(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】加圧下でガス媒体中にて血液製剤及び細胞培養物を保存するための装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240508BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20240508BHJP
C12M 1/04 20060101ALI20240508BHJP
A61J 1/10 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/02
C12M1/04
A61J1/10 330A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022137395
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2019547643の分割
【原出願日】2018-01-31
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313016510
【氏名又は名称】リッチ テクノロジーズ ホールディング カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリイーン,イリヤ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527832(JP,A)
【文献】特表2014-510731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082043(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00ー3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液製剤を保存する方法であって、
二次バッグと貯蔵バッグとを含む容器を準備すること、ここで、前記二次バッグは、密封可能な二次バッグキャビティを有しており、前記貯蔵バッグは、前記二次バッグキャビティに収容されており、前記貯蔵バッグは、密封可能な貯蔵キャビティを有しており、当該貯蔵キャビティには、保存される
血液製剤が含まれている;
前記二次バッグキャビティを密封すること;
前記二次バッグキャビティに、キセノンを少なくとも5
0体積%含むガス系を導入し、第一圧力に至らせること、ここで、
前記第一圧力は環境気圧より0.1~2バール高い圧力であり、及び、前記貯蔵バッグが、前記二次バッグの二次バッグキャビティ内に密封されているとき、前記貯蔵バッグは前記ガス系に透過性であり、前記二次バッグは前記ガス系に不透過性である;
チャンバーキャビティを含むチャンバーを準備すること、ここで、前記チャンバーキャビティは、1又は複数の前記容器を少なくとも部分的に収容するように構成されている;
前記容器を、前記チャンバーキャビティに挿入すること;
前記容器を、前記チャンバーキャビティ内に密閉すること;及び
チャンバー用ガスを、前記チャンバーキャビティに注入することによって、前記チャンバーキャビティ内の圧力を、前記第一圧力よりも大きい第二圧力に上昇させること;を含み、
ここで、
前記チャンバーキャビティは、15℃と前記血液製剤の凝固点との間の温度範囲に冷却され、
前記二次バッグは、前記チャンバー用ガスに不透過性であり、前記チャンバー用ガスは、前記ガス系とは異なる組成を有するものであり、
前記二次バッグキャビティ内の前記ガス系が、前記貯蔵バッグ内に拡散又は浸透して、前記貯蔵バッグ内で、前記
血液製剤が前記ガス系で部分的に又は完全に飽和される、方法。
【請求項2】
前記チャンバーキャビティの温度が前
記温度範囲内である間、前記チャンバーキャビティ内の前記容器を回転させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液製剤が、血小板濃縮液、全血、又は濃厚赤血球である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記貯蔵バッグが、前記二次バッグキャビティ内に少なくとも部分的に挿入されている間に、前記二次バッグキャビティ内に前記ガス系を注入できるように構成されているガス注入口を、前記二次バッグが含んでおり、前記ガス注入口は、前記二次バッグキャビティ内の前記ガス系が、当該ガス注入口を経て前記二次バッグキャビティから出ていくことを防ぐために密閉可能に構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記容器を前記チャンバー内で保存する間、熱的に絶縁されたハウジングのハウジングキャビティ内に前記チャンバーを挿入するステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバーキャビティ内にある間、前記
血液製剤を撹拌するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのシェルフを有するラックシステムを提供するステップを含み、前記ラックシステムが、前記チャンバーキャビティ内に挿入されるように構成されており、前記シェルフが少なくとも1つの容器を支えるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ラックシステムが、撹拌装置に接続されており、前記撹拌装置が、前記ラックシステムが前記チャンバーキャビティに収容されている間、前記ラックシステムを振動させ、回転させ、又はその両方を行うように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバーが撹拌装置に接続されており、前記撹拌装置が、前記容器が前記チャンバーキャビティに挿入されている間、前記チャンバーを振動させるか、回転させるか、又はその両方を行うように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバー用ガスが圧縮空気を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本発明は、2017年3月3日に出願された米国仮出願第62/466,702号に基づく優先権を主張し、その内容は参照により本明細書中に包含される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、医学の分野に関し、特に、血液製剤及び細胞培養物を保存する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血小板を保存するために知られている方法の一つが、米国特許第8,158,339号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。この方法は、献血された全血からの血小板血漿の調製を含み、血小板血漿を、約3.5~5バールの圧力下で、65~100体積%のキセノンを含むガス媒体中で保持し、続いて、血小板血漿を約3~6℃の温度まで冷やし、上述の温度とガス媒体圧力のコンディション下で、血小板血漿を保存する。前記339特許は、ガス不透過性の容器(その中にキセノン含有ガス媒体が加圧下で供給される)中に血小板濃縮液を置くか、あるいは従来からある体液(特に、血液及び血液成分)保存用のガス透過性のバッグを使用し、それらをガス不透過性の容器(その中にキセノン含有ガス媒体が加圧下で供給される)内に置くことによって前記方法が実行されることを開示する。この方法は、少なくとも1週間にわたる血小板の貯蔵を可能にするが、これはいくつかの用途にとっては十分に長いとは言えない。次に、この方法は、mL単位オーダーの、少容積の血小板濃縮液(すなわち、例えばバイアル内に入っている)で最も良く行われる。十分な量の酸素(血漿中で代謝プロセスを維持するために必要とされる)が、そのような容積の血小板血漿で部分的に満たされているバイアル中に存在すると考えられる。しかしながら、実務では、血小板は、小さなバイアル内ではなく、少なくとも200mLの容積を有する標準的なバッグ内に保存されることが必要とされる。血小板がバッグ内に保存される場合、血小板のために利用できる酸素量は、好気性呼吸には不十分かもしれず、血小板血漿の貯蔵期間を制限し得る。この方法を実施するために、従来からある体液(特に、血液及び血液成分)保存用のガス不透過性の容器を使用することが提案されている。
【0004】
通常、血液及び血液成分を収容するためのそのようなバッグは、2つのフラットなブランクをその外周に沿ってシールすることによって製造され、これにより、製造プロセスにおける高い製造性と、バッグの低コスト性が確保される。従来の方法でそのようなバッグを使用すると、バッグに収容された流体が、流体の重さによってシールされた接合部に圧力をかける。バッグの内側のガス媒体の圧力は、一般的に大気圧を超えない。従って、このバッグ製造方法は、通常使用の場合は、高信頼性のバッグを保証する。
【0005】
しかしながら、前記339特許に記載されているような、血液と血液成分を保存する方法(大気圧を3.5~5倍上回る圧力の下、ガス媒体中で生物学的材料を保持し貯蔵することを含む)を実施する際、そのような従来のバッグは、シールされた接合部の強度によって使用を制限される。バッグ内のガス圧によるバッグの膨張に起因するシール接合部への負荷の性質を考慮すると、シール接合部の強度は、バッグの破裂を避けるためにかなりの大きさであるべきある。バッグのシールの適切な強度は、例えば、バッグ材料の厚みを増すことによって、シール後にモノリスな継ぎ目を生じる材料を選択することによって、あるいはバッグのさらなる強化によって、達成できるであろう。しかしながら、そのようなバッグの改善は、気体をバッグ内に注入する際の、バッグの変形能を制限し得る。また、バッグの継ぎ目の強度を高めるそのような手段は全て、バッグをより高価にし、これは非常に望ましくない(なぜなら、そのようなバッグは使い捨ての製品である)。
【0006】
加圧下でガス媒体中で血液又はその成分を保存するための方法及び装置、及びそのためのシステムは、WO2012/177820(本明細書中に参照により組み込まれる)にも記載されている。前記820公報によれば、血液又は血液成分は、キセノンガス透過性物質からなるバッグ内に入れられる。前記バッグは、その後密閉された円筒状のチャンバー内に置かれ、キセノン含有ガス(少なくとも65体積%のキセノン含有率を有する)が前記チャンバー内に、チャンバー内の圧力が、約3.5~5バールに達するまで、加圧下で供給され、その後、チャンバーは、3~6℃の範囲内の温度にて貯蔵場所に置かれる。この方法を実施するために、前記ガス透過性材料からなるバッグは、キセノンがこのバッグを通過できるように設計される。この方法では、キセノン-含有ガス(前記チャンバー内に加圧下で供給される)は、バッグの壁面を通過し、その後、バッグ内の血液又は血液成分は、部分的に又は完全にキセノンで飽和される。この方法によれば、血液又は血液成分を含むバッグは、円筒状のチャンバー内に置かれ、及び貯蔵の間、このチャンバーは垂直に置かれる。チャンバー内のバッグも垂直に置かれ、血液又は血液成分は貯蔵の間撹拌されない。キセノン(前記チャンバー内に供給されたガス内に含まれる)は、バッグの壁面を通過し、バッグ内の血液製剤は、キセノンで飽和され、血液製剤の保存を保証する。貯蔵の間、撹拌されないこと、及びバッグが垂直に配置されることは、バッグ底部の狭い領域に血小板の沈降をもたらし、それゆえ、貯蔵期間を終えるころには高密度沈着物を形成する可能性がある。そのような沈着物中の血小板は、その特性が変化し、かなりの数の血小板が活性化して、互いにくっつく。これらの血小板は、微小凝集塊を生じ、これはフリーの血小板数の減少をもたらし、次いで、血小板濃縮液の効率の低下をもたらす。さらに、互いにくっついた血小板は、相当な大きさの凝集塊の形成をもたらす可能性があり、輸血後、それらは血管内で血栓となり、血行の阻害をもたらす可能性があるため、レシピエントにとって危険である。バッグ保存チャンバーについては、チャンバーの移動をユーザー間で、例えば、血液バンク機関と病院の間で行うのは厄介である。
【0007】
820公報に開示された硬質容器は、大気圧より高いチャンバー内のガス圧を維持するのに十分な強度を有し、それゆえそのような高圧を作り出すために容器内に注入されるかなりの量のガスを必要とする。もし容器が、その内側に血液製剤を貯蔵するバッグに似た形状であれば、バッグを容器に入れる/容器から出すのが困難になる。もし硬質容器が、バッグを内側に容易に収納するのに十分大きい開口部を有していれば、そのような開口部を密閉するのが難しくなる。チャンバー内に注入されるガスが高価であり、貯蔵コストを減らすために、その使用を最小化する必要があれば、そのようなアプローチには、桁違いの費用がかかるかもしれない。
【0008】
現在の技術状態を考慮すると、加圧下・ガス媒体中で血液製剤及び細胞培養物を保存するための貯蔵条件を提供する装置であって、信頼性があり、安価で、血液バンクと病院環境において使用しやすい装置に対する需要が今なお存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、血液製剤及び生細胞培養物を保存するための改良された装置であって、血液製剤又は生細胞培養物を保存するために使用することができ、その装置内で、血液製剤又は生細胞培養物が加圧下にあっても、なくてもよい装置に関する。前記装置は、加圧下・ガス媒体中で血液製剤及び生細胞培養物を保存するための貯蔵条件を提供できるように構成されており、信頼性があり、安価で、血液バンク、病院環境などにおいて使用しやすい。血液製剤に関して、貯蔵血液製剤は、典型的には、生き物(例えば、人間、動物など)に、後で輸注するために使用される。生細胞培養物に関して、生細胞培養物も、生き物に後で輸注するために使用でき、あるいは移植、ワクチン接種、経口適用、点鼻、皮膚パッチなどにおいて使用できる。
【0010】
本発明の非限定的な一面では、ガス媒体中で、大気圧(例えば、1atm)より大きい圧力下で、血液製剤(例えば、赤血球、血小板、血漿, クリオプレシピテート、アルブミン、凝固因子、免疫グロブリン等)及び/又は細胞培養物を保存するための装置が提供される。血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するための装置は、密閉可能なチャンバーを含み、血液製剤及び/又は細胞培養物を含む一以上の容器(例えば、バリアフィルムバッグ、フレキシブルなバリアフィルムバッグ)を中に入れることができる。血液製剤及び/又は細胞培養物を含む容器は、通常、容器が装置のチャンバー内に挿入される前に、ガスで満たされる:しかしながら、これは必須ではない。チャンバー内部の大気より高い圧力は、チャンバーを密閉した後、チャンバー内にガスを注入することによって作り出すことができる。安価なガス、例えば、空気をチャンバー内に注入してもよい;しかしながら、他の又はさらなるガスをチャンバー内に注入してもよい。チャンバー内で増加した圧力は、容器内に所望のガス圧を作り出すために使用される。一般的に、容器は、チャンバー内に注入されるガスを通さない。
【0011】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記装置のチャンバーは、密閉可能であり、大気圧を超える内圧を作り出すためにガスで満たされる。前記チャンバー(例えば、気密チャンバー)は、任意で、チャンバーのキャビティを、ポンプ(例えば、コンプレッサポンプ)又は加圧ガス供給源(例えば、ガスシリンダー、調節器を有するガスシリンダー等)(これらは、大気圧を超える圧力でチャンバー内にガス(例えば、空気、窒素、希ガス、不活性ガスなど)を供給するために使用することができる)に流体連通する入口チャネルを含むことができる。前記チャンバーは、任意で、チャンバーのキャビティと外部を連結する出口チャネルを含んでもよく、これは、前記ガスをチャンバーの外部環境に放出し、チャンバー内の圧力を低下させる(例えば、チャンバー内の圧力を大気圧まで低下させる等)ために設計されている。非限定的なある構成では、ガスをチャンバーのキャビティに供給し及び/又はガスをチャンバーのキャビティから除去するために、同じ入口チャネルを使用することができる;しかしながら、これは必須ではない。当然のことながら、入口チャネル及び/又は任意の別の出口チャネルは、任意で一方向弁を含んでもよい。
【0012】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記チャンバーは、任意で、複数の容器を収容するための1又は複数のシェフル又はラックを含むことができる。ラックの特定の幾何学的形状は、チャンバーの内側のスペースを最大限に利用できるように、及びチャンバー内に置くことができる容器の数を最大化できるように設計されてもよい;しかしながら、これは必須ではない。チャンバーの内側の1又は複数のシェフル又はラックは、任意で、回転装置に接続されることができ、この回転装置は、一以上の容器が一以上のラック又はシェルフに配置されているチャンバー内で、一以上のラック又はシェルフに回転運動を提供する。回転装置の種類及び構成は、限定されない。前記回転装置は、完全にチャンバーの内側に配置されていてもよく、及び/又は一部がチャンバーの外にあってもよい。前記任意の回転装置によって生じる回転は、容器内の血液製剤を撹拌し、細胞を保存期間中常に懸濁状態に保つために使用することができる。本発明の別の非限定的な実施形態では、前記チャンバーは、その代わりに又はそれと併せて、チャンバー内で血液製剤及び/又は細胞培養物に必要な撹拌を提供するために、任意で回転してもよい;しかしながら、これは必須ではない。容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物の撹拌中に、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物に付与される振動を最小化するために、チャンバー及び/又はチャンバー内部の1以上のラック又はシェルフは、通常、容器の最長軸の周囲を回転する。また、回転速度は、一般的に、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物の撹拌中に、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物に付与される振動を最小化するように選択されるが、貯蔵の間常に又はほぼ常に、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物が、容器内の液体中で浮遊状態を保つのに十分な速度である。チャンバー及び/又はチャンバー内部の1以上のラック又はシェルフの回転は、チャンバー内で一以上の容器を貯蔵する間連続的であってもよく、又は、断続的であってもよい。回転の速度及び時間は、貯蔵の間常に又はほぼ常に、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物が、容器内で浮遊した状態を保つように選択される。回転装置の操作及び速度は、手動でもよく、及び/又は回転制御システムによって制御されてもよい。
【0013】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記チャンバーは、任意で、冷却器及び/又はサーモスタットを備えることができる。冷却システム(使用する場合)は、チャンバーを冷却するため、及び冷蔵温度(0~15℃)を提供するために構成されてもよい。前記冷却システムは、任意で、温度を設定又は事前設定することができる温度制御システムを有するように構成されてもよい。
【0014】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記容器は、血液製剤及び/又は細胞培養物を含む従来の貯蔵バッグ及び第二のバッグ(二次バッグ)を含む。前記二次バッグは、必要に応じてフレキシブルであってもよく、通常、チャンバー内に注入された1又は複数のガスを通さない材質から形成されるか、及び/又はそのようなバリアフィルムを含む。ある非限定的な配置では、二次バッグは、ガスが二次バッグを通過するのを抑制するか又は阻止する不透過性の材質から形成されるか、及び/又はそのようなバリアフィルムを含む。本発明の非限定的な一実施形態では、二次バッグは、キセノンガスに対して不透過性である。本発明の非限定的な別の実施形態では、二次バッグは、酸素及びキセノンに対して不透過性である。本発明の非限定的な別の実施形態では、二次バッグは、キセノン及び空気の気体成分(例えば、酸素、窒素、二酸化炭素)に対して不透過性である。
【0015】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、二次バッグは、二次バッグが密封された後、二次バッグにガスを注入できるように、ガス供給ラインと連結するバルブ又は注入口を含む。前記バルブ又は注入口は、二次バッグの任意の領域に配置されることができる(例えば、二次バッグの一側面に、二次バッグの一端に、など)。本発明の非限定的な一実施形態では、前記バルブは、柔軟性スリーブからなり、このスリーブは、バルブが二次バッグの内側に少なくとも部分的に延びるような方法で二次バッグの一端に付着されている。ガス供給ラインの排出口は、前記スリーブに部分的に挿入されてもよく、又は前記バルブのスリーブに取り外し可能に連結されてもよい。ガスが加圧下で供給されるときに、ガスが二次バッグのキャビティ内に自由に流入できるように、前記バルブのスリーブを構成してもよい。ガス供給ラインが閉ざされると、二次バッグ内の過度の内圧がスリーブをつぶして、二次バッグ内のガスが保持されるように構成することができる。当然のことながら、他の多くの配置が使用できる。または、二次バッグ内にガスを注入させる一方、二次バッグからガスが出ていくのを防ぐために使用できる継手(フィッティング)に、任意で、一方向弁を取り付け/含めてもよい。二次バッグの他端は、最初は開放されており、その後、熱シーラー、接着剤によって密封される、及び/又は、閉鎖機構を含むように構成することができる;しかしながら、これは必須ではない。
【0016】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記二次バッグは、部分的に又は完全に、血液製剤及び/又は細胞培養物用の従来の(通常の)貯蔵バッグを格納できるように構成される。例えば、血液製剤及び/又は細胞培養物を含む従来の貯蔵バッグが、二次バッグのキャビティ内に挿入され、その後二次バッグが、二次バッグのキャビティの内側の従来の貯蔵バッグとともに密封(シール)されるように、二次バッグを設計することができる。当然のことながら、他の種類の従来の貯蔵バッグ(例えば、血小板用の従来の貯蔵バッグ、血漿用の従来の貯蔵バッグ、血液用の従来の貯蔵バッグ、など)を完全に格納できるように、二次バッグを設計してもよく、及び/又は、2以上の従来の貯蔵バッグを格納できるように設計してもよい。一般的に、前記二次バッグは、血液製剤及び/又は細胞培養物用の従来の貯蔵バッグとは異なる材質から形成され、及び/又は、前記二次バッグは、血液製剤及び/又は細胞培養物用の従来の貯蔵バッグには施されていない1又は複数のコーティングを含む;しかしながら、これは必須ではない。 二次バッグの厚みは、血液製剤及び/又は細胞培養物用の従来の貯蔵バッグと同じであっても、異なっていてもよい。一般的に、二次バッグは、血液製剤及び/又は細胞培養物用の従来の貯蔵バッグよりも、1又は複数のガスを通しにくい;しかしながら、これは必須ではない。一般的に、二次バッグは、従来の貯蔵バッグの密封キャビティと比べて、二次バッグの密封キャビティ内(二次バッグのガス漏れ又は破裂が生じる前)がより高い圧力を受けることができるように設計される;しかしながら、これは必須ではない。
【0017】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、血液製剤及び/又は細胞培養物をパッケージングする1又は複数のステップ、パッケージされた血液製剤及び/又は細胞培養物をガス系で処理する1又は複数のステップ、処理された血液製剤及び/又は細胞培養物を保存する1又は複数のステップ、保存された血液製剤及び/又は細胞培養物を、ヒト、動物又は他の生体において使用するために準備する1又は複数のステップを含む、血液製剤の保存方法が提供される。本発明の非限定的な方法の1つによれば、前記血液製剤及び/又は細胞培養物は、密封貯蔵バッグ内に入れられる。そのような貯蔵バッグは、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するために使用される従来の貯蔵バッグであってもよい。血液製剤のための、そのような従来の貯蔵バッグの一つは、輸血バッグである。前記従来の貯蔵バッグは、通常、キセノン又はキセノンと酸素に透過性の材質から作られる。血液製剤及び/又は細胞培養物を含む前記従来の貯蔵バッグは、その後、二次バッグ内に入れられ、その後二次バッグ内に密封される。前記二次バッグは、通常、ある材質からなるか、及び/又はバリアフィルムあるいはコーティングを含み、これらは、1又は複数のガス(例えば、キセノン、酸素、窒素、二酸化炭素など)が、前記材質及び/又は二次バッグ上のバリアフィルム又はコーティングを通過するのを妨げる。前記従来の貯蔵バッグが、二次バッグ内に密封された後、従来の貯蔵バッグに収容されている血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するために使用されるガス系が、二次バッグ内に注入される。前記従来の貯蔵バッグの材質は、前記ガス系に透過性であるように設計され、前記二次バッグは、前記ガス系に不透過性であるように設計される。従って、ガス系が、一度二次バッグ内に注入されると、ガス系が二次バッグからバルブなどを経て放出されるか、あるいは二次バッグが切断あるいは穿刺されるまで、ガス系は二次バッグから漏出できない。ガス系が一度二次バッグ内に注入されると、ガス系は、密封された二次バッグ内に配置された従来の貯蔵バッグを透過し、その後、従来の貯蔵バッグ内の血液製剤及び/又は細胞培養物を一部又は完全に飽和状態にする。前記ガス系は、1又は複数のガスを含むことができる。一般的に、前記ガス系は、地球大気(海面位及び20~22℃における)におけるキセノンの天然含量より多量のキセノンを含む。前記ガス系が、密封された二次バッグ内に供給されるとき、通常ガス系は、ガス系が二次バッグのキャビティ内に供給され、密封二次バッグ内に配置されている従来の貯蔵バッグには直接供給されないような方法で、二次バッグ内に供給される。従って、前記ガス系には、従来の貯蔵バッグを通過して拡散し、従来の貯蔵バッグ内の血液製剤及び/又は細胞培養物と混ざることが要求される。一般的に、二次バッグ内のガス系の圧力は、二次バッグの周りの環境気圧(例えば、大気圧[1atm])より、0.0001~10atm(及びその間の全ての数値及び範囲)高い。
【0018】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記ガス系は一般的に、地球大気(海面位及び20~22℃における)の空気中のキセノン含量より高いキセノン含量を有する。本発明の非限定的な一実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、少なくとも5体積%(vol.%)である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、最大で99.99999体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、少なくとも5体積%かつ最大で約99.99999体積%及びその間の任意の数値又は範囲である(例えば、5体積%、5.00001体積%、5.00002体積%、・・・・・・、99.99998体積%、99.99999体積%)。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、約50~99.999体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、約55~99体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、約60~98体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、約70~97体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系のキセノン含量は、約79~95体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系の酸素含量は、約0~50体積%及びその間の任意の数値又は範囲である(例えば、0体積%、0.0001体積%、0.0002体積%、・・・・・・、49.9998体積%、49.9999体積%、50体積%)。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系の酸素含量は、約0.1~45体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系の酸素含量は、約2~40体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系の酸素含量は、約3~30体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系の酸素含量は、約5~21体積%である。本発明の非限定的な別の実施形態では、前記ガス系は、0~5体積%及びその間の任意の数値又は範囲(例えば、0%、0.0001%、0.0002%、・・・・・・、4.9998%、4.9999%、5%)の、キセノン又は酸素以外のガス(例えば、二酸化炭素、希ガス、窒素)を含む。別の非限定的な実施形態では、前記ガス系は、キセノン、CO2、及び任意で含まれる窒素からなる。非限定的な一配合において、前記ガス系は、少なくとも9体積%(例えば、9~99体積%)のキセノン、少なくとも1体積%(例えば、1~10体積%)のCO2、及び任意でN2(例えば、0~90体積%)を含む。別の非限定的な配合において、前記ガス系は、少なくとも95体積%(例えば、9~99体積%)のキセノン、少なくとも1体積%の窒素及び/又はCO2を含む。非限定的なある混合物において、キセノンの体積パーセントは、CO2の体積パーセントより大きく、窒素の体積含量(含まれる場合)は、CO2の体積含量より大きくてもよく小さくてもよい。
【0019】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な一面では、容器(密封された二次バッグのキャビティ内に配置されている、血液製剤及び/又は細胞培養物が入った従来の貯蔵バッグを含む)は、前記チャンバー内に入れられ、当該チャンバーは、密閉される。前記チャンバー内に1又は複数の容器を挿入し、その後チャンバーを密閉する前に、通常は、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するために使用されるガス系が、従来の貯蔵バッグを含む密封二次バッグのキャビティ内に注入される。チャンバーの密閉は、単にチャンバーのドア又はカバーを閉めて、それを高圧締結具で固定することで達成できる。当然のことながら、チャンバーを密閉するために、他のあるいは代わりの配置を使用することが可能である。
【0020】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、チャンバー内の1又は複数の容器とともにチャンバーを密閉した後、チャンバー内の圧力を、環境気圧(例えば、海面位で1atm、など)より高い圧力まで上昇させる。本明細書で定義される、環境気圧とは、チャンバーの密閉後、密閉チャンバー内にガスを添加する前の、密閉されたチャンバーキャビティ内の圧力である。従って、もし開放状態のチャンバーが海面位にあれば、チャンバーを密閉する前のチャンバーキャビティ内の環境気圧は、約1atmとなるであろう。密閉チャンバー内の圧力の増加は、チャンバーの入口チャネルを通じて、チャンバーにガス(例えば、空気など)を充てんすることによって達成できる。通常、チャンバーに添加されるガスは、二次バッグのキャビティ内の前記ガス系とは異なる;しかしながら、これは必須ではない。通常、二次バッグは、密閉チャンバー内に添加されるガスを通さない。ある非限定的な配置では、前記チャンバーの入口チャネルは、コンプレッサに接続されており、コンプレッサが、外気を、チャンバーのキャビティ内にポンプで送り込み、チャンバーのキャビティ内で圧力上昇を引き起こす。チャンバーのキャビティ内に加圧下で供給されたガスは、通常、環境気圧より高い圧力である。本発明の非限定的な別の実施形態では、空気は、環境気圧より0.01~20バール(例えば、0.01バール、0.02バール、1.02バール、・・・・・・、19.98バール、19.99バール、20バール、及びその間の任意の値又は範囲)高い圧力にて、加圧下で供給される。本発明の非限定的な別の実施形態では、空気は、環境気圧より約0.1~15バール高い圧力にて、加圧下で供給される。本発明の非限定的な別の実施形態では、空気は、環境気圧より約1.5~10バール高い圧力にて、加圧下で供給される。本発明の非限定的な別の実施形態では、空気は、環境気圧より約2~8バール高い圧力にて、加圧下で供給される。本発明の非限定的な別の実施形態では、空気は、環境気圧より約3.5~5バール高い圧力にて、加圧下で供給される。二次バッグが、フレキシブルな材質から形成されている場合、二次バッグの密閉キャビティ内のガス系の圧力は、密閉チャンバー内の圧力と釣り合う。前記ガス系が、密閉チャンバー内の圧力と釣り合うと、ガス系のいくらかは、密閉された二次バッグ内に配置されている従来の貯蔵バッグの壁面を通じて拡散及び/又は浸透し、それにより、血液製剤及び/又は細胞培養物の、ガス系による部分飽和あるいは完全飽和がもたらされる。
【0021】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、ガスが密閉チャンバーに添加されている間に、又はガスが密閉チャンバーに添加された直後(例えば、0.001~20分、及びその間の全ての値及び範囲)、密閉チャンバー内の1又は複数の容器は、約15℃未満であって、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物の凝固点より高い温度に冷却される。一般的に、1又は複数の容器は、周囲の温度が15℃より高いときに、チャンバーを密閉する前、チャンバーのキャビティ内に入れられる;しかしながら、これは必須ではない。例えば、1又は複数の容器は、室温(例えば、20~25℃)で、チャンバーのキャビティ内に入れられる。非限定的な一実施形態では、密閉チャンバーは、0~14.99℃の温度及びその間の任意の値又は範囲(例えば、0℃、0.01℃、0.02℃、0.03℃、・・・・・・14.97℃、14.98℃、14.99℃)まで冷やされる。別の非限定的な実施形態では、密閉チャンバーは、0.01~15℃の温度まで冷やされる。別の非限定的な実施形態では、密閉チャンバーは、1~10℃の温度まで冷やされる。別の非限定的な実施形態では、密閉チャンバーは、3~6℃の温度まで冷やされる。
【0022】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、前記容器又は密封された二次バッグ内に位置する従来の貯蔵バッグは、密閉チャンバー内に配置されるとき、任意でおおむね水平位置(平らな面を下にして)に置かれる。本発明の目的のために、前記水平位置は、地面(例えば、地球の表面)に水平に置かれた従来の貯蔵バッグの長手軸として定義される。
【0023】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、密閉チャンバー内で容器を保存する間、従来の貯蔵バッグ内で細胞、血小板などが凝集するのを抑制又は妨げるために、密閉チャンバー内に位置している間、容器を連続的あるいは周期的に撹拌させる。非限定的な一実施形態では、従来の貯蔵バッグ内の血液製剤及び/又は細胞培養物に撹拌状態をもたらすために、密閉チャンバー内の容器、又は密閉チャンバーそれ自体を、連続的あるいは周期的に回転させてもよい。
【0024】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な面では、密閉チャンバーから1又は複数の容器を取り出す前に、通常、密閉チャンバー内の過剰な圧力(例えば、チャンバー外部のそのときの圧力を超える圧力)の一部又は全てを、密閉チャンバーを開ける前に、放出する。密閉チャンバーを開放した後、チャンバー内の1又は複数の容器を、チャンバーから取り出してもよい。その後、二次バッグのキャビティから、従来の貯蔵バッグを取り出すことができるように、ほとんどの場合、二次バッグを開封する。保存の後、貯蔵されていた血液製剤及び/又は細胞培養物を使用する前に、従来の貯蔵バッグを放置して室温まで温めてもよい。非限定的な一実施形態では、温め期間は、約0.001~20時間及びその間の任意の値又は範囲である。温め期間の間、一般的に、従来の貯蔵バッグは室温にさらされ、従来の貯蔵バッグが自然に温まるにまかせる。一般的に、貯蔵されていた血液製剤及び/又は細胞培養物が約12~35℃及びその間の任意の値又は範囲に温まるまで、貯蔵されていた血液製剤及び/又は細胞培養物は、ヒト、動物あるいは他の生体で使用されない;しかしながら、これは必須ではない。保存後、貯蔵されていた血液製剤及び/又は細胞培養物を使用する前に、従来の貯蔵バッグの内容物を、任意で撹拌してもよい(例えば、従来の貯蔵バッグを、撹拌機にかける、従来の貯蔵バッグを手で振るなど)。
【0025】
本発明の非限定的な目的の一つは、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存する改良された装置を提供することであり、前記装置は、血液製剤及び/又は細胞培養物の保存に使用でき、汎用性があり、信頼性が高く、製造が容易及び/又は使用が容易な装置を形成する。
【0026】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、少なくとも2つのコンポーネント、すなわち、密閉可能なチャンバーと、前記チャンバー内にフィットするように設計された容器を含む改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、この容器は、後にヒト、動物又は他の生体で使用するために貯蔵又は保存される血液製剤及び/又は細胞培養物を含む。
【0027】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバー内のキャビティは、容器を完全に収容できるように設計されており、前記容器は、二次バッグと、血液製剤及び/又は細胞培養物を含む従来の貯蔵バッグとを含み、前記二次バッグは、従来の貯蔵バッグを二次バッグ内で密封状態にできるように、従来の貯蔵バッグを受け入れ可能に設計されたキャビティを含む。
【0028】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、チャンバーのキャビティを、チャンバーの外部に流体連通する入口チャネルを含んでもよく、この入口チャネルは、チャンバーのキャビティ内にガスを供給する及び/又はチャンバーのキャビティからガスを排出するために使用できる。
【0029】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーと容器は、異なる機能を果たし、前記チャンバーは、大きな力に耐えるように設計されており、それゆえ、チャンバーに加圧空気を導入する間、保持する間、及び除去する間、チャンバーに大きな変形やダメージが生じるのを妨げ、前記容器は、二次バッグと従来の貯蔵バッグとを含み、二次バッグのキャビティ内の従来の貯蔵バッグとともに二次バッグを密封すると、二次バッグは、二次バッグのキャビティへのガスの出入りを妨げ、ここで、二次バッグの密封キャビティ内のガス系は、従来の貯蔵バッグ内に拡散又は浸透し、従来の貯蔵バッグ内で、血液製剤及び/又は細胞培養物を前記ガス系で部分的に又は完全に飽和させる。
【0030】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、再利用可能なユニットとして設計されており、前記容器は、使用後は使い捨て可能に設計されている。
【0031】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、1又は複数の容器を収容するための1又は複数のラックあるいはシェルフを含んでもよい。
【0032】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバー内の1又は複数のラックあるいはシェルフは、撹拌装置に接続され、保存の間、血液製剤及び/又は細胞培養物を撹拌する。
【0033】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバー内の1又は複数のラックあるいはシェルフは、撹拌装置に接続され、前記撹拌装置は、撹拌モーター、及び、気密ベアリング機構を経てチャンバー壁を通って突出する軸を含み、この軸は、チャンバー内の1又は複数のラックあるいはシェルフと係合し、チャンバー内の1又は複数のラックあるいはシェルフを回転及び/又は振動させる。
【0034】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、撹拌装置に接続されており、この撹拌装置は、前記チャンバーを回転及び/又は振動させる撹拌モーターを含む。
【0035】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、冷却ユニットを含んでもよい。
【0036】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、外部大気から熱的に絶縁されている。
【0037】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、チャンバー内の温度を維持するために前記冷却ユニットを制御するための温度センサを含む。
【0038】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、チャンバー内に1又は複数のガス(例えば、空気など)を注入し、チャンバー内に、大気圧より高い圧力を生じさせるガスコンプレッサを含んでもよい。
【0039】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、前記コンプレッサの出口とチャンバーとの間を流体連通するための継手を備えている。
【0040】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、エアコンプレッサを制御するため、及び前記エアコンプレッサのスイッチのオン・オフによって前記チャンバー内の圧力を維持するための圧力センサを含む。
【0041】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、排水路又は放出バルブを含んでもよい。
【0042】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、前記チャンバーは、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するための別の装置との流体接続を形成するために使用される端部継手を含んでもよい。
【0043】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物保存用の装置を提供することであり、ここで、複数の装置を積み重ねてもよく、及び/又は、流体連通してもよい。
【0044】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、改良された血液製剤及び/又は細胞培養物の保存方法を提供することである。
【0045】
本発明の別の及び/又は代わりの非限定的な目的は、簡単且つ便利な方法で、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存する方法を提供することである。
【0046】
本発明のさらに別の非限定的な目的は、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存する方法を提供することであり、必要に応じて正確な量の高価なガスを送達し、貯蔵のために必要な高圧を生じさせ、且つ、他の低価格のガスを利用して、血液製剤及び/又は細胞培養物を貯蔵するために設計された圧力を得る。
【0047】
本発明のさらに別の非限定的な目的は、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存する方法を提供すること、及び、血液製剤及び/又は細胞培養物の貯蔵の間、血液製剤及び/又は細胞培養物の凝集塊の形成を最小化することである。
【0048】
これらの及び他の目的並びに利点は、添付の図面を参照して、以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1は、本発明によるある非限定的な血液製剤保存装置の分解図を示す。
【0050】
図2は、二次バッグと、前記二次バッグ内の従来の貯蔵バッグとを含む容器の構造を図示する。
【0051】
図3は、複数の容器を積んだラックの非限定的なデザインを図示する。
【0052】
図4は、前記容器の二次バッグをガス系で充填するための非限定的な設定を図示する。
【0053】
図5は、
図1に示すチャンバーの背面図であり、撹拌装置、ガス供給のためのバルブ、及び一以上のセンサを図示する。
【0054】
図6は、
図5のチャンバーを加圧するために、ガスコンプレッサに接続するための非限定的な圧縮空気のダイアグラムを示す。
【0055】
図7は、
図1に示す貯蔵チャンバーのための、制御及び操作アレンジメントのための非限定的なダイアグラムを示す。
[非限定的な実施形態の詳細な説明]
【0056】
図面を参照するが、図面は、本発明を限定する目的ではなく、本発明の非限定的な実施形態を図示するためだけに示されており、
図1~7は、本発明に従って、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するための装置のいくつかの非限定的な実施形態を図示する。
【0057】
図1を参照すると、保存装置10は、貯蔵チャンバー20及び容器30を含む。貯蔵チャンバーは、ハウジング24及び密閉可能な圧力チャンバー21を含むことができる。ハウジングは、任意で熱絶縁されてもよい。ハウジングは、任意で密閉可能であってもよい。ハウジングは、通常、ハウジング内の内部キャビティ24Aを開け閉めするために使用できるドアDを含む。ドアはロック可能であってもよい;しかしながら、これは必須ではない。ハウジングは、任意で、ハウジングの内部キャビティの温度を制御するための冷却ユニット(図示せず)を含んでもよい。ハウジング及びハウジングのキャビティの大きさ及び形状は、限定されない。一般的に、ハウジングのキャビティの大きさ及び形状は、キャビティが、1又は複数の密閉可能な圧力チャンバー21を完全に受け入れることができるように、及び、密閉可能な圧力チャンバーがハウジングのキャビティ内にある間、ドアD(使用される場合)が完全に閉まることができるように選択される。ハウジングを形成するために使用される材質は、限定されない。一般的に、ハウジングの1又は複数の壁は、ハウジングのドアが閉じているときに、ハウジングのキャビティの温度をよりよく保つことができるよう、断熱材を含むか、又は断熱材から形成される;しかしながら、これは必須ではない。
【0058】
図1及び5を参照すると、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティに、高い圧力が存在するとき、密閉可能な圧力チャンバーが、ガスを漏らさず、破裂あるいはその他の方法でダメージを被らないよう、密閉可能な圧力チャンバー21は、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティにおいて要求される高い空気圧に耐えるように設計される。高い圧力とは、環境気圧(例えば、1atm)より少なくとも2バール高いと定義され、典型的には、環境気圧より少なくとも3バール高く、より典型的には、環境気圧より少なくとも5バール高い。
【0059】
密閉可能な圧力チャンバーの冷却を促進するために、密閉可能な圧力チャンバー21は、任意で、密閉可能な圧力チャンバーに配置された及び/又はその周りに巻きついた冷却コイル又は冷却プレートを有していてもよい。
図1及び5に図示されるように、密閉可能な圧力チャンバー21の外表面23は、1又は複数の冷却コイル23Aから形成されてもよい。前記冷却コイルは、密閉可能な圧力チャンバーに構造的完全性を付与するために使用されてもよく、及び/又は、単に密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aを冷却するために使用されてもよい。冷却コイル及び/又は冷却プレートを、密閉可能な圧力チャンバーに接続する場合、一般的に、冷却コイル及び/又は冷却プレートは、冷却ユニット(例えば、冷却コンプレッサなど)に接続される。当然のことながら、ハウジングのキャビティ内にある間、密閉可能な圧力チャンバーの所望の温度を維持するために使用される冷却システムを、ハウジング24が、追加で又はその代わりに含んでもよい。キャビティが密閉されているとき、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aを急速に冷却できるよう、密閉可能な圧力チャンバーは熱伝導材料(例えば、金属等)から形成されてもよい;しかしながら、これは必須ではない。
【0060】
図1に示すように、密閉可能な圧力チャンバー21は、ラック又はシェルフシステム22を受け入れ可能に構成された、円筒形状の内部キャビティ21Aを含む;しかしながら、他の形状の内部キャビティも使用できることが理解される。ドア21Bは、内部キャビティを密閉するために使用される。前記ドアは、通常、封止アレンジメント(例えば、シール、ガスケットなど)、及びドアを閉位置に固定するためのロック又は掛け金アレンジメントを含む。
図1に示すように、ドアは、ドアを開位置と閉位置との間で揺動可能にするヒンジに接続されている;しかしながら、ドアを開位置と閉位置との間で動かすために他のアレンジメントも使用できる。
【0061】
図5を参照すると、非限定的な、密閉可能な圧力チャンバー21の背面21Bが図示されている。密閉可能な圧力チャンバーは、1又は複数のオリフィス(例えば、1~5個のオリフィス)を有していてもよい。例えば、密閉可能な圧力チャンバーが密閉されているときに、内部キャビティを加圧状態にできるように、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティにガス(例えば、空気)を供給するために、オリフィス29を任意で使用することができる。オリフィス29は、一方向弁を含んでもよい;しかしながら、これは必須ではない。オリフィス29は、任意で、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティからガスを放出し、それによって、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティを減圧するため、及び/又は密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内の過剰圧力を取り除くために使用することができる。ある非限定的な配置では、オリフィス29は、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティを減圧するため、及び/又は密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティから過剰圧力を自動的に除去するために制御可能な電子オリフィスであってもよい;しかしながら、これは必須ではない。オリフィス29は、一方向弁を含んでもよい;しかしながら、これは必須ではない。オリフィス27は、温度センサ及び/又は圧力センサを収容するために任意で使用できる。当然のことながら、温度センサと圧力センサの両方が使用される場合、各センサはそれ自身のオリフィスを有してもよい;しかしながら、これは必須ではない。任意的オリフィス26は、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティの中心軸に沿って配置されるものとして図示されている;しかしながら、これは必須ではない。オリフィス26の後端には、任意的撹拌ユニット25が連結されている。撹拌ユニット25は、通常、軸を回転させるように設計されたモーターを含む。軸本体(図示せず)は、通常、オリフィス26を貫通し、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内に至る;しかしながら、これは必須ではない。オリフィス26のキャビティは、任意で、軸を支持する及び/又はガスがオリフィスを通過するのを妨げながら軸の回転を促進するために、封止アレンジメント及び/又はサポートあるいはベアリング・アレンジメントを有していてもよい。以下に説明するように、軸の端部の接続アレンジメントは、ラック又はシェルフシステム22に接続されることができ、ラック又はシェルフシステム22を、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内に配置した状態で、振動及び/又は回転させる;しかしながら、これは必須ではない。当然のことながら、さらなるオリフィスを任意で使用することができる。例えば、オリフィスを圧力チェック安全弁として任意で使用することができる;しかしながら、これは必須ではない。ハウジング24のキャビティ24Aに配置されている2以上の密閉可能な圧力チャンバーを流体連通するために、1又は複数のオリフィスを使用することができる;しかしながら、これは必須ではない。
図1及び3に図示されているように、ラック又はシェルフシステム22を、任意で、密閉可能な圧力チャンバーとともに使用してもよい。前記ラック又はシェルフシステムは、密閉可能な圧力チャンバー21内で、1又は複数の容器を支えるために使用できる。前記ラック又はシェルフシステムは、密閉可能な圧力チャンバー内で固定されてもよく、又は密閉可能な圧力チャンバーに対して可動であってもよい。ある非限定的な配置では、密閉可能な圧力チャンバー内で保存されている間、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物を撹拌するための撹拌装置に、前記ラック又はシェルフシステムを接続することができる。ある非限定的な配置では、前記ラック又はシェルフシステムは、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内に配置されている軸(図示せず)に、解放可能に又は解放不可能に連結される。前記軸は、撹拌ユニット25によって振動及び/又は回転され、それによって、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内で前記ラック又はシェルフシステムを振動及び/又は回転させ、それによって、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物を撹拌する。前記ラック又はシェルフシステムが、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内で回転される場合、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティのサイズと形状、及びラック又はシェルフシステムのサイズと形状は、密閉可能な圧力チャンバーとラック又はシェルフシステムに損傷を与えることなく、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内でラック又はシェルフシステムが回転可能となるように選択される。そのような配置において、ラック又はシェルフシステムは通常、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティの側壁と接触せず、且つ任意で、密閉可能な圧力チャンバーの後壁と、前璧又はドアの裏面との間に距離をあけて配置されてもよい。軸が密閉可能な圧力チャンバーの後壁を通って突き出る場合、密閉可能な圧力チャンバーが密閉されているときに、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内のガスが、キャビティから漏れるのを抑制する又は妨げるために、気密性ベアリングアレンジメントを使用することができる。当然のことながら、チャンバーそれ自体を、撹拌ユニット25によって振動及び/又は回転して、それによって、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物を撹拌してもよい。
【0062】
図3には、ラック又はシェルフシステム22の非限定的な一例が図示されている。前記ラック又はシェルフシステムは、それぞれが1又は複数の容器30を保持するように構成されている4つのシェフルキャビティ22Aを含むものとして図示されている;しかしながら、前記ラック又はシェルフシステムが、任意の数のシェルフキャビティ(例えば、1,2,3,4,5など)を有してもよいことが理解される。ラック又はシェルフシステムが、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内で回転するように構成されている場合、ラック又はシェルフシステムは、ラック又はシェルフシステムが回転している間、ラック又はシェルフシステム及び/又は1以上の容器への損傷を限定する又は妨げるために、ラック又はシェルフシステムのシェルフキャビティ上に1又は複数の容器を維持するための保持アレンジメントを有していてもよい。そのような保持アレンジメントは、シェルフキャビティの高さ及び/又は幅、シェルフキャビティの側壁、機械的コネクタなどの形態であってもよい。ラック又はシェルフシステムを形成するために使用される材質は限定されない。非限定的な一実施形態では、ラック又はシェルフシステムは、プラスチック材又は軽金属(例えば、アルミニウム)から形成される。
図3に示すように、各シェルフキャビティの上面と底面は、複数の開口部22Bを含む。これらの開口部により、ラック又はシェルフシステム及び1又は複数の容器が、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内にある間、各容器の周囲の温度を同じに保つことができる。開口部の数、大きさ、形状は限定されない。開口部の大きさは、容器が開口部を通過できるほど大きくすべきではない。
図3に図示するように、開口部の大きさと形状は同じである;しかしながら、これは必須ではない。ある非限定的な構成では、前記ラック又はシェルフシステムは、密閉可能な圧力チャンバー21内に、できるだけ多くの容器30をコンパクトに収容できるように構成される。
【0063】
当然のことながら、貯蔵チャンバー20は、1又は複数の他の構成要素、例えば温度制御ユニット、圧力制御ユニット、ガスコンプレッサ、冷却システム、電子制御弁、圧力・温度センサ、電源、タイマー、電子弁、電子錠、自動扉などを任意で含むことができる。
【0064】
図1及び
図2には、二次バッグ31と従来の貯蔵バッグ32とを含む容器30が図示されている。二次バッグは、キャビティを有するフレキシブルなバッグであり、この二次バッグのキャビティは従来の貯蔵バッグ32を完全に収容できるように構成されている。従来の貯蔵バッグは、任意で、血液の貯蔵に使用される従来のバッグであってもよい(例えば、http://www.jmsna.net/Catalogs/jms-bloodbag-en-rl .pdf参照)。従来の貯蔵バッグは、典型的には、血液製剤及び/又は細胞培養物を保持するためのキャビティを有するフレキシブルバッグである。従来の貯蔵バッグは、バッグの下端部に、バッグへの流入及び/又はバッグからの流出のために使用される1又は複数のポート32Aを含む。一般的に、従来の貯蔵バッグのキャビティは、密封される前に、血液製剤及び/又は細胞培養物で満たされる。血液製剤及び/又は細胞培養物が従来の貯蔵バッグ中に密封された後、従来の貯蔵バッグは、二次バッグのキャビティ内に挿入される。従来の貯蔵バッグが二次バッグのキャビティ内に挿入された後、二次バッグのキャビティは、密封される。二次バッグのキャビティは、従来の貯蔵バッグが二次バッグ内にあるとき、従来の貯蔵バッグが開封されなくてもよいように、またはその他の方法で従来の貯蔵バッグの完全性を損なわなくてもよいように構成される。
【0065】
従来の貯蔵バッグと二次バッグは、異なる材質から形成される。従来の貯蔵バッグは、少なくともキセノンに透過性であるか、又は少なくともキセノンと酸素に透過性であるフレキシブルな材質から形成される。二次バッグは、キセノンと酸素に透過性ではない材質から形成される及び/又はキセノンと酸素に透過性ではないフィルム又はコーティングを含む。一般的に、二次バッグは、キセノン及び空気の任意の主要成分(例えば、酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気など)に透過性ではない。
【0066】
前記二次バッグは、二次バッグの周縁付近に接着剤又は熱シール35を使用することによって形成することができる;しかしながら、これは必須ではない。一般的に、二次バッグは、従来の貯蔵バッグを二次バッグのキャビティ内に挿入できるように、上端部が開口している。その後、二次バッグの上端を、シール34を形成することによって(例えば、接着剤によるシール、熱によるシールなど)、密封することができる。従来の貯蔵バッグを二次バッグのキャビティ内に挿入した後、且つ、従来の貯蔵バッグをキャビティが完全に収容した状態にて、二次バッグのキャビティを気密シーリングする前、最中、又は後に、ガス系を二次バッグのキャビティに添加する。ガス系は、二次バッグ31に形成されたガス注入口33を経て、添加することができる。ガス注入口は、ガス充填チューブに接続されてもよく、このチューブはガス系の供給源に接続されている。ガス注入口は、ソフトスリーブとして形成されたニップルの形態であってもよい;しかしながら、これは必須ではない。二次バッグのキャビティがガス系で充填された後、ガスがガス注入口を通過するのを妨げることができるよう、ガス注入口は、密閉可能であってもよく、及び/又はバルブを有していてもよい。ガス供給管が、ガス注入口のスリーブに挿入されているとき、スリーブを開けるガス圧に起因して、ガス系が二次バッグのキャビティに自由に流入できるように、ガス注入口を設計してもよい。ガスチューブが、ガス注入口のスリーブから取り除かれると、二次バッグのキャビティ内のガス背圧が、スリーブをシールして、それによってガスが二次バッグのキャビティから漏れるのを防ぐように設計を行ってもよい。二次バッグの上部は、一般的に、二次バッグのキャビティをガス系で完全に満たす前に、密封される。一般的に、二次バッグのキャビティ内のガス圧は、大気圧(例えば、1atm)より約0.5~5バール高い。ガス系は、一般的に、キセノンを含む。ガス系は、酸素及び/又は二酸化炭素のような1又は複数のさらなるガスを含んでもよい。
【0067】
図4には、ガス系を、二次バッグのキャビティ内に注入するための非限定的な配置が図示されている。容器30は、血液製剤及び/又は細胞培養物を含むように設計された従来の貯蔵バッグ32を含む二次バッグ31の形態をしている。ガスボンベ37は、容器に注入されるガス系の供給源である加圧ガス系を含む。ガス調節器36(例えば、減圧器)を任意で使用することができる。ガス調節器は、ガス供給管39によって、ガスボンベとバルブ38の間に接続される。容器30内へのガス系の注入は、手動操作によって行われてもよく、あるいは、事前に設定された体積のガスが、容器内に自動的に注入されてもよく、及び/又は二次バッグのキャビティは、二次バッグのキャビティ内へのガス系の注入によって、事件に設定された圧力まで自動的に加圧されてもよい。ガス系を二次バッグのキャビティ内に注入できるように、ガス供給管の端部を、二次バッグ31のガス注入口33に挿入することができる。当然のことながら、ガス供給システムの他のあるいは付加的な配置を使用することも可能である。
【0068】
図6には、密閉可能な圧力チャンバー21の内部キャビティ21Aを加圧するシステムの非限定的な例が図示されている。容器30、あるいは一以上の容器を含むラック又はシェルフシステムを、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21A内に密閉してから、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内の圧力を上昇させる。一般的に、圧力を、環境気圧(例えば、1atm)の1~10バール上まで上昇させる。
図6に示すように、密閉可能な圧力チャンバーは、ドレイン又は圧力逃し弁21C、エアコンプレッサ21Eから延びる高圧送気管21D、及び安全チェック弁21Fに接続されている。安全チェック弁は、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティの過度の加圧を防ぐために使用することができる。圧力逃し弁は、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内を減圧する又は完全に脱圧するために使用することができる。エアコンプレッサは、ガス(例えば、空気や他の種類のガス)に圧力をかけ、送気管21Dに圧力をかけ、一方向弁21Gを通じて、その後密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内にガスが至るように、設計されている。圧力コントローラ21Hは、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内の圧力を表す圧力計21Iによる圧力値をモニターするように構成されることができる。圧力コントローラは、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティにおいて所望の圧力(例えば、事前設定圧力など)をコントロールするため及び/又は維持するために、エアコンプレッサ21E及び/又は圧力逃し弁21C及び/又は安全弁21Fの動作を制御するために使用することができる。例えば、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティの圧力が、チャンバー及び/又は管の漏出可能性に起因して事前設定レベルより低下した場合、エアコンプレッサを活性化させ、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内の所望の圧力を、事前設定した圧力レベルに回復させるように、圧力コントローラを設計してもよい。また、圧力コントローラは、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ内の圧力が、事前設定圧力値より高いと圧力コントローラが判定した場合に、圧力逃し弁を開くこともできる。
【0069】
図7には、密閉可能な圧力チャンバー内で、血液製剤及び/又は細胞培養物の保存状態を制御するための、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティの非限定的な電気回路図が図示されている。容器30、あるいは一以上の容器を含むラック又はシェルフシステムが、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aに密閉された後、オペレータがスタートボタン又はプッシュボタン40を押すことができ、これは、圧力コントローラ42及び温度コントローラ44によって、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aの圧力を事前設定レベルまで増加させ、及び、内部キャビティ21Aの温度を事前設定レベルまで減少させる。熱電対46は、内部キャビティ21Aの温度を測定し、温度コントローラにそのような情報を提供するために使用される。温度コントローラが、内部キャビティ内の温度が、事前設定温度に達していないと判定すると、温度コントローラは冷却コンプレッサ52を活性化させ、密閉可能な圧力チャンバーを含むハウジングの内部キャビティを冷却する。ハウジングのキャビティ及び/又は密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aの温度が、所望の事前設定温度に達すると、温度コントローラは、冷却コンプレッサを停止させる。同様に、圧力センサは、内部キャビティ21Aの圧力を測定し、圧力コントローラにそのような情報を提供するために使用される。密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aの圧力が、事前設定圧力を下回ると、圧力コントローラはエアコンプレッサ54を活性化させ、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aの圧力を上昇させる。内部キャビティ21Aの圧力が事前設定圧力に達すると、圧力コントローラは、エアコンプレッサを停止させる。内部キャビティ21Aの圧力が、事前設定圧力を超えた場合、圧力コントローラは、圧力逃し弁21Cにより、内部キャビティ21Aから圧力を解放することができる。内部キャビティ21A内で1又は複数の容器を貯蔵している間、撹拌装置のモータ58は、容器内で血液製剤及び/又は細胞培養物を保存する間に容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物を撹拌するため活性化される。電源48及び/又は電力供給源50は、制御システムの構成要素に電力を供給するために使用される。
【0070】
上述の装置は、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存及び貯蔵するために使用することができる。本発明の装置は、米国特許第8,158,339号(参照により本明細書に包含される)に記載の血液製剤保存方法を実施する際に使用することができる。
【0071】
本発明によれば、前記保存装置は、以下に示すように機能することが可能である:
【0072】
血液製剤(例えば、血小板濃縮液、全血、濃厚赤血球)及び/又は細胞培養物は、ガス透過性の材質からなる従来の貯蔵バッグ内に入れられる。血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するために使用されるガス系(純粋ガス、ガス系組成物)に応じて、従来の貯蔵バッグのために使用される材質は、そのガス系に対し所望のガス透過性を有するべきである。特に、キセノン又はキセノン混合物の使用を伴う本発明の保存方法を実施する場合、従来の貯蔵バッグ用のバッグ材質は、キセノンに対して透過性を有するべきである。例えば、TerumoBCT(コロラド州、レークウッド)又はHaemonetics(マサチューセッツ州、ブレーントリー)によって製造された血小板濃縮液用の従来の貯蔵バッグは、本発明において使用するための従来の貯蔵バッグに求められる、所望のキセノン透過特性を有している。本発明に従って保存されるべき血液製剤及び/又は細胞培養物は、周知の方法と利用可能な適切な設備の使用を通じて取得することができる。
【0073】
血液製剤及び/又は細胞培養物を含む密封された従来の貯蔵バッグ32は、二次バッグ31のキャビティ内に入れられる。その後、二次バッグは、二次バッグのキャビティ内に従来の貯蔵バッグを密封するためにシールされる。
図4に図示されているセットアップを利用することによって、二次バッグは、使用される保存方法に応じて要求されるガス系で満たされる。ガス系(例えば、純粋なキセノン、又はキセノンを含む混合物)は、ガス注入口33を通じて、二次バッグのキャビティ内に注入される。二次バッグのキャビティ内に注入されるガス圧は、大気圧と同じか又はより高い圧力である。例えば、二次バッグは一般的に、二次バッグのキャビティ内の圧力が、環境気圧(例えば、1atm 海面位にて)を0.0001~10バール(及びその間の全ての値及び範囲)を超える圧力となるように、ガス系で満たされる。ある特定の実施形態では、二次バッグは、二次バッグのキャビティ内の圧力が、環境気圧より0.1~5バール高い圧力(典型的には、環境気圧より0.1~4バール高い圧力、より典型的には、環境気圧より0.1~3バール高い圧力、さらに典型的には、環境気圧より0.1~2バール高い圧力、さらになお典型的には、環境気圧より0.1~1バール高い圧力)となるようにガス系で満たされる。二次バッグは、ガス供給が、充填システムによって自動的に終了するまで、又は二次バッグが可視的に十分膨張したように見えたときに手動で終了させるまで、ガス系によって膨張される。充填後の長期保管の間に、二次バッグの気密シールを保証するため、反対の縁34に沿って二次バッグをシールしてもよい。
【0074】
二次バッグのキャビティを、要求される量のガス系で満たした後、血液製剤及び/又は細胞培養物を含む従来の貯蔵バッグを収容した二次バッグを、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aの中に置く。非限定的な本発明の実施形態において、ラック22のシェルフの上に容器を置くことができる。圧力チャンバー21は、その後密閉され、貯蔵サイクルにかけられる。ガス放出バルブ21Cが閉じ、エアコンプレッサ21Eは、密閉可能な圧力チャンバーの内部キャビティ21Aに空気又はいくらかの他のガスを供給することによって、圧力チャンバー内の圧力を高め始める。内部キャビティ21Aの内側の空気圧が、事前設定圧力レベルに達すると、エアコンプレッサは停止する。非限定的な一実施形態では、密閉可能な圧力チャンバーの密閉されたキャビティの圧力は、一般的に、環境気圧(例えば、1atm 海面位にて)より0.0001~20バール(及びその間の全ての値及び範囲)高い圧力に達する。ある特定の実施形態では、密閉可能な圧力チャンバーの密閉されたキャビティは、環境気圧より0.5~10バール高い圧力、典型的には環境気圧より1~6バール高い圧力、より典型的には環境気圧より1~5バール高い圧力、さらに典型的には環境気圧より2~5バール高い圧力、さらになお典型的には環境気圧より3.5~5バール高い圧力まで加圧される。ある非限定的な配置では、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティに二次バッグが挿入される前に、二次バッグのキャビティがガス系で満たされて至る圧力は、密閉可能な圧力チャンバーの密閉されたキャビティが完全に加圧された後の、密閉可能な圧力チャンバーの密閉されたキャビティ内の圧力と等しいか又はより低い。別の非限定的な配置では、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティに二次バッグが挿入される前に、二次バッグのキャビティがガス系で満たされて至る圧力は、密閉可能な圧力チャンバーの密閉されたキャビティが完全に加圧された後の、密閉可能な圧力チャンバーの密閉されたキャビティ内の圧力より低い。
【0075】
圧力チャンバー21は、内部キャビティ内で事前設定温度が得られるまで、冷却コンプレッサ52によって冷却されてもよい。あるいは、圧力チャンバーは、冷蔵庫又は冷蔵室に置かれてもよい。密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内で1又は複数の容器を保存する間、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティ内の温度は、一般的に約15℃以下であって、且つ、容器内の血液製剤及び/又は細胞培養物の凝固点よりは高い。ある非限定的な配置では、密閉可能な圧力チャンバーのキャビティは、0.01~15℃、典型的には1~10℃、及びより典型的には3~6℃の温度まで冷却される。
【0076】
二次バッグの外側の空気圧が、内部キャビティ21A内の圧力の増加に起因して高まると、二次バッグのキャビティ内のガス系に平衡化が生じ、それによって従来の貯蔵バッグへのさらなるガス系の浸透が生じ、血液製剤及び/又は細胞培養物中のガス系の量が高まる。それゆえ、血液製剤及び/又は細胞培養物へのガス系のより高い溶解度のためのコンディションが作り出される。また、圧力チャンバーが密閉されると、撹拌装置が活性化され、内部キャビティ21Aの内側でラックを振動又は回転させて、貯蔵期間の間、血液製剤及び/又は細胞培養物の所望の撹拌が達成される。
【0077】
密閉可能な圧力チャンバーのキャビティにおける貯蔵から、1又は複数の容器が取り出される際、密閉可能な圧力チャンバー内の上昇した圧力は、チャンバー21のドア21Bより前に、任意で部分的に又は完全に放出されてもよい。ドレイン又は圧力逃し弁21Cは、チャンバー21の内部キャビティ21A内の圧力を下げるために使用できる。チャンバー21の内部キャビティ21A内の上昇圧力を低下させてから、ドア21Bを開けて、1又は複数の容器をチャンバー21の内部キャビティ21Aから取り除く。その後、一般的に、従来の貯蔵バッグ32の中の血液製剤及び/又は細胞培養物を使用する前に、容器を放置して部分的に又は完全に室温まで温める。従来の貯蔵バッグ32の中の血液製剤及び/又は細胞培養物を温める間、従来の貯蔵バッグの内側のガス系濃度は、周囲雰囲気(例えば、空気)中のガスの濃度と等しくなる。ある非限定的な配置では、従来の貯蔵バッグ32内の血液製剤及び/又は細胞培養物が部分的又は完全に室温まで温まる期間の間、従来の貯蔵バッグ32は二次バッグ31内に放置される。別の非限定的な配置では、従来の貯蔵バッグ32内の血液製剤及び/又は細胞培養物が部分的又は完全に室温まで温まる期間の間、従来の貯蔵バッグ32は二次バッグ31から取り出される。二次バッグは、従来の貯蔵バッグ32に損傷を与えることなく、開封され(例えば、切断による開封など)、二次バッグのキャビティから従来の貯蔵バッグ32を取り除くことが可能になる。その後、二次バッグは、再利用のために設計されていないので、廃棄される。一般的に、従来の貯蔵バッグ32内の血液製剤及び/又は細胞培養物の温めは、自然加温による。ヒーター、オーブン又は他の種類の加熱装置による従来の貯蔵バッグ32内の血液製剤及び/又は細胞培養物の加熱は、通常は使用されない。従来の貯蔵バッグ32内の血液製剤及び/又は細胞培養物が、所望の温度まで温まった後、及び、従来の貯蔵バッグ内のガス系濃度が、部分的に又は完全に周囲雰囲気中のガスの濃度と等しくなった後、血液製剤及び/又は細胞培養物を、輸血又は他の種類の手段において使用することができる。
【0078】
実施例1
【0079】
血小板濃縮液を入れた従来の貯蔵バッグをまず、二次バッグ31のキャビティ内に置く。その後、ガス供給システムを、二次バッグのガス注入口33に接続する。キセノンを含むガス系(例えば、少なくとも50~65%のキセノン)を、二次バッグのキャビティ内に注入する。従来の血小板貯蔵バッグが、キセノンに対しガス透過性の材質からなるという事実のため、従来の貯蔵バッグ32に収容された血小板濃縮液は、前記ガス系で飽和状態となり、それにより、従来の貯蔵バッグ内で血小板濃縮液を保存するためのコンディション(すなわち、組成、ガス系による圧力、及び温度)が作り出される。続いて、密封した二次バッグを、チャンバー20の内部キャビティ21A内に置く。その後ドア21Bを閉じて、チャンバーを密閉する。その後、内部キャビティ21Aを、高めた空気圧(例えば、環境気圧より3.5~5バール高い)に及び冷却温度(例えば、3~6℃)にかける。二次バッグは、従来の貯蔵バッグが水平位置で横たわるように、内部キャビティ21A内に置かれている。二次バッグを、二次バッグのキャビティ内に配置された従来の貯蔵バッグが、その長手軸の周りを回転するように、回転してもよい。そのような回転は、細胞に大きなストレスをかけることなく、保存中に血小板を懸濁状態に保つために設計される。そのような回転は、長期保管中の細胞の沈降も妨ぎ、結果として、凝集形成を低減又は防止する。しかしながら、必要であれば、チャンバーの内部キャビティ内において、二次バッグを違う配置で保存してもよい。
【0080】
二次バッグをチャンバーの内部キャビティから取り除くときになると、チャンバーの空気圧は解放され、ドア21Bが開かれ、二次バッグがチャンバーの内部キャビティから取り除かれる。その後、従来の貯蔵バッグが、二次バッグのキャビティから取り除かれる。従来の貯蔵バッグに入っている血小板濃縮液を使用する前に、血小板が自然に温まるまで(例えば、室温まで)、及び従来の貯蔵バッグの内側のガス系のガス濃度が、周囲の大気濃度(例えば、海面位の空気等)と部分的に又は完全に等しくなるまで、従来の貯蔵バッグを所定の期間、周囲の温度と圧力で保ってもよい。その後、血小板を含む従来の貯蔵バッグを、輸血又は他の種類の医療措置において使用することができる。
【0081】
実施例2
【0082】
血小板濃縮液(図示せず)は、少なくともキセノン及び酸素に透過性である材質からなる従来の貯蔵バッグ内に入れられる。例えば、TerumoBCT(コロラド州、レークウッド)によって製造された血小板濃縮液貯蔵用の従来の貯蔵バッグを、この目的のために使用することができる。血小板濃縮液を含む従来の貯蔵バッグは、密閉される。
【0083】
血小板濃縮液の入った密封済みの従来の貯蔵バッグは、二次バッグ31のキャビティ内に入れられ、その後二次バッグが密封される。二次バッグの密封後、ガス系を二次バッグのキャビティ内に注入できるように、ガス注入口33にガス充填システムが接続される。ガス系としては、キセノン系、キセノンと酸素系(例えば、79~95体積%のキセノンと5~21体積%の酸素)、キセノンと1又は複数の他のガス系(例えば、空気、酸素、窒素など)等が使用できる。二次バッグのキャビティ内にガス系を注入する間、二次バッグは膨張する。二次バッグが、見た目に完全に膨張したと思われるとき、二次バッグのキャビティ内へのガス系の導入は、手動で終了されるか、又は充填システムによって自動的に終了される。二次バッグへのガス系の充填が終了されるとき、一般的に、二次バッグのキャビティ内の圧力は、環境気圧より1バール未満高い。その後、ガス供給源と二次バッグとの接続を切り離し、二次バッグを密閉する。
図4に図示されるガス系供給のためのシステムは、二次バッグのキャビティをガス系で満たすために使用できる。
図4のガスボンベ37は、前記ガス系を含む高圧ボトルであってもよい。当然のことながら、二次バッグのキャビティにガス系を供給するために、他のあるいは付加的な配置が使用できる。二次バッグ31のキャビティにガス系を供給するステップは、周囲環境の温度(例えば、20~24℃)で行うことができる;しかしながら、他の温度も使用できる。
【0084】
従来の血小板貯蔵バッグが、キセノンに対しガス透過性の材質からなるという事実のため、従来の貯蔵バッグ32に収容された血小板濃縮液は、前記ガス系で飽和状態となり、それにより、従来の貯蔵バッグ内で血小板濃縮液を保存するためのコンディション(すなわち、組成、ガス系による圧力、及び温度)が作り出される。
【0085】
続いて、密封した二次バッグを、チャンバー20の内部キャビティ21A内に置く。その後ドア21Bを閉じて、チャンバーを密閉する。その後、内部キャビティ21Aを、高めた空気圧(例えば、環境気圧より3.5~5バール高い)に及び冷却温度(例えば、3~6℃)にかける。二次バッグは、従来の貯蔵バッグが水平位置で横たわるように、内部キャビティ21A内に置かれている。二次バッグを、二次バッグのキャビティ内に配置された従来の貯蔵バッグが、その長手軸の周りを回転するように、回転してもよい。そのような回転は、細胞に大きなストレスをかけることなく、保存中に血小板を懸濁状態に保つために設計される。そのような回転は、長期保管中の細胞の沈降も妨ぎ、結果として、凝集形成を低減又は防止する。しかしながら、必要であれば、チャンバーの内部キャビティ内において、二次バッグを違う配置で保存してもよい。
【0086】
二次バッグをチャンバーの内部キャビティから取り除くときになると、チャンバーの空気圧は解放され、ドア21Bが開かれ、二次バッグがチャンバーの内部キャビティから取り除かれる。その後、従来の貯蔵バッグが、二次バッグのキャビティから取り除かれる。従来の貯蔵バッグに入っている血小板濃縮液を使用する前に、血小板が自然に温まるまで(例えば、室温まで)、及び従来の貯蔵バッグの内側のガス系のガス濃度が、周囲の大気濃度(例えば、海面位の空気等)と部分的に又は完全に等しくなるまで、従来の貯蔵バッグを所定の期間、周囲の温度と圧力で保ってもよい。その後、血小板を含む従来の貯蔵バッグを、輸血又は他の種類の医療措置において使用することができる。
【0087】
本発明に係る方法は、血小板濃縮液をより効率的に保存し、血小板同士がくっつくのを防ぐことを可能にするが、血小板の機能的特性を阻害しない。アフェレーシス血小板濃縮液(標準的な方法を使用して得られる)と、血小板濃縮液の保存を目的とする標準的なプラスチックバッグを、本発明に係る方法で使用することが可能であった。貯蔵期間の終わりに、高密度沈着物が存在しないことは、患者に輸血される血小板濃縮液の品質と安全性を改善する。
【0088】
本発明に係る装置と方法の使用は、ある種の利便性によって特徴づけられ、血液製剤保存プロセスを加速するために使用できる。本発明よって提案されるアプローチを用いることにより、貯蔵チャンバー21内の任意の容器30を、他の容器30をチャンバー21に保存したまま、取り出すことができる。チャンバーから容器を取り出した後、チャンバー内に残る容器を引き続き貯蔵するために、チャンバー21内の圧力及び温度条件を元に戻すことができる。
【0089】
このように、本発明は、加圧下・ガス媒体中で、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するための装置と方法を提供し、既存の従来の装置と比較して、多数の利点を提供する。本発明に係る装置は、汎用性があり、信頼性が高く、製造が容易で、使用が容易で、使用するのに高コストを要求しない装置として機能するものとして開発された。密封された二次バッグは、血液製剤及び/又は細胞培養物を含む従来の貯蔵バッグと接触するので、通常、二次バッグは単回使用ユニットとして作られる。従って、二次バッグは、低コストの材質から形成されることができ、製造のために少量の材料を使用するシンプルなデザインとすることができる。本発明で使用されるアレンジメントは、高い内圧に耐えるために設計された二次バッグ又は従来の貯蔵バッグを要求しない。貯蔵の間、チャンバーの内部キャビティ内の高い圧力は、二次バッグへの外圧又は外部圧力を作り出し、これは次に、二次バッグのキャビティ内のガス系を、従来の貯蔵バッグの内側のガス圧と平衡化させる。二次バッグが可撓性であり、バッグのエッジ全体に沿って開口可能という事実のため、従来の貯蔵バッグを二次バッグのキャビティ内に容易に入れることができ、その後二次バッグを密封できる。同時に、二次バッグの形状と大きさは、任意で、従来の貯蔵バッグの形状と大きさにぴったり適合するように構成することができる。従来の貯蔵バッグを二次バッグのキャビティ内に挿入した後、二次バッグの内側にスペースが残り、その後二次バッグのキャビティ内にガス系を注入できるように、二次バッグのキャビティは、一般的に、従来の貯蔵バッグよりも大きい。このスペースが小さい場合、血液製剤及び/又は細胞培養物を保存するために使用されるガス系が大幅に節約できる。一般的に、二次バッグのキャビティの容積は、従来の貯蔵バッグの容積より約2~50%(及びその間の全ての値及び範囲)大きい。ある非限定的な構成において、二次バッグのキャビティの容積は、従来の貯蔵バッグの容積より約2~30%大きく、典型的には、二次バッグのキャビティの容積は、従来の貯蔵バッグの容積より約2~20%大きく、より典型的には、二次バッグのキャビティの容積は、従来の貯蔵バッグの容積より約5~15%大きい。
【0090】
本発明に係る装置と方法の別の利点は、チャンバーの内部キャビティ内の圧力が、二次バッグのキャビティに含まれるガス系と異なっており且つより安価なガスによってもよいことである。この結果として、チャンバーの開け閉め、及び/又はチャンバーの漏れに起因するチャンバーの再加圧は、単に、チャンバーの内部キャビティに加圧空気又は他の安価なガスを追加することによって、簡単かつ安価に達成することができる。このような装置は、ガス系の高圧力が、保存システムにおいて所望のガス圧を作り出すために使用される他の従来の貯蔵システムと比較して、大きな利点を有する。
【0091】
上述した目的が、先行の記載から明らかにされたように、効果的に達成され、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、前述の構成においてある種の変更が行われてもよく、上記記載に含まれるおよび添付の図面に示されるすべての事項が、限定の意味ではなく例示として解釈されるべきことが意図される。本発明は、好ましく且つ代替性のある実施形態を参照して記載されてきた。改良および変更は、ここに提供された本発明の詳細な説明を読み理解することで、当業者に明らかになるであろう。本発明は、それらが本発明の範囲内である限りにおいて、そのような改良および変更を全て含むことを意図する。また、以下の特許請求の範囲は、言語の問題として、その間に収まると言われ得る、ここに記載された本発明の包括的かつ具体的な特徴の全ておよび本発明の範囲の全ての記載をカバーすることを意図していることが理解される。