(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】自動車両の前面モジュール用のハウジング
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20240508BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240508BHJP
F02M 35/10 20060101ALN20240508BHJP
F02M 35/12 20060101ALN20240508BHJP
F01P 5/06 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
B60K11/04 K
B60K11/04 E
B29C45/14
F02M35/10 101N
F02M35/10 101E
F02M35/12 H
F01P5/06
(21)【出願番号】P 2021535645
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 FR2019052915
(87)【国際公開番号】W WO2020128199
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-02
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム、リパ
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、エノン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、アレクサンドル、ラングレー
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ、ダ、コスタ、ピト
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01243455(EP,A2)
【文献】特開2008-173896(JP,A)
【文献】特開昭60-036716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00 - 11/08
B29C 45/14
F02M 35/10 - 35/116
F01P 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流の流れのための流れダクトを画成する、自動車両(1)の前端モジュール(2)用のハウジング(3)であって、
a.リブ(34)によって画定される複数の開口(32)を備えた有孔構造体(30)と、
b.前記有孔構造体(30)に対して永久的に固定され、前記空気流を通さない壁を形成するように前記開口(32)を覆う皮膜(36)と、
を具備し、
前記リブ(34)は、少なくとも部分的に三角形メッシュ、矩形メッシュまたはその他の多角形のメッシュをなして配置されており、前記メッシュのパターンが、同じ形状の反復パターンよりなっている、ハウジング(3)。
【請求項2】
前記有孔構造体(30)は、全てが前記リブ(34)によって画定された少なくとも5つの開口(32)を備えている、請求項1記載のハウジング(3)。
【請求項3】
前記リブ(34)は、少なくとも部分的に三角形メッシュをなして配置されている、請求項1または2に記載のハウジング(3)。
【請求項4】
前記有孔構造体(30)の厚さは1から3mmの間であり、前記皮膜(36)の厚さは0.3から1mmの間である、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のハウジング(3)。
【請求項5】
前記有孔構造体(30)は第1の材料で作られ、前記皮膜(36)は第2の材料で作られ、前記第1および第2の材料同士は異なる組成のものである、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のハウジング(3)。
【請求項6】
前記皮膜(36)は内部空洞(38)を備えている、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のハウジング(3)。
【請求項7】
前記有孔構造体(30)は、材料の連続状態を形成しない幾つかの部分で作られ、それぞれの部分が前記皮膜(36)を介して互いに固定されている、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のハウジング(3)。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか一項に記載のハウジング(3)を製造するための方法であって、前記ハウジング(3)が第1の材料による有孔構造体(30)を有している前記方法において、
a.前記第1の材料とは異なる第2の材料の皮膜(36)の少なくとも1つの層を予熱する段階であって、例えば前記第2の材料が音響絶縁材料である、段階(E1;E2’)と、
b.前記皮膜(36)の少なくとも1つの層を賦形する段階(E2,E30,E31)と、
c.前記皮膜(36)の少なくとも1つの層を射出成形型内に定置する段階(E4;E4’)と、
d.前記第1の材料を前記射出成形型内へと射出することによって、少なくとも前記皮膜(36)の少なくとも1つの層の周囲に前記有孔構造体(30)をオーバーモールドする段階(E5)と、
e.離型する段階(E6)と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から7のうちのいずれか一項に記載のハウジング(3)を備えた前端モジュール(2)において、当該モジュール(2)が空気取入口(20)と空気取出口(22)とを備え、前記流れダクト(4)内に少なくとも1つの熱交換器(8,10)が配置され、前記熱交換器(8,10)の所の前記空気流に対して下流側にモーターファンユニット(12)が配置されていることを特徴とする前端モジュール(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の前端モジュール用のハウジング、および、そのようなハウジングを製造するための方法に関するものである。本発明はまた、そのようなハウジングを備えた前端モジュール、および、そのようなモジュールを備えた自動車両にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車両は、当該自動車両の前端部に位置する開口の形態をとった空気取入口を備えている。流入してくる空気は、その空気と自動車両の冷却系との間での熱交換を可能とするように用いられる。当該冷却系は、当該車両の前端部付近に位置している。もっと具体的には、自動車両のエンジン室へ進入した空気が、当該自動車両の冷却系へと導かれ、流入空気と冷却系の熱交換器との間での熱交換を可能とする。空気取入口と熱交換器との間での空気流の損失を最小限にすることが重要である。具体的には、車両の内部へ進入して自動車両内での熱交換に寄与する前にエンジン室へ漏れ出す空気はいずれも、当該自動車両の空気抵抗係数によからぬ影響を与えてしまう。
【0003】
既知のやり方では、空気取入口から空気取出口まで空気流を循環させるためのモーターファンユニットをハウジングが収容している。ハウジングは、車室内へ放散させる前に空気流を加熱および/または冷却するための熱処理手段をも収容している。例として、熱処理手段(即ち、熱交換器)は、自らを通過する空気流を冷却および除湿するように企図された蒸発器、および、自らを通過するであろう如何なる空気流をも加熱するように企図された凝縮器を備えることができる。
【0004】
そのようなハウジングは通常、プラスチック材料で作られ、熱交換器類やモーターファンユニットが中に配置される内部容積を画定している。
【0005】
これらのハウジングは、熱交換器類を支持することができるように厚さが比較的厚いものであり、従ってプラスチック材料が比較的高価で重量の比較的重いものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、特に軽量でありながら、捩りや曲げの力に対して高剛性であるプラスチック材料のハウジングを提案することである。
【0007】
この目的のために本発明は、空気流の流れのためのダクトを画成する、自動車両の前端モジュール用のハウジングであって、
a.リブによって画定される複数の開口を備えた有孔構造体と、
b.有孔構造体に対して固定され、空気流を通さない壁を形成するように開口を覆う皮膜と、
を具備したハウジングを提案するものである。
【0008】
複数の開口を有した有孔構造体は、空気流の損失を最小限にしつつ十分な剛性を有しながら、従来の前端モジュールよりも軽量であることとなる。それは、これらの開口同士の、所与のメッシュに従った、かくして互いに連結されたリブ同士の網状組織を形成する配置のおかげである。
【0009】
皮膜は、ハウジングを密封して熱交換器を通る空気流の流れを保証するために、各開口を塞ぐ(即ち、埋める)ように構成されている。皮膜は有孔構造体よりも薄く、これが、かなりの重量の改善という結果を生じさせる。
【0010】
本発明のその他の実施形態は、
a.有孔構造体は、全てがリブによって画定された少なくとも5つの開口を備えていること、
b.有孔構造体は、全てがリブによって画定された少なくとも10個の開口を備えていること、
c.有孔構造体は、全てがリブによって画定された少なくとも20個の開口を備えていること、
d.有孔構造体は、全てがリブによって画定された少なくとも30個の開口を備えていること、
e.有孔構造体は、全てがリブによって画定された少なくとも40個の開口を備えていること、
f.開口は、少なくとも部分的に反復パターンをなして配置されていること、
g.リブは、少なくとも部分的にハニカムメッシュをなして配置されていること、
h.リブは、少なくとも部分的に三角形メッシュをなして配置されていること、
i.有孔構造体の厚さが、皮膜の厚さよりも厚いこと、
j.有孔構造体の厚さは1から3mmの間、より特定的には1から1.5mmの間であり、皮膜の厚さは0.3から1mmの間、より特定的には0.3から0.7mmの間であること、
k.有孔構造体は第1の材料で作られ、皮膜は第2の材料で作られ、第1および第2の材料同士は異なる組成のものであること、
l.皮膜は内部空洞を含んでいること、
m.開口同士が異なる幾何学形状のものであること、
n.リブの累積可視面積が開口の累積可視面積よりも小さく、或いは換言すれば、有孔構造体の累積可視面積が皮膜の累積可視面積よりも小さいこと、
o.リブは皮膜から突き出ていること、
p.リブは皮膜の厚みの中に、少なくとも部分的に、或いは完全にまでも埋め込まれていること、
q.有孔構造体は、材料の連続状態を形成しない幾つかの部分で作られ、それぞれの部分が皮膜を介して互いに固定されていること、
r.リブの幅が開口の幅よりも小さいこと、
を提案するものである。
【0011】
本発明は、そのようなハウジングを備えた前端モジュールにも関するものである。
【0012】
従って本発明は、本発明によるハウジングを製造するための方法にも関するものである。当該方法は、
a.皮膜の第2の材料が加熱されてから金型内で賦形される、熱成形段階と、
b.有孔構造体の第1の材料が、開口を伴ったリブ同士の網状組織を形成するように皮膜上へと射出される、オーバーモールド段階と、
を備えている。
【0013】
特に皮膜が内部空洞を備える場合における追加の実施形態によれば、本発明は、ハウジングを製造するための方法であって、
a.皮膜の第2の材料が、加圧および加熱されてから金型内で賦形される、押出し段階と、
b.皮膜の中に内部空洞を作り出すように、第1段階から結果的に得られた第2の材料の内部へ空気または不活性ガスが吹き込まれる、ブロー成型段階と、
c.開口を伴ったリブ同士の網状組織を形成するように、第2段階から結果的に得られた皮膜上へと有孔構造体の第1の材料が射出される、オーバーモールド段階と、
を備えた方法にも関するものである。
【0014】
本発明による(特に、皮膜が音響絶縁材料である場合の)追加の実施形態によれば、当該方法は、
a.第1の材料とは異なる第2の材料の皮膜の少なくとも1つの層を予熱する段階であって、例えば第2の材料が音響絶縁材料である、段階と、
b.当該皮膜の少なくとも1つの層を賦形する段階と、
c.当該皮膜の少なくとも1つの層を射出成形型内に定置する段階と、
d.第1の材料を射出成形型内へと射出することによって、少なくとも当該皮膜の少なくとも1つの層の周囲に構造体をオーバーモールドする段階と、
e.離型する段階と、
を備えている。
【0015】
用語「異なる材料」は、異なる組成の材料を意味するものと理解されたい。
【0016】
そのような方法は、オーバーモールドにより第1の材料でハウジングの構造を得ることを可能とするが、その構造は、少なくとも1つの音響絶縁材料の層を備え、その層が当該構造の各開口を塞いでいる。
【0017】
本発明は、上述したようなハウジングを備えた前端モジュールにも関するものである。本発明によれば、当該モジュールが空気取入口と空気取出口とを備え、ダクト内に少なくとも1つの熱交換器が配置され、熱交換器の所の空気流に対して下流側にモーターファンユニットが配置されている。
【0018】
単独で、ないしは組み合わせて採用される前端モジュールのその他の実施形態は、
a.空気流の流れに対して熱ブロックの下流側でダクト内にフラップが配置され、
b.流れダクトは取入口および取出口を備え、当該取出口が少なくとも2つの別々のダクトで作り上げられ、フラップは当該ダクトのそれぞれを遮断することが可能であり、
c.空気流の流量を変化させるよう軸回りに回動可能な遮断フラップの組が、空気流の流れに対して熱ブロックの上流側で流れダクト内に配置され、
d.遮断フラップの組に対して熱ブロックが傾斜させられ、
e.空気流の流れに対して熱ブロックの上流側および/または下流側に(複数の)ブレードが配置され、
f.流れダクトの流路断面が、取入口から熱ブロックへと広がり、熱ブロックから取出口へと狭まっている、
ことを提案するものである。
【0019】
本発明は、そのような前端モジュールを備える車両にも関するものである。
【0020】
単独で、ないしは組み合わせて採用される車両のその他の実施形態は、
a.車両は(随意に、グリルの設けられた)空気取入口を備え、前端モジュールにおける流れダクトの取出口は、車両の外部へ空気流を運ぶように構成された排出ダクトと、車両のエンジン室へ空気流を運ぶように構成された冷却ダクトとを備えていること、
b.車両は、付加的な空気取入口と、当該付加的な取入口を排出ダクトへ接続する付加的なダクトとを更に備えていること、
を提案するものである。
【0021】
本発明の更なる特徴および利点は、添付図面を参照して以下の説明を読み解くことから明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】a.縦断面図による前端モジュールの模式的表現に相当する図。
【
図2】b.本発明によるハウジングの有孔構造体の一部を示す斜視図。
【
図3】c.本発明によるハウジングの一部を示す斜視図。
【
図4】d.一実施形態に従った本発明によるハウジングの一部を示す模式的な断面図。
【
図5】e.本発明によるハウジングの一部を示す斜視図。
【
図6】f.別の一実施形態に従った本発明によるハウジングの一部を示す模式的な断面図。
【
図7】g.前端モジュールを備えた自動車両を縦断面図によって模式的に示す図。
【
図8】h.装置のハウジングを製造するための方法における種々の段階のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の諸実施形態は例示である。本明細書は1つないし複数の実施形態に言及しているが、このことは必ずしも、それぞれの言及が同じ実施形態に関するものであったり、諸特徴が1つの実施形態にしか当てはまらなかったりすることを意味するものではない。種々の実施形態における個々の特徴同士を、別の実施形態を作り出すために組み合せたり入れ換えたりすることもできるのである。
【0024】
図1は、本発明による自動車両1の空気取入口用の前端モジュール2を示している。前端モジュール2は、例えば自動車両1内に前端モジュールが据え付けられたときに当該自動車両1の各軸線に対して、縦方向(X)、横方向(Y)、および垂直方向(Z)に伸びている。
【0025】
本発明による前端モジュール2は、外囲い、或いは覆いにまでも相当するハウジング3(より詳細に後述することとなる)を備えている。かくしてハウジング3は、空気取入口20および空気取出口22を有して内部を空気流の流れる流れダクト4(換言すれば、流路)を、自らの壁体同士によって画成している。
【0026】
本発明による空気流の前端モジュール2は、熱ブロック6を更に備えている。熱ブロック6は、少なくとも1つの熱交換器を備えている。その熱交換器は、当該熱交換器の内部を循環する流体と空気流との間の熱交換を可能とするように企図されている。
図1に示すように、熱ブロック6はこの場合、第1および第2の熱交換器8,10を備えている。第1の熱交換器8が例えば凝縮器に相当するのに対して、第2の熱交換器10は例えば放熱器に相当する。熱ブロック6は、ブレードを有したファンおよび関連付けられたモーターに相当するモーターファンユニット12を更に備えている。それは、車両1が静止しているときであっても、前端モジュール2を通じて空気流を吸い込んで放出することができるようにである。熱ブロック6は、保持フレーム62をも備えている。その保持フレーム62は、剛性構造体、より精確には熱交換器8,10および前記モーターファンユニット12が内部に配置される表面を画定する4つの支柱を有した剛性プラスチック材料フレームに相当するものである。流れダクト4の連続性を確保するために、ハウジング3は保持フレーム62に対して密封式に取り付けられている。つまり、保持フレーム62が流れダクト4の連続性を確保しており、或いは換言すれば、支持フレームが流れダクト4の一部に相当しているのである。
【0027】
本発明による前端モジュール2は、遮断装置14を更に備えていてよい。その遮断装置14は、空気流の流量を変化させるよう軸回りに回動可能な遮断フラップ18の組を備えている。当該遮断装置14は、空気流の流れに対して熱ブロック6の上流側で流れダクト4内に配置されている。遮断装置14は、各遮断フラップ18を保持するように軸受を有した支持フレーム16を更に備えている。
【0028】
各遮断フラップ18は、支持フレーム16の軸受内へと挿入されるジャーナルによって具現化される回動の軸を備えている。当該回動の軸によって、各遮断フラップ18を開放形態から閉鎖形態へと切り換えることが可能となっている。開放形態、即ち換言すれば遮断フラップ18を開くことは、各遮断フラップ18が空気流を適切に方向付けながら、その空気流の通過に対して出来るだけ小さな抵抗しか与えないよう、それらの遮断フラップ18を(回動によって)位置付けることに本質がある。
図1に示すように開放形態において、各遮断フラップ18は水平姿勢にあり、換言すれば、それらのフラップ18は縦方向(X)および横方向(Y)に伸びており、かくして空気流の最大流量が確保され、空気取入口20が空けられているのである。閉鎖形態、即ち換言すれば遮断フラップ18を閉じることは、各遮断フラップ18が他の遮断フラップ18と共同して空気流Fの流れに対して(それらのフラップの前面によって)出来るだけ大きな抵抗を与えるよう、それらの遮断フラップ18を位置付けることに本質がある。この形態において、各遮断フラップ18は垂直姿勢にあり、換言すれば、それらのフラップ18は横方向(Y)および垂直方向(Z)に伸びており、かくして空気流の最小の(或いはゼロですらある)流量が確保され、空気取入口20が遮断されているのである。もちろん、各遮断フラップ18は、これら2つの形態同士の間の任意の中間形態を取ることが可能である。
【0029】
本発明によれば、前端モジュール2のハウジング3は、少なくとも部分的に複数の開口32を有した有孔構造体30(
図2に示す)と、有孔構造体30の各開口32を完全に塞ぐ(即ち、密封する)ようなやり方で配置された皮膜36(
図3および
図5に示す)とを備えている。
【0030】
有孔構造体30は、
図2に部分的に示されている。有孔構造体30は、第1の材料(主に熱可塑性物質)で作られた枠組みに相当するものである。最も一般的に用いられる熱可塑性物質には20%のタルク(滑石)が充填されたポリプロピレン(PP TD 20)が該当するが、40%のチョーク(白亜)が充填されたポリプロピレン(PP KD 40)などの他のポリマーが当該用途用に該当し得るであろう。有孔構造体30は、枠組みに相当するものであって、捩りや曲げの力に耐えられるように剛性(不撓性)材料で作られている。
【0031】
図2に示すように、有孔構造体30は、少なくとも部分的に複数の開口32を有している。換言すれば、有孔構造体30は、その構造内に孔や隙間を有しているのである。開口32は、少なくとも部分的に反復パターンをなして配置されている。換言すれば、有孔構造体30の構造は、セル(小区画)35の組(それらのセル35同士は同じ幾何学形状のものであっても異なる幾何学形状のものであってもよい)を画定するよう、リブ34と開口32によってメッシュを画成している。ある1つのセル35が、ある1つの開口32と複数のリブ34との組に相当し、隣り合う2つのセル35同士が、ことによると1つないし複数のリブ34を共有している。リブ34同士は互いに連結されて結節点や接合点を形成してもいる。
【0032】
約言すると、本発明によれば、リブ34同士が開口32(換言すれば、空所)を画成しており、その結果、開口ないしはセルがある一定の形状、例えば三角形の形状を有することが示されている場合、このことは3つのリブ34同士が互いの間で三角形の形状をした開口32を画成していることを意味するのである。同様に、4つのリブ34同士は互いの間で矩形の形状の開口32を画成し、云々。要約すると、複数のリブ34同士が互いの間で多角形の形状の開口32を画成することとなる。単純化のために、ある1つのセル35(ある1つの開口32と複数のリブ34とから成る)がある1つの幾何学形状(多角形、円形など)のものであり、当該形状が当該リブ34同士によって画成される輪郭線同士の集まりや点同士の集まりである、ということが後述されることとなる。
【0033】
換言すれば、有孔構造体30は強固でより軽量な枠組み(或いは骨組み)を画成するように開口32によって隔てられたリブ34同士の網状組織を画成しているのである。リブ34同士の網状組織が、かくして(
図2に示すように)均一であったり不均一であったりすることのできるメッシュを画成している。
【0034】
図2に示すように、当該メッシュは(従って、各セル35は)三角形や矩形の形状であったり、任意の他の多角形の形状を有したりすることができる。当該メッシュは(従って、各セル35は)円形はもとより楕円形などの任意の他の幾何学形状を有することもできる。各開口32は(従って、各セル35は)少なくとも部分的に反復パターン(例えば、三角形同士の組)に従って配置される。セル35同士は(従って、開口32同士は)同一の、或いは異なる形状・寸法を有していてよい。
【0035】
換言すれば、メッシュは種々のパターンを備えることができ、開口32同士を(従って、セル35同士を)ハニカム・パターンをなして配置することができる。即ち、各開口32が(従って、各セル35が)蜂の巣の小孔に相当するのである。メッシュは三角形パターンをなすこともできる(リブ同士が三角形を画定するところの三角形分割のことを言っており、エッフェル塔型のメッシュのことを言っているとすることもできる)。
【0036】
図3は、流れダクト4の一部を形成する、本発明によるハウジング3を示している。ハウジング3は、(上記で定義したような)有孔構造体30と、皮膜36とを備えている。皮膜36は、各開口32を塞ぐ(即ち、遮断する)ように構成されている。それは、流れダクト4内部の密封を保証して、全空気流が熱交換器8,10へと経路付けられるのを確保するようにである。皮膜36は、有孔構造体30の全体に亘って配置される一様な層に相当するものであることが分かる。
【0037】
図4は、そのような構成を断面図にて模式的に示している。皮膜36は、ある1つの材料の一様な層に相当するものであり、リブ34同士の網状組織によって形成される各孔を塞いで、空気流が流れダクト4の内部に閉じ込められたままになることを保証するように、有孔構造体30に対して固定され、或いは隣接している。
【0038】
皮膜36は第2の材料で作られているが、その材料は有孔構造体30の材料と同一であってもよい。但し皮膜は、より軽い材料で作られているのが好ましい。例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、無充填ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、またはポリスチレン(PS)などの種々のポリマー、或いは多孔性材料(当該材料は、音響絶縁性を有するか、または有していない)までもが挙げられる。
【0039】
本発明の別の態様によれば、皮膜36は、第1の材料とは異なる第2の音響絶縁材料で作られる。第2の材料の密度は、第1の材料の密度よりも低い。第2の材料の密度は、例えば1未満である。第2の音響絶縁材料は、多孔性材料とすることができる。
【0040】
約言すれば、本発明によるハウジング3は、従って2つの層を備え、皮膜36よりも高剛性の材料で作られた、より高密度の有孔構造体30によって第1層が実現されている。この第1層は、少なくとも部分的に開口32を有している。ハウジング3は、有孔構造体30よりも低剛性の材料で作られた、より低密度の皮膜36によって実現された第2層を更に備えている。
【0041】
本発明によるハウジング3は、
図4に示すように、有孔構造体30の厚さH
n(或いは、高さ)、より特定的にはリブ34の厚さが、皮膜の厚さH
pよりも厚くなっている。具体的には、有孔構造体30の厚さH
n(より特定的には、リブ34の厚さ)が1から1.5mmの間、好ましくは1.2mmであるのに対して、皮膜36の厚さH
pは、0.3から0.7mmの間、好ましくは0.5mmである。リブ34の厚さH
nは、
図4に示すように、2つの平行面同士(つまり、皮膜36に完全に接した面と、反対側の、即ち平行な面と)の間で測った間隔に相当する。同様に、皮膜36の厚さH
pは、リブ34に接した面と、この面の反対側の、即ち平行な面とで測った間隔に相当する。リブ34が皮膜36に埋め込まれている場合には、最低限の厚さH
nを示すことができる。
【0042】
本発明によるハウジング3は、
図4に示すように、リブ34の幅L
nが開口32の幅L
oよりも狭いようなものである。リブ34の幅L
nは、皮膜36と完全には接していない2つの平行面同士の間で測った間隔に相当する。開口32の幅L
oは、2つのリブ34同士の間で測った間隔に相当する。或いは、三角形状の開口の場合には、幅L
oは三角形の高さに相当する。
【0043】
図2、
図3、および
図5に示すように、リブ34同士が互いに異なる幅や厚さを有していてもよいことは明らかである。
図2に示すように、水平なリブ34aを斜めのリブ34bよりも厚くおよび/または幅広にすることも、その反対とすることもできる。
【0044】
ハウジング3は、種々の要素(例えば、空気フィルタ、熱交換器用の保護グリッドその他)の導入を可能とするよう、有孔構造体や皮膜で覆われてはいない別の開口を更に含んでいてもよい。
【0045】
皮膜36を形成するのには幾つかのやり方がある。皮膜36は熱成形によって形成することができる。換言すれば、一般的にはプレートの形態にある第2の熱可塑性材料が、軟化するように加熱される。そして、この軟化状態にある材料の可塑性を利用して、金型内で皮膜36が賦形される。その次に、皮膜36上へ有孔構造体30がオーバーモールドされる。
図4は、そのような方法から結果的に得られるハウジングを示している。
【0046】
従って本発明は、本発明によるハウジングを製造するための方法にも関するものである。当該方法は、
a.皮膜36の第2の材料が加熱されてから金型内で賦形される、熱成形段階と、
b.有孔構造体30の第1の材料が、開口32を伴ったリブ同士の網状組織を形成するように皮膜36上へと射出される、オーバーモールド段階と、
を備えている。
【0047】
皮膜36は、押出しによって形成することもできる。このために、第2の熱可塑性材料が押出成形機を通過する。それは引き延ばしを行うために、その材料が加圧および加熱され、そして得られるべき部品(即ち、皮膜36)の断面を有したダイを強制的に通過させられると言うべきものである。それから、皮膜36上へ有孔構造体30がオーバーモールドされる。
【0048】
変形例によれば、皮膜は押出しブロー成型法によって形成することもできる。それは、押し出しに続いて、可塑性材料がブロー型の壁に圧し付けられるように空気や不活性ガスが吹き込まれ、かくして中空の皮膜36を形成することを可能とする、と言うべきものである。換言すれば、皮膜36が内部空洞38を有しているのである。次いで、中空の皮膜36上に有孔構造体30がオーバーモールドされる。
図6は、そのような方法から結果的に得られるハウジングを示している。そのようなハウジング3は、特に有利なものとなることができる。それは、形成された内部空洞38のおかげで、密封が常に保証され、空気流が流れダクト4の内部だけを流れることとなるからである。従って、この実施形態においては、2つのハウジング半体同士の間に密封用のビード(溶着部)を付加する必要がない。皮膜36の構造を補強するために、内部空洞38の中にスペーサ39を配置することも可能である。
【0049】
本発明によるハウジング3は、
図1に示すように2つの部分、ハウジング3の入口を(従って、遮断装置14の配置される所である流れダクト4の空気取入口20を)熱ブロック6に(より特定的には、保持フレーム62に)連結する第1部分3aと、熱ブロック6を(より精確には、保持フレーム62を)ハウジング3の出口に(従って、流れダクト4の空気取出口22に)連結する第2部分3bとでできている。ハウジングの部分3a,3bは、保持フレーム62上に配置された固定手段と相補的な形状の、クリップ、フック、ネジ軸/雌ネジ付きナット、ボルトその他の固定手段を備えている。従って、保持フレーム62は、ハウジング3の2つの部分3a,3b同士の間での流れダクト4の連続性をもたらすものである、ということを認識されたい。
【0050】
別の実施形態によれば、各部分3a,3bを互いに固定できるように、相補的な形状をした固定手段を部分3a,3b同士が備えることもできる。流れダクト4の空気取入口20と空気取出口22との間で材料の連続状態を形成する単一部品としてのハウジング3を考えることもできる。
【0051】
本発明によるハウジング3、より精確には各部分3a,3bは、
図3に示すように、2つのハウジング半体3a
1,3a
2を備えることができる。ハウジング半体3a
1,3a
2または3b
1,3b
2の各対が、一緒になって流れダクト4の一部を形成する。換言すれば、第1対のハウジング半体3a
1,3a
2が、ハウジング3の部分3aを、即ちハウジング3の入口を(特に、遮断装置14の配置される所である流れダクト4の空気取入口20を)熱ブロック6に(特に、保持フレーム62に)連結する流れダクト4の部分を構成している。第2対のハウジング半体3b
1,3b
2(図示せず)は、第2部分3bを、即ち熱ブロック6を(より精確には、保持フレーム62を)ハウジング3の出口に(従って、流れダクト4の空気取出口22に)連結する流れダクト4の部分を構成している。ハウジング半体3a
1,3a
2または3b
1,3b
2の各対が、相補的な形状の固定手段(クリップなど)を備えている。その固定手段においては、一方のハウジング半体3a
1上に雌部分が配置されて、対応する他方のハウジング半体3a
2上に雄部分が配置されるか、またはその逆である。これらの固定手段は、当該ハウジング半体同士が互いに取外し可能に固定されるよう、換言すれば当該ハウジング半体同士が可逆的な連結によって分離可能であるように、可逆的なものであってよい。
【0052】
従って本発明は、本発明によるハウジングを製造するための方法にも関するものである。当該方法は、
a.皮膜36の第2の材料が、加圧および加熱されてから金型内で賦形される、押出し段階と、
b.皮膜36の中に内部空洞を作り出すために、第1段階から結果的に得られた第2の材料の内部へ空気または不活性ガスが吹き込まれる、ブロー成型段階と、
c.開口32を伴ったリブ同士の網状組織を形成するように、第2段階から結果的に得られた皮膜36上へと有孔構造体30の第1の材料が射出される、オーバーモールド段階と、
を備えている。
【0053】
従って本発明は、上述したようなハウジング3を備える自動車両1用の前端モジュール2を製造するための方法にも関するものである。当該方法は、
a.上述したようなオーバーモールド段階から結果的に得られたハウジングによって画成される流れダクトの中に熱交換器とモーターファンユニットとが配置される、熱ブロックを挿入する段階と、
b.2つのハウジング同士が固定される段階であって、流れダクト4を形成するようにハウジング同士が一緒に、クリンプ(圧着)、突き合わせ接合、ネジ留め、或いはクリップ留めすらされることのできる、機械的組立て段階と、
を備えている。
【0054】
図8を参照すると、別の実施形態によれば、皮膜36の層を予熱する段階に、副段階E2へと細分化される賦形段階が続く。その副段階E2においては、予熱された皮膜36の層が、熱成形型(図示せず)内に配置され、次に皮膜36の層が冷めるにまかせ(副段階E30)、その後、冷ました皮膜36の層を離型させることができる(副段階E31)。
【0055】
予熱温度約180℃の特定の例によれば、皮膜36の層は約70℃に達するまで冷ますことができる。
【0056】
熱成形された皮膜36の層は次に、段階E4にて射出成形型内に定置することができる。
【0057】
この第1実施形態によれば、皮膜36の層の賦形は、熱成形型(図示せず)内における皮膜36の層の冷却中に行われる。
【0058】
第2実施形態によれば、皮膜36の層は、予熱はされるが、もはや熱成形はされない。全般的には、皮膜36の層が軟化するように予熱され、そして、この軟化状態にある第2の材料の可塑性を利用して、皮膜36の層が、皮膜36の層上に有孔構造体30をオーバーモールドするための射出成形型内で賦形され、もはや熱成形型内では賦形されないのである。
【0059】
代替実施形態によれば、予備段階E0の間に第2の材料を切断し、段階E1’でフレームなどの支持体内に配置されるようにすることができる。フレームは第2の材料を所定位置に保持する。この目的のために、そのフレームは第2の材料の層(換言すれば、皮膜36の層、或いはより単純に、皮膜36)を保持する保持部材(クランプなど)を含んでいてよい。
【0060】
フレームは、例えば射出器具の前方に配置される。フレームは金型半体の前方に配置されるが、その金型半体は、もう1つの金型半体とで、第2の材料で作られた層上に有孔構造体30をオーバーモールドするのを可能とする射出成形型を形成するものである。より精確には、2つの金型半体同士の間にフレームを設置することができる。
【0061】
更に、フレームは、第2の材料の幾つかの層を保持するように、種々の位置を有していてよい。
【0062】
当該方法は次に、この第2実施形態によれば、第2の材料の層を保持したフレームを予熱するための段階E2’を備えている。当該層は、予熱段階E2’の間、フレームによって最初の形状を保つことができる。予熱段階E2’は、それゆえフレームを用いて実行されるのである。
【0063】
例えば、1つないし複数の層を保持するフレームを加熱用ドロワーが取り囲む。加熱用ドロワーは例えば、各層の両側で加熱することとなる2つの抵抗器を備える。従って、予熱段階E2’の間、加熱用ドロワー内へフレームが挿入されている。
【0064】
そのような加熱用ドロワーでの予熱温度は(例えば、約180℃に)制御可能である。
第2の材料の層が異なる2つの対向面を有している場合、例えば当該層がその両面のうち一方の上に気密性皮膜などの皮膜を有している場合、予熱温度は、皮膜36の層のそれぞれの面について異なっていてもよい。
【0065】
予熱段階E2’の終わりに、加熱用ドロワーがフレームから取り除かれ、段階E3’で初期位置へ戻る。
【0066】
次に、射出成形型内に配置されている(より精確には、2つの金型半体同士の間に挟まれている)予熱された第2の材料の層を、段階E4’でフレームが解放する。
特に、皮膜36を保持したフレームが2つの金型半体同士の間で挟まれるまで、当該2つの半体同士が一緒に近付けられる。フレームは例えば、一方の金型半体と同時に移動することができる。射出成形型が閉じたら、各クランプが、第2の材料の層を解放するように開いて、傍らへ移動する。その結果、第2の材料の層が、射出成形型内に完全に捕らえられて保持される。
【0067】
第2の材料の層を賦形することは、この第2実施形態によれば射出成形型内で、射出成形型の型押しによって果たされる。
【0068】
次に、以下で説明するように2つの段階E5およびE6が行われる。
【0069】
第1または第2実施形態により熱成形または予熱された層の上には、次にオーバーモールド段階E5で有孔構造体がオーバーモールドされる。
【0070】
オーバーモールド段階E5の間、ハウジング3の有孔構造体30を作り出すように、第2の材料の層(換言すれば、皮膜36)の周囲の少なくとも一部にて射出成形型内へと第1の材料が射出される。
【0071】
より精確には、第1の材料が、ハウジング3の各壁体を形成するように、また各開口32を塞ぐように企図された音響絶縁材料の層の各縁部上にも射出される。その結果、音響絶縁材料の層はハウジング3の各壁体に連結される。
【0072】
予熱温度は、射出温度よりも低い。
【0073】
最後に段階E6において、有孔構造体30が離型させられる。得られた有孔構造体30は、第1の材料の枠組みを有すると共に、少なくとも1つの第2の材料(例えば、音響絶縁ないし遮音材料)の層を備えている。その第2の材料の層が、有孔構造体30の少なくとも1つの開口32を塞いでいる。
【0074】
図示しない実施形態によれば、有孔構造体30が材料の如何なる連続状態も形成しない幾つかの部分(特に、幾つかの側面や支柱)をなして作られ、各部分が皮膜36を介して他の部分へ固定されるようにハウジング3が作られる。例えば、有孔構造体の横側面が有孔構造体の後側面から分離され、材料の連続状態を形成する皮膜がこれらの側面同士を互いに連結する。その結果、ハウジングの各部分をより容易に運べるようにするめに、それらの部分を互いに折りたたむことが可能となる(皮膜36は可撓性材料で作られる)。
【0075】
明らかに、有孔構造体は、材料の連続状態を形成する単一体をなして作られることができる。換言すれば、不可逆的な損傷を引き起こすことなく一部分を他の部分から分離させることが不可能ということである。
【0076】
本発明による前端モジュール2は、流れダクト4内部で空気流の流れに対して熱ブロック6の下流側に配置されたフラップ28を更に備えている。フラップ28は
図1に示すようにドラム型のものであり、そのような調節装置が車両の幅(Y軸)の大部分に亘って伸び、かくして1メートル超に達し得ることを考慮すれば、ドラム型フラップは(機械的強度の向上をもたらす構造ゆえに)そのような用途に、より相応しいものである。例えばスライド式フラップ(別名、スライド式ドア)などの他のフラップを考えることもできる。図示しない実施形態によれば、スライド式フラップは、少なくとも1つのラックの配置されたスライド式ドアと、当該ラックと相補関係となった歯車とを備えている。このフラップを(特に、並進運動にて)移動させるために、アクチュエータによって歯車が軸線周りに回動させられる。
【0077】
尚も本発明によれば、熱ブロック6は遮断装置14に対して傾斜させられている。換言すれば、熱ブロック6と遮断装置14の正中面同士が0°以外の(ゼロでない)角度、特に10°から80°の間の範囲内、もっと厳密には30°から60°の間の範囲内の角度をなしている。そのような構成によって、前端モジュール2の空間配置上の嵩を小さくすることが可能となる。
【0078】
尚も本発明によれば、空気流の流れに対して熱ブロック6の上流側および/または下流側にブレード44を配置するのが有利であると判明するであろう。ブレード44は、空気流のための回廊を画成する湾曲した壁の形態をなした空気ガイドに相当する。それは、熱ブロック6における熱交換器8,10の表面全体に亘って空気流F1(
図1)を分散させて、熱効率を向上させる結果となるようにするためである。
【0079】
尚も本発明によれば、流れダクト4の流路断面は、空気流の流れ方向において、流れダクト4の空気取入口20から熱ブロック6へと拡大し、熱ブロック6から流れダクト4の空気取出口22へと狭まっている。換言すれば、流れダクト4の流路断面は、その長さに沿って(即ち、空気流の流れ方向に空気取入口20から始まって熱ブロック6へ近づくにつれて)次第に増大する少なくとも1つの寸法(幅および/または高さ)を有している。同様に、流れダクト4の流路断面は、その長さに沿って(即ち、空気流の流れ方向に熱ブロック6から遠ざかって空気取出口22の方へ向かうにつれて)次第に減少する少なくとも1つの寸法(幅および/または高さ)を有している。
【0080】
本発明による前端モジュール2のハウジング3は、流れダクト4の外側への如何なる空気の漏洩をも防止するための、少なくとも1つの密封手段を備えている。換言すれば、1つないし複数の密封手段によって、流れダクト4の空気取入口20を通過する空気流の全部が、流れダクト4の空気取出口22を通じて出ていくことを保証しているのである。1つないし複数の密封手段は、前端モジュール2の種々の位置に配置することができる。具体的には、各密封手段は、継ぎ目で分解される(分離可能、或いは材料の連続状態を形成しないとすら言い換えられる)前端モジュール2の2つの要素同士の接合部分(即ち、それらの間)に配置される。より精確には、最適な密封をもたらすために、密封手段は、分離された流れダクト4の部分を形成する各要素の周囲境界上に配置される。換言すれば、流れダクト4の部分を形成する2つの要素同士の間で、これらの要素それぞれの周縁部における周囲接続面上に密封手段が配置される。
【0081】
従って密封手段は、各ハウジング半体3a1,3a2および3b1,3b2同士の間、並びに/または、ハウジング3の部分3a若しくは3bと保持フレーム62との間、並びに/または、各ハウジング半体3a1,3a2および3b1,3b2と保持フレーム62との間に配置され得る。空気取入口20の部位において、ハウジング3と遮断装置14の支持フレーム16との間に密封手段を定置することを企図するのも可能である。
【0082】
図7は、自動車両1の縦方向における当該車両の垂直断面を示している。車両は、グリル52ないしグリッドがその下に設置されるバンパービーム50を備えている。このグリル52は、入ってくる空気流が通過するのを可能とするように開放位置に固定されたままになっている。本発明による車両1は、上述したような前端モジュール2を備えている。
【0083】
従って本発明による車両1は、グリル52の設けられた空気取入口54と、この空気取入口の(空気流に対して)下流側に配置された前端モジュール2とを備えている。流れダクト4の取出口22は、自動車両1の外部へ空気流を運ぶように構成された排出ダクト24と、車両のエンジン室56へ空気流を運ぶように構成された冷却ダクト26とを備えている。
【0084】
本発明による車両1は、付加的な取入口58、および付加的なダクト60を更に備えている。そのダクト60は、当該付加的な取入口58を、空気流を車両の外部へ運ぶ排出ダクト24へ接続している。これにより、排出ダクト24のベンチュリ効果を高めて、循環空気流量を増大させ、かくして熱効率を向上させることが可能となる。付加的なダクト60への如何なる異物(枝、葉その他)の進入をも防止するために、付加的な取入口58にもグリルを設けることができる。
【0085】
ここまで説明してきた本発明は、専ら特定の例示的な実施形態について説明した諸手段や諸構成に限定されるものではなく、これらの手段や構成同士のあらゆる組合せ、並びに、均等物、および当該の手段や構成と均等物との如何なる組合せにも当てはまるものである。