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特許7483821計時器のための胴に裏蓋を締結し方向付けるデバイス
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  • 特許-計時器のための胴に裏蓋を締結し方向付けるデバイス 図1
  • 特許-計時器のための胴に裏蓋を締結し方向付けるデバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】計時器のための胴に裏蓋を締結し方向付けるデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/11 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G04B37/11 Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022160025
(22)【出願日】2022-10-04
(65)【公開番号】P2023084662
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】21212694.0
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・アリマン
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ガルサン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-51063(JP,A)
【文献】特開2003-207581(JP,A)
【文献】実開平4-11489(JP,U)
【文献】特開2019-113543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/00-39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計の胴(2)に裏蓋(1)を締結するデバイス(100)であって、前記裏蓋(1)は、前記胴(2)と共に座面を形成するように構成されたカバー(10)と、前記胴内に置かれるように構成された本体(12)とを備え、当該デバイスは、前記裏蓋と、前記胴との間に配置された配向用のリング(3)を備え、
前記リングは、前記裏蓋と協働し、前記裏蓋との配向を保証するように構成された少なくとも1つの下方係合部(32)と、前記胴(2)と協働し、前記裏蓋およびリング組立体の前記胴(2)に対する配向を保証するように構成された上方係合部(33)とを備え、
前記下方係合部(32)は、前記裏蓋(1)に対向する前記リングの下面から下方へ突出するように形成され、前記上方係合部(33)は、前記胴(2)に対向する前記リングの上面から上方へ突出するように形成され、前記少なくとも1つの上方係合部(33)の前記上面からの高さが前記下方係合部(32)の前記下面からの高さよりも高く、またはその逆であることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記リング(3)は、3つの下方係合部(32)を備え、前記下方係合部(32)は、100°以上で互いに間隔が空けられていることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(2)に裏蓋(1)を締結するデバイス。
【請求項3】
前記裏蓋(1)は、前記リング(3)の前記少なくとも1つの下方係合部(32)を収容するように構成された少なくとも1つの孔(15)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(2)に裏蓋(1)を締結するデバイス。
【請求項4】
前記胴(2)は、前記リング(3)の前記少なくとも1つの上方係合部(33)を収容するように構成された機械加工部(22)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(2)に裏蓋(1)を締結するデバイス。
【請求項5】
前記リング(3)は、ハイトレル(登録商標)などのポリマー材料製であることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(2)に裏蓋(1)を締結するデバイス。
【請求項6】
前記リングは、その下面に少なくとも1つの第1面取部(30)と、その上面に少なくとも1つの第2面取部(31)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴に裏蓋を締結するデバイス。
【請求項7】
前記裏蓋(1)には3つの高さがあり、第1の高さは、前記カバー(10)の下端から上端までの距離として形成され、第2の高さは、前記カバーよりも小径の第1部材(11)の下端から上端までの距離として形成され、第3の高さは、前記第1部材よりも小径の前記本体(12)の下端から上端までの距離として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計の胴(2)に裏蓋(1)を締結するデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの上方係合部(33)および前記少なくとも1つの下方係合部(32)は、前記リングに対向して配置されることを特徴とする、請求項6に記載の締結するデバイス。
【請求項9】
前記第2の高さを形成する前記第1部材は、当該リング(3)を収容するように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の締結するデバイス。
【請求項10】
前記第3の高さは、前記第2の高さよりも高いことを特徴とする、請求項7に記載の締結するデバイス。
【請求項11】
前記リング(3)の外径は、前記胴(2)の内径に対応することを特徴とする、請求項1に記載の締結するデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の締結するデバイスを備えることを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計の要素を、調整可能な角度方向で別の要素に締結するデバイスおよび方法に関し、より具体的には、12時と6時を繋ぐ垂直軸に関して位置合わせが調整され得る裏蓋を含む腕時計ケース用の締結デバイスに関する。
【0002】
本発明は、そのようなデバイスを含む、特に腕時計である計時器にも関する。
【背景技術】
【0003】
腕時計および同様の装置の外部部品は、特に耐水性、剛性、見た目のような多くの制約が課され、ガスケット交換、クリーニング、潤滑、または延いては修理のための販売後対応に帰結せざるを得ないような、不慮の分解が一切防止されるように製造される必要がある。
【0004】
さらに一部の外部部品または制御コンポーネントは、独自の参照、停止、または作動位置の場所、あるいはさらに表示または目盛りを読みやすくするため、あるいは傾斜面の連続性を保証する、さらに/あるいは装飾のために、互いに角度を空けて配向される必要がある。この角度配向は、コンポーネントをしっかりと締めること、およびガスケットの完全な耐水性とともに首尾よく実行するのは、多くの場合困難である。
【0005】
文献CH423637または特許CH447046に記載のように、組み立てられる中身を問わず、弾性閉鎖要素を使用することが知られている。これら文献に提案された弾性要素の欠点は、主にその全体的サイズによるものである。さらに文献CH512769に記載のように、円形または矩形ケースの角に配置された波形端と協働する、竜頭部位に囲まれた、圧縮性材料製のびょうを使用することが知られている。このようなデバイスは、成形ケースにのみ使用可能で、エラストマ型圧縮性材料による弾性は、その材料の経年劣化により大きく変質する可能性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、調整が容易な角度配向された外部部品コンポーネントの、耐水性があり、安全な組立体の製造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、請求項1に記載の、裏蓋を胴に締結するデバイスに関する。
【0008】
本発明はさらに、そのような締結デバイスを備える計時器に関する。
【0009】
単に図解するための非限定的な例として呈される本発明の特定の実施形態についての以下の説明、および次の添付図面から、本発明のその他特徴および利点がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】裏蓋が、その元の位置から反転された、本発明に係る配向リングを有する締結デバイスの展開斜視図を示す。
図2】本発明に係る締結デバイスの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、角度配向が容易で、位置が保証され、コンポーネント数が最少に抑えられ、製造コストが低減される、外部部品コンポーネントの、耐水性があり、安全な組立体の製造を提案する。さらに、ガスケットシールから独立して配向リングを使用することで、機能の分離が可能となる。即ち、ガスケットのみで耐水機能が実現される。
【0012】
図1および2は、腕時計の胴に対する、裏蓋の取り付けおよび角度配向の非限定的な例を示す。
【0013】
本発明は、腕時計の胴2に裏蓋1を締結するデバイス100に関する。裏蓋1は、胴2と共に座面を形成するように構成されたカバー10と、胴2内に嵌合するように構成された本体12とを備え、当該デバイスは、裏蓋1と、胴2との間に配置された配向リング3を備える。
【0014】
配向要素3に関してはその他形態も可能であるが、機械加工または射出加工による製造が容易で、極めて体積が低減されていることから安価であるため、リングが好ましい。
【0015】
カバー10は胴2に対して、これら2つの要素間にガスケットシールが介在した状態で取り付けられ得る。
【0016】
図1および2に見られるように、裏蓋1には3つの高さがある。第1の高さは、カバー10により形成される。第2の高さは、カバー10よりも小径の第1部材11により形成される。第3の高さは、第1部材11よりも小径の、カバーの本体12により形成される。
【0017】
第2の高さを形成する第1部材11は、リング3を収容するように構成される。リング3は、本体12の、第1部材11側の縁および胴2の肩部20に接するように、カバー上に載置され、裏蓋1が胴2上で組立位置にある際に、表面14および24が相互接触すると、裏蓋1と胴2との間に提案された、組立体の強度と耐水性を保証するように設計される。
【0018】
第3の高さを形成する裏蓋1の本体12は、腕時計ケースの胴2と協働するように構成される。
【0019】
図1および2に見られるように、リング3は、リング3の下面に形成され、裏蓋1の第2部材の面または孔15内に置かれるように構成された、少なくとも1つの下方係合部32を備える。少なくとも1つの下方係合部32は、リング3の下面から延在する。したがって、例えば裏蓋1にトルクが掛かっても、リング3は回動不能である。有利には、リング3は、その下面にわたって分散され、100°の角度に合わせて互いに間隔が空けられた3つの下方係合部32を備える。このようなレイアウトによると、リング3は裏蓋1上に良好に保持でき、さらに組立て時に力をより良く分散できる。100°の角度はさらに、角度を空けて配向させる部材として作用するという利点もある。
【0020】
リング3はさらに、リングの上面に形成された少なくとも1つの上方係合部33を備える。上方係合部33は、胴2内に形成された機械加工部22と協働するように構成される。このような構成によると、胴2に対する、裏蓋1およびリング3組立体の適切な配置、あるいは適切な配向が可能となる。これは、裏蓋1に装飾がなされ、腕時計の12時から6時の軸に完全に沿っている必要がある場合に特に有用である。
【0021】
有利には、配向リング3は、その下面に少なくとも1つの第1面取部30と、その上面に少なくとも1つの第2面取部31とを備える。上面は、胴2に接する面を意味し、下面は、裏蓋1に接する面を意味する。面取部30および31は、裏蓋が胴に乗った際にリングを取り付けやすくするものである。第1面取部30は、本体12および第2部材11により形成された肩部に配置される。第2面取部31は、胴2に配置される。
【0022】
下方係合部32の高さは、上面が下面から区別され、したがってリング3が適切な方向に配置可能となるように、上方係合部33よりも低い。したがって、係合部32、33は、取り付けの際に配向させる部材として作用する。さらに、図示のとおり、係合部は、リング3の両側に対向して配置される。後者は当然、ずれていてもよい。
【0023】
さらに、リングの取り付け方向を確認する必要がないように、その各縁に面取部が設けられ、同じ高さの係合部を有するリング3も考えられる。
【0024】
胴2、本体12、および組立ての際に胴2に対するガイド表面を形成するリング3に対して、裏蓋1が容易に位置合わせできるように、本体12の高さは、第1部材11よりも高い。
【0025】
なお、図1において、リング3の外径は、胴2の内径に対応する。これにより、胴2上のリング3の支持径が最適となることが保証でき、したがって、組立体の耐水性が保証できる。
【0026】
好ましくは、リング3は、射出可能材料であって、耐水性に関する機械的要件を満たす、ハイトレル(登録商標)などのポリマー材料製である。当然、弾性変形可能で、十分な耐性を有し得るその他任意の材料が、リング3の製造に使用され得る。リング3と、下方および上方係合部32および33とは、単一要素を形成する。これにより、裏蓋1の開放(径方向開放または取り外し)トルクに対して、良好な耐性が得られる。さらに、これら係合部は、間隙孔を有する部材を形成しやすくし得る、取付けピンと見做すこともできる。
【0027】
裏蓋1およびリング3は、これらが胴2内に強く挿入されると、裏蓋1がリング3を当該胴2に対して放射状に押し付けるような寸法を有する。これにより、リングを、胴と裏蓋の壁間で圧縮する効果が得られる。圧縮力に応じてリング3が変形し、組立体の良好な保持が保証される。裏蓋1と、胴2との間でリングを圧縮することで、裏蓋1と、リング3と、胴2のそれぞれの間に径方向間隙がないことが保証される。これは、裏蓋1および胴2の間の配向の品質(精度および強度)に寄与する。
【0028】
図2は、胴2に組み付けられた裏蓋1およびリング3の断面図を示す。リング3は、胴2の内横面と、裏蓋1との間で圧縮されている。裏蓋を胴に強く取り付けることで、リング3が変形して保持される。当然、この変形は、リング3の材料の弾性変形限界を超えない。
【0029】
本発明はさらに、そのような締結デバイスを備える、計時器または腕時計に関する。
【0030】
まとめると、本発明は、コンパクトな設計の締結デバイスを得て、腕時計の耐水性を維持し、あらゆる不慮の分解に対して保護可能となる。
【0031】
本発明はさらに、コンポーネントを、その作動位置に、ほぼ完ぺきな方向(角度配置公差±1°)で係止して保持することを保証可能とする。
【符号の説明】
【0032】
1 裏蓋
2 胴
3 リング
10 カバー
11 第1部材
12 本体
14 表面
15 孔
20 肩部
22 機械加工部
30 第1面取部
31 第2面取部
32 下方係合部
33 上方係合部
100 デバイス
図1
図2