(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、移動体、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20240508BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240508BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240508BHJP
G06T 7/593 20170101ALI20240508BHJP
【FI】
G01C3/06 110V
G06T7/00 650A
G08G1/16 C
G06T7/593
(21)【出願番号】P 2022082368
(22)【出願日】2022-05-19
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸
(72)【発明者】
【氏名】大屋 強
(72)【発明者】
【氏名】浦野 雄太
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200776(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014627(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167238(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098709(WO,A1)
【文献】特開2017-084259(JP,A)
【文献】国際公開第2021/161443(WO,A1)
【文献】特開2018-005891(JP,A)
【文献】特開平03-092978(JP,A)
【文献】特開2019-078626(JP,A)
【文献】特開2020-107052(JP,A)
【文献】特開2006-268097(JP,A)
【文献】特開2005-346652(JP,A)
【文献】特開2017-021780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G06T 1/00
7/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を、複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出手段と、
前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎に前記距離相当情報を統合し
て、前記サブ領域の夫々の距離を示す統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定手段と、
前記サブ領域に対して、前記サブ領域の前記統合距離相当情報に応じて所定の分類分けをする分類手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記分類手段は、前記サブ領域を空と道路とそれ以外の3つの分類のいずれかに分類分けすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記境界検出手段は、前記画像情報を、画面の
上端の画素から下端の画素まで縦方向に延びる複数の分割領域に分割することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像情報の各画素に対して前記距離相当情報を検出する距離相当情報測定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記距離相当情報測定手段は、前記色情報に基づいて各画素の距離相当情報の確からしさを表す信頼度を生成し、
前記統合距離相当情報決定手段は、前記信頼度に基づいて重み付けされた各画素の前記距離相当情報に基づいて前記サブ領域毎の統合距離相当情報を決定することを特徴とする請求項
4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
被写体を撮像して視点が異なる複数の画像を生成する撮像手段を有し、
前記距離相当情報測定手段は、前記色情報に基づいて前記複数の画像の視差量を算出し、前記色情報に基づいて各画素の前記視差量の確からしさを示す視差信頼度を算出し、前記視差信頼度に基づいて前記信頼度を生成することを特徴とする請求項
5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記距離相当情報測定手段は、前記複数の画像の輝度値が所定値以上の画素の前記視差信頼度を、輝度値が所定未満の場合よりも低くなるように算出することを特徴とする請求項
6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
被写体を撮像して前記画像情報を生成する撮像手段を有し、
前記距離相当情報測定手段は、前記撮像手段の画素内に配置された第1の光電変換部と第2の光電変換部からの信号に基づき位相差測距方式により前記距離相当情報を測定することを特徴とする請求項
4に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記距離相当情報測定手段は、ステレオカメラからの2つの画像信号に基づき位相差測距方式により前記距離相当情報を測定することを特徴とする請求項
4に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記境界検出手段は、前記色情報が所定の閾値より変化する位置を前記境界として検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記分割領域は、所定方向に複数の画素を有し、
前記色情報は前記複数の画素に基づいて求められる代表値であることを特徴とする請求項
10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記分類手段によって前記分類分けがされた前記サブ領域を含む複数の前記分割領域の画像を統合して物体検出を行う物体検出手段を有することを特徴とする請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
画像情報を、複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出手段と、
前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎に前記距離相当情報を統合し
て、前記サブ領域の夫々の距離を示す統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定手段と、
前記統合距離相当情報が決定された前記サブ領域を含む複数の前記分割領域の画像を統合して物体検出を行う物体検出手段と、
前記物体検出手段により検出された物体の情報に基づき走行状態を制御する走行制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項14】
画像情報を、複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出ステップと、
前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎に前記距離相当情報を統合し
て、前記サブ領域の夫々の距離を示す統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の画像処理装置又は請求項
13に記載の移動体の各手段をコンピュータによって制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体までの距離情報を処理する画像処理装置、画像処理方法、移動体、及びコンピュータプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換機能を有する複数の画素領域を2次元状に配置したセンサを有し、各画素領域において、画像信号と距離情報とを取得可能な撮影装置がある。特許文献1に記載の固体撮像素子は、撮像素子の一部あるいは全部の画素に測距機能を有する画素を配置し、撮像面において検出した位相差に基づいて被写体距離を検出する(撮像面位相差方式)。
【0003】
即ち、撮影装置が備える撮像光学系の異なる瞳領域を通過した光束により生成される像に基づく2つの画像信号の相関関係に基づいて位置ずれを演算し、位置ずれに基づいて距離を取得する。2つの画像信号の相関関係は、各画像信号から所定の照合領域に含まれる画像信号を切り出して相関関係を評価する領域ベースのマッチング手法などの手法を用いて評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像信号に含まれる被写体のコントラスト変化が少ない場合、または、画像信号に含まれるノイズ量が多い場合など、被写体や撮影条件に起因して相関関係の誤評価が発生することがある。相関関係を誤評価の発生が一定以上含まれる場合、演算された2つの画像信号間の位置ズレ量が誤差を有し、取得される距離の精度が低下する恐れがある。
【0006】
本発明は、距離ばらつきの影響を低減可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る画像処理装置は、
画像情報を、複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出手段と、
前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎に前記距離相当情報を統合して、前記サブ領域の夫々の距離を示す統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定手段と、
前記サブ領域に対して、前記サブ領域の前記統合距離相当情報に応じて所定の分類分けをする分類手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、距離ばらつきの影響を低減可能な画像処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る車両100の構成例を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車両100の内部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る経路生成装置150の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図4】(A)、(B)は第1の実施形態に係る撮像素子の構成例を示す模式図である。
【
図5】(A)~(D)は撮像面位相差方式における被写体距離と入射光との関係を説明するための模式図である。
【
図6】(A)、(B)は第1の実施形態に係る画像処理部310が実行する処理例を示すフローチャートである。
【
図7】(A)、(B)は第1の実施形態に係る境界処理部321及び物体検出部323が実行する処理例を示すフローチャートである。
【
図8】(A)~(E)は第1の実施形態に係る物体情報生成部320が行う処理例における画像および情報の例を示す模式図である。
【
図9】境界処理部321により行われる
図7(B)のステップS7011の物体境界候補決定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図10】距離情報生成部322による、
図7(B)のステップ7012における距離相当情報統合処理の詳細な例を示すフローチャートである。
【
図11】物体検出部323による、
図7(B)のステップ7012における物体検出処理の詳細な例を示すフローチャートである。
【
図12】距離情報生成部322が行う物体ごとの距離情報の生成処理例を示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態に係る経路生成部330が実行する経路生成処理例を示すフローチャートである。
【
図14】変形例2における距離情報生成部322が行う物体距離情報生成処理例を示すフローチャートである。
【
図15】N番目の物体と同一の識別番号の物体の、物体距離情報の時間変化の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図において、同一の部材または要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。尚、以下の説明では、撮影装置を備えた経路生成装置(電子機器)の例を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る車両100の構成例を示す模式図である。移動体としての車両100は、撮像装置110と、レーダ装置120と、経路生成ECU130と、車両制御ECU140と、計測器群160と、を備える。車両100は、更に、車両100の駆動を行うための駆動制御手段としての駆動部170、メモリ190等を備える。駆動部170、メモリ190等については、
図2を用いて説明する。
【0012】
撮像装置110と経路生成ECU130等は、画像処理装置としての経路生成装置150を構成している。車両100は、運転者101が搭乗可能であって、走行時には運転者101が車両100の前方(進行方向)を向いて搭乗する。運転者101は、車両100のハンドルや、アクセルペダル、ブレーキペダルなどの操作部材を操作することによって、車両の動作を制御することができる。尚、車両100は自動運転機能を有するものであっても良いし、外部からリモートコントロール可能であっても良い。
【0013】
撮像装置110は、車両100の前方(通常の進行方向)を撮影するように配置される。撮像装置110は、
図1に示すように車両100の例えばフロントガラスの上端付近の内側に配置され、車両100の前方に向かって所定の角度範囲(以降、撮影画角)の領域を撮影する。
【0014】
なお、撮像装置110は、車両100の後方(通常の進行方向と逆、後退方向)を撮影するように配置された撮像装置を含んでもよいし、側方を撮影するように配置された撮像装置を含んでもよい。即ち、複数の撮像装置110が車両100に配置されていてもよい。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る車両100の内部の構成例を示すブロック図である。撮像装置110は、車両100が走行する道路(走行道路)を含む、車両の周囲の環境(周囲環境)を撮影し、撮像装置110の撮影画角の範囲内に含まれる物体を検出する。
【0016】
又、撮像装置110は、検出した物体の情報(外界情報)と、検出した物体の距離に関する情報(物体距離情報)とを取得し、経路生成ECU130に出力する。物体距離情報は、所定の参照テーブル、または所定の変換係数や変換式を用いて車両100の所定の位置から物体までの距離に変換可能な情報であれば良い。例えば、距離を所定の整数値に割り当てた物体距離情報を経路生成ECU130に逐次出力してもよい。
【0017】
撮像装置110は、光電変換機能を有する複数の画素領域を2次元状に配置した例えばCMOSイメージセンサなどを含み、撮像面位相差方式(撮像面位相差検出方式、撮像面位相差測距方式などとも呼ばれる。)で物体の距離を取得することが可能な構成となっている。撮像面位相差方式による、物体の距離情報の取得については、後述する。
【0018】
レーダ装置120は、例えばミリ波帯域からサブミリ波帯域と呼ばれる波長の電磁波を用いたミリ波レーダ装置であり、電磁波を照射し、その反射波を受信することで物体を検知する検知装置である。レーダ装置120は、電磁波を照射してから、反射波を受信するまでの時間と反射波の受信強度に基づいて、電磁波の送信方向の物体までの距離を示す距離情報(第4の距離情報)を取得する第4の距離情報取得手段として機能している。レーダ装置120は、距離情報を経路生成ECU130に出力する。
【0019】
本実施形態において、車両100には複数のレーダ装置120が取り付けられ、例えば、車両100の前側の左右、および後側の左右にそれぞれレーダ装置120が取り付けられている。また、各レーダ装置120は、所定の角度範囲内に電磁波を照射し、電磁波を送信してから、反射波を受信するまでの時間と反射波の受信強度に基づいて、各レーダ装置120からの距離を計測し、物体までの距離情報を生成する。距離情報は、レーダ装置120からの距離の他に、反射波の受信強度や物体の相対速度に関する情報を含んでも良い。
【0020】
計測器群160は、例えば速度計測器161、舵角計測器162、角速度計測器163を含み、走行速度、舵角、角速度など、車両の駆動状態に関する車両情報を取得する。速度計測器161は、車両100の走行速度を検出する計測器である。舵角計測器162は、車両100の操舵角を検出する計測器である。
【0021】
角速度計測器163は、車両100の旋回方向の角速度を検出する計測器である。各計測器は、計測したパラメータに対応する計測信号を車両情報として経路生成ECU130に出力する。
【0022】
経路生成ECU130は、コンピュータとしてのCPUを内蔵し、計測信号、外界情報、物体距離情報、および距離情報等に基づき、車両100の走行軌跡と、走行軌跡に関する経路情報を生成する。経路生成ECU130はそれらの走行軌跡や経路情報を車両制御ECU140に出力する。経路生成ECU130が処理するデータや実行するコンピュータプログラムは、メモリ180に格納されている。
【0023】
ここで、走行軌跡は、車両100が通過する軌跡(経路)を示す情報である。また、経路情報は、車両100が通過するための経路に関する情報(道路情報等を含む。)である。
【0024】
車両制御ECU140は、コンピュータとしてのCPUを内蔵し、経路情報と計測器群160から取得した車両情報に基づき、車両100が経路情報に対応した経路を通過するように、駆動部170を制御する。車両制御ECU140が処理するデータや実行するコンピュータプログラムは、メモリ190に格納されている。
【0025】
駆動部170は、車両を駆動するための駆動部材であって、例えばタイヤを回転させるためのエネルギーを生成するエンジンやモーターなどの動力部(不図示)、および車両の進行方向を制御するステアリング部等を含む。また、駆動部170は、動力部が発生させたエネルギーを用いてタイヤを回転させるためのギアボックス、およびギアボックス内の構成を制御するギア制御ユニット、ブレーキ動作を行うブレーキユニットなどを含む。
【0026】
車両制御ECU140は、経路情報に対応する経路を車両が通過するように、駆動部170を制御して、車両100の駆動量、制動量、操舵量などを調整する。具体的には、車両制御ECU140は、ブレーキ、ステアリング、ギア構成などを制御して車両100を経路上を走行するように動作させる。
【0027】
なお、経路生成ECU130と車両制御ECU140とは、共通のCPUと、共通のメモリを有していてもよい。HMI240は、運転者101に対して情報を伝えるためのHuman Machine Interfaceの略である。
【0028】
HMI240は、運転者101がドライビングポジションに位置するときに、視認可能なディスプレイと、ディスプレイに表示する情報を生成する表示制御装置を含む。また、HMI240は、音声を出力する装置(スピーカーシステム)と、音声データを生成する音声制御装置を含む。
【0029】
HMI240内の表示制御装置は、経路生成ECU130が生成した経路情報に基づいて、ナビゲーション情報をディスプレイに表示する。また、HMI240内の音声制御装置は、経路情報に基づいて、運転者101に経路情報を通知するための音声データを生成し、スピーカーシステムから出力させる。音声データは、例えば、曲がるべき交差点が近づいていることを通知するためのデータなどである。
【0030】
図3は、第1の実施形態に係る経路生成装置150の構成例を示す機能ブロック図である。尚、
図3に示される機能ブロックの一部は、経路生成装置150に含まれるコンピュータに、記憶媒体としてのメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行させることによって実現されている。
【0031】
しかし、それらの一部又は全部をハードウェアで実現するようにしても構わない。ハードウェアとしては、専用回路(ASIC)やプロセッサ(リコンフィギュラブルプロセッサ、DSP)などを用いることができる。尚、
図3に示される夫々の機能ブロックは、同じ筐体に内蔵されていなくても良く、互いに信号路を介して接続された別々の装置により構成しても良い。
【0032】
図3において、画像処理装置としての経路生成装置150は、撮像装置110と、経路生成ECU130とを備える。撮像装置110は、撮像光学系301、撮像素子302、画像処理部310、物体情報生成部320、及びメモリ340を有する。本実施形態では、撮像光学系301、撮像素子302、画像処理部310、および物体情報生成部320は、撮像装置110の筐体(不図示)の内部に配置されている。ここで、撮像素子302は、被写体を撮像して画像情報を生成する撮像手段として機能している。
【0033】
撮像光学系301は、撮像装置110の撮影レンズであり、被写体の像(光学像)を撮像素子302上に形成する機能を有する。撮像光学系301は、複数のレンズ群で構成され、撮像光学系301は、撮像素子302から所定距離離れた位置に射出瞳を有する。
【0034】
撮像素子302はCMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサやCCD(電荷結合素子)イメージセンサから構成され、撮像面位相差測距方式による測距機能を有する。撮像素子302は、光電変換機能を有する複数の画素領域を2次元状に配置している。
【0035】
各画素領域は、例えば行方向に分離して配置された2つの光電変換部(第1の光電変換部、第2の光電変換部)を有する。各画素領域の前には例えばR,G,Bのいずれか1つのカラーフィルタと、マイクロレンズが配置されている。
【0036】
撮像素子302は、撮像光学系301を介して撮像素子302上に結像した被写体像を光電変換して、被写体像に基づく画像信号を生成し、画像処理部310に出力する。画像信号は、各画素領域の光電変換部ごとの出力値からなる信号である。
【0037】
撮像素子302は、第1の光電変換部から出力された信号に基づく第1の画像信号と、第2の光電変換部から出力された信号に基づく第2の画像信号とを別々に出力する。或いは第1の画像信号と第2の画像信号を加算した加算信号と、第1の画像信号を別々に画像処理部310に出力する。
【0038】
画像処理部310は、撮像素子302から供給された画像信号に基づいて、画素ごとの赤、緑、青の各色の情報を持つ画像データと、画素ごとの距離情報を示す距離画像データとを生成する。画像処理部310は、撮像素子302から供給された画像信号に基づいて画像データを生成する現像部311と、撮像素子302から供給された画像信号に基づいて距離画像データを生成する距離画像生成部312とを有する。尚、距離画像生成部312は、画像情報の各画素に対して距離相当情報を検出する距離相当情報測定手段として機能している。
【0039】
これらが実行する処理については、後述する。画像処理部310は、現像部311からの画像データと、距離画像生成部312からの距離画像データとを物体情報生成部320に出力する。
【0040】
物体情報生成部320は画像内の複数の対象の境界を検出するための境界処理部321を有する。境界処理部321は、現像部311からの画像データを例えば画面垂直方向に短冊状矩形領域(分割領域)に分割し、更に、各矩形領域内の画像信号に対して色差信号(又は色信号)に基づき境界を検出する。尚、境界を検出する際に、輝度情報の変化も参考にしても良い。ここで、境界処理部321は、所定方向に延びる複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出手段として機能している。
【0041】
物体情報生成部320においては、各矩形領域内の画像信号に対して色差信号に基づき境界を検出することで、分割領域内の境界で区切られたサブ領域に対して例えば空と道路とそれ以外の物体の3つのグループに分類分け(グループ化)をする。尚、境界処理部において、上記のように短冊状矩形領域毎に色差信号に基づき境界を検出するのは、境界を検出しやすくするためである。尚、本実施例では、短冊状矩形領域(分割領域)の延びる所定の方向を、画面の縦方向(垂直方向)にしているが、画面の横方向(水平方向)でも良い。
【0042】
物体情報生成部320は、上記の各グループに対して距離情報を決定し付与する距離情報生成部322を有する。距離情報生成部322は、境界処理部321からの境界情報と、距離画像生成部312からの距離画像データ(距離相当情報)とに基づいて、取得した画像に含まれる例えば3つのサブ領域の夫々の距離を夫々示す物体距離情報(統合距離相当情報)を決定して付与する。ここで、距離情報生成部322は、画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、分割領域内の境界で区切られたサブ領域毎の統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定手段として機能している。
【0043】
このように、本実施形態では、短冊状矩形領域毎に色差信号に基づき境界を検出することで境界を検出しやすくしている。更に、境界によって分離された例えば3つのサブ領域について統合距離相当情報を決定しているので、距離画像生成部312において発生する距離誤差(ばらつき)の影響を抑制することができる。尚、本実施形態では色差信号に基づき境界を検出しているが、色信号に基づき境界を検出しても良い。又、色差信号又は色信号だけでなく輝度信号も参照して対象の境界を検出しても良い。
【0044】
特に本実施形態のように撮像面位相差方式の撮像素子を用いて物体の距離を取得する場合には、基線長が比較的短いために遠方の物体に対して距離誤差(ばらつき)が生じる可能性があるが、その影響を大幅に抑制することができる。
【0045】
物体情報生成部320は、物体を画像認識する物体検出部323を有する。物体検出部323は、境界処理部321により境界が設定された短冊状矩形領域の画像信号を画像の水平方向に統合し、統合された画像に基づいて、取得した画像に含まれる例えば空と道路とそれ以外の物体を画像認識する物体検出部323を有する。ここで、物体検出部323は、分類分けがされたサブ領域を含む複数の分割領域の画像を統合して物体検出を行う物体検出手段として機能している。
【0046】
例えば、画面下部のグループに対しては道路と判定する。ここで、物体検出部323は、統合距離相当情報が決定されたサブ領域に対して、サブ領域の統合距離相当情報に応じて所定の分類分けをする分類手段として機能している。又、本実施例の物体検出部323は、上記のように、サブ領域を空と道路とそれ以外の3つの分類のいずれかに分類分けしている。
【0047】
尚、物体検出部323は、空と道路とそれ以外の物体を画像認識する際に、距離情報生成部322によって各分離領域に対して付与された距離情報を参考にする。即ち、所定以上距離が異なる物体は別の物体として認識することで誤認識を低減するこことができる。又、画面上部の距離が無限遠のグループについては空と認識しやすくなる。
【0048】
このように空と道路を判別することで、空と道路以外の物体に対して物体認識を重点的に行うことができる。物体検出部323は、検出された空や道路やそれ以外の物体に関する情報を示す外界情報を精度良く生成することができる。ここで外界情報は、検出された物体の画像内における位置、幅や高さなどのサイズ、領域などを示す情報である。また、外界情報には検出された物体の属性および識別番号に関する情報などが含まれる。
【0049】
更に、物体距離情報は、外界情報に含まれる物体の識別番号に関する情報と紐づけられる。物体情報生成部320は、物体検出部323からの外界情報と、距離情報生成部322からの物体距離情報とを経路生成ECU130に出力する。
【0050】
なお、画像処理部310と物体情報生成部320とは、撮像装置110の有する1以上のプロセッサで構成されてもよい。1以上のプロセッサがメモリ340から読み出したプログラムを実行することにより、画像処理部310と物体情報生成部320との機能を実現するものであってもよい。
【0051】
経路生成ECU130は、経路生成部330を備える。経路生成部330は、外界情報および物体距離情報、およびレーダ装置120から取得した距離情報に基づいて、経路情報を生成する。次に、経路生成装置150内の各ブロックの構造や制御について詳細に説明する。
【0052】
図4(A)、(B)は、第1の実施形態に係る撮像素子302の構成例を示す模式図である。
図4(A)は、撮像素子302を光の入射方向からみた上面図である。撮像素子302は、2行×2列の画素群410をマトリクス状に複数配列することで構成される。画素群410は、緑色の光を検出する緑画素G1、緑画素G2、赤色の光を検出する赤画素R及び青色の光を検出する青画素Bを含む。画素群410において、緑画素G1および緑画素G2は対角に配置される。また、各画素は、第1の光電変換部411と、第2の光電変換部412とを有する。
【0053】
図4(B)は、
図4(A)における画素群410のI-I’断面における断面図である。各画素は、導光層414、および受光層415から構成される。導光層414は、画素へ入射した光束を受光層415へ効率良く導くためのマイクロレンズ413、各画素が検出する光の色に対応する波長帯域の光を通過させる不図示のカラーフィルタ、及び画像読み出し用及び画素駆動用の配線を有する。
【0054】
受光層415は、導光層414を介して入射した光を光電変換して電気信号として出力する光電変換部である。受光層415は、第1の光電変換部411、および第2の光電変換部412を有する。
【0055】
図5(A)~(D)は、撮像面位相差方式における被写体距離と入射光との関係を説明するための模式図である。
図5(A)は、撮像光学系301の射出瞳501と、撮像素子302の緑画素G1と、緑画素G1の各光電変換部に入射する光を示す模式図である。撮像素子302は、複数の画素を有するが、簡単のため、1つの緑画素G1について説明する。
【0056】
緑画素G1のマイクロレンズ413は、射出瞳501と受光層415とが光学的に共役関係になるように配置されている。その結果、射出瞳501の部分瞳領域である第1の瞳領域510を通過した光束は第1の光電変換部411に入射する。同様に部分瞳領域である第2の瞳領域520を通過した光束は第2の光電変換部412に入射する。
【0057】
各画素の第1の光電変換部411は、受光した光束を光電変換して信号を出力する。撮像素子302に含まれる複数の第1の光電変換部411から出力された信号から、第1の画像信号が生成される。第1の画像信号は、第1の瞳領域510を主に通過した光束が撮像素子302上に形成する像(A像と呼ぶ)の強度分布を示す。
【0058】
各画素の第2の光電変換部412は、受光した光束を光電変換して信号を出力する。撮像素子302に含まれる複数の第2の光電変換部412から出力された信号から、第2の画像信号が生成される。第2の画像信号は、第2の瞳領域520を主に通過した光束が撮像素子302上に形成する像(B像と呼ぶ)の強度分布を示す。
【0059】
A像に対応した第1の画像信号とB像に対応した第2の画像信号間の相対的な位置ズレ量(以下、視差量)は、デフォーカス量に応じた量となる。視差量とデフォーカス量の関係について、
図5(B)、(C)、(D)を用いて説明する。
【0060】
図5(B)、(C)、(D)は撮像素子302、撮像光学系301の位置関係について示した概略図である。図中の511は第1の瞳領域510を通過する第1の光束を示し、521は第2の瞳領域520を通過する光束を示す。
【0061】
図5(B)は、合焦時の状態を示しており、第1の光束511と第2の光束521が撮像素子302上で収束している。この時、第1の光束511により形成されるA像に対応した第1の画像信号と第2の光束521により形成されるB像に対応した第2の画像信号間の視差量(位置ズレ)は0となる。
【0062】
図5(C)は、像側でz軸の負方向にデフォーカスした状態を示している。この時、第1の光束511により形成される第1の画像信号と第2の光束521により形成される第2の画像信号間の視差量は0とはならず、負の値を有する。
【0063】
図5(D)は像側でz軸の正方向にデフォーカスした状態を示している。この時、第1の光束511により形成される第1の画像信号と第2の光束521により形成される第2の画像信号間の視差量は0とはならず、正の値を有する。
【0064】
図5(C)と(D)の比較から、デフォーカス量の正負に応じて、視差が生じる方向が入れ替わることが分かる。また、幾何関係から、デフォーカス量に応じた視差量が生じることが分かる。従って、後述するように、第1の画像信号と第2の画像信号との間の視差量を領域ベースのマッチング手法により検出し、視差量を所定の変換係数を介してデフォーカス量に変換することができる。さらに、撮像光学系301の結像公式を用いることで、像側のデフォーカス量を、物体までの距離に変換することができる。
【0065】
なお、撮像素子302は、前述のように、第1の画像信号と第2の画像信号との加算信号(合成信号)と、第1の画像信号とを別々に画像処理部310に出力するものであってもよい。この場合、画像処理部310は、加算信号(合成信号)と第1の画像信号との差分により第2の画像信号を生成することができ、第1の画像信号と第2の画像信号を夫々取得することができる。
【0066】
次に、画像処理部310が行う処理について説明する。
図6(A)、(B)は、第1の実施形態に係る画像処理部310が実行する処理例を示すフローチャートである。尚、経路生成装置150に含まれるコンピュータとしてのCPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって
図6(A)、(B)のフローチャートの各ステップの動作が行われる。
【0067】
図6(A)は、画像処理部310の現像部311が画像信号(第1の画像信号と第2の画像信号)から夫々の画像データを生成する現像処理の動作を示すフローチャートである。現像処理は、撮像素子302から画像信号を受信したことに応じて実行される。
【0068】
ステップS601で、CPUは、撮像素子302から入力された第1の画像信号と第2の画像信号とを合成した合成画像信号を生成する。或いは、前述のように、撮像素子302からの読出しの段階で加算信号を読出しても良い。第1の画像信号と第2の画像信号を合成(加算)することで、射出瞳501全域を通過した光束により形成された像に基づく画像信号を得ることができる。
【0069】
撮像素子302の水平方向の画素座標をx、垂直方向の画素座標をyとしたとき、画素(x,y)の合成画像信号Im(x,y)は、第1の画像信号Im1(x,y)と、第2の画像信号Im2(x,y)とを用いて、以下の数式1で表すことができる。
【0070】
【0071】
ステップS602で、現像部311は、合成画像信号の欠陥画素の補正処理を実行する。欠陥画素は、撮像素子302において正常な信号出力ができない画素である。欠陥画素の座標は予めメモリに記憶されており、現像部311は、撮像素子302の欠陥画素の座標を示す情報をメモリから取得する。
【0072】
現像部311は、欠陥画素の合成画像信号を、欠陥画素の周りの画素の合成画像信号の中央値で置き換えるメディアンフィルタを用いて生成する。欠陥画素の合成画像信号を補正する方法として、予め用意した欠陥画素の座標情報を用い、欠陥画素の周りの画素の信号値を用いて内挿することで、欠陥画素の信号値を生成しても良い。
【0073】
ステップS603で、現像部311は、撮像光学系301によって生じる画角周辺の光量低減を補正する光量補正処理を合成画像信号に適用する。撮像光学系301によって生じる画角周辺の光量低減特性(相対的な光量比)は予め測定されメモリに記憶されている。光量の補正方法としては、予め記憶された画角間の相対的な光量比をメモリから読出して、その光量比が一定になるようなゲインを、合成画像信号に乗じて補正することができる。例えば、現像部311は、撮像素子302の中央の画素から周辺の画素に向けて増加する特性を有するゲインを、各画素の合成画像信号に乗じて、光量補正を行う。
【0074】
ステップS604で、現像部311は、合成画像信号のノイズ低減処理を行う。ノイズを低減する方法として、ガウシアンフィルタによるノイズ低減を用いることができる。
【0075】
ステップS605で、現像部311は、合成画像信号に対してデモザイク処理を行い、画素ごとに赤(R)、緑(G)、青(B)の色信号を取得し、それを用いて画素ごとの輝度情報を持つ画像データを生成する。デモザイク方法としては、色チャンネル毎に、線形補間を用いて画素ごとの色情報を補間する手法を用いることができる。
【0076】
ステップS606で、現像部311は、所定のガンマ値を用いて階調補正(ガンマ補正処理)を行う。階調補正後の画素(x,y)の画像データIdc(x,y)は、階調補正前の画素(x,y)の画像データId(x,y)とガンマ値γを用いて以下の数式2で表される。
【0077】
【0078】
ガンマ値γは、予め用意した値を用いることができる。ガンマ値γは、画素の位置に応じて決定してもよい。例えば、撮像素子302の有効領域を所定の分割数で分割した領域ごとにガンマ値γを変えても構わない。
【0079】
ステップS607で、現像部311は、画像データの色空間をRGB色空間からYUV色空間へ変換する色空間変換処理を実行する。現像部311は、所定の係数と色空間の変換式(数式3)を用いて、赤、緑、青の各色の輝度に対応する画像データを、輝度値と色差値とに変換して、画像データの色空間をRGB色空間からYUV色空間へ変換する。
【0080】
【0081】
数式3において、IdcR(x,y)は、階調補正後の画素(x,y)の赤色の画像データ値を示す。IdcG(x,y)は、階調補正後の画素(x,y)の緑の画像データ値を示す。IdcB(x,y)は、階調補正後の画素(x,y)の青色の画像データ値を示す。Y(x,y)は、色空間変換によって得られる画素(x,y)の輝度値を示す。U(x,y)は、色空間変換によって得られる画素(x,y)の輝度値と青色成分の差(色差値)を示す。
【0082】
V(x,y)は、色空間変換によって得られる画素(x,y)の輝度値と赤色成分の差(色差値)を示す。係数(ry,gy,gy)は、Y(x,y)を求めるための係数であり、係数、(ru,gu,gu)、(rv,gv,bv)はそれぞれ色差値を算出するための係数である。
【0083】
ステップS608で、現像部311は、撮像光学系301の光学特性によって生じる歪曲収差の影響を抑制するための補正(歪曲補正)を、上記の変換後の画像データに対して実行する。歪曲収差の補正処理は、撮像光学系301の歪曲率を補正するように、画像データの幾何学的な変形を行うことによってなされる。幾何学的な変形は、歪曲収差のない正しい画素位置から補正前の画素位置を生成する多項式を用いて行われる。補正前の画素位置が小数になる場合は、四捨五入して最近傍の画素を用いてもよいし、線形内挿を用いてもよい。
【0084】
ステップS609で、現像部311は、歪曲収差の補正処理が適用された画像データを、物体情報生成部320に出力する。以上で、現像部311が実行する現像処理が終了する。尚、不図示の終了指示をユーザが出すまでは
図6(A)のフローを周期的に繰り返す。
【0085】
なお、境界処理部321や物体検出部323が、撮像素子302から得られた各種補正処理前の画像データに基づき境界検出や外界認識処理ができれば、現像部311は、
図6(A)のすべての処理を実行しなくともよい。例えば、境界処理部321や物体検出部323が、ステップS608の歪曲収差の補正処理が適用されていない画像データに基づいて、境界検出や撮影画角範囲内の物体を検出できる場合、
図6(A)の現像処理からステップS608の処理を省いてもよい。
【0086】
図6(B)は、距離画像生成部312が行う距離画像データの生成処理の動作を示すフローチャートである。ここで、距離画像データは、各画素に対して、撮像装置110から被写体までの距離に対応する距離情報を関連付けたデータである。距離情報は、距離値Dであってもよいし、距離値を算出するために用いられるデフォーカス量ΔLもしくは視差量dであってもよいが、本実施形態においては、距離画像データは、各画素に対して距離値Dが対応付けられたデータであるものとして説明する。
【0087】
ステップS611で、距離画像生成部312は、入力された画像信号から第1、第2の輝度画像信号を生成する。即ち、距離画像生成部312は、A像に対応した第1の画像信号を用いて第1の輝度画像信号を生成し、B像に対応した第2の画像信号を用いて第2の輝度画像信号を生成する。その際に、距離画像生成部312は、各画素群410の赤画素、緑画素、青画素の画像信号の値に夫々所定の係数を乗じてから合成し、輝度画像信号を生成する。なお、距離画像生成部312は、線形内挿を用いたデモザイク処理を行った後に、赤・緑・青の画素信号に所定の係数を乗じて合成することで輝度画像信号を生成してもよい。
【0088】
ステップS612で、距離画像生成部312は、第1の輝度画像信号と第2の輝度画像信号との間の、光量バランスの補正を行う。光量バランスの補正は、第1の輝度画像信号と第2の輝度画像信号との少なくとも一方に所定の補正係数を乗算して実行される。補正係数は、撮像光学系301と撮像素子302の位置調整後に均一照明を与え、得られた第1の輝度画像信号と第2の輝度画像信号との輝度比を測定し、輝度比が一定になるように予め算出され、メモリ340に格納されているものとする。
【0089】
距離画像生成部312は、メモリから読出した補正係数を、第1の輝度画像信号と第2の輝度画像信号との少なくとも一方に乗算して、光量バランス補正が適用された第1の画像信号および第2の画像信号を生成する。
【0090】
ステップS613では、距離画像生成部312は、光量バランス補正が適用された第1の輝度画像信号と第2の輝度画像信号とに対して、ノイズを低減するための処理を行う。距離画像生成部312は、空間周波数の高い帯域を低減するローパスフィルタを各輝度画像信号に適用してノイズ低減処理を実行する。なお、距離画像生成部312は、所定の空間周波数帯域を透過するバンドパスフィルタを用いてもよい。この場合、ステップS612で行う光量バランス補正の補正誤差の影響を低減する効果を得られる。
【0091】
ステップS614で、距離画像生成部312は、第1の輝度画像信号と第2の輝度画像信号との間の相対的な位置ズレ量である視差量を算出する。距離画像生成部312は、第1の輝度画像信号に対応する第1の輝度画像内に、注目点を設定し、注目点を中心とする照合領域を設定する。次に、距離画像生成部312は、第2の輝度画像信号に対応する第2の輝度画像内に、参照点を設定し、参照点を中心とする参照領域を設定する。
【0092】
距離画像生成部312は、参照点を順次移動させながら照合領域内に含まれる第1の輝度画像と、参照領域内に含まれる第2の輝度画像間の相関度を算出し、最も相関が高い参照点を対応点とする。距離画像生成部312は、注目点と対応点間の相対的な位置のズレ量を、注目点における視差量とする。距離画像生成部312は、注目点を順次移動させながら視差量を算出することで、複数の画素位置における視差量を算出することができる。距離画像生成部312は、上記のようにして画素ごとに視差値を示す値を特定し、視差分布を示すデータである視差画像データを生成する。
【0093】
なお、距離画像生成部312が視差量を求めるために用いる相関度の算出方法としては公知の手法を用いることができる。距離画像生成部312は、例えば、輝度画像間の正規化相互相関を評価するNCC(Normalized Cross-Correlation)と呼ばれる手法を用いることができる。また、距離画像生成部312は、相関度として相違度を評価する手法を用いてもよい。距離画像生成部312は、例えば、輝度画像間の差の絶対値和を評価するSAD(Sum of Absolute Difference)や差の二乗和を評価するSSD(Sum of Squared Difference)を用いることができる。
【0094】
ステップS615で、距離画像生成部312は、視差画像データにおける各画素の視差量をデフォーカス量に変換して、各画素のデフォーカス量を取得する。距離画像生成部312は、視差画像データにおける各画素の視差量に基づいて、各画素におけるデフォーカス量を示すデフォーカス画像データを生成する。
【0095】
距離画像生成部312は、視差画像データにおける画素(x,y)の視差量d(x,y)と変換係数K(x,y)とを用いて、画素(x,y)のデフォーカス量ΔL(x,y)を以下の数式4から算出する。なお、撮像光学系301は、ヴィネッティング(けられ)により、周辺画角において第1の光束511と第2の光束521の一部が削られる。そのため、変換係数Kは画角(画素の位置)に依存した値となる。
【0096】
【0097】
中心画角と周辺画角とで焦点位置が変化する像面湾曲を有する特性を撮像光学系301が有する場合、像面湾曲量をCfとすると、以下の数式5を用いて視差量d(x,y)をデフォーカス量ΔL(x,y)に変換することができる。撮像光学系301と撮像素子302の位置合わせ後に、視差量と物体までの距離値の関係をチャート撮影により取得することで、変換係数Kと像面湾曲量Cfを取得することができる。このとき、像面湾曲量Cfは、画角に依存し、画素位置の関数として与えられる。
【0098】
【0099】
ステップS616で、距離画像生成部312は、画素(x,y)のデフォーカス量ΔL(x,y)を画素(x,y)における物体までの距離値D(x,y)への変換し、距離画像データを生成する。デフォーカス量ΔLを、撮像光学系301の結像関係を用いて変換することにより、物体までの距離値Dを算出することができる。撮像光学系301の焦点距離をf、像側主点から撮像素子302までの距離をIppとしたとき、以下の数式6の結像公式を用いて、デフォーカス量ΔL(x,y)を物体までの距離値D(x,y)に変換することができる。
【0100】
【0101】
なお、焦点距離fと像側主点から撮像素子302までの距離Ippは画角に寄らず一定値としているが、これに限らない。撮像光学系301の結像倍率が画角ごとに大きく変化する場合には、焦点距離fや像側主点から撮像素子302までの距離Ippの少なくとも1つを画角ごとに変わる値としてもよい。
【0102】
ステップS617で、距離画像生成部312は、以上のようにして生成された距離画像データを物体情報生成部320に出力する。ここで、ステップS611~S617の処理により、距離画像生成部312は、撮像手段の画素内に配置された第1の光電変換部と第2の光電変換部からの信号に基づき位相差測距方式により画素毎の距離相当情報を測定している。
【0103】
尚、距離相当情報を取得するために、ステレオカメラからの2つの画像信号に基づき位相差測距方式により距離相当情報を測定しても良い。以上で、距離画像生成部312が実行する距離画像データの生成処理が終了する。尚、不図示の終了指示をユーザが出すまでは
図6(B)のフローを周期的に繰り返す。
【0104】
尚、画素ごとの視差量d、デフォーカス量ΔL、撮像光学系301の主点からの距離値Dは、前述の係数と変換式を用いて変換可能な値である。従って、距離画像生成部312が生成する距離画像データとして、各画素が視差量dまたはデフォーカス量ΔLを表す情報を備えていても構わない。物体情報生成部320が、物体領域内に含まれる距離値Dの代表値を算出することを考慮すると、度数分布が対称になるデフォーカス量に基づき、距離画像データを生成することが望ましい。
【0105】
尚、上述のように、ステップS614の視差量を算出する処理において、第1の輝度画像と第2の輝度画像との相関を用いて対応点を探索している。しかし第1の画像信号に含まれるノイズ(例えば、光ショットノイズに起因するノイズ)が多い場合や、照合領域内に含まれる輝度画像信号の信号値の変化が小さい場合、相関度を正しく評価することができないことがある。このような場合、正しい視差量に対して誤差の大きい視差量を算出してしまうことがある。視差量の誤差が大きい場合、ステップS616で生成される距離値Dの誤差も大きくなる。
【0106】
従って、距離画像生成部312が行う距離画像データの生成処理は、視差量の信頼度(視差信頼度)を算出する信頼度算出処理を含んでいてもよい。視差信頼度は、算出された視差量がどの程度誤差を含んでいるかを示す指標である。例えば、照合領域に含まれる信号値の平均値に対する標準偏差の比を、視差信頼度として評価することができる。照合領域内の信号値の変化(いわゆるコントラスト)が大きい場合、標準偏差が大きくなる。画素に入射した光量が多い場合、平均値が大きくなる。画素に入射する光量が多い場合は、光ショットノイズが多い。すなわち平均値は、ノイズ量と正の相関を有する。
【0107】
標準偏差に対する平均値の比(標準偏差/平均値)は、コントラストの大きさとノイズ量との比に対応する。ノイズ量に対してコントラストが十分大きければ、視差量の算出における誤差が小さいと推定できる。すなわち、視差信頼度が大きいほど、算出された視差量における誤差が小さく、より正確な視差量であるといえる。
【0108】
尚、画素信号が飽和している画素及びその周辺画素については信頼度を低くしても良い。例えば、飽和した画素の近傍はコントラストがあっても基準画像と参照画像でのテクスチャを正しく検出できず、視差を正しく算出できない場合がある。従って、画素信号が所定値以上(飽和している)場合には、その画素の周辺については視差信頼度を低くするようにしても良い。
【0109】
そこで、ステップS614において、各注目点において視差信頼度を算出し、距離画像データを構成する画素ごとの距離値の確からしさを表す信頼度データを生成することができる。距離画像生成部312は、信頼度データを物体情報生成部320に出力することができる。
【0110】
次に、物体情報生成部320が画像データと距離画像データとに基づいて、外界情報と、物体距離情報とを生成する処理について
図7(A)、(B)を参照して説明する。
【0111】
図7(A)、(B)は、第1の実施形態に係る境界処理部321及び物体検出部323が実行する処理例を示すフローチャートである。又、
図8(A)~(E)は、第1の実施形態に係る物体情報生成部320が行う処理例における画像および情報の例を示す模式図である。尚、経路生成装置150に含まれるコンピュータとしてのCPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって
図7(A)、(B)のフローチャートの各ステップの動作が行われる。尚、後述の
図9~
図14のフローチャートの各ステップの動作も経路生成装置150に含まれるコンピュータとしてのCPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって行われる。
【0112】
図7(A)は、境界処理部321により短冊状矩形領域内に境界を生成すると共に例えば空、道路、それ以外の物体という分類をする処理例を示すフローチャートである。ステップS701の境界・物体検出処理において、境界処理部321は、現像部311からの画像データを、例えば画面垂直方向に短冊状矩形領域に分割する。
【0113】
図8(A)は、撮像装置110が取得し、物体情報生成部320に入力された画像データに基づく画像810を境界処理部321で画面垂直方向に短冊状矩形領域に分割した例を説明する図である。
図8(A)において、画像810は、人801、車両802、標識803、道路804、および車線805を含む。
【0114】
図8(A)に示すように、本実施形態では、画像810に対して、画面垂直方向に短冊状矩形領域に分割した状態で色の境界を検出するが、短冊状矩形領域の幅は図(A)に示す例に限定されない。又、本実施形態では、
図8(A)~(E)に示す画面は例えば車両内の不図示の表示部に表示されるが、その際、短冊状矩形領域は表示しなくても良い。
【0115】
境界処理部321は、更に、各短冊状矩形領域内の画像に対して、色差信号(又は色信号)に基づき境界を検出する。
図7(B)は、ステップS701における境界処理部321による境界・物体検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0116】
図7(B)に示すように、ステップS701における境界・物体検出処理において、境界処理部321は最初にステップS7011で、物体境界候補決定処理を行う。次いで、距離情報生成部322によりステップS7012で距離相当情報統合処理を行う。そして、ステップS7013で物体検出部323が短冊状矩形領域内の物体検出処理を行う。尚、ステップS7013における物体検出処理は、短冊状矩形領域内を空と、道路と、それ以外の物体に分類するための処理である。
【0117】
図9は境界処理部321により行われる
図7(B)のステップS7011の物体境界候補決定処理の具体例を示すフローチャートであり、ステップS901で境界処理部321により、RGB画像をLab画像に変換する。次にステップS902で、境界処理部321により、画面の縦(横)方向に色差の変化量を計算する。
【0118】
具体的には例えば画面の上端から順次、画素毎に、画面の縦方向に数画素離れた2つの画素の色距離(色変化量)ΔCを計算する。そしてステップS903において、ΔCが所定の閾値Thよりも大きいか判定する。Yesの場合にはステップS904において距離境界候補として設定する。即ち、色変化が大きな画素を境界の候補として設定する。即ち、色情報が所定の閾値Thより変化する位置を境界として検出する。
【0119】
尚、短冊状矩形領域(分割領域)は縦方向(所定方向)に対して交差する方向(横方向)に幅を持っており、交差する方向(横方向)に複数の画素を有する。従って、上記の色情報とは、横方向に並んだ複数の画素の色情報に基づいて求められる代表値を意味する。ここで代表値は中央値や平均値などを用いて算出する。
【0120】
一方、ステップS903でNoの場合にはステップS905で非距離境界画素として設定する。即ち、色変化量が小さい画素は境界ではないという設定をする。
【0121】
そしてステップS906において、短冊状矩形領域のすべての画素について距離境界候補又は非距離境界候補の設定が終了したかを判定し、Noの場合にはステップS902に戻りステップS902~ステップS906の処理を繰り返す。
【0122】
ステップS906でYesとなった場合には、ステップS907において、距離境界候補の画素について暫定的に距離境界として設定する。次いでステップS908において、それらの距離境界の間隔が所定値(例えば10画素)以下の場合にはその画素に対する境界の設定をキャンセルする。そしてステップS909で、互いに所定値以上画素距離が離れた最終的な距離境界を設定する。以上のように、ステップS901~ステップS909は、画像情報を、所定方向に延びる複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出ステップとして機能している。
【0123】
図10は距離情報生成部322による、
図7(B)のステップ7012における距離相当情報統合処理の詳細な例を示すフローチャートであり、最初にステップS1101において、距離境界矩形生成処理を行う。具体的には、距離境界と短冊状矩形領域の幅で囲まれた、色が略共通の距離境界矩形を生成する。
【0124】
そしてステップS1002において、距離境界矩形内の各画素の距離情報を信頼度に基づき重み付け処理して、距離境界矩形(以降、サブ領域と呼ぶこともある。)毎に距離相当情報を生成する。この時に、色情報に基づいて各画素の距離相当情報の確からしさを表す信頼度を生成し、信頼度に基づいて重み付けされた各画素の距離相当情報に基づいてサブ領域毎の統合距離相当情報を決定しても良い。
【0125】
その場合、色情報に基づいて撮像素子から得られる複数の画像の視差量を算出し、色情報に基づいて各画素の視差量の確からしさを示す視差信頼度を算出し、視差信頼度に基づいて前記信頼度を生成する。その際に、複数の画像の輝度値が所定値以上の画素の視差信頼度を、輝度値が所定未満の場合よりも低くなるように算出しても良い。
【0126】
又、その距離境界矩形内の画素の高さを平均化することによって距離境界矩形毎の平均高さ情報を生成する。尚、距離境界矩形内の、距離情報の信頼度が所定値以上の画素の距離情報の中央値や最頻値などを距離相当情報としても良い。
【0127】
次にステップS1003において、各距離境界矩形における距離情報信頼度が所定値以上の画素の比率を計算する。或いは、距離境界矩形毎に距離相当情報又は高さ情報の統計値(例えば標準偏差以下の画素の割合)を計算する。
【0128】
次にステップS1004において、距離情報の信頼度が所定値以上の画素の割合が所定割合以上か否かを判定する。その結果がNoの場合にはステップS1005で、その距離境界矩形の信頼度が低いことを示す情報をその距離境界矩形に付与する。一方ステップS1004でYesの場合には、その距離境界矩形に対して統合距離相当情報及び高さ情報を決定し付与する。
【0129】
そしてステップS1007で、距離境界矩形毎に統合距離相当情報及び高さ情報を有するマップを生成する。ここで、ステップS1001~ステップS1007は、画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、分割領域内の境界で区切られたサブ領域毎の統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定ステップとして機能している。
【0130】
図11は、物体検出部323による、
図7(B)のステップ7012における物体検出処理の詳細な例を示すフローチャートであり、ステップS1101において、短冊状矩形領域毎に画面上端から物体境界を探索する。そしてステップS1102において、短冊状矩形領域内の距離値処理を行う。具体的には、無限遠相当(所定値でも良い)より近距離か否かを距離境界矩形内の距離相当情報と比較する。それによってNoの場合にはステップS1103で空領域と設定であると設定し、ステップS1102に戻り、画面の上端から順次、距離境界矩形毎に空か、道路か、それ以外かの判定を続ける。
【0131】
ステップS1102でYesとなった場合には、画面上端から探索した空領域が切れて別の物体領域に入った状態となる。従って、ステップS1104でその画素が空と物体の境界であると決定する。次にステップS1105で、短冊状矩形領域の下端の画素から物体境界を探索する。そしてステップS1106で距離境界矩形の例えば平均の高さ情報について所定の閾値と比較する。即ち、所定の閾値として、例えば車両に設置されたカメラの高さより、距離境界矩形の高さが高いか否かを判定する。尚、所定の閾値として、カメラの高さの代わりに、例えば画面の下半分の画素の高さ情報の中央値を用いても良い。これは、画面下半分を道路が占めている可能性が高いからである。
【0132】
ステップS1106でNoの場合には距離境界矩形の高さがカメラ位置より低いのでステップS1107で道路領域として設定し、ステップS1106に戻り画面の下側から上側に向けて更に探索を進める。一方ステップS1106でYesになった場合には、ステップS1108で道路とそれ以外の物体との境界として設定をする。
【0133】
そしてステップS1109において、短冊状矩形領域毎にその短冊状矩形領域内の距離境界矩形を道路、空、又はそれ以外の物体、の3つのカテゴリに分類分けする。ここで、ステップS1101~ステップS1109は、統合距離相当情報が決定されたサブ領域に対して、サブ領域の統合距離相当情報に応じて所定の分類分けをする分類ステップとして機能している。尚、実施例では、サブ領域の高さも参照して分類分けをしている。
【0134】
以上のようにして、短冊状矩形領域毎に、短冊状矩形領域内の距離境界矩形を道路、空、又はそれ以外の物体、の3つのカテゴリに分類分けする。その後で、物体検出部323は、
図7(A)のステップS702において、短冊状矩形領域を水平方向に統合し物体検出を行う。
【0135】
このように予め短冊状矩形領域毎に空と道路とそれ以外とを分類しているので、短冊状矩形領域を水平方向に統合し物体検出を行う際に、空と道路以外の物体に対して物体認識を重点的に行うことができ、画像認識処理の負荷が減る。又、物体検出部323は、検出された空や道路やそれ以外の物体に関する情報を示す外界情報を精度良く生成することができる。
【0136】
尚、物体検出を行う際に、物体検出部323は、画像処理部310から入力された画像データのサイズを、物体検出処理における検出性能と処理時間とから決定されるサイズに拡縮する処理を行っても良い。
【0137】
物体検出部323は、画像データに基づく画像に含まれる物体の画像における位置、幅や高さなどのサイズ、領域などを示す領域情報、物体の種類(属性)、および識別番号(ID番号)を示す外界情報を生成する。識別番号は、検出された物体を識別するための識別情報であって、番号に限定されない。物体検出部323は、撮像装置110の撮影画角内に存在する物体の種類、および画像における物体の位置とサイズを検出するとともに、既に登録済みの物体か否かを判断して識別番号を付与する。
【0138】
物体検出部323は、画像810から物体を検出し、各物体の種類、識別番号、および領域情報を示す外界情報を生成する。
図8(B)は、画像810から検出された各物体の外界情報を、xy座標平面に、画像810における各位置に示した模式図である。尚、
図8(A)~(E)において短冊状矩形領域が表示されているが、短冊状矩形領域は不図示の表示部の画面には表示しなくても良い。
【0139】
尚、外界情報は、例えば表1で示されるようなテーブルとして生成される。外界情報において、物体の領域は、当該物体を囲む矩形の枠(物体枠)として定義されるものとする。外界情報において、物体の領域情報は、矩形の物体枠の形状を、左上の座標(x0,y0)および右下の座標(x1,y1)として示される。
【0140】
【0141】
ステップS702で、物体検出部323は、短冊状矩形領域を水平方向に統合したうえで、画像データに基づく画像に含まれる物体を検出する処理を実行し、画像における物体に対応する領域と、物体の種類を検出する。物体検出部323は、1つの画像から複数の物体を検出してもよい。この場合、物体検出部323は検出された複数の物体に対して種類と領域とを特定する。
【0142】
物体検出部323は、物体が検出された画像の領域の位置およびサイズ(水平幅、垂直高さ)と、物体の種類と、を外界情報として生成する。物体検出部323が検出可能な物体の種類は、例えば、車両(乗用車、バス、トラック)、人、動物、二輪車、標識などであるとする。物体検出部323は、あらかじめ物体の種類に関連付けられた所定の外形パターンと、画像中の物体の外形とを比較することにより、物体を検出するとともに、検出された物体の種類を特定する。なお、物体検出部323が検出可能な物体の種類は上記に限らないが、車両100の走行環境に応じて検出する物体の種類の数を絞り込むことが処理速度の観点から望ましい。
【0143】
ステップS703で、物体検出部323は、既に識別番号が登録されている物体の追跡を行う。物体検出部323は、ステップS702で検出された物体のうち、既に識別番号が登録されている物体を特定する。識別番号が登録された物体とは、例えば、前回までの物体検出処理で検出され、識別番号を割り当てられた物体である。物体検出部323は、識別番号が登録された物体が検出された場合、当該識別番号に対応する外界情報に、ステップS702で取得された物体の種類、および領域に関する情報を対応付ける(外界情報を更新する)。
【0144】
なお、識別番号が登録された物体が画像情報中には存在しないと判断された場合、当該識別番号に関連付けられた物体は、撮像装置110の撮影画角の外に移動した(ロストした)と判断して、追跡を中断する。
【0145】
ステップS704で、物体検出部323は、ステップS702で検出された物体の各々について、識別番号が登録されていない新規の物体かどうかを判断する。そして、新規の物体と判断された物体の種類および領域を示す外界情報に、新しい識別番号を割り当て、外界情報に登録する。
【0146】
ステップS705で、物体検出部323は、生成した外界情報を、時刻を表す情報と共に経路生成装置150に出力する。以上で、物体検出部323が実行する外界情報の生成処理が終了する。但し、不図示の終了指示をユーザが出すまでは
図7(A)のフローは周期的に繰り返される。
【0147】
図12は、距離情報生成部322が行う物体ごとの距離情報の生成処理例を示すフローチャートである。距離情報生成部322は、外界情報と距離画像データとに基づいて、検出された物体毎の距離値を表す物体距離情報を生成する。
図8(C)は、
図8(A)の画像データに基づき生成された、画像810に距離画像データを対応付けた距離画像820の例を示す図である。
図8(C)の距離画像820において、距離情報は色の濃淡で示され、色が濃いほど近く、色が薄いほど遠くを表している。
【0148】
ステップS1201で、距離情報生成部322は、物体検出部323が検出した物体の数Nをカウントし、検出した物体の総数である検出物体数Nmaxを算出する。
【0149】
ステップS1202で、距離情報生成部322は、Nを1に設定する(初期化処理)。ステップS1203以降の処理は、外界情報に示される各物体に対して順に実行する。外界情報において識別番号が小さい順にステップS1203からステップS1206の処理が実行されるとする。
【0150】
ステップS1203で、距離情報生成部322は、外界情報に含まれるN番目の物体の、画像810上における領域(物体枠)に対応する距離画像820上の矩形領域を特定する。距離情報生成部322は、距離画像820上の対応する領域の外形を示す枠(物体枠)を設定する。
【0151】
図8(D)は、画像810から検出された各物体に対して、距離画像820に設定された領域の外形を示す枠を重畳した模式図である。
図8(D)に示されるように、距離情報生成部322は、距離画像820上に人801に対応する物体枠821、車両802に対応する物体枠822、および標識803に対応する物体枠823をそれぞれ設定する。
【0152】
ステップS1204で、距離情報生成部322は、N番目の物体に対応する距離画像820の矩形領域に含まれる画素の距離情報の度数分布を生成する。距離画像データの各画素に対応付けられた情報が距離値Dである場合、度数分布の区間は、距離の逆数が等間隔になるように区間が設定される。
【0153】
なお、距離画像データの各画素にデフォーカス量もしくは視差量が対応付けられている場合は、度数分布の区間は、等間隔で区切ることが望ましい。
【0154】
ステップS1205で、距離情報生成部322は、度数分布から最頻出となる距離情報を、N番目の物体の距離を示す物体距離情報とする。
【0155】
なお、領域内に含まれる距離値の平均値を算出して、物体距離情報としてもよい。平均値を算出する際に信頼度データを用いて重み付け平均を用いることができる。画素ごとに距離値の信頼度が高いほど重みを大きく設定することで、より精度よく物体の距離値を算出することができる。
【0156】
なお、物体距離情報は、後述の経路生成処理における経路生成を容易にするために、車両100の所定の位置から物体までの距離を示す情報とすることが望ましい。距離情報として距離値Dを用いる場合、距離値Dは撮像素子302から物体までの距離を示すことから、最頻出値を所定量オフセットして車両100の所定の位置(例えば前端部)から物体までの距離を示す情報とすることができる。距離情報としてデフォーカス量ΔLを用いる場合、数式6を用いて撮像素子302からの距離に変換したのち、所定量だけオフセットすることで、車両100の所定の位置から物体までの距離を示す情報とする。
【0157】
ステップS1206で、距離情報生成部322は、N+1が検出物体数Nmaxより大きいかを判定する。N+1が検出物体数Nmaxより小さい場合(ステップS1206でNoの場合)は、ステップS1207で、距離情報生成部322は、NをN+1とし、処理はステップS1203に戻る。すなわち、次の物体(N+1番目の物体)について物体距離情報の抽出を行う。ステップS1206でN+1が検出物体数Nmaxより大きい場合(ステップS1206でYesの場合)は、ステップS1208に進む。
【0158】
ステップS1208では、距離情報生成部322は、Nmax個の各物体に対する物体距離情報を時刻に関する情報とともに経路生成部330に出力し、処理を終了する。これらの情報はメモリ180に記憶される。又、レーダ装置120からの距離情報も時刻情報と共にメモリ180に記憶される。尚、不図示の終了指示をユーザが出すまでは
図12のフローを周期的に繰り返す。
【0159】
以上の物体距離情報生成処理により、外界情報に含まれる物体毎に物体距離情報を生成する。特に、画像810内で検出された物体に対応する距離画像820の領域に含まれる距離情報から統計的に物体の距離情報を決定することにより、ノイズや演算の精度などに起因する画素ごとの距離情報のばらつきを抑制することが可能となる。したがって、より高精度に物体の距離を示す情報を取得することが可能となる。統計的に距離情報を決定する方法は、上述のように、距離情報の分布のうち最頻出の距離情報や平均値、中央値、などをとる方法であり、種々の方法を採用可能である。
【0160】
次に経路生成ECU130の経路生成部330が実行する経路情報を生成する処理(経路生成処理)について説明する。経路情報は、車両の進行方向、速度を含む情報である。経路情報は、運行計画情報であるともいえる。経路生成部330は経路情報を車両制御ECU140に出力する。車両制御ECU140は、経路情報に基づいて、駆動部170を制御することで車両の進行方向や速度を制御する。
【0161】
本実施形態において、経路生成部330は、車両100の進行方向に他の車両(前走車)がある場合に、前走車に追従して走行するように経路情報を生成する。また、経路生成部330は、車両100が物体と衝突しないように、回避行動をとるように、経路情報を生成するものとする。
【0162】
図13は、第1の実施形態に係る経路生成部330が実行する経路生成処理例を示すフローチャートである。尚、経路生成装置150に含まれるコンピュータがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって
図13のフローチャートの各ステップの動作が行われる。
【0163】
経路生成部330は、例えばユーザの指示により経路生成処理を開始する指示が出された場合に、
図13のフローを開始し、外界情報、物体距離情報、およびレーダ装置120が生成する距離情報に基づき、車両100の経路情報を生成する。経路生成ECU130は、例えば経路生成装置150が備えるメモリ180から、各時刻の外界情報と物体距離情報とレーダ装置120が生成する距離情報を読み出して処理を行う。
【0164】
ステップS1301で、経路生成部330は、外界情報と物体距離情報とから、車両100が予定している走行経路上の物体を検出する。経路生成部330は、車両100が予定している進行方向の方位と、外界情報に含まれる物体の位置と種類とを比較して走行経路上の物体を判定する。車両100が予定している進行方向は、車両制御ECU140から取得した車両100の制御に関する情報(ステアリングの航角量、速度など)に基づいて特定されるとする。なお、経路生成部330は、走行経路上の物体が検出されない場合、「物体無し」と判定する。
【0165】
例えば
図8(A)に示した画像810を撮像装置110が取得したとする。経路生成部330が、車両制御ECU140から取得した車両100の制御に関する情報から、車両100が車線805に沿った方向に進行していると判断した場合、経路生成部330は、車両802を走行経路上の物体として検出する。
【0166】
ステップS1302、ステップS1303で、経路生成部330は、車両100と走行経路上の物体との距離と、車両100の速度Vcに基づいて、追従走行をするための経路情報を生成するか、回避行動のための経路情報を生成するかを判定する。
【0167】
ステップS1302で、経路生成部330は、車両100と走行経路上の物体との距離が閾値Dthよりも短いか否かを判定する。閾値Dthは、車両100の走行速度Vcの関数で表される。走行速度が高いほど、閾値Dthは大きくなる。経路生成部330が、車両100と走行経路上の物体との距離が閾値Dthより短いと判定した場合(ステップS1302Yes)、処理はステップS1303に進む。経路生成部330が、車両100と走行経路上の物体との距離が閾値Dth以上であると判定した場合(ステップS1302No)、処理はステップS1308に進む。
【0168】
ステップS1303で、経路生成部330は、車両100と走行経路上の物体との相対速度が正の値であるか否かを判定する。経路生成部330は、外界情報から走行経路上の物体の識別番号を取得し、現時点から所定の時間前までに取得した外界情報から各時刻の走行経路上の物体の、物体距離情報を取得する。経路生成部330は、取得した所定の時間前までの期間における走行経路上の物体の、物体距離情報から、車両100と走行経路上の物体との相対速度を算出する。相対速度(車両100の速度-走行経路上の物体の速度)が、正の値である場合、車両100と走行経路上の物体とが近づいていることを示す。
【0169】
経路生成部330が、車両100と走行経路上の物体との相対速度が正の値であると判定した場合(ステップS1303Yesの場合)、処理はステップS1304に進む。経路生成部330が、車両100と走行経路上の物体との相対速度が正の値でないと判定した場合(ステップS1303No)、処理はステップS1308に進む。
【0170】
ここで、ステップS1304に処理が進む場合、回避行動を実行するための経路情報が生成される。また、ステップS1308に処理が進む場合には、前車との間隔を維持する追従走行を実行するための経路情報が生成される。
【0171】
すなわち、経路生成部330は、車両100と走行経路上の物体との距離が閾値Dthよりも短く、かつ、車両100と走行経路上の物体との相対速度が正の値である場合に、回避行動を実行する。一方、経路生成部330は、車両100と走行経路上の物体との距離が閾値Dth以上である場合、追従走行とすると判定する。もしくは、経路生成部330は、車両100と走行経路上の物体との距離が閾値Dthよりも短く、かつ、車両100と走行経路上の物体との相対速度がゼロの場合又は負の値である場合(離れつつある場合)に、追従走行とすると判定する。
【0172】
車両100と走行経路上の物体との距離が車両100の速度から求められる閾値Dthよりも短く、かつ、車両100と走行経路上の物体との相対速度が正の値である場合、車両100が走行経路上の物体に衝突する可能性が高いと考えられる。したがって、経路生成部330は、回避行動をとるように経路情報を生成する。そうでない場合、経路生成部330は、追従走行をとる。なお、上述の判定には、検出された走行経路上の物体の種類が移動体(自動車やバイク等)か否かの判定を加えてもよい。
【0173】
ステップS1304で、経路生成部330は、回避行動を実行するための経路情報を生成する処理を開始する。
【0174】
ステップS1305で、経路生成部330は、回避スペースに関する情報を取得する。経路生成部330は、レーダ装置120から車両100の側方や後方の物体までの距離やその物体との距離の予測情報を含む距離情報を取得する。
【0175】
経路生成部330は、レーダ装置120から取得した距離情報(第4の距離情報)と、車両100の速度と、車両100の大きさを示す情報とに基づいて、車両100の周囲に、車両100が移動可能な空間の方向と大きさを示す情報を取得する。尚、本実施形態では、レーダ装置120から取得した距離情報(第4の距離情報)を回避スペースのために利用しているが、物体までの統合距離情報を生成するのに使っても良い。
【0176】
ステップS1306で、経路生成部330は、車両100が移動可能な空間の方向と大きさを示す情報、外界情報、および物体距離情報に基づいて、回避行動のための経路情報を設定する。回避行動のための経路情報は、例えば、車両100の右側方に回避可能な空間がある場合に、例えば減速しながら、車両100を右側に進路変更する情報である。
【0177】
ステップS1307で、経路生成部330は、車両制御ECU140に経路情報を出力する。車両制御ECU140は、取得した経路情報に示される経路を車両100が通るように、経路情報に基づいて駆動部170を制御するパラメータを決定し、駆動部170を制御する。具体的には、車両制御ECU140は、経路情報に基づいて、ステアリングの航角量、アクセルの制御値、ブレーキの制御値、ギアの接続のための制御信号、およびランプの点灯制御信号などを決定する。
【0178】
尚、ここで、ステップS1307は、距離情報に基づき経路情報を生成する経路生成ステップ(経路生成手段)として機能している。一方、ステップS1308で、経路生成部330は、追従運行を実行するための経路情報を生成する処理を開始する。
【0179】
ステップS1309で、経路生成部330は、車両100が走行経路上の物体(前走車)に追従するため経路情報を生成する。具体的には、経路生成部330は、車両100と前走車との間の距離(車間距離)が所定の範囲を維持するように、経路情報を生成する。例えば、経路生成部330は、車両100と前走車との間の相対速度がゼロ又は負の値の場合、又は、車間距離が所定の距離以上の場合は、車両100の進行方向を直進に維持しつつ、加減速により所定の車間距離を維持するように経路情報を生成する。
【0180】
なお、経路生成部330は、車両100の走行速度が所定値(例えば、車両100が走行している道路の法定速度や、運転者101からの指示に基づく設定走行速度)を超えないように経路情報を生成する。ステップS1309の後はステップS1307に進み、車両制御ECU140が生成された経路情報に基づいて駆動部170を制御する。ここで、車両制御ECU140は、物体検出部323により検出された物体の位置やサイズなどの情報に基づき経路生成部330で生成された経路情報などに基づき走行状態を制御する走行制御手段として機能している。
【0181】
次に、ステップS1310で経路生成処理の終了の指示がユーザから出されたか判別し、Yesであれば、経路生成部330による経路情報の生成処理が終了する。Noの場合は、ステップS1301に戻り、経路情報の生成処理を繰り返し実行する。
【0182】
上述した制御によれば、画像中の物体の位置とサイズに基づく枠内で距離情報を統計処理することにより、センサノイズの影響や、被写体からの高輝度な反射に起因する局所的な距離誤差の影響を低減し、各物体までの距離値を高精度に算出することができる。又、各物体までの距離値を高精度化することができ、経路生成ECU130が算出する車両100の経路を精度よく算出することができるため、車両100はより安定した走行が可能となる。
【0183】
<変形例1>
上述の処理では、物体の領域を、物体を包含する矩形領域(物体枠)として示したが、物体の領域を画像内の物体の外周を境界とする物体の形状を有する領域としてもよい。その場合、ステップS702で、物体検出部323は、画像810で物体が存在する領域を、物体の領域として外界情報に記憶する。例えば、物体検出部323は、画像データの画素ごとに、属性を識別することで、物体毎に領域分割することができる。
【0184】
図8(E)は、物体検出部323が物体毎に領域分割を行い、その結果を画像810に重畳した例を示した模式図である。領域831は人801の領域を、領域832は車両802の領域を、領域833は標識803の領域を表している。さらに、領域834は道路804の領域を、領域835は車線805の領域を表している。
【0185】
この場合、ステップS1203、およびステップS1204で、距離情報生成部322は、各物体に対して、
図8(E)に示す領域ごとに、領域内に含まれる距離値の例えば度数分布を算出すれば良い。
【0186】
このように物体の領域を定義することにより、領域内に物体以外の背景などの距離情報が含まれづらくなる。すなわち、領域内の距離情報の分布において、より物体の距離情報を反映することが可能となる。したがって、物体の背景や前景など物体以外の領域の影響を低減できるため、より精度よく物体の距離値を算出することができる。
【0187】
<変形例2>
本実施形態の撮像装置110からは、画像情報と距離画像情報が逐次出力される。さらに、物体検出部323は逐次受け取った画像情報を用いて外界情報を逐次生成している。外界情報には物体の識別番号が含まれ、ある時刻T0と時刻T1のそれぞれで同じ識別番号の物体が検出された場合、当該物体の距離情報や検出された大きさなどの時間変化を判断することができる。従って、変形例2においては、距離情報生成部322は、所定の時間範囲における同一の識別番号の物体の距離値Dの平均を算出する。これにより、時間方向の距離ばらつきを低減する。
【0188】
図14は変形例2における距離情報生成部322が行う物体距離情報生成処理例を示すフローチャートである。尚、経路生成装置150に含まれるコンピュータがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって
図14のフローチャートの各ステップの動作が行われる。本フローチャートの各処理について、
図12に示した処理と同じ番号で示した処理は、
図12について説明した処理と同じであるので、説明を省略する。
【0189】
ステップS1401で、距離情報生成部322は、ステップS1204で生成された度数分布から最頻出となる距離情報を、N番目の物体の距離を示す物体距離情報とする。そして、距離情報生成部322は、物体距離情報を識別番号、および時刻と合わせてメモリ340に格納(記憶)する。
【0190】
ステップS1402で、距離情報生成部322は、メモリ340に格納された物体距離情報のうち、N番目の物体の識別番号と同一の識別番号の物体距離情報の履歴を取得する。距離情報生成部322は、最新の物体距離情報に対応する時刻から所定の時間だけ前までの時刻に対応する同一の識別番号の物体距離情報を取得する。
図15は、N番目の物体と同一の識別番号の物体の、物体距離情報の時間変化の例を説明するための模式図である。横軸に時間、縦軸に物体距離情報(距離値D)を示す。時刻t0が最新の距離値Dを取得した時間を示している。
【0191】
ステップS1403で、距離情報生成部322は、取得したN番目の物体と同一の識別番号の物体の、物体距離情報の履歴から、最新の物体距離情報を取得した時刻から所定の時間前までの時間範囲に含まれる物体距離情報の平均値を算出する。距離情報生成部322は、例えば、
図15において、所定の時間範囲ΔTに含まれる4点の距離値の平均値を算出する。
【0192】
上述のようにして、外界情報に含まれる識別番号を用いて同一物体の物体距離情報(距離値)の履歴を取得し、時間平均をとることにより、ばらつきを抑制することが可能となる。車両100が走行する道路が変化した場合(例えば、カーブ、坂道、凹凸の多い悪路など)でも、同一物体を追跡しつつ、時間方向の平均値を算出することができる。
【0193】
したがって、走行環境変化の影響を低減しつつ、画像信号に含まれる光ショットノイズなどのノイズによる距離値のばらつきを低減し、より精度よく物体の距離値を算出することができる。尚、変形例2においては、同様の効果を得るために、物体距離情報を取得する際に、ローパスフィルタを介して、ある程度時間平均した物体距離情報を取得するようにしても良い。
【0194】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、距離画像データを取得するために同一の光学系を介して撮像面位相差方式で左右の視差画像を取得する撮像装置を例として説明したが、視差画像の取得方法はこれに限らない。左右に所定の距離だけ離して設けられた2つの撮像装置によって左側の視差画像と右側の視差画像とをそれぞれ取得する、いわゆるステレオカメラで左右の視差画像を取得することも可能である。
【0195】
また、LiDARなどの測距デバイスを用いて距離情報を取得し、撮像装置から得られた撮像画像に対する画像認識によって得られた外界情報を用いて、上述の測距を行うことも可能である。
【0196】
又、以上の実施形態において、物体の前記第1~前記第3の距離情報の少なくとも2つの履歴又は、統合距離情報の歴に基づき統合距離情報を生成するようにしても良い。
【0197】
尚、以上の実施形態を適宜組み合わせても良く、例えば以下のような構成等を含む。
【0198】
(構成1)画像情報を、所定方向に延びる複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出手段と、前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎の統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【0199】
(構成2)
前記統合距離相当情報が決定された前記サブ領域に対して、前記サブ領域の前記統合距離相当情報に応じて所定の分類分けをする分類手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【0200】
(構成3)
前記分類手段は、前記サブ領域を空と道路とそれ以外の3つの分類のいずれかに分類分けすることを特徴とする構成2に記載の画像処理装置。
【0201】
(構成4)
前記所定の方向は画面の縦方向であることを特徴とする構成1~3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0202】
(構成5)
前記画像情報の各画素に対して前記距離相当情報を検出する距離相当情報測定手段を有することを特徴とする構成1~4のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0203】
(構成6)
前記距離相当情報測定手段は、前記色情報に基づいて各画素の距離相当情報の確からしさを表す信頼度を生成し、前記統合距離相当情報決定手段は、前記信頼度に基づいて重み付けされた各画素の前記距離相当情報に基づいて前記サブ領域毎の統合距離相当情報を決定することを特徴とする構成5に記載の画像処理装置。
【0204】
(構成7)
被写体を撮像して視点が異なる複数の画像を生成する撮像手段を有し、前記距離相当情報測定手段は、前記色情報に基づいて前記複数の画像の視差量を算出し、前記色情報に基づいて各画素の前記視差量の確からしさを示す視差信頼度を算出し、前記視差信頼度に基づいて前記信頼度を生成することを特徴とする構成6に記載の画像処理装置。
【0205】
(構成8)
前記距離相当情報測定手段は、前記複数の画像の輝度値が所定値以上の画素の前記視差信頼度を、輝度値が所定未満の場合よりも低くなるように算出することを特徴とする構成7に記載の画像処理装置。
【0206】
(構成9)
被写体を撮像して前記画像情報を生成する撮像手段を有し、前記距離相当情報測定手段は、前記撮像手段の画素内に配置された第1の光電変換部と第2の光電変換部からの信号に基づき位相差測距方式により前記距離相当情報を測定することを特徴とする構成5に記載の画像処理装置。
【0207】
(構成10)
前記距離相当情報測定手段は、ステレオカメラからの2つの画像信号に基づき位相差測距方式により前記距離相当情報を測定することを特徴とする構成5に記載の画像処理装置。
【0208】
(構成11)
前記境界検出手段は、前記色情報が所定の閾値より変化する位置を前記境界として検出することを特徴とする構成1~10のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0209】
(構成12)
前記分割領域は前記所定方向と交差する方向に複数の画素を有し、前記色情報は前記複数の画素に基づいて求められる代表値であることを特徴とする構成11に記載の画像処理装置。
【0210】
(構成13)
前記分類手段によって前記分類分けがされた前記サブ領域を含む複数の前記分割領域の画像を統合して物体検出を行う物体検出手段を有することを特徴とする構成2又は3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0211】
(構成14)
画像情報を、所定方向に延びる複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出手段と、前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎の統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定手段と、前記統合距離相当情報が決定された前記サブ領域を含む複数の前記分割領域の画像を統合して物体検出を行う物体検出手段と、前記物体検出手段により検出された物体の情報に基づき走行状態を制御する走行制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【0212】
(方法1)
画像情報を、所定方向に延びる複数の分割領域に分割し、各分割領域内の画像に対して少なくとも色情報に基づく境界を検出する境界検出ステップと、前記画像情報の各画素の距離相当情報に基づき、前記分割領域内の前記境界で区切られたサブ領域毎の統合距離相当情報を決定する統合距離相当情報決定ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【0213】
(プログラム1)
構成1~9のいずれか1つに記載の画像処理装置又は構成10に記載の移動体の各手段をコンピュータによって制御するためのコンピュータプログラム。
【0214】
尚、上述の実施形態においては、移動体として自動車の車両に電子機器としての距離算出装置を搭載した例について説明した。しかし、移動体は、自動二輪車、自転車、車椅子、船舶、飛行機、ドローン、AGVやAMRなどの移動ロボットなど、移動可能なものであればどのようなものであってもよい。又、本実施形態の電子機器としての距離算出装置はそれらの移動体に搭載されるものに限らず、移動体に搭載されたカメラ等の画像を通信により取得し、移動体から離れた位置で距離を算出するものを含む。
【0215】
以上、本発明をその好適な実施形態(実施例)に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施形態(実施例)に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0216】
尚、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(制御プログラム)を記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給することによって実現してもよい。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたコンピュータ読取可能なプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。
【0217】
その場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0218】
100:車両
101:運転者
110:撮像装置
120:レーダ装置
130:経路生成ECU
140:車両制御ECU
150:経路生成装置
160:車両情報計測器
320:物体情報生成部
321:境界処理部
322:距離情報生成部
323:物体検出部