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特許7483772電力制御装置、定着装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電力制御装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022029268
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125269
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】長島 悟
(72)【発明者】
【氏名】安川 航司
(72)【発明者】
【氏名】中島 佑介
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-184019(JP,A)
【文献】特開2021-179883(JP,A)
【文献】特開2004-157659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を供給されて発熱するヒータと、
前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、
前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、
前記トライアックに電流を供給する供給手段と、
制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する電力制御装置であって、
前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、
前記制御手段は、第1の半波において、前記ゼロクロス点を基準として第1制御信号を出力し、前記第1制御信号とはタイミングの異なる第1の位相で第2制御信号を出力し、第2の半波において、前記ゼロクロス点を基準として第3制御信号を出力し、前記第3制御信号とはタイミングの異なる第2の位相で第4制御信号を出力し、
前記第1の位相と前記第2の位相は異なることを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記制御周期内の前記第2極性の半波では前記第2制御信号を出力し、前記制御周期内の前記第1極性の半波では前記第4制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記制御周期内の半波ごとに、前記ゼロクロス点を基準としてランダムなタイミングで前記第2制御信号又は前記第4制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項4】
交流電圧を供給されて発熱するヒータと、
前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、
前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、
前記トライアックに電流を供給する供給手段と、
制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する電力制御装置であって、
前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、
前記制御手段は、前記制御周期内の複数の半波毎に、当該複数の半波内で出力される前記制御信号の出力回数を変化させることを特徴とする電力制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、第1の半波において、前記制御信号を第1の回数出力し、第2の半波において、前記制御信号を第2の回数出力し、
前記第1の回数と前記第2の回数は異なることを特徴とする請求項4に記載の電力制御装置。
【請求項6】
交流電圧を供給されて発熱するヒータと、
前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、
前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、
前記トライアックに電流を供給する供給手段と、
制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する電力制御装置であって、
前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、
前記制御手段は、第1の半波において、前記制御信号を第1の回数出力し、第2の半波において、前記制御信号を第2の回数出力し、前記制御信号を複数回出力する半波では、前記ゼロクロス点を基準として第1制御信号を出力し、前記第1制御信号とはタイミングの異なる第1の位相で第2制御信号を出力する半波と、前記ゼロクロス点を基準として第3制御信号を出力し、前記第3制御信号とはタイミングの異なる第2の位相で第4制御信号を出力する半波とを含み、
前記第1の回数と前記第2の回数は異なり、前記第1の位相と前記第2の位相は異なることを特徴とする電力制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記制御周期内の前記第2極性の半波では、前記制御信号を第1の回数出力し、
前記制御周期内の前記第1極性の半波では、前記制御信号を第2の回数出力し、
前記第1極性の半波において、前記第2制御信号を出力する半波と、前記第4制御信号を出力する半波とが交互になるように制御することを特徴とする請求項6に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記ゼロクロス検知手段は、前記交流電圧の一方の極性の半波を検知することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項9】
交流電圧を供給されて発熱するヒータと、
前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、
前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、
前記トライアックに電流を供給する供給手段と、
制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックを制御する電力制御装置であって、
前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、
第1の半波において、前記ゼロクロス検知手段により1つのゼロクロス点が検知された場合、前記第1の半波以降の第2の半波において、1つの制御信号が出力され、
前記第1の半波において、前記ゼロクロス検知手段により複数のゼロクロス点が検知された場合、前記第2の半波において、複数の制御信号が出力されることを特徴とする電力制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、所定の半波内で前記交流電圧の半周期とは異なるタイミングで前記ゼロクロス検知手段により前記ゼロクロス点を検知した場合に、前記所定の半波の次の半波において前記複数の制御信号を出力することを特徴とする請求項9に記載の電力制御装置。
【請求項11】
前記ゼロクロス検知手段は、前記交流電圧の前記第1極性及び前記第2極性の半波を検知することを特徴とする請求項10に記載の電力制御装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記制御周期毎に、所定半波内での前記制御信号の出力方法を更新することを特徴とする請求項1から請求項3、請求項6から請求項7、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項13】
記録材上の未定着のトナー像を定着させる定着装置であって、
請求項1から請求項7、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の電力制御装置と、
前記ヒータにより加熱されるフィルムと、
前記フィルムとともにニップ部を形成する加圧ローラと、
を備え、
前記ヒータは前記フィルムの内部空間に配置されており、前記ヒータと前記加圧ローラとにより前記フィルムを挟持しており、
記録材上のトナー像は、前記ニップ部で前記フィルムを介して加熱されることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
記録材にトナー画像を形成する画像形成手段と、
請求項13に記載の定着装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御装置、定着装置及び画像形成装置に関し、例えば、複写機やレーザプリンタ等の画像形成装置に搭載される、像加熱定着装置への電力供給を制御する回路の、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
双方向サイリスタ(以下、トライアックという)の電力供給を制御(以下、電力制御という)して、交流電源から負荷へ電力を供給する回路がある。このような回路において、交流電源とは別の電源を配置し、別電源からトライアックにゲート電流を流して電力制御を行う技術として、例えば特許文献1のような提案がなされている。
【0003】
一方、交流電源の交流電圧の歪みや、重畳したノイズにより、トライアックがターンオフしてしまうことが一般的に知られている。トライアックがノイズによりターンオフすることを防いで電力制御を行う方法として、例えば、特許文献2のような提案がなされている。特許文献2では、トライアックを実質連続的にオンさせるために、トライアックのゲート電流を供給する電源に、連続して電荷が供給されるようにする技術について提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-247758号公報
【文献】特開2001-326087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の交流電源とは別に配置した電源からゲート電流を流してトライアックを電力制御する回路では、次のような課題がある。トライアックを実質連続的にオンさせるためには、トライアックにゲート電流を供給し続ける必要がある。交流電源とは別に配置した電源の容量には制約があり、トライアックにゲート電流を供給できる時間には限りがある。または、トライアックにゲート電流を供給し続けるために、大きな電荷容量がある電源を配置したりする必要がある。そこで、トライアックにゲート電流を供給し続けるために、トランスやブリッジダイオードのような回路素子を用いて、交流電源とは別の電源の電荷を充電し続けたりする必要がある。このため、交流電源とは別に配置した電源からトライアックのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を極力避けつつ、トライアックを連続制御し続けることが求められている。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたものである。本発明は、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)交流電圧を供給されて発熱するヒータと、前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、前記トライアックに電流を供給する供給手段と、制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する電力制御装置であって、前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、前記制御手段は、第1の半波において、前記ゼロクロス点を基準として第1制御信号を出力し、前記第1制御信号とはタイミングの異なる第1の位相で第2制御信号を出力し、第2の半波において、前記ゼロクロス点を基準として第3制御信号を出力し、前記第3制御信号とはタイミングの異なる第2の位相で第4制御信号を出力し、前記第1の位相と前記第2の位相は異なることを特徴とする電力制御装置。
(2)交流電圧を供給されて発熱するヒータと、前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、前記トライアックに電流を供給する供給手段と、制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する電力制御装置であって、前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、前記制御手段は、前記制御周期内の複数の半波毎に、当該複数の半波内で出力される前記制御信号の出力回数を変化させることを特徴とする電力制御装置。
(3)交流電圧を供給されて発熱するヒータと、前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、前記トライアックに電流を供給する供給手段と、制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する電力制御装置であって、前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、前記制御手段は、第1の半波において、前記制御信号を第1の回数出力し、第2の半波において、前記制御信号を第2の回数出力し、前記制御信号を複数回出力する半波では、前記ゼロクロス点を基準として第1制御信号を出力し、前記第1制御信号とはタイミングの異なる第1の位相で第2制御信号を出力する半波と、前記ゼロクロス点を基準として第3制御信号を出力し、前記第3制御信号とはタイミングの異なる第2の位相で第4制御信号を出力する半波とを含み、前記第1の回数と前記第2の回数は異なり、前記第1の位相と前記第2の位相は異なることを特徴とする電力制御装置。
(4)交流電圧を供給されて発熱するヒータと、前記交流電圧のゼロクロス点を検知するゼロクロス検知手段と、前記ヒータに前記交流電圧を供給する導通状態又は前記ヒータへの前記交流電圧の供給を遮断する非導通状態を切り替えるトライアックと、前記トライアックに電流を供給する供給手段と、制御信号を出力して前記トライアックの状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流電圧の第1極性の複数の半波と前記第1極性とは異なる第2極性の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、前記制御信号を出力して前記トライアックを制御する電力制御装置であって、前記供給手段は、前記第1極性及び前記第2極性の半波内で前記制御信号が出力されているときは電荷が放電され、前記第1極性の半波内で前記制御信号が出力されていないときは電荷が充電され、第1の半波において、前記ゼロクロス検知手段により1つのゼロクロス点が検知された場合、前記第1の半波以降の第2の半波において、1つの制御信号が出力され、前記第1の半波において、前記ゼロクロス検知手段により複数のゼロクロス点が検知された場合、前記第2の半波において、複数の制御信号が出力されることを特徴とする電力制御装置。
(5)記録材上の未定着のトナー像を定着させる定着装置であって、前記(1)から前記(4)のいずれか1つに記載の電力制御装置と、前記ヒータにより加熱されるフィルムと、前記フィルムとともにニップ部を形成する加圧ローラと、を備え、前記ヒータは前記フィルムの内部空間に配置されており、前記ヒータと前記加圧ローラとにより前記フィルムを挟持しており、記録材上のトナー像は、前記ニップ部で前記フィルムを介して加熱されることを特徴とする定着装置。
(6)記録材にトナー画像を形成する画像形成手段と、前記(5)に記載の定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1~5の画像形成装置の全体構成図
図2】実施例1~5の画像形成装置の制御ブロック図
図3】実施例1~4の定着装置の回路構成を示す全体概略図
図4】実施例1~5のZEROX信号とCPU内部補正後のZEROX信号の関係図
図5】実施例1~5の電力制御1周期のヒータへの電力供給波形を示す図
図6】実施例1との比較のための従来例の電力制御のタイミングチャート
図7】実施例1との比較のための従来例の電力制御のタイミングチャート
図8】実施例1の電力制御のタイミングチャート
図9】実施例1の電力制御のフローチャート
図10】実施例2の電力制御のタイミングチャート
図11】実施例3の電力制御のタイミングチャート
図12】実施例4の電力制御のタイミングチャート
図13】実施例5の定着装置の回路構成を示す全体概略図
図14】実施例5の電力制御のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0011】
[画像形成装置の全体構成]
図1は、実施例1の定着装置を搭載した画像形成装置である、インライン方式のカラー画像形成装置の構成を示す断面図である。図1を用いて、電子写真方式のカラー画像形成装置の構成を説明する。なお、第1ステーションをイエロー(Y)色のトナー画像形成用のステーション、第2ステーションをマゼンタ(M)色のトナー画像形成用のステーションとしている。また、第3ステーションをシアン(C)色のトナー画像形成用のステーション、第4ステーションをブラック(K)色のトナー画像形成用のステーションとしている。
【0012】
第1ステーションで、像担持体である感光ドラム1aは、OPC感光ドラムである。感光ドラム1aは金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層等からなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低く略絶縁されている。帯電手段である帯電ローラ2aは感光ドラム1aに当接し、感光ドラム1aの回転に伴い、従動回転しなから感光ドラム1a表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aには直流電圧又は交流電圧を重畳した電圧が印加され、帯電ローラ2aと感光ドラム1a表面とのニップ部から、感光ドラム1aの回転方向の上流側及び下流側の微小な空気ギャップにおいて放電が発生する。これにより、感光ドラム1aが帯電される。クリーニングユニット3aは、後述する1次転写後に感光ドラム1a上に残ったトナーをクリーニングするユニットである。現像手段である現像ユニット8aは非磁性一成分トナー5aを格納し、現像ローラ4a、現像剤塗布ブレード7aを有している。感光ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、現像ユニット8aは、画像形成装置に対して着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9a(画像形成部)に収容されている。
【0013】
露光手段である露光装置11aは、レーザ光を回転多面鏡によって反射させ、感光ドラム1a上を走査するスキャナユニット又はLED(発光ダイオード)アレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1a上に照射する。また、帯電ローラ2aは、帯電ローラ2aへの電圧供給手段である帯電高電圧電源20aに接続されている。現像ローラ4aは、現像ローラ4aへの電圧供給手段である現像高電圧電源21aに接続されている。1次転写ローラ10aは、1次転写ローラ10aへの電圧供給手段である1次転写高電圧電源22aに接続されている。以上が第1ステーションの構成であり、第2、第3、第4ステーションも同様の構成を有している。第2、第3、第4ステーションについても、第1ステーションと同一の機能を有する部品には同一の符号を付し、符号の添え字にステーションごとにb、c、dを付している。なお、以下の説明において、特定のステーションについて説明する場合を除き、添え字a、b、c、dを省略する。
【0014】
中間転写ベルト13は、その張架部材として2次転写対向ローラ15、テンションローラ14、補助ローラ19の3本のローラにより支持されている。テンションローラ14だけが、バネ(不図示)で中間転写ベルト13を張る方向の力が加えられており、中間転写ベルト13に適当なテンション力が維持されるようになっている。2次転写対向ローラ15はメインモータ99(図2参照)からの回転駆動を受けて回転し、外周に巻かれた中間転写ベルト13が回動する。中間転写ベルト13は感光ドラム1a~1d(例えば、図1では反時計回り方向に回転)に対して、矢印方向(例えば、図1では時計回り方向)に略同速度で移動する。また、1次転写ローラ10は中間転写ベルト13を挟んで感光ドラム1と対向する位置に配置されて、中間転写ベルト13の移動に伴い従動回転する。中間転写ベルト13を挟んで感光ドラム1と1次転写ローラ10とが当接している位置を1次転写位置という。補助ローラ19、テンションローラ14、及び2次転写対向ローラ15は電気的に接地されている。なお、第2~第4ステーションも1次転写ローラ10b~10dは第1ステーションの1次転写ローラ10aと同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0015】
次に、図1に示す画像形成装置の画像形成動作について説明する。画像形成装置は待機状態時に印刷指令を受信すると、画像形成動作をスタートさせる。感光ドラム1や中間転写ベルト13等は、メインモータ99(図2参照)によって所定のプロセススピードで、図中矢印方向に回転を始める。感光ドラム1aは、帯電高電圧電源20aにより帯電電圧が印加された帯電ローラ2aによって一様に帯電され、続いて露光装置11aから照射された走査ビーム12aによって画像情報に応じた静電潜像が形成される。現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて、現像ローラ4aに塗布される。そして、現像ローラ4aには、現像高電圧電源21aにより所定の現像電圧が印加される。感光ドラム1aが回転して感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像ローラ4aに到達すると、静電潜像は負極性のトナーが付着することによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(例えば、Y(イエロー))のトナー像が形成される。他の色M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各ステーション(プロセスカートリッジ9b~9d)も同様に動作する。各色の1次転写位置間の距離に応じたタイミングで、コントローラ(不図示)からの書き出し信号を遅らせながら、露光装置11a~11dからの走査ビーム12a~12dによって、静電潜像が各感光ドラム1a~1d上に形成される。それぞれの1次転写ローラ10a~10dには、1次転写高電圧電源22a~22dから、トナーと逆極性の直流高電圧が印加される。これにより、感光ドラム1a~1d上のトナー像が、順に中間転写ベルト13に転写されて(以下、1次転写という)、中間転写ベルト13上に多重トナー像が形成される。
【0016】
その後、トナー像の作像に合わせて、カセット16(給紙部)に積載されている記録材である用紙Pは、給紙ソレノイド(不図示)によって回転駆動される給送ローラ17により、搬送経路Yへと給送される。給送された用紙Pは搬送ローラ(不図示)によりレジストレーションローラ(以下、レジストローラという)18に搬送される。用紙Pは、中間転写ベルト13上のトナー像に同期して、レジストローラ18によって中間転写ベルト13と2次転写ローラ25との当接部である転写ニップ部へ搬送される。2次転写ローラ25には、2次転写高電圧電源26によりトナーと逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー像が一括して用紙P上(記録材上)に転写される(以下、2次転写という)。用紙P上に未定着のトナー像が形成されるまでに寄与した部材(例えば、感光ドラム1等)は画像形成手段として機能する。一方、2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留したトナーは、クリーニングユニット27によって清掃される。一方、2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留したトナーは、クリーニングユニット27によって清掃される。
【0017】
定着装置50は、2次転写を終えたトナー像を用紙Pに定着させる装置であり、フィルム51、ヒータ54、ヒータ54の温度を検知する定着温度センサ59(図2参照)、加圧回転体としてのローラである加圧ローラ53から構成される。加圧ローラ53は、両端を回転可能に保持されており、定着モータ89(図2参照)によって回転駆動される。加圧ローラ53は、フィルム51とともにニップ部を形成する。また、加圧ローラ53の回転により、フィルム51は従動回転する。加熱部材であるヒータ54は、ヒータ54の温度を検知する定着温度センサ59の検知結果に基づいて、CPU94(図2参照)によって所望の温度に温度制御される。所望の温度に制御されたヒータ54により、フィルム51へ熱が伝わる。2次転写が終了した後の用紙Pは、定着手段である定着装置50へと搬送され、フィルム51の熱と、加圧ローラ53の圧力によって、トナー像が定着されて、画像形成物(プリント、コピー)として排出トレー30へと排出される。
【0018】
複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する印刷モードを、以下では連続印刷や連続ジョブという。連続印刷において、先行して印刷が行われる用紙P(以下、先行紙という)の後端と先行紙に続いて印刷が行われる後続の用紙P(以下、後続紙という)の先端との間を紙間という。本実施例では、A4サイズの用紙Pの連続印刷において、紙間の距離が例えば30mmになるように、中間転写ベルト13上のトナー像と用紙Pとが同期して搬送され、印刷が行われる。本実施例の画像形成装置は、各部材と用紙Pとの搬送方向に直交する方向(後述する長手方向)における中央の位置を一致させて印刷動作を行う中央基準の画像形成装置である。したがって、搬送方向に直交する方向の長さが大きい用紙Pの印刷動作であっても、搬送方向に直交する方向の長さが小さい用紙Pの印刷動作であっても、各用紙Pの中央位置は一致する。
【0019】
[画像形成装置の制御ブロック]
図2は、画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図であり、図2を参照しながら画像形成装置の印刷動作について説明する。ホストコンピュータであるPC90は、画像形成装置の内部にあるビデオコントローラ91に対して、印刷画像の画像データや印刷情報を含んだ印刷指令を送信する。
【0020】
ビデオコントローラ91は、PC90から受信した画像データを露光データに変換し、エンジンコントローラ92内にある露光制御装置93に転送するとともに、印刷指令をエンジンコントローラ92内のCPU94に送信する。露光制御装置93はCPU94により制御され、露光データに応じてレーザ光のオン・オフを行う露光装置11の制御を行う。制御手段であるCPU94は、ビデオコントローラ91から印刷指令を受信すると、画像形成動作をスタートさせる。
【0021】
エンジンコントローラ92には、CPU94、メモリ95等が搭載されている。CPU94は、メモリ95に予め格納されたプログラムに従って動作する。また、CPU94は、時間を測定するタイマを有しており、メモリ95には後述する定着装置50を制御する各種情報が格納されている。高電圧電源96は、上述した帯電高電圧電源20、現像高電圧電源21、1次転写高電圧電源22、2次転写高電圧電源26から構成される。また、電力制御部97は、供給制御部である双方向サイリスタ(以下、トライアックという)56を有している。電力制御部97は、定着装置50内のヒータ54へ供給する電力量を制御する。
【0022】
駆動装置98はメインモータ99、定着モータ89等から構成される。定着モータ89により駆動力が伝達されて定着装置50の加圧ローラ53は回転駆動する。また、センサ87は定着装置50の温度を検知する温度検知手段である定着温度センサ59、フラグを有し用紙Pの有無を検知する用紙センサ88等からなり、センサ87の検知結果はCPU94に送信される。CPU94はセンサ87の検知結果を取得し、検知結果に基づいて、露光装置11、高電圧電源96、電力制御部97、駆動装置98を制御する。これにより、CPU94は、静電潜像の形成、現像されたトナー像の用紙Pへの転写、転写されたトナー像の用紙Pへの定着等を行い、PC90から受信した画像データがトナー像として用紙P上に印刷される画像形成工程の制御を行う。なお、本発明が適用される画像形成装置は、図1で説明した構成の画像形成装置に限定されるものではなく、異なる幅の用紙Pを印刷することが可能で、後述するヒータ54を有する定着装置50を備える画像形成装置であればよい。
【0023】
[ゼロクロス回路及び電力制御回路の構成と動作]
図3は、実施例1の電力制御部97の全体概略図である。電力制御装置である電力制御部97は、ゼロクロス回路部971と駆動回路部972から構成される。ゼロクロス回路部971は交流電源100に接続されている。ゼロクロス回路部971は、フォトカプラ103、抵抗101、104、105、107、トランジスタ106、ツェナーダイオード108、定着温度センサ59を有している。直流電圧Vcc1は、直流電圧源(不図示)により生成された電圧である。直流電圧Vcc1はCPU94に供給されている。駆動回路部972は、ヒータ54、トライアック56、電解コンデンサ111、抵抗112、114、117、119、120、121、トランジスタ113、118、フォトカプラ116、ツェナーダイオード108、ダイオード110を有している。電解コンデンサ(以下、単にコンデンサという)111はトライアック56にゲート電流Igを供給する電源である。コンデンサ111は、切替素子であるトライアック56の制御端子に電流を供給する供給手段として機能する。コンデンサ111は、トライアック56の制御端子に電流が供給されているときは電荷が放電され、トライアック56の制御端子への電流の供給が遮断されているときは電荷が充電される。
【0024】
トライアック56は、制御端子であるゲートを有し、ヒータ54に交流電圧を供給する導通状態又はヒータ54への交流電圧の供給を遮断する非導通状態となる切替素子である。トライアック56は、交流電源100とヒータ54との間に接続される。ヒータ54は、交流電圧を供給されて発熱する。コンデンサ111は、トライアック56のT1端子に正極を接続され、トライアック56は、コンデンサ111からゲート電流を供給される。
【0025】
(ゼロクロス回路部)
図3のゼロクロス検知手段であるゼロクロス回路部971について説明する。ゼロクロス回路部971は、交流電圧のゼロクロス点を検知する。実施例1では、ゼロクロス回路部971は、交流電圧の一方の極性の半波を検知する。フォトカプラ103は、抵抗101を介して、交流電源100の一極と接続される。具体的には、抵抗101は、一端が交流電源100のL側に接続されている。抵抗101は、他端がフォトカプラ103のフォトダイオード103dのアノード端子に接続されている。交流電源100のL極側から電力が供給され、一定値以上の電圧になると、抵抗101を介してフォトカプラ103のフォトダイオード103dに電流が流れて発光する。フォトカプラ103のフォトダイオード103dが発光すると、次のように電流が流れる。すなわち、抵抗を介して接続された直流電圧Vcc1から、フォトカプラ103のフォトトランジスタ103tのコレクタ・エミッタ間、抵抗105、抵抗107からグランド(以下、GNDとする)へと電流が流れる。また、このとき、フォトカプラ103のフォトトランジスタ103tに流れた電流は、抵抗105を介して、トランジスタ106のベース端子へと流れる。トランジスタ106のベース端子に電流が流れると、直流電圧Vcc1から抵抗104、トランジスタ106のコレクタ・エミッタへと電流が流れる。そして、抵抗104とトランジスタ106のコレクタ端子との間の電位がCPU94に信号(以下、ZEROX信号という)として入力される。このとき、ZEROX信号は、ハイレベル(Vcc1電位)からローレベルへと遷移する。
【0026】
交流電源100のL極の電位が一定値以下に下がると、フォトカプラ103のフォトダイオード103dは消灯し、トランジスタ106のベース電流が流れなくなる。このため、ZEROX信号は、ローレベルからハイレベル(Vcc1電位)へと遷移する。一方、交流電源100のN極側から電力が供給された場合、フォトカプラ103のフォトダイオード103dは発光しないため、トランジスタ106のベース電流が流ないままであり、ZEROX信号は、ハイレベル状態のまま変化しない。以降同様に、ゼロクロス回路部971は、交流電源100の動作に合わせて、ZEROX信号をCPU94に送信する。
【0027】
(駆動回路部)
次に、駆動回路部972について説明する。駆動手段である駆動回路部972は、トライアック56のゲートに接続され、ゲートに電流を供給しトライアック56を導通状態にする、又は、ゲートへの電流の供給を遮断しトライアック56を非導通状態にする。制御手段であるCPU94は、駆動回路部972を駆動する制御信号を出力して駆動回路部972を制御する。CPU94は、交流電圧の複数の半波を制御の1周期とした制御周期で、駆動信号を駆動回路部972に出力し、ヒータ54に供給する電力を制御する。以下、駆動信号をFSRD信号という。CPU94はゼロクロス回路部971から出力されたZEROX信号に基づいて、FSRD信号を出力するタイミングを決定し、FSRD信号をローレベル状態からハイレベル状態に変化させる。CPU94はFSRD信号をトランジスタ118のベース端子に出力している。FSRD信号がローレベルからハイレベルに変化すると、抵抗119を介して、トランジスタ118のベース-エミッタ間に電流が流れる。トランジスタ118のベース-エミッタ間に電流が流れると、抵抗117を介して接続された直流電圧Vcc1から、フォトカプラ116のフォトダイオード116dとトランジスタ118のコレクタ-エミッタ間に電流が流れる。これにより、フォトカプラ116のフォトダイオード116dが発光する。
【0028】
フォトカプラ116のフォトダイオード116dが発光するとフォトトランジスタ116tがオンし、交流電源100のL極側から電力が供給されている場合は、トライアック56のゲート電流は、主に2つの経路で流れる。1つ目の電流経路は、コンデンサ111、抵抗120、ダイオード110を経由する経路である。1つ目の電流経路で流れる電流を充電電流Icという。2つ目の電流経路は、交流電源100のL極からトライアック56のT1-ゲート間、抵抗112、トランジスタ113のコレクタ-エミッタ間を経由して、抵抗120、ダイオード110へと流れる経路である。2つ目の電流経路で流れる電流をゲート電流Igという。交流電源100のN極側から電力が供給されている場合は、トライアック56のゲート電流は、コンデンサ111からのみ電荷が供給されて、同様の経路で電流が流れる。つまり、フォトカプラ116のフォトダイオード116dが発光しているとき、交流電源100のL極側から電力が供給されている場合は、交流電源100のL極側とコンデンサ111の両方から、トライアック56のT1-ゲート間に電流が流れる。一方、交流電源100のN極側から電力が供給されている場合は、コンデンサ111からのみトライアック56のT1-ゲート間に電流が流れる。トライアック56のT1端子-ゲート間に電流が流れると、トライアック56のT1-T2間が導通状態(以下、オン状態という)して、T1-T2間に電流が流れ、ヒータ54に電力が供給される。ヒータ54に流れる電流をヒータ電流Iという。
【0029】
FSRD信号がハイレベルからローレベルに遷移すると、フォトカプラ116のフォトダイオード116dは消灯し、トライアック56のゲートに電流が流れない。このため、トライアック56のT1端子-T2端子間は非導通(以下、オフ状態という)となり、T1-T2間に電流が流れず、ヒータ54には電力が供給されない。CPU94は、FSRD信号のハイレベル/ローレベルを切り替えることで、ゲート電流Igのオン(ON)、オフ(OFF)を制御して、ヒータ54への電力供給を制御する。このように、トライアック56は、CPU94から出力されたFSRD信号に応じて、交流電源100の半波ごとにオンとオフを繰り返して、ヒータ54への電力供給を制御する。
【0030】
[コンデンサ111への充放電動作]
(充電動作)
コンデンサ111への充電動作について説明する。交流電源100のL極側から電力が供給されると、コンデンサ111、抵抗120、ダイオード110を経由した経路で流れる充電電流Icによって、コンデンサ111に電荷が充電される。コンデンサ111の両端にかかる上限電圧は、ツェナーダイオード108のツェナー電圧によって制限される。交流電源100のN極側から電力が供給された場合は、ダイオード110の極性によって電流の向きが制限され、コンデンサ111の充電電流Icは流れない。
【0031】
(放電動作)
次に放電動作について説明する。交流電源100のL極側及びN極側のどちら一方から電力を供給された場合でも、CPU94がFSRD信号をハイレベル/ローレベルに遷移させる動作に応じて、コンデンサ111は電荷を放電し、トライアック56のT1-ゲート間にゲート電流Igを流す。つまり、交流電源100のL極側から電力が供給されたときに、トライアック56をオンする場合は、コンデンサ111は、交流電源100から充電されつつ、トライアック56のゲート電流Igを流すために電荷を放電する。交流電源100のN極側から電力を供給されたときに、トライアック56をオンする場合は、トライアック56のゲート電流Igを流すため、電荷が放電だけされる。
【0032】
[定着温度センサ59とCPU94の動作]
定着温度センサ59とCPU94の動作について説明する。定着温度センサ59は例えばNTCサーミスタであり、低温で抵抗値が高く、高温で抵抗値が低くなる特性を持つ。なお、定着温度センサ59の特性が逆であってもよい。定着温度センサ59は、ヒータ54に接触しており、ヒータ54表面の温度に応じて抵抗特性が変化する。定着温度センサ59は、一端が抵抗121を介して直流電圧Vcc1に接続され、他端がGNDに接続される。CPU94には、抵抗121と定着温度センサ59によって直流電圧Vcc1が分圧された信号(以下、Th信号という)が接続される。Th信号は、ヒータ54の温度に応じて定着温度センサ59の抵抗値が変化するのに応じて変化する電圧値となる信号である。CPU94は、ヒータ54の温度に応じて変化したTh信号と、予め定めた目標温度値とに基づいて、後述する電力制御テーブルからヒータ54に入力する電力制御パターンを選定する。CPU94は、電力制御パターンと、ゼロクロス信号から算出したタイミングとに基づいて、FSRD信号を出力して、交流電源100からヒータ54への電力供給を行う。
【0033】
[ZEROX信号からCPU内部補正後ZEROX信号を生成する動作]
図4は、CPU94に入力されたZEROX信号と、CPU94内部で補正されたZEROX信号(以下、補正後のZEROX信号という)の関係を示したタイミングチャートである。図4(i)は、交流電源100の交流電圧の波形を示す。なお、L極からN極に電力が供給される場合を正極性(第1極性)、N極からL極に電力が供給される場合を負極性(第2極性)としている。また、ツェナーダイオード108のツェナー電圧Vzも破線で示す。図4(ii)は、ゼロクロス回路部971から出力されたZEROX信号の波形を示す。図4(iii)は、CPU94による補正後のZEROX信号の波形を示す。横軸は、いずれも時間(s)を示す。
【0034】
交流電源100のN極から電力が供給された場合、前述のようにZEROX信号はハイレベル状態のままである。交流電源100のL極から電力が供給されたとき、交流電源100からの電力がゼロクロス回路部971に供給される。これにより、フォトカプラ103のフォトダイオード103dが発光する電圧であるツェナー電圧Vzを交流電源100の電圧が上回ると、前述のようにゼロクロス回路部971が動作する。そして、ZEROX信号はハイレベル状態からローレベル状態に遷移する。交流電源100から供給される電圧が下がり、フォトカプラ103のフォトダイオード103dが消灯すると、ZEROX信号はローレベル状態からハイレベル状態に遷移する。
【0035】
図4で、交流電源100には、交流電圧の値が0Vを通過する点(以下、ゼロクロス点という)を基準としてtn1からtn2までの期間(tn2-tn1)に、ノイズが重畳した例を示している。図4では、交流電源100の周期が例えば20ms、tn1=4.5ms、tn2=5.5msである。CPU94は、ZEROX信号の立ち下がりであるX1を検知すると、立ち下がりX1を検知したタイミングを基準としてtf1後と、tf2後のZEROX信号を再度検知する。CPU94が検知した立ち下がりX1からtf1後と、tf2後のいずれかの論理(ハイレベル又はローレベル)が、ローレベルであれば、CPU94は、立ち下がりX1をノイズではない正常なZEROX信号であると判断する。
【0036】
CPU94が検知したZEROX信号の立ち下がりX1からtf1秒後と、tf2秒後のいずれの論理もハイレベルの場合は、立ち下がりX1をノイズであると判断し、再度ZEROX信号の立ち下がりの検知を待つ。CPU94がZEROX信号の立ち下がりを検知すると、次のZEROX信号の立ち上がりを基準としてtf3秒間、検出した信号を無視する。CPU94は、ZEROX信号の立ち上がりからtf3秒後に再度立ち上がり信号の検出を開始し、次のZEROX信号の立ち上がりを検出すると、前回検出したZEROX信号の立ち上がりからの経過時間を交流電源100の周期Tとして算出する。
【0037】
図4では、tf3は、例えば16msであり、周期Tは20ms(周波数50Hz)である。周期Tを算出した後、CPU94は、周期Tのハイレベル/ローレベルを繰り返すクロック信号を生成する。このクロック信号は、ZEROX信号の立ち下がりでハイレベルからローレベルに遷移し、ZEROX信号の立ち下がりから周期T/2のタイミングでローレベルからハイレベルに遷移するような信号である。
【0038】
さらに、CPU94は、生成したクロック信号の位相を、予め定めた△tだけ早めた信号を生成(以下、CPU内部補正後のZEROX信号という)する。位相をΔt早めることで、ZEROX信号の立ち下がりを交流電源100のゼロクロス点と合わせる。実施例1において、ZEROX信号の立ち下がりと交流電源100のゼロクロス点との間のずれは1.0msであり、Δtは1.0msである。CPU94は、後述するようにCPU内部補正後のZEROX信号の立ち下がりと立ち上がりを基準に、FSRD信号を出力して、トライアック56のオンオフ制御を行う。
【0039】
[電力制御テーブル]
図5は、交流電源100から、ヒータ54への電力を投入する際の電力制御パターンを示した表であり、以下、電力制御テーブルという。ここでは、4全波8半波を1つの周期として、1半波内で電力をヒータ54に供給するか否かを組み合わせることで、投入する電力を9段階に分けている。CPU94は、前述のTh信号の値と、予め定めた目標温度値とに基づいて、電力制御テーブル内の0~8段階のどの段階の電力制御パターンとするかを選定する。CPU94は、8半波周期で、8半波のうち、どの半波(第n半波)の電力をヒータ54に供給するか否かで交流電源100からヒータ54への電力供給量の制御を行う。実施例1では、例えば、電力供給レベルを、8半波を全てヒータ54に供給する場合を8/8(100%)、8半波全てを供給しない場合を0/8(0%)として、投入電力を9段階に分けている。例えば、4/8段階目(62.5%)の電力供給レベルの場合、8半波1周期のうち、第1半波、第2半波、第7半波、第8半波においてヒータ54に電力を供給する。8半波1周期の制御が終わると、CPU94は、前述のTh信号の値と、予め定めた目標温度値とに基づいて再度電力制御パターンを決定し、同様の制御を繰り返す。
【0040】
[従来構成のタイミングチャート]
図6図7は、前述の電力制御部97において、従来の制御動作を実施した場合のタイミングチャートである。図6図7ともに、(i)は交流電源100の交流電圧の波形を示す。なお、L極からN極に電力が供給される場合を正、N極からL極に電力が供給される場合を負としている。(ii)は、ゼロクロス回路部971から出力されたZEROX信号の波形を示す。(iii)は、従来の、CPU内部補正後のZEROX信号の波形を示す。(iv)はFSRD信号の波形を示す。(v)はヒータ54へ供給されるヒータ電流Iの波形を示す。(vi)はコンデンサ111の電荷の残量(以下、電荷残量という)を示す。なお、(vi)にはゲート電流Igを流すために必要な電荷量Vthも示す。横軸は、いずれも時間(s)を示す。
【0041】
従来の制御動作について説明する。図6は、CPU94が1半波内で長時間FSRD信号を出力している場合の動作を示すタイミングチャートである。CPU94は電力制御パターンの例えば8段階目(100%)を選定し、ヒータ54への電力供給制御を実施した場合の電力制御パターンにおける1周期8半波分の動作を示している。ここで、8半波を1周期として制御するとき、この8半波1周期を電力制御周期という。交流電源100は、実施例1において周波数50Hzであり、10msごとにノイズが重畳している100Vの正弦波である。すなわち、ノイズの周期=10msである。
【0042】
ゼロクロス点を基準としてtn1秒後からtn2秒後までノイズが重畳されている。図6図7では、tn1=4ms、tn2=6msである。交流電源100が、第1半波~第8半波までの間、周期T(s)で、電力制御部97に供給される。ZEROX信号は、交流電源100のN極側から電力が供給された場合、前述の動作で示すようにハイレベル状態のままとなる。図4に示すように、交流電源100のL極側から電力が供給されて電圧Vz以上になると、ZEROX信号はハイレベル状態からローレベル状態に遷移する。以降、周期T(s)毎に同様の動作を繰り返す。CPU内部補正後のZEROX信号は、前述の図4に示すようにZEROX信号に基づいて生成される。
【0043】
次に、FSRD信号と、ヒータ電流I、コンデンサ111の電荷残量について説明する。CPU94は、電力制御パターンを選定し、電力制御周期でヒータ54に電力供給する波形パターンを決定する。CPU94は、波形パターンを決定すると、前述の動作によって生成した、CPU内部補正後のZEROX信号を基準に、FSRD信号をtr=8ms間出力する。CPU94は、FSRD信号をtr秒間出力し、次の半波で再度CPU内部補正後のZEROX信号を基準に、FSRD信号を間出力し、以降同様に同じ動作を繰り返す。CPU94からFSRD信号が出力されると前述の電力制御により、ヒータ54に電流が供給される。
【0044】
交流電源100は、tn1秒後から、tn2秒後までノイズが重畳されており、tn1秒後にトライアック56がオフし、同じタイミングでヒータ54への電力供給が遮断される。tn2秒後に、交流電源100のノイズが消えると、FSRD信号が出力されているため、トライアック56が再びオンして、ヒータ54への電力供給が再開され、半波が終了するまでヒータ54へ電流が流れ続ける。コンデンサ111の電荷残量は、前述のように、FSRD信号が出力されている間、減少し続ける。また、コンデンサ111の電荷残量は、交流電源100のL極からN極に向かって電力供給されている際、FSRD信号が出力されていない間は、電荷が維持され、変化はない。
【0045】
一方、交流電源100のN極からL極に向かって電力供給されている際、FSRD信号が出力されていない間は、電荷が充電されるため、電荷残量が上昇する。コンデンサ111の電荷残量は、図6において、第1半波では、交流電源100のN極からL極に向かって電力供給されている間、制御開始からFSRD信号が出力されている間は減少し続ける。コンデンサ111は、FSRD信号が出力されなくなると、電荷残量に変化はなく維持される。第2半波で、交流電源100のL極からN極に向かって電力供給されている際、FSRD信号が出力されている間、コンデンサ111の電荷残量は、減少し続ける。
【0046】
第2半波でコンデンサ111の電荷残量が減少して、トライアック56のゲート電流Igを供給するのに必要な電荷量であるVthを下回ると、トライアック56がオフする。トライアック56がオフすると、ヒータ54に電流供給することができなくなる。その後、FSRD信号が停止すると、コンデンサ111の電荷残量は、充電されて第2半波が終了するまで上昇する。その後、第1半波、第2半波と同様に動作するが、コンデンサ111においては、FSRD信号の出力による電荷減少に対して、充電による電荷上昇量が不足する。このため、トライアック56にゲート電流Igが供給できないままとなって、トライアック56はオフしたままとなり、FSRD信号が出力されてもヒータ54に電流Iは供給されない。
【0047】
このように、図6では、1半波内にFSRD信号を長時間出力し続けるため、交流電源100にノイズが重畳しても、トライアック56はすぐにオン状態に復帰する。しかし、コンデンサ111の電荷減少量が大きく、ゲート電流Igを供給するのに必要な電荷量Vthを下回ると、第2半波以降、ヒータ54にヒータ電流Iが供給されなくなってしまう。
【0048】
図7は、CPU94が1半波内でFSRD信号を、複数回に分けて同位相で出力している場合の動作を示すタイミングチャートである。FSRD信号を出力するまでの動作は、前述と同様であり、説明を省略する。FSRD信号は、1半波の始めから、200μs間出力され、2ms間隔をあけて、再度200μs間出力される。第2半波でコンデンサ111の電荷残量は、FSRD信号が出力されている間減少し続ける。他の動作は、図6と同様である。ヒータ電流Iは、1半波の始めにFSRD信号が出力されるとトライアック56がオンされるため、供給される。しかしながら、FSRD信号が1半波で2回目に出力した後、ローレベルに遷移し、半波のゼロクロス点から、tn1(s)後に交流電源100に重畳されたノイズが発生すると、トライアック56はオフしてしまう。
【0049】
このように、図7では、1半波内のFSRD信号の出力時間が短いため、コンデンサ111の電荷残量の減少が少ない。このため、コンデンサ111の電荷残量は、トライアック56のゲート電流Iを供給するのに必要なVth以上に維持される。しかし、交流電源100に重畳したノイズがあると、ノイズ以降、トライアック56はオフ状態となり、ヒータ54へのヒータ電流Iが供給されなくなってしまう。
【0050】
[実施例1のタイミングチャート]
図8は、実施例1の、交流電源100、ZEROX信号、CPU94内部補正後のZEROX信号、コンデンサ111の電荷残量、FSRD信号、ヒータ54へ供給されるヒータ電流Iが動作する様子を示したタイミングチャートである。図8の(i)~(vi)は、図6図7と同様のチャートである。図8において、CPU94が、前述の図5の電力制御テーブル内の電力供給レベル8/8(100%)を選択して制御する場合の電力制御周期(1周期8半波)の動作を示している。CPU内部補正後のZEROX信号を生成するまでの動作は、前述の動作と同様であり、説明を省略する。
【0051】
(FSRD信号)
まず、実施例1のFSRD信号の動作について説明する。実施例1では、FSRD信号は、CPU94から200μs間、1半波内で2回に分けて出力される。1半波内で1回目にFSRD信号がCPU94から出力されるタイミングは、ゼロクロス点から200μsの間である。2回目にCPU94からFSRD信号が出力されるタイミングは、ゼロクロス点から第1の位相であるt3秒後の場合と、第2の位相であるt4秒後の場合の、2種類であり、どちらも200μs間出力される。どちらが1半波内で2回目に出力されるかは、前述の電力制御周期の区切りでCPU94によって更新・決定される。図8では、1半波内の2回目にCPU94から出力されるFSRD信号は、第1半波ではt3秒後、第2半波ではt4秒後、第3半波ではt3秒後、第4半波ではt4秒後・・・に出力される。すなわち、CPU94から出力されるFSRD信号は、1半波ごとにt3秒後→t4秒後→t3秒後、と、交互に1半波が電力供給されるごとに位相が変化しながら出力される。そして、電力制御周期(8半波)後に、前述の電力供給レベルと共に、CPU94によって再度更新される。実施例1では、t3=3.0msであり、t4=6.0msである。
【0052】
第1の半波である第1半波では、CPU94は、ゼロクロス点を基準として第1制御信号(1回目のFSRD信号)を第1時間(200μs)出力する。CPU94は、ゼロクロス点を基準として第1制御信号とは異なるタイミングで第2制御信号(2回目のFSRD信号)を第1時間出力する。第2の半波である第2半波では、CPU94は、ゼロクロス点を基準として第3制御信号(1回目のFSRD信号)を第1時間(200μs)出力する。CPU94は、ゼロクロス点を基準として第3制御信号とは異なるタイミングで第4制御信号(2回目のFSRD信号)を第1時間出力する。第2制御信号、第4制御信号(2回目のFSRD信号)は、複数の半波ごとに異なるタイミング(1半波目はt3、2半波目はt4等)で出力される。CPU94は、制御周期内の奇数番目の半波では第2制御信号をゼロクロス点から第2時間(例えばt3)のタイミングで出力し、制御周期内の偶数番目の半波では第4制御信号をゼロクロス点から第2時間とは異なる第3時間(t4)のタイミングで出力する。なお、制御周期内で奇数番目の半波は負極性の交流電圧、偶数番目の半波は正極性の交流電圧がそれぞれ出力されているが、コンデンサ111の放電、充電に応じて、奇数番目及び偶数番目と交流電圧の負極性及び正極性との関係は逆であってもよい。実施例1では、コンデンサ111が充電される交流電圧の正極性が、制御周期の偶数番目の半波となっている。
【0053】
(ヒータ電流I)
次にヒータ電流Iの動作について説明する。第1半波において、ヒータ電流Iは、前述の図4で説明したように、ゼロクロス点から、前述の1半波内の1回目にFSRD信号が出力されると、交流電源100から電力が供給される。ゼロクロス点からt3秒後に、FSRD信号が出力された際も、前述のようにトライアック56がターンオンした状態であり、そのまま、ヒータ54に電流が供給され続ける。ゼロクロス点からtn1秒後に、交流電源100にノイズが入ると、トライアック56がターンオフするため、ヒータ54へ電流が供給されなくなり、第1半波が終了するゼロクロス点まで、オフ状態となる。
【0054】
第2半波において、第1半波同様に、1回目にFSRD信号が出力されると、前述の電力供給回路によって、交流電源100からヒータ54へ電力が供給され、ヒータ電流Iが流れ始める。ゼロクロス点から、tn1秒後~tn2秒後までの期間は、交流電源100にノイズが重畳し、トライアック56がターンオフするため、ヒータ54への電力供給は無くなり、ヒータ電流は0(A)となる。第2半波の開始のゼロクロス点からt4秒後に、FSRD信号が再びCPU94から出力されると、前述の電力制御部97の動作によってトライアック56がターンオンする。これにより、再びヒータ54へ電力が供給されて、ヒータ電流Iが流れ始め、以降、第2半波の終わりまで、流れ続ける。
【0055】
以降同様に、第3半波から第8半波までは、第1半波及び第2半波と同様の動作を繰り返す。このように、半波ごとに、異なるタイミングでCPU94がFSRD信号を出力する。これにより、交流電源100にノイズが重畳していた場合にノイズによるトライアック56のターンオフによる影響を極力防ぎつつ、1つの電力制御周期全体では、ヒータ54への電力供給を実質連続的に制御することができる。
【0056】
(コンデンサの電荷量)
最後に、コンデンサ111の電荷量の変動について説明する。図8の初期状態では、コンデンサ111は一定程度に充電されている。FSRD信号がハイレベル状態で出力されると、前述の動作によりコンデンサ111からトライアック56のゲートに電流が流れ、電荷が減少する。第1、第3、第5、第7半波のように、交流電源100のN極側から電力が供給される場合は、コンデンサ111への電荷が充電されず、消費もしないため、FSRD信号が出力されていない期間は、値が保たれる。第1半波において、ゼロクロス点からt3秒後に、再びFSRD信号が出力されると、放電するため電荷が減少し、FSRD信号がローレベルに遷移すると、次のゼロクロス点まで値が一定値に保たれる。
【0057】
第2半波のゼロクロス点で、FSRD信号がハイレベル状態で出力されると、第1半波と同様に、コンデンサ111からトライアック56のゲートに電流が流れ、電荷が減少する。第2、第4、第6、第8半波のように、交流電源100のL極側からN極側へ電力が供給される場合は、コンデンサ111への電荷が充電される。このため、FSRD信号が出力されていない期間は、コンデンサ111が充電されて電荷残量の値が上昇する。第2半波において、ゼロクロス点から200μs間FSRD信号が出力された後、コンデンサ111の電荷残量は充電されて上昇する。ゼロクロス点からt4秒後にFSRD信号が200μs間、再度CPU94から出力されると、コンデンサ111の電荷残量はFSRD信号が出力されている間、放電するため電荷が減少する。FSRD信号が停止してローレベルに遷移すると、コンデンサ111は再び充電されて上昇する。
【0058】
第3半波以降も、第1半波及び第2半波と同様の動作を繰り返す。このように、従来の動作に対して、1半波内でのFSRD信号の出力時間が短いため、放電によるコンデンサ111の電荷残量値の減少を最小限に抑えることができる。また、コンデンサ111の電荷残量がトライアック56のゲート電流必要電荷量Vthを下回ることなく、電力制御を継続することができる。
【0059】
[実施例1の電力制御のフローチャート]
図9は、実施例1のCPU94の動作を示したフローチャートである。ステップ(以下、Sという)101でCPU94は、ゼロクロス回路部971から入力されたゼロクロス信号の立ち下がりエッジを検出する。S102でCPU94は、立ち下がりエッジからtf1秒後又はtf2秒後の、ゼロクロス信号の論理がローレベル(Low)か否かを判断する。S102でCPU94は、立ち下がりエッジからtf1秒後及びtf2秒後のゼロクロス信号の論理がいずれもハイレベルであると判断した場合、処理をS101に戻す。S102でCPU94は、立ち下がりエッジからtf1秒後又はtf2秒後の、ゼロクロス信号の論理がローレベルであると判断した場合、処理をS103に進める。
【0060】
S103でCPU94は、次に検出したゼロクロス信号の立ち上がり信号からtf3秒後以降の、次のゼロクロス信号の立ち上がりを検出する。S104でCPU94は、ゼロクロス信号の立ち上がりから次に検出した立ち上がりまでの時間に基づいて周期T(言い換えれば周波数)を算出する。S105でCPU94は、内部で周期Tのクロック信号を生成する。CPU94は、周期Tを算出した後、生成したクロック信号の位相を、予め定めた△tだけ早めたCPU内部補正後のZEROX信号を生成する。
【0061】
S106でCPU94は、前述のように定着温度センサ59から入力されたTh信号と予め定めた目標温度値とに基づいて、例えば図5の電力制御テーブルからヒータ54に入力する電力制御パターンを選定する。また、CPU94は、選定した電力制御パターンで、各半波でのFSRD信号の出力位相(出力パターン)を決定する。実施例1においては、N極からL極に電力供給する場合は、CPU94は、ゼロクロス点付近とゼロクロス点からt3秒後の2回のFSRD信号を1半波内に出力する。一方、L極からN極に電力供給する場合は、CPU94は、ゼロクロス点付近とゼロクロス点からt4秒後の2回のFSRD信号を1半波内に出力する。
【0062】
S107でCPU94は、電力制御を開始し、S106で選定した電力制御パターンから、次の半波でヒータ54へヒータ電流Iを供給するか否かを判断する。S107でCPU94は、次の半波でヒータ54へ電力を供給しないと判断した場合、処理をS111に進める。S111でCPU94は、電力制御周期が完了したか否かを判断する。S111でCPU94は、電力制御周期が完了していないと判断した場合、すなわち、電力制御周期が未だ継続する場合、処理をS107に戻す。S111でCPU94は、電力制御周期が完了したと判断した場合、処理をS112に進める。
【0063】
S107でCPU94は、次の半波でヒータ54へ電力を供給すると判断した場合、処理をS108に進める。S108でCPU94は、S106で決定したFSRD信号の出力位相から、次の半波でのFSRD信号をどちらの位相で出力するかを判断する。実施例1では、CPU94は、ゼロクロス点付近と、ゼロクロス点からt3秒後の2回出力するか否かを判断する。S108でCPU94は、2回目のFSRD信号の出力位相がt3秒後であると判断した場合、処理をS109に進め、t3秒後ではないと判断した場合、処理をS110に進める。
【0064】
S109でCPU94は、交流電源100のN極からL極に向けてヒータ54へ電力供給する場合は、ゼロクロス点付近と、ゼロクロス点からt3秒後にし、FSRD信号を1半波で2回出力し、処理をS111に進める。S110でCPU94は、交流電源100のL極からN極に向けてヒータ54へ電力供給する場合は、ゼロクロス点付近と、ゼロクロス点からt4秒後にし、FSRD信号を1半波で2回出力し、処理をS111に進める。
【0065】
S112でCPU94は、ヒータ54への電力供給制御が完了したか否かを判断する。S112でCPU94は、電力供給制御が完了していないと判断した場合、すなわち、ヒータ54への電力供給制御を未だ継続する場合は、処理をS106に戻す。S112でCPU94は、電力供給制御が完了したと判断した場合、FSRD信号をローレベルに遷移させたまま制御を終了する。
【0066】
以上説明したように、実施例1では、1半波内で、必要最小限の時間で、FSRD信号の位相を変化させながら出力する。これにより、コンデンサ111の電荷が減少するのを防ぎつつ、必要な電荷量を維持しながら、交流電源100に重畳されたノイズでトライアック56がオフしてしまう時間を極力最小限にして、電力制御周期では実質連続的にヒータ54への電力供給を継続する。
【0067】
以上、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることができる。
【実施例2】
【0068】
実施例1では、短時間のFSRD信号を1半波内で2回出力し、2回目に出力するFSRD信号の位相を1半波毎に変化させた。これにより、コンデンサ111の電荷の減少量を抑えて、交流電源100にノイズが重畳した場合の影響を極力防いだ。実施例2では、実施例1に対して、前述の図3の抵抗120(以下、充電抵抗120という)の発熱を抑制する構成として、充電抵抗120の抵抗値が実施例1より大きい構成について説明する。充電抵抗120の抵抗値が大きくなると、充電抵抗120の発熱を抑制できるが、コンデンサ111に単位時間あたりに充電できる電荷量が少なくなる。このような、1半波でコンデンサ111に充電できる電荷量が少ない場合でも、電荷の減少量を抑えてトライアック56の電力制御を継続する方法について説明する。実施例2において、交流電源100は、100V50Hzの正弦波を出力する電源とする。また、実施例1の充電抵抗120が、5.4kΩに対して、実施例2では、13kΩである。他の回路動作は、実施例1と同様であり、実施例2では説明を省略する。
【0069】
[タイミングチャート]
図10は、実施例2の交流電源100、ZEROX信号、CPU94内部補正後のZEROX信号、コンデンサ111の電荷残量、FSRD信号、ヒータ54へ供給されるヒータ電流Iが動作する様子を示したタイミングチャートである。図10の(i)~(vi)は、図6図7と同様のタイミングチャートである。実施例2において、FSRD信号と、ヒータ電流I、コンデンサ111の電荷残量以外の動作は実施例1と同様であるため、実施例1と同様の説明は省略する。
【0070】
まず、FSRD信号と、ヒータ電流Iについて説明する。実施例2において、CPU94内部補正後のZEROX信号を生成し、前述の図5の電力制御テーブル内の電力供給レベル8/8(100%)をCPU94が選定し、電力制御周期(1周期8半波)で動作するまでは、実施例1と同様である。第1、第3、第5、第7半波において、CPU94は、前述の内部補正したZEROX信号に基づいて、ゼロクロス点から200μs間FSRD信号を出力する。その後、次の半波のゼロクロス点までFSRD信号をローレベルに遷移させて、出力を停止する。この点、第1、第3、第5、第7半波において、1つめのFSRD信号の出力からt3秒後に2つめのFSRD信号を出力した実施例1の制御と異なる。実施例2では、コンデンサ111が放電される方の半波で、FSRD信号の出力を少なく(具体的には1回に)している。
【0071】
すなわち、CPU94は、制御周期内の複数の半波ごとに駆動信号を出力する回数を異ならせる。CPU94は、制御周期内の奇数番目の半波(第1の半波)では、ゼロクロス点を基準として制御信号を1回(第1の回数)だけ第1時間出力(第1の回数出力)する。CPU94は、制御周期内の偶数番目の半波(第2の半波)では、ゼロクロス点を基準として制御信号を第1時間出力し、ゼロクロス点を基準として1回目の制御信号とは異なるタイミングで第2制御信号を第1時間出力する。すなわち、CPU94は、制御信号を2回(第2の回数)出力(第2の回数出力)する。なお、コンデンサ111が負極性の半波で充電される場合は、CPU94は、制御周期内の偶数番目の半波では、ゼロクロス点を基準として制御信号を1回だけ第1時間出力してもよい。そしてCPU94は、制御周期内の奇数番目の半波では、ゼロクロス点を基準として1回目の制御信号を第1時間出力し、ゼロクロス点を基準として1回目の制御信号とは異なるタイミングで2回目の制御信号を第1時間出力してもよい。すなわち、CPU94は、奇数番目の半波において2回の制御信号を出力してもよい。
【0072】
CPU94からFSRD信号が出力されると、前述の電力制御部97により、トライアック56がターンオンして、ヒータ電流Iが流れる。第1半波の始めのゼロクロス点からtn1秒後に、交流電源100に重畳したノイズが発生すると、トライアック56はターンオフして、次のゼロクロス点で第2半波の始めにFSRD信号が出力されるまでは、ヒータ電流Iが流れなくなる。第2、第4、第6、第8半波でのFSRD信号とヒータ電流Iの動作は、実施例1と同様である。すなわち、第2、第4、第6、第8半波において、1つめのFSRD信号の出力からt4秒後に2つめのFSRD信号が出力される。実施例2においても、実施例1と同様であり、tn1=4ms、tn2=6ms、t4=6msである。
【0073】
次に、コンデンサ111の電荷残量について説明する。第1半波及び第2半波において、破線部分は、実施例1で充電抵抗120が5.4kΩである場合の、コンデンサ111充電時の電荷残量の変化を示している。コンデンサ111の電荷残量は、第1半波において、FSRD信号が出力されている間は、電荷が放出されて電荷残量が減少し、FSRD信号が出力されていない間は、次のゼロクロス点まで変化せずに電荷残量が維持される。第2半波において、前述のようにゼロクロス点付近と、ゼロクロス点からt4秒後にFSRD信号が出力されている間は、コンデンサ111の電荷残量が減少する。FSRD信号が出力されていない場合は、コンデンサ111は充電されて、電荷残量が上昇する。
【0074】
実施例2では、実施例1よりも単位時間あたりに充電できる電荷量が少ないため、第2半波でのコンデンサ111の電荷上昇量が少ない。すなわち、第2半波におけるコンデンサ111の電荷残量の上昇の傾きが実施例1の破線よりも実施例2の実線の方が緩やかである。しかし、第1半波でCPU94から出力されるFSRD信号の回数が少ないため、第2半波における制御が開始されたときのコンデンサ111の電荷残量が多くなる。このため、第2半波での単位時間あたりのコンデンサ111の充電量が小さくても、第2半波の制御が終了したときの電荷の減少が抑えられる。第3半波以降は、第1半波・第2半波と同様の動作を繰り返す。第8半波の制御が終了した時点でも、コンデンサ111の電荷残量が維持されて、トライアック56のゲート電流を流すのに必要な電荷量であるVthよりも上回る量のまま、次の電力制御周期に移行することができる。
【0075】
以上説明したように、実施例2では、必要最小限の時間幅で出力されるFSRD信号を、1半波毎に、出力回数を変化させながら出力する。このようにすることで、単位時間あたりの充電量が少ない場合でも、次のようにすることができる。すなわち、コンデンサ111の電荷が減少するのを防ぎつつ、必要な電荷量を維持しながら、交流電源100に重畳されたノイズにより、トライアック56がオフする影響を極力最小限にして、実質に連続的にヒータ54への電力供給を行うことができる。さらに、充電抵抗120の発熱も低減することができる。
【0076】
以上、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることができる。
【実施例3】
【0077】
実施例2では、短時間のFSRD信号を、1半波毎に、出力回数を変化させながら出力した。これにより、充電抵抗120の発熱を抑制しつつ、必要な電荷量を維持して、交流電源100のノイズによる影響を極力最小限にして、ヒータ54へ電力供給をする制御する構成について説明した。実施例3では、短時間のFSRD信号を1半波毎に、出力回数を変化させ、かつ、出力する位相も変化させる制御について説明する。充電抵抗120の発熱を抑制しつつも、FSRD信号の位相が、交流電源100のノイズの位相に一致してしまった場合でも、FSRD信号の位相を変化させることで、1電力制御周期内でヒータ54への電力供給を継続する。
【0078】
[タイミングチャート]
図11は、実施例3の動作を示すタイミングチャートであり、図11の(i)~(vi)は、図6図7と同様のタイミングチャートである。周波数50Hzの交流電源100には、ゼロクロス点からtn1=4.5msから、tn3=7.0msまでの間、ノイズが重畳している。すなわち、実施例1、2よりも、ノイズが重畳する時間が長くなっている。それ以外のCPU内部補正後のZEROX信号を生成するまでの動作は、実施例1及び実施例2と同様であり、同様の説明を省略する。
【0079】
まず、FSRD信号とヒータ電流Iの動作について説明する。第1半波では、CPU94はゼロクロス点から200μs間、FSRD信号を出力する。CPU94がFSRD信号を出力すると、トライアック56がターンオンして前述の電力制御部97により、ヒータ54へ電流Iが流れる。ゼロクロス点からtn1秒後に、交流電源100にノイズが重畳すると、トライアック56がターンオフして、ヒータ54への電力供給が停止し、ヒータ電流Iは、次のゼロクロス点まで0になる。
【0080】
第2半波において、第1半波と同様に、CPU94はゼロクロス点から200μs間FSRD信号を出力し、再度、トライアック56がターンオンして、ヒータ電流Iが流れ始める。ゼロクロス点からtn1秒後に、交流電源100にノイズが重畳すると、トライアック56がターンオフし、ヒータ54への電力供給が停止する。tn3秒後までにはノイズが無くなり、CPU94がt5秒後にFSRD信号を出力すると、再び電力制御部97の動作によりトライアック56がオン状態となって、次のゼロクロス点までヒータ電流Iが流れ続ける。
【0081】
第3半波は、第1半波と同様に動作する。第4半波では、第1から第3半波までと同様に、ゼロクロス点付近でCPU94からFSRD信号が出力されて、トライアック56がオン状態となり、ヒータ電流Iが流れ始める。ゼロクロス点からtn1秒後に交流電源100にノイズが重畳すると、トライアック56がオフ状態となってヒータ電流Iは遮断されて0(A)になる。
【0082】
第4半波で、CPU94は2回目のFSRD信号を位相を変えて、すなわち、ゼロクロス点からt4秒後にFSRD信号を200μs間出力する。しかし、交流電源100にノイズが重畳して0Vであるため、トライアック56はオフ状態のままであり、ヒータ電流Iは流れない。FSRD信号が停止した後、ゼロクロス点からtn3秒後に交流電源100に重畳されたノイズが消えるが、トライアック56はtn1秒後にターンオフしたままであるため、次のゼロクロス点までヒータ電流Iは流れない。
【0083】
第5半波から第8半波までは、第1半波~第4半波と同様に動作する。実施例3では、tn1=4.5ms、tn3=7.0ms、t4=6.0ms、t5=7.0msである。第4、第8半波では、1半波内に2回目のFSRD信号が出力されている期間、交流電源100にノイズが重畳されていて、電力が供給されていないため、トライアック56をオンしても、ヒータ電流Iが流れない。一方、第2、第6半波では、1半波内のFSRD信号が、第4、第8半波とは異なる位相で出力されており、交流電源100に重畳したノイズの位相よりも後でFSRD信号が出力される。このため、交流電源100にノイズが重畳された後に、トライアック56がオンしてヒータ電流Iが流れる。CPU94は、実施例1と同様に、定着温度センサ59から、電力制御パターンを決定する際に、合わせてFSRD信号の出力方法を決定し、前述の制御動作を行う。
【0084】
このように、CPU94は、制御周期内の複数の半波ごとに駆動信号を出力する回数を異ならせる。かつ、CPU94は、駆動信号を複数回出力する半波では、ゼロクロス点を基準として第1制御信号を第1時間出力し、ゼロクロス点を基準として第1制御信号とは異なるタイミングで第2制御信号を第1時間出力する。第2制御信号は、第2制御信号が出力される半波ごとに異なるタイミングで出力される。CPU94は、制御周期内の奇数番目の半波では、ゼロクロス点を基準として1回だけ制御信号を第1時間出力する。CPU94は、制御周期内の偶数番目の半波では、ゼロクロス点を基準として第1制御信号を第1時間出力し、ゼロクロス点を基準として2回の制御信号を異なるタイミングでそれぞれ第1時間出力する。CPU94は、偶数番目の半波において、第2制御信号をゼロクロス点から第4時間(t5)のタイミングで出力する半波と、第4制御信号をゼロクロス点から第4時間とは異なる第5時間(t4)のタイミングで出力する半波とが交互になるように制御する。なお、偶数番目の半波において、第2制御信号が出力される半波ではゼロクロス点から第1制御信号が出力され、第4制御信号が出力される半波ではゼロクロス点から第3制御信号が出力される。
【0085】
なお、コンデンサ111が負極性の半波で充電される場合は、CPU94は、制御周期内の偶数番目の半波では、ゼロクロス点を基準として第1制御信号を第1時間出力してもよい。CPU94は、制御周期内の奇数番目の半波では、ゼロクロス点を基準として第1制御信号を第1時間出力し、ゼロクロス点を基準として第1制御信号とは異なるタイミングで第2制御信号を第1時間出力してもよい。CPU94は、奇数番目の半波において、第2制御信号をゼロクロス点から第4時間(t5)のタイミングで出力する半波と、第4制御信号をゼロクロス点から第5時間(t4)のタイミングで出力する半波とが交互になるように制御してもよい。
【0086】
次に、コンデンサ111の電荷残量の変化について説明する。図11の、第1、第3、第5、第7半波のように、交流電源100のN極からL極に向けて電力が供給され、1半波内でFSRD信号が出力されている期間は、コンデンサ111の電荷残量が減少する。一方、それ以外の期間では、コンデンサ111の電荷が維持され、コンデンサ111の電荷残量に変化はない。図11の第2、第4、第6、第8半波では、1半波内でFSRD信号が出力されている期間は、コンデンサ111の電荷残量が減少し、それ以外の期間は、前述の動作で、コンデンサ111の電荷が充電される。このため、コンデンサ111の電荷残量は上昇する。
【0087】
実施例3において、実施例2と同様に充電抵抗120は13kΩであり、実施例1よりも、単位時間あたりのコンデンサ111の電荷充電量が小さい。第1、第3、第5、第7半波において、FSRD信号は、短期間で1回のみ出力されており、コンデンサ111の電荷残量の減少が最小限に抑えられており、電力制御周期全体では、コンデンサ111の電荷残量が維持されている。このため、CPU94は、コンデンサ111の電荷残量を維持しながら、FSRD信号を出力してトライアック56のオン、オフの制御を継続することができ、かつ、充電抵抗120の発熱量も更に抑えることができる。
【0088】
以上説明したように、必要最小限の時間幅のFSRD信号を、1半波毎に、出力回数を変化させつつ、出力位相も変化させながら出力する。これにより、単位時間あたりの充電量が少ない場合でも、コンデンサ111の電荷が減少するのを防ぎつつ、必要な電荷量を維持しながら、次のようにすることができる。すなわち、交流電源100に重畳されたノイズにより、トライアック56がオフする影響を極力最小限にして、実質に連続的にヒータ54への電力供給を行うことができる。さらに、充電抵抗120の発熱も低減することができる。
【0089】
以上、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることができる。
【実施例4】
【0090】
実施例3では、短時間のFSRD信号を、1半波毎に、出力回数と位相を予め決めたパターンで変化させながら出力する制御構成について説明した。実施例4では、CPU94が1半波毎にFSRD信号を出力する位相をランダムに変化させる制御構成について説明する。CPU94は、制御周期内の半波ごとに、ゼロクロス点を基準としてランダムなタイミングで第2制御信号を出力する。CPU94はFSRD信号の出力する位相を、1半波毎にランダムに変化させる。これにより、交流電源100に重畳するノイズの位相が一時的に変化したりする場合でも、ノイズの位相とFSRD信号の出力位相とが重なることを極力防ぎつつ、ヒータ54への電力供給を継続して行うことができる。CPU94は、電力制御テーブルを決定する際に、FSRD信号の出力についても次のように決定する。CPU94は、半波を電力供給する場合、1半波内で出力する2回のFSRD信号のうち、1回目のFSRD信号はゼロクロス点付近、2回目のFSRD信号の位相はゼロクロス点から乱数で決めた位相で出力することを決定する。実施例4では、図5の電力供給レベル8/8(100%)を交流電源100からヒータ54へ供給する場合の動作について説明する。
【0091】
[タイミングチャート]
図12は、実施例4の動作を示すタイミングチャートであり、図12の(i)~(vi)は、図6図7と同様のタイミングチャートである。周波数50Hzの交流電源100には、第3半波と第4半波のみゼロクロス点からtn1=4.5msから、tn3=7.0msまでの間、ノイズが重畳している。第3半波と第4半波以外の半波には、実施例1と同様に、ゼロクロス点からtn1=4.5msから、tn2=5.5msまでの間、ノイズが重畳している。また、CPU内部補正後のZEROX信号を生成するまでの動作も実施例1と同様であり、実施例1と同様の説明を省略する。
【0092】
まず、FSRD信号とヒータ電流Iの動作について説明する。前述のように、CPU94は、電力制御テーブルの決定時に、FSRD信号の出力方法を決定する。CPU94は、決定したFSRD信号の出力方法に基づいて、第1半波から第8半波まで、ゼロクロス点付近から200μs間、1つめのFSRD信号を出力する。また、CPU94は、1半波内の2回目のFSRD信号については、第1半波から第8半波まで順に、ゼロクロス点から例えばt3秒後、t4秒後、t6秒後、t7秒後、t4秒後、t3秒後、t7秒後、t6秒後に200μs秒間出力する。実施例4において、t3=3.0ms、t4=6.0ms、t6=7.5ms、t7=8.0msである。
【0093】
つまり、第1半波と、第6半波は、1半波内2回目のFSRD信号が、交流電源100に重畳されたノイズ位相より前に出力される。第1半波と第6半波以外の半波では、交流電源100に重畳されたノイズの位相よりも後に、1半波内で2回目のFSRD信号が出力される。第1半波と第6半波では、ゼロクロス点付近でFSRD信号が出力されると、前述の電力制御部97によりトライアック56がターンオンして、ヒータ電流Iが流れる。交流電源100に、ゼロクロス点からtn1=4.5ms後に、ノイズが重畳すると、トライアック56がオフ状態となり、次のゼロクロス点までヒータ電流Iが流れなくなる。第1半波と第6半波以外の半波では、ゼロクロス点付近でFSRD信号が出力されると、ヒータ電流Iが流れ、交流電源100に、ゼロクロス点からtn1=4.5ms後に、ノイズが重畳すると、トライアック56がオフ状態となる点は同様に動作する。
【0094】
第1半波と第6半波以外の半波では、ゼロクロス点からtn2秒後又はtn3秒後に、交流電源ノイズがなくなった後、1半波内で2回目のFSRD信号が出力される。これにより、再度トライアック56がオン状態となって、ヒータ電流Iが流れて、次のゼロクロス点まで流れ続ける。
【0095】
このように、CPU94は、1半波内で2回目にFSRD信号が出力される位相をランダムに変化させて、交流電源100に重畳されたノイズの位相と、FSRD信号の位相が、一致してしまうことを極力避ける。これにより、1電力制御周期全体では、ヒータ54への電力供給を実質連続的に行うことが可能になる。
【0096】
次に、コンデンサ111の電荷残量の変化について説明する。交流電源100のN極からL極に電力が供給される場合、コンデンサ111の電荷残量は、FSRD信号が出力されている期間は、電荷が放出されて電荷残量が減少する。一方、FSRD信号が出力されていない期間は、次のゼロクロス点まで変化せずに電荷残量が維持される。交流電源100のL極からN極に電力が供給される場合、実施例1~3と同様に、FSRD信号が出力されている間は、コンデンサ111の電荷残量が減少し、FSRD信号が出力されていない場合は、コンデンサ111は充電されて、電荷残量が上昇する。1半波内で、2回のFSRD信号が出力されてコンデンサ111の電荷残量は減少するが、FSRD信号の出力時間幅は必要最小限である。このため、1つの電力制御周期が開始されたときと終了したときのコンデンサ111の電荷残量は同等以上であり、トライアック56のゲート電流Igを流すのに必要な電荷量Vth以上に充電されている。このため、継続してヒータ54への電力供給制御が可能である。
【0097】
以上説明したように、CPU94は、1半波毎に、FSRD信号の出力位相をランダムに変化させながら出力する。このようにすることで、必要な電荷量を維持しながら、交流電源100に重畳されたノイズにより、トライアック56がオフする影響を極力最小限にして、電力制御周期において、実質連続的にヒータ54への電力供給を行うことができる。
【0098】
以上、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることができる。
【実施例5】
【0099】
実施例5では、交流電源100がL極、N極の両極どちらから電力供給された場合でも、前述のZEROX信号を検出可能なゼロクロス回路を備える。実施例5では、交流電源100のノイズが発生した場合のみ、前述のFSRD信号を1半波で複数回出力する制御構成について説明する。必要な場合のみ、FSRD信号を1半波で複数回出力する。これにより、最小限のコンデンサ111の電荷使用量で充電抵抗120の発熱を抑制しながら前述のトライアック56を制御して、交流電源100に重畳したノイズの影響を極力防いで、ヒータ54への電力供給を継続する。
【0100】
[回路構成と動作]
図13は、実施例5の電力制御部97の全体概略図である。ゼロクロス回路部973は、交流電圧の両極性の半波を検知する。ゼロクロス回路部973において、フォトカプラ122は、交流電源100のL極からN極及びN極からL極の両極で動作する。フォトカプラ122以外は、実施例1と同様であり、説明を省略する。フォトカプラ122は、交流電源100のL極からN極に電力が供給された場合は、実施例1~4と同様に動作する。すなわち、フォトカプラ122のフォトダイオード122d1に電流が流れ発光する。
【0101】
交流電源100のN極からL極に電力が供給された場合は、L極からN極に電力が供給された場合と同様に、N極側から電力が供給され一定値以上の電圧になると、抵抗101を介してフォトカプラ122のフォトダイオード122d2に電流が流れて発光する。フォトダイオード122d2が発光すると、抵抗を介して接続された直流電圧Vcc1から、フォトカプラ122のフォトトランジスタ122tを介して、フォトカプラ122のコレクタ・エミッタ間、抵抗105、抵抗107からGNDへと電流が流れる。また、このとき、フォトカプラ122の受光電流は、抵抗105を介して、トランジスタ106のベース端子へと流れる。トランジスタ106のベース端子に電流が流れると、直流電圧Vcc1から抵抗104、トランジスタ106のコレクタ・エミッタへと電流が流れ、抵抗104とトランジスタ106のコレクタ端子との間の電位がCPU94にZEROX信号として入力される。それ以外の動作は、実施例1で説明したゼロクロス回路部971と同様に動作する。
【0102】
[タイミングチャート]
図14は、実施例5の動作を示したタイミングチャートであり、図14の(i)~(vi)は、図6図7と同様のタイミングチャートである。実施例5において、交流電源100には、第3半波~第6半波までは、実施例1と同様に、ゼロクロス点を基準としてtn1=4.5msからtn2=5.5msまでの間、ノイズが重畳しており、それ以外の半波には、ノイズがない。ゼロクロス信号は、交流電源100のN極からL極に電力が供給された場合と、L極からN極に電力が供給された場合の両方ともに、交流電源100から供給される電圧が、一定値以上の電圧値になると、ハイレベルからローレベルへ信号が変化する。それ以外のCPU内部補正後のZEROX信号を生成するまでは、実施例1と同様であり説明を省略する。
【0103】
まず、FSRD信号とヒータ電流Iの動作について説明する。第1、第2半波では、交流電源100に重畳されるノイズはない。CPU94は、ゼロクロス点から200μs間、FSRD信号を出力し、FSRD信号が出力されると、電力制御部97によりトライアック56がオンして、ヒータ電流Iが、次の半波のゼロクロス点まで流れる。
【0104】
第3半波から第6半波では、交流電源100のゼロクロス点を基準としてtn1=4.5msからtn2=5.5msまでの間、ノイズが重畳している。このため、ゼロクロス点から200μs間FSRD信号が出力されてトライアック56がオンし、ヒータ電流Iが流れるが、ゼロクロス点からtn1秒後に重畳したノイズによってトライアック56がオフしたまま、次のゼロクロス点までヒータ電流Iは流れない。
【0105】
また、第3半波から第6半波では、交流電源100に重畳したノイズにより、所定の半周期T/2以外のタイミングで、CPU94はZEROX信号を検出する。CPU94は、所定の半周期T/2以外のタイミングで、ZEROX信号を検出すると、次の半波でFSRD信号を出力する回数を1回から2回に変更する。例えば、CPU94は、第3半波で、所定の半周期T/2のタイミングでZEROX信号を検出したため、次の第4半波では2回のFSRD信号を出力する(図14中(ii)から(iv)への矢印)。第4~第6半波についても同様である。
【0106】
第4半波から第7半波では、前の半波で所定の半周期T/2以外のタイミングで、ZEROX信号を検出したため、CPU94は、ゼロクロス点付近で1回目、ゼロクロス点からt4秒後に2回目のFSRD信号を200μs間出力する。t4は、実施例2と同様の6.0msである。
【0107】
第4半波から第6半波では、交流電源100に重畳したノイズにより、ゼロクロス点からtn1秒後に、トライアック56がターンオフし、ヒータ電流Iは停止する。ゼロクロス点からt4秒後に、CPU94が2回目のFSRD信号を出力すると、再びトライアック56がオンし、ヒータ電流Iが流れる。
【0108】
第7半波では、FSRD信号が2回、CPU94から出力されるが、交流電源100にノイズは重畳されていない。このため、1回目のFSRD信号が出力され、トライアック56がオンしてヒータ電流Iが流れ始めると、次のゼロクロス点までヒータ電流Iは流れ続ける。第8半波では、CPU94は、前の半波である第7半波で、半周期T/2以外のZEROX信号を検出しなかったため、ゼロクロス点から200μs間の1回のみFSRD信号が出力される。FSRD信号が出力されて、トライアック56がオンすると、ヒータ電流Iが流れ始め、次のゼロクロス点まで流れ続ける。
【0109】
実施例5のCPU94は、ゼロクロス点を基準として1つの制御信号を第1時間出力し、ゼロクロス回路部973の検知結果に基づいてゼロクロス点を基準として第1制御信号とは異なるタイミングで制御信号を第1時間出力するか否かを決定する。CPU94は、所定の半波内で交流電圧の半周期とは異なるタイミングでゼロクロス回路部973によりゼロクロス点を検知した場合に、所定の半波の次の半波において複数の制御信号を出力する。
【0110】
このように、第1の半波において、ゼロクロス回路部973により1つのゼロクロス点が検知された場合、第1の半波以降の第2の半波において、1つの制御信号が出力される。第1の半波において、ゼロクロス回路部973により複数のゼロクロス点が検知された場合、第2の半波において、複数の制御信号が出力される。具体的には、CPU94は、所定の半周期T/2以外のタイミングでZEROX信号を検出すると、その次の半波では、FSRD信号を出力する回数を変化させる。具体的には、CPU94は、次の半波でFSRD信号を出力する回数を増やす。
【0111】
以上、交流電源とは別に配置した電源から双方向サイリスタのゲート電流を供給する回路において、コストアップを抑制しつつ、簡易的な手段で、交流電源の歪みやノイズによる影響を避けつつ、双方向サイリスタを連続制御し続けることができる。
【符号の説明】
【0112】
54 ヒータ
56 トライアック
94 CPU
111 コンデンサ
971 ゼロクロス回路部
972 駆動回路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14