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特許7483863付加製造を使用する同期リラクタンス機械の製作
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】付加製造を使用する同期リラクタンス機械の製作
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240508BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20240508BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H02K15/02 H
H02K1/276
H02K15/03 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022511310
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CA2020051074
(87)【国際公開番号】W WO2021030900
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】62/890,110
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マゲッド・イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ベルニエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ミシェル・ラマール
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-010547(JP,A)
【文献】特開2018-137853(JP,A)
【文献】特開2000-299947(JP,A)
【文献】特開2013-135071(JP,A)
【文献】特開2014-212589(JP,A)
【文献】特開2011-035997(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02800107(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0062791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/276
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期リラクタンスモータ(SynRM)のための回転子を製造する方法であって、
(a)支持構造物を設けるステップと、
(b)前記支持構造物上に磁束キャリア材料の第1の層を製作するステップと、
(c)磁束バリアを画定するために、磁束キャリア材料の以前の層上に磁束バリア材料の層を製作するステップと、
(d)磁束バリア材料の前記層上に磁束キャリア材料の後続の層を製作するステップと、
(e)所望の数の磁束バリアを有する回転子コアを形成するためにステップ(c)およびステップ(d)を繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記支持構造物が長手軸に沿って延び、磁束バリア材料の前記層と磁束キャリア材料の前記層が、前記支持構造物の前記長手軸に対して径方向に製作される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)において、磁束バリア材料の前記層が、第1の末端と第2の末端の間で、磁束キャリア材料の前記以前の層を完全にカバーするように製作され、それによって、磁束キャリア材料の前記層間に完全な分離体を画定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
磁束バリア材料の前記層および磁束キャリア材料の前記層が、噴霧ベース付加製造を使用して堆積される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記回転子コアの外面上にノッチを画定するために、少なくとも一部の磁束バリア材料を除去するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記磁束バリアを磁化するステップをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持構造物が回転子シャフトを備え、磁束キャリア材料の前記第1の層が前記回転子シャフトに直接接着される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
長手軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトに対して固定される回転子コアであって、付加製造によって製作された交互になった磁束バリア材料の層と磁束キャリア材料の層を備える、回転子コアと
を備え、交互になった前記層が前記長手軸に平行に延び、前記シャフトに対して径方向に沿って、磁束バリア材料と磁束キャリア材料の間で交互になっている、同期リラクタンスモータ(SynRM)のための回転子。
【請求項9】
前記回転子コアが前記磁束キャリア材料によって画定された本体を備え、前記本体が、磁束経路を画定するために前記本体内を延びる複数の磁束バリアを備え、前記磁束バリアが前記磁束バリア材料によって画定され、前記磁束バリアがブリッジまたは中心ポストなしの前記本体を通って延びる、請求項に記載の回転子。
【請求項10】
磁束バリア材料の前記層と磁束キャリア材料の前記層が一緒に、前記回転子コアの内面と外面の間にポケットまたは空隙のない実質的に中実の塊を画定する、請求項8または9に記載の回転子。
【請求項11】
前記磁束バリア材料の末端で前記回転子コアの外面上に画定される複数のノッチを備える、請求項から10のいずれか一項に記載の回転子。
【請求項12】
前記磁束キャリア材料がSMC材料または軟磁性材料を含む、請求項から11のいずれか一項に記載の回転子。
【請求項13】
前記磁束バリア材料が、フェライト、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、アルミニウムニッケルコバルト、それらの合金、およびそれらの混合物からなる群から選択されるPM材料を含む、請求項から12のいずれか一項に記載の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般的に、同期リラクタンス機械に関し、より詳細には、その構成要素を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類磁石を有する永久磁石同期機械(Permanent Magnet Synchronous Machines、PMSM)は、それらが高い効率およびトルク密度を提供できるために、家庭用機器から電気自動車および風力発電機におよぶ様々な用途で利用される。希土類の価格の高騰に起因して、電気モータ業界は、モータ性能を犠牲にすることなく、希土類元素への依存を低下させる代替の設計および技術を探している。同期リラクタンスモータ(Synchronous Reluctance Motor、SynRM)は、それが頑丈な回転子設計を有すること、およびそれが従来型の誘導モータと匹敵する性能であることに起因して、PMSMに対する有望な代替品であると考えられる。SynRMが、誘導モータに匹敵する電力密度および効率を達成することができる一方で、それらの性能は、依然として、希土類磁石を有するPMSMに劣る。したがって、改善する余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様によれば、同期リラクタンスモータ(SynRM)のための回転子が提供される。回転子は、シャフトと、シャフトに対して固定されるコアとを含む。コアは、径方向に製作された、交互になった磁束キャリア材料と磁束バリア材料の層を含み、ブリッジおよび/または中心ポストなしでコアを通って延びる磁束バリアを画定する。一実施形態では、交互になった層は、永久磁石(PM)の層と、回転子シャフト上に製作され回転子シャフトに直接接着される軟磁性複合(SMC)材料の層とを含む。
【0004】
一態様によれば、SynRMのための回転子を製造するための方法が提供される。方法は、(a)支持構造物を設けるステップと、(b)支持構造物上に磁束キャリア材料の第1の層を製作するステップと、(c)磁束バリアを画定するために、磁束キャリア材料の第1の層上に磁束バリア材料の層を製作するステップと、(d)磁束バリア材料の層上に磁束キャリア材料の後続層を製作するステップと、(e)所望の数の磁束バリアを有する回転子を形成するためにステップ(c)およびステップ(d)を繰り返すステップとを含む。一実施形態では、層は、コールドスプレー付加製造を使用してPMおよびSMC材料を製作することによって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】例示的な実施形態にしたがった伝統的なSynRMモータの四分円の断面図である。
図2】SynRMモータの性能にとっての、ブリッジおよび中心ポストの効果を図示するグラフである。
図3】例示的な実施形態にしたがった、セグメント化した回転子の四分円の断面図である。
図4】例示的な実施形態にしたがった、PM支援型回転子の四分円の断面図である。
図5】軸方向に積層した回転子を備える実施形態にしたがった、代替のSynRMモータの四分円の断面図である。
図6】磁束バリア構造を画定するためのパラメータを示す、一実施形態にしたがった、軸方向に積層した回転子の四分円の断面図である。
図7図6に示した回転子パラメータの最適化についての例示的な結果を示すグラフである。
図8】8個の極を備える実施形態にしたがった、代替のSynRMモータの断面図である。
図9】回転子面に画定されたノッチを有する代替実施形態にしたがった、軸方向に積層した回転子の四分円の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1を参照すると、典型的なSynRMモータ100の、固定子部101および回転子部151を含む横断面が示される。固定子部101は、高透磁率材料でできている固定子コア103を備え、磁場を発生させて複数の固定子極を画定するため電機子コイル107がその周りに巻かれた複数の歯105を備える。回転子部151は、固定子部101によって発生された磁場に応答して、回転子シャフト161上の中心軸150の周りに、固定子部101内で回転するように位置決めされる。回転子シャフト161は、中心軸150に対応する長手軸に沿って延びる。
【0007】
回転子部151は、高透磁率材料でできている回転子コア153を備え、回転子コア153を通る磁束経路を画定するために非磁性材料でできている複数の磁束バリア155を備える。本説明では、磁束バリア155は、回転子コア153中に画定され、回転子コア153の対向する径方向の末端間に延びる円弧形状の空隙である。回転子コア153は、回転子シャフト161の長手軸に沿って複数の積層を積み重ねることによって回転子コア153が形成されるという点で横方向に積層され、各積層は、回転子シャフト161の長手軸に対して横方向の平面中に延びる。積層の各々は、ほぼ同一であり、磁束バリア155は、各積層中へと切り開かれる。そのような構成で、回転子コア153、中心ポスト157、およびブリッジ159の組立を容易にし、構造的な完全性を維持することが実現される。中心ポスト157は、磁束バリア155の空隙と交差する回転子コア材料の部分を備え、ブリッジ159は、磁束バリア155の空隙を、回転子コア153の径方向の末端から離して離間する回転子コア材料の部分を備える。理解できるように、ポスト157/ブリッジ159は、各積層の構成要素が単一の部片として互いに保持されることを可能にし、それによって組立を容易にすることができる。さらに、組み立てた積層体は、構造的完全性を向上させることになる。これは、回転子コア153が高速で動作するときに特に必要である。
【0008】
中心ポスト157およびブリッジ159が組立を容易にしてさらなる構造的完全性を実現するが、それらは、SynRMモータ100の性能に大きい影響を有することができる。理解できるように、中心ポスト157およびブリッジ159は、磁束バリア155を通るリーク磁束を増加させ、モータのトルク能力の低下をもたらす。図2に示されるように、有限要素解析(Finite Element Analysis、FEA)によって、2mmのブリッジ/中心ポストを有するSynRMと比較して、ブリッジ/中心ポストを取り除くと、約35%だけ出力トルクが増加する可能性があることが明らかである。本効果は、より厚いブリッジ/中心ポストが必要な場合に、より顕著である。
【0009】
本効果を打ち消すための1つの方法は、たとえば、図3のセグメント化した回転子コア151aに示されるように、ブリッジおよび/または中心ポストなしの回転子コアを設けることである。このことは、たとえば、軸方向積層(すなわち、回転子シャフトの長手軸に平行な軸に沿って延びる積層体を設けること、回転子シャフト161に対して径方向に積層体を積み重ねること、および回転子シャフト161に積み重ねた積層体を接着すること)を介して達成することができる。しかし、この様式でブリッジ/中心ポストを取り除くと、各回転子積層体が、多数の同一でないセグメントへと分割され、組立プロセスを複雑にして、大量生産には不便な結果となることが理解される。ブリッジ/中心ポストの効果を打ち消すための別の方法は、たとえば、図4の永久磁石(PM)支援型回転子コア151bに示されるように、磁束バリア155の中に永久磁石163を挿入することである。永久磁石163は、ブリッジ159/中心ポスト157の区域中の磁束密度レベルを上昇させ、したがって、リーク磁束経路のリラクタンスを増加させることができる。しかし、トルク生成に寄与する磁束は比較的低い。これは、磁束全体のかなりの部分が、回転子コア中で循環して、ブリッジおよび中心ポストを飽和させるためである。
【0010】
ここで、図5および図6を参照して、固定子部201ならびに中心ポストおよび/またはブリッジなしで構成される回転子部251を含む、可能な実施形態にしたがった、代替のSynRMモータ200の設計が示される。固定子部201は、高透磁率材料でできている固定子コア203を備え、磁場を発生させて複数の固定子極を画定するため電機子コイル207がその周りに巻かれた複数の歯205を備える。回転子部251は、固定子部201によって発生された磁場に応答して、回転子シャフト261上の中心軸250の周りに、固定子部201内で回転するように位置決めされる。回転子シャフト261は、中心軸150に対応する長手軸に沿って延びる。説明された実施形態では、4極回転子251の1つの四分円が示される。他の四分円が同様の方法で構成できることが理解される。図8のモータ200における8極構成などといった、より多くの極を有する回転子に対して、同様の設計を提供できることも理解される。
【0011】
図5および図6に戻って参照して、回転子部251は、高透磁率材料でできている回転子コア253を備え、コア253を通る磁束経路を画定するために複数の磁束バリア255を備える。本実施形態では、磁束バリア255はほぼ円弧形状であって、回転子面267の2点間、具体的には、対称軸269の周りにほぼ対照的な、回転子コア253の第1の離間した径方向の末端267aと、第2の離間した径方向の末端267bとの間に延びる。しかし、磁束バリア255の他の形状および構成も可能であることが理解される。
【0012】
回転子コア253は、シャフト261の長手軸にほぼ平行な軸に沿って各々が延びる、複数の層を回転子コア253が備えるという点で軸方向に積層される。特に、回転子コア253は、磁束キャリア材料265(すなわち、コア材料)と磁束バリア材料263の交互になった層によって形成される。層263と層265は、シャフト261に対して径方向に沿って交互になっている。磁束キャリア材料265は、たとえば、1よりはるかに高い、好ましくは100より高い比透磁率を有する、かなり高い透磁率材料を含むことができる。本実施形態では、磁束キャリア材料265は、軟磁性複合物(SMC)を含むが、他の実施形態では、軟磁性材料などといった他の同様の材料が可能であることが理解される。一方で、磁束バリア材料263は、たとえば、100より低く、好ましくは1に近い比透磁率を有する、かなり低い透磁率材料を含むことができる。本実施形態では、磁束バリア材料263が永久磁石材料を含むが、他の実施形態では、磁束バリア材料263が非磁性材料および/または磁性材料と非磁性材料の組合せを含むことができることが理解される。
【0013】
回転子コア253の層は、磁束バリア255によって画定される磁束経路間のリーク磁束を防止するために配置される。より具体的には、本実施形態では、磁束キャリア材料265の層は、磁束バリア材料263の対応する層を介して、互いに完全に分離される。言い換えると、磁束バリア材料263の各層は、第1の磁束キャリア層の外側径方向境界271aと第2の磁束キャリア層の内側径方向境界271bとの間の厚さ273に沿って、連続して途切れずに延びる。そのような構成では、磁束キャリア材料265が、磁束バリア材料263の層内または磁束バリア材料263の層を通して延びることはほとんどない。
【0014】
本実施形態では、回転子コア253の層はまた、回転子コア253が実質的に中実の塊であるように構成される。言い換えると、回転子コア253の内面266と外面267の間には空隙またはポケットがなく、磁束キャリア材料265と磁束バリア材料263の隣接層は隣接し、それらの境界に沿って互いに完全に接着される。この様式では、回転子コア253は、本質的に、軟磁性材料中に埋め込まれた複雑な形状の磁石を備える中実の塊からなる。
【0015】
理解できるように、層の様々な幾何学的特性を、回転子部251の要件に依存して調整することができる。たとえば、磁束バリア層厚273と磁束キャリア層厚275は、実施形態ごとに変わる場合がある。いくつかの実施形態では、たとえば図5に示されるように、各磁束バリア層は、同じまたは同様の厚さ273を有することができ、および/または、各磁束バリア層は、同じ距離だけ離間することができる(すなわち、同じまたは同様の厚さ275を有する磁束キャリア層によって分離することができる)。他の実施形態では、たとえば、図6に示されるように、各磁束バリア層が異なる厚さ273を有することができ、および/または、異なる距離もしくは磁束キャリア厚275だけ互いに離間することができる。いくつかの実施形態では、たとえば、図5に示されるように、厚さ263、275は、比較的均一であってよく、たとえば、回転子コア253の第1の径方向末端267aと第2の径方向末端267bとの間のそれらの経路に沿って、ほぼ均一な厚さを有する磁束バリア255がもたらされる。他の実施形態では、たとえば、図6に示されるように、厚さ263、275は、所与の層にわたって変わる場合があり、たとえば、回転子コア253の第1の径方向末端267aと第2の径方向末端267bとの間のその経路に沿って変わる厚さを有する磁束バリア255がもたらされる。さらに、磁束バリア材料263および磁束キャリア材料265の層の数を変えることができることが理解される。たとえば、図5および図6の実施形態では、磁束バリア材料263の4つの層がある。他の実施形態では、磁束バリア255の望ましい数に依存して、磁束バリア材料263のより多くの層またはより少ない層を設けることができる。
【0016】
幾何学的特性は、回転子251の性能パラメータを最適化するために調整できることがさらに理解される。図6に示される実施形態では、磁束バリア層および磁束キャリア層は、各々が、軸269の周りに対照的な、回転子コア253の、第1の離間した径方向末端267aと第2の離間した径方向末端267bとの間に延びるほぼ同心の円弧として構成される。角度α1からα4は、回転子面267における磁束キャリア角度を規定する一方で、角度β1からβ4は、回転子面267における磁束バリア角度を規定する。理解できるように、個々の調整角度α1からα4およびβ1からβ4は、異なる特性を有することができる異なる回転子幾何形状をもたらすことになる。したがって、これらの8個のパラメータは、所望の性能特性を得るために最適化することができる。たとえば、図7に示される結果では、トルクリップルを最小化し平均トルクを最大化することを目指した目的関数で8個のパラメータを最適化するために、遺伝的アルゴリズムが適用された。最適化手順の期間に、1399の候補となる設計が評価およびシミュレーションされて、低いトルクリップルおよび高い平均トルクへと収束する設計700が結果として得られた。次いで、たとえば、最低のトルクリップルおよび最大の平均トルクを有する設計を選択することによって、製造するために、設計のうちの1つを選択することができる。しかし、最適設計を選択するときに、小さい磁石体積および/または低い減磁の危険性などといった他の要因を考慮に入れることもできる。所望の設計を生成するために異なる最適化アルゴリズムを使用できること、および異なる性能パラメータを捜すことができることが理解される。異なる磁束バリア構成について、異なる最適化パラメータを使用して、同様の最適化プロセスを実行できることがさらに理解される。
【0017】
上で述べた実施形態では、磁束バリア255は回転子面267まで(具体的には、回転子コア253の第1の径方向末端267aと第2の径方向末端267bの間に)延びるが、他の構成が可能であることが理解される。たとえば、図9を参照すると、回転子251’の代替構成が示される。図示した構成では、磁束バリア255は、回転子面267から径方向内向きに距離ΔXだけ離間される第1の末端279aと第2の末端279bの間に延びる。この様式では、磁束バリアの末端279a、279bに隣接する回転子面267に(すなわち、回転子面の第1の末端267aと第2の末端267bに)小さい間隙またはノッチ281が画定される。本実施形態では、ノッチ281は空気ノッチであるが、それらを任意の好適な非導電性材料で満たすことができることが理解される。理解できるように、電機子に近接しておかれる磁石は、不可逆減磁に対してより弱い場合がある。したがって、回転子面267の磁束バリア255の末端におけるノッチ281を設けることによって、磁束バリア材料263が減磁することを防止するのを助けることができる。これは、異なる動作条件下での回転子の性能の安定性に役立つことができる。それは、磁石の渦電流損失の低減をもたらして、全体のモータ効率を改善することもできる。
【0018】
理解できるように、上で述べた軸方向に積層した回転子コア253は、良好な磁石および機械特性を有することができる。しかし、回転子コア253は、大量生産するのに好適であることもできる。それは、最終的な構造を得るために交互になった様式で、磁束キャリア材料の層と磁束バリア材料の層を製作することを含む異なる付加製造技法を使用して、回転子コア253を製作することができるためである。たとえば、図5図6、および図9を参照して、軸方向に積層した回転子コア253を製造する方法は、(a)支持構造物を設けるステップと、(b)支持構造物上に磁束キャリア材料265の第1の層を製作するステップと、(c)磁束バリア255を画定するために、磁束キャリア材料265の以前の層上に磁束バリア材料263の層を製作するステップと、(d)磁束バリア材料263の層上に磁束キャリア材料265の後続層を製作するステップと、(e)所望の数の磁束バリア255を有する回転子コア253を形成するためにステップ(c)およびステップ(d)を繰り返すステップとを含む。製造した回転子コア253は、次いで、回転子シャフト261に接着もしくは固定することができ、および/またはさもなくば、モータ200を形成するために、固定子101に対して設置することができる。いくつかの実施形態では、磁束バリア材料および/または磁束キャリア材料の層を製作するステップは、支持構造物上ならびに/または磁束バリア材料および/もしくは磁束キャリア材料の以前の層上に、磁束バリア材料および/または磁束キャリア材料を堆積するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、磁束キャリア材料265の第1の層は、支持構造物上に直接堆積、形成、さもなくば製作することができ、磁束キャリア材料265および磁束バリア材料263の後続の層がその上に堆積、形成、または製作される。いくつかの実施形態では、ステップ(c)において、回転子コア253の本体内に空隙を残すことなく、磁束バリア材料263が磁束キャリア材料265の以前の層を完全にカバーするように、磁束キャリア材料265の上に磁束バリア材料263を堆積することができる。いくつかの実施形態では、ステップ(c)において、回転子コア253の第1の径方向末端267aと第2の径方向末端267bの間で、磁束バリア材料263が磁束キャリア材料265の以前の層を完全にカバーするように、磁束キャリア材料265の上に磁束バリア材料263を堆積することができる。他の実施形態では、ステップ(c)において、回転子コア253の第1の末端267aと第2の末端267bから径方向内向きに距離ΔXだけ離間し、それによって回転子面267にノッチ281を画定する、第1の末端279aと第2の末端279bの間の、磁束キャリア材料265の上に磁束バリア材料263を堆積することができる。いくつかの実施形態では、後続のステップ(f)は、平衡をとるため、ならびに/または、たとえば、所望の仕上げを達成するためにおよび/もしくは固定子201との適切な嵌合を確実にするために、回転子面267を磨くため(たとえば、少なくとも一部の磁束バリア材料263を除去することによってノッチ281を画定するため)、もしくはシャフト界面を磨くために、積層した回転子コア253を機械加工するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、支持構造物が、回転子シャフト261に対応することができる。したがって、そのような実施形態では、第1の層は、回転子シャフト261上に直接製作、堆積、または形成することができる。
【0019】
本実施形態では、磁束バリア材料263は、磁性材料である。ステップ(c)で磁束バリア材料263の層が製作されるとき、材料263は、磁化状態ではない。したがって、追加ステップが、磁束バリア材料263を磁化するステップを含むことができる。本実施形態では、バリア材料263を磁化するステップは、ステップ(e)の後に(すなわち、回転子組立の後に)実行される。しかし、他の実施形態では、磁化は、バリア材料263の1つまたは複数の層を製作した後の任意の時間に行うことができることが理解される。磁束バリア材料263を磁化するステップが、磁束バリア材料263の1つまたは複数の層に磁場を印可するステップを含むことができる。理解できるように、磁束バリア255の必要な磁化は、回転子構成および使用される材料に基づいて変わる場合があり、すべての磁束バリア層を完全に磁化するために、異なる磁場強度が必要な場合がある。本実施形態では、磁束バリア255は、固定子201の電機子コイル207によって磁化される。より詳細には、モータ200は3相モータであり、磁化は、電機子コイル207の2つの相(位相Aおよび位相B)を通して電流を印可することによって実行され、回転子の直軸(d軸)は、電機子磁場と位置合わせされる。磁束バリア255の各々に少なくとも1,000kA/mおよび1,300kA/mの磁場を発生させるために少なくとも2,000Aの電流を電機子コイル207に印可し、それによって、磁束バリア材料263を完全に磁化する。しかし、異なる回転子および/または固定子巻線構成では、異なる電流を使用できることが理解される。さらに、いくつかの実施形態では、磁束バリア材料263は、磁場の他の発生源によって、磁化することができる。
【0020】
たとえば、中心軸250および/または回転子シャフト261に対して磁束バリア材料263および磁束キャリア材料265の層を径方向に製作することによって、回転子コア253を構築するために、異なる付加製造技法を使用することができる。言い換えると、各層が中心軸250および/または回転子シャフト261に対して径方向に構築されるように、各層を堆積、形成、または製作することができる。所与の層の所望の厚さを一度達成すると、その上に、異なる材料の後続の層を堆積、形成、または製作することができる。この様式で、中心軸250および/または回転子シャフト261に対して径方向に沿って、回転子コア253の層263、265が交互になっている。理解できるように、層を径方向に構築するとき、各層263、265は、中心軸250および/または回転子シャフト261の長さに沿って、その外周の周りに、堆積、形成、または製作することができる。この様式では、径方向に形成される層は、それらが中心軸250および/または回転子シャフト261の長手軸にほぼ平行な軸に沿って延びるという点で、軸方向層と記載することができる。
【0021】
理解できるように、付加製造によって、複雑な構造物をコア253内に形成することが可能になる一方で、伝統的な製造技術は、回転子の構造物を簡単な形状へと制限することになる。さらに、この方法でコアを形成することによって、(たとえば、SMCを使用して製作された)磁束キャリア265の層が、3D磁束を受け入れ、こうして任意の方向で磁束を受け入れることが可能になる。これは、磁束を積層の平面でだけ受け入れる伝統的な積層とは対照的である。本実施形態では、コールドスプレー製造を使用して、それぞれが永久磁石(PM)および軟磁性複合(SMC)材料を含む、磁束バリア材料263と磁束キャリア材料265の交互になった層を堆積する。しかし、金属構造物の層を構築することを可能にする任意のタイプの付加製造技法を使用できることが理解される。たとえば、成形または加圧成形などの技法に加えて、とりわけ、大面積付加製造、溶融繊維製作、レーザ焼結、結合剤ジェッティング、および粉体層製造などの技法を使用することができる。エアロゾル噴霧、高速空気燃料(High-Velocity Air-Fuel、HVAF)、高速酸素燃料(High-Velocity Oxygen-Fuel、HVOF)、または他の熱噴霧技法などといった、異なる噴霧ベース製造技法(すなわち、噴霧および/または粒子状物質を使用して層または被膜を制御して堆積することを含む任意の技法)を使用できることがさらに理解される。さらに、異なる技法の組合せを使用できることが理解される。たとえば、SMCの第1の層が回転子シャフト上に直接加圧成形され、後続の層をその上に噴霧ベース製造技法を使用して構築することができる。最終的に、以下の族、つまり、(a)永久磁石すなわち、フェライト、ネオジム鉄ボロン、サマリウムコバルト、およびアルミニウムニッケルコバルト、ならびに(b)SMCすなわち、純鉄、コバルト鉄、シリコン鉄、もしくは取り囲む有機物もしくは無機物絶縁層でコーティングした粉末から得られる任意のそのような材料、それらの任意の合金ならびに/または混合物を含む化合物などといった、異なる材料の組合せを使用できることが理解される。これらの材料の様々な特性は、他の元素を含むことによって用途に対して調節できることを、当業者は認めるであろう。
【0022】
上で提供した記載では、回転子構造物およびそれを製造する方法の例示的な実施形態が提供されている。これらの実施形態は、説明する目的だけのために提供されており、本発明の範囲を制限すると考えるべきでないことが理解される。たとえば、本発明の範囲から逸脱することなく、上で記載した構成に対して、軽微な変更および置き換えを行うことができることを理解するべきである。記載された回転子の積層構造は、固定子または異なる形状を定められた回転子などといった同様の要件を有する他の構造物に適用できることをさらに理解するべきである。最後に、本発明がモータに関して記載されたが、同様の原理および構造を、他のタイプの電気機械に関して使用できることを理解するべきである。
【符号の説明】
【0023】
100 SynRMモータ
101 固定子部
103 固定子コア
105 歯
107 電機子コイル
150 中心軸
151 回転子部
151a 回転子コア
151b 永久磁石(PM)支援型回転子コア
153 回転子コア
155 磁束バリア
157 中心ポスト
159 ブリッジ
161 回転子シャフト
163 永久磁石
200 SynRMモータ
201 固定子部
203 固定子コア
205 歯
207 電機子コイル
250 中心軸
251 回転子部
251’ 回転子
253 回転子コア
255 磁束バリア
261 回転子シャフト
263 磁束バリア材料、層
265 磁束キャリア材料、層
266 内面
267 外面、回転子面
267a 第1の末端
267b 第2の末端
269 対称軸
271a 外側径方向境界
271b 内側径方向境界
273 磁束バリア層厚
275 磁束キャリア層厚
279a 第1の末端
279b 第2の末端
281 ノッチ
700 設計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9