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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】骨移植片代用品
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/10 20060101AFI20240508BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20240508BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20240508BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20240508BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61L27/10
A61L27/12
A61L27/34
A61L27/40
A61L27/56
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062671
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2019534244の分割
【原出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2022088628
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】16206784.7
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521542708
【氏名又は名称】コラジェン マトリックス,インク.
【氏名又は名称原語表記】Collagen Matrix, Inc.
【住所又は居所原語表記】15 Thornton Road, Oakland, NJ 07436, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス プフィスター
(72)【発明者】
【氏名】クアト リュフィユー
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0013973(US,A1)
【文献】特表2005-519676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0165540(US,A1)
【文献】特開2009-084147(JP,A)
【文献】特開2010-035827(JP,A)
【文献】特開昭60-142857(JP,A)
【文献】特開昭63-294864(JP,A)
【文献】特表平10-500343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生体適合性顆粒を含み、前記顆粒の少なくとも一部は、表面のくぼみを有する、生体内の欠損部の処置に使用される多孔質インプラント塊組成物であって、
個々の前記顆粒は、20m/g未満の比表面積を有し、かつ相互連結した細孔の網状構造を含み、
前記顆粒内の前記相互連結した細孔は、水銀圧入ポロシメトリーにより測定して、焼結粒子間で細孔の少なくとも75%の直径が約1μm~約10μmの間であることによって定義される、均質な表面気孔率を有し、
前記顆粒の少なくとも一部は、生体適合性ポリマーで被覆されており、かつ、前記生体適合性ポリマーの少なくとも一部を調整するのに十分な量の可塑剤が前記インプラント塊組成物中に含まれており、これにより、前記インプラント塊組成物は所望の形状に塑性変形可能であり、その後、前記インプラント塊組成物から可塑剤の少なくとも一部を除去することで硬化可能である、多孔質インプラント塊組成物。
【請求項2】
前記インプラント塊が合成物である、請求項1記載のインプラント塊組成物。
【請求項3】
前記生体適合性顆粒が、生体適合性セラミック、生体適合性ガラス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1または2記載のインプラント塊組成物。
【請求項4】
前記生体適合性顆粒が、酸化ケイ素、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【請求項5】
前記生体適合性顆粒が、リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム無水物、無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、オルトリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、α-リン酸三カルシウム、β-リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸ヒドロキシアパタイト、アパタイト、バイオガラス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項4記載のインプラント塊組成物。
【請求項6】
前記相互連結した細孔の網状構造が、細胞の組み込みを可能にする、請求項1から5までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【請求項7】
前記顆粒が、表面のくぼみを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【請求項8】
前記顆粒が、不規則な形状である、請求項1から7までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【請求項9】
前記顆粒が、不規則な表面を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【請求項10】
前記顆粒が、100μm~約4000μmのフェレット径を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【請求項11】
前記顆粒が、500μm~約1500μmのフェレット径を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のインプラント塊組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、骨欠損および抜歯創傷などの生体内の欠損部を処置するための多孔質インプラント塊組成物に関し、さらにその製造にも関する。より具体的には、本発明は、機械的に安定しているが、非常に多孔質の骨移植片代用品を可能にする新規な最適化された形状および細孔構造に関する。
【0002】
背景
骨補填材は、整形外科、歯科手術、外傷学および矯正などの多くの分野で重要である。このような骨補填材は、例えば、骨腫瘍の除去後に残った穴を埋めるため、骨折後の骨欠損部を埋めるため、抜歯後に残る空隙を埋めるため、歯科用または整形外科用インプラント埋入前に骨を増強するため、または抗生物質もしくは骨形成物質の担体として作用させるために使用される。
【0003】
骨補填材は、その由来に基づいて分類され得る、すなわち、生体自身の骨が使用される自家移植材料、および材料が別の供給源から来る骨移植片代用品である。特定の骨移植片代用品としては、同種移植片(ヒト由来)材料、異種移植片(動物由来)材料および合成材料が挙げられる。
【0004】
自家移植材料は、骨誘導性でかつ骨伝導性であり、優れた治癒力を有するが、採取できる量は限られており、ドナー部位の罹患率とそれに伴う疼痛は患者に頻繁に起こる。
【0005】
これらの理由から、骨移植片代用品が一般的に使用されている。同種移植片および異種移植片の骨は、骨伝導性であり、かつ天然の骨と似た骨構造を有する。しかしながら、病気が伝染する恐れがある。合成骨移植片は、病気の伝染の危険性を避けることができ、無制限の量で利用可能である。また、これらは、良好な骨伝導性のために骨移植片代用品を設計し最適化するための、より大きな自由度をもたらす。
【0006】
良好な骨伝導のためには、移植片の材料が骨壁に密着していることが重要である。これを達成するためには、骨移植片材料を手術中に必要な形状に直接形成できれば有利である。この理由から、骨移植片代用品は、いかなる欠損部の輪郭にも適応できる緩い顆粒として最もよく提供されている。
【0007】
同種移植片および異種移植片は、通常、小柱骨片からなり、多くの合成骨移植片代用品は、骨片の天然小柱構造を模倣しようとするが、これは、小柱構造が、骨片間の多くの空間を骨内方成長のために提供するからである。残念なことに、これらの小柱構造は、非常に壊れやすいので、それらを破壊することなく十分な圧力でそれらを必要な形状に形成することは大きな課題である。
【0008】
顆粒の安定性を増すために、壁を圧縮するか、顆粒内の気孔率を減らすことができる。しかしながら、どちらの方法でも、骨組織の内方成長が減少するか、または内方成長がなくなる。均質な内部気孔率を有する球形顆粒を使用すると、欠損部の中に入れる際に破損に対する抵抗が増すことがわかった。しかしながら、球形顆粒は、最適な骨内方成長にとって望ましい自然な粒間空間をあまり与えない。同一サイズの丸球を格子状に密集させて配置すると、計算され得る気孔率は、わずか26%である。小さな顆粒と大きな顆粒とを混ぜることで、これをさらに減らすことができる。国際公開第2005/107826号(WO-A-2005/107826)(Masperoら)に記載されているように、互いに固着する能力を有する500μm~1000μmの範囲内の球形顆粒を使用すると、40%の粒間空間が得られる。
【0009】
米国特許第6,302,913号明細書(US 6’302’913 B1)(Ripamontiら)では、本発明者らは、周囲組織に接近可能な表面凹部を有するインプラントの利点を記載している。彼らの研究は、「内因性骨誘導活性」と名付けられた空洞内での速い骨形成を示す。彼らは、特定の表面形状(サイズ300~3000μmの凹部)を提供するだけで、骨形成を引き起こすことができると示唆している。しかしながら、すべての研究は、ディスク、ロッドまたは歯科用インプラント表面の修正を用いて行われた。
【0010】
米国特許出願公開第2016/0184390号明細書(US-2016/0184390)には、カルシウムセラミック顆粒、骨伝導性タンパク質、および生体適合性マトリックスをベースにした合成骨移植片材料が記載されている。カルシウムセラミック顆粒は、生体適合性マトリックス内に配置されており、比表面積は、約30m/gより大きい。
【0011】
したがって、最適な骨再生結果を得るために望まれるのは、欠損部に入れた際に周囲の骨壁に接触することを可能にする顆粒状の材料である。顆粒は、好ましくは、挿入時に壊れないように機械的に安定している。顆粒は、好ましくは、水分吸収のために微孔質である。塊は、好ましくは、顆粒の間に大きな網目の細孔を有する相互連結された高度に多孔質の足場を形成する。理想的には、顆粒は、表面凹部を有し、好ましくは、互いに結合して機械的に安定した塊を作り出す。
【0012】
発明の概要
本発明によるインプラントは、骨伝導性生体適合性の骨移植片代用品を提供することによって上記の課題を解決する。骨移植片代用品は、減少した粒間空間の制限なく、球形多孔質顆粒の実質的に高い機械的安定性を兼ね備えている。顆粒内部の構造は、高い安定性を維持しながら高い気孔率を有しているので、顆粒の著しい破損を招くことなく顆粒を欠損部に押し込むことができ、同時に、骨細胞は顆粒間の空間に成長することができる。
【0013】
本発明の例示的な実施形態では、顆粒の外側から見た場合、顆粒の表面にはくぼみがある。くぼみは植え込まれた塊の中の気孔率を著しく増加させ、したがって組織の内方成長のために顆粒間により多くの空間をもたらす。顆粒上のくぼみにより、顆粒は、不規則な形状を有し、したがって機械的安定性を維持しながら、粒間空間の増加が達成される。
【0014】
本発明の一実施形態では、顆粒は、互いに結合している。それらは、生体適合性および吸収性の熱可塑性ポリマーの非常に薄い層で被覆されている。結合は、コーティングのガラス転移温度(Tg)を下げる溶剤または加圧COなどの可塑剤を使用することによって達成され得る。その後、顆粒状の塊を凝縮すると、コーティング同士が互いに圧着するか、またはある顆粒のコーティングが別の顆粒の塊になるだろう。顆粒が欠損部の中に押し込まれると、その塊は、欠損部の形状に適合し、したがって骨壁に適合し得る。可塑剤が塊から取り除かれて、Tgが再び上昇すると、前述の塊の硬化が起こり、したがって硬いインプラントが形成される。
【0015】
本発明の一実施形態では、顆粒は、塊内で最大の相互連結した気孔を可能にするためだけに、いくつかの接触点で一緒に結合されている。本発明によるかかるインプラント組成物は、骨組織の内方成長および再生を可能にする開放多孔質足場または複合マトリックスを形成する。
【0016】
一実施形態では、顆粒は、20m/g未満、好ましくは10m/g未満、より好ましくは5m/g未満、最も好ましくは3m/g未満の比表面積を有する。
【0017】
本発明の一実施形態では、顆粒は、少なくとも1Nの平均圧縮力に耐えることができ、顆粒が挿入中に壊れないことを保証する。
【0018】
例示的な実施形態では、本発明の成形可能なインプラント組成物は、生体適合性ポリマーおよびポリマー用の可塑剤と混合された複数の生体適合性顆粒を含む。可塑剤は、インプラント塊を成形することができる(すなわち、塑性変形可能である)ように、生体適合性ポリマーの少なくとも一部を調整するのに十分な量で含まれる。インプラント塊は、骨欠損部に挿入することができ、そこでインプラント塊は、欠損部の形状をとるように変形することができる。成形可能なインプラント組成物は、インサイチュまたはエクスサイチュのいずれかで特定の形状を有するように変形、成形、および/または彫刻することができる。
【0019】
本発明の一実施形態では、可塑剤は、硬化剤と協働するように選択される。硬化剤を成形可能なインプラント組成物に適用すると、可塑剤の効果が中和され、インプラント組成物が硬化し、それによって適切な構造的支持をもたらす。例示的な実施形態では、可塑剤は、体液などの水溶液に部分的に可溶であり、その結果、体液は、可塑剤の少なくとも一部をインプラント組成物から抽出することによって、硬化剤として作用し得る。
【0020】
本発明の一態様では、軟化したインプラント組成物は、成形可能であるが、液体のように流動できるほど柔軟ではない(すなわち、流体ではないが、塑性変形可能である)。変形可能なインプラントの利点は、硬化剤がこれを凝固させるまで、その硬さによってインプラントを所望の形状に維持することができることである。
【0021】
本発明の別の実施形態では、インプラント組成物は、流動性であり、かつインプラント部位または成形型の形状をとることができる。この本発明の態様は、所望のインプラントの形状が複雑である場合および/または施術者が形成するのが困難である場合に有利であり得る。インプラントを流動可能にすることで、インプラント塊は、インプラント部位または成形型の形状を取りやすくなり得る。
【0022】
成形可能なインプラント組成物は、成形型を使ってエクスサイチュで成形することもできる。本発明の成形可能なインプラント組成物は、成形型の形状に容易に変形し、次いで硬化剤を使用して迅速に硬化することができる。本発明の方法に従って成形型内でインプラント組成物を成形し硬化させることで、外科手術中の貴重な時間を節約することができ、それによって費用およびリスクが低減される。例えば、抜歯後、エクスサイチュで成形型を使用して歯根のコピーを作り出すことができる。本発明のインプラントは、特定の状況に対して最良の方法を選択する能力を施術者に提供する。
【0023】
本発明の別の実施形態では、複数の顆粒は、大部分がリン酸カルシウムまたは他のカルシウムベースのミネラルで作られた骨組織適合性セラミックから形成される。本発明によるリン酸カルシウムセラミックで作られたインプラントは、(i)既存の骨組織との直接接着および結合を発達させる能力;(ii)細胞の機能と発現を促進する能力;(iii)新しい骨を形成するための足場または鋳型を用意する能力;および(iv)骨形成を促進し、生物活性物質の担体として作用する能力などの性能を示す。
【0024】
本発明の別の実施形態では、複数の顆粒は、β-リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、それらの混合物、または他の合成的に生成されたリン酸カルシウム相などの合成生体材料から形成される。
【0025】
本発明のこれら特徴および他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになる。
【0026】
図面の簡単な説明
本発明の上記および他の利点および特徴をさらに明確にするために、添付の図面に示されているその特定の実施形態を参照することによって、本発明のより詳細な説明が行われる。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すものであり、したがってその範囲を限定すると見なされるべきではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明に記載されているように修正することなく製造されたリン酸カルシウムを含む典型的な球形顆粒を示す。
図2a図2aは、顆粒のサイズに対して増加するサイズのくぼみを有する本発明による例示的なインプラント組成物を示し;顆粒は、様々なサイズ範囲内のポロゲンを用いて一定圧力で製造される。
図2b図2bは、顆粒のサイズに対して増加するサイズのくぼみを有する本発明による例示的なインプラント組成物を示し;顆粒は、様々なサイズ範囲内のポロゲンを用いて一定圧力で製造される。
図2c図2cは、顆粒のサイズに対して増加するサイズのくぼみを有する本発明による例示的なインプラント組成物を示し;顆粒は、様々なサイズ範囲内のポロゲンを用いて一定圧力で製造される。
図3図3aおよび3bは、顆粒が単一サイズ範囲内のポロゲンおよび様々な圧力を用いて製造される、本発明によるさらに例示的なインプラント組成物を図示する。
図4図4a~4dは、顆粒のサイズに対して増加するサイズのくぼみを有する円筒形顆粒を用いて製造されたサンプルを示し、ここで顆粒は、様々なサイズ範囲内のポロゲンを用いて一定圧力で製造される。
図5図5a~5cは、粒間空間の測定を説明する。
図6図6は、くぼみのない球形顆粒ならびに本明細書に記載されるような例示的なくぼみを有する顆粒の分析された粒間気孔率の結果を示す。
図7図7は、本発明による顆粒の破壊力が測定される適用される試験方法を示す。
図8図8は、市販の顆粒に対する本発明による顆粒の破壊力比較試験の結果を示す。
図9図9は、水銀圧入ポロシメトリーによる測定で、焼結粒子間の細孔の少なくとも75%が、約1~約10μmの直径を有することを示す。
【0028】
図面の詳細な説明
図2a~2cによれば、図1による顆粒は、外側からくぼみを加えることによって修正された。使用したポロゲンは、セルロース球であった。加えた圧力は、100MPaであった。これらの例示的な実施形態を作るために、異なるサイズの球形ポロゲン、すなわち図2aに示すように100~200μm、図2bに示すように200~355μm、および図2cに示すように355~500μmを使用した。
【0029】
図3aおよび3bによれば、図1による顆粒は、外側からくぼみを加えることによって修正された。使用したポロゲンは、セルロース球であった。ポロゲンのサイズは、355~500μmの範囲内になるように選択された。適用される圧力は、図3aに示すように10MPa、または図3bに示すように26MPaのいずれかであった。
【0030】
図4a~4dによれば、円筒形顆粒の小さなくぼみから大きなひずみまで、異なるサイズのセルロース球が円筒形顆粒に及ぼす影響が実証された。適用される圧力は、100MPaであり、使用されるセルロース球のサイズは、図4aに示されるように100~200μm、図4bに示されるように200~355μm、図4cに示されるように355~500μm、図4dに示されるように710~1000μmの範囲であるように選択された。
【0031】
図5a~5cによれば、粒間空間は、顆粒で充填された規定の円筒形容積を通して3D再構成マイクロCTスライスの画像分析によって測定された。顆粒内部の気孔率は測定されず、顆粒間の細孔のみが分析された。a)インプラント塊を通るマイクロCTスライス、b)画像のコントラストの調整による顆粒内の気孔の除去、c)3Dモデルの生成。粒間気孔率は、3Dモデルを使用して容積測定で計算される。
【0032】
図7によれば、平均サイズおよび平均形状の単一の顆粒が選択され、機械的試験装置に入れられた。10Nの荷重のセルが使用され、顆粒が破断するまで1mm/分の速度で顆粒に負荷がかけられた。
【0033】
図8によれば、結果は、本発明に従って製造された顆粒の機械的破壊力が、高度に多孔質の競合製品(Bio-Oss(登録商標)(Geistlich、スイス)、Cerasorb(登録商標)M(Curasan AG、独国)、BoneCeramic(商標)(Straumann、スイス))と比較して有意に高く、くぼみのない球形顆粒と比較して低減されていないことを示す。
【0034】
図9によれば、水銀圧入ポロシメトリー測定を用いて、本発明による顆粒において、顆粒内の焼結粒子間の細孔が均質であることを実証した。すなわち、細孔の少なくとも75%の平均直径は、約1~約10μmの間である。
【0035】
例示的な実施形態の説明
本発明の実施形態は、骨欠損または創傷を修復するための成形可能なインプラント組成物を含む。成形可能なインプラント組成物は、複数の粒子状顆粒から形成されている。生体適合性ポリマーは、顆粒の周りに配置されるか、または顆粒上にコーティングされる。顆粒およびポリマーを充填または凝集させてインプラント塊を形成し、ポリマーを可塑剤で軟化させてインプラント塊を成形可能または流動可能にする。インプラント塊は、特定の骨欠損部または構造上の空隙を埋める骨インプラントを形成するように成形または彫刻される。次に、インプラント組成物を、硬化させるか、または硬化を引き起こさせる。以下でより十分に説明されるように、(i)ポリマーを軟化させること、(ii)インプラント塊を形成すること、および(iii)インプラント塊を成形することの順序およびタイミングは、本発明の様々な実施形態に従って変わり得る。
【0036】
これまでのところ、(i)非破壊コーティング、および(ii)欠損部内への非破壊挿入および凝縮を可能にするためには、一定の機械的強度の顆粒が必要とされるので、かかるインプラント組成物は、球形顆粒を使用することによってしか製造できない。しかしながら、このことによって顆粒間の気孔率は制限され、インプラント塊の挿入後に組織が利用可能な開放空間の量は減少する。本発明によれば、本発明者らは、機械的特性を著しく低下させることなく、表面凹部を加えることによって粒子間の気孔をどのように増加させることができるかを見出した。
【0037】
I.インプラント組成物の成分
ここで、本発明によるインプラントの様々な成分について説明する。
【0038】
例示的な実施形態では、本発明は、生体適合性顆粒を含み、これはインプラント塊に構造的支持または生理学的利点をもたらす硬質物質である。顆粒は、合成材料、天然材料、高分子材料、または非高分子材料で作製され得る。一実施形態では、顆粒はまた、インプラントが経時的に分解するようにおよび/または天然の骨組織と交換されるように分解可能でもある。
【0039】
本発明の生体適合性顆粒は、合成生体適合性材料、例えば、生体高分子、バイオガラス、バイオセラミック、より好ましくは硫酸カルシウム、酸化ケイ素、リン酸カルシウム、例えば、リン酸一カルシウム一水和物、無水リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム無水物、無水リン酸二カルシウム、リン酸四カルシウム、オルトリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、α-リン酸三カルシウム、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、アパタイト、例えば、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはポリマー、例えば、ポリ(α-ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマート)、ポリ(アミノ酸)、ポリサッカライド、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン、またはそれらのコポリマー、それらのターポリマーまたはそれらのポリマーのブレンド、または生体適合性材料と分解性材料との組み合わせで作製され得る。
【0040】
本発明の生体適合性顆粒は、異種移植片もしくは同種移植片または他の動物もしくはヒト由来の硬質物質などの天然に存在する材料で作製され得る。当業者には明らかなように、かかる材料は、小さな粒子に粉砕することができ、次いで既知の造粒および焼結技術を用いて顆粒を作製することができる。
【0041】
リン酸カルシウムセラミックスは、生体適合性であり、かつ様々な生物医学的用途に使用され得る。ヒドロキシアパタイトおよびβ-TCPバイオセラミックスならびにそれで作製された二相性セラミックスは、骨のミネラル成分とイオン性が似ているので特に有用な材料である。また、それらの吸収速度を、特定の治療法のニーズに合わせて制御することができる。さらに、β-TCPは分解性であるため、生体内で吸収され、新しく形成された骨と交換することができる。
【0042】
本発明の別の実施形態では、顆粒は、顆粒内に相互連結した気孔を有し、これにより体液を取り込むことが可能になる。体液は、組織の再生を助けるタンパク質と因子を含む。多孔質の顆粒を使用することで、移植材料の量を減らし、より良好なインサイチュでの組み込みが可能になる。
【0043】
したがって、一実施形態では、細孔は、約1μm~約10μmの平均の均質な直径を有する。均質とは、顆粒が、水銀圧入ポロシメトリーによって測定して、細孔の少なくとも75%の直径が、約1~約10μmの直径を有することによって定義される均質な表面気孔率を有することを意味する。
【0044】
例示的な実施形態では、約100μm~約4000μm、好ましくは約500μm~約1000μmのフェレット径を有する生体適合性顆粒が選択される。
【0045】
フェレット径という用語は、顆粒が不規則な形状であり得ることを示すが、くぼみのある球形顆粒などの規則的な形状の顆粒を使用することが有利な場合もあり得る。用途によっては、球形顆粒を使用すると、取り扱いが容易になり、既知の容積のキャビティを満たすのに必要な量をより簡単に概算することができる。球形または他の規則的な形状および/またはサイズの顆粒は、隣接粒子間により均一な細孔構造または足場を形成する。しかしながら、整然とした構造の欠点は、粒間気孔率が低いことである。したがって、顆粒が不規則な形状を有する場合、これは有利になり得る。不規則な形状とは、実質的にいかなる顆粒も実質的に球形ではなく、例えば、ロッド、チップ、三脚の形の形状を有する、または、本発明により詳細に記載されているように、歪んだ顆粒であることを意味する。
【0046】
好ましくは、顆粒は、不規則な表面を有する。これは天然の骨構造をシミュレートし、骨細胞がより効果的にマトリックス中に成長するのを助ける。
【0047】
このような顆粒をどのようにして作製できるのかの一例を、以下に記載する。60%のヒドロキシアパタイト(HA)および40%のβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)の比率を有する二相性リン酸カルシウムの球形顆粒を形成するために、β-TCP155グラムおよび1μm~30μmの粒径を有するHA粉末232.5gを、セルロース112.5gとパウダーミキサーで混合した。連続的に撹拌しながら、250ミリリットルの脱イオン水を、粉末混合物にゆっくりと加えた。得られた塊を、マルチホール800μmノズルを通して押出し、ペレットラウンダー内で3分間球形化して、平均直径約350μm~約1000μmの顆粒を得た。その後、得られたグリーン体顆粒を、1100℃で8時間焼結した。
【0048】
球形顆粒の製造には、高剪断混合および流動層造粒などの他の方法も使用され得る。このような顆粒をどのようにして流動層造粒により作製できるのかの一例を、以下に記載する。β-TCPの顆粒を形成するために、1μm~30μmの粒径のβ-TCP粉末1.5キログラムを、セルロース500グラムと一緒に流動層造粒機に入れた。粉体混合物を、毎時160立方メートルの吸入空気流で流動化し、ポリビニルピロリドン溶液を容器に噴霧して、毎分50グラムの噴霧速度で粒子を凝集させた。25分後、約350μm~約1000μmの平均直径を有する顆粒が得られた。得られたβ-TCPのグリーン体顆粒を、その後、1100℃で8時間焼結した。
【0049】
本発明の範囲内で、顆粒は、規則的または不規則的な表面および形状を有し、くぼみを含む。好ましくは、くぼみは、凹部またはディンプルである。顆粒の表面のくぼみは、ポロゲンを、硬化していない状態で顆粒の表面に押し込むことによって得ることができる(上記の例では、これは焼結プロセスの前を意味するであろう)。ポロゲンの形状により、様々な形状のくぼみを得ることができる。好ましくは、ポロゲンは、凹状のくぼみをもたらすように球形である。凹面の特徴は、好ましくは顆粒の表面の少なくとも25%を覆う。より好ましくは、凹面の特徴は、好ましくは顆粒の表面の少なくとも50%を覆う(図2~4を参照)。
【0050】
好ましい実施形態によれば、複数の生体適合性顆粒を含み、その顆粒の少なくとも一部が表面のくぼみを有する、生体内の欠損部の修復に使用される多孔質インプラント組成物を製造する方法は、
- 顆粒を製造し、顆粒をポロゲンと混合すること;
- 顆粒の少なくとも一部の表面にポロゲンを押し込むこと;
- ポロゲンが顆粒と接触した表面にくぼみが残るように、ポロゲンをインプラント塊から除去すること
を含む。
【0051】
このようなくぼみをどのようにして球形顆粒の表面に生じさせ得るのかの一例を、以下に記載する。グリーン体顆粒は、製造直後から使用された。350~500μmのサイズ範囲内のセルロース球を、まだ濡れている球形のグリーン体と、ターブラミキサー(Turbula mixer)で、25rpmで7分間混合した。
【0052】
このようにして得られた混合物を、円筒形容器に充填し、油圧プレスで16~24MPaで2分間プレスした。セルロース球は、このようにしてグリーン体顆粒の表面に押し込まれた。くぼみのある顆粒は、次いで、乾燥棚で70℃で一晩乾燥された。得られたグリーン体顆粒を、その後、1100~1200℃で4~8時間焼結した。焼結後、顆粒を分級し、約500~1000μmの平均直径を有する顆粒が得られた。
【0053】
このようなくぼみをどのようにしてスティックの形の非球形顆粒の表面に生じさせ得るのかのさらなる例を、以下に記載する。丸みを帯びたものではなくオーブンで乾燥させたものであるが、上記のようなグリーン体顆粒を使用した。約100~1000μmの様々なサイズのセルロース球を、グリーン体と一緒に混合した。こうして得られた混合物を、円筒形容器に充填し、油圧プレスで100MPaで1分間2回プレスした。次に、こうして得られたくぼみのあるスティックを、乾燥棚で70℃で一晩乾燥させた。得られたグリーン体を、その後、1100~1200℃で4~8時間焼結した。
【0054】
本発明で使用され得るポロゲンは、燃焼、溶融、溶解、浸出または機械的除去によってインプラント組成物から除去可能な任意の天然または合成物質であり得る。最終製品中のポロゲンの残留物は、インプラント組成物の生体適合性を考慮して十分に低くなければならない。ポロゲンの例としては、ポリサッカライドおよびその誘導体、例えば、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(AQOAT)、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、クロスカルメロース、デンプン、加工デンプン;グリコール酸ナトリウムデンプン、アルファ化デンプンが挙げられる。例としては、合成ポリマーおよびそれで作られたコポリマー、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、シリコーン、ポリラクチドおよびポリグリコリドもあり得る。さらなる例としては、塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウムもあり得る。さらなる例としては、氷または凍結物質もあり得る。
【0055】
ポロゲンは、単独で使用するか、または必要に応じて、2種類以上の賦形剤と組み合わせて使用することもできる。好ましくは、塩は浸出によって除去することができ、ポリマーおよびポリサッカライドは燃焼によって除去することができ、凍結物質は溶融によって除去することができ、ポリマーは溶解によって除去することができる。
【0056】
この新規な方法によって達成された顆粒間の気孔率の増加を分析するために、顆粒で充填された規定の円筒形容積を通して3D再構成マイクロCTスライスの画像分析によって粒間気孔率を測定した(図5)。球状顆粒を含むインプラント組成物の粒間気孔率が40%であったのに対し、上記の実験を使用してくぼみを加えると、51%の粒間気孔率が生じ、これは27.5%の粒間気孔率の増加に相当する(図6)。
【0057】
顆粒の機械的安定性を測定するために、平均サイズおよび平均形状の単一の顆粒を選択し、機械試験装置に入れた(図7)。本発明による顆粒の機械的破壊力を、市販の顆粒と比較した。1製品につき少なくとも20粒の顆粒を試験した。結果は、以下の通りであった:競合製品、例えば異種の骨小柱形状の移植片材料Bio-Oss(登録商標)(Geistlich、スイス)、合成多孔性Cerasorb(登録商標)M(Curasan、独国)ならびに合成骨小柱形状のBoneCeramic(商標)(Straumann、スイス)は、平均1Nをはるかに下回る破壊力を示した。顆粒の中心部に内部気孔が集中した球形の顆粒は、平均1.5Nの破壊力を示した。本発明に記載の方法は、破壊時の力を低下させることなく、粒間気孔率を40%から51%に増加させた。
【0058】
結果は、本発明に従って製造された顆粒が、高度に多孔質の競合製品と比較し、くぼみのない球形顆粒と比較して著しく低減されていない、有意に高い平均機械的破壊力を有することを示す。
【0059】
本発明のインプラント組成物は、インプラント塊を形成するために顆粒の周りに配置された生体適合性ポリマーも含み得る。一実施形態では、顆粒の一部または全部が生体適合性ポリマーでコーティングされている。例示的な実施形態では、生体適合性ポリマーは、インプラントが新しく形成された生体組織によって置き換えられる際に体内への吸収を促進するように分解性でもある。
【0060】
本発明での使用に適した生体適合性および好ましくは吸収性ポリマーとしては、ポリ(α-ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリサッカライド、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン、またはそれらのコポリマー、ターポリマー、またはそれらのポリマーのブレンドが挙げられる。
【0061】
合成生体適合性顆粒は、好ましくは流動層装置でスプレーコーティングされ得るか、または所望の生体適合性ポリマーで浸漬コーティングされ得る。双方の方法により、有利な特性を有する生体適合性顆粒がもたらされる。
【0062】
流動層装置でのスプレーコーティングプロセスにより、非常に高速かつ経済的な方法で、ほぼ同一のポリマーコーティングされた生体適合性顆粒を多数製造することができる。流動層プロセスを使用すると、コーティング層の厚さを制御し、互いに異なる複数のコーティング層を有する生体適合性顆粒を製造することができる。流動層装置でコーティングすることにより、均質でかつ連続的なコーティングが得られる。コーティングプロセスの間、顆粒は、互いにくっつかないので、極めて不均質なサイズ分布およびコーティング厚さにつながり得る望ましくない凝集物の形成が回避される。
【0063】
可塑剤または生物学的活性物質などの添加剤のコーティングへの組み込みは、流動層装置により容易に制御され得る。したがって、各顆粒には、同量の生物学的活性物質が装填されている。コーティングの厚さも容易に制御される。したがって、組み込まれた生物学的活性物質の放出も予測可能であり、十分に制御される。
【0064】
生体適合性顆粒のコーティングは、様々な平均厚さの1つ以上の層を含み得る。本発明のこの実施形態は、特定の目的のためにいくつかのコーティングを有する生体適合性顆粒を提供することを可能にする。最も外側の分解性コーティングは、一定の望ましい分解性の遅れに従って選択され得る。これにより、例えば、生物学的活性物質の送達を遅らせることができる。したがって、合成生体適合性顆粒は、それぞれが分解性であり、かつ特定の効果を発揮する異なるコーティングでコーティングされ得る。
【0065】
生体適合性ポリマーコーティングは、好ましくは約1μm~約300μm、好ましくは約5μm~約30μmの厚さを有する。顆粒のコーティング厚さは、可塑剤または生物学的活性物質などの添加剤が装填され得る、インプラント塊の全重量の約4%~約20%のコーティング材料の重量分率として表すこともできる。当業者は、異なるコーティング溶液を選択し、コーティング時間を変えることによって、異なる厚さを有する様々なコーティング層が顆粒に適用され得ることを認識するであろう。
【0066】
コーティングされた顆粒で製造されたインプラントの機械的安定性は、コーティングの厚さと均質性に左右され得る。コーティング厚さが不十分であると、顆粒同士がくっつかなくなり得る。一方、コーティングが多すぎると、インプラントの劣化時にインプラント周辺のpHが低下し得る。コーティングの厚さがインプラントの性能に悪影響を与えるかどうかは、インプラントの用途に左右される。
【0067】
先に説明したように、インプラント塊を欠損部にうまく適合させるためには成形可能な塊を有することが有益である。このことは、可塑剤を生体適合性ポリマーに添加し、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を下げることにより達成され得る。一実施形態では、生体適合性ポリマーおよび可塑剤は、ポリマー-溶媒系で機能するように選択されている。生体適合性ポリマーは、特定の可塑剤に部分的に溶解または軟化した際に望ましい柔軟性と粘着性を有するように選択される。可塑剤が除去されると(例えば、蒸発または体内への拡散により)、生体適合性ポリマーは、硬化して硬い骨インプラントを形成する。ポリマーおよび可塑剤は、軟化し、硬化した際にインプラントに特定の剛性を与えるように選択される。可塑剤は、液体または加圧COなどの気体であり得る。
【0068】
可塑剤は、好ましくは生体適合性であるか、または非常に低い毒性を示すので、インプラントを患者の中に入れると、骨インプラント中で安全に存在することができる。適切な可塑剤としては、nメチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、乳酸エチル、酢酸エチル、ギ酸エチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、テトラヒドロフラン、トルエン、アルコール、および二酸化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本発明の可塑剤が、本発明の生体適合性ポリマーを調整する多くの他の溶媒の1つまたは溶媒の組み合わせであり得ることを認識するであろう。
【0069】
例示的な実施形態では、可塑剤は、混和性から分散性までの範囲の水性媒体に溶解性を有する溶媒である。したがって、可塑剤は、水性媒体中、または組織液などの体液、例えば、血清、リンパ液、脳脊髄液、および唾液中に拡散することが可能である。可塑剤がインプラント塊から拡散すると、骨インプラントは硬化する。このようにして、体液は、骨インプラント部位をインサイチュで固化するための硬化剤として使用され得る。
【0070】
骨インプラントはまた、ポリマーから可塑剤を引き出すことによってもエクスサイチュで硬化し得る。一実施形態では、可塑剤は、水に部分的に溶解するように選択される。インプラントを、成形型中などのエクスサイチュで成形すると、水をインプラントに入れて、それによって可塑剤を抽出し、骨インプラントを硬化させる。代替的に、可塑剤は、蒸発(例えば、加熱および/または真空の適用)によって除去することができる。
【0071】
特定の可塑剤への分解性ポリマーの溶解性または混和性は、結晶性、親水性、水素結合能、および分子量などの要因によって変わり得る。その結果、生体適合性ポリマーの分子量および濃度を調整して、可塑剤の溶解性を調整することができる。上記のように、成形可能なインプラントを形成するために、ポリマー-可塑剤系は、可塑剤がポリマーを軟化させるがポリマーを液化させず、それによって粘着性のある柔軟な塊を作り出すように設計されている。
【0072】
一実施形態では、ポリマー-溶媒系は、生体適合性ポリマーのTgを室温未満の温度に下げるように設計されている。例えば、PLGAのTgが約45~55℃から室温未満になるまで、アセトン、NMP、またはアルコールが、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)に添加される。同様に、40~65℃の範囲のTgを有する他のポリラクチドおよびそれらのコポリマーは、可塑剤を用いて室温未満に下げることができる。
【0073】
別の実施形態では、骨インプラントは、Tgより上で作製されるのであれば、可塑剤なしで形作るおよび/または成形することができる。したがって、この実施形態では、インプラントをTgより上に加熱して、インプラントを可塑剤なしで人または成形型に埋め込むために成形可能にすることができる。骨インプラントは、37℃より高い温度で成形された場合、温度が下がるにつれて硬化する。ポリマーのTgが体温(37℃)より高いことが前提条件であるが、これは上記のいくつかのポリマーの場合である。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、骨インプラントは、開放多孔質足場または複合マトリックスを形成するマクロ孔および/またはミクロ孔を有する。「開放多孔質足場」または「複合マトリックス」という用語は、固体または多孔質顆粒を含む顆粒状領域および顆粒状領域の隣接する顆粒間の空間または不連続部を含む開放された多孔質領域を画定するように一緒に結合または接合された顆粒の構造マトリックスを指す。開放多孔質領域は、少なくとも最初に空気または気体で満たされ得るか、または液体、固体粒子、ゲルなどで少なくとも部分的に満たされ得る。
【0075】
足場または複合マトリックスは、ポリマー顆粒および/またはコーティング顆粒などの顆粒状生体材料を一緒に融合することによって得ることができる。生体適合性インプラントの足場または複合マトリックスは、平均直径が約0超~約10μmのミクロ孔を有するくぼみのある顆粒で製造され得る。顆粒の融合により、微小孔が残り、かつ/または約10μm超~約2000μm、好ましくは約100μm~約500μmの平均直径を有するマクロ孔が顆粒間に形成される。
【0076】
場合によっては、コーティングされた顆粒とコーティングされていない顆粒の双方を含む、生体適合性足場または複合マトリックスを提供することが有利な場合があり得る。コーティングされた顆粒およびコーティングされていない顆粒は、それらが一緒に融合し、それでも必要な安定性を有するように完全に混合され得る。生体適合性インプラントの製造のためにコーティングされた顆粒とコーティングされていない顆粒との混合物を提供することで、分解しなければならないコーティング材料の量をさらに減らすことができる。
【0077】
骨インプラントの外側表面に膜を入れることもでき、これにより、軟組織の内方成長および/または汚染を防ぎ、外側表面から離れた再生のために空間を開放したままにする。生体適合性膜は、分解性ポリマーフィルム、ポリマーテキスタイル、ポリマーフリース、または相互接続された融合ポリマー粒子の層、あるいはそれらの組み合わせであることができ、インプラントにシールされ、したがって軟組織および上皮細胞に対して少なくとも1つの不浸透性の層を形成する。
【0078】
本発明の一実施形態では、膜は、ポリ(α-ヒドロキシエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテルエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エチレンフマレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリサッカライド、ポリペプチド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリウレタン、ポリ(リンゴ酸)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノン、またはそれらのコポリマー、ターポリマーまたはそれらのポリマーのブレンドを含む群から選択される合成の生体適合性および分解性のポリマーで作られている。
【0079】
細胞閉塞性も、顆粒またはコーティングされた顆粒を融合することにより実現され得る。大きな力が加わる場合、コーティングまたは結合しているポリマー粒子は、すべての粒子間の気孔を満たし得る。この目的のために使用される顆粒は、好ましくは約500μmより小さい、より好ましくは約1μm~200μmの間のサイズを有する。
【0080】
II.インプラント組成物の形成
上述のように、インプラント組成物の形成は、(i)成形可能(すなわち、塑性変形可能)であるインプラント塊を形成するようにポリマーを軟化させること;および(ii)成形可能なインプラント塊を(エクスサイチュまたはインサイチュで)所望の形状に成形することを含む。本発明の様々な実施形態では、これらの工程は、異なる順序でおよび/または同時に実施される。特に指定のない限り、「未成形」という用語は、患者の中で最終形状に達するために相当量の成形が必要なインプラント塊を意味する。「成形された」という用語は、患者の中でインプラントとして機能するのに成形がほとんどまたはまったく必要ないように十分に形作られたインプラントを意味する。
【0081】
例えば、未成形のインプラントの塊を形成し、次いで軟化させる。コーティングされた顆粒を、詰め込み、未成形のインプラント塊を形成する。インプラント塊は、可塑剤をほとんどまたはまったく有さないので硬い。未成形のインプラント塊は、インプラントの状態に影響を与えることなく容易に保管または出荷され得る。
【0082】
代替的に、インプラント塊は、液体可塑剤に浸される。インプラント塊の生体適合性ポリマーおよび可塑剤は、生体適合性ポリマーが可塑剤を吸収するように選択される。未成形のインプラント塊は、十分に成形可能になるために十分な量の可塑剤を吸収するまで、可塑剤中に残されるが、成形可能ではない石鹸のような液を生成するほど完全に溶解または軟化しない。
【0083】
代替的な実施形態では、最初は硬い未成形のインプラント塊を、可塑剤を用いて調整し、軟化した(または成形可能な)インプラント塊を得る。次に成形可能なインプラント塊を、成形型に押し込んで成形されたインプラント塊を形成する。成形型は、任意の所望の成形型キャビティ(例えば、抜き取り歯根の形状、シリンダーの形状、または他の規則的または不規則な形状)を有し得る。
【0084】
硬化剤を、成形型内の成形されたインプラント塊に、例えば、注射器を使って加える。硬化剤は、可塑剤を抽出または中和するために選択された液体である。一実施形態では、硬化剤は、可塑剤が溶解する物質である。したがって、硬化剤は、成形されたインプラント塊から可塑剤を引き出し、それによって硬化したインプラント組成物を形成する。例示的な実施形態では、硬化剤は、水である。最後に、硬化したインプラント塊を、成形型から取り出し、骨内の欠損部に入れる。
【0085】
別の実施形態では、インプラントは、骨欠損部の内側に少なくとも部分的に形成される。この実施形態では、ポリマーでコーティングされた顆粒を、可塑剤で軟化される前に骨欠損部に入れる。必要量のポリマーコーティング顆粒を骨欠損部または空隙に充填した後、可塑剤を空隙に注入する。可塑剤は、ポリマーの少なくとも一部を軟化させ、それによって顆粒は、互いに付着してインプラント塊を形成することができる。
【0086】
上記の各方法では、インプラント塊は、最終的に当業者に知られている方法で生体内に挿入される。
【0087】
したがって、本発明によれば、減少した粒間空間を制限することなく球形多孔質顆粒の高い機械的安定性を実質的に兼ね備えた骨移植片代用品が記載されている。顆粒内部の構造は、高い安定性を維持しながら高い気孔率を有しているので、顆粒の著しい破損を招くことなく顆粒を欠損部に押し込むことができ、同時に、骨細胞は顆粒間の空間に成長することができる。本発明の例示的な実施形態では、顆粒の外側から見た場合、顆粒の表面にはくぼみがある。くぼみは植え込まれた塊の中の気孔率を著しく増加させ、したがって組織の内方成長のために顆粒間により多くの空間をもたらす。顆粒上のくぼみにより、顆粒は、不規則な形状を有し、したがって機械的安定性を維持しながら、粒間空間の増加が達成される。
【0088】
本発明は、様々な実施形態を参照して上に説明されている。これらの具体的な実施形態の説明は、本発明の説明およびより深い理解のために役立つにすぎず、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲、および当業者に明らかであり、かつ一般的な発明の概念に従った等価物によって定義される。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9