度37℃±1℃、相対湿度95%以上の雰囲気を保持できるもの。
【0030】
1.2、針入度計:質量100g±0.5g、直径2mm±0.1mmの平端面圧子を付き、圧子の先端が長さ5mm以上の円柱であり、圧子の端面が水平面で、長軸と直角になるもの。
【0031】
1.3、金型:ステンレスリング金型、金型キャビティ内径d=10mm、高さh=2mmのもの。
【0032】
1.4、金属塊:最小寸法8mm×20mm×10mm、使用前に37℃±1℃の恒温恒湿チャンバーに1h以上放置したもの。
【0033】
1.5、平ガラス板:厚さ約1mm、例えばガラススライドであるもの。
【0034】
2、試料の調製
ステンレス金型を平ガラス板に置き、調合した根管填充ペースト(即ち、実施例で調製した懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト)をステンレス金型を満たすように充填し、材料は金型の上端面と面一となる。調合が完了した後、上記のものを恒温恒湿チャンバーの金属塊の上に置く。
【0035】
3、ステップ
8時間硬化した後、1時間ごとに試料を取り出して軽く針入度計の圧子を根管填充ペーストの水平面に垂直に置き、圧子を上げてよく拭き、圧痕を目視で見えないまでに上記操作を繰り返し、調和終了後から圧痕が現れないまでの時間を凝固時間として記録する。
【0036】
4、結果:圧痕が現れない場合に、凝固時間を記録する。
【0037】
実施例1 懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストの調製
(1)各原料を以下の重量百分率で秤量した。
【0038】
成分(a):ケイ酸三ストロンチウム55%
成分(b):ポリエチレングリコール22%
成分(c):酸化ジルコニウム23%
(2)ステップ(1)の成分(a)、(c)、(b)を順にガラス容器に入れ、ステンレス攪拌棒で機械的に混合し、10分間をかけて十分に調合した。
【0039】
(3)その後に混合ペーストを注入ホース針付き医療用注射器に移して、懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストが得られた。
【0040】
該材料は密封条件で流動性を保ち、押出した試料を37℃、湿度95%以上の恒温恒湿チャンバーに置き(又は、歯に充填して生理体液に接触させ)、水和反応し凝固硬化し、凝固時間が13時間であった。
【0041】
図1は本実施例1で得られた予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料であり、図2は本実施例1で得られたケイ酸ストロンチウム系セメントペーストの水凝固後の写真であり、図3は本実施例1で得られた水凝固後の材料の顕微鏡写真である。この図3から、当該ケイ酸ストロンチウムの水和生成物であるSrーSーHは、小毛玉状の構造における針状組織が細かくて緻密で、織り交ぜられ、お互いに連結して、緻密で高強度靭性のミクロ組織構造が形成され、ヒドロキシアパタイトの小さな小毛玉状構造と類似し、力学的性能が良好であることを示した。図4は本実施例1で得られた水凝固後の材料のXRD元素分析パターンである。この図4から、当該ケイ酸ストロンチウム水和物(SrーSーH)は主にSr、Si、O元素で構成されていることを示しており(注:H元素は電子顕微鏡のXRD分析に示されず)、ストロンチウム元素は、歯と骨の強化に良い効果があることを示した。
【0042】
本実施例1で得られた予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料を37℃、95%の恒温恒湿チャンバーに置いて水和反応試験を行い、材料を入れてからの0.5、1、2、3、5、8、12、24、48時間に取り出し、赤外線温度計で測定し、温度がそれぞれ37.0℃、36.8℃、37.1℃、36.9℃、37.0℃、37.0℃、36.6℃、37.1℃、37.0℃であり、温度はほとんど変化せず、本実施例1で調製した予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料は反応昇温が顕著でない効果を有することを示した。
【0043】
実施例2 懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストの調製
(1)各原料を以下の重量百分率で秤量した。
【0044】
成分(a):ケイ酸三ストロンチウム18%
成分(b):ポリエチレングリコール27%
成分(c):酸化タンタル30%
成分(d):無水リン酸二水素カルシウム16%、リン酸四カルシウム9%
(2)ステップ(1)の成分(a)、(c)、(d)、(b)を順にガラス容器に入れ、ステンレス攪拌棒で機械的に混合し、10分間をかけて十分に調合した。
【0045】
(3)その後に混合ペーストを注入ホース針付き医療用注射器に移して、懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト2が得られた。
【0046】
該材料は密封条件で流動性を保ち、押出した試料を37℃、湿度95%以上の恒温恒湿チャンバーに置き(又は、歯に充填して生理体液に接触させ)、水和反応し凝固硬化し、凝固時間が13時間であった。
【0047】
本実施例2で得られた予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料を37℃、95%の恒温恒湿チャンバーに置いて水和反応試験を行い、材料を入れてからの0.5、1、2、3、5、8、12、24、48時間に取り出し、赤外線温度計で測定し、温度が36~38℃の範囲にあり、ほとんど変化せず、本実施例2で調製した予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料は反応昇温が顕著でない効果を有することを示した。
【0048】
実施例3 懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストの調製
(1)各原料を以下の重量百分率で秤量した。
【0049】
成分(a):ケイ酸三ストロンチウム12%、ケイ酸二ストロンチウム7%
成分(b):グリセリン29%
成分(c):三酸化二ビスマス32%
成分(d):リン酸二水素カルシウム20%
(2)ステップ(1)の成分(a)、(c)、(d)、(b)を順にガラス容器に入れ、ステンレス攪拌棒で機械的に混合し、10分間をかけて十分に調合した。
【0050】
(3)その後に混合ペーストを注入ホース針付き医療用注射器に移して、懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト3が得られた。
【0051】
該材料は密封条件で流動性を保ち、押出した試料を37℃、湿度95%以上の恒温恒湿チャンバーに置き(又は、歯に充填して生理体液に接触させ)、水和反応し凝固硬化し、凝固時間が18時間であった。
【0052】
本実施例3で得られた予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料を37℃、95%の恒温恒湿チャンバーに置いて水和反応試験を行い、材料を入れてからの0.5、1、2、3、5、8、12、24、48時間に取り出し、赤外線温度計で測定し、温度が36~38℃の範囲にあり、ほとんど変化せず、本実施例3で調製した予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料は反応昇温が顕著でない効果を有することを示した。
【0053】
実施例4 懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペーストの調製
(1)各原料を以下の重量百分率で秤量した。
【0054】
成分(a):ケイ酸三ストロンチウム65%
成分(b):ポリエチレングリコール35%
(2)ステップ(1)の成分(a)、(b)を順にガラス容器に入れ、ステンレス攪拌棒で機械的に混合し、10分間をかけて十分に調合した。
【0055】
(3)その後に混合ペーストを注入ホース針付き医療用注射器に移して、懸濁安定な予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト4が得られた。
【0056】
該材料は密封条件で流動性を保ち、押出した試料を37℃、湿度95%以上の恒温恒湿チャンバーに置き(又は、歯に充填して生理体液に接触させ)、水和反応し凝固硬化し、凝固時間が12時間であった。
【0057】
本実施例4で得られた予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料を37℃、95%の恒温恒湿チャンバーに置いて水和反応試験を行い、材料を入れてからの0.5、1、2、3、5、8、12、24、48時間に取り出し、赤外線温度計で測定し、温度が37℃程度にあり、ほとんど変化せず、本実施例4で調製した予混合ケイ酸ストロンチウム系セメントペースト材料は反応昇温が顕著でないことを示した。
図1
図2
図3
図4