(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】触媒燃焼バーナーの表面への触媒塗布方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20240508BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240508BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240508BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20240508BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240508BHJP
F23D 3/08 20060101ALI20240508BHJP
F23D 3/02 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
B01J37/02 101Z
A61L9/00 C
A61L9/01 B
B01J27/224 M
B01J37/08
F23D3/08 630H
F23D3/02 A
(21)【出願番号】P 2021534807
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2019086486
(87)【国際公開番号】W WO2020127848
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-03
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217521
【氏名又は名称】プロデュイ ベルジェ
【氏名又は名称原語表記】PRODUITS BERGER
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド,コリン
(72)【発明者】
【氏名】オズーフ,ローラン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-200727(JP,A)
【文献】特開2002-193705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0110479(US,A1)
【文献】特開2005-016926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0265762(US,A1)
【文献】特開2005-016925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0037309(US,A1)
【文献】特表2002-517699(JP,A)
【文献】特開平04-048931(JP,A)
【文献】国際公開第2018/122502(WO,A1)
【文献】特開2002-047114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 37/02
A61L 9/00
A61L 9/01
B01J 27/224
B01J 37/08
F23D 3/08
F23D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒燃焼バーナーの表面への触媒塗布方法であって、
前記触媒燃焼バーナーが、
多孔性材料からなり、
上部(10)及び下部(11)を有する端部片(1)であって、
空洞を画定する内側面(100)、
本質的に円筒形の外側面(101)、及び
王冠形状の上面(102)、を含む周側壁を前記上部(10)が有する、端部片(1)と、
前記端部片(1)の前記下部(11)の延長部に配置され、可燃性組成物
(30)を前記触媒燃焼バーナーに伝え運ぶことを意図した芯を把持するように適合される空洞を含む、スリーブ(2)と、を包含し、
前記方法は、
A)元素周期表の第9族又は第10族に属する
金属から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒組成物を、前記外側面(101)と、前記端部片(1)の前記内側面(100)、前記王冠
形状の上面(102)、又は、前記内側面(100)及び前記王冠
形状の上面(102)のいずれもと、に含浸させること、及び
B)前記触媒組成物を含浸した前記触媒燃焼バーナーを450°C以上の温度T
aまで熱処理すること、を含み、
前記端部片(1)に塗布する前において、前記触媒組成物が、20°Cで少なくとも15mPa
・sの動的粘度μ
cを示す非ニュートン流体であることを特徴とする、触媒塗布方法。
【請求項2】
前記触媒組成物が、
元素周期表の第9族又は第10族に属する金属から選択される触媒を、前記触媒組成物の総質量に対して、1質量%から5質量%の間で含み、かつ
前記触媒組成物の流動抵抗を増加させることができる化合物を、前記触媒組成物の総質量に対して、0.2質量%から2質量%の間で含む、請求項1に記載の触媒塗布方法。
【請求項3】
前記化合物が、グルコースに由来するポリマー又はエチレンオキシドに由来するポリマー
の流動抵抗を増加させることができる、請求項2に記載の触媒塗布方法。
【請求項4】
前記熱処理ステップB)が、前記温度T
aで3時間以上維持することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒塗布方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒塗布方法にしたがって塗布された触媒でコーティングされた触媒燃焼バーナー。
【請求項6】
可燃性
組成物(30)を収容し、ネック(50)で、前記可燃性
組成物(30)に浸された芯(40)を受容する触媒燃焼バーナーを受容するように適合される、触媒燃焼ボトル(20)であって、請求項5に記載のバーナー(10)を備えることを特徴とする、触媒燃焼ボトル(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、触媒燃焼の分野に関し、より詳細には、多孔性材料で作られた触媒燃焼バーナーの分野に関する。これらのバーナーは、特に芳香剤及び/若しくは活性物質の拡散に、臭気若しくは非臭気分子の破壊に、並びに/又は空気の浄化に、使用される。
【背景技術】
【0002】
この種のバーナーは、例えば、出願人の名において仏国特許出願公開第3061543号明細書に記載されている。これは、特に、触媒燃焼ボトルに収容された可燃性液体に浸された芯を受容し、当該ボトルのネックでバーナーを受容することを意図したバーナーである。この種のバーナー(特に
図3Aに示される)は、多孔性材料で作成され、かつ端部片を含み、当該端部片は、外部に通じる空洞をその上部に有し、上記芯の端がその内部で係合する空洞をその下部に有する。端部片の下部はスリーブによって延在する。端部片の上部において、その外側面及びその上面(環状)には、触媒がドープされている。有利には、端部片の上部において、その内側面にも同様のことが当てはまる。作動中、芯を伝って運ばれる可燃性液体は、バーナーの多孔性材料の細孔に浸透する。この液体の一部は、バーナーの中央ゾーンを通過して気化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この種のバーナーは、ドープされている場合に、作動中にバーナーの中央拡散ゾーンの温度が上昇するという欠点を有し、これが、バーナーを香料の拡散に使用した場合に、異臭を招来することを、本発明者らは見出だした。
【0004】
この前述の欠点を克服するために、本発明者らは、バーナーの端部片の表面上での触媒のより好ましい分散を可能とし、これにより中央ゾーンでの過度の温度上昇を抑制する、触媒塗布方法を開発した。
【0005】
したがって、より詳細には、本発明は、触媒を触媒燃焼バーナーの表面に塗布する方法に関し、
前述の触媒燃焼バーナーは、
多孔性材料からなり、
上部及び下部を有する端部片であって、
空洞を画定する内側面、
本質的に円筒形の外側面、及び
王冠形状の上面、を含む周側壁を前述の上部が有する、端部片と、
前述の端部片の前述の下部の延長部に配置され、可燃性組成物を触媒燃焼バーナーに伝え運ぶことを意図した芯を把持するように適合される空洞を含むスリーブと、を包含し、
前述の方法は、
A)元素周期表の第9族又は第10族に属する少なくとも1つの触媒を含む触媒組成物を、前述の外側面と、端部片の前述の内側面、前述の王冠、又は、前述の内側面及び前述の王冠のいずれもと、に含浸させること、
B)上記した触媒組成物を含浸した前述の触媒燃焼バーナーを、450℃以上の温度Taまで熱処理することと、を含み、
端部片(1)に塗布する前において、前述の触媒組成物が、周囲温度で少なくとも15mPa.sの動的粘度μcを示す非ニュートン流体であること、を特徴とする。
【0006】
本発明での意味内容において、ニュートン流体は、その粘度が、その剪断速度にも、当該液体が剪断される時間にも、依存しない流体である、と理解されたい。
【0007】
有利には、触媒組成物が、元素周期表の第9族又は第10族に属する金属から選択される触媒を、
触媒組成物の総質量に対して、1質量%から5質量%の間で含んでよく、かつ
前述の触媒組成物の流動抵抗を増加させることができる化合物を、触媒組成物の総質量に対して、0.2質量%から2質量%の間で含んでよい。
【0008】
流体の流動抵抗を増加させることができる化合物は、本発明での意味内容において、前述の流体に、周囲温度(すなわち、約20℃)で少なくとも15mPa・sの動的粘度μcを与えることができる化合物であると理解される。
【0009】
流動抵抗を増加させることができる前述の化合物は、好ましくは、グルコースに由来するポリマー又はエチレンオキシドに由来するポリマーであり得る。
【0010】
熱処理ステップB)は、有利には、Taの温度で3時間以上、維持することを含む。
【0011】
同様に、本発明は、本発明の方法にしたがって触媒をコーティングすることができる触媒燃焼バーナーに関する。
【0012】
最後に、本発明は触媒燃焼ボトルであって、可燃性液体を収容し、そのネックで、前述の液体に浸された芯を受容する触媒燃焼バーナーを受けいれるように適合され、当該ボトル(20)が、本発明のバーナーを含む、触媒燃焼ボトルを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下に示す、教示のためであって何らの限定を意図しない詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
【
図1】
図1は、触媒をその表面に含浸させる本発明の方法で処理され得る、触媒を有する触媒燃焼バーナーの一例の概略写真を表す。
【
図2】
図2は、
図1の触媒燃焼バーナーを装着したボトルの立面概略図である。
【
図3A】
図3Aは、エアコンの非存在下で、従来の塗布によって処理された触媒燃焼バーナーの端部片の表面への触媒の塗布の影響を示すために作成されたIRサーモグラムである。
【
図3B】
図3Bは、エアコンの非存在下で、本発明の方法により処理された触媒燃焼バーナーの端部片の表面への触媒の塗布の影響を示すために作成されたIRサーモグラムである。
【
図4A】
図4Aは、エアコンの存在下で、従来の塗布によって処理された触媒燃焼バーナーの端部片の表面への触媒の塗布の影響を示すために作成されたIRサーモグラムである。
【
図4B】
図4Bは、エアコンの存在下で、本発明の方法により処理された触媒燃焼バーナーの端部片の表面への触媒の塗布の影響を示すために作成されたIRサーモグラムである。
【
図5】
図5は、運転時のエアコンのバーナー温度への影響を、赤外線カメラで測定したプロトコルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2に共通する技術的特徴は、該当する図においてそれぞれ同じ参照番号で示されている。
【0016】
【0017】
図1は、触媒をその表面に含浸させる本発明の方法により処理できる、触媒を有する触媒燃焼バーナーの一例の横断面を概略的に示している。この種のバーナ
ーは、多孔性材料でできており、外部に通じる空洞(又はリザーバー)100をその上部10に有し、かつ芯40の端部が係合する空洞をその下部11に有する、端部片1を含む。この芯40は、可燃性組成物30(以下の例ではイソプロピルアルコール)を、ボトル20からバーナーに伝え運ぶためのものであり、ボトル20のネック50には、バーナ
ーが取り付けられている。端部片1においては、スリーブ2(バレルとも呼ばれる)によってその下部が延在する。
図2は、
図1のバーナ
ーを備えたボトル20の概略立面図である。可燃性液体30は、通常、アルコール、例えばイソプロピルアルコール、又はこの分野で施行される法律に適合する他の適切な可燃性液体である。可燃性液体30は、特に、その気化及びその触媒燃焼によって不快な臭気を放出しないようなものでなければならない。可燃性液体30は、芳香物質及び/又は活性材料をさらに含んでもよい。
【0018】
芯40は、任意の既知の芯であり、例えば、綿で作られた芯、又は鉱物材料、例えば鉱物繊維で作られた芯である。作動中、ボトル20からの可燃性液体30は、毛細管現象によって芯40内を上昇し、バーナーの多孔性材料の細孔に浸透し、予熱されると、前述の液体について触媒燃焼が行われる。特に端部片1の上部10に関して、これは、リザーバー100の形状で空洞を画定する内側の本質的に切断面と、本質的に円筒形の外側面101と、王冠形状の上面102とを含む、周側壁を有する。
【0019】
触媒(
図1及び
図2では見えない)は、本発明の方法(「バーナーBI」が示す実施例において示す)にしたがって、又は当業者に公知の方法(「バーナーBC」が示すく実施例において示す)にしたがって、端部片1の外側面101と王冠102に塗布される。この後者の場合、従来の方法でドーピングが行われていたバーナーが、エアコンの存在下、及び非存在下での触媒動作のテストにおいて、コントロールとして使用される。
【0020】
この目的において、
図1に示すバーナーの触媒作用を(エアコンの存在下又は非不在下において)試験するために、このバーナーを
図2に示す触媒燃焼ボトル20に配置した。
【0021】
バーナー(図1に示す本発明のバーナー、又は従来技術のバーナーのいずれか)は、ボトルのネック50に(例えば、ネック50に配置された金属シートによって)取り付けられ
ている。芯40はバーナーの内部に受容され、この触媒燃焼芯40は液体30に浸漬された芯(40)を受容する。ボトル20は、バーナーが嵌合するネック50を有するいかなる形状のボトルであり得る。
【0022】
以下の実施例では、上記の図に関連して本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
これらの実施例において、特に断らない限り、百分率及び部は全て質量百分率として表される。
【実施例】
【0024】
デバイスと組成物
【0025】
本発明の触媒組成物
水性溶媒、アルコール性溶媒、又は水性アルコール性溶媒、
触媒:
(バーナーの部品100、101、又は102のいずれかの上で)用いられる触媒は、元素周期表の第9族又は第10族に属する金属である。それは、本発明の触媒組成物の質量に基づいて2質量%の割合で存在する。
触媒組成物の流動抵抗を増加させることができる化合物:
塗布前の組成物の動的粘度μcが20℃で20mPa.s程度であるような、グルコース由来のポリマーが、触媒組成物の総質量に対して0.2質量%から2質量%の間である。
【0026】
コントロール触媒組成物:
水、
触媒、
(バーナーの部品100、101、又は102のいずれかの上で)用いられる触媒は、元素周期表の第9族又は第10族に属する金属である。それは、コントロール触媒組成物の質量に対して2質量%の割合で存在する。
【0027】
バーナーを構成する多孔性材料の組成:
熱伝導性化合物:炭化ケイ素(1%)、
耐火性化合物:ムライト(66.5%)、
バインダー:ガラス(11.5%)、
細孔形成剤:ポリメチルメタクリレート(PMMA:21.5%)
【0028】
使用したバーナー:
比較例:コントロール触媒組成物を用いたドーピング
バーナー「BC」(図2に示す)は、段落0027に記載の組成から得られた多孔性材料からなり、バーナー面100、101、及び102を、それらを含浸するコントロール触媒組成物でドープする。触媒組成物を、バーナーの端部片の面100、101及び102に、含浸により塗布し、次いで450℃以上の温度で焼成し、続いてこの温度を3時間以上維持した。
【0029】
本発明の例:本発明の触媒組成物を用いたドーピング
バーナー「BI」(図2に示す)は段落0027に記載の組成から得られた多孔性材料からなり、バーナー面100、101、及び102は、それらを含浸する、本発明の触媒組成物でドープする。触媒組成物を、バーナーの端部片の面100、101、及び102に、含浸により塗布し、次いで450℃以上の温度で焼成し、続いてこの温度を3時間以上維持した。
【0030】
使用したボトル:
これについては、バーナー「BI」(本発明(Inventive))及び「BC」(比較、すなわちコントロール(Control))を、
図2で示している。
【0031】
使用した芯:
綿芯
【0032】
使用した可燃性液体:
イソプロピルアルコール
【0033】
テストと測定
18℃でエアコン装置の存在下、換気の有又は無で、ボトル20に取り付けられたバーナーBI及びBCの動作特性の判定:
テストプロトコルを
図5に示す。それは、全体として、赤外線サーモカメラを活用した赤外線サーモグラフィー(IR)を使用し、ボトル20で作動テストする各バーナー(BI及びBC)の温度を測定することからなる。ここで、ボトル20は、
図4A及び
図4Bの低レベルで、エアコン(その電力は実施したテスト環境下で、800Wである)から適度な距離を置いて設置した。また、これらの測定値を、テストした各バーナー(コントロール1C並びに本発明の1及び2)に関して換気無しで実行した測定値と比較した。
【0034】
生成されたサーモグラムの詳細は次のとおりである。
- コントロールバーナーBC:
エアコン無し:
図3A、
エアコン有り:
図4A(上面図)
- 本発明の方法により処理されたバーナーBI:
エアコン無し:
図3B、
エアコン有り:
図4B(上面図)
【0035】
図3Aと
図3Bのサーモグラムを比較すると、エアコンがない場合、バーナーの拡散中心ゾーンの温度が(コントロール触媒組成物による処理の場合に)389℃から、触媒の端部片の面100、101及び102を本発明の方法によって処理した場合には364℃まで、低下することを示している。
【0036】
図3Aと
図3Bのサーモグラムの比較は、エアコンの存在下でも同様の効果を示し、つまり、バーナーの中央拡散ゾーンの温度が(コントロール触媒組成物による処理の場合に)357℃から、触媒の端部片の面100、101、及び102を本発明の方法によって処理した場合に318℃まで、低下することを示している。
【0037】
本発明の方法でもって20℃で15mPa.sの動的粘度μcを有する触媒組成物を塗布することにより、触媒がバーナーの内部に浸透しにくくなり、バーナーの中央拡散ゾーンの温度が、コントロール触媒組成物が塗布された場合のものより低くなる。