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特許7483878ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/00 20060101AFI20240508BHJP
   C07H 3/06 20060101ALI20240508BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20240508BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20240508BHJP
   C12R 1/685 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
C12P19/00
C07H3/06
C12N1/14 A
C12N9/24
C12R1:685
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022525221
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2020015097
(87)【国際公開番号】W WO2021086141
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0138215
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,チュンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジェギョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョンスク
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530089(JP,A)
【文献】国際公開第97/021718(WO,A1)
【文献】特開2001-149100(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104878056(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0122987(KR,A)
【文献】藤井 聰, 川崎 耕治, 河本 正彦,イオン交換樹脂による糖液の清浄に関する研究,日本食品工業学会誌,22(2),1975年,pp.78-82,<URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/22/2/22_2_78/_article/-char/ja>,ISSN 0029-0394
【文献】徳永隆久,フラクトオリゴ糖の特性と効果的利用,食品と科学 1991臨時増刊号 調味料読本,1991年08月08日,vol.436,pp.84-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/00
C07H 3/06
C12N 1/14
C12N 9/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂糖を含む基質とケストース転換活性を有する酵素または前記酵素を生産する微生物を利用してケストース転換反応を行う工程;
前記ケストース転換反応を終結する工程;
疑似移動層(SMB)クロマトグラフィーを利用して前記ケストース転換反応の反応生成物からケストース含有フラクトオリゴ糖画分を得る分離工程;および
前記フラクトオリゴ糖画分を、混合床(mixed bed)塔を含むイオン精製塔を通過させ、且つ陰イオン交換樹脂塔を最後に通過させることによりイオン精製する工程を含む、ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法であって、
前記分離工程は、フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてケストース(GF2)を80重量%以上含むフラクトオリゴ糖画分を得るものであり、
前記イオン精製する工程を行った後に得られるフラクトオリゴ糖画分のpHは、5~8であり、
前記ケストース含有フラクトオリゴ糖は、製造後45℃で7週間保管後、pHが3.5~8である特性を有する、ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法。
【請求項2】
前記ケストース転換反応を行う工程は、前記砂糖を含む基質の糖類固形分含有量を基準として、80~100重量%の砂糖を含む基質を利用して行われるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、前記反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として砂糖含有量が15~35重量%であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、前記反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準としてニストース含有量が0.01~5重量%であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分離工程は、前記フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてケストース(GF-2)を85重量%以上含むフラクトオリゴ糖画分を得るものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分離工程は、前記フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてケストース(GF2)を90重量%以上含むフラクトオリゴ糖画分を得るものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記分離工程は、前記フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてニストース(GF3)を10重量%以下含むフラクトオリゴ糖画分を得るものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、前記反応生成物の糖類固形分含有量を基準として15~35重量%の砂糖、30~60重量%のケストース、および0.01~5重量%のニストースを含む反応生成物を生産するものであり、
前記分離工程は、前記フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてケストース(GF2)を80重量%以上含むフラクトオリゴ糖画分を得るものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、前記反応生成物の糖類固形分100重量%を基準として25重量%未満のブドウ糖を含む酵素反応物を生産するものである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記分離工程は、70~80Brixの固形分含有量を有する前記ケストース転換反応生成物に適用されるものである、請求項1に記載の製造方法
【請求項11】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として、下記数式1で計算される前記反応生成物のケストース(GF2)およびニストース(GF3)の合計含有量に対するニストース(GF3)含有量の重量パーセント比率(%)が10%以下であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものである、請求項1に記載の製造方法。
【数1】
【請求項12】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、前記ケストース転換反応の反応生成物から分離されて得られるケストース含有フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分含有量100重量%を基準として、下記数式1で計算される前記ケストース含有フラクトオリゴ糖画分のケストース(GF2)およびニストース(GF3)の合計含有量に対するニストース(GF3)含有量の重量パーセント比率(%)が15%以下になるように前記ケストース転換反応を終結するものである、請求項1に記載の製造方法。
【数2】
【請求項13】
前記ケストース含有フラクトオリゴ糖のフラクトオリゴ糖含有量は、前記フラクトオリゴ糖画分の製造直後に測定されたフラクトオリゴ糖含有量の30%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ケストース転換反応を行う工程は、pH6~8および40~70℃の温度で行われるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、
反応pHを7.6以上に滴定する段階、および
反応温度を75℃以上に設定する段階
からなる群より選択された1種以上を含むものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ケストース転換反応の反応生成物の分離工程を行う前に、脱色工程、イオン精製工程、および濃縮工程からなる群より選択された1種以上の処理工程を追加的に含むものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ケストース転換活性を有する酵素は、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)菌株、ピキアファリノサ(Pichia farinose)菌株、ヤロウィアリポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ミレロジマファリノサ(Millerozyma farinose)、およびアスペルギルスオリゼ(Aspergillus oryzae)菌株からなる群より選択された1種以上に由来する酵素である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性が向上した高純度ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法に関し、より詳しくは高純度ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造後に精製工程を行うことによって、ケストースの貯蔵安定性を向上させることを特徴とする製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラクトオリゴ糖は、砂糖に1個以上の果糖が連鎖的に付加されたオリゴ糖類であり、その結合様式は砂糖の果糖残基部分における1番炭素に付加される果糖の2番炭素が結合して繰り返されるものである。フラクトオリゴ糖の種類としては、砂糖(スクロース)に果糖1~3分子がβ-(2>1)結合した、1-ケストース(Kestose、GF2)、ニストース(Nystose、GF3)および1-F-フラクトフラノシルニストース(1-F-Fructosyl nystose、GF4)などがある。
【0003】
フラクトオリゴ糖は、バナナ、玉ねぎ、アスパラガス、ゴボウ、ニンニク、ハチミツ、チコリ根などのような野菜やキノコ、果物類に含有されている天然物質であり、既に摂取の歴史が長い物質である。フラクトオリゴ糖は、砂糖から生成された成分として、その構造も砂糖と類似するため、二つの物質の物理化学的特性が類似して示される。しかし、フラクトオリゴ糖は、砂糖とは異なり、難消化性であるため、その生理的な特性は非常に異なる。特に、フラクトオリゴ糖は、腸内有益菌により代謝されて多様な健康機能性を示すことが立証されて、日本ではフラクトオリゴ糖含有製品を腸の状態を調節する食品とミネラルの吸収を促進させる食品として認定して特定保健用食品に分類している。
【0004】
フラクトオリゴ糖のうち、特に1-ケストースの免疫グロブリンA(IgA)抗体の増強作用および免疫グロブリンE(IgE)抗体の産生抑制作用、腸内ビヒズス菌の増殖活性作用および乳児のアトピー性皮膚炎の改善性に対して人体試験により確認されており、1-ケストースを利用したアレルギー抑制組成物、アレルギー抑制食品およびアレルギー抑制剤として使用するために1-ケストースを効率的に生産することが産業的に要求されている。
【0005】
しかし、1-ケストースを多量含有するフラクトオリゴ糖を生産する場合、1-ケストースと共に転換されるニストース(GF3)または1-F-フラクトフラノシルニストース(GF4)は、1-ケストースと物理的特性が類似しているため、これらを分離および精製することが非常に難しく、そこで、産業的に効率よく大量生産をするためには副産物であるニストースまたは1-F-フラクトフラノシルニストースよりも1-ケストースを選択的に過量転換する酵素またはこのような酵素を有する菌株を改良して効率よく1-ケストースを生産する方法が要求される。
【0006】
砂糖からフラクトオリゴ糖を生産する酵素である真菌由来のフラクトフラノシダーゼは、転移活性が高く、異性体の生成が少ない特徴を有するが、1-ケストースしか生成しない植物由来の砂糖(スクロース):スクロースフラクトシルトランスファーゼ(SST)ほどオリゴ糖の生成選択性は高くなく、重合度2~6のオリゴ糖類の混合物しか製造することができない。したがって、フラクトオリゴ糖は、液体あるいは粉末として利用されており、これらは非結晶性の混合物であるため、砂糖などの結晶性の食品材料と比較すると湿気吸水性が高く、加工適性が落ちるなどの問題点がある。
【0007】
高純度糖分離および精製を通じて単一のオリゴ糖成分を主成分とする結晶性フラクトオリゴ糖、例えば1-ケストース(3糖類、GF2)、ニストース(4糖類、GF3)などを得ることができる技術があるが、フラクトオリゴ糖の製造に利用されている酵素の1-ケストースの最大転換率は約30%であり、反応生成物内には副生成物であるニストースが約25%、基質である砂糖(スクロース)が約15%含まれているため、より高含有量の1-ケストースを産業的に生産するために効率的に得ることができるフラクトフラノシダーゼが依然として要求されている。言い換えれば、1-ケストースの生成選択性が高く、転移反応生成物であるオリゴ糖の組成が改善されたフラクトオリゴ糖の製造に必要なフラクトフラノシダーゼまたは変異株を使用しなければならない。また、このような1-ケストース高生産能力を有する突然変異を通じて得ることができる最大転換率は約58%のケストースである。
【0008】
1-ケストースを摂取して得ることができる機能性のうちの一つである乳児のアトピー性皮膚炎改善効果のためには、ケストース100%基準として2.5gを1ヶ月以上摂取しなければならない。反面、本酵素を通じて製造したケストース54%シロップ(75重量%)を利用する場合には約6.14gを摂取しなければならない。乳児が6.14gの容量を摂取するには摂取量が多いばかりか、成人のフラクトオリゴ糖の一日摂取推奨基準である2.5~15gから半分に近い量を乳児に摂取させなければならないという短所がある。したがって、フラクトオリゴ糖の摂取量を最小化しながら、ケストースの機能性を与えることができる方法として、ケストースを高純度に分離する方法が重要である。高純度ケストースの分離時、高含有量ケストースシロップの果糖、ニストースの含有量により高純度ケストースに影響を与える。したがって、酵素反応で高純度ケストースを分離するに最適の糖組成範囲を調節する必要がある。
【0009】
またフラクトオリゴ糖は、貯蔵期間中に製品のpHの酸性化が進行するが、フラクトオリゴ糖は酸性条件と加熱条件で簡単に分解される特徴があるため、これを防止するために製品に有機塩などの酸度調節剤を添加している実情がある。酸度調節剤のような食品添加物を混合するようになると、食品の類型はその他オリゴ糖で表示しなければならない。これを改善するために、製品の製造工程を一部改善して製品の貯蔵安定性を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記で言及した従来の問題点を解決するためのものであって、1-ケストースを85重量%以上の高純度で含有するフラクトオリゴ糖の製造のためのものであり、また製品の貯蔵安定性を改善して効率的かつ経済的な高純度ケストース含有フラクトオリゴ糖製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高含有量の1-ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造工程中、転換反応を通じて生成される1-ケストースとニストースの含有量と、基質の砂糖(スクロース)含有量を調節して高純度ケストース含有糖類を分離するための最適の糖組成範囲を考察するものであり、分離された高純度ケストース含有フラクトオリゴ糖のイオン精製工程を通じて貯蔵安定性を向上させることができる。
【0012】
本発明の高純度ケストースは、N/GMOアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のβ-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を利用して製造され得る。
【0013】
本発明のケストース転換反応工程は、選択的に高い含有量の1-ケストースを含むフラクトオリゴ糖を製造することができるため、ラフィネートを分離してフラクトオリゴ糖画分の収得時、不純物であるニストースおよび/またはフラクトフラノシルニストースの含有量が少なく、ケストースの含有量が高いフラクトオリゴ糖画分を分離できることを特徴とする。これと関連して、従来の技術によれば、フラクトオリゴ糖中のニストース(GF3)および/または1-F-フラクトフラノシルニストース(GF4)は、1-ケストース(GF2)と物理的特徴が類似し、1-ケストースとニストースおよび/または1-F-フラクトフラノシルニストースを分離および/または精製することが非常に難しいという問題点があったが、本発明は前記問題点を解決した。
【0014】
また、本発明の製造方法により製造されたケストース含有フラクトオリゴ糖は、高い1-ケストース含有量および低いニストースおよび1-F-フラクトフラノシルニストース含有量により、吸水性が低く、結晶性を有する特性があるため、保管および流通が容易である。それだけでなく、腸内有益菌の増殖、免疫増強、アトピー予防および糖尿予防に効果が優れ、アトピー予防/免疫強化食品の補助剤または機能性ローションなどへの添加剤として、特に幼児乳製品食品などに適用する場合、機能性添加剤として有用に適用され得る。
【0015】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明の一例は、砂糖を含む基質とケストース転換活性を有する酵素または前記酵素を生産する微生物を利用してケストース転換反応を行う工程を含む、ケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法に関する。
【0016】
本発明のケストース転換反応工程は、選択的に高い含有量の1-ケストースを含むフラクトオリゴ糖を製造することができるため、ラフィネートを分離してフラクトオリゴ糖画分の収得時、不純物であるニストースおよび/またはフラクトフラノシルニストースの含有量が少なく、ケストースの含有量が高いフラクトオリゴ糖画分を分離できることを特徴とする。
【0017】
前記ケストース転換反応を行う工程は、ケストースを生産するために、砂糖を含む基質と、ケストース転換活性を有する酵素または前記酵素を生産する微生物を利用して、ケストース転換反応を行う工程である。この際、反応基質は砂糖を含むことができ、砂糖を反応基質にしてケストースと併せて果糖、ブドウ糖、砂糖、ニストース(GF3)、およびフラクトフラノシルニストース(GF4)からなる群より選択された1種以上が追加的に生成され得る。
【0018】
前記ケストース転換反応を行う工程は、反応基質の糖類固形分含有量を基準として砂糖を80~100重量%、80~99.99重量%、80~99.9重量%、80~99重量%、80~95重量%、80~90重量%、85~100重量%、85~99.99重量%、85~99.9重量%、85~99重量%、85~95重量%、85~90重量%、90~100重量%、90~99.99重量%、90~99.9重量%、90~99重量%、90~95重量%、95~100重量%、95~99.99重量%、95~99.9重量%、または95~99重量%含む反応基質を利用して転換反応するものであり得る。
【0019】
前記ケストース転換活性を有する酵素は、砂糖を含む基質からケストースを含有するフラクトオリゴ糖に転換する活性を有する酵素で、例えばアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)菌株、ピキアファリノサ(Pichia farinose)菌株、ヤロウィアリポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ミレロジマファリノサ(Millerozyma farinose)、およびアスペルギルスオリゼ(Aspergillus oryzae)菌株からなる群より選択された1種以上に由来する酵素であり得る。一例として、寄託番号KCTC13139BPを有するアスペルギルスニガーSYG-K1菌株、または寄託番号KCTC13140BPを有するアスペルギルスニガーSYG-Neo1菌株であり得る。
【0020】
前記ケストース転換活性を有する酵素を生産する微生物は、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)菌株、ピキアファリノサ(Pichia farinose)菌株、ヤロウィアリポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ミレロジマファリノサ(Millerozyma farinose)、およびアスペルギルスオリゼ(Aspergillus oryzae)菌株からなる群より選択された1種以上であり得る。一例として、寄託番号KCTC13139BPを有するアスペルギルスニガーSYG-K1菌株、または寄託番号KCTC13140BPを有するアスペルギルスニガーSYG-Neo1菌株であり得る。
【0021】
前記ケストース転換反応を行う工程は、pH6~8のpH条件、および/または40~70℃の温度条件で反応するものであり得る。
【0022】
本発明の一例によるケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法は、ケストース転換反応を終結する工程を追加的に含むものであり得る。前記終結する工程によりケストース転換反応は終結され、高純度および高含有量のケストース含有フラクトオリゴ糖反応物を得ることができる。
【0023】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、pH7.6以上、pH7.7以上、pH7.8以上、pH7.9以上、またはpH8以上に滴定する段階を含んで前記ケストース転換活性を有する酵素または前記酵素を生産する微生物を失活するものであり得る。
【0024】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、温度75℃以上、76℃以上、77℃以上、78℃以上、79℃以上、または80℃以上に加熱する段階を含んで前記ケストース転換活性を有する酵素または前記酵素を生産する微生物を失活するものであり得る。
【0025】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分100重量%を基準として反応生成物の砂糖含有量が15~35重量%、15~34重量%、15~33重量%、15~32重量%、15~31重量%、15~30重量%、15~29重量%、15~28重量%、15~27重量%、15~26重量%、15~25重量%、15~24重量%、15~23重量%、15~22重量%、15~21重量%、16~35重量%、16~34重量%、16~33重量%、16~32重量%、16~31重量%、16~30重量%、16~29重量%、16~28重量%、16~27重量%、16~26重量%、16~25重量%、16~24重量%、16~23重量%、16~22重量%、16~21重量%、17~35重量%、17~34重量%、17~33重量%、17~32重量%、17~31重量%、17~30重量%、17~29重量%、17~28重量%、17~27重量%、17~26重量%、17~25重量%、17~24重量%、17~23重量%、17~22重量%、17~21重量%、18~35重量%、18~34重量%、18~33重量%、18~32重量%、18~31重量%、18~30重量%、18~29重量%、18~28重量%、18~27重量%、18~26重量%、18~25重量%、18~24重量%、18~23重量%、18~22重量%、18~21重量%、19~35重量%、19~34重量%、19~33重量%、19~32重量%、19~31重量%、19~30重量%、19~29重量%、19~28重量%、19~27重量%、19~26重量%、19~25重量%、19~24重量%、19~23重量%、19~22重量%、19~21重量%、20~35重量%、20~34重量%、20~33重量%、20~32重量%、20~31重量%、20~30重量%、20~29重量%、20~28重量%、20~27重量%、20~26重量%、20~25重量%、20~24重量%、20~23重量%、20~22重量%、または20~21重量%であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。
【0026】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として反応生成物のニストース(GF3)含有量が5重量%以下、5重量%未満、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、3重量%未満、または2重量%以下であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。この際、前記ニストース含有量の下限値が特定されなくても、前記ケストース転換反応を終結するための時点を通常の技術者が適切に選択することができ、例えば前記反応生成物のニストース含有量の下限値は0重量%以上、0重量%超過、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、または1重量%以上であり得るが、これに制限されるのではない。
【0027】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として反応生成物のケストース(GF2)含有量が30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、47重量%以上、48重量%以上、49重量%以上、50重量%以上、51重量%以上、52重量%以上、53重量%以上、54重量%以上、55重量%以上、56重量%以上、57重量%以上、または58重量%以上であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。この際、前記ケストース含有量の上限値が特定されなくても、前記ケストース転換反応を終結するための時点を通常の技術者が適切に選択することができ、例えば前記反応生成物のケストース含有量の上限値は100重量%未満、99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、または60重量%以下であり得るが、これに制限されるのではない。
【0028】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として反応生成物のブドウ糖含有量が25重量%以下、25重量%未満、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、または16重量%以下であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。この際、前記ブドウ糖含有量の下限値が特定されなくても、前記ケストース転換反応を終結するための時点を通常の技術者が適切に選択することができ、例えば前記反応生成物のブドウ糖含有量の下限値は5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、または16重量%以上であり得るが、これに制限されるのではない。
【0029】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として前記反応生成物が砂糖15~35重量%およびニストース5重量%以下を含む時、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。または、前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として前記反応生成物が砂糖20~25重量%およびニストース4重量%以下を含むとき、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。
【0030】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、反応生成物の糖類固形分含有量100重量%を基準として、前記反応生成物のケストース(GF2)およびニストース(GF3)の合計含有量に対するニストース(GF3)含有量の重量パーセント比率(%)が10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6.5%以下、5%以下、4%以下、または3.5%以下であるとき、前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。
【0031】
前記ケストース転換反応を終結する工程は、ケストース転換反応生成物から分離されて得られたケストース含有フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分含有量100重量%を基準として、前記ケストース含有フラクトオリゴ糖画分のケストース(GF2)およびニストース(GF3)の合計含有量に対するニストース(GF3)含有量の重量パーセント比率(%)が15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、または6%以下になるように前記ケストース転換反応を終結するものであり得る。
【0032】
前記ケストース(GF2)およびニストース(GF3)の合計含有量に対するニストース(GF3)含有量のパーセント比率(%)は、数式1で計算されるものであり得る。
[数式1]
(ニストース重量%)/{(ケストース重量%)+(ニストース重量%)}×100(%)
【0033】
前記ケストース転換反応終結で生成される反応生成物は、反応生成物の分離工程を行う前に、転換反応物に対して脱色する脱色工程、濾過工程、イオン精製工程、および濃縮工程からなる群より選択された1種以上の工程を経た後、疑似移動層(SMB)クロマトグラフィーを利用してケストース含有フラクトオリゴ糖画分を得るものであり得る。
【0034】
本発明の一例によるケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法は、疑似移動層(SMB)クロマトグラフィーを利用して高純度のケストースを含む、ケストース含有フラクトオリゴ糖画分を得る分離工程を追加的に含むものであり得る。前記分離工程は、一つの工程で行われるものであり得る。または、前記分離工程は、以前工程で濃縮工程を含まずに行われるものであり得る。
【0035】
前記SMBクロマトグラフィー分離工程は、分離過程で相変化がないため、物質の安定性の確保に容易な分離方法である。このような吸着分離方法のうち、液相吸着分離方法としてはクロマトグラフィー分離方法が多く使用されている。このうち、疑似移動層吸着分離方法(simulated moving bed、SMB)は、多数のカラムを利用して連続的に分離することによって既存の回分式クロマトグラフィーに比べて純度および生産性に優れ、少ない溶媒の使用が可能であるという長所を有する。前記疑似移動層(SMB)吸着分離工程は、分離対象混合物の注入とラフィネートおよび抽出物の生産が連続的に行われる工程である。
【0036】
SMBの基本原理は、カラムの間の位置を一定時間の間隔で動くことによって固定床と移動床の向流の流れを疑似し、連続的な分離を可能にすることである。吸着剤と親和力が弱くて速く動く物質は、液状の流れ方向に動いて目的抽出物(extract)に集まり、吸着剤と親和力が強くて遅く動く物質は固定床の流れ方向に動いてラフィネート(raffinate)に集まる。カラムは連続的に連結されており、入口は混合物と移動床、出口は目的抽出物(extract)とラフィネートから構成される。
【0037】
前記ラフィネート(raffinate)は、抽残液ともいい、分離工程に投入された原料が分離工程を通過して得られる産物には分離工程で含有量を高めようとする目的物質を含む目的画分と、分離工程で除去または含有量を減少しようとする物質などを含む残留液を含み、前記残留液をラフィネートという。本発明の一例でケストース転換反応工程で得られる産物は原料基質である砂糖と生産物であるケストースを含む混合物であり、高純度分離工程を経ながら目的物質であるケストースの含有量が増加されたフラクトオリゴ糖画分と残留液(ラフィネート)を得ており、前記残留液には反応気質と副産物などが含まれ得、例えば砂糖、果糖、ブドウ糖、ニストースなどが含まれ得る。
【0038】
前記SMBで分離樹脂として、単糖分離工程にも広く使用されている塩が添加された強酸の陽イオン交換樹脂を使用するため、分離工程を遂行後に得られる産物には金属イオンが含まれる。前記強酸の陽イオン交換樹脂の例は、ナトリウムまたはカルシウム、カリウム活性基が付着された陽イオン交換樹脂であり得る。
【0039】
前記ケストース含有フラクトオリゴ糖画分を得る分離工程は、高い固形分含有量を有するケストース転換反応の反応生成物を分離するものであり得、例えば70~80Brix、または75~80Brixの固形分含有量を有する反応生成物を分離してケストース含有フラクトオリゴ糖画分を得るものであり得る。
【0040】
前記分離工程は、フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてケストースを80重量%以上、81重量%以上、82重量%以上、83重量%以上、84重量%以上、85重量%以上、86重量%以上、87重量%以上、88重量%以上、89重量%以上、90重量%以上、または91重量%以上含むフラクトオリゴ糖画分を得るものであり得る。この際、前記フラクトオリゴ糖画分のケストース含有量の上限値が特定されなくても、高純度ケストース含有フラクトオリゴ糖画分を得ようとする目的下で通常の技術者が明確に理解することができ、例えば前記フラクトオリゴ糖画分のケストース含有量の上限値は100重量%以下、100重量%未満、99.99重量%以下、99.9重量%以下、99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、または95重量%以下であり得るが、これに制限されるのではない。
【0041】
前記分離工程は、フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100重量%を基準としてニストースを10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、または4重量%以下含むフラクトオリゴ糖画分を得るものであり得る。この際、前記フラクトオリゴ糖画分のニストース含有量の下限値が特定されなくても、フラクトオリゴ糖画分のニストース含有量を最小化するための目的下で通常の技術者が明確に理解することができ、例えば前記フラクトオリゴ糖画分のニストース含有量の下限値は0重量%以上、0重量%超過、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1重量%以上、1.1重量%以上、1.2重量%以上、1.3重量%以上、1.4重量%以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.8重量%以上、1.9重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、または3重量%以上であり得るが、これに制限されるのではない。
【0042】
本発明の一例によるケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法は、ケストース含有フラクトオリゴ糖画分をイオン精製する工程を追加的に含むことができる。前記イオン精製する工程は、前記SMBクロマトグラフィーを利用した高純度分離工程で得られたフラクトオリゴ糖画分をイオン精製する工程である。前記イオン精製する工程は、一つの工程で行われるものであり得る。
【0043】
前記イオン精製する工程は、前記フラクトオリゴ糖画分がイオン精製塔を通過して行われるものであり得る。前記イオン精製塔は、陰イオン塔を含むものであり得る。一例として、前記イオン精製塔は、陽イオン塔および混合床(mixed bed)塔からなる群より選択された1種以上を追加的に含み、前記フラクトオリゴ糖画分は、前記陰イオン塔を最後に通過するものであり得る。本願実施例6でイオン精製がケストース高含有シロップの物性に及ぼす影響を考察しており、イオン精製MB-Aのように後塔を陰イオン交換樹脂塔に設定する場合、ケストース高含有シロップの貯蔵安定性が向上することを確認することができた。具体的に、より好ましくは本発明のケストース製造方法の一例は、K-A塔またはMB-A、MB-K-A、K-MB-AのようにA塔を最後に設置して反応液のpHを高めることが好ましい。これは製造過程中にケストースおよびニストースのようなフラクトオリゴ糖物質が分解されることを防止するためである。
【0044】
前記イオン精製する工程後、前記フラクトオリゴ糖画分のpHは、pH5~8、pH5~7、pH6~8、またはpH6~7であり得る。
【0045】
本発明の一例によるケストース含有フラクトオリゴ糖の製造方法により製造されたフラクトオリゴ糖は、好ましくは保管安定性が向上したものであり得る。例えば、前記ケストース含有フラクトオリゴ糖のフラクトオリゴ糖含有量は、前記フラクトオリゴ糖画分の製造直後に測定されたフラクトオリゴ糖含有量の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、または95%以上であり得る。前記ケストース含有フラクトオリゴ糖のフラクトオリゴ糖含有量は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、または7週間保管後のフラクトオリゴ糖含有量であり得る。具体的に、前記ケストース含有フラクトオリゴ糖は、製造後1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、または7週間経過した時点でのフラクトオリゴ糖含有量が、初期フラクトオリゴ糖含有量の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、または95%以上保存して安定したものであり得る。
【0046】
または、前記ケストース含有フラクトオリゴ糖の7週間保管後、pHがpH3.5~8、pH3.5~7、pH3.5~6、pH3.5~5.5、pH3.5~5、pH4~8、pH4~7、pH4~6、pH4~5.5、pH4~5、pH4.5~8、pH4.5~7、pH4.5~6、pH4.5~5.5、またはpH4.5~5であり得る。この際、前記ケストース含有フラクトオリゴ糖は、30~50℃、30~45℃、35~50℃、35~45℃、40~50℃、または40~45℃、一例として45℃温度で保管されるものであり得る。
【0047】
具体的に、55重量%濃度の砂糖水溶液を基質にして40~70℃の温度、例えば55℃温度に加温後、pH6~8、例えばpH6.5~7.0に滴定後、β-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して酵素反応を行う。
【0048】
以降、ケストース含有量が30重量%以上に生成時、pHを7.6以上、一例としてpH8.0に滴定した後、75℃以上、例えば80℃温度で2時間加温して酵素を不活性化する。前記ケストース転換反応の反応生成物の分離工程を行う前に、脱色工程、イオン精製工程、および濃縮工程からなる群より選択された1種以上の処理工程を追加的に含むことができる。
【0049】
例えば、前記ケストース転換反応の反応生成物に対して、活性炭を固形分に対して0.5%~1.0%処理して不純物を除去し、色価を低める濾過工程(脱色工程)を行うことができる。前記濾過工程を経た後、イオン精製を進行することができ、一般的なイオン精製工程であるK(陽イオン交換樹脂)-A(陰イオン交換樹脂)-MB(Mixed bed:K:A=1:2)を通過することもできるが、より好ましくは本発明のケストース製造方法の一例は、K-A塔またはMB-A、MB-K-A、K-MB-AのようにA塔を最後に設置して反応液のpHを高めることが好ましい。これは製造過程中にケストースおよびニストースのようなフラクトオリゴ糖物質が分解されることを防止するためである。以降、濃縮を通じて70~80重量%にBrixを合わせることができる。
【0050】
前記工程を経たクロマトグラフィー高純度分離工程であるSMB(simulated moving bed)を利用した分離工程を行うことで、ケストースを高純度に分離する。この際に使用される樹脂はNa+タイプとCa2+タイプ樹脂を使用することができる。分離されたケストース含有量は、前記フラクトオリゴ糖画分の糖類固形分100%を基準としてケストース(GF2)を80重量%以上、例えば85重量%から95重量%まで含むことができる。高純度分離されたケストースは再びイオン精製工程を行うことができ、具体的にSMBを経て出た高純度ケストースのイオン塔はA、MB-A、K-MB-A、K-A、MB-K-Aなどの精製塔を通過してpH5.0~8.0のpHを有するようになる。前記イオン精製工程は、製品生産後に貯蔵安定性を向上させるためである。以降、濃縮工程を通じて75重量%に濃縮されて製品として排出される。状況により粉末で必要時には、スプレードライ(Spray Dry)またはコンベアバキュームドライ(Conveyor Vacuume Dry)を利用して粉末を製造することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、高純度ケストースの製造方法の製造工程中、ケストース転換反応工程中の高純度ケストースの分離のための砂糖、ケストース、ニストース含有量の範囲を確立し、イオン精製を改善して製品の貯蔵安定性を向上させることによって生産性と効率性が向上した製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】一般的なSMB工程の一例を示す図面である。
図2】本発明の一例によるケストース製造工程を図式化したものである。
図3】SMBクロマトグラフィーを通じて高純度分離後、高純度ケストース画分のHPLC分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0053】
本発明を下記の実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0054】
比較例1: フラクトオリゴ糖シロップの製造
糖化槽に55℃加温された水を45ton投入後、砂糖55tonを添加して1時間~2時間攪拌を通じて砂糖結晶を完全に溶かした。以降、pHを6.5~7.0に滴定後、従来のフラクトオリゴ糖製造酵素であるアスペルギルス(Aspergillus)属またはフザリウム(Fusarium)属微生物由来β-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して50~60℃の温度で24時間~48時間反応させた。
以降、反応が完了した時点で4N NaOHを利用してpH7.6以上に滴定すると同時に、80℃温度で2時間加温して酵素失活を誘導した。酵素失活が完了した時点で酵素反応物を脱色/濾過、精製、および濃縮を通じて固形分含有量75重量%に合わせて製造した。製造が完了したシロップの比較試料1-Aの糖組成を表1に示した。
以降、Na+タイプ分離樹脂が充填されているSMBを利用して高純度分離を進行した。高純度分離後の得られたシロップの比較試料1-Bの糖組成を以下の分析条件の液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して表1に示した。高純度分離後のケストース含有量は約34重量%であった。したがって、汎用的に使用している従来のフラクトオリゴ糖製造の酵素では高純度ケストース生産が難しいことを確認することができた。
【0055】
<分析条件>
カラム: Shodex Asahipak BH2P-50 4E
注入量: 10ul
流速: 1ml/min
カラム温度: 30℃
移動床: Acetonitrile 70%
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1: ケストース高含有シロップの製造(1)
糖化槽に55℃加温された水を45kg投入後、砂糖55kg添加して1時間~2時間攪拌を通じて砂糖結晶を完全に溶かした。以降、pHを6.5~7.0に滴定後、ケストース高含有シロップ製造酵素である寄託番号KCTC 13139BPアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のβ-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して50~60℃の温度で24時間~48時間反応させた。
この際、砂糖含有量が34重量%残っている酵素反応区間で4N NaOHを利用してpH7.6以上に滴定と同時に80℃で2時間加温させて酵素失活を誘導した。酵素失活が完了した時点で酵素反応物を脱色/濾過、精製、濃縮を通じて75重量%に合わせて製造した。製造が完了したシロップの試験試料1-1の糖組成を表2に示した。
以降、Na+タイプ分離樹脂が充填されているSMBを利用して高純度分離を進行した。酵素反応後、高純度分離後の得られた試験試料1-2の糖組成は、比較例1と同一条件で液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して分析し、表2に示した。高純度分離後のケストースは約81重量%を示した。したがって、ケストース85%以上を分離するためには分離前原液の砂糖含有量が34重量%を超えて高くなれば難しいということを確認した。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例2: ケストース高含有シロップの製造(2)
糖化槽に55℃加温された水を45kg投入後、砂糖55kg添加して1時間~2時間攪拌を通じて砂糖結晶を完全に溶かした。以降、pHを6.5~7.0に滴定後、ケストース高含有シロップ製造酵素である実施例1と同じアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のβ-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して50~60℃の温度で24時間~48時間反応させた。
この際、砂糖含有量30重量%が残っている酵素反応区間で4N NaOHを利用してpH7.6以上に滴定と同時に80℃で2時間加温させて酵素失活を誘導した。酵素失活が完了した時点で酵素反応物を脱色/濾過、精製、濃縮を通じて75重量%に合わせて製造した。製造が完了したシロップの試験試料2-1の糖組成を表3に示した。
以降、Na+タイプ分離樹脂が充填されているSMBを利用して高純度分離を進行した。酵素反応後、高純度分離後の得られたシロップの試験試料2-2の糖組成は比較例1と同一条件で液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して分析し、表3に示した。高純度分離後のケストースは約85重量%を示した。ケストース85%以上を分離するためには分離前原液の砂糖含有量が30重量%以下でなければならないことを確認した。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例3: ケストース高含有シロップの製造(3)
糖化槽に55℃加温された水を45kg投入後、砂糖55kg添加して1時間~2時間攪拌を通じて砂糖結晶を完全に溶かした。以降、pHを6.5~7.0に滴定後、ケストース高含有シロップ製造酵素である実施例1と同じアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のβ-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して50~60℃の温度で24時間~48時間反応させた。
この際、砂糖含有量26重量%が残っている酵素反応区間で4N NaOHを利用してpH7.6以上に滴定と同時に80℃で2時間加温させて酵素失活を誘導した。酵素失活が完了した時点で酵素反応物を脱色/濾過、精製、濃縮を通じて75重量%に合わせて製造した。製造が完了したシロップの試験試料3-1の糖組成を表4に示した。
以降、Na+タイプ分離樹脂が充填されているSMBを利用して高純度分離を進行した。酵素反応後、高純度分離後の得られたシロップの試験試料3-2の糖組成は比較例1と同一条件で液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して分析し、表4に示した。高純度分離後のケストースは約88重量%を示した。ケストース85%以上、例えば88重量%以上を分離するためには分離前原液の砂糖含有量が30重量%以下でなければならないことを確認した。
【0062】
【表4】
【0063】
実施例4: ケストース高含有シロップの製造(4)
糖化槽に55℃加温された水を45kg投入後、砂糖55kg添加して1時間~2時間攪拌を通じて砂糖結晶を完全に溶かした。以降、pHを6.5~7.0に滴定後、ケストース高含有シロップ製造酵素である実施例1と同じアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のβ-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して50~60℃の温度で24時間~48時間反応させた。
この際、砂糖含有量20重量%が残っている酵素反応区間で4N NaOHを利用してpH7.6以上に滴定と同時に80℃で2時間加温させて酵素失活を誘導した。酵素失活が完了した時点で酵素反応物を脱色/濾過、精製、濃縮を通じて75重量%に合わせて製造した。製造が完了したシロップの試験試料4-1の糖組成を表5に示した。
以降、Na+タイプ分離樹脂が充填されているSMBを利用して高純度分離を進行した。酵素反応後、高純度分離後の得られたシロップの試験試料4-2の糖組成は比較例1と同一条件で液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して分析し、表5に示した。高純度分離後のケストースは約91重量%を示した。ケストース90%以上を分離するためには分離前原液の砂糖含有量が25重量%以下でなければならないことを確認することができた。
【0064】
【表5】
【0065】
実施例5: ケストース高含有シロップの製造(5)
糖化槽に55℃加温された水を45kg投入後、砂糖55kg添加して1時間~2時間攪拌を通じて砂糖結晶を完全に溶かした。以降、pHを6.5~7.0に滴定後、ケストース高含有シロップ製造酵素である実施例1と同じアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)由来のβ-フラクトフラノシダーゼ(β-fructofuranosidase)を添加して50~60℃の温度で24時間~48時間反応させた。
この際、砂糖含有量15重量%が残っている酵素反応区間で4N NaOHを利用してpH7.6以上に滴定と同時に80℃で2時間加温させて酵素失活を誘導した。酵素失活が完了した時点で酵素反応物を脱色/濾過、精製、濃縮を通じて75重量%に合わせて製造した。製造が完了したシロップの試験試料5-1の糖組成を表6に示した。
以降、Na+タイプ分離樹脂が充填されているSMBを利用して高純度分離を進行した。酵素反応後、高純度分離後の得られたシロップの試験試料5-2の糖組成は比較例1と同一条件で液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して分析し、表6に示した。高純度分離後のケストースは約88重量%を示した。ケストース85%以上を分離するためには分離前原液の砂糖含有量約15重量%範囲も問題がないが、ニストース(GF3)の含有量増加により高純度ケストースの分離に影響があることを確認した。したがって、砂糖以外にもニストース(GF3)含有量もケストース分離に影響を与え、ケストース90%以上を分離するためには酵素反応後GF3を5%以下に管理することがより好ましいと判断された。
【0066】
【表6】
【0067】
実施例6: 高純度ケストースのイオン精製
イオン精製がケストース高含有シロップの物性に及ぼす影響を調べるために、実施例1~5で高純度分離後に得られたケストース高含有シロップの一部を取り、イオン精製MB-AまたはA-MBに分けて精製した。以降、濃縮工程を通じて75Brixに濃縮し、45℃苛酷条件で1、2、3、4、5、6、7週目にそれぞれ測定した。フラクトオリゴ糖の含有量を分析するために液体クロマトグラフィーを利用して糖組成を分析し、表7に示した。また製品を30Bxに希釈してpHメーター(pH meter)を利用して製品のpHを分析し、表8に示した。
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
表7および表8から分かるように、MB-Aのように後塔を陰イオン樹脂塔に合わせるとき、製品の貯蔵安定性が向上することを確認することができ、従来の方法で生産時、フラクトオリゴ糖の分解が速い速度で進行することが分かった。
図1
図2
図3