(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】補正部材を備える計時器ケース
(51)【国際特許分類】
G04B 37/10 20060101AFI20240508BHJP
G04G 21/00 20100101ALI20240508BHJP
【FI】
G04B37/10 Z
G04G21/00 304D
G04G21/00 304B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197711
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・フィリポン
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・エグリ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・クルヴォワジエ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-285660(JP,A)
【文献】特開2000-285765(JP,A)
【文献】米国特許第5383166(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/00-37/22
G04G 3/00-99/00
H01H 15/00-15/24、25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(1)の現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正する様々な機能を実行するための少なくとも1つの機能補正器(10、12)を有する前記時計ムーブメント(1)を受け入れできる内部空間を画定するミドル(20)を備える計時器ケース(2)であって、前記ミドル(20)は、前記時計ムーブメント(1)の少なくとも1つの機能補正器(10、12)と相互作用できる補正部材(100)を受け入れるように構成された貫通空隙(21)を有し、前記補正部材(100)は、
- 長手方向軸(X-X)を有する円筒体(110)と、
- 前記長手方向軸(X-X)に沿って前記円筒体内で並進移動できる制御ステム(120)であって、前記時計ムーブメント(1)の少なくとも1つの機能補正器(10、12)と協働するように意図された端部(122)を備える制御ステム(120)と、
- 前記制御ステム(120)と一体化され、前記ケース(2)の外側からユーザがアクセス可能なプッシュピース(130)とを備え、
前記計時器ケースは、前記補正部材(100)が、複数の安定位置(P1、P2、P3、P4)の間を、前記ミドル(20)の前記空隙(21)内で
前記長手方向軸(X-X)に垂直な方向で横方向にスライドするように取り付けられ、各前記安定位置(P1、P2、P3、P4)が、前記時計ムーブメント(1)に面する前記制御ステム(120)の前記端部(122)の位置を補正することを特徴とする、計時器ケース(2)。
【請求項2】
前記補正部材(100)の前記安定位置(P1、P2、P3)のうちの1つの安定位置について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)は、前記時計ムーブメント(1)に含まれる機能補正器(10、12)に面して配置でき、これによって、前記補正部材(100)は、前記プッシュピース(130)が押されたとき、前記機能補正器(10、12)に関連付けられた機能を実行できることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項3】
前記補正部材(100)の前記安定位置のうちの1つの安定位置(P3)について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)は、前記時計ムーブメント(1)に含まれる複数の機能補正器(10、12)に面して配置でき、これによって、前記補正部材(100)は、前記プッシュピース(130)が押されたとき、前記機能補正器(10、12)に関連付けられた機能の組合せを同時に実行できることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項4】
前記補正部材(100)の前記安定位置のうちの1つの安定位置(P4)について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)は、前記プッシュピース(130)が押されたとき、前記時計ムーブメント(1)に対して非アクティブであるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項5】
前記時計ムーブメント(1)は、第1の機能補正器(10)および第2の機能補正器(12)を備え、前記補正部材(100)の第1の安定位置(P1)では、前記制御ステム(120)の前記端部(122)は、前記第1の機能補正器(10)に面するように配置でき、前記補正部材(100)の第2の安定位置(P2)では、前記制御ステム(120)の前記端部(122)は、前記第2の機能補正器(12)に面するように配置できることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項6】
前記空隙(21)は、前記補正部材(100)が、直線状にスライドするように前記ミドル(20)内に取り付けられるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項7】
前記空隙(21)は、前記補正部材(100)が、曲線状にスライドするように前記ミドル(20)内に取り付けられるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項8】
前記円筒体(110)は、前記空隙内で移動でき、前記補正部材(100)を前記ミドル(20)に固定するように構成された取付リング(180)と協働することを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項9】
前記空隙(21)は、スライドを形成し、前記取付リング(180)は、前記空隙(21)内で移動できるスライダを形成することを特徴とする、請求項8に記載の計時器ケース(2)。
【請求項10】
前記空隙(21)は、楕円形状であり、前記取付リング(180)は、前記空隙(21)内をスライドするように相補的な形状を有することを特徴とする、請求項9に記載の計時器ケース(2)。
【請求項11】
前記取付リング(180)は、前記ミドル(20)に含まれる内面(24)に設けられた座ぐり面(26)と協働するように構成されたフランジ(182)を備えることを特徴とする、請求項8に記載の計時器ケース(2)。
【請求項12】
前記円筒体(110)は、ねじ込みまたは打ち込みによって前記取付リング(180)と一体的に作られることを特徴とする、請求項8に記載の計時器ケース(2)。
【請求項13】
前記円筒体(110)は、回転軸(X-X)を備える回転円筒の形状を有し、前記制御ステム(120)は、前記円筒体(110)と同軸であることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項14】
前記補正部材(100)は、前記プッシュピース(130)を安定静止位置に確実に戻すように構成された戻し要素(140)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項15】
前記ケース(2)は、前記補正部材(100)の前記複数の安定位置をインデクス付けするためのインデクス部材(150)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の計時器ケース(2)。
【請求項16】
前記インデクス部材(150)は、前記ミドル(20)によって搬送される複数のボールインデクサによって形成されることを特徴とする、請求項15に記載の計時器ケース(2)。
【請求項17】
前記インデクス部材(150)は、前記ミドル(20)に含まれる穴(28)に設けられた複数のボールインデクサによって形成されることを特徴とする、請求項15に記載の計時器ケース(2)。
【請求項18】
ボールインデクサは、取付リング(180)に設けられたくぼみ(185)と協働することを特徴とする、請求項15に記載の計時器ケース(2)。
【請求項19】
- 請求項1に記載のケース(2)と、
- 前記ケース(2)の内部に収容された時計ムーブメント(1)とを備え、前記時計ムーブメント(1)は、現在時刻を表示するための手段を搬送および駆動し
、前記時計ムーブメント(1)の現在時刻から派生する少なくとも1つの情報を起動、選択、リセット、または補正できるようにする少なくとも1つの機能補正器(10、12)を備えることを特徴とする、計時器。
【請求項20】
前記時計ムーブメント(1)は、重ね合わされた旋回レバーによって形成される少なくとも第1の機能補正器(10)および第2の機能補正器(12)を備えることを特徴とする、請求項19に記載の計時器。
【請求項21】
前記計時器は腕時計であることを特徴とする、請求項19または20に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば文字盤に表示された情報を、単一の制御部材によって選択および/または補正できるようにする、多機能補正部材を備える、たとえば腕時計ケースのような計時器ケースに関する。
【0002】
本発明はさらに、そのようなケースと、文字盤に表示された情報を選択および/または補正して、たとえば現在時刻から派生するいくつかの機能を補正、作動、またはリセットするためのそのような多機能補正部材とを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0003】
計時器、特に腕時計によって、ユーザは、現在時刻を知ることができる。この現在時刻は、この補正動作のための特定の位置に到達するまで、巻真に動作を加える(たとえば、引っ張る)ことによって補正できる。
【0004】
腕時計はまた、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなど、一般にコンプリケーションと呼ばれる、現在時刻から派生する機能を表示、補正、作動、およびリセットするために使用できる。
【0005】
この目的のために、腕時計のケースのミドルに補正部材を組み込んで、これらの補助機能を制御および/または補正する必要がある。
【0006】
これらの補正部材は、典型的には、腕時計ケースのミドルの外側に配置されたプッシュピース式の制御部材を備え、ミドルを半径方向に通過するオリフィスの内部で移動できる制御ステムと協働する。そのような補正部材は、ユーザがツールを使用することを必要とすることなく、補助機能を制御および/または補正することを可能にする。
【0007】
いくつかの計時器、特に腕時計は、複数のコンプリケーションを備えており、多数の機能をユーザに提供するが、ケース上におけるこれら補正部材の数を増やす必要がある。
【0008】
しかしながら、ミドルにおける補正部材の数を増やすと、レイアウトの問題が生じ、特に、落ち着いたエレガントな外観が求められるミッドレンジおよびトップレンジの計時器の場合、審美的な問題が生じる可能性がある。
【0009】
ミドルにおける補正部材の数の増加はまた、様々な補正部材を統合して取り付けるために、時計ケースに作る必要のある開口部の数を増加させるため、シールの問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに関連して、本発明は、ケースミドルに単一の開口部を取り付ける必要がある同じ補正部材を使用して、特に、少なくとも2つの異なる機能を選択、起動、および/または補正できるようにする補正部材を備える計時器ケースを提案することによって、先行技術の前述した欠点に対する解決策を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、時計ムーブメントの現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正する様々な機能を実行するための少なくとも1つの機能補正器を有する前記時計ムーブメントを受け入れできる内部空間を画定するミドルを備える計時器ケースに関し、ミドルは、前記時計ムーブメントの少なくとも1つの機能補正器と相互作用できる補正部材を受け入れるように構成された貫通空隙を有し、前記補正部材は、長手方向軸X-Xを有する円筒体と、長手方向軸X-Xに沿って前記円筒体内で並進移動できる制御ステムであって、前記時計ムーブメントの少なくとも1つの機能補正器と協働するように意図された端部を備える制御ステムと、前記制御ステムと一体化され、前記ケースの外側からユーザがアクセス可能なプッシュピースとを備え、計時器ケースは、補正部材が、複数の安定位置の間を、ミドルの前記空隙内でスライドするように取り付けられ、各安定位置が、前記時計ムーブメントに面する前記制御ステムの端部の位置を補正することを特徴とする。
【0012】
したがって、ユーザは、起動させたい前記時計ムーブメントの少なくとも1つの機能補正器を容易に選択し、プッシュピースが押されたとき、その機能補正器を調整できる。
【0013】
したがって、本発明によるケースおよび補正部材は、時計ケースのミドルに作られるべき開口部の数を最小化するための革新的な解決策を提案する。したがって、シーリングおよびレイアウトに関する問題は、ミドルに埋め込まれる補正デバイスの数を低減することによって回避される。
【0014】
なお、本発明による多機能補正部材は、時刻設定機能を実現する巻真に接続された設定りゅうずとは異なる補正デバイスであり、任意選択的にバレルを巻き上げできることが留意される。したがって、本発明による多機能補正部材は、バレルを巻くための巻真に接続されておらず、ムーブメントの現在時刻を設定することはできない。
【0015】
前の段落で述べた特徴に加えて、本発明による計時器ケースは、個別に、または技術的に可能な任意の組合せにしたがって考えられる、次のうちの1つまたは複数の補完的な特徴を有することができる。
- 補正部材の安定位置のうちの1つの安定位置について、前記制御ステムの端部は、時計ムーブメントの機能補正器に面して配置でき、これによって、補正部材は、プッシュピースが押されたとき、機能補正器に関連付けられた機能を実行でき、
- 補正部材の安定位置のうちの1つの安定位置について、前記制御ステムの端部は、時計ムーブメントの複数の機能補正器に面して配置でき、これによって、補正部材は、プッシュピースが押されたとき、機能補正器に関連付けられた機能の組合せを同時に実行でき、
- 補正部材の安定位置のうちの1つの安定位置について、前記制御ステムの端部は、プッシュピースが押されたとき、時計ムーブメントに対して非アクティブであるように構成され、
- 時計ムーブメントは、第1の機能補正器および第2の機能補正器を備え、補正部材の第1の安定位置では、前記制御ステムの端部は、第1の機能補正器に面するように配置でき、補正部材の第2の安定位置では、前記制御ステムの前記端部は、第2の機能補正器に面するように配置でき、
- 空隙は、補正部材が、直線状にスライドするようにミドル内に取り付けられるように構成され、
- 空隙は、補正部材が、曲線状にスライドするようにミドル内に取り付けられるように構成され、
- 円筒体は、空隙内で移動でき、補正部材を前記ミドルに固定するように構成された取付リングと協働し、
- 空隙は、スライドを形成し、取付リングは、空隙内で移動できるスライダを形成し、
- 空隙は、楕円形状であり、取付リングは、前記空隙内をスライドするように相補的な形状を有し、
- 前記取付リングは、ミドルに含まれる内面に設けられた座ぐり面と協働するように構成されたフランジを備え、
- 前記円筒体は、ねじ込みまたは打ち込みによって取付リングと一体的に作られ、
- 円筒体は、回転軸X-Xを備える回転円筒の形状を有し、制御ステムは、円筒体と同軸であり、
- 補正部材は、プッシュピースを安定静止位置に確実に戻すように構成された戻し要素を備え、
- ケースは、補正部材の複数の安定位置をインデクス付けするためのインデクス部材を備え、
- インデクス部材は、ミドルによって搬送される複数のボールインデクサによって形成され、
- インデクス部材は、ミドルに含まれる穴に設けられた複数のボールインデクサによって形成され、
- ボールインデクサは、取付リングに設けられたくぼみと協働する。
【0016】
本発明はさらに、本発明によるケースと、前記ケースの内部に収容された時計ムーブメントとを備える計時器に関し、時計ムーブメントは、現在時刻を表示するための手段を搬送および駆動し、特に、前記時計ムーブメントの現在時刻から派生する少なくとも1つの情報を起動、選択、リセット、または補正することができる少なくとも1つの機能補正器を備える。
【0017】
有利なことに、時計ムーブメントは、第1の機能補正器および第2の機能補正器を備える。
【0018】
有利なことに、第1の機能補正器および第2の機能補正器は、重ね合わされた旋回レバーによって形成される。
【0019】
有利なことに、計時器は腕時計である。
【0020】
有利なことに、計時器のムーブメントは機械式ムーブメントである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の目的、利点、および特徴は、以下の図を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明による補正部材を備える計時器ケースの例示的な実施形態を概略的に示す上面図である。
【
図2】
図2は、本発明による補正部材が取り付けられたミドルの外面を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明による補正部材のさらなる詳細図である。
【
図4】
図4は、本発明による補正部材の、
図3に例示される軸A-Aに沿った矢状断面図である。
【
図5a】
図5aは、ケース内の2つの異なる機能補正器を起動できる、本発明による補正部材の1つの位置状態を示す図である。
【
図5b】
図5bは、ケース内の2つの異なる機能補正器を起動できる、本発明による補正部材のもう1つの位置状態を示す図である。
【
図5c】
図5cは、時計ムーブメントの複数の機能補正器を同時に起動させることができる補正部材の位置状態を示す図である。
【
図5d】
図5dは、時計ムーブメントの機能補正器への作用を阻止する補正部材の位置状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明による補正部材が取り付けられるミドルの内面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
すべての図において、別段の指示がない限り、共通の要素には同じ参照番号が付されている。
【0024】
本発明による補正部材は、ケースの外側からユーザがアクセス可能な単一の制御部材によって、現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正する様々な機能を実行するために、時計ムーブメントに含まれる機能補正器を選択および/または起動できる多機能補正部材である。
【0025】
したがって、補正部材は、ケースの内部に取り付けられた時計ムーブメントに含まれる現在時刻から派生する情報に関連付けられた様々な機能を制御するためのユーザインターフェースを形成する。
【0026】
図1は、本発明による補正部材100を備える計時器ケース2の例示的な実施形態の上面図を概略的に示す。
【0027】
図1を参照して示すように、補正部材100が全体的に見えるように、ミドル20が透明に図示される。
【0028】
補正部材100は、長手方向軸X-Xに沿って延在する。
【0029】
図1に図示されるように、本発明による補正部材100は、現在時刻設定機能を有する巻真(図示せず)に接続された設定りゅうず3とは別の補正部材であり、任意選択的に、バレルを巻き上げできる。言い換えれば、本発明による補正部材100は、巻真に接続されておらず、ムーブメントの現在時刻を設定できない。
【0030】
計時器ケース2は、たとえば腕時計ケースである。
【0031】
ケース2は、通常、裏蓋(図示せず)と、ミドル20を形成する側壁と、ケースを閉じるガラス(図示せず)とを備える。
【0032】
図示されるケース2は形状が円形であるが、本発明は、時計分野で典型的に使用される他のケース形状にも適用可能である。
【0033】
ミドル20は、外面23および内面24を有する。ミドル20の内面24は、時計ムーブメント1(全体は図示せず)を受け入れるように意図された内部空間を画定する。
【0034】
時計ムーブメント1は、現在時刻を表示するための手段を搬送および駆動し、特に、現在時刻から派生する少なくとも1つの情報を表示するための少なくとも1つのコンプリケーションを備える。この目的のために、時計ムーブメント1は、現在時刻から派生する少なくとも1つの情報を表示、補正、選択、作動および/またはリセットできるようにする複数の機能補正器10、12を備える。
【0035】
図示される例示的な実施形態では、時計ムーブメント1は、第1の機能補正器10および第2の機能補正器12を備え、現在時刻から派生する少なくとも1つの機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットを可能にする。しかしながら、この表現は、本質的に限定的ではない。
【0036】
たとえば、時計ムーブメント1は、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなどのコンプリケーションを備えることができる。
【0037】
機能補正器10、12は、たとえば、特に
図1に図示されるように、旋回ピン11を中心に旋回するように取り付けられた重ね合わされたレバーである。しかしながら、他のタイプの機能補正器を考慮できる。
【0038】
図2は、特に補正部材100が取り付けられた、ミドル20の外面23の図を示す。
【0039】
図6は、特に補正部材100が取り付けられた、ミドル20の内面24の図を示す。
【0040】
特に
図1、
図2、および
図6に図示されるように、ミドル20は、半径方向の向きを有する、すなわち、外面23から内面24まで延在する貫通空隙21を有し、本発明による補正部材100を受け入れ、搬送するように構成される。
【0041】
空隙21は、スライドを形成し、補正部材100がミドル20の内側で移動できるように、補正部材100をスライド可能に取り付けできるように構成される。
【0042】
空隙21は、補正部材100がミドル20内で前後に移動できるようにし、したがって、ミドル20における補正部材100と、対向する時計ムーブメント1との位置を変位させ、補正できる。したがって、補正部材100が押された場合に、時計ムーブメント1の機能が不注意に起動されないようにするために、補正部材が、時計ムーブメント1に含まれる1つまたは複数の機能補正器に面するように配置できる、様々な安定起動位置に、または、補正部材が、時計ムーブメント1に含まれるいかなる機能補正器にも面しないように配置できる、ニュートラル位置に、補正部材を配置することが可能である。
【0043】
空隙21は、所望される補正部材100の位置の数、様々な部品の統合の必要性、およびケース2の形状などに応じて、様々な形状を有することができる。
【0044】
もちろん、空隙21によって許容される前後の動きは、補正部材100の操作に固有の変位とは異なることは明らかであり、そのプッシュピースは、ミドル20に対して半径方向に、すなわち、円筒体110の長手方向軸X-Xに沿って変位される。
【0045】
たとえば、空隙21は、楕円形状である。しかしながら、空隙21がスライドを形成し、補正部材100が取り付けられ、これによって、補正部材100がスライドし、ミドル20の内部をスライドすることによって、補正部材100の相対位置を、時計ムーブメントに対して補正できる限り、他の形状も可能である。
【0046】
内面24において、空隙21は(特に
図6に見られる)楕円形状の座ぐり面26を有する。
【0047】
図3は、本発明による補正部材100のさらなる詳細図であり、
図4は、
図3に示される軸A-Aに沿った矢状断面図である。
図3では、補正部材100および時計ムーブメント1の機能補正器10、12とのそれらの相互作用をより良く視覚化するために、ミドル20が図示されていないことが留意される。
【0048】
本発明の補正部材100は、プッシュボタン式からなる。
【0049】
補正部材100は、空隙21内でスライドできるスライダを形成する可動取付リング180と協働する円筒体110を備える。2つの要素が一緒になって、補正部材100をミドル20に固定でき、補正部材100がミドル20の空隙21においてスライドするように取り付けできる。
【0050】
図示される例示的な実施形態では、円筒体110は、円形断面を有する回転軸X-Xを有する回転円筒である。
【0051】
円筒体110は、管状部分111および頭部112を備え、頭部112は、円筒体110の第1の端部を形成する。
【0052】
管状部分111は、取付リング180にねじ込むことによって、管状部分を組み立てるためのねじ付き部分を有することができる。取付リング180は、ミドル20の空隙21の座ぐり面26に当接するように意図されたフランジ182を備える。
【0053】
この目的のために、取付リング180の外形は、少なくとも2つの位置の間で空隙21内を横方向に前後に自由にスライドできるように構成される。
【0054】
図示される例示的な実施形態では、取付リング180は、内部円形穴181を有する楕円形状の断面を有する円筒形状である。内部円形穴181は、円筒体110の管状部分111を受け入れ、2つの要素をねじ止めによって組み立てできるようにするとともに、補正部材100をミドル20に取り付けできるようにするねじ付き部分を有する。
【0055】
代替実施形態によれば、円筒体110の管状部分111は、取付リング180の内部円形穴181に打ち込みできる。
【0056】
空隙21の座ぐり面26に当接する端部フランジ182は、位置決め停止部を形成し、円筒体110がミドル20の外側からねじ込まれるかまたは打ち込まれるときに、補正部材100の取り付けを確実にする。
【0057】
円筒体110の頭部112は、ミドル20の外側に残る円筒体110の一部であり、すなわち、ムーブメント1とは反対側にあり、管状部分111と取付リング180は、ミドル20における空隙21で協働する。
【0058】
円筒体110は、頭部112と管状部分111との間に設けられた肩部113を備える。肩部113は、端部フランジ182とは反対側の取付リング180の端部を受け入れるように意図された円形の軸受または停止面を形成する。
【0059】
肩部113はさらに、取付停止部がミドル20の外面23で形成できるようにする。
【0060】
補正部材100はさらに、長手方向軸X-Xを有する円筒状の制御ステム120を備える。例として、制御ステム120は、回転軸X-Xを有する円筒状のステムである。
【0061】
制御ステム120は、軸X-Xに沿って円筒体110内で、より具体的には、制御ステム120を受け入れるために設けられた円筒体110を通って内部穴において、スライドするように構成される。
【0062】
制御ステム120は、円筒体110と同軸である。
【0063】
制御ステム120は、ケース2の外側からユーザが操作できるプッシュピース130と一体化される。
【0064】
制御ステム120は、
- ケース2の外部に面し、たとえば打ち込みまたはねじ込みによってプッシュピース130と一体的に形成された第1の端部121と、
- ケース2の内部に面し、時計ムーブメント1の機能補正器10、12と接触し、ユーザがプッシュピース130を押したときに機能補正器を作動させることを意図された第2の端部122と、
- 第1の端部121と第2の端部122との間の接合部を形成する中央部分123とを備える。
【0065】
図4を参照して示すように、制御ステム120の第1の端部121は、プッシュピース130をねじ込むために半径方向外面に形成されたねじ切りを有する。
【0066】
制御ステム120の端部122は、時計ムーブメント1、より具体的には、機能補正器10、12、複数の機能補正器10、12に面して、または、ミドル20における補正部材100の位置によっては、どの機能補正器にも面することさえなく配置されるように意図されている。
【0067】
プッシュピース130は、円筒体110、より具体的には、頭部112の外部を同心円状にスライドするように構成された全体的なカプセル形状を有する。プッシュピース130は、制御ステム120の第1の端部121を受け入れるために、その中心にタップ穴を有するシャフト131を設けられた内部中空部を備える。
【0068】
従来方式では、補正部材100はさらに、回転軸X-Xを中心とした円筒体110に対するプッシュピース130の回転を阻止するための阻止手段を備えることができる。
【0069】
例として、阻止手段は、たとえば、円筒体110の頭部112の周囲の(軸X-Xに対して)半径方向外面に設けられたフルートのような突起要素125の協働によって、および、たとえば、プッシュピース130の内部中空部を画定する周壁135の(軸X-Xに対する)半径方向内面に設けられた溝のような相補的な形状の中空部によって形成できる。言うまでもなく、本発明の範囲を逸脱することなく、突起要素および中空部の異なる配置も可能である。
【0070】
したがって、阻止手段によって、プッシュピース130の回転を、円筒体110に対して阻止できる。
【0071】
代替実施形態(図示せず)によれば、円筒体110に対するプッシュピース130の回転は、プッシュピース130が、軸X-Xを中心に自由に旋回できるように、自由なままとされている。
【0072】
補正部材100の静止位置への戻りは、円筒体110とプッシュピース130との間に配置された戻り要素140、たとえば戻りばねによって確実に行われる。したがって、戻り要素140は、ユーザがプッシュピース130を押していないときに、プッシュピース130および制御ステム120を静止位置に再配置する傾向がある。
【0073】
この目的のために、円筒体110は、頭部112に形成され、戻り部材140の第1の端部を、第1の端部が当接するように受け入れるように構成された端部空洞を備える。戻り部材140の第2の端部は、プッシュピース130の内部中空部に当接する。
【0074】
本発明によるケース2は、ミドル20内で移動できる補正部材100の安定位置を画定するためのインデクス部材150を備える。インデクス部材150は、たとえば、補正部材の少なくとも2つの安定位置を画定できるようにする。
【0075】
有利なことに、インデクス部材150は、たとえば感度の高い方式で、補正部材100が正しく位置していることをユーザに示し、したがって、補正部材100を起動させるための2つの位置の間のあらゆる配置を阻止する。したがって、そのようなインデクス部材150は、所望の機能を実行するために、たとえば、第1の機能補正器10を操作するために、および/または、時計ムーブメント1の第2の機能補正器12を操作するために、または、補正部材100をニュートラルまたは非アクティブな位置に配置するために、制御ステム120の端部122が、時計ムーブメントに対して正しく配置されることを保証し、時計ムーブメントと相互作用しないことを可能にする。
【0076】
インデクス部材150はさらに、ユーザがプッシュピース130を押すときに、補正部材100の安定位置を確保する。
【0077】
例として、インデクス部材150は、ミドル20によって搬送される複数のバネ式ボールインデクサによって形成される。より具体的には、バネ式ボールインデクサは、この目的のためにミドル20に設けられた穴28に収容される。インデクサは、空隙21内の可動補正部材100の複数の安定位置をマークするように構成される。
【0078】
バネ式ボールインデクサは、
図3に図示されるように、たとえば、取付リング180の周囲の半径方向外面上に、取付リング180に設けられたくぼみ185と協働するように構成される。
【0079】
説明された例示的な実施形態では、ミドル20は、各安定位置用に、8つのバネ式ボールインデクサと、4つのバネ式ボールインデクサとを備える。
【0080】
説明された例示的な実施形態では、インデクス部材150は、補正部材100を起動させるための2つの起動位置P1、P2に対応する補正部材の2つの安定位置、すなわち、
図5aに図示されるように、第1の機能補正器10を起動させるための第1の安定起動位置P1と、
図5bに図示されるように、第2の機能補正器12を起動させるための第2の安定起動位置P2とを確定するように説明される。
【0081】
図5aおよび
図5bは、それぞれ第1の起動位置および第2の起動位置における補正部材100を図示する。
【0082】
しかしながら、補正部材100の複数の安定位置を画定するように、空隙21のサイズを決定でき、インデクス部材150を構成できる。
【0083】
たとえば、
図5cに例示される補正部材100の安定位置のうちの1つの安定位置P3によって、ユーザが、プッシュピース130を押したとき、少なくとも2つの機能補正器10、12を同時に操作できる。
【0084】
たとえば、
図5dに例示される補正部材100の安定位置のうちの1つの安定位置P4は、プッシュピース130が押された場合に、機能補正器を起動させないように構成された係合解除またはニュートラル位置である。たとえば、そのような位置では、制御ステム120は、時計ムーブメントの機能補正器を操作できない。
【0085】
したがって、別の実施形態によれば、ミドル20における補正部材100の安定位置は、
- プッシュピース130を押すことによって、その起動のために、第1の機能補正器10に面するように制御ステム120を配置する補正部材100の第1の位置P1、
- プッシュピース130を押すことによって、その起動のために、第2の機能補正器12に面するように制御ステム120を配置する補正部材100の第2の位置P2、および
- たとえば、プッシュピース130を押すことにより、第1の機能補正器10および第2の機能補正器12の同時起動のために、第1の機能補正器10および第2の機能補正器12に面するように制御ステム120を配置する、第1の位置P1と第2の位置P2との間の中間位置である補正部材100の第3の位置P3、のように定義できる。
【0086】
補正部材100はさらに、特に円筒体110と制御ステム120との間にシールを形成するための第1のシール手段160を備える。シール部材は、たとえば、互いに重ね合わされた1つまたは2つのOリングによって形成される。
【0087】
ケース2はさらに、ミドル20と補正部材100との間のシールを確保するように構成された第2のシール手段(図示せず)を備え、これにより、機能補正器100の変位を可能にしながら、ケース2の内部とケース2の外部との間のシールを確保する。第2のシール手段は、たとえば、ミドル20と一体化された部分と、補正部材100、たとえば円筒体110と一体化された部分とを有する可撓性膜によって形成される。
【0088】
以上説明したケース2および補正部材100により、時計ムーブメントの複数の機能を制御できる。操作される時計ムーブメント1の機能の選択は、補正部材100を1つの安定起動位置から別の安定起動位置に変位させることによって行われる。これを行うために、ユーザは、
図5aおよび
図5bに図示される、A1で参照される矢印にしたがって、プッシュピース130を介して補正部材100に並進力を加えることによって、補正部材100をスライドさせる。
【0089】
補正部材100のスライドは、直線的または曲線的にできる。
【0090】
図示される例示的な実施形態では、補正部材100は、
図2、
図5a、および
図5bに図示されるように、軸X-Xに垂直な方向に直線的に変位できる。例示的な実施形態では、加えられる並進力は、空隙21において、ミドル20の外面23に実質的に接する。
【0091】
代替実施形態によれば、補正部材100は、その中心がケース2の中心と共通である円弧に沿って変位できる。そのような場合、空隙21の形状は、そのような曲線状のスライドを可能にするように適合される。
【0092】
補正部材100が適所にあるとき、ユーザは、軸X-Xに平行な、
図5aおよび
図5bにおいてA2で示される矢印によって示される方向にプッシュピース130を押すことによって、補正部材100を操作する。加えられた圧力は、戻り要素140に逆らって進み、選択された機能補正器10、12と接触するまで、プッシュピース130および制御ステム120をケース2の内部に向かって変位させる。プッシュピース130をさらに押すと、機能補正器10、12が操作され、機能補正器10、12に関連付けられた前記時計ムーブメント1の機能が、起動、選択、リセット、または補正される。
【0093】
本願において、制御ステム120は、機械式時計ムーブメントの2つのレバー式の機能補正器を動作させる。しかしながら、制御ステムは、現在時刻から派生する任意のメカニズムの少なくとも1つの機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットできるようにする電気接触式の機能補正器と相互作用するように考慮される。
【0094】
本発明はさらに、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなど、現在時刻から派生する機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットするための少なくとも2つの機能補正器10、12を備える時計ムーブメント1と、プッシュピース130が押されたときにムーブメント1の機能補正器10、12を選択および操作できるようにする、本発明による少なくとも1つの多機能補正器100とを備えるケース2に関する。
【0095】
本発明はさらに、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなど、現在時刻から派生する機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットするための少なくとも2つの機能補正部材10、12を備える時計ムーブメント1を包囲するケース2を備える、腕時計などの計時器に関する。
【符号の説明】
【0096】
1 時計ムーブメント
2 計時器ケース
3 設定りゅうず
10 第1の機能補正器、機能補正部材
11 旋回ピン
12 第2の機能補正器、機能補正部材
20 ミドル
21 空隙
23 外面
24 内面
26 座ぐり面
28 穴
100 補正部材、多機能機能補正器
110 円筒体
111 管状部分
112 頭部
113 肩部
120 制御ステム
121 第1の端部
122 第2の端部
123 中央部分
125 突起要素
130 プッシュピース
131 シャフト
135 周壁
140 戻り部材、戻り要素
150 インデクス部材
160 シール手段
180 取付リング
181 内部円形穴
182 端部フランジ
185 くぼみ
A-A 軸
P1 第1の安定起動位置、安定位置、起動位置
P2 第2の安定起動位置、安定位置、起動位置
P3 第3の安定位置
P4 第4の安定位置
X-X 長手方向軸、回転軸