(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240508BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240508BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240508BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240508BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20240508BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L9/00
C08L9/06
C08K3/36
C08C19/25
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021565662
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047292
(87)【国際公開番号】W WO2021125299
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019229682
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】土田 和孝
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117266(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/221184(WO,A1)
【文献】特表2017-513786(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140217(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/00
C08K 3/36
C08C 19/25
B60C 1/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、シリカとを含むゴム組成物であって、
該シリカは、CTAB吸着比表面積が250m
2/g以上であり、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(D
CPS)と一次粒径(D
I)とが、以下の関係式(1)を満たし、
700≧D
CPS
3/D
I
3≧300 ・・・(1)
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40~120質量部であり、
前記ゴム成分が、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種を含有し、該変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、及び、式(VI)で表されるカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることを特徴とする、ゴム組成物。
【化1】
[式中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。]
【請求項2】
前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、及び、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらに熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤは、複数の性能を同時に満たし得る高い性能を有することが要求される。なかでも、トレッドのようなタイヤ用部材には、タイヤの転がり抵抗を抑えつつ、耐摩耗性等に優れることが強く望まれる。ただし、これらの性質は二律背反の関係にあることから、現在まで多くの試行錯誤が行われている。
【0003】
タイヤのトレッドに適用するゴム組成物においては、補強用充填剤の一つとしてシリカが用いられることが多いが、一般にシリカの含有量を増加させると、タイヤの補強性が高まるため、耐摩耗性をある程度向上できるものの、低ロス性は悪化する傾向にある。また、シリカの含有量が多すぎる場合には、未加硫ゴムの粘度が必要以上に上昇して加工性が悪化するおそれもあった。
【0004】
そのため、ゴム組成物の補強性及び低ロス性の両立を図ることを目的として、例えば特許文献1には、特定値以上のCTAB比表面積及びBET比表面積を有するシリカと、メルカプト基を有するシランカップリング剤とを併用することで、シリカの分散性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、シランカップリング剤の効果によって、一定の低ロス性は得られるものの、シリカの粒径が大きく、補強性についてはさらなる改善が求められていた。
【0007】
そのため、本発明は、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立したゴム組成物、さらに、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を行った結果、シリカの粒径(一次粒径)を従来のものよりも小さくすることで、分散性を高めてゴム組成物の補強性を向上させるとともに、シリカの凝集体(アグリゲート)を大きくすることによって、補強性を低下させることなく、優れた低ロス性が得られることを見出した。さらに、ゴム成分中に、特定の変性ゴムを含有させることで、シリカの分散性をより高めることができるため、補強性及び低ロス性をさらに向上できることも見出した。
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、シリカとを含むゴム組成物であって、該シリカは、CTAB吸着比表面積が250m
2/g以上であり、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(D
CPS)と一次粒径(D
I)とが、以下の関係式(1)を満たし、
700≧D
CPS
3/D
I
3≧300 ・・・(1)
前記ゴム成分が、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種を含有し、該変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、及び、式(VI)で表されるカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることを特徴とする。
【化1】
[式中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。]
上記構成によって、補強性及び低ロス性を高いレベルで両立できる。
【0010】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種が、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、及び、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されていることがより好ましい。補強性及び低ロス性のさらなる改善が可能となるためである。
【0011】
また、本発明のゴム組成物については、さらに熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。低ロス性のさらなる改善が可能となるためである。
【0012】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40~120質量部であることが好ましい。補強性及び低ロス性のさらなる改善が可能となるためである。
【0013】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成によって、補強性及び低ロス性を高いレベルで両立することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立したゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立されたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、シリカとを含むゴム組成物である。
以下に、本発明のゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0016】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含む。
該ゴム成分の構成については、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種を含有することを要する。
また、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴム以外のゴム成分については、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、優れた補強性及び低ロス性を得ることができる観点からは、ジエン系ゴムを含有することが好ましい。
また、前記ゴム成分は、前記ジエン系ゴム100%から構成することもできるが、本発明の目的を損なわない範囲であれば、ジエン系以外のゴムを含有することもできる。なお、優れた補強性及び低ロス性を得ることができる観点から、前記ゴム成分におけるジエン系ゴムの含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
ここで、前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
また、非ジエン系ゴムについては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。
なお、これらのゴムについては、1種単独で用いてもよいし、2種以上のブレンドとして用いてもよい。また、これらのゴムについては、未変性のゴムでも、変性されたゴムでもよい。
【0018】
さらに、前記ジエン系ゴムの中でも、前記ゴム成分はポリイソプレンゴムを20質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましい。ゴム組成物の補強性をより向上できるためである。
なお、低ロス性を高いレベルで維持する観点からは、前記ゴム成分中の前記ポリイソプレンゴムの含有量が、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
上述したように、本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分として、変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも一種(以下、「変性ゴム」ということがある。)を含有する。これらの変性ゴムを含有することによって、前記シリカとの相互作用を高めて該シリカの分散性を向上させることができる結果、ゴム組成物の補強性及び低ロス性の改善を図ることが可能となる。
【0020】
ここで、前記変性ゴムの変性官能基の位置については、特に限定はされず、例えば、主鎖の末端でも良いし、主鎖中や、主鎖の末端から全鎖長の1/4の範囲のみであってもよい。また、前記変性官能基の数についても特に限定はされず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
そして、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも一種を変性するための変性剤については、式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物、及び、式(VI)で表されるカップリング剤、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されている。
【0022】
【化4】
式中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である。)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0023】
【化5】
式中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である。)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0024】
【化6】
式中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
20は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基を示し、R
19及びR
22は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基を示し、R
21は、炭素数1~20の、アルキル基又はトリアルキルシリル基を示し、mは、1~3の整数を示し、pは、1又は2を示し、R
12~R
22、m及びpは、複数存在する場合、それぞれ独立しており、i、j及びkは、それぞれ独立して0~6の整数を示し、但し、(i+j+k)は、3~10の整数であり、Aは、炭素数1~20の、炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有しない有機基を示す。
【0025】
ここで、前記式(VI)で表されるカップリング剤は、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、及びテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。この場合、補強性をより向上させることができる。
【0026】
また、上述した変性剤の中でも、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種は、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミン、及び、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、からなる群より選択される少なくとも一種によって変性されることが好ましい。より優れた補強性及び低ロス性を実現できるからである。
【0027】
前記ゴム成分における、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種の合計含有量については、より高いレベルで補強性及び低ロス性を両立できる観点から、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、ゴム組成物の加工性の観点からは、前記変性ブタジエンゴム及び変性スチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも一種の合計含有量が、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
(シリカ)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、シリカを含む。
そして、前記シリカは、シリカは、CTAB吸着比表面積(CTAB)が250m2/g以上であり、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(DCPS)と一次粒径(DI)とが、以下の関係式(1):
700≧DCPS
3/DI
3≧300 ・・・(1)
を満たすことを特徴とする。
なお、前記凝集体の径(DCPS)の測定に用いるディスク遠心式粒度分析装置については、特に限定はされず、DCPSは市販の装置を用いて測定することができる。例えば、CPS Instruments社のディスク遠心式粒子径分布測定装置CPS Disc Centrifugeを用いることが挙げられる。測定条件としては、水に3wt%の割合でシリカを添加し、超音波処理をすることでシリカ懸濁液を得る。その試料に対して、ディスク遠心式 粒子径分布測定装置を用い、20000rpmの回転速度で粒子径分布を測定できる。また測定はばらつきが生じる可能性が有るため、シリカを比較する際には適宜補正を行ってもよい。
また、前記一次粒径については、以下の式(2):
DI=6000/(CTAB×ρ) ・・・(2)
ρ:2.2g/cm3
によって算出することができる。
【0029】
従来、低発熱性、耐摩耗性、及び耐疲労亀裂性を向上させるために、カーボンブラックのアグリゲート構造の発達度合を小さくする低ストラクチャー化を図ったり、カーボンブラックを微粒径化することにより耐摩耗性と疲労亀裂性を向上させ、凝集体分布をブロードにすることで発熱の悪化を抑えてきたが、カーボンブラックの形態をこのように制御した場合でも、耐摩耗性と耐疲労亀裂性等が悪化し易かった。これは、カーボンブラックの凝集体分布をブロードにすることで、大粒径成分が増えるためと考えられる。
これに対し、低発熱性を損なわずに、補強性に優れる加硫ゴムが得られる。この理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
加硫ゴムの発熱は、一般に、加硫ゴムに含まれるカーボンブラック、シリカ等の充填剤が、ゴム中で擦れ合うことにより生じ、従って、既述のように、カーボンブラックの大粒径成分が増える環境では、低発熱性が悪化する傾向にある。そのため、一次粒径が式(2)を満たす微粒径のシリカを用いることで、微粒径なシリカが、カーボンブラック同士の隙間に入り、粒子同士の凝集には影響を与えず、低発熱性の状態を維持しながら、加硫ゴムの摩耗、亀裂のような破壊の領域においては、ゴムと、カーボンブラック及びシリカとが、強く相互作用するため、補強性を向上できると考えられる。
【0030】
ただし、前記シリカの粒径が小さすぎる場合には、低発熱性の低下を招くことが考えられる。そのため、本発明では、前記シリカが、上記関係式(1)の条件を満たすことによって、シリカの粒径(一次粒径)を従来のものよりも小さくして補強性を高めつつ、シリカの凝集体(アグリゲート)を大きくすることで、低ロス性の悪化を効果的に抑制できるため、ゴム組成物の補強性と低ロス性とを高いレベルで両立できる。
なお、前記DCPS
3/DI
3が300未満の場合には、シリカの粒径の小ささとシリカの凝集体の大きさが十分でないため、高いレベルで補強性及び低ロス性を両立できず、一方、前記DCPS
3/DI
3が700を超える場合には、シリカの粒径が小さくなりすぎるため、低ロス性が低下する。
【0031】
タイヤの補強性を高めるためには、ゴム組成物中に含有されるシリカ粒子(一次粒径)を小さくすることが有効である一方で、シリカの粒径が小さくなると、シリカのアグリゲート(凝集体)間距離が小さくなるため、ネットワーク効果が大きくなり、低ロス性を悪化させることとなる。そこで、本発明では、シリカの一次粒径(DI)を従来のものよりも小さくすることで、ゴム組成物の補強性は向上させるとともに、シリカの一次粒子から形成される凝集体の径(DCPS)を大きくすることによって、アグリゲート間距離が小さくなることに起因した低ロス性の悪化を抑制できる結果、補強性を低下させることなく、優れた低ロス性を実現できる。
【0032】
ここで、前記シリカの種類については、特に限定はされない。例えば、湿式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
上述した中でも、前記シリカは、湿式シリカであることが好ましく、該湿式シリカのなかでも沈降シリカであることがより好ましい。これらのシリカは、分散性が高く、ゴム組成物の低ロス性及び補強性をより向上できるためである。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0033】
前記シリカのCTAB吸着比表面積(セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積)については、高い補強性を実現する観点から、250m2/g以上とする必要があり、同様の観点から、251m2/g以上であることが好ましく、252m2/g以上であることがより好ましく、253 m2/g以上であることがさらに好ましい。なお、低ロス性の悪化をより確実に抑える点からは、前記シリカのCTAB吸着比表面積は、290以下であることが好ましく、285以下であることがより好ましく、282以下であることがさらに好ましく、270以下であることが特に好ましい。
なお、前記CTAB吸着比表面積については、ASTM D3765-92に準拠して測定された値を意味する。ただし、シリカ表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミド1分子当たりの吸着断面積を0.35nm2として、CTABの吸着量から算出される比表面積(m2/g)をCTAB吸着比表面積とする。
【0034】
前記シリカの含有量については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。ただし、より高いレベルで補強性及び低ロス性を実現できる観点からは、前記ゴム成分100質量部に対して40~120質量部であることが好ましく、40~100質量部であることがより好ましく、43~83質量部であることがさらに好ましい。
【0035】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及びシリカの他にも、その他の成分を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。
その他の成分としては、例えば、前記シリカ以外の充填材、熱可塑性樹脂、老化防止剤、架橋促進剤、架橋剤、架橋促進助剤、オゾン劣化防止剤、界面活性剤等の、ゴム工業で通常使用されている添加剤を適宜含むことができる。
【0036】
前記充填材としては、例えば、カーボンブラックや、その他の無機充填材等が挙げられる。その中でも、前記充填材として、カーボンブラックを含むことが好ましい。より優れた補強性が得られるためである。
【0037】
ここで、前記カーボンブラックについては、特に限定はされない。例えば、オイルファーネス法により製造された任意のハードカーボン及びソフトカーボンを用いることができる。これらの中でも、より優れた低ロス性及び補強性を実現する観点からは、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレードのカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0038】
また、前記カーボンブラックの含有量については、前記ゴム成分100質量部に対して、1~40質量部であることが好ましく、1~35質量部であることがより好ましく、1~30質量部であることが特に好ましい。例えば、前記充填剤におけるシリカの比率が70質量%以上(つまり、カーボンブラックが30質量%以下)であれば、ウェット性能を良好に維持できるためである。
なお、補強性と耐摩耗性の観点からは、前記シリカの含有率は、50質量%以下とすることもできる。前記シリカの比率を50質量%以下(つまり、カーボンブラックの比率が50質量%以上)とすることで、補強性と耐摩耗性のバランスが取れ、前記カーボンブラックの比率を80質量%とすることで、さらに補強性に効果を得ることができる(ここでは、充填剤の量を、シリカ+カーボンブラックの総量としている)。
【0039】
なお、前記その他の無機充填材としては、例えば下記式(I)で表される無機化合物が挙げられる
nM・xSiOY・zH2O ・・・ (I)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、並びに、これらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。]
【0040】
上記式(I)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
【0041】
また、本発明のゴム組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含み、該熱可塑性樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部であることが好ましく、5~30質量部がより好ましく、6~20質量部がより好ましく、7~19質量部がより好ましく、11~18質量部であることがさらに好ましい。上記範囲で熱可塑性樹脂を含むことによって、低ロス性をより向上でき、ゴム組成物をタイヤに用いた場合の制動性能についても向上させることができる。
【0042】
なお、前記熱可塑性樹脂の種類については、特に限定はされない。例えば、C5系樹脂、C9系樹脂、C5~C9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、又は、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。
【0043】
ここで、前記C5系樹脂とは、C5系合成石油樹脂を指し、C5留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3-ペンタジエン及び1-ペンテンなどを主成分とする共重合体、2-ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3-ペンタジエンを主体とする重合体などが例示される。
また、前記C9系樹脂とは、C9系合成石油樹脂を指し、C9留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、インデン、メチルインデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体等が例示される。
さらに、前記C5~C9系樹脂とは、C5~C9系合成石油樹脂を指し、C5~C9留分を、AlCl3やBF3などのフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデンなどを主成分とする共重合体などが挙げられる。本発明においては、このC5~C9系樹脂として、C9以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C9以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることをいうものとする。
【0044】
前記ジシクロペンタジエン系樹脂とは、前記C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として用いた石油樹脂のことである。例えば、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M-890A、M-845A、M-990A等)が挙げられる。
また、前記ロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどがあり、変性ロジン、ロジン誘導体、変性ロジン誘導体として、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや重合ロジンなどがある。
【0045】
前記アルキルフェノール系樹脂とは、アルキル基を有するフェノール系樹脂のことである。例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
さらに、前記テルペンフェノール系樹脂とは、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、あるいはさらにホルマリンで縮合する方法で得ることができる樹脂である。原料のテルペン類としては特に制限はないが、α-ピネンやリモネンなどのモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。本発明においては、フェノール成分の比率の多いテルペンフェノール系樹脂が好適である。これらの樹脂は、1種又は2種以上を併用することができる。
さらにまた、前記ゴム組成物は、フェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を含むことが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を含有させることにより、硬化剤を用いることなく、しかもウェット性能を低下させずに、ゴム組成物における弾性率を増大させ、操縦安定性を向上させることができる。
【0046】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0047】
前記架橋促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0048】
前記架橋剤についても、特に制限はされない。例えば、硫黄、ビスマレイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
前記ビスマレイミド化合物の種類については、例えば、N,N’-o-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンなどを例示することができる。本発明では、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド及びN,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等を好適に用いることができる。
【0049】
前記架橋促進助剤については、例えば、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸としては、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数も特に制限されないが、例えば炭素数1~30、好ましくは15~30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸;ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸;メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華又はステアリン酸を好適に用いることができる。
【0050】
なお、本発明のゴム組成物を製造する方法については、特に限定はされず、ゴム組成物を構成する各成分(ゴム成分、シリカ及びその他の成分)を、配合し、混練することによって得ることができる。
【0051】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として用いることによって、得られタイヤは、優れた補強性及び低ロス性を有することができる。
本発明のタイヤでは、具体的には、上述したゴム組成物を、いずれかの部材に適用するが、かかるタイヤ用部材の中でも、トレッドに適用することが特に好ましい。前記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、補強性(ひいては耐摩耗性、宗純安定性等)及び低ロス性をいずれも高いレベルで実現できる。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の若しくは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
(変性SBR1の作製)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン70.2g及びスチレン39.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBR1を得た。得られた変性SBR1のミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が35質量%であった。
【0054】
(変性SBR2の作製)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5gおよびスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを、0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBR2を得た。得られた変性SBR2のミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が10質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が40%、ピーク分子量が200,000であった。
【0055】
(変性SBR3の作製)
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とした。予め水分除去した、1,3-ブタジエンを17.2g/分、スチレンを10.5g/分、n-ヘキサンを145.3g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応器の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.117mmol/分で添加、混合した後、反応器の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.019g/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.242mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続させた。反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、カップリング剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定した。
次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、カップリング剤として2.74mmol/Lに希釈したテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.0302mmol/分(水分5.2ppm含有n-ヘキサン溶液)の速度で連続的に添加し、カップリング剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合されカップリング反応した。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液にカップリング剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は68℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は7℃であった。カップリング反応した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n-ヘキサン溶液)で連続的に添加し、カップリング反応を終了した。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が10.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性SBR3を得た。
なお、変性SBR3は、カップリング剤の官能基数と添加量から想定される分岐数に相当する「分岐度」は8であり(収縮因子の値からも確認できる)、カップリング剤1分子が有するSiORの総数から反応により減じたSiOR数を引いた値に相当する「SiOR残基数」は4である。
また、得られた変性SBR3のミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が40質量%であり、ビニル結合量(1,2-結合量)が41mol%であり、ゴム成分100質量部に対してオイル分10.0質量部を含む、重量平均分子量(Mw)=85.2×104、分子量200×104以上500×104以下の割合=4.6%
収縮因子(g’)=0.59
【0056】
<実施例1~3、比較例1~3>
表1に示す配合に従って、常法で配合・混練することで、実施例及び比較例のゴム組成物のサンプルを作製した。なお、表1に示す数値は、各成分の質量の割合である。
【0057】
<評価>
実施例及び比較例のゴム組成物の各サンプルについて、以下の評価を行った。
【0058】
(1)補強性(動的貯蔵弾性率)
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムから、厚さ2mm、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、スぺクトロメーター(株式会社上島製作所製)を用い、温度24℃、歪5%、周波数52Hzの条件で、動的貯蔵弾性率(E’)を測定した。
得られた動的貯蔵弾性率(E’)については、実施例1の値を100としたときの指数で示し、指数値が大きい程、動的貯蔵弾性率が大きく、補強性に優れることを示す。評価結果を表1に示す。
【0059】
(2)低ロス性
各サンプルのゴム組成物を、160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、スぺクトロメーター(株式会社上島製作所製)を用い、温度24℃、周波数52Hzの条件で、損失正接(tanδ)を測定した後、歪3%と歪0.1%のtanδの差の逆数をとった。
評価については、実施例1のサンプルのtanδの差の逆数を100としたときの指数で示し、指数値が小さい程、低ロス性に優れる。評価結果を表1に示す。
【0060】
(3)評価の合計
上述した補強性及び低ロス性の評価値(指数値)を合計し、評価の合計を算出した。
なお、評価の合計については、数値が180以上の場合、補強性と低ロス性が高いレベルで両立できていることを意味する。
【0061】
【0062】
*1 JSR株式会社製「乳化重合SBR」、スチレン量:40質量%、スチレンブタジエンゴム100質量部に対して37.5部の油展である。
*2 東海カーボン株式会社製 「シースト7HM」
*3 Solvay社製 「Premium SW MP」、CTAB吸着比表面積:250m2/g、一次粒径(DI):10.91nm、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(DCPS):82nm、6000/CTAB/ρ=10.91、DCPS
3/DI
3:424.7
*4 東ソー・シリカ株式会社製 「ニプシルAQ」、CTAB吸着比表面積: 155m2/g、一次粒径(DI):17.6nm、ディスク遠心粒度分析によって測定された凝集体の径(DCPS):76nm、6000/CTAB/ρ=17.60、DCPS
3/DI
3:80.4
** なお、シリカの凝集体の径(DCPS)と一次粒径(DI)については、水に3wt%の割合でシリカを添加し、超音波処理をすることでシリカ懸濁液を得た後、その試料に対して、CPS Instruments社のディスク遠心式粒子径分布測定装置CPS Disc Centrifugeを用い、20000rpmの回転速度で粒子径分布を測定する。
*5 信越化学株式会社製 「ABC-856」
*6 N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)―p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製 「ノラック6C」
*7 東燃化学合同会社製「T-REZ RD104」
*8 プロセスオイル
*9 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラー(登録商標)CZ-G」
*10 1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラー(登録商標)D」
*11 ジベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製 「ノクセラー(登録商標)DM-P」
【0063】
表1の結果から、実施例の各サンプルは、比較例の各サンプルに比べて、低ロス性及び動的貯蔵弾性率のいずれについても優れた値を示し、合計値も高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立したゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、補強性及び低ロス性が高いレベルで両立されたタイヤを提供することができる。