(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】自己車両の横方向の位置を計算するための計算方法、コンピュータプログラム製品、コンピュータ可読データ記録メディア、ステアリングシステム、及び自律車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240508BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240508BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021571724
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020061130
(87)【国際公開番号】W WO2020244841
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャーメイン, ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ボット, ルードビック
(72)【発明者】
【氏名】キヤール, ラファエル
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-59451(JP,A)
【文献】特開2017-52411(JP,A)
【文献】特開2013-8302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レーン(L2)上で
の自己車両(1)の横方向の位置を計算する方法であって、
コンピュータ(5)が、前記走行レーン(L2)上での前記自己車両(1)の理論上の第1の横方向の位置を、前記自己車両に先行する車両(V7、V8)の、および/もしくは前記自己車両に後続する車両(V5、V6)の前記走行レーン(L2)上での横方向の位置の関数として計算する第1の計算ステップ(E1)、ならびに/または
前記コンピュータ(5)が、前記走行レーン(L2)上での前記自己車両(1)の理論上の第2の横方向の位置を、前記走行レーンに隣接する走行レーン(L1、L3)上での車両(V1、V2、V3、V4、V9、V10、V11、V12)
の位置の関数として計算する第2の計算ステップ(E2)と、
前記コンピュータ(5)が、前記走行レーン(L2)上での前記自己車両(1)の理論上の第3の横方向の位置を、前記走行レーン(L2)の脇で検知された静的な障害物の関数として計算する第3の計算ステップ(E3)と、
前記コンピュータ(5)が、前記第1の横方向の位置、前記第2の横方向の位置、および前記第3の横方向の位置の加重平均を使用して前記自己車両(1)の前記横方向の位置を計算する第4の計算ステップ(E4)と
を含む、
計算方法。
【請求項2】
前記第1の計算ステップ(E1)が、前記走行レーン上での先行する車両(V7、V8)および/または後続する車両(V5、V6)の前記横方向の位置の加重平均を計算するサブステップを含み、それぞれの横方向の位置の加重係数が、前記自己車両(1)と、該当する前記先行
する車両(V7、V8)および/または前記後続
する車両(V5、V6)との間における縦方向の距離の、ならびに該当する前記先行
する車両および/または前記後続
する車両のスピードの関数であることを特徴とする、請求項1に記載の計算方法。
【請求項3】
前記第2の計算ステップ(E2)が、
境界線(D2)のどちら側にもある理論上の安全通路(CS)を計算するサブステップ(E21)であって、前記境界線(D2)が、前記自己車両の前記走行レーン(L2)と、前記自己車両の前記走行レーンに隣接する走行レーン(L1)との間に延びる、サブステップ(E21)と、
前記安全通路における車両の存在を検知するサブステップ(E22)と、
前記理論上の
第2の横方向の位置(T2)を、前記自己車両(1)と、前記安全通路(CS)で検知された前記車両(V12)との間における距離の関数として、および前記安全通路(CS)で検知された前記車両(V12)のスピードの関数として計算するサブステップ(E23)と
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の計算方法。
【請求項4】
前記計算方法の実行のための第1の条件を含み、実行のための前記第1の条件が、
前記自己車両(1)の前記走行レーン(L2)の境界線(D2、D3)が前記自己車両によって検知された場合、および
前記自己車両の前記走行レーン(L2)の曲率が、事前に定義されたしきい値以下である場合
に満たされることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項5】
前記第1の計算ステップの実行のための第2の条件を含み、実行のための前記第2の条件が、
前記自己車両に先行する少なくとも1つの第1の車両(V7、V8)が検知された場合、
前記自己車両に先行または後続する少なくとも1つの第2の車両(V5、V6、V7、V8)が検知された場合、および
前記自己車両上の方向指示器が作動していない場合
に満たされることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項6】
前記第4の計算ステップ(E4)が、
前記自己車両の交通状況を検知するサブステップ(E41)と、
前記理論上の
第1の横方向の位置の加重係数、
前記理論上の
第2の横方向の位置の加重係数、および
前記理論上の
第3の横方向の位置の加重係数を、前記自己車両
の検知された交通状況の関数として計算するサブステップ(E42)と
を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項7】
前記第4の計算ステップ(E4)が、
前記自己車両の前
記横方向の位置と、前記自己車両の前記走行レーン(L2)の理論上の中央線(M2)との間における差を制限するサブステップ(E43)、および/または
前記自己車両の前記理論上の横方向の位置の時間的変動を制限するサブステップ(E44)
を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項8】
前記コンピュータ(5)が、前記第4の計算ステップ(E4)で計算された前
記横方向の位置を前記自己車両に採用させるため
に前記自己車両のステアリングデバイス(3)
を自律制御
する第5のステップ(E5)と、
前記コンピュータ(5)が、前記自己車両の前記走行レーン(L2)の理論上の中央線(M2)に対する前記自己車両の位置を示す視覚的な表示を前記自己車両のスクリーン(6)上に表示する第6のステップ(E6)と
を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の計算方法。
【請求項9】
コンピュータ可読メディア上に記録されている、プログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令が
、プログラムがコンピュータ上で稼働したときに請求項1から8のいずれか一項に記載の方法の前記ステップを実施するためのものである、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記録されている、コンピュータ可読データ記録メディア。
【請求項11】
コンピュータ(5)と、前記コンピュータによって制御されるステアリングデバイス(3)と、環境を検知するための
検知手段(4)とを備え、前記検知手段(4)が前記コンピュータにリンクされており、前記コンピュータが、請求項1から8のいずれか一項に記載の計算方法を実施することが可能であることを特徴とする、ステアリングシステム。
【請求項12】
コンピュータ(5)と、前記コンピュータによって制御されるステアリングデバイス(3)と、環境を検知するための
検知手段(4)とを備え、前記検知手段(4)が前記コンピュータにリンクされており、前記コンピュータが、請求項1から8のいずれか一項に記載の計算方法を実施することが可能であることを特徴とする
、自律車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両、特に自律車両の横方向の位置を計算するための方法に関する。本発明はまた、横方向の位置を計算するためのそのような方法を実施するための手段を備える、自動車両、特に自律車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自律車両は、車両の環境を検知するための手段と、サーボステアリングデバイスとを備えている。特に、検知手段は、車両が位置している走行レーンを識別することが可能である。検知手段およびステアリング手段の両方にリンクされているコンピュータが、車両が走行レーンの中心に留まるようにステアリングデバイスを制御することができる。これに関連して、「レーンセンタリングアシスト」またはLCAとも呼ばれる既知のレーンセンタリング支援システムがある。そのようなシステムは、特に、UNECE Regulation R79に記述されている仕様の対象である。
【0003】
しかしながら、既知のレーンセンタリング支援システムは、自律車両を不自然な方法で位置付ける。車両のその走行レーン上での横方向の位置は、運転者が自分自身でステアリングデバイスを制御できる場合に運転者によって採用されるであろうものと一致しない。それゆえに自律車両は、交通の流れに溶け込まず、他の車両または物体との衝突のリスクが増大され得る。とりわけ、既知のレーンセンタリング支援システムは、他の車両または障害物からの横方向の安全距離が最適化されることを可能にしない。さらに、渋滞の状況では、既知のシステムは、車の列を追い越すオートバイまたは緊急車両のために十分なスペースを残すために車両が横方向にシフトされることを可能にしない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の狙いは、前述の欠点を克服して従来技術の既知の方法を改善する、自動車両の横方向の位置を計算するための方法を提供することである。
【0005】
より正確には、本発明の第1の目的は、安全でリスクのない、車両の横方向の位置を計算するための方法である。
【0006】
本発明の第2の目的は、解決策であり、他の道路利用者の走行を容易にすることができる、車両の横方向の位置を計算するための方法である。
【0007】
本発明は、走行レーン上での自己自動車両の横方向の位置を計算する方法に関し、この方法は、
- 前記走行レーン上での自己車両の第1の理論上の横方向の位置を、自己車両に先行する車両の、および/もしくは自己車両に後続する車両の前記走行レーン上での横方向の位置の関数として計算する第1のステップ、ならびに/または
- 前記走行レーン上での自己車両の第2の理論上の横方向の位置を、前記走行レーンに隣接する走行レーン上での車両の位置の関数として計算する第2のステップと、
- 前記走行レーン上での自己車両の第3の理論上の横方向の位置を、前記走行レーンの脇で検知された静的な障害物の関数として計算する第3のステップと、
- 第1の横方向の位置、第2の横方向の位置、および第3の横方向の位置の加重平均を使用して自己車両の横方向の位置を計算する第4のステップとを含む。
【0008】
第1の計算ステップは、前記走行レーン上での先行および/または後続する車両の横方向の位置の加重平均を計算するサブステップを含むことが可能であり、それぞれの横方向の位置の加重係数は、自己車両と、該当する先行車両および/または後続車両との間における縦方向の距離の、ならびに該当する先行車両および/または後続車両のスピードの関数である。
【0009】
第2の計算ステップは、
- 境界線のどちら側にもある理論上の安全通路を計算するサブステップであって、境界線が、自己車両の走行レーンと、自己車両の走行レーンに隣接する走行レーンとの間に延びる、サブステップと、
- 安全通路における車両の存在を検知するサブステップと、
- 第2の理論上の横方向の位置を、自己車両と、前記安全通路で検知された車両との間における距離の関数として、および前記安全通路で検知された車両のスピードの関数として計算するサブステップとを含み得る。
【0010】
この計算方法は、この計算方法の実行のための第1の条件を含むことが可能であり、実行のための第1の条件は、
- 自己車両の走行レーンの境界線が自己車両によって検知された場合、および
- 自己車両の走行レーンの曲率が、事前に定義されたしきい値以下である場合に満たされる。
【0011】
この計算方法は、第1の計算ステップの実行のための第2の条件を含むことが可能であり、実行のための第2の条件は、
- 自己車両に先行する少なくとも1つの第1の車両が検知された場合、
- 自己車両に先行または後続する少なくとも1つの第2の車両が検知された場合、および
- 自己車両上の方向指示器が作動していない場合に満たされる。
【0012】
第4の計算ステップは、
- 自己車両の交通状況を検知するサブステップと、
- 第1の理論上の横方向の位置の加重係数、第2の理論上の横方向の位置の加重係数、および第3の理論上の横方向の位置の加重係数を、検知された自己車両の交通状況の関数として計算するサブステップとを含み得る。
【0013】
第4の計算ステップは、
- 自己車両の理論上の横方向の位置と、自己車両の走行レーンの理論上の中央線との間における差を制限するサブステップ、および/または
- 自己車両の理論上の横方向の位置の時間的変動を制限するサブステップを含み得る。
【0014】
この計算方法は、
- 第4のステップで計算された理論上の横方向の位置を自己車両に採用させるための自己車両のステアリングデバイスの自律制御の第5のステップと、
- 自己車両の走行レーンの理論上の中央線に対する自己車両の位置を示す視覚的な表示を自己車両のスクリーン上に表示する第6のステップとを含み得る。
【0015】
本発明はまた、コンピュータ可読メディア上に記録されている、プログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関し、それらのプログラムコード命令は、前記プログラムがコンピュータ上で稼働したときに、上で定義されている方法のステップを実施するためのものである。本発明はまた、通信ネットワークからダウンロードされること、ならびに/またはコンピュータ可読および/もしくはコンピュータ実行可能データメディア上に記録されることが可能であるコンピュータプログラム製品に関し、このコンピュータプログラム製品は、命令を含み、それらの命令は、プログラムがコンピュータ上で実行されたときに、上で定義されている方法をコンピュータに実施させる。
【0016】
本発明はまた、上で定義されている方法を実施するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記録されているコンピュータ可読データ記録メディアに関し、または命令を含むコンピュータ可読記録メディアであって、それらの命令が、コンピュータによって実行されたときに、上で定義されている方法をコンピュータに実施させる、コンピュータ可読記録メディアに関する。
【0017】
本発明はまた、上で定義されているコンピュータプログラム製品を搬送するデータメディアの信号に関する。
【0018】
本発明はまた、コンピュータと、コンピュータによって制御されるステアリングデバイスと、環境を検知するための手段とを備えるステアリングシステムに関し、検知手段は、コンピュータにリンクされており、コンピュータは、上で定義されている計算方法を実施することが可能である。
【0019】
本発明はまた、コンピュータと、コンピュータによって制御されるステアリングデバイスと、車両の環境を検知するための手段とを備える自動車両、特に自律車両に関し、検知手段は、コンピュータにリンクされており、コンピュータは、上で定義されている計算方法を実施することが可能である。
【0020】
本発明のこれらの目的、特徴、および利点は、添付の図を参照しながら、非限定的に提供される、特定の実施形態についての以降の説明において詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による自動車両の概略図である。
【
図2】本発明による車両、および周囲の車両が走行している3つの走行レーンを有する道路の概略上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、車両の横方向の位置を計算するための方法の総観図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による自動車両1を概略的に示している。車両1は、任意の種類のものであり得る。特に、車両1は、たとえば、自家用車、ユーティリティービークル、トラック、またはバスであり得る。車両1は、2つの前輪2fと、2つの後輪2rと、2つの前輪2fに接続されているステアリングデバイス3とを備える。2つの前輪2fは、操舵輪である。それらの向きは、ステアリングシステムによって制御され得る。ステアリングシステムは、特に、車両の環境を検知するためのステアリングデバイス3の手段を備える。これらの検知手段は、ADASセンサ4によって形成される。これらのセンサは、たとえば、超音波センサ、カメラ、またはレーダであり得る。それらは、車両1の周囲全体に位置している物体または他の車両を検知することが可能である。ここで提示されている実施形態によれば、車両は、6つのセンサ4を備えており、それらは、車両の四隅に配置されている、および車両の前部の実質的に中央に配置されている5つのレーダセンサを、特に車両1の前部で、道路を観察することが可能なカメラとともに含む。変形形態では、異なる数のセンサ4があることが可能であり、それらは、車両1上の他の位置に配置されることが可能である。
【0023】
ステアリングシステムはさらに、コンピュータ5または電子制御ユニットを備える。コンピュータ5は、特に、メモリ51、マイクロプロセッサ52、および入力/出力インターフェース53を備える。コンピュータは、そのインターフェース53を介してセンサ4に接続されており、それによってコンピュータは、その入力においてこれらのセンサからの信号を受信することができる。コンピュータはまた、そのインターフェース53を介してステアリングデバイス3に接続されており、それによってコンピュータは、操舵輪2fの方向付けのための制御コマンドをステアリングデバイス3へ送ることができる。最後に、車両1はまた、スクリーン6を装着された計器パネルを備える。スクリーン6は、コンピュータ5に接続されており、コンピュータによって送信された情報を車両1のユーザに表示することができる。メモリ51は、本発明の一実施形態による、車両1の横方向の位置を計算するための方法を実施するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記録されているデータ記録メディアである。マイクロプロセッサ52は、メモリ51に記録されているコード命令を実行することが可能である。
【0024】
車両1は自律車両である。特に、コンピュータ5およびセンサ4と相互作用するステアリングデバイス3は、車両の操舵輪2fの向きを自律的に制御することができる。それゆえに車両は、乗車している乗客をまったく伴わずに、または車両の軌道を直接制御しない乗客を伴って移動することができる。
【0025】
車両1は、他の車両によって後続されて道路上を走行することが可能である。特に、
図2は、3つの走行レーンL1、L2、L3を含む道路上の車両1(自己車両とも呼ばれる)を示している。「自己」という用語は、車両1を車両1の周囲の車両から明確に区別するための一意に区別できる用語である。3つの走行レーンは、互いに隣接している。3つの走行レーン同士は、境界線D1、D2、D3、D4によって識別され区切られており、それらの境界線は、たとえば、白色または黄色の線の形を取り、実線または破線であり得る。そのような境界線は、地上にペイントされることが可能であり、実質的に一定の幅を有し得る。車両は、走行レーンを変更する場合があり、または言い換えれば、自らの進路を変更して境界線を越えて運転する場合がある。3つの走行レーンの移動の方向は、ベクトルXによって示されている。自己車両は、真ん中の走行レーンL2上を走行している。他の車両V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12も、走行レーンL1、L2、L3上を走行している。車両V1、V2、V3、およびV4は、左手の走行レーンL1上を走行している。車両V5、V6、V7、およびV8は、真ん中の走行レーンL2上を走行している。特に、車両V5およびV6は、自己車両の後ろに位置しており、車両V7およびV8は、自己車両の前に位置している。言い換えれば、車両V5およびV6は、自己車両に後続する車両であり、車両V7およびV8は、自己車両に先行する車両である。先行および後続車両は、したがって自己車両と同じ走行レーン上にある。最後に、車両V9、V10、V11、およびV12は、右手の走行レーンL3上を走行している。車両V1~V12は、車両のセンサ4によって検知されることが可能である車両のセットを形成し得る。それらは、
図2では、等しいサイズの長方形によって表されているが、これらの車両は、実際には任意の種類のもの、および任意のサイズのものであり得る。それらは、別々のスピードで前進することが可能であり、それらの相対的な位置は、時間とともに変化し得る。同じ道路上でさらに前方または後方を走行しているその他の車両は、考慮に入れられなくてよい。
【0026】
道路上を走行している車両の横方向の位置、またはオフセットは、車両が移動する方向に垂直な方向における車両のその走行レーン上での位置として定義され得る。
図2を参照すると、車両は、ベクトルXに平行に移動している。したがって、車両の横方向の位置は、ベクトルXに垂直な、ベクトルYに沿った車両の位置を示す。理論上の中央線M1、M2、M3が、それぞれの走行レーンL1、L2、L3に関して、走行レーンを区切る境界線D1、D2、D3、D4から等距離に位置する線として定義され得る。中央線M1は、したがって境界線D1およびD2から等距離に位置している。中央線M2は、境界線D2およびD3から等距離に位置している。中央線M3は、境界線D3およびD4から等距離に位置している。中央線M1、M2、およびM3は、理論上の線である。なぜなら、それらは、走行レーン上に物理的に存在しておらず、境界線D1、D2、D3、D4の関数として計算されるからである。走行レーン上での車両の横方向の位置は、この走行レーンの中央線を基準にしてベクトルYの向きに従って定義または計算され得る。たとえば、横方向の位置は、該当する車両の中心が中央線の左に位置している、または言い換えれば、シフトされている場合には正であり得、該当する車両の中心が中央線の右にシフトされている場合には負であり得る。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態による、走行レーン上での自己自動車両の横方向の位置を計算するための方法を概略的に示している。この方法は、一連のステップE0、E1、E2、E3、E4、E5、E6を含み、その狙いは、自己車両に関する横方向の位置Tegoを計算すること、および次いで、計算された横方向の位置Tegoを自己車両が採用するようにステアリングデバイス3を制御することである。ステップE0は、この計算方法を初期化するステップである。第1のステップE1は、自己車両の第1の理論上の横方向の位置T1を計算するステップである。第1の横方向の位置T1は、自己車両と同じ走行レーン上での自己車両に先行する車両および/または自己車両に後続する車両の横方向の位置の関数として計算される。
図2に示されている状況を参照すると、第1の横方向の位置T1は、したがって後続車両V5およびV6の横方向の位置の関数として、ならびに先行車両V7およびV8の横方向の位置の関数として計算される。第2のステップE2は、自己車両の第2の理論上の横方向の位置T2を計算するステップである。第2の横方向の位置T2は、自己車両の走行レーンに隣接する走行レーン上での車両の位置の関数として計算される。
図2に示されている状況を参照すると、第2の横方向の位置T2は、レーンL1およびL3上に存在している車両、すなわち、車両V1、V2、V3、V4、V9、V10、V11、およびV12の位置の関数として計算される。第3のステップE3は、自己車両の第3の理論上の横方向の位置T3を計算するステップである。第3の横方向の位置T3は、前記走行レーンの脇で検知された静的な障害物(たとえば、壁またはバリア)の関数として計算される。第4のステップE4は、自己車両の横方向の位置Tegoが、第1の横方向の位置T1、第2の横方向の位置T2、および第3の横方向の位置T3の関数として計算される計算ステップである。第5のステップE5は、第4のステップE4で計算された理論上の横方向の位置Tegoを自己車両に採用させるという目的のための、自己車両のステアリングデバイス3の自律制御のステップである。第6のステップE6は、自己車両の走行レーンの理論上の中央線に対する、すなわち
図2に示されている状況における中央線M2に対する自己車両の位置を示す視覚的な表示を自己車両のスクリーン6上に表示するステップである。
【0028】
横方向の位置が、実際の横方向の位置との対比によって「理論上の」と呼ばれているということに留意されたい。所与の瞬間に計算された理論上の横方向の位置は、したがって、この瞬間における車両の実際の横方向の位置と必ずしも一致するとは限らない。これらのステップE0~E6のそれぞれが、ここでさらに詳しく説明される。
【0029】
初期化ステップE0では、自己車両の横方向の位置Tegoを計算するための計算ステップの前に、特定のチェックおよび検知が実行される。これらの条件が満たされない場合、および/または車両もしくは障害物が検知されない場合、この計算方法の後続のステップは、修正、中断、または停止され得る。
【0030】
初期化ステップE0の第1のサブステップE01では、自己車両が走行している走行レーンL2の境界線D2、D3がセンサ4によって正しく検知されているかどうかについてチェックが行われる。そうである場合、自己車両が走行している走行レーンL2の中央線M2の位置を推定することが可能である。上で説明されているように、中央線M2は、境界線D2およびD3から等距離に位置している線として計算され得る。中央線M2はまた、LCA(Lane Centering Assist)タイプの既知のアルゴリズムまたはコントローラによって計算され得る。境界線が存在していないか、または十分に見えない場合、境界線が再びはっきり見えるようになるまで、この方法は中断され得る。
【0031】
初期化ステップE0の第2のサブステップE02では、走行レーンL2の曲率が計算される。自己車両の走行レーンの曲率の半径が、事前に定義されたしきい値以下である場合、走行レーンの曲率の半径が、事前に定義されたしきい値を再び超えるまで、この方法は中断され得る。たとえば、中央線M2の曲率の半径が計算され得る。曲率の半径が、事前に定義された値を下回っている場合、曲率の半径が、事前に定義された値よりも高いレベルに戻るまで、この方法は中断される。これは、過度にタイトなコーナーで車両の軌道が修正されることを回避し、そうした修正は、自己車両を不安定にする可能性があり、および/または自己車両の横方向の位置の偏った計算をもたらす可能性がある。
【0032】
他のチェックも行われることが可能であり、計算方法の進行に影響を与え得る。たとえば、車両のユーザは、横方向の位置を計算するための方法を手動で作動させることまたは無効化することが可能であり得る。この計算方法は、車両の機能不全、特に自律運転システムの機能不全の検知、ESPもしくはABSタイプの車両軌道制御システムの作動の検知、または何らかの危機的な運転状況の検知など、車両のその他の動作パラメータに基づいて自動的に作動または無効化されることも可能である。
【0033】
第3のサブステップE03では、車両および/または車両の周囲の物体を検知するために、センサ4を用いて車両の環境がスキャンされる。車両および/または障害物が検知されない場合、この方法は、車両および/または障害物が検知されるまでスタンバイ状態に置かれることまたは中断されることが可能である。自己車両の環境で車両が検知された場合、それらの位置、それらのそれぞれのスピード、およびそれらの軌道さえも特定され得る。それらの車両の位置は、自己車両の位置と相対的に特定され得る。たとえば、周囲の車両の位置は、ベクトルXおよびYによって形成される基準フレームにおいて定義されることが可能であり、その基準は、自己車両を中心とする。特に、自己車両と、検知されたそれぞれの車両との間における距離を計算することが可能である。それらの車両が位置している走行レーンも特定される。自己車両の走行レーンで(自己車両の前または後ろで)車両が検知された場合、これらの車両の横方向の位置が計算され得る。特に、中央線M2に対するこれらのそれぞれの車両の位置が計算され得る。自己車両と、自己車両と同じ走行レーン上に位置している車両との間における縦方向の距離を計算することも可能である。同じ走行レーン上の2つの車両の間における縦方向の距離は、中央線の経路に沿った2つの車両の間における距離、すなわち道路によって表される曲線横座標として定義され得る。2つの車両の間における縦方向の距離は、したがって、中央線が曲線を描いている場合には2つの車両の間における絶対距離(直線距離)よりも大きい。
【0034】
初期化ステップE0では、物体または静的な障害物、すなわち、道路に対して動かないものを検知することも可能である。最後に、初期化ステップE0の終わりに、自己車両の環境の表示が得られる。変形実施形態によれば、自己車両の表示が、自己車両の車載センサ4を使用して得られるのではなく、ワイヤレス通信手段によって自己車両へ送信されることが可能であろう。たとえば、自己車両の周囲のそれぞれの車両の位置およびスピードは、車両間通信プロトコルを使用して得られることが可能である。
【0035】
初期化ステップE0の第4のサブステップE04では、とりわけ、自己車両の走行レーンL2における先行車両および/または後続車両の存在に関してチェックが行われ得る。とりわけ、自己車両に先行する少なくとも1つの第1の車両が自己車両の走行レーンで検知されているということを最初にチェックすることが可能である。第2に、自己車両に先行または後続する少なくとも1つの第2の車両が自己車両の走行レーンで検知されているということをチェックすることが可能である。自己車両の方向指示器が作動していないということをチェックすることも可能であり、これは、自己車両の側で追い越す意図がないことを示すことになる。これらの3つの条件が満たされる場合、第1の計算ステップE1が実行され得る。デフォルトで、これらの条件が再び満たされるまで計算方法全体が中断されることが可能である。変形形態では、E1を計算する第1のステップを実行せずに、横方向の位置Tegoの計算を第2の横方向の位置T2および第3の横方向の位置T3のみに基づかせて、この方法が継続されることが可能である。別の変形形態によれば、自己車両の前の1つの車両のみが検知された場合に、および自己車両のスピードが十分に低速である場合に、この方法が継続されることが可能である。
【0036】
サブステップE01、E02、E03、およびE04は、互いに独立して、連続して、または並列に実行され得る。それらは、後続のステップE1~E6の実行中でさえ、無限に繰り返され得る。横方向の位置を計算する方法が中断、停止、または修正された場合、自己車両は、たとえば、自己車両の中心が中央線M2上に配置されるように、その走行レーンの中心に従来の様式で漸進的に位置し得るということが留意され得る。
【0037】
第1の計算ステップE1は、前記走行レーン上での先行および/または後続する車両の横方向の位置の加重平均を計算するサブステップを含むことが可能であり、それぞれの横方向の位置の加重係数は、自己車両と、該当する先行および/または後続車両との間における縦方向の距離の、ならびに該当する先行および/または後続車両のスピードの関数である。言い換えれば、第1の横方向の位置T1は、次の式を使用して計算され得る。
[数1]
ここで、
- Nは、自己車両の走行レーンで検知された車両の数を示し、
- iは、自己車両の走行レーンに存在している車両のインデックスを示し、
- Tviは、自己車両の走行レーンにおける車両iの横方向の位置を示し、
- aviは、車両iの横方向の位置に関連付けられている加重係数を示す。
それぞれの加重係数aviは、次の式に従って計算され得る。
[数2]
a
vi=min(f(D
vi),g(V
vi))
ここで、
- Dviは、自己車両と車両iとの間における縦方向の距離を示し、
- Vviは、車両iのスピードを示し、
- fおよびgは、マップ、すなわち関数を示す。
【0038】
たとえば、マップfおよびgは、加重係数がav7>av6>av8>av5という不等式を満たすように定義され得る。たとえば、マップfおよびgはまた、車両iが自己車両に近づいたときに、およびそれらのスピードが低下している場合に加重係数aviが増大するように定義され得る。関数fおよびgはまた、自己車両の挙動を改良するように車両上で調整され得る。加重係数aviはまた、車両のセンサの何らかのシステム欠陥に応じて変化し得る。車両iが、レーンを変更する目的で自己車両のレーンへと横方向に移動した場合、その加重係数aviは、強制的に0にされ得る。言い換えれば、車両iが自身のレーン変更操作を実行している間、車両iの横方向の位置Tviには位置合わせがない。
【0039】
初期化サブステップE04の記述で説明されているように、第1の計算ステップE1を実行するためには、好ましくは、自己車両の前に少なくとも2つの車両が、または自己車両の前に1つの車両および自己車両の後ろに1つの車両が、または代替として低速で前方に1つの車両のみがあるべきである。第1の横方向の位置T1は、したがって、自己車両と同じ車線または走行レーンに位置している車両同士の横方向の位置の平均を再現する。自己車両と同じ走行レーンにおける車両がすべて左へシフトされた場合、自己車両も左へシフトすることになる。同様に、自己車両と同じ走行レーンにおける車両がすべて右へシフトされた場合、自己車両も右へシフトすることになる。この位置を採用することによって、自己車両は、交通の流れに溶け込む。オートバイの通過のための通路が、または緊急車両(救急車、消防車両、警察車両等など)のための通路でさえ形成され得る。自己車両は、車両どうしの間におけるオートバイまたは緊急車両の通過を妨害することはない。さらに自己車両は、自身に先行する車両の延長線において、より大きな範囲に位置する。それは、したがって、その吸気をより有効に活用することができる。自己車両に先行する車両の運転者は、自分の視界を自己車両によって塞がれることなく、自車のサイドミラーを通じて道路環境をよりよく見ることもできる。
【0040】
図4に示されている例では、先行車両V7および後続車両V6は両方とも、カーブのより内側の方に、すなわち中央線M2の右に位置している。自己車両は、自身の横方向の位置付けを車両V6およびV7の横方向の位置付けから模倣し、そしてまた自分自身をカーブのより内側に位置付ける。
図5の例では、車両V5、V6、およびV7は、中央線M2の左手側に位置しており、その一方で車両V8は、右手側に位置している。車両V5~V8の横方向の位置の加重平均の計算の結果として、第1の横方向の位置T1に従う自己車両も、自分自身を中央線M2の左手側に位置付けることになる。
【0041】
第2の計算ステップE2が、
図6および
図7に概略的に示されている。第2のステップE2は、自己車両の横方向の位置が、自己車両の走行レーンに隣接する走行レーン上の妨害車両の存在の関数として適合されることを可能にする。車両は、特に、たとえばトラックもしくはバスのように非常に幅が広い場合に、または単に自分自身の走行レーンに不適切に位置している場合に、妨害になっていることがある。第2のステップE2は、自己車両の走行レーンと、自己車両の走行レーンに隣接する走行レーンとの間に延びる境界線のどちら側にもある理論上の安全マージンCS、または理論上の安全通路を計算する第1のサブステップE21を含む。特に、このステップでは、自己車両の走行レーンの右および左を区切る2つの境界線D2、D3のどちら側にもある2つの安全通路を計算することも可能である。安全通路は、自己車両の走行レーンから、隣接する走行レーンへと横に延びるものとして定義され得る仮想表面である。安全通路の中心は、境界線上に置かれることが可能であり、それによって安全通路は、隣接する走行レーンへと延びるのと同じだけ遠く自己車両の走行レーンへと延びる。有利なことに、安全通路の幅はパラメータ化され得る。その幅が大きいほど、安全通路で車両の存在を検知する確率が大きくなる。安全通路が画定されると、センサ4を使用して、安全通路における車両の潜在的な存在が探索される。
【0042】
第2のサブステップE22では、安全通路における車両の存在が検知される。たとえば、
図6に示されている状況では、安全通路CSにおける車両V12の存在が検知される。次いで自己車両と、安全通路で検知された車両との間における距離、および安全通路で検知された車両のスピードが計算されることが可能である。
【0043】
第3のサブステップE23では、第2の横方向の位置が、自己車両と、安全通路で検知された車両との間における距離の関数として、および前記安全通路で検知された車両のスピードの関数として計算される。特に、第2の横方向の位置T2は、検知された車両と衝突する時間TTCに反比例すること、および安全通路CSで検知された車両によって侵入されたエリアの距離に比例することが可能である。衝突する時間TTC(「到達する時間」と呼ばれる場合もある)は、ある期間として定義されることが可能であり、その期間の終わりに、自己車両は、安全通路に存在している車両に到達し得る(もしもそれらの軌道が交わるならば、およびこれらの軌道の訂正が実行されないならば)。第2の横方向の位置T2
【0044】
たとえば、第2の横方向の位置T2は、次の式を使用して計算され得る。
[数3]
ここで、
- Mは、自己車両の走行レーンの左の隣接する走行レーンで検知された車両の数を示し、
- jは、左の隣接する走行レーンに存在している車両のインデックスを示し、
- Pは、自己車両の走行レーンの右の隣接する走行レーンで検知された車両の数を示し、
- kは、右の隣接する走行レーンに存在している車両のインデックスを示し、
- LvjおよびLvkは、それぞれ車両jおよびkの侵入距離を示し、
- GvjおよびGvkは、それぞれ車両jおよびkに関連付けられているゲインであり、このゲインは、衝突する時間TTCの関数、ならびに/または車両jおよびkそれぞれのスピードの関数であるマップである。
【0045】
ゲインは、衝突する時間TTCに依存するので、横方向の位置T2は、該当する車両に自己車両が近づくにつれて増大し得る。衝突する時間TTCが短いほど、該当する車両に関連付けられているゲインは、1に近くなり得、第2の横方向の位置T2は、該当する車両の安全通路への侵入の距離に近くなるであろう。
【0046】
第2の横方向の位置T2は、衝突する時間TTCが、事前に定義されたしきい値を下回る車両がある場合に計算されること、およびその場合にのみ計算されることが可能である。それゆえに、このしきい値を上回る衝突する時間TTCを有するいずれの車両も無視され得る。第2の横方向の位置T2の計算が、自己車両のレーンに合流する操作を現在実行していない車両のみを考慮に入れることも可能である。そのような操作は、たとえば、該当する車両が方向指示器などの発光指示器を作動させた場合に検知され得る。車両の方向指示器の作動を伴わない車両のレーン変更操作を検知するためのアルゴリズムも使用され得る。
【0047】
図7に例として示されている状況を参照すると、車両V12の存在が、自己車両の走行レーンの右の安全通路CSで検知されている。自己車両の走行レーンの左の走行レーンで車両が検知されていないということが、または道路が自己車両の走行レーンの左に走行レーンを有していないということさえ想定される。上で説明されている計算によれば、第2の横方向の位置T2に従う自己車両は、車両V12からの十分な横方向の安全距離を保持するために中央線M2の左手側へシフトするであろう。しかしながら、2つの妨害車両が自己車両の走行レーンの右および左の安全通路で検知された状況では、自己車両は、右および左の妨害車両からの安全距離のバランスを取るために自分自身を中心に置くことができる。
【0048】
図6および
図7に示されている状況は、自己車両が左から車両V11およびV12を追い越す場合に発生する可能性がある。同様の計算は、左手の安全通路で検知された車両によって自己車両が左から追い越されなければならない場合に自己車両が右へシフトされるようにすることができる。この計算方法は、左手側での運転および右からの追い越しに伴って使用するために逆にされることも可能である。
【0049】
第3の計算ステップE3では、自己車両の第3の横方向の位置T3が、自己車両の周囲の静的な物体の関数として計算される。第2の計算ステップE2に関するのと同じ方法で、自己車両に隣接する車線の周りにマージンが画定される。第3の横方向の位置T3は、自己車両に隣接する境界線の周りの安全エリアへの静的な物体の侵入の距離に比例する。この計算ステップは、たとえば、自己車両に隣接する境界線の近くに安全バリアがある場合に走行レーン内で自車をシフトする傾向を有するであろう人間の挙動を再現することを可能にする。
【0050】
第4の計算ステップE4では、自己車両の横方向の位置Tegoが、第1の横方向の位置T1、第2の横方向の位置T2、および第3の横方向の位置T3の関数として計算される。より正確には、自己車両の横方向の位置Tegoは、次の形式で加重平均を用いて計算され得る。
[数4]
ここで、
- a1は、第1の横方向の位置T1に関連付けられている加重係数を示し、
- a2は、第2の横方向の位置T2に関連付けられている加重係数を示し、
- a3は、第3の横方向の位置T3に関連付けられている加重係数を示す。
【0051】
有利なことに、加重係数a1、a2、およびa3は、自己車両の交通状況に基づいて適合され得る。したがって、計算ステップE4の第1のサブステップE41では、自己車両の交通状況が検知され得る。特に、自己車両によって占められている道路上の道路交通の密度が検知され得る。この検知は、たとえば、自己車両の周りの所与の周辺に存在している車両の数を数えることによって得られるインデックスに基づき得る。道路交通密度はまた、自己車両の周囲の車両の縦方向および横方向の両方の位置を分析することによって推定され得る。
【0052】
計算ステップE4の第2のサブステップE42では、加重係数a1、a2、およびa3は、自己車両の検知された交通状況の関数として、特に道路交通密度の関数として計算され得る。たとえば、前に計算された3つの横方向の位置T1、T2、T3のそれぞれに同じ重みが与えられることになる場合、a1=a2=a3=1/3と指定され得る。これらのパラメータは、たとえば、道路交通密度が普通または通常である場合に使用され得る。渋滞状況が検知された場合、たとえば、自己車両の周りの所与の周辺における車両の数が特定のしきい値を超えた場合、加重係数は、a1=0.2、a2=0.8、およびa3=0となるように指定され得る。それゆえに、より多くの重みが、前に計算された第2の横方向の位置T2に与えられ、計算された第3の横方向の位置T3は無視される。これによって、自己車両のその走行レーン上での位置付けは、車両の人間による制御を用いて得られる位置にさらに近くなる。0という加重係数は、対応する横方向の距離の計算が無視されることが可能であるということを意味する。たとえば、初期化サブステップE04中に見出された状況が存在していない場合、係数a1は、ゼロの値を与えられることが可能である。これらの係数a1、a2、a3の値は、交通状況における変化に基づいて定期的に再評価され得る。
【0053】
すべての状況で運転者の安全を確保する横方向の位置の計算を得るために、計算された横方向の位置は、上述されている加重平均によってフィルタリングされ得る。特に、第3のサブステップE43では、自己車両の理論上の横方向の位置と、自己車両の走行レーンの理論上の中央線との間における最大差が制限されることが可能であり、言い換えれば、それは上限の対象とされ得る。この上限は、測定されたレーン幅に依存し得る。これは、車両が走行レーンの一方の側または他方の側へあまりに遠くシフトするのを防止する。特に、自己車両が、前に画定された安全通路内に移動するのを防止されることが可能である。第4のサブステップE44では、自己車両の理論上の横方向の位置の時間的変動も制限され得る。これは、自己車両を不安定にする可能性がある横方向の位置の過度に急激な変動を回避する。最後に、第4のステップE4の終わりに、理想的な横方向の位置Tegoが得られ、これは、ステアリングデバイス3を制御するために使用され得る。
【0054】
第5のステップE5では、第4のステップで計算された横方向の位置Tegoを車両に採用させるように自己車両のステアリングデバイスが制御される。この制御ステップは、自律的に、すなわち車両のユーザの介入を伴わずに実行される。自己車両の実際の測定された横方向の位置と、計算された横方向の位置Tegoとの間における差は、操舵輪の設定角度の計算につながり、その結果として操舵輪に関する制御コマンドにつながる。車両の操舵輪は、したがって、横方向の位置Tegoを自己車両が採用するようにステアリングデバイス3によって方向変換される。ステップE1~E5は次いで、自己車両の横方向の位置をリアルタイムで調整するために指定の頻度で繰り返され得る。
【0055】
第6のステップE6では、自己車両の走行レーンの中央線に対する自己車両の位置を示す視覚的な表示が、自己車両のスクリーン6上に表示され得る。この視覚的な表示は、たとえば、自己車両が中央線に対して左へシフトしたかまたは右へシフトしたかに応じて、左へまたは右へ向けられた矢印から構成され得る。それゆえに、自己車両のユーザたちが、中心から外れた車両の位置付けによって驚かされることはない。彼らは、中心からずれた自己車両の位置が意図的なものであるということを理解する。
【0056】
本発明により、車両の横方向の位置が、3つの別個の横方向の位置の予備的な計算に基づいて計算される。3つの横方向の位置T1、T2、T3のそれぞれは、自己車両の環境の一部の関数として計算される。最終的な結果は、より自然である、車両のその走行レーンでの横方向の位置である。車両は、より満足できる形で交通の流れに溶け込む。車両は、適切な横方向の安全距離を保持し、その一方で、オートバイまたは緊急車両が車の列を追い越すことを可能にする。