(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】CYP4A阻害化合物を有効成分として含む代謝疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240508BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240508BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240508BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240508BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240508BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240508BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240508BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P1/16
A61P3/04
A61P39/06
A61P17/18
(21)【出願番号】P 2021535604
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2019018147
(87)【国際公開番号】W WO2020130696
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167685
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513236264
【氏名又は名称】コリア ベーシック サイエンス インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA BASIC SCIENCE INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】(Eoeun-dong)169-148,Gwahak-ro,Yuseong-Gu Daejeon 34133,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キム,グン ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,クン スン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヒョ キュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,セ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ダ ロン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521740(JP,A)
【文献】特表2004-506009(JP,A)
【文献】特表2015-537002(JP,A)
【文献】特表2016-510732(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0072856(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0259044(US,A1)
【文献】特表2007-538106(JP,A)
【文献】国際公開第2004/092123(WO,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2013年,21,pp.3080-3089
【文献】Orphanet Journal of Rare Diseases,2013年,8,11
【文献】Mol Pharmacol,2008年,73,pp.478-489
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2004年,279(12),pp.11096-11105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物:
<化学式1>
【化1】
前記化学式1に於いて、
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy)からなる群から選択されるものである。
【請求項2】
前記化合物は、
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素; ハロ; ヒドロキシ; アミノ; カルボキシル; シアノ; ニトロ; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキニル; 及び非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルコキシからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記化合物は、
前記R1、R2、R4、R5及びR6は水素であり、
R3はハロ; ヒドロキシ; アミノ; カルボキシル; シアノ; ニトロ; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキニル; 及び非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルコキシからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記化合物は、
R1、R2、R3、R4及びR6は水素であり、
R5はハロ; ヒドロキシ; アミノ; カルボキシル; シアノ; ニトロ; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキニル; 及び非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルコキシからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記化合物は、
N-(4-((4-(7-クロロキノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)アセトアミド;
または
N-(4-((4-(2-メチルキノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)アセトアミドであることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記代謝疾患は、糖尿病または脂肪肝疾患であることを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記糖尿病は、2型糖尿病であることを特徴とする、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記糖尿病は、肥満から由来したことを特徴とする、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記脂肪肝疾患は、脂肪肝、脂肪肝炎及び脂肪肝関連肝硬変からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記化学式1の化合物は、CYP4A阻害効果があることを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記化合物は、肝でのブドウ糖の吸収を促進させる効果を示すことを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記化合物は、小胞体ストレスによる活性酸素(reactive oxygen)を抑制する活性を示すことを特徴とする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項13】
下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、代謝疾患の予防または改善用食品組成物:
<化学式1>
【化2】
前記化学式1に於いて、
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy)からなる群から選択されるものである。
【請求項14】
代謝疾患の予防または治療用製剤を製造するための下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用:
<化学式1>
【化3】
前記化学式1に於いて、
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy)からなる群から選択されるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月21日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0167685号を優先権主張し、前記明細書全体は本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、CYP4A阻害化合物を有効成分として含む代謝疾患の予防または治療用組成物に関するものであり、より詳細には、本発明で提供する化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む代謝疾患の予防、改善、治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
生活環境の変化によって現代人の内臓脂肪型肥満が増加し、糖尿病、インスリン抵抗性症候群、脂肪肝、脂質代謝異常(高脂血症)、高血圧などの疾病の発症が急増している。これらの疾患は代謝疾患(メタボリックシンドローム)に分類される。これらの疾患は、それぞれの治療的機序とは別に相互の発生リスクを増加させ、老化、ストレス及び免疫機能の低下などの多元的な生体代謝の変化と関連性がある。
【0004】
まず、糖尿病は病気率及び死亡率の主要因である。慢性的に上がった血糖量は体を衰弱させる以下の合併症を誘発する。多くの場合、透析または腎移植を求める腎症; 末梢神経障害; 失明をもたらす網膜症; 切断をもたらす足及び足の潰瘍; 時々に硬変に発展する脂肪肝疾患; 及び冠状動脈疾患及び心筋梗塞に対する発症性。
【0005】
糖尿病には主な要種が二種類ある。タイプI、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、ランゲルハンス島のインスリン-生成β細胞の自己免疫性破壊によってもたらされる。前記疾患は通常的に幼児期または思春期に発生する。前記疾患に対する治療は主にインスリンを一日に数回を注入することに構成されており、この時にインスリンの投与量を調節するために血糖量を数回検査するが、これは過量のインスリンが低血糖をもたらし、脳または他の機能の損傷をもたらすことが理由である。
【0006】
タイプII(2型)、またはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)は、典型的に大人から発展する。NIDDMは脂肪組織、筋肉及び肝のようなブドウ糖を利用する組織がインスリンの作用に対して耐性を有することに関連している。初期にはランゲルハンス島のβ細胞は過量のインスリンを分泌することにより補償を行う。最終的な膵島(pancreatic islet)の不全は代償不全及び慢性高血糖症をもたらす。一方、中程度の膵島の不全は末梢インスリン抵抗性を追い抜くか、または同時に発生する。NIDDMの治療に有用な複数の群の医薬がある:1)直接にインスリン分泌を刺激するが、低血糖を誘発する恐れがあるインスリンエミッター; 2)ブドウ糖誘導性インスリン分泌を強化するが、毎食事の前に摂取をしなければならない食事用インスリンエミッター; 3)肝のブドウ糖新生(これは、糖尿病で大きく伸びる)を抑制するメトホルミンを含むビグアナイド; 4)インスリンに対する末梢反応性を改善するが、体重の増加、浮腫及び肝毒性のような副作用を有するチアゾリジンジオン誘導体であり、シグリタゾンとピオグリタゾンのようなインスリン増感剤; 5)慢性の高刺激の条件下で膵島が不全なときにNIDDMの末期で多くの場合に要求されるインスリン注入。
【0007】
また、インスリン抵抗性は相当な高血糖の症状がなくても発生することがあり、一般的に動脈硬化、肥満、高脂血症及び本態性高血圧に関連している。インスリン抵抗性の根幹をなす機序は不明であるが、小胞体(ER)ストレスが肥満の個人でインスリン抵抗性の発生に対する新しい機序であることが提案されてきた。ERストレスはCa2+恒常性の破壊、タンパク質/脂質生合成の過負荷、及び酸化的ストレスによって起こることが報告されており、最近はERストレス及びUPR経路が糖尿病の病因論で一役を果たすことが分かった。しかし、UPR経路を直接調節する正確な機序に於いては理解を得ていない。
【0008】
また、インスリン抵抗性は脂肪肝に関連しており、これは慢性炎症(NASH:「非アルコール性脂肪肝炎」)、線維症、及び肝硬変に発展することができる。
【0009】
一方、前述した通り、インスリン抵抗性症候群、糖尿病などに起因して非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD)/脂肪肝、脂肪肝炎、脂肪肝炎関連(連関)肝硬変など)が発生する場合が多く報告されており、前記疾患の治療機序及び戦略は根本的に同様であることもあるが、実質的に具体的な治療物質によっては、インスリン抵抗性を減少させる効果とは別に脂肪肝炎などの肝疾患に対してどれだけの有効レベルの治療効果を示すことができるかに於いては論難である。現在まで非アルコール性脂肪肝疾患の治療薬として承認された薬はないことが実情である。脂肪肝炎や非アルコール性脂肪肝関連肝硬変に対する治療薬が必ず必要である。しかし、現在までに線維化の改善に効果的であり、安全であり、承認された薬剤はない。現在、多くの研究が進められており、一部では効果が見えるが、まだ臨床に適用するには制限事項がある。一例で、2型糖尿病の治療に使用されるメトホルミン(Metformin)の場合、大人と小児NASH(非アルコール性脂肪肝炎)患者の研究では脂肪肝炎の組織学的改善効果がないことが報告されたこともあった(非特許文献1、非特許文献2)。また、ピオグリタゾンの投与によって肝線維化が改善されることはなかったという報告もあった(非特許文献3)。
よって、糖尿病、脂肪肝疾患などの代謝疾患に対して多角的に有効な効果を示す治療薬の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】チョン カプジン、ギム ヨンドン、非アルコール性脂肪肝疾患の薬物治療:制限事項、大韓内科学会春季学術発表論文集2018、251-256.
【文献】Haukeland JW et al. 、Metformin in patients with nonalcoholic fatty liver disease:a randomized、controlled trial. Scand J Gastroenterol 2009; 44:853-860.
【文献】Arun J. Sanyal et al. 、Pioglitazone、Vitamin E、or Placebo for Nonalcoholic Steatohepatitis、N Engl J Med 2010 ; 362:1675-1685.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の詳細な説明
技術的課題
これに於いて、本発明者らは糖尿病及び脂肪肝疾患のような疾病群の代謝疾患に対して優れる効果を示す物質を探すために例の努力を果した結果、本発明で開示する化学式1の化合物はCYP4A阻害効果が顕著であり、肝細胞へのブドウ糖の吸収を促進し、肝細胞での脂肪蓄積を抑制し、小胞体ストレスによる活性酸素の生成を抑制する活性を示すのみならず、脂肪肝炎の治療効果を示すことを確認してから本発明を完成した。
【0012】
従って、本発明の目的は下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである。
また、本発明の目的は下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が有効成分を構成する、代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである。
また、本発明の目的は下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が有効成分を必須的に構成する、代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである:
<化学式1>
【化1】
前記化学式1に於いて、
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy)からなる群から選択されるものである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、代謝疾患の予防または改善用食品組成物を提供するものである。
また、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が有効成分を構成する、代謝疾患の予防または改善用食品組成物を提供するものである。
また、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が有効成分を必須的に構成する、代謝疾患の予防または改善用食品組成物を提供するものである。
【0014】
本発明の他の目的は、代謝疾患の予防または治療用製剤を製造するための、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供するものである。
【0015】
本発明の他の目的は、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む代謝疾患の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
技術的解決方法
前記本発明の目的を達成するために、本発明は、
下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、代謝疾患の予防と改善または治療に用いられる組成物を提供する。
また、本発明は、下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が有効成分を構成する、代謝疾患の予防と改善または治療に用いられる組成物を提供する。
また、本発明は、下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩が有効成分を必須的に構成する、代謝疾患の予防と改善または治療に用いられる組成物を提供する:
<化学式1>
【化2】
前記化学式1で
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy )からなる群から選択されるものである。
【0017】
前記本発明の他の目的を達成するために、本発明は代謝疾患の予防または治療用製剤を製造するための前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0018】
前記本発明のさらに他の目的を達成するために、本発明は、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む代謝疾患の治療方法を提供する。
【0019】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0020】
本発明に於いて、下記用語は特に指示されない限り、下記にて記載された意味を含む。定義されていない任意の用語は当該分野で認められる意味を含む。
【0021】
本発明に於いて、用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオル(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)を意味する。
【0022】
本発明に於いて、用語「シアノ」基とは、-CNを意味する。
【0023】
本発明に於いて、用語「アミノ」とは、単独または組み合わせの形で、窒素原子を通じて結合された一次、二次、または三次アミノ基を意味することでもある。本発明に於いて、前記二次アミノ基はアルキル置換基を有することを意味することでもあり、前記の三次アミノ基は二つの同様な又は相異なアルキル置換基を有することを意味することでもある。これらに限定されないが、例えば、-NH2 、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、またはメチルエチルアミノ等でもある。好ましくは、一次アミノ及びC1-C6のアルキルアミノ(より好ましくは、C1-C4のアルキルアミノ、更により好ましくはC1-C3のアルキルアミノ)からなる群から選択されることでもあり、アルキルに関しては後述の説明を参照すれば理解することができる。
【0024】
本発明に於いて、用語「アルキルアミノ」とは、「アミノアルキル」と同じ意味として見做せる。ここでアミノ基に付着されるアルキル基は1個または2個以上でもある。
【0025】
本発明に於いて、用語「ニトロ」基とは、-NO 2を意味する。
【0026】
本発明に於いて、用語「置換された」とは、他の明示がいない限り、少なくとも一つの置換基、例えば、ハロゲン原子、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、チオール、カルボキシル、アミド、ニトリル、硫化、ジスルフィド、スルホニル、ホルミル、ホルミルオキシ、またはホルミルアミノを一つまたは複数含むことを意味する。他の明示がいない限り、これらの置換によって得られた構造が本発明の化学式1で表示される化合物の性質(特に、本発明で目的とする使用に関連する活性)に著しく悪影響を及ぼさない場合に、本発明の化学式1で表示される化合物について記述された任意の基または構造が置換されることができる。
【0027】
用語「アルキル」とは、脂肪族飽和炭化水素が水素原子1個を失い生成される1価の基を意味する。本発明に於いて、アルキルは、好ましくは、非置換または置換された炭素数1~6(C1、C2、C3、C4、C5、またはC6)の線状(直鎖形)または分岐型(側鎖を含む形)アルキルの種類を意味することもある。C1-C6の線状または分岐アルキルは、これらに限定されないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルなどが挙げられる。さらに好ましく、本発明に於いて、アルキルは非置換または置換されたC1-C4の線状または分岐アルキルでもあり、さらに好ましくは、非置換または置換されたC1-C3の線状または分岐アルキルであることもある。
【0028】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つ(すなわち、1つ以上)の二重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素基を意味する。本発明に於いて、アルケニルは、好ましく、非置換または置換された炭素数1~6(C1、C2、C3、C4、C5、またはC6)の線状または分岐アルケニルの種類を意味することでもある。C1-C6の線状または分岐アルケニルは、これらに限定されないが、例えば、ビニル(-CH=CH2 )、アリル(-CH2 CH=CH2 )、-CH=CH(CH3)、 -CH=C(CH3)2 、-C(CH3)=CH2 、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、1,3-ブタジエニル(butadienyl、-CH=CH-CH=CH2 )、及びヘプタ-1,6-ジエン-4-(-CH2 -(CH2CH=CH2)2)などが挙げられる。さらに好ましく、本発明に於けるアルケニルは、非置換または置換されたC1-C4の線状、または分岐アルケニルでもあり、さらに好ましくは、非置換または置換されたC1-C3の線状または分岐アルケニルことでもある。
【0029】
用語「アルキニル」とは、少なくとも1つ(すなわち、1つ以上)の三重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素基を意味する。本発明に於いて、アルキニルは好ましくは、非置換または置換された炭素数1~6(C1、C2、C3、C4、C5、またはC6)の線状または分岐アルキニルの種類を意味することでもある。C1-C6の線状または分岐アルキニルは、これらに限定されないが、例えば、エチニル(-C≡CH)、-C≡CH(CH3)、-C≡C(CH2CH3)、 -CH2C≡CH、-CH2C≡C(CH3)及び-CH2C≡C(CH2CH3)などがある。さらに好ましく、本発明に於けるアルキニルは非置換または置換されたC1-C4の線状、または分岐アルキニルでもあり、さらに好ましくは、非置換または置換されたC1-C3の線状または分岐アルキニルでもある。
【0030】
用語「アルコキシ」とは、「-O-アルキル基」を意味し、アルキルは前述の開示の通りである。本発明に於いて、アルコキシは、好ましく非置換または置換された炭素数1~6(C1、C2、C3、C4、C5、またはC6)の線状または分岐アルコキシ置換基の種類を意味することでもある。線状または分岐のC1-C6アルコキシは、これらに限定されないが、例えば、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシなどが挙げられる。さらに好ましく、本発明に於けるアルコキシは、非置換または置換されたC1-C4の線状または分岐アルコキシであることもあり、さらに好ましくは、非置換または置換されたC1-C3の線状または分岐アルコキシであることもある。
【0031】
一つの実施態様(embodiment)に於いて、好ましく、本発明は下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、代謝疾患の予防、改善または治療に用いられる組成物を提供する:
<化学式1>
【化3】
前記化学式1に於いて、
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素; ハロ; ヒドロキシ; アミノ; カルボキシル; シアノ; ニトロ; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 及び非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルコキシからなる群から選択されるものである。
【0032】
さらに他の実施態様として、本発明の組成物に含まれる前記化学式1の化合物は、好ましくR1、R2、R4、R5及びR6は水素であり、R3はハロ; ヒドロキシ; アミノ; カルボキシル; シアノ; ニトロ; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキニル; 及び非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルコキシからなる群から選択されることを特徴とするものでもある。
この実施態様に於いて、本発明の組成物に含まれる化合物は、最も好ましく、N-(4-((4-(7-クロロキノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)アセトアミド(N-(4-((4-(7-chloroquinolin-4-yl)piperazin-1-yl)sulfonyl)phenyl)acetamide))でもあり、これは具体的に下記化学式1-1の構造を有する(本明細書に於いて、#18-1とも示す。)
<化学式1-1>
【化4】
【0033】
さらに他の実施態様として、本発明の組成物に含まれる前記化学式1の化合物は、好ましくR1、R2、R3、R4及びR6は水素であり、R5はハロ; ヒドロキシ; アミノ; カルボキシル; シアノ; ニトロ; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルケニル; 非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルキニル; 及び非置換または置換されたC1-C6の線状または分岐アルコキシからなる群から選択されることを特徴とすることでもある。
この実施態様に於いて、本発明の組成物に含まれる化合物は、最も好ましく、N-(4-((4-(2-メチルキノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)アセトアミド(N-(4-((4-(2-methylquinolin-4-yl)piperazin-1-yl)sulfonyl)phenyl)acetamide))でもあり、これは具体的に下記化学式1-2の構造を有する(本明細書に於いて、#18-2とも示す。)
<化学式1-2>
【化5】
【0034】
前記化合物らは当該業界に公知となった化学的合成法で製造することができ、または商業的に購入して使用することができる。
【0035】
本発明に於いて、用語「薬学的に許容可能な」は、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的に好ましい薬学的組成物を製造するのに有用であり、獣医学的使用のみならず、ヒトに対する薬学的使用にも有用であることを意味する。
【0036】
本発明に於いて、前記薬学的に許容可能な塩とは、前記定義の通り、薬学的に許容可能であり、目的とする薬理活性を有する、前記化学式1で表示される化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)の塩を意味する。その塩の例は、これに限定されないが、無機酸(inorganic acid)[例えば、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、硫酸(sulfuric acid)、リン酸(phosphoric acid)、硝酸(nitric acid)など]で形成される酸付加塩、及び酢酸(acetic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、酒石酸(tartari acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)、フマル酸(fumaric acid)、マレイン酸(maleic acid )、アスコルビン酸(ascorbic acid)、安息香酸(benzoic acid)、タンニン酸(tannic acid)、パモ酸(pamoic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ポリグルタミン酸(polyglutamic acid)、ナフタレンスルホン酸(naphthalene sulfonic acid)、ナフタレンジスルホン酸(naphthalene disulfonic acid)、及びポリガラクツロン酸(poly-galacturonic acid)のような有機酸(organic acid)で形成された塩を含む。前記化合物は、また当業者に知られている薬学的に許容可能な4次塩の形態で投与することができる。特に、塩化、臭化、ヨーダイド、-O-アルキル、トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、スルホン酸、リン酸、またはカルボキシレート(例えば、ベンゾエート、サクシネート、アセテート、グリコレート、マリエイト(maleate)、マレート(malate)、フマレート、シトレート、タルトレート、アスコルビンベイト、桂皮酸、マンデル酸及びジフェニルアセテート)を含む。本発明に於いて、前記化合物は、その薬学的に許容可能な塩の形態のみならず、通常の方法によって製造することができるすべての塩、水和物、及び溶媒和物を全部含み、あらゆる形態でも提供することができる。
【0037】
本発明者らは、前記化学式1で表示される化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)が既存のCYP4A(cytochrome P450 4A)特異的阻害剤として知られているHET0016(N-ヒドロキシ-N`-(4-ブチル-2-メチルフェニル)-ホルムアミジン)よりもCYP4Aの阻害効果が優れているだけでなく、糖尿病及び脂肪肝疾患(特に、NAFLD)疾病群の代謝疾患に対する予防及び治療の著しい効果を示すことを確認した。
具体的に、本発明者らは、先行研究を通じてCYP4A(cytochrome P450 4A)の阻害が小胞体(ER)ストレスによって誘導された肝インスリン抵抗性及びアポトーシス(apoptosis)に対する有力な(potent)治療ターゲットであることを確認した(韓国登録特許10-1235811)。哺乳動物の肝でシトクロムP450酵素群(CYP450s)は、主にER膜に偏在化されている。本発明者らは、前記先行研究を通してCYP4A阻害剤が小胞体ストレスを抑制し、血中インスリン濃度を低減させ、肝細胞の細胞死滅を抑制する機序を示し、肥満から由来した糖尿病と脂肪肝の予防または治療用薬学的組成物として使用することができることを確認した。
【0038】
本発明に於いて、前記治療とは、他に記載がない限り、前記用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患または疾病の複数の症状を逆転させるか、緩和させることか、その進行を抑制することか、または予防すること意味することもある。
【0039】
代謝疾患(または代謝症候群)とは、肥満、インスリン抵抗性によって発生される第2型糖尿病、代謝に関連する各種心血管疾患の危険因子などを含み、様々な複数の代謝異常が複合的に発生する疾患群を指すものである。これはインスリン抵抗性及びこれに関連する複雑で多様な複数の代謝異常と臨床的様相を全部包括して説明することができる有用な概念であり、本発明に於いて、肥満、糖尿病、脂肪肝疾患などの危険因子が一緒に増加する疾患または症候群を指す。
本発明に於いて、用語「代謝疾患」は、これに限定されないが、糖尿病や脂肪肝疾患などを含むこともある。
【0040】
本発明に於いて、「糖尿病」とは、糖代謝機能の異常を特徴とする慢性疾患である。前記糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度を調節する最も重要なホルモンであるインスリンの絶対的生産欠乏の結果(インスリン依存型糖尿病または1型糖尿病)であるか、標的臓器でのインスリンの作用低下の結果によって誘発される(インスリン非依存型糖尿病または2型糖尿病)。
好ましくは、本発明に於いて、糖尿病は、インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)を意味する。前記インスリン非依存型糖尿病は、一般的に糖代謝及び脂質代謝の異常を示す。すなわち、前記インスリン非依存型糖尿病患者の場合、食品を摂取した後のインスリン分泌が遅くなるか、十分な量が分泌されることができないことにより肝での糖生成が減られず、筋肉、肝、及び脂肪のような末梢組織による血糖の利用率が増加することができない。これにより生じた食後の過血糖の症状は、インスリンの分泌を常に促進させて結果的に慢性インスリン過多症を誘発する。この状態が続くと、これ以上β細胞が増加したインスリン比率を維持することができなくなり、最終的にインスリン抵抗性が生じる。継続的なインスリン抵抗性はインスリンの生成に問題をもたらして低インスリン血症を誘導することになる。特に、グルカゴンに対するインスリンの比が減少すると、肝での糖新生が増加する。
【0041】
また、インスリン抵抗性の原因として血中遊離脂肪酸の増加が提示されている。血中遊離脂肪酸の増加は、末梢組織でインスリンによる糖の利用を抑制させ、肝組織での糖新生の抑制を妨げることにより、血糖値を高める。前記インスリン非依存型糖尿病では、血中の遊離脂肪酸の増加だけでなく、血中コレステロールと中性脂質の増加現象及びHDL-コレステロールの減少現象が起こり、これらの脂質異常症(dyslipidemia)の発症は健常者に比べて2~4倍程度高い。
【0042】
一方、糖尿病と糖尿病の合併症に関する研究にて、糖尿病が酸化的ストレスと密接な関連があることが報告されている。糖尿病で表れる慢性高血糖はブドウ糖の自動酸化、タンパク質のグリコシル化などの様々な経路にて遊離基の生成を増加させ、反応性が高いこれらの物質によって酸化的ストレスが高くなる。更に、高血糖で誘発された酸化的ストレスを防御するには、抗酸化酵素の発現と活性が不十分であり、抗酸化酵素の活性が異常に増加するようになり、これらの酵素の間に維持されていたバランス状態が崩れることになる。
【0043】
本発明の一実施例に於いて、前述した化学式1の化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)が糖尿病及び高血糖による酸化的ストレスを緩和することができることを確認した。つまり、前記化合物は肝細胞への血糖吸収を促進する効果を示し、小胞体ストレスによる活性酸素種(reactive oxigen species、ROS)の発生の抑制及びROSの除去に効果があることを確認した。
【0044】
一方、本発明に於いて、用語「脂肪肝疾患」とは、脂肪肝の脂肪肝炎、脂肪肝関連肝硬変症までの全疾患の様相を包括する疾患群を意味することでもある。
【0045】
前記「脂肪肝」とは、過度な脂肪やアルコールの摂取、肝の脂肪合成の増加、中性脂肪排出及び燃焼の減少などにより肝に脂肪が蓄積されることにより発生し、一般的に肝に蓄積された脂肪の割合が5%以上の場合、脂肪肝と定義する。脂肪肝に蓄積された殆どの脂肪はトリグリセリド(triglyceride)である。
【0046】
脂肪肝は過飲によるアルコール性脂肪や肝や肥満、糖尿病、高脂血症、または薬物などによる非アルコール性脂肪肝に分けることができる。アルコール性脂肪肝はアルコールを過剰摂取したことにより肝での脂肪合成が促進され、正常なエネルギー代謝が行われないことによって発生することになる。一方、非アルコール性脂肪肝は肥満、インスリン過敏症、糖尿病などを患っている人々から多く発生する。このような現象はインスリン抵抗性または過度の脂肪分解により血液中の遊離脂肪酸の濃度が高くなることによって非アルコール性脂肪肝が発生することができることを示唆する(A. B.Mayersonなど、Diabetes、51:797-802(2002); K. F. Petersenなど、Diabetes、54:603-608(2005))。
【0047】
本発明に於いて、前記脂肪肝はアルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、栄養性脂肪肝、飢餓性脂肪肝、肥満性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝からなる群から選択されるいずれか一つ以上のものであることもあり、好ましくは、非アルコール性脂肪肝、肥満性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝であることもあり、最も好ましくは、糖尿病性脂肪肝でもあるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明に於いて、用語「脂肪肝炎」とは、肝内の脂肪沈着を見せつつ肝細胞の損傷(風船様変性)を伴った炎症所見や線維化病変がある場合を意味するもので、肝内の脂肪沈着を見えますが、肝細胞の損傷(風船様変性)及び線維化の所見がない場合である「脂肪肝」と区別して使用される。
【0049】
本発明に於いて、用語「脂肪肝関連肝硬変」とは、組織学的に脂肪肝または脂肪肝炎の所見を伴う肝硬変、或いは過去に組織学的に証明された脂肪肝または脂肪肝炎の患者に生じた肝硬変を意味する。
【0050】
好ましい一つの実施態様に於いて、本発明の脂肪肝疾患は「非アルコール性脂肪肝疾患」を意味する。前記非アルコール性脂肪肝疾患は非アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪肝関連肝硬変を含む意味であり、当該業界で前記疾患群として知られているものであれば、その種類はそれに限定されない。
【0051】
本発明の一実施例によれば、前述した化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)は、肝細胞での脂肪蓄積を抑制する効果を示し、脂肪肝の予防または治療効果を示すことができることを確認した。更に、脂肪肝炎の治療効果が顕著であることを確認した。
【0052】
本発明で提供する組成物は、これらに限定されないが、好ましく食品組成物または薬学的組成物であることもある。
【0053】
本発明に係る食品組成物に於いて、前述した化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)またはその薬学的に許容可能な塩は、機能性食品(functional food)、栄養補助食品(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加物(food additives)などの様々な食品組成物の形態(タイプ)で提供されることができる。
【0054】
前記タイプの食品組成物は当該業界に公知された通常の方法に基づいて様々な形で製造することができる。これに限定されないが、例えば、健康食品としては茶、ジュース及びドリンクの形態で前記化合物を製造(添加)して飲用可能にするように液状化して提供するか、顆粒化、カプセル化、及び粉末化して提供することができる。
一例で、食品としては、これに限定されないが、飲料(茶、ジュース及びドリンク、アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソーセージコンビーフなど)、パン類及び麺類(例:うどん、そば、ラーメン、スパゲート、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に前記化合物を添加して製造することができる。
【0055】
また、本発明に係る薬学的組成物に於いて、前述した化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)またはその薬学的に許容可能な塩は、臨床投与時に経口及び非経口の複数の剤形で投与されることができますが、製剤化する場合には通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤、又は賦形剤を使用して製造することができる。
【0056】
経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤(troche)などが含まれており、これらの固形製剤は、複数の本発明の前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)またはゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤の他にも、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、経口液、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他にも、さまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることもある。
【0057】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤はウィテプソル(witepsol )、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用できる。
【0058】
また、前述した化合物(特に、最も好ましい一例として、化学式1-1または化学式1-2の化合物)またはその薬学的に許容可能な塩の人体に対する投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患の程度によって異なる場合があり、体重が70kgである成人患者を基準とすると、一般的に0.01~1000 mg /日(day)であり、好ましくは0.1~500 mg /日(day)であり、また、医師または薬剤師の判断に基づいて、一定時間の間隔で1日当たり1回乃至数回の分割で投与することもできる。
【0059】
本発明の薬学的組成物は単独で、または手術、ホルモン療法、化学療法、及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0060】
一方、本発明に係る前記化合物は目的に応じて様々な形態で製剤化することができる。下記にて本発明の組成物のための製剤の例を示す。
【0061】
製剤例1:薬学的製剤の製造
1.散剤の製造
本発明に係る化学式1の化合物2 g
乳糖1 g
前記成分を混合し、シーラントに充填して散剤を製造した。
【0062】
2.錠剤の製造
本発明に係る化学式1の化合物100mg
トウモロコシの澱粉100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
前記成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法に基づいて打錠して錠剤を製造した。
【0063】
3.カプセル剤の製造
本発明に係る化学式1の化合物100mg
トウモロコシのでんぷん100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
前記成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法に基づいてゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0064】
4.丸の製造
本発明に係る化学式1の化合物1 g
乳糖1.5 g
グリセリン1 g
キシリトール0.5 g
前記成分を混合した後、通常の方法に基づいて1錠当たり4 gになるように製造した。
5.顆粒の製造
本発明に係る化学式1の化合物150mg
大豆抽出物50mg
ブドウ糖200mg
澱粉600mg
前記成分を混合した後、30%エタノール100mgを添加し、摂氏60℃で乾燥して顆粒を形成した後、シーラントに充填した。
【0065】
また、本発明は代謝疾患の予防または治療用の製剤を製造するための下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
<化学式1>
【化6】
前記化学式1で
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy)からなる群から選択されるものである。
【0066】
また、本発明は前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む代謝疾患の治療方法を提供する。
<化学式1>
【化7】
前記化学式1で
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立的に、水素(hydrogen)、ハロ(halo)、ヒドロキシ(hydroxy)、アミノ(amino)、カルボキシル(carboxyl)、シアノ(cyano)、ニトロ(nitro)、アルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アルキニル(alkynyl)及びアルコキシ(alkoxy)からなる群から選択されるものである。
【0067】
本発明の前記「有効量」とは、個体に投与したとき、代謝疾患の改善、治療、予防、検出、診断、または代謝疾患の抑制、または減少効果を示す量を意味し、前記「個体」とは、動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトを含む動物であることでもあり、動物に由来する細胞、組織、器官等でもある。前記個体は前記効果が必要な患者(patient)でもある。
本発明の前記「治療」とは、代謝疾患または代謝疾患の症状を改善させることを包括的に指し、これは代謝疾患を治癒すること、または実質的予防、または状態を改善させることを含むことでもあり、代謝疾患から始まった一つの症状または殆どの症状を緩和させること、または治癒すること、または予防することを含むが、これに限定するものではない。
【0068】
本発明の用語「~を含む(comprising)」とは、「含有する」または「特徴とする」と同一に使用され、組成物または方法に於いて、記載されていない追加的成分要素または方法の段階を排除しない。用語「~からなる(consisting of)」とは、別途に記載されていない追加的要素、段階または成分などを除外することを意味する。用語「必須的にからなる(essentially consisting of)」とは、組成物または方法の範囲に於いて、記載された成分要素または段階に加えて、その基本的特性に実質的な影響を及ぼさない成分要素または段階などを含むことを意味する。
【発明の効果】
【0069】
本発明で開示する化合物はCYP4A阻害効果が顕著であり、肝細胞へのブドウ糖の吸収を促進し、肝細胞での脂肪蓄積を抑制し、小胞体ストレスによる活性酸素を抑制し、脂肪肝炎の治療などの活性を示して、糖尿病及び脂肪肝疾患などの代謝疾患治療剤の開発に極めて有用に活用することができる。また、前記化合物はCYP4Aの阻害効果が顕著であり、様々なCYP4A関連疾患(CYP4A-related diseases)、特にCYP4A過発現疾患に対して同時治療の効果を有りする。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、化学式1の化合物を処理してCYP4A活性の阻害度を測定した結果を示す。具体的には、各試験化合物、CYP4A発現細胞ライセート (CYP4A expressing cell lysate)及びルシフェリン-4A (ルシフェリン-4A)を混合し、CYP4A反応が十分に起きるように行った後、各化合物のCYP4A活性の阻害能を細胞の発光値を比較しつつ測定した(N/C:野生型HepG2 細胞ライセート(cell lysate)を用いた対照群、Cyp4a11:化合物処理せずにCYP4A発現細胞ライセートだけを反応させた群、HET0016:CYP4A発現細胞ライセートにHET0016化合物処理群、Cani #18及びCandi#18-1:CYP4A発現細胞ライセートに化学式1-1の化合物処理群、Candi#18-2:CYP4A 発現細胞ライセートに化学式1-2の化合物処理群)。
【
図2】
図2は、試験化合物の濃度に応じたCYP4A活性抑制能力を発光値で測定した結果である(DMSO(□):ジメチルスルホキシド処理、HET0016(○):HET0016化合物を商業的に売るものを購入して処理、KBSI-C4-180(△)及びKBSI-C4-181(▽):化学式1-1の化合物処理、KBSI-C4-182(◇):化学式1-2の化合物処理、HET0016化合物(五角形):実験室で合成して収得したHET0016化合物を処理)。
【0071】
【
図3a】
図3a及び
図3bは、試験化合物のブドウ糖の吸収促進効果を蛍光で確認した結果を示す。具体的には、各試験化合物と培養した肝細胞に小胞体ストレスを誘導するタプシガルギン(Thapsigargin)またはツニカマイシン(Tunicamycin)を反応させた後、インスリンと2-NBDGを反応させて、本発明の化合物のブドウ糖の吸収促進効果を確認した。(励起 (Excitation):488 nm、放射 (Emission):508 nm)
【
図3b】
図3a及び
図3bは、試験化合物のブドウ糖の吸収促進効果を蛍光で確認した結果を示す。具体的には、各試験化合物と培養した肝細胞に小胞体ストレスを誘導するタプシガルギン(Thapsigargin)またはツニカマイシン(Tunicamycin)を反応させた後、インスリンと2-NBDGを反応させて、本発明の化合物のブドウ糖の吸収促進効果を確認した。(励起 (Excitation):488 nm、放射 (Emission):508 nm)
【0072】
【
図4】
図4は、試験化合物の肝細胞での脂肪蓄積の抑制活性を示した結果である。具体的には、各試験化合物と培養した肝細胞の脂肪蓄積を誘導する脂肪酸であるパルミチン酸を入れて反応させた後、脂肪蓄積の程度を蛍光を用いて定量した(励起:530 nm、放射:635 nm)。
【
図5a】
図5a及び
図5bは、試験化合物の活性酸素消去能を示した結果である。具体的には、各試験化合物と培養した肝細胞に小胞体ストレスを誘導するタプシガルギンまたはツニカマイシンを反応させた後、ROS(活性酸素種)量の差を発光度を用いて定量した(励起:488 nm、放射:508 nm)。
【
図5b】
図5a及び
図5bは、試験化合物の活性酸素消去能を示した結果である。具体的には、各試験化合物と培養した肝細胞に小胞体ストレスを誘導するタプシガルギンまたはツニカマイシンを反応させた後、ROS(活性酸素種)量の差を発光度を用いて定量した(励起:488 nm、放射:508 nm)。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を詳細に説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
実施例1:CYP4A阻害活性を示す化合物のスクリーニング
本発明者らはCYP4A阻害活性を示す化合物が、糖尿病及び脂肪肝の予防または治療効果を示すことができるという先行発明の内容に基づいて、市販中の化合物ライブラリスクリーニングを通じてCYP4A阻害剤を選別した。
【0075】
ヒトの肝の細胞株であるHepG2細胞にCYP4A11 DNA(GenBank :S67580.1)をトランスフェクション法で入れて、タンパク質が発現されるように24時間インキュベーターに入れて培養した。その後、RIPAバッファー(20 mM Tris-HCl(pH 7.5)、150 mM NaCl、1 mM Na2EDTA、1 mM EGTA、1% NP-40、1% デオキシコール酸ナトリウム、2.5 mM ピロリン酸ナトリウム、1 mM b-グリセロリン酸塩、1 mM Na3VO4 、1μg/ ml ロイペプチン)を入れて細胞を破砕してタンパク質を抽出した後、以下の方法でCYP4A活性実験及び化合物スクリーニングを行った。
【0076】
まず、96ウェルプレート(白色不透明の未処理ポリスチレン製プレート平底ウェル;white opaque polystyrene nontreated flat-bottom well)にそれぞれの候補化合物を水に濃度別に混ぜた後、(
図1の実験では化合物全部を5μMで使用)、1M KPO
4バッファー(13.94g K
2HPO
4、2.72g KH
2PO
4 、100 ml基準)、5 mM ルシフェリン-4A、1 pmol CYP4A発現細胞(HepG2)ライセートを入れ、常温で10分間反応させた。NADPH 再生システム(NADPH Regeneration System)(20X sol.A 、100X sol.B in water、Cal. 番号:D399、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を入れた後、1時間常温に置いてCYP4A反応が十分に行われるようにし、ルシフェリン検出試薬を入れることでCYP4A反応を終わらせ、発光(luminescence)反応が起きるように誘導して、20分間常温で反応させた。マイクロプレートリーダー(microplate reader)機でそれぞれのウェルから出る発光値を比較してCYP4A活性阻害の程度を測定した。
【0077】
その結果、本発明で提供される化学式1の構造を有する化合物がCYP4Aの阻害能が顕著であることが確認でき、これらを選別した。
図1及び
図2は、選別された化合物の中でも、特に、より優れた化合物#18-1(化学式1-1の化合物)及び化合物#18-2(化学式1-2の化合物)の効果を代表的に示す。
化学式1の構造を有する化合物は、公知のCYP4A特異的な阻害剤であるHET0016(N-ヒドロキシ-N'-(4-ブチル-2-メチルフェニル)-ホルムアミジン)よりも更に優れるCYP4A阻害能力を発揮するものが示され、IC50値はHET0016と同様な程度であることを確認した。
【0078】
実施例2:ブドウ糖の吸収促進効果
ヒトの肝の細胞株であるHepG2細胞を10% FBS(ウシ胎児血清)が存在する高濃度グルコースDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、グルコース25 mM)培地で培養した後、以下のような方法でブドウ糖の吸収実験を行った。
【0079】
まず、96ウェルプレート(黒、培養用クリアボトムプレート (clear bottom culture plate))に前記方法でHepG2細胞を1 X 104細胞/ウェルに成長させた後、前記実施例1でスクリーニングされたそれぞれの化合物を5μM入れて6時間培養した。これに、肝細胞に小胞体ストレスを誘導するタプシガルギンまたはツニカマイシンを入れた後、24時間を37℃インキュベーターに入れて反応させた。その後、インスリンと2-NBDG(2-(N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)-2-デオキシグルコース)を入れ、37℃インキュベーターで3時間反応させた後、 、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した後、マイクロプレートリーダー(励起:488 nm、放射:508 nm)で蛍光を測定した。
【0080】
その結果、試験物質の処理なしでタプシガルギンまたはツニカマイシンだけを処理した対照群では、対照群(control)に比べてブドウ糖の吸収が極めに抑制された。一方、
図3a及び
図3bに代表的に示したように、#18-1(化学式1-1の化合物)または#18-2(化学式1-2の化合物)化合物を処理した試験群では、陽性対照群(HET0016 )と同等ないしそれ以上の程度のブドウ糖の吸収促進効果が顕著であることを確認した。特に、ツニカマイシン処理群にて示したように、#18-1(化学式1-1の化合物)または#18-2(化学式1-2の化合物)化合物は、公知のHET0016化合物よりもブドウ糖の吸収促進に優れる効果があった。
【0081】
実施例3:肝細胞での脂肪蓄積の抑制活性
ヒトの肝の細胞株であるHepG2細胞を10% FBS(ウシ胎児血清)が存在する高濃度グルコースDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、グルコース25 mM )培地で培養した後、以下の方法で脂肪蓄積を測定する実験を行った。
【0082】
まず、96ウェルプレート(黒、 培養用クリアボトムプレート)に前記方法でHepG2細胞を5 X 103細胞/ウェルに成長させた後、前記実施例1でスクリーニングされたそれぞれの化合物を5μM入れた後、6時間培養した。これに、幹細胞から脂肪蓄積を誘導する脂肪酸であるパルミチン酸を入れた後、72時間を37℃インキュベーターに入れて反応させる。その後、4% パラホルムアルデヒドを入れて常温で15分間反応させ固定した後、ナイルレッド溶液(Nile-Red solution)を入れて光を遮断し、37℃で10分間反応させた。反応時間が終了したら、マイクロプレートリーダー(励起:530 nm、放射:635 nm)で蛍光を測定した。
【0083】
その結果、試験物質の処理なしでパルミチン酸を反応させた対照群の細胞では、対照群に比べて脂肪が多量で蓄積されることを確認することができた。一方、
図4に代表的に示したように、#18-1(化学式1-1の化合物)または#18-2(化学式1-2の化合物)化合物を処理した試験群では、陽性対照群(HET0016)と同様な程度で肝細胞での脂肪蓄積が抑制された。
【0084】
実施例4:活性酸素消去能
ヒトの肝の細胞株であるHepG2細胞を、10% FBS(ウシ胎児血清)が存在する高濃度グルコースDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、グルコース25 mM )培地で培養した後、以下の方法で活性酸素除去能を測定する実験を行った。
【0085】
まず、96ウェルプレート(黒、培養用クリアボトムプレート)に前記方法でHepG2細胞を1 X 104細胞/ウェルに成長させた後、前記実施例1でスクリーニングされたそれぞれの化合物を5μM入れて6時間培養した。これに、小胞体ストレスを誘導するタプシガルギンまたはツニカマイシンを入れた後、24時間をインキュベーターに入れて反応させた。その後、5μM H2DCFDA(細胞透過性 2`、7`-ジクロロジヒドロフルオレセイン・ジアセテート )を入れ、37℃のインキュベーターで30分反応させた。その後、PBSで洗浄した後、30分間37℃インキュベーターに入れて発光が起こるように待った。その後、マイクロプレートリーダー(励起:488 nm、放射:508 nm)で蛍光を測定した。
【0086】
その結果、試験物質の処理なしでタプシガルギンまたはツニカマイシンだけを処理した対照群では、対照群に比べてROS量が急増したことを確認した。一方、
図5a及び
図5bに代表的に示したように、#18-1(化学式1-1の化合物)または#18-2(化学式1-2の化合物)の化合物処理群ではROS量が顕著に低下したことを確認した。この効果は陽性対照群(HET0016)と同等ないしそれ以上であった。特に、タプシガルギン処理群に於いて、#18-1及び#18-2全部HET0016よりも優れたROS生成抑制及びROS除去が促進できたことで示された。活性酸素は炎症状態とも関連性がある。実際に、#18-1及び#18-2化合物の脂肪肝炎に対する効果はさらなる実験で証明された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明で開示する化合物は、CYP4A阻害効果が顕著であり、肝細胞へのブドウ糖の吸収促進、肝細胞での脂肪蓄積の抑制、小胞体ストレスによる活性酸素の抑制、脂肪の肝炎治療などの活性を示し、糖尿病及び脂肪肝疾患などに対する代謝疾患治療剤の開発に極めに有用に活用することができ、産業上の利用可能性が極めに優れる。また、前記化合物は、CYP4Aの阻害効果が顕著であり、様々なCYP4A関連疾患(CYP4A-related diseases)、特にCYP4A過発現疾患に対して同時的治療効果を有するので、医薬産業などの分野で産業上の利用可能性が高い。