(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ロボット脚及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20240508BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H3/00 B
(21)【出願番号】P 2021545788
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2020051249
(87)【国際公開番号】W WO2020169285
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-29
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュプロヴィッツ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】サルベスタニ,アルボルズ アガハマレキ
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09486919(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第104139811(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ー 21/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの関節(j)を備えるロボット脚であって、各関節(j)は2つの節(s)を相互に接続し、各関節(j)はカム(c)を備え、前記ロボット脚(10)は更に、少なくとも1つのアクチュエータ(20)と、各カム(c)を相互接続する共通腱(18)と、を備え、
最終カム(c)は、その半径(r)が既定の閾値よりも小さく寸法設定されており、前記既定の閾値は前記ロボット脚(10)の荷重に対する平衡閾値であ
り、
前記平衡閾値は、Fc*rc∝F*dと定義され、Fは前記ロボット脚(10)に作用する全体的な力を規定し、dは仮想脚(V)の長さを規定し、Fcは前記カム(c)に作用する力を規定し、rcは前記カム(c)の半径を規定する、ロボット脚。
【請求項2】
前記カム(c)の少なくともいくつかは、線形カムである、請求項1に記載のロボット脚。
【請求項3】
線形カム(c)は、回転中心と一定の半径(r)とを有するカムである、請求項2に記載のロボット脚。
【請求項4】
前記カム(c)の少なくともいくつかは、各関節(j)に隣接した前記2つの節(s)の相互の動きを可能とする、請求項1から3のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項5】
前記共通腱(18)は2つ以上の部分腱で形成することができ、2つの直接隣接した部分腱(18)はそれぞれ前記カム(c)のうち同一のものに接続されている、請求項1から4のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項6】
各部分腱(18)は各カム(c)において関節伸長トルクを生成するように構成される、請求項5に記載のロボット脚。
【請求項7】
前記アクチュエータ(20)のうち少なくとも1つは、動き及び力のうち少なくとも一方を発生させるように構成されている、請求項1から6のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項8】
少なくとも2つのアクチュエータ(20)が提供され、第1のアクチュエータ(20)はばね(22)を含み、第2のアクチュエータ(20)はモータ(28)を含む、請求項1から7のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項9】
前記アクチュエータ(20)のうち少なくとも1つはばね(22)であり、特に、線形ばね、非線形ばね、引張ばね、空気ばね、金属ばね、コイルばね、板ばね、及びコンプライアンス機構のうち1つであり、及び/又は、
前記アクチュエータ(20)のうち少なくとも1つはモータ(28)であり、特に、モータとギアボックスの組み合わせ、リニアモータ、非線形モータ、電気モータ、ブラシ付きrcアクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、ステッピングモータ、電磁モータ、油圧モータ、磁気モータ、機械モータ、又は生物筋肉の形態のモータ、ブラシレスモータ、形状記憶合金作動に基づくモータ、静電アクチュエータ、及びソフトアクチュエータのうち1つである、請求項1から8のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項10】
2つから8つの関節(j)が提供される、請求項1から9のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項11】
3つ以上の関節(j)が提供されている場合、2つの直接隣接している関節(j)を相互接続する前記節(s)に隣接した前記2つの直接隣接している関節(j)間に配置された別のアクチュエータ(34)が提供される、請求項1から10のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項12】
前記カム(c)が最終カム(c)であり、前記最終カム(c)と最後の節(s)とを相互接続する別の腱(36、38、30)を更に備え、
前記最終カム(c)は前記一連のカム(c)の前記既定の閾値の半径(r)を有する、請求項1から11のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項13】
制御及び評価ユニット(42)と少なくとも1つのセンサ(44)とを更に備え、
前記制御及び評価ユニット(42)は、前記少なくとも1つのセンサ(44)によって測定されたパラメータに応じて前記アクチュエータ(20)のうち少なくとも1つを制御及び作動させるように構成される、請求項1から12のうち少なくとも1項に記載のロボット脚。
【請求項14】
請求項1から13のうち少なくとも1項に記載のロボット脚(10)を少なくとも2本と、制御及び評価ユニット(42)、とを備えたロボットシステムであって、
前記制御及び評価ユニット(42)は、前記ロボット脚(10)の一般的な歩行が生じるように前記ロボット脚(10)を同期させるよう構成されている、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット脚に関する。本発明は、また、少なくとも2本のロボット脚を備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット脚は、人又は動物の脚と同様の機能を実行することができる機械の脚である。ロボット脚は通常、こういった同様の機能を実行するようにプログラミングされており、設計に応じて電気的に及び/又は機械的に制御することができる。
【0003】
長年にわたって研究者は、動物及び人の動的な脚歩行の基本的なメカニズムを理解するため調査を続けている。動物の歩行は、形態学と神経制御とを巧みに組み合わせることで発生し、この結果として、機敏で効率的かつ優雅な動物の動きが生じ得る。
【0004】
エンジニアリングにおいて、研究者はこの組み合わせをロボット設計で模倣しようとしている。特に二足歩行は、例えば四足歩行に比べて比較的複雑な脚歩行の形態と考えられている。四足歩行では、重い水平方向の胴体と二対の脚によって静的安定度を完全に単純化することができる。最新の四脚ロボットの一例を中国特許出願公開第104139811A号明細書で見ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日まで、人又は動物の脚のリアルな動きを実際に模倣することができるロボット脚を、特に妥当なエネルギ効率と計算コストで設計することに誰も成功していない。
【0006】
以上に鑑み、本発明の目的は、最新技術よりも高いエネルギ効率と低い計算コストで人又は動物の脚の動きを模倣できるロボット脚を提供することである。本発明の別の目的は、そのようなロボット脚のうち2本以上を制御することができるロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項1の特徴を有するロボット脚によって達成される。本発明によれば、ロボット脚は少なくとも2つの関節を含み、各関節は2つの節(segment)を相互に接続し、各関節はカム(cam)を含む。ロボット脚は更に、少なくとも1つのアクチュエータと、各カムを相互接続する共通腱(common tendon)と、を含む。
【0008】
従って、共通腱は、存在する全ての関節にわたって延出し、アクチュエータと共に張力を捕らえるように設計されている。更に、アクチュエータと腱の組み合わせは、仮想脚長における力を捕らえるように設計できる。仮想脚は、基本的に、ロボット脚に存在する第1の節と最後の節との間の最短距離を示す。より詳細には、仮想脚は、ロボット脚の股関節と圧力中心との間の仮想接続を規定する。また、アクチュエータと腱の組み合わせは、第1の関節における股関節トルクを地面へ伝達するか、又は第2の関節からのトルクを、もしくは3つ以上の関節が存在する場合は最後の関節すなわち足指関節からのトルクを、ロボット脚へ伝達することができる。
【0009】
脚の節と共通腱の組み合わせは荷重を支えることができる。荷重とは、言い換えれば、第1の関節(股関節)よりも高い位置に搭載されるもの、又は第1の関節を床の方へ引っ張るもの、例えばぶら下がっている荷重である。
【0010】
アクチュエータ、腱、及び脚節の組み合わせは、物体荷重が加わると反応して脚が短くなる、全体的にコンプライアンスのある脚(overall compliant leg)を生成することができる。従って、歩行中、脚歩行の物体力学に従って脚は脚長方向にたわみ、胴体荷重を垂直方向に受動的に振動させる。更に、アクチュエータと腱と脚節の組み合わせは、物体荷重が加わって脚が短くなった後に脚の伸長を発生させることができる。
【0011】
アクチュエータと腱の力を、カムによって方向転換させて、脚に対する荷重の効果に対抗することができる。カムは、例えば回転運動を直線運動に変換するように運動を変換するか、又は旋回運動のような動きを誘発することができる機械的リンク機構である。ロボット脚では、カムを用いて関節の動きを共通腱の動きに方向転換することができる。更に具体的には、カムは関節の回転運動を腱の直線変位に変換できる。従って、例えばカムを用いて、腱の力を関節のトルクに方向転換すること又はその逆を行うことができる。各関節を共通腱に接続することによって、各関節に取り付けられた節の動きを同期させ、最新技術に比べて高いエネルギ効率と低い計算コストで、人又は動物の脚の動きをいっそうリアルに模倣することが可能となる。これにより、アクチュエータをいっそうシンプルに形成すること、すなわちトルクを低減させると共に速度要求を軽減して形成することができる利点が得られる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、カムの少なくともいくつか、好ましくは全ては、線形カムである。線形カムは線形挙動で動作するカムとすることができる。従って、「線形」という用語は必ずしも各カムの幾何学的形状に関連しなければならないわけではない。
【0013】
本発明の別の実施形態において、線形カムは回転中心と一定の半径とを有するカムである。従って線形カムは、回転中心を中心に回転する円又は弓形として設計することができる。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、カムの少なくともいくつか、好ましくは全ては、各関節に隣接した2つの節の相互の動きを可能とすることが好ましい。この動きは好ましくは、各関節に隣接した2つの節間の旋回運動である。前述のように、通常、カムを用いて回転運動を直線運動に変換するか又はその逆を行うことができる。共通腱は存在する全てのカムを接続し、従ってそれらの各関節も接続するので、1つの関節が動くと他の全ての関節の動きが生じ得る。従って、隣接する2つの節はいずれも1つの共通関節で接続されているので、各関節が動くと、これらの節は各関節を中心として動き始め、好ましくは旋回運動を始める。その間、よりコンプライアンスの高いロボット脚を生成するため、共通腱はカムと共に動くか、又はカムの(円形の)表面で摺動することができる。
【0015】
従ってアクチュエータは、取り付けられているロボット脚又は関節(及び節)のための一種の駆動部として機能することができる。アクチュエータにより発生した動きは、次いで共通腱によって存在し得る他の全ての節に伝達されて、各カムを中心としてそれらの節を動かす、好ましくは旋回運動させることができる。
【0016】
本発明の別の実施形態において、共通腱は2つ以上の部分腱で形成することができ、2つの直接隣接した部分腱はカムのうち同一のものに接続されている。実用的な理由から、共通鍵をいくつかの部分から形成することが好ましい場合がある。2つの隣接する部分腱は共通のカムに取り付けられているので、一方の部分腱の動きは共通のカムを介して容易に他方の部分腱に伝達できる。従って、それらは1部品から成る共通腱のように動くことができる。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、各部分腱は各カムにおいて関節伸長トルクを生成するように構成されることが好ましい。言い換えると、各部分腱は、各関節に取り付けられた2つの節を相互に真っ直ぐに伸ばすことができるトルクを各カムで生成できる。これは例えば、人の脚がひざの動きによって真っ直ぐに伸ばせるのと同様である。
【0018】
本発明の更に別の実施形態によれば、上記の関節伸長トルクは、ロボット脚の全長にかかる荷重に対抗するように構成されている。例えば、ロボット脚が歩行のため使用される場合、脚が一歩ずつ前進するときには常に何らかの荷重が存在する。この荷重の発生源は、ある種の胴体、モータ、又は脚自体の重量であり得る。従って関節伸長トルクは、脚を伸長するために、そういった重量から発生する荷重に対抗しなければならない。
【0019】
本発明に従って、少なくとも1つのカム、好ましくは最終カムは、半径が既定の閾値よりも小さいように寸法設定されており、この既定の閾値はロボット脚の荷重に対する平衡閾値である。最終カムは、必ずしもロボット脚の最も遠位のカムである必要はなく、脚の動きの特定の時点、特にロボット脚の立脚期に、地面に平らに置かれている1つの脚節を脚の動きに関与している1つの節に接続する最後のカムであり得る。従って最終カムは、脚の動きに関与している脚節を、すでに地面上で平らに置かれている節に接続する最後のカムを規定することができる。また、脚の動きの様々な時点で、「最終カム」として規定できるカムが2つ以上存在することもある。
【0020】
いくつかのそのような小さい寸法の(underdimensioned)カムを有することにより、中足の機能を模倣できる。中足は、脚の起立期(standing phase)に安定化の動きを生成する。カムの小さい寸法のため、カムが生成するトルクは脚を真っ直ぐ立てるには不充分である。代わりにカムは、接続された平衡状態の関節よりも速く屈曲する。通常、これによってカムは床に接触し、接続された節の少なくともいくつかも床に対して平行になり、ロボット脚に望ましい安定性を与える。このイベントはカムの機能を変化させ、それらは平らな床の一部になる。
【0021】
ロボット脚における上記の最終カムは、半径が既定の閾値よりも小さいように寸法設計することができ、脚の動きの特定ポイント(角度)で、腱を自己解放してロボット脚の屈曲機構を始動させるために各関節は崩壊する(collapse)。これは、一般的な既知のロボット脚に比べて大きな利点があることが証明されている。そのような既知の手法は、関節を解放して遊脚期を開始するためにモータを使用し、大きなエネルギ及びパワーを必要とするからである。
【0022】
本発明によれば、平衡閾値はFc*rc∝F*dのように定義され、好ましくはFc*rc=F*dとして定義される。Fはロボット脚に作用する全体的な力を規定し、dはカムから仮想脚までの距離を規定し、Fcは各カムに作用する(腱の)力を規定し、rcは各カムの半径を規定する。平衡状態ではこの式が成立しなければならないが、これは、存在するカムの半径を適切に選択しなければならないことを意味する。Fは典型的に仮想脚長方向に作用する。また、平衡閾値の式は、Fc*rc=tc及びF*d=tcと定義される2つの別個の式に分割することができる。ここでtcは各関節において誘発されるトルクである。平衡状態の関節では、このトルクは、(荷重の)力と仮想脚軸までの関節距離との積に等しく、これは上記で定義した平衡閾値の式に戻る。
【0023】
前述のことに鑑み、小さい寸法のカムは不平衡関節と同等と見なすことができ、従ってこのタイプの関節はFc*rc∝F*dもFc*rc=F*dも満たさないが、Fc*rc≠F*dを満たすことは明らかである。
【0024】
上記の場合、1又は複数の最終カムの半径は、平衡状態を保つ半径よりも小さいように意図的に選択することができる。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、アクチュエータのうち少なくとも1つは、動きと力のうち少なくとも一方を発生させるように構成されているのが好ましい。様々な種類のモータ等の能動アクチュエータの多くは、ロボット脚の動き又はロボット脚の少なくとも1つの関節の動きを発生させるように構成されている。次いで、共通腱を介した接続によって脚の残り部分も動かすことができる。
【0026】
例えばばねのような他のアクチュエータは、例えばばね力のような力をロボット脚に対して発生させ得る受動アクチュエータと見なすことができる。このような力も結局はロボット脚の動きを発生させ得る。また、このようなアクチュエータは、脚の動き自体によって生じたエネルギを貯蔵するように構成することも可能である。
【0027】
少なくとも2つのアクチュエータを提供し、第1のアクチュエータがばねを含み、第2のアクチュエータがモータを含むことが好ましい。従ってロボット脚は、ロボット脚において動きを発生させると共に力を誘発するため、能動アクチュエータと受動アクチュエータの双方を含むことができる。更に、各アクチュエータはギアボックスも含み得る。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、アクチュエータのうち少なくとも1つがばねであること、特に、線形ばね、非線形ばね、引張ばね、空気ばね、金属ばね、コイルばね、板ばね、及びコンプライアンス機構のうち1つであることが好ましく、及び/又は、アクチュエータのうち少なくとも1つはモータであり、特に、モータとギアボックスの組み合わせ、リニアモータ、非線形モータ、電気モータ、好ましくはブラシ付きrcアクチュエータ、空気圧式アクチュエータ等の流体アクチュエータ、及びステッピングモータのうち1つである。ばね及びモータは、必要に応じて選択することができる。また、モータは、電磁モータ、油圧モータ、磁気モータ、機械モータ、又は生物筋肉の形態のモータを選択できる。他の例には、ブラシレスモータ、形状記憶合金作動に基づくモータ、静電アクチュエータ、又はソフトアクチュエータがある。また、アクチュエータを人間の筋肉によって実施することも考えられる。
【0029】
ロボット脚に2つ以上のアクチュエータが存在する場合、各アクチュエータの種類を選択することができる。すなわち、アクチュエータが全て同じ種類のものであるか、又は相互に異なるものであるかを選択できる。
【0030】
本発明の実施形態では、2つから8つの関節が提供され、それらの関節は好ましくは直列に配置されている。また、例えば第2の平行な節を提供することでいくつかの節の強度を向上させるため、又は、特別な節に追加のアクチュエータを提供するため、関節のうちいくつかを相互に平行に配置することも可能である。平行な節の場合、例えば、股関節に加わるトルクに耐えられる脚を提供できる。ロボット脚の実際の設計に制限はない。
【0031】
一方で、直列の関節配置を用いる脚は、1つの共通腱を介して全長にわたって動かすことができ、単にこの腱の一端を動かすことによって、又は腱の一端に力を加えることによって、ロボット脚の全長で動きを誘発し、脚長の縮小又は縮小した脚長からの伸長を引き起こす。腱は全ての関節を接続しているので、直列の配置によって、一列に並んだ1つの関節から次の関節への動きの伝達が生じる。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、3つ以上の関節が提供されている場合、2つの直接隣接している関節を相互接続する節に隣接したこれら2つの直接隣接している関節間に配置された別のアクチュエータを提供することが好ましい。前述のように追加のアクチュエータを提供することができる。アクチュエータは、ばね等の受動アクチュエータ又はモータ等の能動アクチュエータのいずれかとすればよい。アクチュエータの実際の設計は必要に応じて選択できる。例えば、追加のアクチュエータにばねが選択された場合、これは、動きから発生するトルク、又は存在する可能性のある胴体が歩行中に当然動くことから生じるトルクを吸収することができる。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、この別のアクチュエータは、上記の直接隣接している関節に作用するトルクにより利用可能となったエネルギを貯蔵し、これらの直接隣接している関節間の変位を発生させるように構成されている。実生活の応用では、通常、本発明に従ったロボット脚に胴体が接続される。胴体は例えば、人又は動物の上半身のような何らかの物体を含むか、又はロボット脚にエネルギを供給するモータもしくは他のものを含み得る。上記のものは全て、脚が歩行又は走行しているとき、ロボット脚の関節のうち少なくとも1つに対して何らかのトルクを生成する。従って、別のアクチュエータは、上記のトルクにより利用可能となったエネルギをロボット脚の別の移動シーケンスで用いるため貯蔵するように構成されている。これにより、外部から脚に供給するエネルギを低減できる。また、摂動をばねのたわみに軽減することができる。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、ロボット脚は、最終カムと最後の節とを相互接続する別の腱を更に備え、最終カムは一連のカムにおける既定の閾値の半径を有することが好ましい。最終カムは、脚の遊脚期から立脚期への遷移中に脚を適切に地面に触れさせるため、脚の遊脚期と立脚期との間に足を地面と位置合わせしなければならないカムとして理解できるか、又は、脚の立脚期に飛び移り角(snap-through angle)の方へ押されるカムとして理解できる。飛び移り角に到達するのは、上記のカムに隣接する各節が共に位置合わせして(coaligned)方向付けられた場合である。一度この飛び移り角に到達してこれを超えたら、別の腱は無荷重になり、脚は崩壊する、すなわち、立脚期と遊脚期との間の遷移点に到達する。
【0035】
いずれにせよ、少なくとも少なくとも1つの最終カムは、上述の崩壊機構のうち少なくとも1つがこのカムで確実に実行されるため、このカムの上述の平衡半径よりも小さい半径を有し得る。ロボット脚の歩行のどの期間が分析されるかに応じて、2つ以上のカムを、対応する半径を有する「最終カム」と定義することも可能である。歩行中の様々な時点で、様々なカムをこの最終カムと定義することができる。
【0036】
立脚期に、各節を能動的に動かすことを伴うモータ等からの多くのエネルギを必要とすることなく、別の腱を無荷重として、脚を平衡状態から移動させて遊脚期を開始するため、最終カムは崩壊する必要がある。
【0037】
脚の遊脚期に、脚が地面に触れて立脚期又は起立期を開始する準備をするため、別の腱は、上記の(おそらくは別の)最終カムが「足指」すなわち最後の節を地面に対して(水平方向に)位置合わせすることを保証できる。別の腱は必ずしも単一の腱である必要はなく、複数の別の腱から組み立てることも可能である。最終カムは必ずしも一列のカムのうち最後のものである必要はない。また、2つ以上のカムがそれらの節を次々と地面に対して位置合わせしなければならない場合もある。
【0038】
ロボット脚の別の設計によれば、これは更に制御及び評価ユニットと任意選択的な少なくとも1つのセンサとを備え、制御及び評価ユニットは、任意選択的に少なくとも1つのセンサによって測定されたパラメータに応じてアクチュエータのうち少なくとも1つを制御及び作動させるように構成されている。このように、ロボット脚の歩行は既定の方法で制御することができ、任意選択的に、センサを用いて検出されたパラメータによって調整できる。センサは、力センサ、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープセンサ、近接センサ、特に接点までの距離もしくは質量中心の高さを検知するセンサ、トルクセンサ、変位センサ、特に直線変位もしくは角度変位センサ、又は速度センサとすることができる。
【0039】
本発明は更に、本発明に従った少なくとも2本のロボット脚と制御及び評価ユニットとを備えたロボットシステムに関する。制御及び評価ユニットは、ロボット脚の一般的な歩行が行われるようにロボット脚を同期させるよう構成されている。2本以上のロボット脚が存在する場合、例えば二足歩行のような一般的な歩行を可能とするため、これらの脚を連携するように同期させる制御及び評価ユニットが必要である。
【0040】
以下の図面の記載において、本発明の別の実施形態を記載する。以下で実施形態により、また図面を参照して、本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1b】
図1のカムの半径が節の長さと共にどのように変化するかを示す例である。
【
図2a】移動中のある時点における別のロボット脚の一例である。
【
図2b】移動中の、
図2aとは異なる時点における別のロボット脚の一例である。
【
図4】遊脚期及び立脚期の様々な時点における別のロボット脚の一例である。
【
図5】遊脚期及び立脚期の様々な時点における別のロボット脚の一例である。
【
図6】ロボット脚の例示的な実施例の側面図である。
【
図7】共通腱を示す
図6のロボット脚の断面図である。
【
図8】2本のロボット脚を備えたロボットシステムの例示的な実施例の斜視図である。
【
図12a】4本のロボット脚を備えたロボットシステムの例示的な実施例の様々な図である。
【
図12b】4本のロボット脚を備えたロボットシステムの別の例示的な実施例の様々な図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、同一の又は同等の機能を有する部分に同一の参照番号を用いる。コンポーネントの方向に関して行われる記述は、図に示された位置に対するものであるので、当然、実際の適用例における位置は変動する可能性がある。
【0043】
図1はロボット脚10の最も基本的なモデルを示す。ロボット脚10は2つの関節j
0、j
1を備え、各関節はそれぞれカムc
0及びc
1を1つずつ備えている。関節j
0はロボット脚10の「股関節」を表す。関節j
0は通常、図示されていないが例えば胴(torso)又は胴体(trunk)24である別のセグメントに接続されている(例えば
図12を参照のこと)。
【0044】
もう1つの関節j1は、この共通の関節j1でカムc1を介して直接連結されている2つの節s1、s2を移動可能に接続する。更に、ロボット脚10は、カムc1を介して双方の節s1、s2を相互に接続する共通腱18と、第1の節s1の近くに配置されると共にばね22を含む1つのアクチュエータ20と、を備えている。ばね22は、ロボット脚10を伸長するため、すなわち真っ直ぐに伸ばすため、共通腱18に力FSを加えることができるように設計されている。例えば通常の体重を模倣するため、ロボット脚10に胴体荷重24が加えられる。胴体荷重24は、ロボット脚10の動きを誘発するモータ28を含む第2のアクチュエータ20の重量も含む。胴体荷重24は、ばね22とは対照的に、ロボット脚を押すことでこれを曲げる。
【0045】
この文脈において、股関節j0はゼロサイズカム(zero size cam)として設計され得る、すなわち、股関節は必ずしも、ロボット脚10の動きにアクティブに関与する脚の他の関節と同じ機構(feature)を含むわけではないことに留意するべきである。機械的な簡略化のため、ばね22を胴体24に取り付けてもよい。これにより、股関節に生じるトルクは最小限に抑えられる。これは通常、全トルクに対する影響が5%未満であることを意味する。
【0046】
また、
図1aは仮想脚Vの規定も示す。仮想脚Vは基本的に、ロボット脚10の最高点すなわち股関節j
0と、地面に接触するロボット脚10の最低点すなわち足指との間の最短距離である。最低点は通常、圧力中心26でもある。ロボット脚10に3つ以上の節が存在する場合、圧力中心26はロボット脚の最後の節に沿った場所に位置付けられる。これは、ロボット脚10の立脚期に最後の節が地面上で平らに置かれる可能性があるからである。
【0047】
図1bは、カムc
1の半径がロボット脚10内での位置に応じて変動することを示す。基本的に
図1bが示すのは、カム関節と仮想脚との間の垂直方向の距離が長くなればなるほど、脚を既定の平衡状態に保つため、すなわち立脚期に、カムc
1の半径が大きくならなければならないということである。これと同じことが、ロボット脚10に含まれ得る全てのカムc
iの全ての半径r
iにも当てはまる(
図2a及び
図2bも参照のこと)。
【0048】
すでに説明したように、1つ以上のカムciの半径riは既定の閾値よりも小さいように意図的に選択することができる。これを行う目的は、各関節jiの崩壊を引き起こし、別の外部電力供給なしで自動的にロボット脚10の遊脚期を開始すること、又は、立脚期に脚を固定するすなわち重量を保持すること、すなわち地面に適切に接触させるため足指を位置合わせすることである。
【0049】
ばね22と腱18の組み合わせは、仮想脚Vの長さ方向の力に対抗するように設計されている。また、これは、モータ28から第1の関節j1に加わる股関節トルク、又は足指関節すなわち最後の節からのトルクを脚10に伝達する。
【0050】
ばね22、腱28、及び脚節siの組み合わせは、物体荷重24が加わると反応して脚が短くなる、全体的にコンプライアンスのある脚を生成する。
【0051】
図2a及び
図2bは、様々な胴体荷重24のもとでのロボット脚10の挙動を示す。これら2つの図を比べると、ロボット脚10は、仮想脚Vの方向の様々な胴体荷重24のもとでばねのように機能することが容易に認められる。従って、歩行中、脚歩行の物体力学に従って脚は脚長方向にたわみ、胴体荷重24を垂直方向に受動的に振動させる。
【0052】
以下では、
図3から
図7を用いて、ロボット脚10及びこの脚の歩行中に様々なコンポーネントがどのように連携するかを示す例示的な実施形態について記載する。
図6及び
図7に、記載される実施形態の様々なコンポーネントの全体図が示されている。例示的なロボット脚10の動きについては
図3から
図5を参照する。
【0053】
図3a及び
図3bは、5つのカムc
0~c
4をそれぞれ備えた5つの関節j
0、j
1、j
2、j
3、j
4と、共通腱18と、1つのばね22と、を備えるロボット脚10の一例を示す。更に、ロボット脚10は、第2の節s
2と平行に配置されると共に胴体荷重24から発生するトルクを吸収できる別のばね34も備えることができる(特に
図4を参照のこと)。ばね34は通常、そのトルクからのエネルギを貯蔵し、脚10の別の動きのために使用することができる。
【0054】
ロボット脚10は立脚期で図示されており、最終カムc
4に連結された最後の節s
5は地面に接触している。
図3aでは、通常の体重のような通常の胴体荷重24のもとで、最後の関節j
4におけるトルクが最後の節s
5の端部に力を誘発することがわかる。仮想脚Vに沿った力は、最後の関節s
4を介して地面へ誘導される。従って、最後の関節j
4のトルクを変化させ得るばね22及び共通腱18の組み合わせによって操作することができる圧力中心26を規定できる(
図3b)。圧力中心26がシフトすることは、面接触及び関連する関節jのトルクを用いる脚機構の脚歩行における重要な特徴である。
【0055】
図4の左側から右側に、例示的なロボット脚10の遊脚期が示されている。ばね22は、遊脚期はたるんでいる(slack)ように設計され(左と中央の図を参照のこと)、立脚期では自己係合してアクティブになるように設計されている(右側の図を参照のこと)。ばねの係合は自己駆動であり、足及び足指の伸長腱18、30のセットを介して足及び足指関節j
3、j
4に対して作用する。足指節s
5は、荷重24を支持する腱18に対してモーメントアーム及びそのカム表面を提供する。
【0056】
図4の右側は、脚10の立脚期に足指節s
5が地面で平らに置かれることを示す。これは、カム半径r
4を既定の閾値よりも小さい指定値に設定することによって達成される。
【0057】
すなわち、関節j
4の最終カムc
4は、いわゆる小さい寸法のカムであり、F
c*r
c=F*dを満たさずにF
c*r
c≠F*dの条件を満たし、最終カムc
4を有する関節に関連付けられた遠位節s
5が崩壊して実質的に床と平行になる(
図4の左側の図を参照のこと)のに対し、関節j
4に関連付けられた他方の節s
4は共通腱18によって生じたロボット脚10内の張力のため床に対して傾くようになっている。
【0058】
遊脚期に、たるんだ共通腱18及びばね22によって、脚伸長ばねに逆らうことなくロボット脚10を曲げることができる。これは早期のロボット設計に対する重要な改良であり、ここに開示されている設計変更の主な理由の1つである。たるんだ脚10によって、小さく低パワーの脚屈曲アクチュエータ20(
図5から
図7のモータ28を参照のこと)が、脚10を曲げることができる。これにより、遊脚期に必要な足指の間隔が生成される(
図4の左側)。
【0059】
脚節s
1、s
2、s
3のほとんどは折り畳まれるが、足及び足指の節s
4及びs
5は丸められる。丸くなる動きは共通腱18によって伝達されるが、ばね22には脚10の重量によってわずかに荷重がかかる。足関節j
3の丸められた位置及び伸長位置は通常、機械的関節限界51、52(
図7を参照のこと)によって制限され、足指節s
5の動きは通常、その関節j
4の標準的な動き範囲によってのみ制限される。
【0060】
立脚期の終了時、胴体力学によって、高速走行の自己推進によるばね22と腱18の解放が達成される可能性がある。しかしながら、歩行及び低速走行中、胴体荷重24及び脚荷重の力学は必ずしも一致しない。従って、胴体力学の脚解放に対する寄与は不充分である。
【0061】
あるいは、脚が強制的に曲げられる可能性がある。しかしながら、荷重のかかった脚10を屈筋腱32(
図7を参照のこと)及びモータ28によってアクティブに曲げることは困難であることが示されている。腱32を介してカムc
1に力を加えた場合、脚関節j
3、j
4は、ひざj
1の曲げに反応して、角度のある伸長を生じる。この結果、脚は地面上に留まる。代わりに、全ての連結された関節j
iがわずかに回転するだけである。荷重のかかったグローバルばね22と腱18を大きい力によって解放することは可能であるが、この固有の脚屈曲手法には大きいエネルギとパワーが必要である。モータパワーは力を速度と結合するので、必要な大きい力によって解放の速度が制限され、遊脚期の開始が遅れる可能性がある。
【0062】
こういった理由により、共通ばね22と腱18の自己解放機構が設計される。その中心となるのは、追加の関節j3及び遠位の解放腱36である。足指s5が地面上にある立脚期の脚10は、股関節モータ28により生成された股関節j0のトルク及び股関節j0の角度移動を、足首関節j4の変位及びトルクに方向転換させる。遠位方向にのみ作用する解放腱36は、この足首関節j4の動きを足関節j3の動きに結合し、関節j3を崩壊させる。図示の実施形態において、j3は、異なる腱に対して2つの異なるカム半径を含む、すなわち共通腱18に対して1つの半径(典型的に大きい方)と解放腱36に対して1つの半径(典型的に小さい方)を含むことを注記しておく。これによって、(モータ28の、又は股関節を前方に押すシステムに作用する力の)股関節トルク及びその角度移動の部分を効果的に統合し、遠位の足関節j3及び足首関節j4におけるパワーに変換する。解放機構が動作する要件は、遠位節s5が地面上で平らであることである。
【0063】
このパワー変換は最終的に、遠位解放腱36によって足関節j
3(
図5を参照のこと)を曲げる。腱の長さ及び力は、調整機構40によって調整可能とすることができる。解放のポイントは、脚の角度、調整された腱の長さ、及び脚の荷重の関数となる。共通のばね22と腱18の解放後、遊脚期に脚屈曲腱32は脚を容易に持ち上げることができる。脚節s
iの折り曲げは、共通腱18及びばね22によって連動される。
【0064】
足指節s5が立脚期に地面上で平らであることは、上記の解放機構が動作するため、及び解放機構の不可欠の部分が機能するための要件である。
【0065】
立脚期に、足首は地面と多点接触を生成する(
図3も参照のこと)。内部で関節は、そのカムc
4の半径を中心としたいくつかの腱の荷重を介してトルクを支持する。多点接触足指により、足指s
5の長さ範囲にわたってロボットの圧力中心26のシフトが可能となる。圧力中心26の位置は、脚の荷重(j
0とj
4との間)及び関節j
4における関節トルク(
図3を参照のこと)の関数である。後者は、(屈筋)腱の力(腱18及び36の下部)及び各カムcのカム半径rの関数である。
【0066】
次のセクションは、ロボット脚10の例示的な実施形態の機能及びその歩行中の運動シーケンスを開示する。
図6から
図12に示されているロボット脚10の実生活での適用例の特別な特徴として、ばね22はロボット脚10の第1の節s
1から遠位に取り付けられている。これは、ばね22の機能とは無関係であり、スペース不足によるものである。理論上、ばね22は、前述の図に示したように節sのうち1つに隣接して配置することも可能である。
【0067】
ばね22及び共通腱18、及びその周辺ハードウェアの組み合わせであるグローバルばね腱は、仮想脚Vの長さ方向(
図4)の重力荷重及び動的荷重に反して多節脚を伸長するように設計及び寸法設定されている。脚システムに作用するトルクの効果を組み込むための追加要素を加えた。このフレームワークは、グローバルばね腱22、18によって脚長方向に張力が加えられた2節脚構造、3節脚構造、及び更に多数の節の脚構造の設計を可能とする。
図13において、解放機構を備えている及び備えていない多節脚構造の様々な例を見ることができる。これらの脚構造の機能の説明は前述の図と関連付けて示される。
【0068】
グローバルばね腱22、18は、全ての関与する脚関節j
1、j
2、j
3、j
4のたわみ及び荷重を機械的に結合する。この結果、立脚期に多節脚は単一のコヒーレントな機械ばねとして機能する(
図4)。
【0069】
脚荷重は、常に仮想脚Vに沿っているだけでなく、股関節j
0又は足指関節j
4から発生するトルクを組み込むことができる。トルクは、脚構造において、ばね装填4バー構造又は固定バー構造(ばねを用いたものが
図5の34に示されている)により捕らえられる。4バー構造は、脚構造を誘導するグローバルばね腱22、18に加えて提供される。4バー構造は、ばね、腱、又はばねと腱によって、節s
1とs
3との間の相対移動を制限する。
【0070】
上記のフレームワーク内で、遊脚期から立脚期への遷移時にグローバルばね腱を係合するための機構が設計されている。また、グローバルばね腱の係合は、立脚期の大部分で遠位の脚節を地面上で平らに保つように設計されている。このため、足指関節j4の半径r4はそれに応じて寸法設定される。係合は、最も遠位の脚節s5によって保たれる。この機構は、グローバルばね腱22、18のための自己係合クラッチを表す。自己係合クラッチ機構は、すでに2節脚構造について部分的に仮説が立てられている。ここでは、これが5節脚構造に適用される。
【0071】
多部分カムであるc1、c2、及びc3を含む脚関節カムc0からc4は全て、固定の半径を用いて設計されている。これにより、関与する腱の機械的結合を比較的容易に計算することができる。また、固定のカム半径rは、立脚期の広範囲の脚長たわみと、遊脚期の広範囲の脚屈曲の設計を可能とする。
【0072】
この文脈において、ロボット脚10の更に複雑な挙動も想定され得ることに留意するべきである。そのような複雑な挙動は、非線形のカム半径を与えることによって、すなわち、1つの軸を中心として回転するのではなく楕円形カムで生成されるような2つの軸を中心として回転するカムを与えることによって発生し得る。
【0073】
この文脈において、更に複雑な脚の挙動は、すなわち非線形脚剛性である可能性があり、脚長を常に変化させることによって脚長方向の力が非線形に変化することを意味することに留意するべきである。
【0074】
ばね腱係合は、接地時に開始し、立脚期の間は継続する。特定の角度でグローバルばね腱を解放させる、新規の機械的解放機構が設計されている。解放の成功によって効果的に遊脚期が開始する。
【0075】
解放のタイミングは、解放腱36の長さを調整機構40で設定することによって機械的に調整可能である。ばね質量系では通常、ばねの弛緩はばね質量力学だけに依存する。物体質量と物体力学は脚のばね22に荷重を加え続けるので、たるんだ長さに完全に戻ることによるばね解放(早期の解放)他は、不可能である。これは特に、歩行歩容(walking gait)及び歩行と走行との間の歩容の低速時に当てはまる。
【0076】
追加の遠位解放腱機構の形態の次善策が設計されている。遠位解放腱36は、荷重のかかったグローバルばね腱22、18脚を崩壊させる。崩壊は、この目的のためだけに導入された追加の脚関節j3で発生する。関節j4の角度が大きくなると、解放腱36で連結された関節j3の利用可能アーク長が小さくなる。固定長のため、腱36によって関節j3の崩壊が開始する。関節j4の角度が大きくなると、関節j3の関節角が小さくなる。関節j3の角度が180度に達したときに崩壊が起こり、最終的に関節j3は折れるか曲がる。この時点以降、節sに沿ってグローバルばね腱22、18により生じる一連の力はもはや維持されず、脚10は無荷重となる。解放の時点で貯蔵されているばねエネルギは、遊脚期の開始時に付近の脚節s3、s4、s5を前方に押す。本質的には、荷重のかかった弾性の脚10と解放機構の組み合わせは、立脚期から遊脚期への遷移時に下方脚節sに対して作用する「石弓(catabult)」を表す。
【0077】
機械的な受動ばね(グローバルばね腱)を利用することは、極めてエネルギ効率が高く、制御の点で効率的である。作動の必要はなく、立脚期に制御機構も検知機構も必要ない。グローバルばね腱22、18の係合及び解放は、検知なしで動作するように設計されている。代わりに、ロボット脚10はフィードフォワード制御で歩行及び走行することができる。
【0078】
立脚期、すでに通常の荷重24(例えば通常の体重)が加えられている足は、ある面積で基板に接触し、地面によって多点の力を誘発する。具体的には、足指蝶番関節j4におけるトルクは足指の先端s
5に力を誘発する(
図3)。仮想脚Vに沿った力は、足の蝶番関節を介して地面の方へ向けられる。グローバルばね腱22、18の力は、ロボット荷重(体重及び物体力学)、脚の角度、及び足指の角度の関数である。足指節s
5における2つの抽象化された反応力ベクトルの組み合わせは、ロボットの圧力中心26を生成する。グローバルばね腱22、18機構は関節j
4のトルクを変化させるので、間接的に、ロボットの圧力中心26を前後方向に操作することを可能とする。圧力中心26がシフトすることは、面接触及び関連する関節のトルクを用いる脚機構の脚歩行における重要な特徴である。
【0079】
遊脚期に、脚のばね腱ネットワーク22、18は解放されてたるみ、脚の関節は緩くなる(
図4を参照のこと)。たるんだ脚10の状態は、1又は複数の足指伸長腱30、ばね解放腱36、グローバルばね腱22、18、及び脚屈曲腱32を適切に設計することにより生成される。足指s
5が丸まると、その関節j
3の周囲のたるみが生じる。全ての関節は依然としてグローバルばね腱22、18により連結されているので、このたるみは上方に伝搬する(j2からj0)。遊脚期に上記のたるんだ状態で脚10を曲げる(短くする)ことが望ましい。
【0080】
第1に、遊脚期のたるんだ脚10は、伸筋ばねがアクティブである間に脚を曲げることに比べてエネルギ効率が高い。第2に、弛緩したるんだグローバルばね腱22、18は、揺動する脚節を、足指が後方を向いている丸まった姿勢にする(
図4を参照のこと)。揺動する脚の丸まった足指/足のs
5/s
4の姿勢は、伸長した足指が前方を向いているものに比べ、歩行中のつまずきを防止することができる。
【0081】
立脚期から遊脚期へ遷移するには、歩行及び低速走行のように「位相を外れた(out-of-phase)」歩容のために脚のばね腱22、18を機械的に強制的に解放させる必要であることがわかっている。これが特に重要である理由は、所与の時点で又は所与の脚角度で解放が発生しなければならないからである。歩行歩容において、及び歩行と走行との間の遷移速度のために、解放機構が利用されている。関節j
3及びj
4(
図5)に対して作用する新規の、遠位に位置付けられた解放腱36が設計されている。解放腱の作用は、股関節角度モータ28による股関節トルク及び股関節角度移動がj
0に作用することにより効果的に駆動される。
【0082】
遊脚期と立脚期との間の遷移時の適正な係合及び脚の姿勢は、2つの作用する腱、すなわちグローバルばね腱22、18によって設計されている。この場合これは、2つの部分(
図7)及び足/足指伸長腱38、30から構成されている。双方の遠位節のタイムリーな移動は、関節制限部51、52及び計算されたカム半径(c3に2つとc4に1つ)のセットによって誘導される。
【0083】
足指の伸長は、2つの伸筋腱38、30によって誘導される。これら2つの伸筋腱38、30は、足関節j
3及び足指関節j
4の動きに連結されている。双方の腱は個別に長さ8、9(
図7)を調整できる。双方の腱は、グローバルばね腱22、18による拮抗作用の効果を低減させるようにばね装填することができる。しかしながら、図示されている歩容では、グローバルばね腱22、18のみがばね装填されている。
【0084】
遊脚期の終了時、重力及び慣性効果により足首関節j2が伸長する。これによって脚の下部が降下する。足首関節の伸長は、脚前突(leg protraction)によって追加の腱ひざ関節でサポートすることができる。足首関節j2が伸長すると、腱38、30に対するj2の腱アーク長が増大する。最初に、腱38が関節j3の関節アーク上で節s4を伸長させる。節s4によって腱30の経路が決定される(route)。腱30はその長さで設定され、節s4が腱によって伸長した後に節s5を伸長させる。
【0085】
実質的に、足首関節の伸長(
図4)により、節s4及びs5は制御された方法で伸長する。制御は、たるんだ腱30、38の長さを設定することにより行われる。
【0086】
ロボットシステムでは、作動(RCサーボモータ)並びに制御及び評価ユニット42(例えばフィードフォワードモードの中央パターンジェネレータ)を適用することができる。フィードフォワード制御によって、新規の二足歩行ロボットは、2J/(Nm)未満の輸送コストで、最大で0.9m/sの歩行及び低速走行が可能である。
図8から
図10に、二足歩行ロボットの実際の適用例が示されている。
【0087】
2本のロボット脚10は、通常は制御及び評価ユニット42も含む胴体24を介して接続されている。
【0088】
このようなロボットは、全てのセンサを含めて約1.7kgの重量を有し得る。ロボットは、約0.29mの標準的な高さを有する(
図8から
図10)。最良の値が約6.6J/(Nm)であった最新のロボットに比べ、2未満のCOTは輸送コストの劇的な低減(>1/3)を示す。
【0089】
このようなロボット脚10の別の適用例が
図11に示されている。ここでは、人の歩行を支援するため、又は例えば人が重い重量を運ぶのを支援するため、2本のロボット脚10が人体に取り付けられている。右側の図は、接続されている腱を弛緩させて足の所望の垂直の動きを生成するため、遠くの節がどのように足節よりも遠くで回転するかを示す。
【0090】
ロボットシステムの別の例が
図12aに示されている。ここでロボットシステムは、胴体24を介して接続された4本のロボット脚10を備えている。また、システムは、通常は胴体24の内部に配置される制御及び評価ユニット42も備えている。制御及び評価ユニットは、ロボットシステムが四脚動物と同様に歩行又は走行できるように各ロボット脚10の動きを同期させる。
【0091】
ロボットシステムの別の例が
図12bに示されている。このロボットシステムは
図12aに示されたものと極めて類似しているが、更に、4本のロボット脚10の各々において、胴体24を介して接続されたセンサ44を備えている。制御及び評価ユニット42は、センサ44によって測定されたパラメータに応じて、各脚に存在するアクチュエータ20を制御し作動させるように構成されている。このため、センサ44で測定されたパラメータを使用することで、
図12aのロボットシステムに比べて改良された方法で各ロボット脚10の移動を実行できる。これは、センサ44がロボット脚10の各々の動きの微調整を可能とするからである。この文脈において、例えばダチョウ等の鳥の脚のような動物の動きを模倣する微調整されたロボット脚10を用いて、例えば獣医学において特定の動物の精密な動きのパターンを説明できることに留意するべきである。
【符号の説明】
【0092】
8 脚長調整、9 脚長調整、10 ロボット脚、c、c0~c4 カム、j、j0~j4 関節、r、r0~r4 半径、s、s1~s5 節、18 共通腱、20 アクチュエータ、22 ばね、24 胴体荷重、26 圧力中心、28 モータ、30 足指伸長腱、32 屈筋腱、34 別のばね、36 解放腱、38 伸筋腱、40 調整機構、42 制御及び評価ユニット、44 センサ、51 関節限界、52 関節限界