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特許7483738乗り物ウィンドウガラスアセンブリ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】乗り物ウィンドウガラスアセンブリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20240508BHJP
   B60J 1/10 20060101ALI20240508BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B60J1/00 M
B60J1/10 C
B29C45/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021551937
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2020084379
(87)【国際公開番号】W WO2020211715
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】201910298785.8
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ユイ プーイン
(72)【発明者】
【氏名】カオ シンチアオ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ シアオピン
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273501(JP,A)
【文献】特開2018-083546(JP,A)
【文献】米国特許第06086138(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B60J 1/10
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物ウィンドウガラスアセンブリであって、以下を含み:
乗り物ウィンドウガラス及びその射出成形封止部材;並びに
ベース、ねじロッド及び射出成形部材を含むオーバーモールドボルトであって、ここで、前記ねじロッドの一端が、前記ベースに固定的に接続されており、かつ前記射出成形部材が、前記ベースの少なくとも一部を覆っている、オーバーモールドボルト、
前記射出成形封止部材が、前記射出成形部材の少なくとも一部を覆い、それによって前記オーバーモールドボルトと前記乗り物ウィンドウガラスとが互いに固定されており、かつ前記射出成形部材の材料の引張強度が、前記射出成形封止部材の材料の引張強度よりも大きく、
前記オーバーモールドボルトが、前記ねじロッドにスリーブ状に取り付けられておりかつ前記ベースに当接しているシムを更に含み、前記シムの材料が、ゴム又はプラスチックである、
乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
【請求項2】
前記射出成形部材が、前記オーバーモールドボルトを前記乗り物ウィンドウガラスの表面に位置決めするための位置決め部を含み、前記位置決め部が、前記ベースから前記ねじロッドとは逆方向に外向きに延在し、かつ前記射出成形部材の底面から突出している、請求項1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
【請求項3】
前記射出成形部材の前記材料が、PP、PA、ABS、又はPC/ABSである、請求項1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
【請求項4】
前記射出成形部材の前記材料に、ガラス繊維が添加されている、請求項に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
【請求項5】
前記射出成形封止部材の前記材料を充填するために、前記射出成形部材に少なくとも1つの貫通孔が形成されている、請求項1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
【請求項6】
前記射出成形封止部材の前記材料が、TPEである、請求項1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリを製造するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
A)前記ベースと前記ねじロッドとを互いに固定的に接続し、それらを第1の射出成形金型に配置すること;
B)第1の射出成形材料を前記第1の射出成形金型に注入して、前記ベースの少なくとも一部を覆う前記射出成形部材を形成して、前記オーバーモールドボルトを得、そして前記得られたオーバーモールドボルトを前記第1の射出成形金型から離型させること;
C)前記得られたオーバーモールドボルトと前記乗り物ウィンドウガラスとを互いに点接触によって位置決めし、そしてそれらを第2の射出成形金型に配置すること;
D)第2の射出成形材料を前記第2の射出成型金型に注入して、前記射出成形部材の少なくとも一部を覆う前記射出成形封止部材を形成して、前記乗り物ウィンドウガラスアセンブリを得ること。
【請求項8】
工程C)の前に、前記得られたオーバーモールドボルトの前記射出成形部材の表面に下塗りをする工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗り物ウィンドウガラス製造の技術分野、特に、乗り物ウィンドウガラスアセンブリ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、クォーターウィンドウは、多くの乗り物に取り付けられている。いくつかのクォーターウィンドウは、いくらかの乗り物の前部に取り付けられてドライバーの視界を広げており、それによっていずれかの側を通過する他の乗り物が存在する場合の不明瞭な視界を回避できる。いくつかのクォーターウィンドウは、車両の日光を増加させるために、いくつかの乗り物の後部に取り付けられている。これらのクォーターウィンドウは、通常、ボルトで乗り物ドアの板金に固定されている。
【0003】
乗り物製造業者は、一般的に、乗り物アセンブリラインの最終段階でボルトにナットを締めることによって、これらのクォーターウィンドウを取り付けることを選択し、したがって、乗り物製造業者は、クォーターウィンドウガラスの射出成形封止部材中において、1つ以上のボルトをオーバーモールド(over-mold)する必要があり、かつこの射出成形封止部材は、ナットをねじ込んだ場合、損傷を避けるために、最小のトルク要件(例えば、5Nm~6Nm)を満たす必要がある。
【0004】
しかしながら、いくつかの乗り物のモデルでは、クォーターウィンドウガラスの表面と、クォーターウィンドウガラスを取り付ける必要のある乗り物ドア板金との間に、大きなギャップ(例えば、10mm超)が存在する。一般的な標準ボルトはこの要件を満たすことができず、特定の設計スタイルのためにガラス表面を変更することはできず、スタンピングプロセスの実現可能性を考慮して乗り物ドアの板金を変更することができない。また、射出成形封止部材は通常、PVC(ポリ塩化ビニル)を使って注入するが、いくつかの乗り物製造業者は、外観や機能上の要件により、射出成形封止部材を形成するために、その他の特定の材料、例えば引張強度の低い材料(例えば、TPE(熱可塑性エラストマー)、TPEは、破断点伸びがPVCの約2倍であるが、引張強度がPVCの半分以下であり、ナットがねじ込まれている場合、トルク要件を満たすのは困難である)を使用する必要がある。
【0005】
上記の問題を解決するために、いくつかの提案が先行技術において提案されてきた。例えば、上記の大きなギャップを克服するために、ボルトの長さを長くすることが提案されている。しかしながら、アセンブリスペースの制限のために、より長いボルトは、いくつかの乗り物モデルでは使用できない。
【0006】
更に、ボルトのベースを覆うための射出成形材料の厚さを増加させて、ボルトをガラス表面に対して「リフト」することにより、ボルトのベースと乗り物ドアの板金との間の距離を短くすることが提案されている。しかしながら、射出成形材料(例えばTPE)の厚さを増加させると、射出成形後の射出成形封止部材が収縮し、ボルトの位置決めの精度に影響を与えうる。
【発明の概要】
【0007】
従来技術における上記の欠陥を解決するために、本開示の第1の態様は、乗り物ウィンドウガラスアセンブリを提供し、以下を含む:乗り物ウィンドウガラス及びその射出成形封止部材(injection-molded encapsulation);並びにベース、ねじロッド及び射出成形部材(injection-molded part)を含むオーバーモールドボルト(over-molded bolt)。ねじロッドの一端が、ベースに固定的に接続されており、かつ射出成形部材が、ベースの少なくとも一部を覆っている。射出成形封止部材が、射出成形部材の少なくとも一部を覆い、それによってオーバーモールドボルトと乗り物ウィンドウガラスとが互いに固定されており、かつ射出成形部材の材料の引張強度が、射出成形封止部材の材料の引張強度よりも大きい。
【0008】
本開示の好ましい実施形態によれば、射出成形部材が、オーバーモールドボルトを乗り物ウィンドウガラスの表面に位置決めするための位置決め部を含み、位置決め部が、ベースからねじロッドとは逆方向に外向きに延在し、かつ射出成形部材の底面から突出している、
【0009】
本開示の好ましい実施形態によれば、オーバーモールドボルトが、ねじロッドにスリーブ状に取り付けられておりかつベースに当接しているシムを更に含む。
【0010】
本開示の好ましい実施形態によれば、シムの材料が、ゴム又はプラスチックである。
【0011】
本開示の好ましい実施形態によれば、射出成形部材の材料が、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)又はPC/ABS(ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとのコポリマー及び混合物)である。
【0012】
本開示の好ましい実施形態によれば、射出成形部材の材料に、ガラス繊維が添加されている。
【0013】
本開示の好ましい実施形態によれば、射出成形封止部材の材料を充填するために、射出成形部材に少なくとも1つの貫通孔が形成されている。
【0014】
本開示の好ましい実施形態によれば、射出成形封止部材の材料が、TPEである。
【0015】
本開示の第2の態様は、本開示の第1の態様による乗り物ウィンドウガラスアセンブリを製造するための方法であって、以下の工程を含む:A)ベースとねじロッドとを互いに固定的に接続し、それらを第1の射出成形金型に配置すること;B)第1の射出成形材料を第1の射出成形金型に注入し、ベースの少なくとも一部を覆う射出成形部材を形成して、オーバーモールドボルトを得て、得られたオーバーモールドボルトを第1の射出成形金型から離型させること;C)得られたオーバーモールドボルトと乗り物ウィンドウガラスとを互いに点接触によって位置決めして、それらを第2の射出成形金型に配置すること;D)第2の射出成形材料を第2の射出形成金型に注入し、射出成形部材の少なくとも一部を覆う射出成形封止部材を形成して、乗り物ウィンドウガラスアセンブリを得ること。
【0016】
本開示の好ましい実施形態によれば、方法は、工程C)の前に、得られたオーバーモールドボルトの射出成形部材の表面に下塗り(priming)をする工程を更に含む。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比較して、本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリは、以下の利点を有する。
【0018】
1)オーバーモールドボルトが基礎のボルト構造上における第1の射出成形によって得られて、そして次に、乗り物ウィンドウガラスの射出成形封止部材が、得らえたオーバーモールドボルト及び乗り物ウィンドウガラス上における第2の射出成形によって得られているため、本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリは、ガラス表面に対してボルトを「リフト」することになり、したがって、乗り物ウィンドウガラスの表面と、乗り物ウィンドウガラスを取り付ける必要がある乗り物ドアの板金との間に大きなギャップがある様々な乗り物モデルに適合させることが可能である;
【0019】
2)第1の射出成形材料は、第2の射出成形材料よりも高い引張強度を有するため、本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリの全体的な機械的強度は、これらの2つの射出成形材料を組合せることによって改善されて、したがって、乗り物製造業者が乗り物ウィンドウガラスの射出成形封止部材を形成するために引張強度の低い材料を使用する必要がある場合に、ナットをねじ込むときに、最小のトルク要件を満たすことができる;
【0020】
3)本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリの射出成形封止部材が大きい厚さを有するが、射出成形封止部材で覆われたオーバーモールドボルトの射出成形部材は大きな引張強度を有するため、射出成形封止部材は射出成形後にほとんど収縮せず、乗り物ウィンドウガラスに対するオーバーモールドボルトの位置決め精度が保証される;
【0021】
4)また、乗り物ウィンドウガラスアセンブリを製造するための方法は、複雑ではなく、そしていくつかの特定の射出成形材料(例えばPP及びTPE)は、下塗りをする工程なしで、互いに自己接着することができ、したがって、乗り物ウィンドウガラスアセンブリは、経済的コスト及び工数コストが低く、様々な乗り物モデルに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して詳細に説明される以下の好ましい実施形態を通じてよりよく理解されるであろう。図面において、同じ引用番号は、同一又は類似の構成要素を示す。
図1図1は、本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリの基礎のボルト構造の概略斜視図である。
図2図2は、図1による基礎のボルト構造の概略断面図である。
図3図3は、第1の射出成形金型に配置された図1による基礎のボルト構造の概略断面図である。
図4図4は、図1による基礎のボルト構造を含むオーバーモールドボルトの概略断面図である。
図5図5は、図4によるオーバーモールドボルトの概略断面図である。
図6図6は、本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリの概略部分断面図であり、ここで、乗り物ウィンドウガラスアセンブリは図4によるオーバーモールドボルトを含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の実施及び使用法は、以下で詳細に説明される。ただし、議論される特定の実施形態は、本開示を実施及び使用する特定の方法を説明することを単に意図するものであり、本開示の保護範囲を制限することを意図するものではないことを理解されたい。
【0024】
図面は、本開示の説明及び説明のために使用されるだけでなく、必要に応じて本開示の定義にも役立つことに留意されたい。
【0025】
図1は、本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリの基礎のボルト構造の概略斜視図であり、図2は、図1による基礎のボルト構造の概略断面図である。図に示されているように、基礎のボルト構造は、ベース1及びねじロッド2を含み、ねじロッド2の一端が、ベース1に固定的に接続されている。ベース1及びねじロッド2は、両方ともにスチール材料で作られてもよく、また、例えばリベット留め等によって、互いに固定されている。当然、ベース1及びねじロッド2は、製造を容易にするために、一体化になるように設計されていてもよい。
【0026】
図示の実施形態では、ベース1は、約1.5mm~2.5mmの厚さを有するスチール板であり、このスチール板には、位置決め孔11(例として、図は、スチール板の中心に対して対称である2つの位置決め孔11を示している)が設けられており、それによって、射出成形金型に配置された位置決め部材が位置決め孔11を通過して、ベース1が射出成形金型に正確に位置決めされ、かつ射出成形金型に対して回転できないようなる。
【0027】
ねじロッド2は、スチール板に対して実質的に垂直であり、ねじロッド2の一端が、スチール板の実質的に中央の位置に固定的に接続されており、もう一方の端が、乗り物ドアの板金に設けられた固定孔を通過するように構成されており、ナットをねじ込むことによって、乗り物ドアの板金に固定されうる。ねじロッド2の型は、実際の要求にしたがって、決定されてよく、例えば、M5、M6等であってよい。
【0028】
また、腐食を防止するために、ベース1及びねじロッド2の表面に電気めっきを施すことができる。電気めっきコーティングの材料は、一般的に、PF Zn(めっきZn)又はPF Zn Ni(めっきZnNi)である。
【0029】
好ましくは、基礎のボルト構造は、ねじロッド2にスリーブ状に取り付けられておりかつベース1に当接しているシム3を更に含むことができる。シム3の材料は、ゴム、軟質プラスチック又は硬質プラスチックであり、これによって、射出成形時のシール性を高め、射出成形材料がねじから漏れるのを防ぐ。
【0030】
図3は、第1の射出成形金型に配置された図1による基礎のボルト構造の概略図である。図に示されているように、第1の射出成形金型の射出領域9は、キャビティ金型7及びコア金型8によって定義される。基礎のボルト構造のベース1及びシム3は、射出領域9中に一体的に配置されており、したがって、ベース1の少なくとも一部を覆う射出成形部材4(図5及び6に示される)は、第1の射出成形を実行することによって形成することができ、それによって、全体のオーバーモールドボルトを得ることができる。
【0031】
射出成形部材4の材料は、一般的に、例えば、PP、PA、ABS又はPC/ABS等の硬質プラスチックである。乗り物製造業者が乗り物ウィンドウガラスの射出成形封止部材を形成するために軟質プラスチックを用いる必要がある場合、硬質プラスチックと軟質プラスチックとの組み合わせにより、乗り物ウィンドウガラスアセンブリの機械的強度を向上することができ、それによって、ナットをねじ込んだときの最小のトルク要件を満たす。実際、射出成形部材4の材料は、射出成形封止部材の材料よりも引張強度が大きく、オーバーモールドボルトの製造に適した任意の射出成形材料であってよい。好ましくは、機械的強度を更に高めるために、射出成形部材4の材料(例えば、PP、PA)に、ガラス繊維が添加されてよい。
【0032】
図4は、図1による基礎のボルト構造を含むオーバーモールドボルトの概略斜視図であり、図5は、図4によるオーバーモールドボルトの概略断面図である。図に示されているように、オーバーモールドボルトの射出成形部材4は、ベース1の少なくとも一部を覆っている。好ましくは、位置決め孔11の位置を除いて、射出成形部材4は、ベース1を実質的に完全に覆う。また、射出成形部材4は、第2の射出成形中に、オーバーモールドボルトを乗り物ウィンドウガラスの表面に位置決めするための位置決め部42を含み、位置決め部42は、ベース1からねじロッド2とは逆方向に外向きに延在し、かつ射出成形部材の底面43から突出しており、それによって乗り物ウィンドウガラスの表面との点接触が形成される。図5に示されているように、底面43は、ガラスと接触している射出成形部材の表面を指す。
【0033】
より具体的には、図示の実施形態では、位置決め部42及びねじロッド2は、それぞれ板状のベース1の2つの反対側に配置されている。位置決め部42は、ベース1の中央に隣接する位置からベース1に垂直に外向きに延在し、乗り物ウィンドウガラスの表面との点接触を形成するように適合された先端を含む。
【0034】
図6は、本開示による乗り物ウィンドウガラスガラスアセンブリ(一般的に、クォーターウィンドウガラスアセンブリ)の実施形態の概略部分断面図である。図に示されているように、乗り物ウィンドウガラス6は一般的に不規則な弧形状を有するため、射出成形部材4と乗り物ウィンドウガラス6との間の距離は、一定ではない。したがって、第2の射出成形を実行して、乗り物ウィンドウガラス6の射出成形封止部材5を形成する場合、オーバーモールドボルトと乗り物ウィンドウガラス6は、位置決め部42と乗り物ウィンドウガラス6との間の点接触によって、互いに対して適切に位置決めすることができる。クォーターウィンドウガラスアセンブリの場合、オーバーモールドボルトは通常、クォーターウィンドウガラスのコーナーに位置決めされる。射出成形封止部材5は、オーバーモールドボルトの射出成形部材4の少なくとも一部を覆う。好ましくは、位置決め孔11の位置を除いて、射出成形封止部材5は、射出成形部材4を実質的に完全に覆う。
【0035】
射出成形封止部材5の材料は、乗り物製造業者の要求にしたがって、TPE等の軟質プラスチックであってよい。射出成形部材4の材料がPPであり、かつ射出成形封止部材5の材料がTPEである場合、PPとTPEは、互いに自己接着性があるため、第2の射出成形の前に、射出成形部材4に下塗りをする必要がなく、それによって、経済的コスト及び工数コストを節約できる。他の材料を選択する場合、選択された材料の自己接着性にしたがって、第2の射出成形の前に射出成形部材4に下塗り剤(プライマー)を塗布する必要があるかどうかを判断することができる。当然、射出成形部材4及び射出成形封止部材5の材料は、上記の例に限定されない。射出成形部材4の材料の引張強度が射出成形封止部材5の材料の引張強度よりも大きいことに基づいて、射出成形部材4及び射出成形封止部材5の材料は、外交及び機能の面で乗り物ウィンドウガラスアセンブリの製造に適している任意の硬質プラスチック及び軟質プラスチックであってよい。射出成形部材4の材料の引張強度は、好ましくは、射出成形封止部材5の材料の引張強度の2倍以上、より好ましくは、射出成形封止部材5の材料の引張強度の3倍以上である。例えば、射出成形封止部材5の材料に関しては、TPEの引張強度は、約0.1Mpa~15Mpaであり、例えば約5Mpaに等しい;一方、射出成形部材4の材料に関しては、PPの引張強度は、約20Mpa~30Mpaであり、ABSの引張強度は、約35Mpa~50Mpaであり、PAの引張強度は、約60Mpa~80Mpaである。
【0036】
好ましくは、射出成形封止部材5の材料を充填するために、射出成形部材4に少なくとも1つの貫通孔41が形成される。図示の実施形態では、2つの貫通孔41は、それぞれ位置決め部42に対して両側に射出成形部材4に形成されている。2つの貫通孔41は、板状のベース1に平行な方向に貫通しており、一定の厚さを有し、これによって第2の射出成形中に射出成形封止部材5の材料で充填され、これは、射出成形部材4と射出成形封止部材5との間の接触を更に改善し、そして、射出成形封止部材5の厚さが大きい場合には射出成型後の収縮現象を回避することができる。したがって、オーバーモールドボルトの位置決め精度は改善される。
【0037】
本開示による乗り物ウィンドウガラスアセンブリを製造するための方法は、以下に説明する。
【0038】
まず、ベース1とねじロッド2とを互いに固定的に接続し、シム3は任意選択的にねじロッド2にスリーブ状に付けられて基礎のボルト構造を形成し、そして、組み立てられた基礎のボルト構造を第1の射出成形金型に配置し、それによって、ベース1及びシム3が第1の射出成形管型の射出領域9中に一体的に収容され、そして、第1の射出成形金型に配置された位置決め部材を、ベース1の位置決め孔11に通過させることによって、ベース1は第1の射出成形金型に正確に位置決めされ、かつ第1の射出成形金型に対して回転できない。
【0039】
次に、オーバーモールドボルトを得るために、第1の射出成形材料(例えば、PP、PA、ABS、PC/ABS等の硬質プラスチック、及びガラス繊維が任意選択的にそれに添加される)を第1の射出成形金型に注入し、ベースの少なくとも一部を覆う(好ましくは、実質的に完全にベースを覆う)射出成形部材4を形成し、そして、得られたオーバーモールドボルトを、冷却後、第1の射出成形金型かられ離型させて、その後、選択した材料の自己接着性にしたがい、射出成形部材4に下塗り剤を塗布する必要があるかどうかを判断する。上記の工程は、複数のオーバーモールドボルトを得るために実際の要件にしたがって繰り返すことができる。
【0040】
次に、射出成形部材4の位置決め部42によって、オーバーモールドボルトと乗り物ウィンドウガラス6とを互いに点接触によって位置決めして、第2の射出成形金型に配置し、そして、第2の射出成形金型に配置された位置決め部材を、ベース1の位置決め孔11に通過させることによって、ベース1は第2の射出成形金型に正確に位置決めされ、かつ第2の射出成形金型に対して回転できない。
【0041】
最後に、第2の射出成形材料(例えば、TPE等の軟質プラスチック)を第2の射出成形金型に注入し、射出成形部材4の少なくとも一部を覆う(好ましくは、実質的に完全に射出成形部材4を覆う)射出成形封止部材5を形成し、そして任意選択的に射出成形部材4に設けられた貫通孔41を充填し、それによって、オーバーモールドボルトが乗り物ウィンドウガラスにしっかりと固定され、そして冷却及び離型後に、必要な乗り物ウィンドウガラスアセンブリが得られる。
【0042】
本開示の技術的内容及び技術的特徴は、上記に開示されている。しかしながら、本開示の創造的なアイデアの下で、当業者は上記に開示された概念に様々な変更及び改善を加えることができると考えられるが、これらの変更及び改善はすべて本開示の保護範囲に属する。上記の実施形態の説明は、限定的ではなく例示的なものであり、本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
本開示は、下記の態様を含む:
<態様1>
乗り物ウィンドウガラスアセンブリであって、以下を含み:
乗り物ウィンドウガラス及びその射出成形封止部材;並びに
ベース、ねじロッド及び射出成形部材を含むオーバーモールドボルトであって、ここで、前記ねじロッドの一端が、前記ベースに固定的に接続されており、かつ前記射出成形部材が、前記ベースの少なくとも一部を覆っている、オーバーモールドボルト、
前記射出成形封止部材が、前記射出成形部材の少なくとも一部を覆い、それによって前記オーバーモールドボルトと前記乗り物ウィンドウガラスとが互いに固定されており、かつ前記射出成形部材の材料の引張強度が、前記射出成形封止部材の材料の引張強度よりも大きい、
乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様2>
前記射出成形部材が、前記オーバーモールドボルトを前記乗り物ウィンドウガラスの表面に位置決めするための位置決め部を含み、前記位置決め部が、前記ベースから前記ねじロッドとは逆方向に外向きに延在し、かつ前記射出成形部材の底面から突出している、態様1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様3>
前記オーバーモールドボルトが、前記ねじロッドにスリーブ状に取り付けられておりかつ前記ベースに当接しているシムを更に含む、態様1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様4>
前記シムの材料が、ゴム又はプラスチックである、態様3に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様5>
前記射出成形部材の前記材料が、PP、PA、ABS、又はPC/ABSである、態様1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様6>
前記射出成形部材の前記材料に、ガラス繊維が添加されている、態様5に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様7>
前記射出成形封止部材の前記材料を充填するために、前記射出成形部材に少なくとも1つの貫通孔が形成されている、態様1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様8>
前記射出成形封止部材の前記材料が、TPEである、態様1に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリ。
<態様9>
態様1~8のいずれか一項に記載の乗り物ウィンドウガラスアセンブリを製造するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
A)前記ベースと前記ねじロッドとを互いに固定的に接続し、それらを第1の射出成形金型に配置すること;
B)第1の射出成形材料を前記第1の射出成形金型に注入して、前記ベースの少なくとも一部を覆う前記射出成形部材を形成して、前記オーバーモールドボルトを得、そして前記得られたオーバーモールドボルトを前記第1の射出成形金型から離型させること;
C)前記得られたオーバーモールドボルトと前記乗り物ウィンドウガラスとを互いに点接触によって位置決めし、そしてそれらを第2の射出成形金型に配置すること;
D)第2の射出成形材料を前記第2の射出形成金型に注入して、前記射出成形部材の少なくとも一部を覆う前記射出成形封止部材を形成して、前記乗り物ウィンドウガラスアセンブリを得ること。
<態様10>
工程C)の前に、前記得られたオーバーモールドボルトの前記射出成形部材の表面に下塗りをする工程を更に含む、態様9に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6