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特許7483885リチウム‐硫黄電池用電解質及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
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  • 特許-リチウム‐硫黄電池用電解質及びこれを含むリチウム‐硫黄電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】リチウム‐硫黄電池用電解質及びこれを含むリチウム‐硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240508BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240508BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/60
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022530788
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2021003594
(87)【国際公開番号】W WO2021194231
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037351
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036050
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウンホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェギル・イ
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特許第4053003(JP,B2)
【文献】特開2006-269234(JP,A)
【文献】特表2019-505947(JP,A)
【文献】特開2005-251677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/0587
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、非水系有機溶媒及び添加剤を含み、
上記添加剤はアルキルビニルエーテル化合物を含み、
上記アルキルビニルエーテル化合物は、リチウム‐硫黄電池用電解質全体100質量%を基準にして1ないし5質量%で含まれる、リチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項2】
上記アルキルビニルエーテル化合物は下記化学式1で表される、請求項1に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質:
[化1]
【化1】
(上記化学式1において、Rは炭素数1ないし10のアルキル基である。)。
【請求項3】
上記アルキルビニルエーテル化合物は、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル及びヘキシルビニルエーテルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項4】
上記非水系有機溶媒は、エーテル系化合物及び一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項5】
上記エーテル系化合物は線形エーテル化合物を含む、請求項4に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項6】
上記線形エーテル化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含む、請求項5に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項7】
上記ヘテロ環化合物は、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項8】
上記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン及び2,5‐ジメチルチオフェンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項9】
上記非水系有機溶媒は、エーテル系化合物とヘテロ環化合物を95:5ないし5:95の体積比で含む、請求項4~8のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項10】
上記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項11】
上記アルキルビニルエーテル化合物は、リチウム‐硫黄電池用電解質全体100質量%を基準にして1ないし2質量%で含まれる、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池用電解質。
【請求項12】
正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;及び
請求項1~11のいずれか一項に記載の電解質を含むリチウム‐硫黄電池。
【請求項13】
上記正極活物質は硫黄元素及び硫黄化合物からなる群で選択される1種以上を含む、請求項12に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項14】
上記正極活物質は、無機硫黄、Li(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素‐硫黄ポリマー((C、x=2.5ないし50、n≧2)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項12又は13に記載のリチウム‐硫黄電池。
【請求項15】
上記負極活物質はリチウム金属及びリチウム合金からなる群から選択される1種以上を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のリチウム‐硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年03月27日付韓国特許出願第10‐2020‐0037351号及び2021年03月19日付韓国特許出願第10‐2021‐0036050号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム‐硫黄電池用電解質及びこれを含むリチウム‐硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池の活用範囲が携帯用電子機器のみならず電気自動車(electric vehicle;EV)、電力貯蔵装置(electric storage system;ESS)まで拡がって、高容量、高エネルギー密度及び長寿命のリチウム二次電池に対する要求が高くなっている。
【0004】
いくつかのリチウム二次電池の中で、リチウム‐硫黄電池は硫黄‐硫黄結合(sulfur‐sulfur bond)を含む硫黄系列物質を正極活物質で使用し、リチウム金属、リチウムイオンの挿入/脱挿入が起きる炭素系物質、またはリチウムと合金を形成するシリコーンやスズなどを負極活物質で使用する電池システムである。
【0005】
リチウム‐硫黄電池で正極活物質の主材料である硫黄は、単位原子当たり低い重量を持ち、資源が豊かで需給が容易であるため安価であり、毒性がなく、環境にやさしい物質という長所がある。
【0006】
また、リチウム‐硫黄電池は、正極でリチウムイオンと硫黄の変換(conversion)反応(S+16Li+16e→8LiS)から出る理論比容量(specific capacity)が1,675mAh/gに至って、負極でリチウム金属を使う場合、2,600Wh/kgの理論エネルギー密度を示す。これは現在研究されている他の電池システム(Ni‐MH電池:450Wh/kg、Li‐FeS電池:480Wh/kg、Li‐MnO電池:1,000Wh/kg、Na‐S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に比べて非常に高い数値を表すため、今まで開発されている二次電池の中で高容量、環境にやさしい、そして安価のリチウム二次電池として注目されている。
【0007】
具体的に、リチウム‐硫黄電池において、負極活物質でリチウム金属を使う場合、理論比容量が3,860mAh/gで非常に高いだけでなく、標準還元電位(Standard Hydrogen Electrode;SHE)も‐3.045Vでとても低くて、高容量、高エネルギー密度の電池を具現することが可能であるため、次世代電池システムとして多く研究されている。
【0008】
しかし、負極活物質であるリチウム金属は、高い化学的/電気化学的反応性によって電解質と容易に反応することによって、負極表面に不動態被膜(passivation layer)が形成される。このような不働態被膜は局所上の電流密度の差をもたらしてリチウム金属表面に樹枝状リチウムデンドライトを形成させる。また、このように形成されたリチウムデンドライトは、電池内部での短絡と不活性リチウム(dead lithium)を引き起こしてリチウム二次電池の物理的、化学的不安定性を加重させるだけでなく、電池の容量を減少させてサイクル寿命を短縮させる問題を発生させる。
【0009】
前述したようなリチウム金属の高い不安定性のため、リチウム金属を負極で使うリチウム‐硫黄電池は常用化されていない。
【0010】
ここで、リチウム金属の表面に保護層を導入したり、電解質の組成を異にするなどの様々な方法が研究されている。
【0011】
一例として、韓国公開特許第2016‐0034183号は、リチウム金属またはリチウム合金を含む負極活性層上に負極を保護すると同時に、電解液を蓄積することができる高分子マトリックスで保護層を形成して、電解液の損失とデンドライト生成を防ぐことができることを開示している。
【0012】
また、韓国公開特許第2016‐0052351号は、リチウム金属の表面に形成された高分子保護膜にリチウムデンドライト吸収性物質を含むことで、リチウムデンドライトの成長を抑制してリチウム二次電池の安定性及び寿命特性を改善することができることを開示している。
【0013】
これに加え、Jiangfeng Qian et al.及び韓国公開特許第2013‐0079126号は、それぞれリチウム塩の濃度を高めたり、1,3,5‐トリオキサン、1,3‐ジオキソラン及びフッ素系環形カーボネートを含む非水性有機溶媒を含むことで、リチウム金属を含む電池の特性が改善されることを開示している。
【0014】
これらの先行文献は、電解質とリチウム金属との間の反応またはリチウムデンドライトの生成をある程度抑制したが、その効果が十分ではない。また、電池の充・放電が進められることによって保護層が固くなったり膨脹されるなどの変性が起きる問題がある。これに加え、特定組成を含む電解質を使用する場合、適用可能な電池に制限があるだけでなく、電池性能の劣化問題を引き起こすことがある。よって、リチウム金属負極の効率及び安定性を改善して優れる容量及び寿命特性を持つリチウム‐硫黄電池に対する開発が相変らず必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】韓国公開特許第2016‐0034183号(2016年03月29日)、リチウム二次電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池
【文献】韓国公開特許第2016‐0052351号(2016年05月12日)、安定した保護層を持つリチウム金属電極及びこれを含むリチウム二次電池
【文献】韓国公開特許第2013‐0079126号(2013年07月10日)、リチウム金属電池用電解液及びこれを含むリチウム金属電池
【非特許文献】
【0016】
【文献】Jiangfeng Qian et al.、High rate and stable cycling of lithium metal anode、Nature Communications 2015、6、6362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ここで本発明者らは、上記問題を解決するために多角的に研究した結果、リチウム‐硫黄電池用電解質にアルキルビニルエーテル化合物を添加剤で含む場合、リチウム金属を含む負極に対する効率及び安定性が改善されてリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命を向上させることができることを確認して本発明を完成した。
【0018】
したがって、本発明の目的は、優れる容量及び寿命特性のリチウム‐硫黄電池を具現することができるリチウム‐硫黄電池用電解質を提供することにある。
【0019】
また、本発明の他の目的は、上記電解質を含むリチウム‐硫黄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、リチウム塩、非水系有機溶媒及び添加剤を含み、上記添加剤はアルキルビニルエーテル化合物を含むリチウム‐硫黄電池用電解質を提供する。
【0021】
上記アルキルビニルエーテル化合物は下記化学式1で表されるものであってもよい:
[化1]
【0022】
【化1】
【0023】
(上記化学式1において、Rは明細書内で説明したところにしたがう。)。
【0024】
上記アルキルビニルエーテル化合物は、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル及びヘキシルビニルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0025】
上記非水系有機溶媒は、エーテル系化合物及び一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含むことができる。
【0026】
上記エーテル系化合物は、線形エーテル化合物を含むことができる。
【0027】
上記ヘテロ環化合物は、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0028】
上記非水系有機溶媒は、エーテル系化合物とヘテロ環化合物を95:5ないし5:95の体積比で含むことができる。
【0029】
上記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0030】
上記アルキルビニルエーテル化合物は、リチウム‐硫黄電池用電解質全体100質量%を基準にして0.1ないし10質量%で含まれることができる。
【0031】
また、本発明は、上記リチウム‐硫黄電池用電解質を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解質は、アルキルビニルエーテル化合物を添加剤で含むことによってリチウム金属を含む負極の効率及び安定性を向上させることだけでなく、正極の容量発現を最大化させてリチウム‐硫黄電池の高容量化及び長寿命化ができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例1及び比較例1によるリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命特性評価結果を示すグラフである。
図2】実施例1及び比較例1によるリチウム‐硫黄電池の充・放電効率評価結果を示すグラフである。
図3】実施例1及び比較例1によるリチウム‐硫黄電池の一回目サイクルの電圧‐容量を図示したグラフである。
図4】実施例2及び比較例1によるリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命特性評価結果を示すグラフである。
図5】実施例2及び比較例1によるリチウム‐硫黄電池の充・放電効率評価結果を示すグラフである。
図6】実施例2及び比較例1によるリチウム‐硫黄電池の一回目サイクルの電圧‐容量を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0035】
本明細書及び請求範囲で使われた用語や単語は、通常的または辞書的意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0036】
本発明で使用した用語は、単に特定実施例を説明するために使われたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに違うことを意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において「含む」または「持つ」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0037】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に異なる相(phase)を形成しながら、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0038】
本明細書で使われている用語「ポリスルフィド」は、「ポリスルフィドイオン(S 2‐、x=8、6、4、2))」及び「リチウムポリスルフィド(LiまたはLiS 、x=8、6、4、2)」を全て含む概念である。
【0039】
携帯用電子機器に使われ、制限された市場に留まっていたリチウム二次電池が電気自動車(EV)、エネルギー貯蔵システム市場で速く拡大され、これらの軽薄短小化の成り行きによって、これらの駆動エネルギー源であるリチウム二次電池に対しても軽量化及び小型化が要求されている。
【0040】
リチウム‐硫黄電池は、幾つかの二次電池の中で高い理論放電容量及び理論エネルギー密度を示すだけでなく、負極活物質で主に使われるリチウム金属は、原子量(6.94g/a.u.)及び密度(0.534g/cm)がとても小さいため、小型化及び軽量化が容易であって次世代電池として脚光を浴びている。
【0041】
しかし、前述したように、リチウム金属は反応性が高くて電解質とリチウム金属が接触する場合、電解質の自発的分解によってリチウム金属の表面に不働態被膜が形成され、これは不活性リチウム及びリチウムデンドライトを形成させて負極の効率及び安定性を低下させる。また、硫黄系列物質を正極活物質で使用するリチウム‐硫黄電池において、電池駆動の際に正極で形成されたリチウムポリスルフィド(lithium polysulfide、Li1≦x≦8)の中で硫黄の酸化数が高いリチウムポリスルフィド(Li、普通x>4)は電解質に対する溶解度が高くて持続的に溶けるし、正極反応領域の外に湧出されて負極へと移動する。この時、正極から湧出されたリチウムポリスルフィドは、リチウム金属と副反応を起こしてリチウム金属の表面にリチウムスルフィドが固着されることによって電極の不動化を引き起こすだけでなく、リチウムポリスルフィドの湧出によって硫黄の利用率が低くなって理論放電容量の最大70%程度まで具現可能であり、サイクルが進められることによって容量及び充・放電効率が早く低下して電池の寿命特性が低い問題がある。
【0042】
このために従来の技術ではリチウム金属負極表面に保護層を導入、電解質溶媒の組成を変更、電解質に添加剤を使用するなどの方法を利用したが、電池を構成する他の要素との互換性問題によって電池性能及び駆動安定性に深刻な問題を引き起こすので、実際適用するに好ましくない。
【0043】
ここで、本発明では負極の効率及び安定性を向上させ、正極活物質の容量を極大化して容量及び寿命特性が改善されたリチウム‐硫黄電池を具現することができるリチウム‐硫黄電池用電解質を提供する。
【0044】
具体的に、本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解質は、リチウム塩、非水系有機溶媒及び添加剤を含み、上記添加剤でアルキルビニルエーテル(alkyl vinyl ether)化合物を含むことを特徴とする。
【0045】
本発明において、上記添加剤はビニル基とアルキル基が酸素原子を通じて結合された化合物で、リチウムイオンとの親和度(affinity)によって水平化効果(leveling effect)を示すので、負極であるリチウム金属表面で向上されたストリッピング/メッキ(stripping/plating)過程を行うことができる。これによって負極の効率及び安定性が改善され、これを含むリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命特性を高めることができる。本発明において、用語「負極の効率」は、電池の完全放電時に負極から新しくストリッピングされたり酸化されたリチウムの量に対して、完全充電時に負極上に再メッキ(replate)または再還元されたリチウム(または他の負極活物質)のパーセンテージを意味する。100%からの任意の偏差は電池の充放電において活用度が失われた不活性リチウムを示す。
【0046】
また、本発明の添加剤は正極で生成されたリチウムポリスルフィドがリチウム金属と反応することを防いで正極活物質である硫黄が損失されることを抑制することによって正極活物質の容量発現を最大化し、理論比容量対比優れる容量具現率を持つリチウム‐硫黄電池を具現することができる。
【0047】
これに加え、本発明の添加剤は電池の電気化学的反応に参加せずにリチウム金属を含む負極の効率及び安定性を改善させる役目のみをするので、従来の技術で発生する電池性能劣化問題が発生しないという利点がある。
【0048】
前述したように、本発明による添加剤はアルキルビニルエーテル化合物を含むことができる。上記アルキルビニルエーテル化合物は下記化学式1で表されることができる:
[化1]
【0049】
【化2】
【0050】
(上記化学式1において、Rは炭素数1ないし10のアルキル基である。)。
【0051】
上記アルキル基は直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1ないし4であることが好ましい。具体的な例では、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n‐ブチル基、t‐ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などがあるが、これらに限定されない。上記アルキル基に含まれている一つ以上の水素原子は、任意的に一つ以上の置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリック、アリール、ヘテロアリール、アシル、沃素、イミノ、チオ沃素、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロなど)に置換されていてもよい。
【0052】
上記アルキルビニルエーテル化合物は、メチルビニルエーテル(methyl vinyl ether)、エチルビニルエーテル(ethyl vinyl ether)、プロピルビニルエーテル(propyl vinyl ether)、ブチルビニルエーテル(butyl vinyl ether)、イソブチルビニルエーテル(isobutyl vinyl ether)、ペンチルビニルエーテル(pentyl vinyl ether)及びヘキシルビニルエーテル(hexyl vinyl ether)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、上記アルキルビニルエーテル化合物は、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及びペンチルビニルエーテルからなる群から選択される1種以上であってもよく、より好ましくは、上記アルキルビニルエーテル化合物はブチルビニルエーテルであってもよい。
【0053】
上記アルキルビニルエーテル化合物は、リチウム‐硫黄電池用電解質全体100質量%を基準にして0.1ないし10質量%で含まれることができる。上記添加剤の含量は、リチウム‐硫黄電池用電解質全体100質量%を基準にして、下限値が0.1質量%以上、0.3質量%以上または0.5質量%であってもよく、上限値が10質量%以下、2質量%以下または1質量%以下であってもよい。上記添加剤の含量は上記下限値と上限値の組み合わせで設定することができる。上記添加剤の含量が上記範囲未満であれば、充・放電時に移動するリチウムイオンに対する全体的作用ができなくてストリッピング/メッキ過程の均一性が低下し、目的とした効果を得ることができない。これと逆に、上記添加剤の含量が上記範囲を超える場合、過電圧が発生して正常的電池駆動に問題が発生して電池容量損失または寿命短縮が発生することがある。
【0054】
本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解質は、電解質塩でリチウム塩を含む。上記リチウム塩の種類は本発明で特に限定せずに、リチウム‐硫黄電池用電解質に通常使用可能なものであれば、制限されずに使われることができる。
【0055】
例えば、上記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、上記リチウム塩は(CFSONLi(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide;LiTFSI)であってもよい。
【0056】
上記リチウム塩の濃度は、イオン伝導度、溶解度などを考慮して適切に決まることができ、例えば、0.1ないし4.0M、好ましくは0.5ないし2.0Mであってもよい。上記リチウム塩の濃度が上記範囲未満の場合、電池駆動に適するイオン伝導度を確保しにくく、これと逆に上記範囲を超える場合、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下し、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池性能が低下することがあるので、上記範囲内で適切に調節する。
【0057】
本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解質は、リチウム‐硫黄電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質として非水系有機溶媒を含み、これは上記リチウム塩を溶解させるためのものである。
【0058】
本発明において、上記非水系有機溶媒は、エーテル系化合物及び一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物を含む。
【0059】
上記エーテル系化合物は、硫黄または硫黄系列化合物に対する溶解度を維持しながら電気化学的安定性が電池の駆動電圧範囲内で確保され、相対的に電池駆動による中間生成物との副反応の発生が少ない。
【0060】
上記エーテル系化合物は、線形エーテル化合物及び環形エーテル化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、線形エーテル化合物であってもよい。
【0061】
例えば、上記線形エーテル化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、ジメトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができ、より好ましくはジメトキシエタンであってもよい。
【0062】
一例として、上記環形エーテル化合物は、1,3‐ジオキソラン、4,5‐ジメチル‐ジオキソラン、4,5‐ジエチル‐ジオキソラン、4‐メチル‐1,3‐ジオキソラン、4‐エチル‐1,3‐ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、2,5‐ジメチルテトラヒドロフラン、2,5‐ジメトキシテトラヒドロフラン、2‐エトキシテトラヒドロフラン、2‐メチル‐1,3‐ジオキソラン、2‐ビニル‐1,3‐ジオキソラン、2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソラン、2‐メトキシ‐1,3‐ジオキソラン、2‐エチル‐2‐メチル‐1,3‐ジオキソラン、テトラヒドロピラン、1,4‐ジオキサン、1,2‐ジメトキシベンゼン、1,3‐ジメトキシベンゼン、1,4‐ジメトキシベンゼン及びイソソルビドジメチルエーテル(isosorbide dimethyl ether)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0063】
上記ヘテロ環化合物は一つ以上の二重結合を含むヘテロ環化合物であって、上記ヘテロ環は酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む。上記ヘテロ環化合物は酸素原子または硫黄原子を含んで極性を示すことで電解質内の他の組成と親和度を高めるだけでなく、電解質の副反応、分解などを抑制させることができる。
【0064】
上記ヘテロ環化合物は3ないし15員、好ましくは3ないし7員、より好ましくは5ないし6員のヘテロ環化合物であってもよい。
【0065】
また、上記ヘテロ環化合物は、炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環形アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基(‐NO)、アミン基(‐NH)及びスルホニル基(‐SO)からなる群から選択される1種以上に置換または非置換されたヘテロ環化合物;または炭素数3ないし8の環形アルキル基及び炭素数6ないし10のアリール基からなる群から選択される1種以上とヘテロ環化合物の多重環化合物;であってもよい。
【0066】
例えば、上記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン及び2,5‐ジメチルチオフェンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン及び2,5‐ジメチルフランからなる群から選択される1種以上を含むことができ、より好ましくは2‐メチルフランであってもよい。
【0067】
本発明において、上記非水系有機溶媒は、上記エーテル系化合物とヘテロ環化合物を95:5ないし5:95、好ましくは95:5ないし50:50、より好ましくは90:10ないし50:50、最も好ましくは90:10ないし70:30の体積比で含むことができる。本発明において、上記体積比はエーテル系溶媒の中で「線形エーテルの体積%」:「ヘテロ環化合物の体積%」の比に対応する。上記非水系有機溶媒で上記エーテル系化合物とヘテロ環化合物を前述した体積比で含む場合、リチウム‐硫黄電池の正極活物質損失及びイオン伝導度低下防止の側面で効果的である。特に、上記ヘテロ環化合物は、非水系有機溶媒全体体積に対して5体積比以上で含むことが好ましい。上記ヘテロ環化合物を非水系有機溶媒全体体積に対して5体積比未満で含む場合、正極活物質の湧出によって寿命の退化が加速化する問題が発生することがある。
【0068】
本発明のリチウム‐硫黄電池用電解質は、前述した組成以外に硝酸または亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。上記硝酸または亜硝酸系化合物は、負極であるリチウム金属電極に安定的な被膜を形成して充放電効率を向上させる効果がある。
【0069】
このような硝酸または亜硝酸系化合物では、本発明で特に限定しないが、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルニトラート、ジアルキルイミダゾリウムニトラート、グアニジンニトラート、イミダゾリウムニトラート、ピリジニウムニトラート、エチルニトラート、プロピルニトラート、ブチルニトラート、ペンチルニトラート、オクチルニトラートなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能であり、好ましくは硝酸リチウムを使用する。
【0070】
また、本発明の電解質は、充放電特性、難燃性などの改善を目的としてその他添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤の例示としては、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロフェンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などを挙げることができる。
【0071】
本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解質は、上記アルキルビニルエーテル化合物を添加剤で含むことによってリチウム金属を含む負極の効率及び安定性を向上させることができる。また、電解質またはリチウム‐硫黄電池を駆動する時、生成されるリチウムポリスルフィドとリチウム金属との間の副反応を効果的に抑制することができる。これによって本発明の電解質が含まれるリチウム‐硫黄電池の容量及び寿命を改善させることができる。
【0072】
また、本発明は、上記リチウム‐硫黄電池用電解質を含むリチウム‐硫黄電池を提供する。
【0073】
上記リチウム‐硫黄電池は、正極;負極;及びこれらの間に介在される電解質を含み、上記電解質として本発明によるリチウム‐硫黄電池用電解質を含む。
【0074】
上記正極は、正極集電体と上記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層を含むことができる。
【0075】
上記正極集電体は正極活物質を支え、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限されない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使われることができる。
【0076】
上記正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を使うことができる。
【0077】
上記正極活物質層は正極活物質を含み、導電材、バインダー及び添加剤などをさらに含むことができる。
【0078】
上記正極活物質は硫黄を含み、具体的に、硫黄元素(S)及び硫黄化合物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。上記正極活物質は、無機硫黄、Li(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物及び炭素‐硫黄ポリマー((C、x=2.5ないし50、n≧2)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、上記正極活物質は無機硫黄であってもよい。
【0079】
上記硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性素材と複合化して使われる。これによって、上記硫黄は硫黄‐炭素複合体の形態で含まれ、好ましくは、上記正極活物質は硫黄‐炭素複合体であってもよい。
【0080】
上記硫黄‐炭素複合体に含まれる炭素は、多孔性炭素材で上記硫黄が均一で安定的に固定されることができる骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学的反応が円滑に進められるようにする。
【0081】
上記多孔性炭素材は一般に様々な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造されることができる。上記多孔性炭素材は内部に一定しない気孔を含み、上記気孔の平均直径は1ないし200nmの範囲であり、気孔率または孔隙率は多孔性炭素材全体体積の10ないし90%範囲であってもよい。もし、上記気孔の平均直径が上記範囲未満の場合、気孔の大きさが分子レベルに過ぎないため硫黄の含浸が不可能であり、これと逆に、上記範囲を超える場合、多孔性炭素材の機械的強度が弱化されて電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0082】
上記多孔性炭素材の形態は、球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型でリチウム‐硫黄電池に通常使われるものであれば、制限されずに使われることができる。
【0083】
上記多孔性炭素材は、多孔性構造であったり比表面積が高いものであって、当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。例えば、上記多孔性炭素材では、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛などの黒鉛、及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。好ましくは、上記多孔性炭素材は炭素ナノチューブであってもよい。
【0084】
上記硫黄‐炭素複合体は、硫黄‐炭素複合体100重量部を基準にして硫黄を60ないし90重量部、好ましくは、65ないし85重量部、より好ましくは、70ないし80重量部で含むことができる。上記硫黄の含量が前述した範囲未満の場合、硫黄‐炭素複合体内の多孔性炭素材の含量が相対的に多くなることによって比表面積が増加し、正極製造の際にバインダーの含量が増加する。このようなバインダー使容量の増加は、結局正極の面抵抗を増加させて、電子移動(electron pass)を防ぐ絶縁体の役目をするようになって電池の性能を低下させることができる。これと逆に、上記硫黄の含量が前述した範囲を超える場合、多孔性炭素材と結合できなかった硫黄どうし一塊となったり、多孔性炭素材の表面に再湧出されることによって電子を受けにくくなって、電気化学的反応に参加することができなくなるため、電池容量損失が発生することがある。
【0085】
また、上記硫黄‐炭素複合体において、上記硫黄は前述した多孔性炭素材の内部及び外部表面のうち少なくともいずれか1ヶ所に位置し、この時、上記多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%未満、好ましくは、1ないし95%、より好ましくは、60ないし90%の領域に存在することができる。上記硫黄が多孔性炭素材の内部及び外部の表面に上記範囲内に存在する時、電子伝達面積及び電解質との濡れ性の面で最大の効果を示すことができる。具体的に、上記範囲領域で硫黄が多孔性炭素材の内部及び外部表面に薄くて均一に含浸されるので、充・放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、上記硫黄が多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%領域に位置する場合、上記炭素材が完全に硫黄で覆われて電解質に対する濡れ性が低下し、電極内で含まれる導電材との接触性が低下して電子が伝達されないため、電気化学反応に参加できなくなる。
【0086】
上記硫黄‐炭素複合体の製造方法は、本発明で特に限定されず、当業界で通常使われる方法が使われてもよい。一例として、上記硫黄と多孔性炭素材を単純混合した後、熱処理して複合化する方法が使われることができる。
【0087】
上記正極活物質は、前述した組成以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金の中で選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0088】
上記遷移金属元素では、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、上記IIIA族元素ではAl、Ga、In、Tiなどが含まれ、上記IVA族元素ではGe、Sn、Pbなどが含まれることができる。
【0089】
上記正極活物質は、上記正極を構成する正極活物質層全体100質量%を基準にして40ないし95質量%、好ましくは45ないし90質量%、より好ましくは60ないし90質量%で含むことができる。上記正極活物質の含量が上記範囲未満の場合、正極の電気化学的反応を十分発揮しにくいし、これと逆に、上記範囲を超える場合、後述する導電材とバインダーの含量が相対的に足りなくて正極の抵抗が上昇し、正極の物理的性質が低下する問題がある。
【0090】
上記正極活物質層は、選択的に電子が正極(具体的には正極活物質)内で円滑に移動できるようにするための導電材、及び正極活物質を集電体によく付着させるためのバインダーをさらに含むことができる。
【0091】
上記導電材は電解質と正極活物質を電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をする物質であって、導電性を持つものであれば制限されずに使うことができる。
【0092】
例えば、上記導電材では、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super‐P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素ナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0093】
上記導電材は、上記正極を構成する正極活物質層全体100質量%を基準にして1ないし10質量%、好ましくは4ないし7質量%で含むことができる。上記導電材の含量が上記範囲未満であれば、正極活物質と集電体との間の電子伝達が容易ではないため、電圧及び容量が減少する。これと逆に、上記範囲を超えると、相対的に正極活物質の割合が減少して電池の総エネルギー(電荷量)が減少することがあるので、上述した範囲内で適正含量を決めることが好ましい。
【0094】
上記バインダーは、正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させてこれらの間の結着力をより高めるものであって、当該業界で公知された全てのバインダーを使うことができる。
【0095】
例えば、上記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン‐ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル‐ブチジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合剤を使用することができる。
【0096】
上記バインダーの含量は、上記正極を構成する正極活物質層全体100質量%を基準にして1ないし10質量%であってもよい。上記バインダーの含量が上記範囲未満であれば、正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあるし、上記範囲を超えると、正極で正極活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池容量が減少することがあるので、上述した範囲内で適正含量を決めることが好ましい。
【0097】
本発明において、上記正極の製造方法は特に限定されないし、通常の技術者によって公知方法またはこれを変形する様々な方法を利用可能である。
【0098】
一例として、上記正極は上述した組成を含む正極スラリー組成物を製造した後、これを上記正極集電体の少なくとも一面に塗布することで製造されたものであってもよい。
【0099】
上記正極スラリー組成物は、前述した正極活物質、導電材及びバインダーを含み、これ以外に溶媒をさらに含むことができる。
【0100】
上記溶媒では、正極活物質、導電材及びバインダーを均一に分散させることができるものを使用する。このような溶媒では、水系溶媒として水が最も好ましく、この時、水は蒸溜水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)であってもよい。ただし、必ずこれに限定されるものではなく、必要な場合、水と容易に混合可能な低級アルコールが使われることができる。上記低級アルコールでは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどがあり、好ましくは、これらは水と一緒に混合して使われることができる。
【0101】
上記溶媒の含量は容易にコーティングできる程度の濃度を持つ水準でよく、具体的含量は塗布方法及び装置によって異なる。
【0102】
上記正極スラリー組成物は、必要に応じて該当技術分野でその機能の向上などを目的として通常使われる物質を必要に応じてさらに含むことができる。例えば、粘度調整剤、流動化剤、充填剤などを挙げることができる。
【0103】
上記正極スラリー組成物の塗布方法は、本発明で特に限定せず、例えば、ドクターブレード(doctor blade)、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法を挙げることができる。また、別途基材(substrate)の上に成形した後、プレッシング(pressing)またはラミネーション(lamination)方法で正極スラリーを正極集電体上に塗布することもできる。
【0104】
上記塗布後、溶媒を除去するための乾燥工程を行うことができる。上記乾燥工程は溶媒を充分取り除くことができる水準の温度及び時間で行い、その条件は溶媒の種類によって変わることがあるので、本発明で特に制限されない。一例として、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線及び電子線などの照射による乾燥法を挙げることができる。乾燥速度は通常応力集中によって正極活物質層に亀裂が生じたり、正極活物質層が正極集電体から剥離されない程度の速度範囲内で、できるだけ早く溶媒を取り除くことができるように調整する。
【0105】
さらに、上記乾燥後、集電体をプレスすることで正極内で正極活物質の密度を高めることもできる。プレス方法では、金型プレス及びロールプレスなどの方法を挙げることができる。
【0106】
前述した組成及び製造方法で製造された上記正極、具体的に正極活物質層の気孔率は40ないし80%、好ましくは、60ないし75%であってもよい。上記正極の気孔率が40%に及ばない場合は、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極スラリー組成物の充填度が高すぎて正極活物質の間にイオン伝導及び/または電気伝導を示すことができる十分な電解質が維持できなくなって電池の出力特性やサイクル特性が低下することがあるし、電池の過電圧及び放電容量減少がひどくなる問題がある。これと逆に、上記正極の気孔率が80%を超えて高すぎる気孔率を持つ場合、集電体と物理的及び電気的連結が低くなって接着力が低下し、反応しがたくなる問題があり、高くなった気孔率を電解質が充填されて電池のエネルギー密度が低くなる問題があるので、上記範囲で適切に調節する。
【0107】
また、本発明による正極で硫黄ローディング量、すなわち正極内で正極活物質層の単位面積当たり硫黄の質量は2ないし15mg/cm、好ましくは2.5ないし5mg/cmであってもよい。
【0108】
上記負極は負極集電体及び上記負極集全体の一面または両面に塗布された負極活物質層を含むことができる。または上記負極はリチウム板金であってもよい。
【0109】
上記負極集電体は負極活物質層を支持するためのもので、正極集電体で説明したとおりである。
【0110】
上記負極活物質層は負極活物質以外に導電材、バインダーなどを含むことができる。この時、上記導電材及びバインダーは前述した内容にしたがう。
【0111】
上記負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0112】
上記リチウムイオン(Li)を可逆的に挿入または脱挿入できる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。上記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコーンであってもよい。上記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0113】
好ましくは、上記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的に、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0114】
上記負極活物質の形成方法は特に制限されないし、当業界で通常使われる層または膜の形成方法を利用することができる。例えば、圧搾、コーティング、蒸着などの方法を利用することができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初基充電によって板金上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0115】
上記電解質は、これを媒介にして上記正極と負極で電気化学的酸化または還元反応を起こすためのもので、前述した内容にしたがう。
【0116】
上記電解質の注入は最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、リチウム‐硫黄電池の製造工程中、適切な段階で行われることができる。すなわち、リチウム‐硫黄電池の組立前または組立最終段階などで適用されることができる。
【0117】
上記正極と負極の間にはさらに分離膜が含まれることができる。
【0118】
上記分離膜は、上記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオンが輸送できるようにするものであって、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなることができる。上記分離膜は、通常リチウム‐硫黄電池で分離膜として使われるものであれば、特に制限されずに使用可能である。上記分離膜は、フィルムのような独立的な部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0119】
上記分離膜では、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解質に対する含湿能に優れるものが好ましい。
【0120】
上記分離膜は多孔性基材からなってもよいが、上記多孔性基材は通常リチウム‐硫黄電池に使われる多孔性基材であれば、いずれも使用可能であり、多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使うことができるし、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0121】
上記多孔性基材の材質は本発明で特に限定せずに、通常リチウム‐硫黄電池に使われる多孔性基材であれば、いずれも使用可能である。例えば、上記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p‐phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0122】
上記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmであってもよい。上記多孔性基材の厚さの範囲が前述した範囲に限定されるものではないが、厚さが前述した下限より薄すぎる場合は、機械的物性が低下して電池使用中に分離膜が容易に損傷されることがある。
【0123】
上記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔率も特に制限されないが、それぞれ0.001ないし50μm及び10ないし95%であってもよい。
【0124】
本発明によるリチウム二次電池は、一般工程である巻取(winding)以外にもセパレーターと電極の積層(lamination、stack)及びフォールディング(folding)工程が可能である。
【0125】
上記リチウム‐硫黄電池の形状は特に制限されず、円筒形、積層型、コイン型など様々な形状にすることができる。
【0126】
また、本発明は、上記リチウム‐硫黄電池を単位電池で含む電池モジュールを提供する。
【0127】
上記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源で使われることができる。
【0128】
上記中大型デバイスの例では、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグ‐インハイブリッド電気自動車(plug‐in hybrid electric vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E‐bike)、電気スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0129】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0130】
実施例及び比較例
[実施例1]
正極活物質で硫黄‐炭素複合体(S:C=75:25(重量比))87.5質量%、導電材でデンカブラック5.0質量%、バインダーでスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=70:30(重量比))7.5質量%を混合して正極スラリー組成物を製造した。
【0131】
20μm厚さのアルミニウム集電体上に上記製造された正極スラリー組成物を塗布して100℃で12時間乾燥し、ロールプレス(roll press)機器で圧搾して正極を製造した。この時、正極活物質のローディング量は3.7mAh/cm以下であ、正極の気孔率は70%であった。
【0132】
20μm厚さのリチウム金属薄膜を負極で使った。
【0133】
0.75M LiTFSIと1.0質量%の硝酸リチウムを2‐メチルフランとジメトキシエタン(2‐methylfuran:DME=1:2(体積比))からなる有機溶媒に溶解させた溶液を製造した。次いで、電解質全体100質量%に対して1.0質量%の含量になるように上記溶液にプロピルビニルエーテルを添加して電解質を製造した。
【0134】
上記用意された正極と負極を対面するように位置させ、その間に厚さ16μm、気孔率45%のポリエチレン分離膜を介在した後、上記製造した電解質70μlを注入してリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0135】
[実施例2]
プロピルビニルエーテルの代わりにブチルビニルエーテルを同一含量で使ったことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0136】
[実施例3]
電解質製造の際にプロピルビニルエーテルの含量を5.0質量%に変更したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0137】
[実施例4]
電解質製造の際にプロピルビニルエーテル1.0質量%をブチルビニルエーテル5.0質量%に変更したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0138】
[実施例5]
電解質製造の際に2‐メチルフランとジメトキシエタン(2‐methylfuran:DME=1:1(体積比))からなる有機溶媒を使ったことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0139】
[比較例1]
電解質製造の際にプロピルビニルエーテルを使わないことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0140】
[比較例2]
電解質製造の際に2‐メチルフランとジメトキシエタン(2‐methylfuran:DME=1:1(体積比))からなる有機溶媒を使って、プロピルビニルエーテルを使わないことを除いては、上記実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄電池を製造した。
【0141】
実験例1.電池性能評価
実施例及び比較例で製造した電池に対して、充・放電測定装置(LAND CT‐2001A、武漢(Wuhan)社製品)を使って性能を評価した。
【0142】
具体的に、25℃で0.1C、1.8Vになるまで放電、及び0.1Cで2.5Vになるまで初基2.5サイクル充電を繰り返し、その後、3サイクルの間0.2C/0.2C充電/放電し、その後0.3C/0.5Cで充電/放電を100サイクルまで繰り返して測定した。この時、得られた結果は表1及び図1ないし6に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
図1ないし6及び上記表1に示すように、実施例による電池の場合、容量及び寿命特性が比較例に比べて優れることを確認することができる。
【0145】
具体的に、上記表1を見れば、アルキルビニルエーテル化合物を添加剤で含む電解質を使った実施例1及び2の電池の場合、7回目サイクルで比較例1に比べてそれぞれ7%及び11%ぐらい高い容量特性を示し、50回目サイクルでその差はさらに増加することが分かる。また、電池駆動の際に充電電流が正常の場合はクーロン効率が100%に近い値を示し、リチウムポリスルフィドによって活物質が損失される場合、放電容量より充電容量が多くなって100%から離れた値を示すが、実施例1及び2による電池は比較例に比べて100%付近の値を示すので、充・放電サイクル特性も優れることが分かる。
【0146】
これに加え、実施例1及び2の電池の場合、比較例1に比べて図3及び6を通じて放電時に過電圧が改善することを、図1及び4を通じて電池寿命が向上されることを、図2及び5を通じてサイクルが進められることによって充・放電効率が改善されることを、それぞれ確認することができるので、本願発明による電池の場合、改善された容量、寿命及び充・放電効率を示すことが分かる。
【0147】
このような結果から、本発明のリチウム‐硫黄電池はアルキルビニルエーテル化合物を添加剤で含む電解質を含むことで、リチウム‐硫黄電池の容量及び寿命特性を向上させることができることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6