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▶ スミスズ メディカル エーエスディー,インコーポレイティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】血管アクセスデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240508BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20240508BHJP
   A61M 39/02 20060101ALI20240508BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M25/06 554
A61M25/06 556
A61M25/09 530
A61M39/02
A61M39/06 110
A61M39/06 120
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022076398
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2019555434の分割
【原出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2022101702
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】62/485,797
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509280394
【氏名又は名称】スミスズ メディカル エーエスディー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エフ.ビアマン
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512132(JP,A)
【文献】特開平08-131552(JP,A)
【文献】特表2009-530057(JP,A)
【文献】特表2008-514286(JP,A)
【文献】特開2005-323813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/09
A61M 39/02
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体空間内に医療用物品を配置するためのアクセスデバイスであって、前記アクセスデバイスは
拡張器を含み、前記拡張器は
伸長した拡張器本体と、
前記伸長した拡張器本体から延在する拡張器ハブとを含み、前記拡張器ハブは遠位部分および近位部分を有する内部空洞を定め、前記アクセスデバイスはさらに
前記内部空洞に挿入されて前記遠位部分と近位部分とを連通する連通孔が形成された取り付け部材と、
前記取り付け部材に取り付けられて前記連通孔を開閉する開位置と閉位置とを有する弁構成要素を含み、前記弁構成要素が前記取り付け部材を通じて前記拡張器ハブと係合されるとともに、前記弁構成要素は
前記取り付け部材によって支持されるように構成された取り付け部分と、
前記内部空洞の側部から半径方向内向きに延在する封止部分とを含み、前記封止部分は前記閉位置に向かって付勢されており、
前記弁構成要素は、前記弁構成要素が前記閉位置にあるときに前記遠位部分と前記近位部分との間の流体の流れを妨げるように構成され、
前記弁構成要素は、前記拡張器に対して近位方向に前記拡張器ハブを通るガイドワイヤの移動を可能にする、アクセスデバイス。
【請求項2】
前記取り付け部材は、前記弁構成要素が閉位置にあるときに前記弁構成要素の前記封止部分に係合するように構成された中央ボアを含む、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項3】
前記取り付け部材は、前記内部空洞に圧入可能とされた、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項4】
前記弁構成要素は、前記内部空洞の前記遠位部分と前記内部空洞の前記近位部分との間に少なくとも部分的に配される、請求項1~3の何れか一項に記載のアクセスデバイス。
【請求項5】
前記封止部分は隆起部分を含む、請求項1~の何れか一項に記載のアクセスデバイス。
【請求項6】
前記弁構成要素が前記閉位置にあるとき、前記隆起部分は前記内部空洞の前記遠位部分内に延在する、請求項に記載のアクセスデバイス。
【請求項7】
前記隆起部分は実質的にドーム様の形状を含む、請求項またはに記載のアクセスデバイス。
【請求項8】
前記弁構成要素は折り線を含み、前記封止部分および前記取り付け部分は前記折り線に沿って互いに関して屈曲できる、請求項1~の何れか一項に記載のアクセスデバイス。
【請求項9】
前記弁構成要素は、長期間にわたって屈曲位置で保持されるときの冷間硬化の可能性を低減する特性を有する可撓性材料を含む、請求項1~の何れか一項に記載のアクセスデバイス。
【請求項10】
前記弁構成要素が前記閉位置にあるとき、前記拡張器に対する近位方向の前記ガイドワイヤの移動が妨げられる、請求項1~の何れか一項に記載のアクセスデバイス。
【請求項11】
シースをさらに含み、前記シースは前記拡張器に関して配されている、請求項1~10の何れか一項に記載のアクセスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<引用による援用>
2017年4月14日に出願された米国特許仮出願第62/485,797号の全体の内容は、本明細書においてその全体にわたって引用により援用され、本開示の一部を形成する。前述の仮特許出願における任意の実施形態に記載および/または例示される任意の特徴、構造、材料、方法、またはステップは、この明細書の以下の段落に記載され、かつ/または添付の図面において例示される任意の特徴、構造、材料、方法、またはステップとともに、またはその代わりに使用され得る。
【0002】
本開示は一般的に、たとえば動脈、静脈、血管、体腔、またはドレナージ部位などの身体空間に医療用物品(たとえばカテーテル、カニューレ、シースなど)を導入および/または送達するためのアクセスデバイスに向けられたものであり、より具体的には、1つまたはそれ以上の流体経路を実質的に封止するための弁部材を含むデバイスに向けられたものである。
【背景技術】
【0003】
患者に流体を送達するため、または患者から流体を抜き取るために、たとえばカテーテル、カニューレ、シースなどのさまざまな医療用デバイスが患者のたとえば動脈、静脈、体腔、またはドレナージ部位などにしばしば導入される。たとえば、セルジンガー(Seldinger)または修正セルジンガー技術を用いて、患者の血管にカテーテルまたは血管シースを導入できる。これらの技術は、患者の血管にアクセス針を挿入し、次いでその針を通じて血管へとガイドワイヤを挿入することを伴う。拡張器およびシースを組み合わせて、または別々にガイドワイヤを通じて組織から血管に挿入する。拡張器およびシースを挿入する前または後に針を除去できる。次いで、拡張器およびガイドワイヤが除去されて廃棄される。たとえば患者に医療用流体を送達するなどのために、シースを血管内に残すことができ、またはシースを通じて血管の所望の場所にカテーテルもしくはその他の医療用物品を挿入できる。
【0004】
セルジンガーまたは修正セルジンガー技術を行うためのさまざまなアクセスデバイスが公知である。いくつかのアクセスデバイスは、互いに関して同軸的に配された針、拡張器、および/またはシースを提供する。いくつかのこうしたデバイスは、血管アクセスを確認するための機構を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載されるアクセスデバイスは、有利には脈管構造内の医療用デバイス配置を安全に達成するための改善された機構を提供する。この開示の範囲を限定することなく、そのより顕著な特徴を簡単に考察することとする。この考察を検討後、特にこのセクションと組み合わせて以下の詳細な説明のセクションを読んだ後には、これらの実施形態の特徴および態様がどのようにして先行のアクセスデバイスを上回るいくつかの利点を提供するかが理解されるだろう。
【0006】
1つの態様は、身体空間内に医療用物品を配置するためのアクセスデバイスである。アクセスデバイスは、ハブと、遠位空洞部分および近位空洞部分を有する内部空洞を定めるハブから延在する伸長した拡張器本体とを有する拡張器を含む。アクセスデバイスはさらに、開位置と閉位置とを有する弁構成要素を含み、この弁構成要素は拡張器ハブによって支持されるように構成された取り付け部分と、内部空洞の側部から半径方向内向きに延在する封止部分とを含み、この封止部分は閉位置に向かって付勢されている。弁構成要素は、弁構成要素が閉位置にあるときに遠位空洞部分と近位空洞部分との間の流体の流れを妨げるように構成され得る。弁構成要素は、拡張器に対して遠位近位方向に拡張器ハブを通るガイドワイヤの移動を可能にできる。
【0007】
アクセスデバイスは、次の特徴の1つまたはそれ以上を含んでもよい。弁構成要素は、内部空洞の遠位部分と内部空洞の近位部分との間に少なくとも部分的に配され得る。封止部分は第1の封止表面を含むことができ、拡張器ハブは第2の封止表面を含むことができ、弁構成要素が閉位置にあるときに近位空洞部分から遠位空洞部分を実質的に封止するように第1の封止表面は第2の封止表面に接することができる。第1の封止表面および第2の封止表面の少なくとも一方は、内部空洞の内周全体にわたって延在できる。封止部分は隆起部分を含み得る。弁構成要素が閉位置にあるとき、隆起部分は内部空洞の遠位部分内に延在し得る。隆起部分は実質的にドーム様の形状を含み得る。弁構成要素は折り線を含むことができ、封止部分および取り付け部分はこの折り線に沿って互いに関して屈曲できる。弁構成要素は、長期間にわたって屈曲位置で保持されるときの冷間硬化の可能性を低減する特性を有する可撓性材料を含み得る。弁構成要素が閉位置にあるとき、拡張器に対する近位方向のガイドワイヤの移動が妨げられ得る。アクセスデバイスは、拡張器に関して配されたシースを含み得る。
【0008】
別の態様は、身体空間内に医療用物品を配置するためのアクセスデバイスである。アクセスデバイスは、ハブと、遠位空洞部分および近位空洞部分を有する内部空洞を定めるハブから延在する伸長した拡張器本体とを有する拡張器を含む。アクセスデバイスはさらに、拡張器に関して同軸的に配されたシースと、内部空洞内で支持されている取り付け部分および内部空洞内に延在する封止部分を含む弁構成要素とを含み、封止部分は第1の封止表面を含み、第1の封止表面は、拡張器本体から内部空洞の少なくとも一部分を実質的に封止するために、拡張器本体および拡張器ハブの少なくとも一方における第2の封止表面に接する第1の位置に向かって付勢され、針およびガイドワイヤの少なくとも一方が内部空洞を通って伸長されるときに、封止部分は第1の位置から第2の位置に移動可能である。
【0009】
アクセスデバイスは、次の特徴の1つまたはそれ以上を含んでもよい。弁構成要素は、内部空洞の遠位部分と内部空洞の近位部分との間に少なくとも部分的に配され得る。第1の封止表面および第2の封止表面の少なくとも一方は、内部空洞の内周全体にわたって延在できる。封止部分は隆起部分を含み得る。弁構成要素が第1の位置にあるとき、隆起部分は拡張器本体内に延在し得る。隆起部分は実質的にドーム様の形状を含み得る。弁構成要素は折り線を含むことができ、封止部分および取り付け部分はこの折り線に沿って互いに関して屈曲できる。弁構成要素は、長期間にわたって屈曲位置で保持されるときの冷間硬化の可能性を低減する特性を有する可撓性材料を含み得る。弁構成要素が閉位置にあるとき、拡張器に対する近位方向の針およびガイドワイヤの少なくとも一方の移動が妨げられ得る。
【0010】
1つの態様は、身体空間内に医療用物品を配置するためのアクセスデバイスを提供する方法である。この方法は、ハブと、遠位空洞部分および近位空洞部分を有する内部空洞を定めるハブから延在する伸長した拡張器本体とを有する拡張器を提供するステップを含む。拡張器はさらに、内部空洞内で支持されている取り付け部分および内部空洞内に延在する封止部分を含む弁構成要素を含むことができ、封止部分は第1の封止表面を含み、第1の封止表面は、拡張器本体から内部空洞の少なくとも一部分を実質的に封止するために、拡張器本体および拡張器ハブの少なくとも一方における第2の封止表面に接する第1の位置に向かって付勢され、針およびガイドワイヤの少なくとも一方が内部空洞を通って伸長されるときに、封止部分は第1の位置から第2の位置に移動可能である。この方法はさらに、拡張器に関して同軸的に配されるように構成されたシースを提供するステップを含み得る。
【0011】
アクセスデバイスは、次の特徴の1つまたはそれ以上を含んでもよい。弁構成要素は、内部空洞の遠位部分と内部空洞の近位部分との間に少なくとも部分的に配され得る。第1の封止表面および第2の封止表面の少なくとも一方は、内部空洞の内周全体にわたって延在できる。封止部分は隆起部分を含み得る。弁構成要素が第1の位置にあるとき、隆起部分は拡張器本体内に延在し得る。隆起部分は実質的にドーム様の形状を含み得る。弁構成要素は折り線を含むことができ、封止部分および取り付け部分はこの折り線に沿って互いに関して屈曲できる。弁構成要素は、長期間にわたって屈曲位置で保持されるときの冷間硬化の可能性を低減する特性を有する可撓性材料を含み得る。弁構成要素が閉位置にあるとき、拡張器に対する近位方向の針およびガイドワイヤの少なくとも一方の移動が妨げられ得る。
【0012】
この方法はさらに、次の特徴の1つまたはそれ以上を含むアクセスデバイスを提供するステップを含み得る。弁構成要素は、内部空洞の遠位部分と内部空洞の近位部分との間に少なくとも部分的に配され得る。第1の封止表面および第2の封止表面の少なくとも一方は、内部空洞の内周全体にわたって延在できる。封止部分は隆起部分を含み得る。弁構成要素が第1の位置にあるとき、隆起部分は拡張器本体内に延在し得る。隆起部分は実質的にドーム様の形状を含み得る。弁構成要素は折り線を含むことができ、封止部分および取り付け部分はこの折り線に沿って互いに関して屈曲できる。弁構成要素は、長期間にわたって屈曲位置で保持されるときの冷間硬化の可能性を低減する特性を有する可撓性材料を含み得る。弁構成要素が閉位置にあるとき、拡張器に対する近位方向の針およびガイドワイヤの少なくとも一方の移動が妨げられ得る。
【0013】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、添付の図面を参照して開示される実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるだろう。しかし、本発明は開示される特定の実施形態に限定されない。
【0014】
本発明の実施形態の前述およびその他の特徴、態様、および利点を、さまざまな実施形態の図面を参照しながら以下に詳細に説明しており、これらの図面は本発明の実施形態を限定するのではなく例示することが意図されている。図面は以下の図面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シースと同軸的に整列された拡張器を含むアクセスデバイスの実施形態の斜視図である。ガイドワイヤも示される。
図2A】患者への図1のガイドワイヤの挿入を容易にするために使用され得る針の側面図である。
図2B】2B-2B線に沿って取られた図2Aの針の側面断面図である。
図3A】弁構成要素を含む拡張器の側面図である。
図3B】3B-3B線に沿って取られた図3Aの拡張器の側面断面図である。
図4A】遠位方向に見た図3Aの拡張器の一部分の拡大斜視図である。拡張器は、弁構成要素を収容する内部空洞を含む。
図4B図3Bの4B-4B線に沿って取られた図3Aの拡張器の拡大側面断面図である。
図4C】遠位方向に見た図4Aの拡張器の端面図である。
図5】拡張器を通って伸長するガイドワイヤを有する図3Aの拡張器の側面断面図である。
図6A】遠位方向に見た図5の拡張器の一部分の拡大斜視図である。
図6B】6B-6B線に沿って取られた図5の拡張器の拡大側面断面図である。
図7】弁構成要素と係合した取り付け部材を含む拡張器ハブの実施形態の拡大側面断面図である。
図8A】遠位方向に見たシースの端面図である。
図8B図8Aのシースの側面図である。
図9】アクセスデバイスがガイドワイヤに通された後の、図8Aのシースに関して同軸的に配された図3Aの拡張器を含むアクセスデバイスの断面図である。
図10A】身体に貫入する図2Aの針の側面断面図である。
図10B】10B-10B線によって囲まれた図10Aの針の遠位端部の拡大側面断面図である。
図11A】針が脈管構造に貫入したときの図10Aの針の側面断面図である。
図11B】11B-11B線によって囲まれた図11Aの針の遠位端部の拡大側面断面図である。
図12】ガイドワイヤが針を通って患者の脈管構造内に供給されたときの図11Aの針の側面断面図である。
図13】ガイドワイヤが針に対して患者の脈管構造内に伸長されたときの図12の針の側面断面図である。
図14A図13のガイドワイヤの外側部分に沿って摺動された図9のアクセスデバイスの側面断面図であって、針はガイドワイヤが拡張器を通過するまでにすでに引き抜かれてガイドワイヤから外されている。
図14B】14B-14B線によって囲まれた図14Aのアクセスデバイスの一部分の拡大側面断面図である。
図15】アクセスデバイスがガイドワイヤの外側部分に沿ってさらに摺動されて患者の脈管構造に入ったときの図14Aのアクセスデバイスの側面断面図である。
図16】アクセスデバイスからガイドワイヤが引き抜かれたことによって拡張器の弁構成要素が閉位置に動いたときの図15のアクセスデバイスの側面断面図である。
図17】脈管構造およびシースから拡張器が引き抜かれたときの図16のアクセスデバイスの側面断面図である。
図18】カテーテルが患者の脈管構造への挿入のためにシースと整列されているときの図17のシースの側面断面図である。
図19】カテーテルがシースを通って患者の脈管構造に挿入されたときの図18のシースの側面断面図である。
図20】カテーテルを取り囲むシースを除去するためにシースの2つの部分が互いから引きはがされるときの図19のシースの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
さまざまな状況において、医師はたとえば血管またはドレナージ部位などの患者の体内の空間にカテーテルまたはシースを導入して、その空間に流体を導入したり、その空間から流体を除去したりすることを望むことがある。当該技術分野において、さまざまなアクセスデバイスが公知である。改善されたアクセスデバイスの例は、2014年3月12日に出願された「血管アクセスデバイス(VASCULAR ACCESS DEVICE)」と題する米国特許出願第14/207,120号、現在の米国特許第9,566,087号に記載されており、その全体の内容が本明細書において引用により援用され、この明細書の一部を形成する。米国特許第9,566,087号の図1Aおよび図1Bは、たとえば患者の血管にカテーテルまたはシースを導入するためのセルジンガーまたは修正セルジンガー技術の実行などに用いられ得るアクセスデバイス20を示している。本明細書において、アクセスデバイスは血管アクセスの状況において記載されているが、患者の体内の他の場所(例、ドレナージ部位)にアクセスして医療用物品(例、カテーテルまたはシース)を配置するため、および他の目的(例、膿瘍の排出)のためにもアクセスデバイスが用いられ得る。
【0017】
アクセスデバイスの本開示は、例示的な単一部品のチューブ状の医療用物品を患者の身体空間内に配置するという状況において開示される。配置されてから、次いでチューブ状の物品は、他の医療用物品(例、カテーテル、ガイドワイヤなど)を受取って身体空間内へのアクセスを提供するために用いられ、かつ/または身体空間に流体を導入するか、もしくは身体空間から流体を除去する(例、排出する)ための通路を提供するために用いられ得る。示される実施形態において、チューブ状の医療用物品は、主に静脈への流体通路を提供するように構成されたシースまたはカテーテルである。しかし、本発明の原理は単一部品のシースまたはカテーテルの配置にも、その後のシースまたはカテーテルを介した医療用物品の挿入にも限定されない。代わりに本開示に鑑みて、本明細書に開示されるアクセスデバイスは、他のタイプのシース、流体ドレナージ、および送達チューブ、ならびに単腔型または多腔型カテーテルを含む1つまたはそれ以上の他のタイプの医療用物品を患者の中に直接配置するか、または別の医療用物品を介して間接的に配置することにも関連してうまく使用され得ることが理解されるだろう。
【0018】
限定ではなくたとえば、本明細書に開示されるアクセスデバイスは、中心静脈カテーテル、末梢穿刺中心静脈カテーテル、血液透析カテーテル、手術用ドレナージチューブ、剥離シース、マルチピースシース、PICCライン、IVライン、スコープ、および外部または移植電子デバイスまたはセンサに接続されたワイヤまたはケーブルに対する電線用導管を直接または間接的に配置するように構成され得る。上に説明したとおり、上に挙げた医療用物品はアクセスデバイスの拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の中に直接配置されてもよいし、アクセスデバイスの拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の中に配置された医療用物品を介して後から患者の中に配置されてもよい。
【0019】
さらに、本明細書に開示される実施形態は、単一の医療用物品の同軸挿入に限定されない。たとえば、挿入されたシースを介して2つのカテーテルが患者に挿入されてもよいし、挿入された第1のカテーテルを介して第2のカテーテルが患者に挿入されてもよい。さらに、血管またはその他の身体空間に導管を提供することに加えて、拡張器、針、およびガイドワイヤを介して挿入された医療用物品が、その後に挿入される医療用物品のルーメンに対する付加的なルーメンを形成できる。当業者は、本明細書に開示されるデバイスおよびシステムに対する付加的な適用も見出し得る。よって、(例、微小穿刺適用に対する)シースに関連するアクセスデバイスの例示および説明は、アクセスデバイスの1つの可能な適用の単なる例である。
【0020】
図1は、シース26と同軸的に整列された拡張器24を含むアクセスデバイス20の実施形態の斜視図である。ガイドワイヤ28も示される。図1に示されるアクセスデバイス20の構成要素は、拡張器24およびシース26を含む。示される実施形態において、アクセスデバイス20はガイドワイヤ28も含む。シース26は拡張器24上に同軸的に装着され得る。アクセスデバイスの構成要素が入れ子式になる性質は、構成要素の軸を同軸的ではなく実質的に平行に配置して構成要素を配置することによっても達成され得る(例、モノレール型設計)。
【0021】
これらの構成要素の各々は、終端部または移行部における管腔取り付け具(例、ハブ)と、その取り付け具から延在する伸長した構造とを含む。よって、図3Aおよび図8Bに示される例示される実施形態において、拡張器24は拡張器ハブ38から遠位に延在する拡張器シャフト36を含み、シース26はシースハブ42から遠位に延在するシース本体40を含む。特定の実施形態において、ガイドワイヤ28はガイドワイヤハブまたはキャップを含む。
【0022】
図2Aは、図1のガイドワイヤ28の患者への挿入を容易にするために使用され得る針22の側面図である。図2Bは、2B-2B線に沿って取られた図2Aに示される実施形態の針22の側面断面図である。針22は、針本体32および針ハブ34を含む。図2Bに最もよくみられるとおり、針ハブ34は針本体32の近位端部に配される。針本体32は針22の遠位部分48の近くの遠位端部において終結しており、針ハブ34は針22の近位部分に位置する。
【0023】
針本体32は、円形の一定の直径の内部ボア54と、円形の一定の直径の外表面とを有する伸長したチューブ状の形状を有する。しかし他の実施形態において、針本体32は他のボアおよび外側形状を有し得る(たとえば楕円形の断面形状などであるが、これに限定されない)。針22の内部および外部は、溝またはチャネルも含み得る。この溝またはチャネルは、針ボア内の流体を針22の周りもしくはその特定の構造に誘導するか、または針22内(例、ガイドワイヤ28の周り)に誘導してもよい。いくつかの実施形態において、溝またはチャネルは、拡張器24に関する針22の所望の向きの維持を助けてもよい。
【0024】
針本体32は、標的とする皮下身体空間にアクセスするために十分に長い長さを有し、かつ身体空間にアクセスするときに過度の外傷をもたらすことなく挿入力に耐えるために十分なゲージサイズを有する。多くの適用に対して、針本体32は3cm~20cmの間(例、3cm~10cmの間)の長さを有し得る。たとえば、成人の胸部の身体空間(例、血管)にアクセスするために、針本体32は7cm以上の長さ、9cm以上の長さ、および/または9~10cmの長さを有する。針22のサイズは18ゲージ以下であり得る(例、18ゲージ~28ゲージの間または微小穿刺適用(末梢IV)に対して18ゲージ~26ゲージの間)。新生児による適用に対しては、針本体32の長さおよびゲージはたとえば3cm~4cmの間および26ゲージ~28ゲージの間など、有意により短く小さくすべきである。針本体32は、遠位部分48に配された斜角先端部52を有し得る。
【0025】
以下により詳細に説明されるとおり、ガイドワイヤ28は針ハブ34の中空部分68を通り、針本体32を通って、穿刺された血管に導入される。患者から針22を除去した後、残ったガイドワイヤ28は医療提供者が拡張器24およびシース26を血管内に誘導することを可能にする。
【0026】
図3Aは、図1のアクセスデバイス20とともに用いられ得る拡張器24の平面図であり、この拡張器24は弁構成要素300(図3Aには示さず)を含む。図3Bは、図3Aの3B-3B線に沿って取られた側面断面図であり、弁構成要素300を示す。示される拡張器24は拡張器シャフト36と、拡張器ハブ38と、遠位部分73および近位部分72を含む内部空洞74とを含む。
【0027】
図4Aは、弁構成要素300が閉位置にあるときの図3Aに示される拡張器ハブ38の一部分の拡大斜視図である。図4Bは、4B-4B線によって囲まれた図3Bに示される拡張器ハブ38の側面断面図である。図4Cは、遠位方向に見た図3Aに示される拡張器ハブ38の端面図である。拡張器24は内部空洞74を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載されるとおり、内部空洞74は弁構成要素300を収容するように構成される。内部空洞74は、弁構成要素300が拡張器ハブ38に収容され得るようにサイズおよび形状を定められ得る。しかし、弁構成要素300は拡張器ハブ38内に存在する必要はない。特定の実施形態においては、ガイドワイヤ28が弁構成要素300に沿って通る限り、弁構成要素300は拡張器24の近位端部(例、頂部)または拡張器24の外側に位置する。
【0028】
図3A図4Cを続けて参照して、弁構成要素300は、拡張器ハブ38の内部空洞74またはガイドワイヤが通過し得る拡張器内のその他の通路の少なくとも一部分を実質的に封止するように構成され得る。場合によっては、弁構成要素300が遠位部分73から近位部分72を実質的に封止するように構成され得るように、弁構成要素300が内部空洞74の近位部分72と内部空洞74の遠位部分73との間に位置決めされ得る。部分72、73はさまざまなサイズおよび形状の何れかを含むことができ、単なる例示の目的のためにほぼ円形の断面形状で示されている。いくつかの実施形態において、遠位部分73に対する弁構成要素300の封止を容易にするために、内部空洞74の遠位部分73は、近位部分72よりも小さい断面積を有する少なくとも領域を含む。この配置において、弁構成要素300は、近位方向に内部空洞74を通る物品(例、図5図6Bに示されるガイドワイヤ28)の通過を実質的に妨げることなく、遠位方向に内部空洞74を通る流体の流れを実質的に妨げることによって、一方向弁構造として構成され得る。
【0029】
図3B図6Bに示されるとおり、示される弁構成要素300は、拡張器ハブ38の少なくとも一部分と相互作用するように構成されたシースまたはディスク(例、本明細書に記載される封止表面75)を含む。弁構成要素300は、内部空洞74の少なくとも一部分を封止するために拡張器ハブ38の任意の部分の上に、それに接して、またはその周りに位置決めされ得る。弁構成要素300は、単一の単位本体で作られ得る。
【0030】
図3Bおよび図5にそれぞれ示されるとおり、弁構成要素は第1の構成および第2の構成(例、それぞれ閉位置および開位置)を有してもよい。弁構成要素300は、屈曲(flexation)、屈曲(flexing)、または弁構成要素300の封止部分308の屈曲を通じて、閉位置または実質的に封止された位置(例、図3B図4Cに示される)と、開位置または非封止位置(例、図5図6Bに示される)との間で屈曲または移動するように適合され得る。弁構成要素300は、拡張器ハブ38および/またはユーザによる動作を通じたデバイス(例、ガイドワイヤ28)の通過のために開位置と閉位置との間を動き得る。いくつかの実施形態において、弁構成要素300は、デバイス(例、ガイドワイヤ)が弁構成要素300に当接してそこを通って伸長するときに変形または移動が可能なエラストマー材料および/または可撓性構造を含み得る。
【0031】
図3Bに示されるとおり、弁構成要素300が第1の構成(例、閉位置)にあるとき、弁構成要素300は拡張器ハブ38の一部分に沿って配置されてもよい。たとえば閉位置にあるとき、封止部分308の遠位表面に位置する弁構成要素300の封止表面309は、拡張器ハブ38の近位に面する表面上に位置する拡張器ハブ38の対応する封止表面75と接触または別様に係合できる。それぞれの封止表面309、75の相互作用は、近位および/または遠位方向において内部空洞74を通る流体の通過を妨げるために十分であり得る。
【0032】
弁構成要素300は、封止部分308を支持する取り付け部分304を含み得る。封止部分308が内部空洞74内に(例、半径方向内向きに)延在して内部空洞74内の開口を実質的に封止できるように、取り付け部分304は拡張器ハブ38の一部分によって支持され得る。弁構成要素300の取り付け部分304は、封止部分308を支持するための十分な剛性を有するさまざまな材料の何れかを含み得る。本明細書に記載されるとおり、この材料は、封止部分308が開位置と閉位置との間で屈曲または移動することを可能にするために十分な可撓性を含んでもよい。取り付け部分304は、生体適合性の金属もしくはプラスチック、またはそのさまざまな複合体もしくは組み合わせも含み得る。取り付け部分304は、冷間硬化に対する感受性が低い材料を含み得る。たとえばいくつかの適用において、医療用物品は、弁の特徴(例、その可撓性および閉位置にあるときに内部空洞74を封止する能力)を損なうことなく、開位置の弁構成要素300によって内部空洞74を通って伸長でき、拡張器24内である期間ともに包装され得る。たとえば、アクセスデバイスは拡張器24内に同軸的に配されたガイドワイヤ28とともに予め組み立てられて包装され得る。
【0033】
弁構成要素300は、内部空洞74の遠位部分73から内部空洞74の近位部分72を実質的に封止するように、拡張器ハブ38の内部空洞74の任意の部分および/または長さに沿って延在して囲むようにサイズが定められて構成され得る。たとえば弁構成要素300は、内部空洞74の近位部分72の遠位端部において内部空洞74の遠位部分73の上に位置決めされてそれを囲むように構成され得る。弁構成要素300の取り付け部分304が拡張器ハブ38の第1の部分に沿って位置決めされ、かつ弁構成要素300の封止部分308が拡張器ハブ38の第2の部分に沿って位置決めされて、内部空洞74の遠位部分73を実質的に囲むように弁構成要素300が構成され得る。弁構成要素300は、開位置および/または閉位置にあるときに拡張器ハブ38に付着するように構成され得る。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されるとおり、弁構成要素300の取り付け部分304が少なくとも拡張器ハブ38に付着するための接着剤を含み得る。
【0034】
弁構成要素300は、弁構成要素300を閉位置に向けて付勢する回復力を含んでもよい。特に、回復力は封止表面309を封止表面75に押し付けることができる。いくつかの実施形態において、弁構成要素300が閉じられたときに血液が近位方向に弁構成要素300を通過することを妨げるためにヒトの血管に関連する圧力に耐えるように、この機構は十分に弾力的であり得る。このため、この機構は有利には、閉じられているときの弁構成要素300を通じた血液の損失を妨げる。この機構は、場合によってはデバイスが拡張器24を通じて挿入されるときに拡張器ハブ38内のデバイス(例、ガイドワイヤ)の配置を維持するために十分であってもよい(図5に示す)。たとえば、回復力は弁構成要素300をデバイスと係合させて、拡張器24に対するデバイスの意図されない動きを妨げることができる。
【0035】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されるとおり、弁構成要素300が閉位置にて前荷重されるように、封止部分308の封止表面309が拡張器ハブ38の封止表面75に接して前荷重されるように弁構成要素300が構成される。この付勢は、遠位および/または近位方向における物質の通過の上述の妨害を増強できる。この付勢は、弁構成要素300が内部空洞74内の近位および/または遠位方向(例、長手方向)におけるたとえば流体(例、血液または空気)の流れまたはデバイスの通過などの物質の通過を妨ぐことを助け得る。たとえば、閉位置に向かう付勢は、弁構成要素300を開くための近位および/または遠位方向の力(またはクラッキング圧)に抵抗するために十分に強くできる。いくつかの実施形態において、弁構成要素300の前荷重または付勢は、たとえば正常な脈拍の際にヒトによって生じる陰圧などによって気体が遠位に引かれて内部空洞74を通って患者に入ることを防ぐために十分であり得る。特に、血管に気体を引き込むことは、たとえば塞栓症などの深刻な健康への影響をもたらし得る。
【0036】
図5図3Bと同様の側面断面図であり、ここでは拡張器24およびシース26がガイドワイヤ28に通され、ガイドワイヤ28は弁構成要素300に当接してこれを通過して伸長し、弁構成要素300を閉位置から開位置に動かしている。図6Aは、弁構成要素が開位置にあるときの遠位方向に見た図5に示される拡張器ハブ38の一部分の拡大斜視図である。図6Bは、6B-6B線によって囲まれた図5に示される拡張器ハブ38の側面断面図である。示される実施形態において、拡張器24は、弁構成要素300がガイドワイヤ28と係合するまでガイドワイヤ28に対して遠位方向に摺動されている。ガイドワイヤ28が拡張器ハブ38を通過して弁構成要素300を通って伸長する際に、弁構成要素300の封止表面309はガイドワイヤ28の外表面と係合できる。
【0037】
本明細書において考察されるとおり、弁構成要素300は閉位置に向かって付勢され得る。閉位置に向かう弁構成要素300の付勢の程度は、拡張器24がガイドワイヤ28に通されるときにガイドワイヤ28が弁構成要素300を通って容易に摺動できるように選択され得る。特定の実施形態において、ガイドワイヤ28が最初に拡張器ハブ38に通されるときに、弁構成要素300はガイドワイヤ28の外側表面に当接してガイドワイヤ28を圧迫する。場合によっては、この付勢力が弁構成要素300に通されるガイドワイヤ28を有効に妨げるには不十分であってもよい。つまり、ガイドワイヤ28に対する弁構成要素300の付勢力は、弁構成要素300に対するガイドワイヤ28の動きをなおも可能にできる。たとえば、弁構成要素300はガイドワイヤ28が拡張器ハブ38に対して近位方向に拡張器ハブ38を通過することに十分に抵抗しなくてもよい。
【0038】
封止部分308は、たとえば封止表面309の少なくとも一部分に隣接し、かつ/または沿った実質的にドーム形状の部分などの隆起部分を含んでもよい。このドーム形状の部分は、デバイスが内部空洞74を通って通過および/または伸長するときの封止表面309とデバイス(例、ガイドワイヤ28)との間の接触の可能性を防止または低減できる。たとえば、拡張器24が内部空洞74を通って伸長するデバイスとともに保存されるとき、デバイスは隆起部分と直接係合および/または接触し、主に封止表面309と接触しなくてもよい。よって隆起部分は、保存中のデバイスとの長期間の強い接触によってもたらされる封止部分308の封止表面309の損傷を防ぐことができ、よって弁構成要素300の封止能力および寿命を延長できる。
【0039】
弁構成要素300の封止部分308は、封止表面75と接触するか、またはそれに接して付勢されるときに内部空洞74を実質的に封止できるさまざまな材料の何れかを含み得る。いくつかの実施形態において、封止部分308は金属、プラスチック、ゴム、またはその他の好適な生体適合性の材料、たとえばポリイソプレン、シリコーン、ポリウレタン、もしくはその他の弾性ポリマーなどを含み得る。いくつかの実施形態において、封止部分308はコートされるか、またはたとえば自身の表面に沿ったさまざまな構成要素(たとえばガイドワイヤ28)の低摩擦摺動を促進するためのシリコン処理表面などのその他の表面処理を含むことができる。場合によっては、弁構成要素300が任意には単一の単位部品となり得るように、取り付け部分304および封止部分308が同じ材料で形成され得る。いくつかの実施形態において、弁構成要素300は、閉位置に向かって弁構成要素300を付勢するように構成された別個の付勢構成要素を含み得る。
【0040】
弁構成要素300は、たとえば成形(例、射出)およびスタンピングなどのいくつかの異なるやり方で形成されることができ、かつ拡張器ハブ38とは別に、または一体的に形成され得る。取り付け部分304および封止部分308は、たとえば接着、結合(例、超音波、熱など)、留め具、およびオーバーモールドなどによるさまざまなやり方で互いおよび/または拡張器ハブ38に取り付けられ得る。取り付け部分304および/または封止部分308には、製造中の互いへの取り付けを容易にするために、下塗りもしくは付着防止コーティングまたは表面処理が適用され得る。上述の封止部分308の屈曲特性に関して、いくつかの実施形態においては、取り付け部分304と組み合わせる前に封止部分308が特定の機械的特徴を有するように前処理され得る。
【0041】
取り付け部分304によって示される弁構成要素300は、さまざまな手段によって拡張器ハブ38に取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、取り付け部分304は拡張器ハブ38に接着または結合され得る。他の実施形態において、取り付け部分304は成形またはオーバーモールドによって拡張器ハブ38に取り付けられ得る。さらなる実施形態において、取り付け部分304は拡張器ハブ38(またはその一部分)と一体的に成形され得る。一体的に形成されるとき、拡張器ハブ38がより高い剛性を維持するように、拡張器ハブ38に取り付け部分304よりも実質的に大きい厚さを与えることが望ましいかもしれない。他の実施形態において、取り付け部分304は機械的圧縮によって拡張器ハブ38に取り付けることができ、たとえば拡張器ハブ38が取り付け部分304を受取る溝を有して、所定の位置への圧入を可能にしてもよい。
【0042】
図7に示されるとおり、いくつかの実施形態においては、弁構成要素300が取り付け部材50を通じて拡張器ハブ38と係合してもよい。弁構成要素300は、拡張器ハブ38の内部空洞74に挿入された取り付け部材50に取り付けられてもよい。取り付け部材50は、弁構成要素300が閉位置にあるときに弁構成要素300の封止部分308に係合するように構成された中央ボアを含み得る。取り付け部材50の遠位に面する表面は、拡張器ハブ38の封止表面75と係合するために実質的に真っ直ぐまたは平坦であり得る。取り付け部材50は封止表面75に接して配置されるため、閉位置において封止部分308は封止表面75ではなく取り付け部材50に接して封止する。取り付け部材50は比較的軟質の材料で作られることができ、取り付け部材50の内部空洞74への圧入を可能にするために十分に軟質であり得る。
【0043】
取り付け部材50は、実質的に円形またはドーナツ形状であって、拡張器ハブ38内の自身の回転位置における可撓性を可能にできる。しかし他の実施形態において、取り付け部材50は拡張器ハブ38内に回転的に固定されることができ、すなわち非円形の挿入部と、拡張器ハブ38における対応する非円形の受け取り部分とによって固定され得る。さらに、取り付け部材50の外側端縁は拡張器ハブ38の封止表面75に実質的に適合するように成形されて、少なくともそれら2つの間からの流体の漏れを妨げる封止を形成できる。いくつかの実施形態において、取り付け部材50に沿ったテーパおよび/または拡張器ハブ38内のテーパが、取り付け部材50と拡張器ハブ38との間の封止を促進できる。
【0044】
取り付け部材50は有利には、たとえば比較的軟質かつ柔軟な材料で構築されたことなどによる、拡張器ハブ38の製造およびアセンブリにおいて生じ得る成形の不完全さおよび/または調整不良を補償できる。加えて、取り付け部材50は有利には、封止表面75と比べて封止部分308によって封止されるべき開口のサイズを低減してもよい。加えて取り付け部材50は、弁構成要素300がデバイスを収容するために開位置にあるときに封止を維持するために、拡張器ハブ38を通じて挿入されたデバイスの周りの封止の働きをし得る。したがって、取り付け部材50は封止部分308とは独立の封止の働きをし得る。いくつかの実施形態において、取り付け部材50は、拡張器ハブ38を通じて導入され得るさまざまなデバイスを収容し、かつ/またはそれに適合するために伸びることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、封止部分308は、たとえばポリウレタンまたはポリカーボネートなどの比較的硬質の材料で作られ得る。比較的軟質の取り付け部材50を含むことは、有利には封止部分308が比較的硬質の材料で作られることを可能にできる。なぜなら、より柔軟な取り付け部材50は、比較的硬質の封止部分308が効果的に補償できないかもしれないような成形の不完全さおよび調整不良などを補償できるからである。比較的硬質の材料は、有利には弁構成要素300に対してもたらされ得る損傷を低減して、裂けおよび/またはその他の摩耗により良好に抵抗できる。こうした裂けまたは摩耗は、封止の有効性に悪影響を与え得る。
【0046】
取り付け部材50は、場合によっては拡張器ハブ38の少なくとも一部分と取り外し可能に係合されることで、取り付け部材50を内部空洞74の中または外に動かし得るようにできる。たとえば、取り付け部材50は任意の好適な相互作用(例、干渉、係合、摩擦、機械的結合、接着など)を介して内部空洞74内に取り外し可能に保持されてもよい。取り付け部材50は、内部空洞74からの取り付け部材50の意図されない除去を防ぐために十分に拡張器ハブ38と係合されてもよい。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤ28が弁構成要素300に当接すると、拡張器24に対するガイドワイヤ28のさらなる近位移動は、内部空洞74内で取り付け部材50を取り外し可能に保持する相互作用力を克服するには不十分となってもよい。たとえば、ガイドワイヤ28が弁構成要素300を押してそこを越えて伸長した後、取り付け部材50は内部空洞74内に残ってもよい。特定の実施形態においては、たとえば内部空洞74の封止表面75などの1つまたはそれ以上の壁が、内部空洞74に対する取り付け部材50の遠位移動を防ぐ。
【0047】
拡張器ハブ38は、拡張器ハブ38の近位領域および/または遠位領域70に沿ったロック構造を含んでもよい。各ロック構造はルアータイプまたはその他のタイプの接続であってもよい。示される実施形態において、拡張器ハブ38はルアー接続78を含む。いくつかの実施形態において、ルアー接続78(例、オスルアースリップコネクタ)は、図8Aおよび図8Bに示されるシース26のシースハブ42(例、メスルアースリップコネクタ)に係合するように構成され得る。加えて、これらの構成要素におけるオス-メスルアースリップコネクタは反転され得る。
【0048】
拡張器24の色は、血液またはその他の流体と拡張器24との間の対比を増強するように選択されてもよい。たとえばいくつかの適用において、血液フラッシュの際に、血管への適切な配置を確認するために拡張器24とシース26との間に流れる血液が観察される。シース26と拡張器24との間の流体の流れとしての流体の視認性を増加させるために、シース26は好ましくは透明または透過性の材料から製造され、拡張器24は流体の色と対比する色を有する。たとえば、拡張器24は赤色の血液との対比を増強するために白い色を有してもよい。流体の色および所望される対比の程度によって、他の色の拡張器24も使用され得る。さらに、血液フラッシュの領域における拡張器24の部分のみが対比色を有し、残りは異なる色を有し得る。
【0049】
使用中、拡張器24は針22によって作製される開口部または通路を拡張する。拡張された通路は、その後のシース26の導入を容易にする。針22はガイドワイヤ28、その後に拡張器24、および最後にシース26を患者の体内に導入させる。
【0050】
図8Aは、図1のアクセスデバイス20とともに用いられ得るシース26の、遠位方向に見た端面図である。図8Bは、図8Aに示されるシース26の側面図である。シース26はシース本体40と、シースハブ42と、遠位領域86と、近位領域88とを含んでもよい。シース本体40は透明、半透明、透過性、またはほぼ不透明の材料から部分的または全体的に作られてもよい。加えてシース本体40は、たとえば硫酸バリウムストライプなどの1つまたはそれ以上の放射線不透過性マーカを含み得る。好ましい実施形態において、シースは、本体40の直径方向反対側に配された2つのこうした放射線不透過性ストライプを含む。
【0051】
シース本体40は単一部品のシースであってもよく、これを通じてカテーテルまたはその他の医療用物品(例、ガイドワイヤ28)がシース26に挿入されてもよい。こうした実施形態において、シース本体40はカテーテルまたはその他の医療用物品の挿入のための導管を形成する。導管を提供することに加えて、シース26またはシースの一部分は、カテーテルのルーメンに対する付加的なルーメンを形成できる。たとえば、シース本体40を通じてデュアルルーメンカテーテルを挿入し、シース本体40自体が第3のルーメンを形成することによって、トリプルルーメンカテーテルの同等物が形成され得る。医師または医療提供者がシース本体40を通じて拡張器24内を流れる血液を見ることを可能にするために、シース本体40は透明または少なくとも何らかの透過性の材料から製造され得る。
【0052】
たとえば図8Aおよび図8Bに示されるものなどのいくつかの実施形態において、シースは分割可能なシース26Aであり得る。たとえば、アクセスデバイス20を使用した後に血管に挿入されるべきカテーテルまたは医療用物品のタイプによっては、シース本体40の一部分または全体を除去することが有利であってもよい。たとえば、カテーテルまたはその他の医療用物品が血管に挿入された後に、アクセス部位の乱雑さを低減するためにシース本体40の一部分が分離または引きはがされて除去され得る。引きはがしシースは穿孔、鋸歯状の切込み、スカイブ、もしくはその他の構造を含むか、または医師もしくは医療提供者がシース本体40の一部分または全体を容易に除去することを可能にするためのその他の材料(例、PTFEおよびビスマス)を含み得る。
【0053】
シースハブ42は、ルアースリップ接続90を含んでもよい。ルアースリップ接続90は、対応する構造と噛み合うまたは係合するロックまたは取り付け構造を含んでもよい。たとえば、ルアースリップ接続90は、拡張器ハブ38のルアー接続78と係合するように構成され得る。
【0054】
図8Aに最もよくみられるとおり、シースハブ42は好ましくは、拡張器ハブ38のルアー接続78が実質的に妨げられずにシースハブ42に入り得るように設計される。しかし、使用中にシースハブ42が拡張器シャフト36上の所望の場所に配置されると、医師または医療提供者はシースハブ42を押したり引いたりねじったりでき、おそらくはルアースリップ接続90と、別の医療用物品の対応するコネクタとを外したり係合したりできる。ルアースリップ接続90は、拡張器ハブ38とシースハブ42とが解放可能に連結されるような機械的嵌合を生じさせる。シースハブ42は、拡張器ハブ38の対応するルアー接続78と係合する。拡張器ハブ38をシースハブ42に対して引っ張るか、押し込むか、押すか、またはねじることによって、ロック位置を外したり係合したりできる。
【0055】
付加的な実施形態において、アクセスデバイス20の他の部分からのシース本体40の容易な解放および除去を可能にするために、シースハブ42は半径方向に延在するウイングまたはハンドル構造を含んでもよい。いくつかの適用において、ウイングは、医療提供者にシースハブ42を引き離すためのてこの作用を提供するようにサイズが定められる。シースハブ42および/またはシース本体40は、薄い膜によって接続された2つまたはそれ以上の部分(例、半体)を含んでもよい。この膜は、医療提供者がシースハブ42および/またはシース本体40をアクセスデバイスから除去することを決めるまでシースハブ42および/またはシース本体40の2つまたはそれ以上の部分を一緒に保持するようにサイズが定められ得る。医療提供者はウイングを操作して膜を破き、シースハブ42を取り外し可能な半体に分離する。
【0056】
図9は、アクセスデバイス20がガイドワイヤ28に通された後のアクセスデバイス20の側面断面図である。よって、示される実施形態において、拡張器24は拡張器ハブ38から遠位に延在する拡張器シャフト36を含み、シース26はシースハブ42から遠位に延在するシース本体40を含む。特定の実施形態において、ガイドワイヤ28はガイドワイヤハブまたはキャップ(図示せず)を含む。示される実施形態において、拡張器24およびシース26は、アクセスデバイス20の近位端部において解放可能に連結される。いくつかの実施形態において、拡張器24とシース26との間の解放可能な連結は、シース26が拡張器24にロックされた線形連結である。拡張器24およびシース26の終端部の相対的位置決めが図9に示される。たとえば、拡張器本体36の終端部はシース26の終端部を超えて延在する。
【0057】
図10Aは、身体118に貫入する図2Aに示される針22の断面図である。図10Bは、図10Aからの針22の遠位端部の拡大部分断面図である。図11Aにおいて、針22は脈管構造に貫入している。図11Bは、図11Aからの針22の遠位端部の拡大部分断面図である。使用中は、斜角先端部52が血管122に入る。
【0058】
図12図10Aと同様の断面図であり、ここではガイドワイヤ28が針22を通って患者の血管122に供給されている。医師または医療提供者が標的血管122内に針22を置くと、医師または医療提供者は脈管構造にガイドワイヤ28を供給する。ガイドワイヤ28が針22を通って患者に供給される間、針22は静止して保持される。挿入手順の間、ガイドワイヤ28は針22の内部ボア54を通過する。
【0059】
針22を通じてガイドワイヤ28を供給するとき、当該技術分野において公知のガイドワイヤアドバンサが使用されてもよい。たとえばガイドワイヤ28が湾曲先端部またはJ先端部を有するとき、その先端部を真っ直ぐにして針22の内部ボア54へのガイドワイヤ28の供給を容易にするために、アドバンサが使用されてもよい。図13は、ガイドワイヤ28が患者の脈管構造内にさらに伸長されていることを除き、図12と同様の断面図である。
【0060】
図14A図13と同様の断面図であり、ここでは針22が取り除かれており、拡張器24およびシース26がガイドワイヤ28の外側部分に沿って摺動されて、弁構成要素300を開位置に動かしている。図14Bは、図14Aからの拡大部分断面図である。拡張器24がガイドワイヤ28の外側部分に沿って摺動されるとき、拡張器24の内部空洞74内の弁構成要素300の封止部分308は拡張器24に対して近位方向に有効に動かされている。
【0061】
図15図14Aと同様の断面図であり、ここでは拡張器24およびシース26がガイドワイヤ28の外側部分に沿ってさらに摺動されて、患者の脈管構造に入っている。シース26および拡張器24をガイドワイヤ28に通して血管122に入れる間、ガイドワイヤ28は弁構成要素300に沿って自由に摺動できる。拡張器24およびシース26は、患者の身体118に対するさまざまな角度のうちの任意の角度にて、患者の脈管構造に挿入されてもよい。図15に示される挿入角度は、単なる概略的例示の目的のものである。いくつかの実施形態において、拡張器24およびシース26は、図15図20に示される挿入角度と比べて身体118に対してより低い側面角度にて導入されてもよい。この配置においては、拡張器24および/またはシース26の遠位端部の部分が血管122に挿入されてから屈曲する必要がない(またはわずかしか屈曲しない)ように、拡張器24およびシース26が挿入され得る(例、図15図20に示される拡張器24およびシース26との比較)。
【0062】
図16図15と同様の断面図であり、ここでは拡張器24およびシース26からガイドワイヤ28が引き抜かれている。本明細書に記載されるとおり、弁構成要素300は拡張器ハブ38の中央に向かって付勢され得る。この付勢によって、ガイドワイヤ28が除去されたときに弁構成要素300は閉位置に向かって移動できる。したがって図16に示されるとおり、ガイドワイヤ28の除去の際に、弁構成要素300は閉位置に動いて、封止表面75に当接することによって内部空洞74の少なくとも遠位部分73を実質的に封止してもよい。
【0063】
図17図16と同様の断面図であり、ここでは患者およびシース26から拡張器24が除去されている。シース26は血管122内に適切に挿入されて残されている。拡張器24はガイドワイヤ28の除去の後に、またはそれと協調して除去されてもよい。
【0064】
図18図17と同様の断面図であり、ここではカテーテル120が患者の脈管構造への挿入のためにシース26と整列されている。図19図18と同様の断面図であり、ここではカテーテル120がシース26を通じて患者の脈管構造内へ、具体的には標的血管122内へと挿入されている。
【0065】
図20図19と同様の断面図であり、ここではカテーテル120を取り囲むシース26を除去するためにシース26の2つの部分が互いから引きはがされている。シース26は、1つまたはそれ以上の分割線に沿って分割可能である。分割可能なシース26は、アクセスデバイス20を使用した後に血管に挿入されるべきカテーテルまたは医療用物品のタイプによってシース本体40の一部分または全体を除去できるという利点を提供する。たとえば、カテーテル120が血管122に挿入された後に、アクセス部位の乱雑さを低減するためにシース本体40の一部分が分離または引きはがされて除去される。引きはがしシース26は、最初にシース26が患者から除去されるまでカテーテル120に沿って近位方向に摺動され、次いで分割され得る。代替的には、シース26全体が患者から除去される前に、最初にシース26が分割され得る。残りのシース26が患者から除去された後に、医師または医療提供者はシース26の分割を続け得る。図20に示されるとおり、シース26は患者からの除去と協調して分割され得る。特定の実施形態において、シース26は分割可能ではない。
【0066】
上に注記したとおり、本アクセスデバイスは患者の体内の他の場所にカテーテルを配置するために用いられ得る。よって、限定ではなくたとえば、アクセスデバイスは膿瘍からの流体の排出、気胸からの空気の排出、および腹膜腔へのアクセスのためのさまざまなカテーテルとして、またはそれらとともに用いられ得る。
【0067】
この開示を特定の実施形態および実施例の状況において説明したが、この開示は具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替的実施形態および/または使用ならびにその明らかな修正および均等物にまで広がることが当業者に理解されるだろう。加えて、この開示の実施形態のいくつかの変形が示されて詳細に説明されているが、この開示の範囲内にあるその他の修正が当業者に容易に明らかになるだろう。実施形態の特定の特徴および態様のさまざまな組み合わせまたはサブコンビネーションが作られてもよく、それらはなおもこの開示の範囲内にあることも予期される。この開示の実施形態の変更モードを形成するために、開示される実施形態のさまざまな特徴および態様が互いに組み合わされたり置き換えられたりされ得ることが理解されるべきである。よって、本明細書における開示の範囲は、上述の特定の実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20