(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】セパレーター、二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/411 20210101AFI20240508BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240508BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M50/411
H01M50/403 D
H01M50/403 Z
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/429
H01M50/434
H01M50/44
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/443 Z
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/457
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2022551706
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 CN2021123237
(87)【国際公開番号】W WO2023060428
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 毓群
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼ 楚英
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 成▲棟▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ ▲義▼
(72)【発明者】
【氏名】康 ▲海▼▲楊▼
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113300051(CN,A)
【文献】特開平02-248460(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133074(WO,A1)
【文献】特開2015-115266(JP,A)
【文献】国際公開第2019/156172(WO,A1)
【文献】特表2018-527730(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103155220(CN,A)
【文献】特開2015-144079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-497
H01M 10/05-0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレーターであって、多孔質ベース膜と、前記多孔質ベース膜の片面又は両面に塗布される接着層とを含み、前記接着層は炭酸エチレン
と核剤で構成されるセパレーター。
【請求項2】
前記炭酸エチレンの質量百分率が
90%以上且つ100%未満である請求項1に記載のセパレーター。
【請求項3】
前記炭酸エチレンの質量百分率が99%以上且つ100%未満である請求項2に記載のセパレーター。
【請求項4】
前記核剤は無機核剤、有機核剤又はそれらの組み合わせであり
、
前記無機核剤は、金属又は非金属の酸化
物、水酸化
物、フッ化
物、硫酸
塩、ケイ酸
塩、リン酸
塩、炭酸
塩及びカーボンブラックのうちの1つ又は複数であり、
前記有機核剤は、アルキル金属化合物、カルボン酸金属塩類のうちの1つ又は複数である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項5】
前記無機核剤は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数であり、
前記有機核剤はステアリン酸カルシウムである請求項4に記載のセパレーター。
【請求項6】
前記二酸化ケイ素はナノシリコンパウダーである請求項5に記載のセパレーター。
【請求項7】
前記核剤は無機核剤であり、前記核剤の添加量は0%超且つ10%以下である請求項4~6のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項8】
前記核剤の添加量は0.05%~1%である請求項7に記載のセパレーター。
【請求項9】
前記核剤は粉末であり、D50で表される粒径は0.001~5μmで
ある請求項1~
8のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項10】
前記多孔質ベース膜の材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ビスコース繊維、シルク繊維のうちの1つ又は複数で
ある請求項1~
9のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項11】
前記多孔質ベース膜の厚さは5~30μmである請求項1~
10のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項12】
前記接着層は連続塗膜又は不連続塗膜である請求項1~
11のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項13】
前記接着層の被覆率は1~100%で
ある請求項1~
12のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項14】
前記接着層の厚さは0.1~100μmで
ある請求項1~
13のいずれか1項に記載のセパレーター。
【請求項15】
セパレーターの製造方法であって、前記方法は、接着材料を多孔質ベース膜の片面又は両面にコーティングし、接着材料を室温又は室温未満の環境で冷却固化し、接着層を形成することを含み、前記接着材料は溶融した炭酸エチレン
と核剤で構成されるセパレーターの製造方法。
【請求項16】
40~100℃の間で、炭酸エチレンを溶融し、又は溶融した炭酸エチレンと核剤を混合し、接着材料を製造するステップ1であって、炭酸エチレンと核剤の質量分率比は90%以上100%未満:0%超10%以下であるステップ1と、
接着材料を多孔質ベース膜の片面又は両面にコーティングした後、室
温で冷却し又は7~15℃の低温で補助冷却し、前記セパレーターを得るステップ2とを含む請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記核剤は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数である請求項
15又は
16に記載の方法。
【請求項18】
前記核剤の添加量は0.05%~1%である請求項
15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティングは、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングのうちの1つ又は複数を使用する請求項
15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティングの塗布重量は0.5~20g/m
2である請求項
15~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池の技術分野に関し、特にセパレーター、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が大きく、迅速充放電が可能であり、充電効率が高く、出力電力が大きく、サイクル及び貯蔵性能が優れ、メモリ効果がないという特徴を有し、現在の最も主流の二次電池となっている。2020年、世界のリチウムイオン電池の出荷量は294.5GWhに達し、そのうち、中国市場は158.5GWhである。ヨーロッパの新エネルギー自動車市場の予想外の成長のおかげで、世界の自動車用動力電池の出荷量は前年度比で26.4%増加し、158.2GWhに達し、中国市場の自動車用動力電池の出荷量は84.5GWhである。
【0003】
リチウムイオン電池の構造では、セパレーターは重要な内部要素の1つである。セパレーターは正極シートと負極シートとの間に設置され、絶縁の役割を果たす。セパレーターの性能は電池の界面構造、内部抵抗等を決め、電池の容量、サイクル及び安全性能等の特性に直接影響を与え、性能に優れたセパレーターは電池の総合的な性能の向上に重要な役割を果たす。市販のセパレーター材料は主にポリエチレン及びポリプロピレン微孔膜である。セパレーターは、ポリオレフィン膜の耐熱性を向上させるために、耐熱性材料でコーティングすることができる。粘着性材料でコーティングすることもでき、セパレーターをコーティングすることにより電池の組立過程で電極と接着力を形成することができ、それによって、電池の製造プロセスにマッチングし、電池の安全性を向上させる。
【0004】
近年、ポリエチレン及びポリプロピレン微孔膜の製造プロセスは成熟しており、革新的な研究は主に材料や機能が異なる塗膜を設計することでセパレーターに新しい性能を与えることに注目している。セパレーターと電極シートの接着を実現するために、技術者は様々な配合方法を設計し、塗膜材料に様々な接着剤、分散剤、湿潤剤、溶剤及びフィラー等を加えることで、性能がより良いコーティングされたセパレーターを製造するのを図り、しかし、複雑な設計ではより多くの制御不可能な要素が導入されることが多く、様々な添加剤が加えられると電池の電気化学的過程で副反応が発生し、電池の総合的な性能に影響を与える。複雑な設計は複雑な製造プロセスに依存して実現する必要があり、そのため、製品の製造可能性が低下し、コストが高くなってしまう。
【発明の概要】
【0005】
従来技術のリチウム電池はいずれもポリマー材料を接着材料として使用し、ポリマー材料を油性又は水性接着剤と配合し又は溶剤に溶解することによって、セパレーターの表面にコーティングする。ポリマー材料は2つの方法で接着の役割を果たすことができる。第1の方法は、加熱圧着であり、加熱する際にポリマーが溶融し、接着力が生じ、従来技術では、選択されたポリマー材料は融点が高く、溶融粘度が大きく、通常、90℃以上でホットプレスする必要があり、ホットプレスする際に、熱がセルの表面から内部に伝達するまで一定の時間がかかるため、ホットプレスの時間は一般的に30秒を超え、且つポリマー材料の溶融粘度が大きく、低温の下で浸透性が低く、接着力が高くない。第2の方法は、溶剤とゲル状態に形成し、粘着性が生じ、この方式は角形セルの製造に適用できない。
【0006】
セパレーターにコーティングされるポリマー材料は、セパレーターの表面にポリマー膜を形成し、セパレーターの細孔を塞ぎ、リチウムイオンの輸送をブロックし、その結果、リチウムイオン電池の動力学的性能が低下する。また、セパレーターのポリマー膜層は電池の内部空間を占め、その結果、電池のエネルギー密度が低下する。また、加えられたポリマー材料及び助剤は、電池の製造及び使用過程で副反応が発生し、電池の初回効率が低減し、性能が低下する。
【0007】
上記の技術的問題を解消するために、発明者は、炭酸エチレンと任意に加えられた核剤をセパレーター接着剤とするとともに、他の接着剤(例えば、ポリマー接着剤)を使用しないことによって、50℃以下でセパレーターと電池の電極シートとの優れた接着を迅速に実現することができ、ホットプレス時間を大幅に短縮させることができることを予想外に発見した。
【0008】
上記の目的を達成するために、本願は、セパレーター、その製造方法、二次電池、前記二次電池を含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記二次電池、電池モジュール又は電池パックを含む電力消費装置を提供する。
【0009】
本願の第1態様はセパレーターを提供し、多孔質ベース膜と、前記多孔質ベース膜の片面又は両面に塗布される接着層とを含み、前記接着層は炭酸エチレンと選択可能な核剤で構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記接着材料層は炭酸エチレンと核剤で構成され、炭酸エチレンの質量百分率が90%~100%である。いくつかの実施形態では、炭酸エチレンの質量百分率は99%~100%である。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記核剤は無機核剤、有機核剤又はそれらの組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記核剤は無機核剤であり、核剤の添加量は0%~10%であり、好ましくは0.05%~1%である。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記無機核剤は、金属又は非金属の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム)、水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、フッ化物(例えば、フッ化カルシウム)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸鉄)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)及びカーボンブラックのうちの1つ又は複数である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記無機核剤は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記二酸化ケイ素はナノシリコンパウダーである。いくつかの実施形態では、前記ナノシリコンパウダーの一次粒径は70~80nmである。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記有機核剤は、アルキル金属化合物(例えば、ステアリン酸カルシウム)、カルボン酸金属塩類(例えば、シュウ酸カルシウム、クエン酸カルシウム)のうちの1つ又は複数である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記有機核剤はステアリン酸カルシウムである。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記核剤は粉末であり、D50で表される粒径は0.001~5μmである。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記核剤のD50で表される粒径は0.005~2μmである。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記多孔質ベース膜の材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ビスコース繊維、シルク繊維のうちの1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、前記多孔質ベース膜の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドのうちの1つ又は複数である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記多孔質ベース膜の厚さは5~30μmである。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記接着層は連続塗膜又は不連続塗膜である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記接着層の被覆率は1~100%であり、好ましくは10~20%である。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記接着層の厚さは0.1~100μmであり、好ましくは0.2~20μmである。
【0025】
本願の第2態様は二次電池用のセパレーターの製造方法を提供し、前記方法は、接着材料を多孔質ベース膜の片面又は両面にコーティングし、接着材料を室温又は室温未満の環境で冷却固化し、接着層を形成することを含み、前記接着材料は溶融した炭酸エチレンと選択可能な核剤で構成される。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記方法は、
40~100℃の間で、炭酸エチレンを溶融し、又は溶融した炭酸エチレンと核剤を混合し、接着材料を製造するステップ1であって、炭酸エチレンと核剤の質量分率比は90%~100%:0%~10%であるステップ1と、
接着材料を多孔質ベース膜の片面又は両面にコーティングした後、室温(例えば、25℃)で冷却し又は7~15℃の低温で補助冷却し、前記セパレーターを得るステップ2とを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記核剤は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数である。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記核剤の添加量は0.05%~1%である。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記コーティングは、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングのうちの1つ又は複数を使用する。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記コーティングの塗布重量は0.5~20g/m2である。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記方法で製造されたセパレーターは本願の第1態様に記載のセパレーターである。
【0032】
本願の第3態様は二次電池のセパレーターを製造するための接着材料としての炭酸エチレンの用途を提供する。
【0033】
本願の第4態様は二次電池を提供し、電極組立体及び電解液を含み、前記電極組立体は正極シート、負極シート及びセパレーターを含み、前記正極シートは正極タブを含み、前記負極シートは負極タブを含み、前記セパレーターは本願の第1態様のセパレーターである。
【0034】
本願の第5態様は、本願の第4態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0035】
本願の第6態様は、本願の第5態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0036】
本願の第7態様は、本願の第4態様から選択される二次電池、本願の第5態様の電池モジュール又は本願の第6態様の電池パックを含む電力消費装置を提供する。
【0037】
本発明のセパレーターは、炭酸エチレンと選択可能な核剤を接着材料とし、50℃以下でセパレーターと電池の電極シートとの優れた接着を迅速に実現することができ、ホットプレス時間を大幅に短縮させることができる。本発明のセパレーターを使用して二次イオン電池を組み立てると、電解液を注入する場合、接着材料の炭酸エチレンが溶解し、電解液の一部となり、セパレーターの表面の被覆物は99%以上減少し、セパレーターの細孔を最大限に維持することができ、従来の技術的解決手段に比べて、該セパレーターで製造された電池はより良好な動力学的性能を有し、且つ副反応物質が導入されず、接着材料が電池の空間を占めず、電池のエネルギー密度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本願の一実施形態に係る二次電池の模式図である。
【
図2】
図1に示される本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
【
図3】本願の一実施形態に係る電池モジュールの模式図である。
【
図4】本願の一実施形態に係る電池パックの模式図である。
【
図5】
図4に示される本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
【
図6】本願の一実施形態に係る二次電池が電源として使用される電力消費装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を参照しながら本願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明は本願の原理を例示的に説明するためのものであるが、本願の範囲を限定するためのものではなく、すなわち、本願は説明される実施例に限定されない。
【0040】
以下、本願の二次電池、その製造方法、電池モジュール、電池パック及び電気装置を具体的に開示する実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略される場合がある。例えば、よく知られている事項に対する詳細な説明、実質的に同じ構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者が理解しやすくするためである。
【0041】
本願に開示されている「範囲」は下限と上限の形態で限定され、所定の範囲は、下限と上限を選択することによって限定され、選択された下限と上限は、特別な範囲の境界を限定する。このように限定される範囲は限界値を含んでもよく、限界値を含まなくてもよく、任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限と任意の上限を組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して、60~120及び80~110の範囲が列挙される場合、60~110及び80~120の範囲も予想できると解される。なお、列挙される最小範囲値が1及び2であり、列挙される最大範囲値が3、4及び5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、及び2~5の範囲はすべて予想できる。本願において、特に断りのない限り、数値範囲「a~b」は、a~b間の任意の実数の組み合わせの略記を表し、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書に「0~5」間のすべての実数が列挙されていることを表し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの略記に過ぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると説明されると、該パラメータが、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であるのが開示されることに相当する。
【0042】
特に断りのない限り、本願のすべての実施形態及び選択可能な実施形態を相互に組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0043】
特に断りのない限り、本願のすべての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴を相互に組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0044】
特に断りのない限り、本願のすべてのステップは順に実行されてもよく、ランダムに実行されてもよく、好ましくは順に実行される。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むことは、前記方法が順に実行されるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順に実行されるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを表す。例えば、言及される前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加できることを表し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)等を含んでもよい。
【0045】
特に断りのない限り、本願で言及される「含む」及び「備える」という用語は開放式のものであってもよく、又は密閉式のものであってもよい。例えば、前記「含む」及び「備える」という用語は、列挙されていない他の成分を含んでもよく又は備えてもよく、列挙されている成分のみを含んでもよい又は備えてもよいことを表すことができる。
【0046】
特に断りのない限り、本願において、「又は」という用語は包括的なものである。例えば、語句「A又はB」は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)こと、Aが偽であり(又は存在しない)且つBが真である(又は存在する)こと、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)こと、のいずれかは「A又はB」という条件を満たす。
【0047】
[セパレーター]
背景技術で述べたように、従来の二次電池のコーティングされた隔膜には、ホットプレス温度が高く、接着強度が低く、塗膜材料がリチウムイオンの輸送に影響を与え、塗膜材料の副反応により電池の初回効率が低減し、塗膜材料が電池の内部空間を占め、電池のエネルギー密度に影響を与えるという問題が存在している。
【0048】
上記の問題に鑑みて、本願は、50℃以下でセパレーターと電池の電極シートとの優れた接着を実現できるセパレーターを提供し、ホットプレス時間を3s以下に大幅に短縮させることができる。本発明のセパレーターを使用して二次電池を組み立てると、電解液を注入する場合、炭酸エチレンの接着材料が溶解し、隔膜の細孔を塞ぐことがなく、隔膜の細孔を最大限に維持することができ、従来の技術的解決手段に比べて、該隔膜で製造された電池はより良好な動力学的性能を有し、且つ副反応物質が導入されず、接着材料が電池の空間を占めず、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0049】
本願の第1態様は二次電池用のセパレーターを提供し、多孔質ベース膜と、前記多孔質ベース膜の片面又は両面に塗布される接着層とを含み、前記接着層は炭酸エチレンと選択可能な核剤で構成される。
【0050】
炭酸エチレンは、融点が35℃程度であり、室温で固体であり、加熱すると溶融し、再び室温25℃に冷却すると固体に固化する。炭酸エチレンを多孔質隔膜に塗布し、電極シートとともに電池を製造した後、加熱条件において、炭酸エチレンが加熱されて溶融し、多孔質隔膜及び電極シートを濡らし、冷却した後に固化し、隔膜と電極シートの接着を実現できる。
【0051】
炭酸エチレン純物質は、冷却過程で過冷却現象が発生しやすく、すなわち、融点温度以下で、炭酸エチレンは依然として液体の形態を維持し、この問題を改善するために、本発明は、化学的性質が安定した核剤を炭酸エチレンに加え、核剤は冷却結晶過程で核形成部位として機能し、炭酸エチレンが過冷却により固化しにくいという問題を回避する。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記接着材料層は炭酸エチレンと核剤で構成され、炭酸エチレンの質量百分率が90%~100%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。いくつかの実施形態では、炭酸エチレンの質量百分率は99%~100%である。
【0053】
核剤は無機核剤、有機核剤又はそれらの組み合わせであってもよい。核剤は、電気化学的活性がなく、リチウムイオンが挿入されず、炭酸エチレン内に良好に分散でき、結晶固化の過程で核形成部位を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記核剤は無機核剤であり、核剤の添加量は0%~10%、例えば、0.01%~0.05%、0.05%~0.06%、0.06%~0.07%、0.07%~0.08%、0.08%~0.09%、0.09%~1%、1%~3%、3%~5%、5%~8%、8%~9%又は9%~10%であり、好ましくは0.05%~1%である。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記無機核剤は、金属又は非金属の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム)、水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、フッ化物(例えば、フッ化カルシウム)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸鉄)、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)及びカーボンブラックのうちの1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、前記無機核剤は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数である。
【0056】
いくつかの実施形態では、核剤として使用される二酸化ケイ素はナノシリコンパウダーである。いくつかの実施形態では、前記ナノシリコンパウダーの一次粒径は70~80nmである。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記有機核剤は、アルキル金属化合物(例えば、ステアリン酸カルシウム)、カルボン酸金属塩類(例えば、シュウ酸カルシウム、クエン酸カルシウム)のうちの1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、前記有機核剤はステアリン酸カルシウムである。
【0058】
いくつかの実施形態では、核剤の形態は粉末であり、D50で表される粒径は0.001~5μm、例えば、0.001μm~0.005μm、0.005μm~0.01μm、0.01μm~0.05μm、0.05μm~0.1μm、0.1μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~2μm又は2μm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記核剤のD50で表される粒径は0.005~2μmである。
【0059】
多孔質ベース膜の種類は具体的に制限されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の既知の多孔質ベース膜を選択することができる。いくつかの実施形態では、多孔質ベース膜の材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ビスコース繊維、シルク繊維のうちの1つ又は複数である。いくつかの実施形態では、前記多孔質ベース膜の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドのうちの1つ又は複数である。
【0060】
多孔質ベース膜の厚さも特に制限されない。いくつかの実施形態では、前記多孔質ベース膜の厚さは5~30μm、例えば、5μm~10μm、10μm~12μm、12μm~15μm、15μm~20μm又は20μm~30μmである。
【0061】
本発明のセパレーターにおいて、接着層は連続塗膜又は不連続塗膜であってもよい。接着層は不連続塗膜である場合、その被覆率が特に制限されず、1%~100%、例えば、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%又は90%~100%であってもよい。いくつかの実施形態では、被覆率は10~20%であってもよい。
【0062】
本発明のセパレーターにおいて、接着層の厚さは特に制限されない。いくつかの実施形態では、接着層の厚さは0.1~100μm、例えば、0.2μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~2μm、2μm~5μm、5μm~10μm、10μm~20μm、20μm~50μm、50μm~70μm又は70μm~100μmである。好ましくは0.2~20μmである。
【0063】
本発明のセパレーターは単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限されない。セパレーターが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよく、特に制限されない。
【0064】
本願の第2態様は二次電池用のセパレーターの製造方法を提供する。本発明の製造方法は、接着材料を多孔質ベース膜の片面又は両面にコーティングし、接着材料を室温又は室温未満の環境で冷却固化し、接着層を形成することを含み、前記接着材料は溶融した炭酸エチレンと選択可能な核剤で構成される。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記方法は、
40~100℃の間(例えば、60℃)で、炭酸エチレンを溶融し、又は溶融した炭酸エチレンと核剤を混合し、接着材料を製造するステップ1であって、炭酸エチレンと核剤の質量分率比は90%~100%:0%~10%であるステップ1と、
接着材料を多孔質ベース膜の片面又は両面にコーティングした後、室温(例えば、25℃)で冷却し又は7~15℃(例えば、7~10℃)の低温で補助冷却し、前記セパレーターを得るステップ2とを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記核剤は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数である。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記核剤の添加量は0.05%~1%、例えば、0.05%~0.06%、0.06%~0.07%、0.07%~0.08%、0.08%~0.09%又は0.09%~1%である。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記コーティングは、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングのうちの1つ又は複数を使用する。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記コーティングの塗布重量は0.5~20g/m2、例えば、0.5~1g/m2、1~1.5g/m2、1.5~2g/m2、2~5g/m2、5~7g/m2、7~10g/m2、10~15g/m2又は15~20g/m2である。
【0070】
本発明のセパレーターの製造過程で、液体接着材料は室温又は低温環境で冷却固化し、接着層を形成し、水や揮発性溶剤が導入されない。コーティングは加熱乾燥過程を必要とせず、コーティングされた接着材料には水及び炭酸エチレン以外の他の液体成分が添加されず、揮発性物質が非常に少ない。加熱乾燥システムが存在しないため、必要なエネルギー消費量も大幅に減少する。また、塗布過程で加熱する必要がないため、乾燥際の高温によるセパレーター基材への影響、例えば、しわ、収縮等を回避することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記方法で製造されたセパレーターは本願の第1態様に記載のセパレーターである。
【0072】
本発明の二次電池のセパレーターは、貯蔵温度が35℃未満である必要がある。
【0073】
本願の第3態様は二次電池のセパレーターを製造するための接着材料としての炭酸エチレンの用途を提供する。炭酸エチレンの融点が35℃であり、融点より高い場合、炭酸エチレンは迅速に溶融し、隔膜及び電極の表面を濡らし、融点以下に冷却すると、炭酸エチレンは結晶化して硬化し、隔膜と電極の界面接着が完了する。炭酸エチレンの流動性が良好であるため、セパレーターと電池の電極シートとの優れた接着を迅速に実現でき、ホットプレス時間を3s以下に短縮させることができる。
【0074】
また、以下、図面を適切に参照しながら本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0075】
本願の1つの実施形態では、二次電池を提供する。
【0076】
通常の場合、二次電池は正極シート、負極シート、電解質及びセパレーターを含む。電池の充放電過程で、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復に挿入したり脱離したりする。電解質は正極シートと負極シートとの間にイオン伝導の役割を果たす。セパレーターは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正極と負極の短絡を防止する役割を果たし、それと同時に、イオンの通過を可能にする。
【0077】
[正極シート]
本願の二次電池では、正極シートは正極集電体と、正極集電体に設置され正極活物質を含む正極材料層とを含んでもよく、前記正極材料層は正極集電体の1つの表面に設置されてもよく、又は正極集電体の2つの表面に設置されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体は金属箔又は複合集電体を使用できる。例えば、金属箔として、アルミ箔を使用できる。複合集電体はポリマー材料ベース層とポリマー材料ベース層の少なくとも1つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)をポリマー材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)に形成することによって形成され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、正極活物質は本分野でよく知られている電池用の正極活物質を使用できる。一例として、正極活物質は、オリビン構造を有するリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれらのそれぞれの変性化合物のうちの少なくとも1つを含んでもよい。しかし、本願はこれらの材料に限定されず、電池の正極活物質として使用できる他の従来の材料も使用できる。これらの正極活物質は単独で使用されてもよく、2つ以上を組み合わせて使用されてもよい。リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333とも略称できる)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523とも略称できる)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211とも略称できる)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622とも略称できる)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811とも略称できる)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びそれらの変性化合物等のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。オリビン構造を有するリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO4(LFPとも略称できる))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材、リン酸マンガンリチウム(例えば、LiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態では、正極材料層は選択的に接着剤をさらに含む。導電剤及び接着剤の種類及び含有量は具体的に制限されず、実際のニーズに応じて選択できる。一例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、正極材料層は選択的に導電剤をさらに含む。一例として、前記導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノ繊維のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、以下の方法で正極シートを製造することができ、正極シートを製造するための上記の成分、例えば、正極活物質、導電剤、接着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体にコーティングし、乾燥、コールドプレス等の工程を行って、正極シートを得ることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、正極材料層はリン酸鉄リチウム、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含み、以下の方法で正極シートを製造することができ、リン酸鉄リチウム、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比で均一に混合し、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加え、一定の粘度の正極スラリーを調製し、正極スラリーを正極集電体のアルミ箔に均一に塗布し、乾燥した後にコールドプレス、打ち抜き、スリットを行い、二次電池の正極シートを製造する。
【0084】
[負極シート]
本願の二次電池では、負極シートは負極集電体と、負極集電体に設置され負極活物質を含む負極材料層とを含んでもよく、前記負極材料層は負極集電体の1つの表面に設置されてもよく、負極集電体の2つの表面に設置されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を使用できる。例えば、金属箔として、銅箔を使用できる。複合集電体はポリマー材料ベース層とポリマー材料基材の少なくとも1つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)をポリマー材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)に形成することによって形成され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、負極活物質は本分野でよく知られている電池用の負極活物質を使用できる。一例として、負極活物質は、グラファイト(例えば、人工グラファイト、天然グラファイト)、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ケイ素系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウム等のうちの少なくとも1つを含んでもよい。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素-酸素化合物、ケイ素-炭素複合物、ケイ素-窒素複合物及びケイ素合金から選択される少なくとも1つであってもよい。前記スズ系材料は、単体スズ、酸化スズ化合物及びスズ合金から選択される少なくとも1つであってもよい。しかし、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活物質として使用できる他の従来の材料を使用できる。これらの負極活物質は単独で使用されてもよく、2つ以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、負極材料層は選択的に接着剤をさらに含む。前記接着剤は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、負極材料層は選択的に導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノ繊維から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、負極材料層は負極活物質であるグラファイト、導電剤であるアセチレンブラック及び接着剤であるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、負極材料層は選択的に他の助剤、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))等をさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、以下の方法で負極シートを製造することができ、負極シートを製造するための上記の成分、例えば、負極活物質、導電剤、接着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えば、脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体にコーティングし、乾燥、コールドプレス等の工程を行って、負極シートを得ることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、負極材料層は、活物質であるグラファイト、導電剤であるアセチレンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤であるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を含み、以下の方法で負極シートを製造することができ、負極活物質であるグラファイト、導電剤であるアセチレンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤であるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を質量比で均一に混合して溶剤水に加え、負極スラリーを調製し、負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、乾燥した後にコールドプレス、打ち抜き、スリットを行い、二次電池の負極シートを製造する。
【0093】
[電解質]
電解質は正極シートと負極シートとの間にイオン伝導の役割を果たす。本願は、電解質の種類を具体的に制限せず、ニーズに応じて選択できる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記電解質は電解液を使用する。前記電解液は電解質塩及び溶剤を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロオキサレートボレート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロオキサレートホスフェート及びリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、溶剤は、エチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、フルオロエチレンカーボネート、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記電解液は選択的に添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含んでもよく、電池のある性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤等をさらに含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、電解液は以下の方法で製造でき、六フッ化リン酸リチウムを炭酸エチレン、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルの混合溶剤に溶解し、必要な電解液を得る。
【0099】
本願の二次電池はリチウムイオン電池であってもよい。
【0100】
通常の方法で本願の二次電池を製造することができる。いくつかの実施形態では、正極シート、負極シート及びセパレーターは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極組立体を製造することができる。例示的な製造方法は、
正極シート、セパレーター、負極シートを順に積み重ね、セパレーターを正極シートと負極シートとの間に配置し、次に巻回して電極組立体(ベアセル)を得るステップ1と、
電極組立体を二次電池ケースに配置し、乾燥した後に電解液を注入し、次に化成、排気等の工程を行って、二次電池を製造するステップ2とを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本願の二次電池は外装を含んでもよい。該外装は上記の電極組立体及び電解質をカプセル化することに用いられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は硬質ケース、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケース等であってもよい。二次電池の外装はソフトパック、例えば、袋状ソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0103】
本願は、二次電池の形状を特に制限せず、円筒状、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0104】
いくつかの実施形態では、
図2を参照すると、外装はケース51及びカバープレート53を含んでもよい。ケース51は底板と底板に接続される側板とを含んでもよく、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ケース51は収容室に連通する開口を有し、カバープレート53は前記開口をカバーして、前記収容室を密閉することができる。正極シート、負極シート及びセパレーターは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極組立体52を形成することができる。電極組立体52は前記収容室内にカプセル化される。電解液は電極組立体52に浸透する。二次電池5に含まれる電極組立体52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際のニーズに応じて選択することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、二次電池は電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つ又は複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池モジュールの応用及び容量に応じて選択できる。
【0106】
図3は、一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長手方向に沿って順に並んで設置されてもよい。勿論、他の任意の方法で配置されてもよい。さらに、締結具で該複数の二次電池5を固定することができる。
【0107】
選択的に、電池モジュール4は収容空間を有するケーシングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は該収容空間内に収容される。
【0108】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つ又は複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池パックの応用及び容量に応じて選択できる。
【0109】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1である。
図4及び
図5を参照すると、電池パック1は、電池筐体と、電池筐体内に設置された複数の電池モジュール4とを含んでもよい。電池筐体は上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3をカバーすることができ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方法で電池筐体内に配置され得る。
【0110】
また、本願はさらに電力消費装置を提供し、前記電力消費装置は本願に提供される二次電池、電池モジュール又は電池パックを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは前記電力消費装置の電源として使用することができ、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用することもできる。前記電力消費装置は、移動機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等から選択できるが、これらに限定されない。前記電力消費装置として、その使用ニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0111】
図6は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置による二次電池に対する高電力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0112】
別の例としての装置は携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコン等であってもよい。該装置は、通常、軽量化及び薄型化が求められているので、二次電池を電源として使用することができる。
【0113】
[実施例]
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明される実施例は例示的なものであり、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものとして理解してはならない。実施例において具体的な技術又は条件が記載されていない場合、本分野内の文献に説明されている技術、条件又は製品仕様に従って実行される。使用される試薬や機器は、メーカーが記載されていない場合、いずれも市販で入手可能な通常のものである。
【0114】
[セパレーターの製造]
[比較例1]
(1)塗膜材料の製造
【0115】
7.99kgの脱イオン水、0.70kgのポリアクリロニトリルラテックス(LA133、固形分15%)、1.30kgのPVDF(AKEMA LBG)、0.01kgの消泡剤(BYK、LPD 24513)をダブルプラネタリーミキサー(Ross社製、DPD-4R)において2h撹拌し、均一に混合し、コーティング液を調製した。
【0116】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、ステップ(1)で調製したコーティング液をスプレーコーティング装置でセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、55℃で乾燥し、巻回し、比較例1のセパレーターを製造した。
【0117】
[比較例2]
(1)塗膜材料の製造
【0118】
9.50kgの炭酸エチレンを加熱システム及び分散ディスク付きのミキサー(Ross社製、DPD-4R)に加え、60℃で、1h保温し、炭酸エチレンが完全に溶融した後、0.50kgのPVDF(AKEMA LBG)を加え、2h撹拌し、均一に混合し、コーティング液を調製した。
【0119】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、前記ステップ(2)で調製したコーティング液をスプレーコーティング装置でセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、冷却して巻回し、比較例2のセパレーターを製造した。
【0120】
[実施例1]
[セパレーター接着材料1の製造]
(1)10.00kgの炭酸エチレンを加熱システム及び分散ディスク付きのミキサー(Ross社製、DPD-4R)に加え、60℃で、1h保温し、炭酸エチレンが完全に溶融した後、セパレーター接着材料1を得た。
【0121】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、加熱スプレーコーティングシステム付きのスプレーコーティング装置(KATOP)で、セパレーター接着材料1をセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、塗布重量が1.5±0.2g/m2であり、7~10℃の低温ボックスで冷却し、巻回し、実施例1のリチウム二次電池のセパレーターを製造した。
【0122】
[実施例2]
(1)セパレーター接着材料2の製造
【0123】
9.90kgの炭酸エチレンを加熱システム及び分散ディスク付きのミキサーに加え、60℃で、1h保温し、炭酸エチレンが完全に溶融した後、0.10kgのナノシリコンパウダー(NYACOL S125M、一次粒径が70~80nmである)を加え、1h分散撹拌し、セパレーター接着材料2を得た。
【0124】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、加熱スプレーコーティングシステム付きのスプレーコーティング装置(KATOP)で、セパレーター接着材料2をセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、塗布重量が1.5±0.2g/m2であり、冷却し、巻回し、実施例2のリチウム二次電池のセパレーターを製造した。
【0125】
[実施例3]
(1)セパレーター接着材料3の製造
9.95kgの炭酸エチレンを加熱システム及び分散ディスク付きのミキサーに加え、60℃で、1h保温し、炭酸エチレンが完全に溶融した後、0.05kgのステアリン酸カルシウム粉末(D50=1.2μm)を加え、1h分散撹拌し、セパレーター接着材料3を得た。
【0126】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、加熱スプレーコーティングシステム付きのスプレーコーティング装置で、セパレーター接着材料3をセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、1.5±0.2g/m2であり、冷却し、巻回し、実施例3のリチウム二次電池のセパレーターを製造した。
【0127】
[実施例4]
(1)セパレーター接着材料4の製造
9.50kgの炭酸エチレンを加熱システム及び分散ディスク付きのミキサーに加え、60℃で、1h保温し、炭酸エチレンが完全に溶融した後、0.50kgのナノシリコンパウダー(NYACOL S125M、一次粒径が70~80nmである)を加え、1h分散撹拌し、セパレーター接着材料4を得た。
【0128】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、加熱スプレーコーティングシステム付きのスプレーコーティング装置で、セパレーター接着材料4をセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、1.5±0.2g/m2であり、冷却し、巻回し、実施例4のリチウム二次電池のセパレーターを製造した。
【0129】
[実施例5]
(1)セパレーター接着材料5の製造
9.00kgの炭酸エチレンを加熱システム及び分散ディスク付きのミキサーに加え、60℃で、1h保温し、炭酸エチレンが完全に溶融した後、1.00kgの酸化アルミニウム粉末(D50=1μm)を加え、1h分散撹拌し、セパレーター接着材料5を得た。
【0130】
(2)セパレーターのコーティング
12μmのポリプロピレン基材微孔性セパレーターを選択し、加熱スプレーコーティングシステム付きのスプレーコーティング装置で、セパレーター接着材料5をセパレーターの表面に均一にスプレーコーティングし、塗布重量が1.5±0.2g/m2であり、冷却し、巻回し、実施例5のリチウム二次電池のセパレーターを製造した。
【0131】
[正極シートの製造]
リン酸鉄リチウム、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97:2:1の質量比で均一に混合して、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加え、一定の粘度の正極スラリーを調製し、正極スラリーを正極集電体のアルミ箔に均一に塗布し、乾燥した後にコールドプレス、打ち抜き、スリットを行い、リチウムイオン電池の正極シートを製造した。
【0132】
[負極シートの製造]
負極活物質であるグラファイト、導電剤であるアセチレンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤であるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を96:2:1:1の質量比で均一に混合して溶剤水に加え、負極スラリーを調製し、負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、乾燥した後にコールドプレス、打ち抜き、スリットを行い、リチウムイオン電池の負極シートを製造した。
【0133】
[電解液の調製]
六フッ化リン酸リチウムを炭酸エチレン、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルの混合溶剤(炭酸エチレン、炭酸ジメチル及び炭酸エチルメチルの体積比が1:2:1である)に溶解し、必要な電解液を得た。
【0134】
[リチウムイオン電池の製造]
上記の正極シート、負極シート及びセパレーターを積層構造に製造し、ホットプレスした後にベアセルを製造し、次にカプセル化、注液、化成、排気等の工程を行って、リチウムイオン電池を製造した。
【0135】
[セパレーターの試験]
[面密度試験]
セパレーターの塗布方向に垂直な方向に沿って、セパレーターの左部、中部及び右部にそれぞれ100mm×100mmのサンプルを切り取り、精度が万分の一(0.0001)の分析天秤で計量し、3つのサンプルの面密度平均値を計算し、セパレーターの面密度と記し、単位はg/m2であり、式は以下のとおりである。
面密度(g/m2)=サンプル質量(g)/0.01(m2)
【0136】
[厚さ試験]
セパレーターの塗布方向に垂直な方向に沿って、セパレーターの左部、中部及び右部にそれぞれ100mm×100mmのサンプルを切り取り、膜厚計(Mahr、Millimar C1208)でサンプルの中央部分の厚さを測定し、3つのサンプルの厚さ平均値を計算し、セパレーターの厚さと記し、単位はμmである。
【0137】
[接着力試験]
コーティングされた後のセパレーターをそれぞれ正極シート及び負極シートと平らに積み重ね、フラットヒートプレスを用いて、50℃で、1Tの圧力で、3sホットプレスした後に取り出し、冷却する。冷却後にカッターで長さが150mm、幅が20mmのサンプルを切断し、万能張力機(Instron 3365)を使用して、GB/T2790-1995『粘着剤180°剥離強度試験方法 可撓性材料対剛性材料』の試験方法に従って剥離強度試験を行って、剥離強度の単位はN/mである。
【0138】
[透気度試験]
セパレーターの塗布方向に垂直な方向に沿って、セパレーターの左部、中部及び右部にそれぞれ100mm×100mmのサンプルを切り取り、デジタル型王研式透気度試験機(AsahiSeiko旭精工社製、EGO1-65-2MR)でセパレーターの透気度試験を行って、3つのサンプルの平均透気度を計算し、セパレーターの透気度と記し、単位はs/100CCである。
【0139】
[イオン導電率試験]
セパレーターを40mm×20mmのサンプルに切断し、切断されたセパレーターを積み重ね、4層ごとに1グループにし、市販の電解液でセパレーターを完全に濡らし、次にグローブボックスで試験用の対称電池を組み立てる。電気化学ワークステーションでセパレーターのインピーダンス試験を行って、測定範囲は1Hz~100000Hzであり、印加された交流信号は5mVで分極される。交流インピーダンスの試験結果からイオン導電率を計算することができ、式は以下のとおりである。
δ=1000L/RA
δはイオン導電率を表し、単位がmS/cmであり、Aは試験用セパレーターの面積を表し、単位がcm2であり、Lは試験用セパレーターの厚さを表し、Rは試験用セパレーターの抵抗を表す。
【0140】
[初回充放電効率試験]
[初回充電容量]
セルを0.01Cの定電流で3.65Vに充電し、使用された電量を初回充電容量と記し、単位はmAhである。
【0141】
[初回放電容量]
セルを0.1Cの定電流で2.0Vに放電し、該過程の放電量を初回放電容量と記し、単位はmAhである。
初回充放電効率=初回放電容量/初回充電容量×100%
【0142】
試験結果は表1に示される。表2は実施例と比較例の配合方法である。
【0143】
【0144】
【0145】
表1から分かるように、比較例1に比べて、実施例1~5のセパレーターはより優れた接着力、イオン導電率及び/又は初回充放電効率を有し、本発明のセパレーターはポリアクリロニトリルラテックス及びPVDFを接着材料として使用したセパレーターに比べて、リチウムイオン電池の総合的な性能の向上により有利であることを証明した。比較例2に比べて、実施例1のセパレーターはより優れた透気度、イオン導電率及び初回充放電効率を有し、単独で炭酸エチレンを接着材料として使用しても、炭酸エチレン及びPVDFを接着材料として使用する場合に比べて、リチウムイオン電池の総合的な性能の向上により有利であることを証明した。上記のように、比較例1~2に比べて、実施例1~5のリチウムイオン電池はいずれもより優れた総合的な性能を有し、実施例1~3は、実施例4~5に比べて、炭酸エチレンの含有量が99%~100%であるため、接着力を確保できるとともに、リチウムイオン電池の電気的特性の発揮により有利である。
【0146】
説明する必要がある点として、本願は上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態は例示的なものに過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内に、技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。なお、本願の要旨から逸脱することなく、実施形態に当業者が想到できる様々な変形を追加し、実施形態の構成要素の一部を組み合わせることによって形成する他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0147】
1…電池パック、2…上筐体、3…下筐体、4…電池モジュール、5…二次電池、51…ケース、52…電極組立体、53…トップカバー組立体