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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】顆粒状飼料添加剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/16 20160101AFI20240508BHJP
   A23K 20/142 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
A23K10/16
A23K20/142
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022554570
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2021000698
(87)【国際公開番号】W WO2021182742
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0031305
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514158497
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スクォン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ,インソン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソクテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,イルチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヨンポム
(72)【発明者】
【氏名】チョ,セヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジョンファン
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-219807(JP,A)
【文献】特開2019-62742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/16
A23K 20/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性アミノ酸水溶液を作製するステップ(aステップ)、
前記塩基性アミノ酸水溶液に二酸化炭素を注入して中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)、および
前記中和アミノ酸水溶液を顆粒化するステップ(cステップ)
を含む、
前記塩基性アミノ酸水溶液は、微生物を培養して得た発酵液から分離し、作製するものであって、
前記中和アミノ酸水溶液のpHは8.5~9.3である、
顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素は、前記aステップで発生した二酸化炭素を含む、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項3】
前記aステップの後に、前記発酵液を濃縮して濃縮発酵液を作製するステップ(a-2ステップ)をさらに含む、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項4】
前記bステップの後に、前記濃縮発酵液と前記中和アミノ酸水溶液を混合するステップ(b-2ステップ)をさらに含む、請求項3に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項5】
前記b-2ステップの後に、前記濃縮発酵液と前記中和アミノ酸水溶液の混合液を顆粒化するステップ(c-2ステップ)をさらに含む、請求項4に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項6】
前記微生物はコリネバクテリウム属菌株である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項7】
前記塩基性アミノ酸水溶液のpHは10.0~11.0である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項8】
前記塩基性アミノ酸水溶液の純度は90~100重量%である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項9】
前記塩基性アミノ酸水溶液の比重は1.10~1.15である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニン及びヒスチジンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項11】
前記bステップは、気泡塔(bubbling tower)、循環式吸収塔又は連続式吸収塔装置を用いるものである、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項12】
前記bステップは、35~65℃で行われるものである、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項13】
前記中和アミノ酸水溶液の比重は1.18~1.22である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項14】
前記顆粒状飼料添加剤は、塩基性アミノ酸と、下記化学式1で表される陰イオンとを含み、
前記塩基性アミノ酸に対する前記陰イオンのモル比が0.1超、0.52以下である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【化1】
(前記化学式1において、nは0又は1である)
【請求項15】
前記顆粒は、平均直径が0.1~3.0mmである、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【請求項16】
前記塩基性アミノ酸の含有量は、前記顆粒の総重量に対して50~90重量%である、請求項1に記載の顆粒状飼料添加剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状飼料添加剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飼料添加剤は、特定化合物の1日摂取量の不足を補うために、通常の食餌の補充剤としての摂取を目的とする製品である。飼育動物の畜産学的性能を向上させるために、飼育動物飼料添加剤にアミノ酸を補強するのが一般的である。
【0003】
微生物発酵から生成される飼料添加剤用アミノ酸は発酵液(broth)中の他の副産物と共に存在するので、飼料添加剤の製造時にアミノ酸の含有量を増加させるための様々な方法が用いられる。例えば、アミノ酸含有量を増加させるために、高含有量に精製されたアミノ酸水溶液を発酵液と混合して顆粒を作製することができる。しかし、高含有量の塩基性アミノ酸水溶液は親水性、極性の特性を有するので、最終の顆粒製品は吸湿性が高く、顆粒が凝集する現象が生じる。このような凝集する現象は、混合飼料工場において技術的に求められる加工工程に適さない。それ以外に、塩基性アミノ酸の含有量を増加させるために、発酵液中の不純物を除去する複数の精製工程、及び塩酸を投入する結晶化工程を用いることもある。しかし、複数の精製工程を必要とし、必須に用いられる試薬が廃棄物として排出されるので、経済的、環境的問題が生じる。
【0004】
よって、高含有量及び低吸湿性を有する塩基性アミノ酸を含む顆粒状飼料添加剤組成物の経済的な製造方法に関する開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0081448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、塩基性アミノ酸水溶液を作製するステップ(aステップ)と、塩基性アミノ酸水溶液に二酸化炭素を注入して中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)とを含み、前記塩基性アミノ酸水溶液は、微生物を培養して得た発酵液から作製するものである、顆粒状飼料添加剤の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0008】
本出願の一態様は、塩基性アミノ酸水溶液を作製するステップ(aステップ)と、塩基性アミノ酸水溶液に二酸化炭素を注入して中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)とを含み、前記塩基性アミノ酸水溶液は、微生物を培養して得た発酵液から作製するものである、顆粒状飼料添加剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一実施例による顆粒状飼料添加剤の製造方法を用いると、高含有量の塩基性アミノ酸を含みながらも、塩基性アミノ酸により発生する吸湿性、凝集現象を防止することのできる、塩基性アミノ酸を含む顆粒状飼料添加剤を製造することができる。また、一実施例による顆粒状飼料添加剤の製造方法は、塩基性アミノ酸を中和するために一般に用いられる塩酸使用工程を省略することができるので、工程を単純化することができ、塩酸の使用による工程上の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一態様の高含有量塩基性アミノ酸を含む顆粒状飼料添加剤を製造するステップを示す図である。
図2】気泡塔を用いてアミノ酸水溶液を中和する方法を示す図である。
図3】循環式吸収塔を用いてアミノ酸水溶液を中和する方法を示す図である。
図4】連続式吸収塔を用いてアミノ酸水溶液を中和する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様の顆粒状飼料添加剤の製造方法によれば、製造される顆粒状飼料添加剤は、高含有量の塩基性アミノ酸を含み、二酸化炭素の注入により塩基性アミノ酸が中和されるので、塩基性アミノ酸の極性が緩和される。よって、塩基性アミノ酸の極性により発生する問題である、吸湿性増加、凝集(lumping and caking)現象を低減させるという効果を発揮する。
【0012】
本明細書における「飼料添加剤(feed additives)」とは、対象生物の生産性向上又は健康増進のために飼料に添加される物質を意味する。前記飼料添加剤は、当該技術分野で公知の様々な形態に製造することができ、個別に、又は従来公知の飼料添加剤と併用して用いられてもよい。前記飼料添加剤組成物は適切な組成比で飼料に添加されてもよく、組成比は当該分野の常識と経験に基づいて容易に決定される。前記飼料添加剤組成物は、ニワトリ、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの動物用飼料に添加されるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本明細書における「塩基性アミノ酸(basic amino acids)」は、リシン、アルギニン及びヒスチジンからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記塩基性アミノ酸は、L-リシン、L-アルギニン及びL-ヒスチジンからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記塩基性アミノ酸は、前記リシン、アルギニン、ヒスチジンそれぞれの塩の形態又は遊離アミノ酸(free amino acids)の形態であってもよい。前記塩は、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩であるが、これらに限定されるものではない。前記塩基性アミノ酸は、水に結合しやすい性質を有し、極性であってもよい。
【0014】
本明細書における「塩基性アミノ酸水溶液」とは、塩基性アミノ酸を含む発酵液(broth)を精製したものを意味する。具体的には、前記塩基性アミノ酸水溶液は、塩基性アミノ酸を生産する菌株を培養して得た発酵物を濾過、精製、濃縮する工程により得たものである。
【0015】
前記発酵物は、菌株の発酵による培養により達成され、発酵は、流加プロセス(fed-batch process)(フィードプロセス(feed process))、バッチプロセス(回分培養)又は反復流加プロセス(反復フェッドプロセス)で行われてもよい。用いられる発酵培地は、生産菌株の要求条件に応じて最適化されてもよい。
【0016】
前記塩基性アミノ酸水溶液の濃度は、約450~650g/Lであってもよく、例えば約500~600g/L、又は約520~580g/Lであってもよい。前記塩基性アミノ酸水溶液のpHは、約10~11であってもよい。前記塩基性アミノ酸水溶液の比重は、約1.10~1.15であってもよい。前記塩基性アミノ酸水溶液の純度は、約90~100重量%であってもよい。
【0017】
前記塩基性アミノ酸は、水に結合しやすい性質を有し、極性であってもよい。よって、一般に顆粒状飼料添加剤中に塩基性アミノ酸が高含有量で含まれると、顆粒の極性が増加して吸湿性及び凝集現象が増加するという問題が生じるが、前記製造方法により製造される顆粒状飼料添加剤においては、上記問題が生じることなく、塩基性アミノ酸が高含有量で含まれ、飼料添加剤が上記範囲で前記塩基性アミノ酸を含むことにより運搬及び保管上の利点が得られる。一態様による顆粒状飼料添加剤は、顆粒の総重量に対して50~90重量%、例えば約55~89.5重量%、約60~89重量%、約65~88.5重量%、約70~88重量%、約75~87重量%、約76~86重量%、約77~85重量%、約78~84重量%、又は約79~80重量%の塩基性アミノ酸を含んでもよい。前記顆粒状飼料添加剤の製造方法によれば、発酵液を精製、濃縮したアミノ酸水溶液を用いることにより、高含有量特性を有する顆粒状飼料添加剤を製造することができる。
【0018】
前記製造方法において、塩基性アミノ酸を生産する菌株は、塩基性アミノ酸を生産する菌株であり、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、その種類が限定されるものではなく、具体的にはコリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌株が挙げられる。
【0019】
また、前記菌株が塩基性アミノ酸を生産する条件は、塩基性アミノ酸の生産量は多くなるが、菌株の蓄積量は少なくなる条件であってもよい。
【0020】
前記発酵物は、濾過してもよく、具体的には膜を用いて微生物を分離してもよい。また、微生物が除去された発酵液は、具体的にはイオン交換樹脂塔を通過したものであってもよく、そうすることにより不純物が除去されて塩基性アミノ酸が精製される。精製された塩基性アミノ酸の濃縮工程は、例えば塩基性アミノ酸を含む発酵液を真空及び/又は乾燥過程で濃縮することにより行われてもよい。
【0021】
前記「中和アミノ酸水溶液」とは、前記塩基性アミノ酸水溶液が中和された形態を意味する。具体的には、前記中和アミノ酸水溶液は、アミノ酸水溶液にHCO 又はCO 2-をさらに含むものであってもよい。すなわち、前記中和アミノ酸水溶液は、アミノ酸水溶液がHCO 又はCO 2-により中和された形態であってもよい。
【0022】
前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)において、中和は、塩基性アミノ酸水溶液に二酸化炭素を注入することにより行ってもよい。前記二酸化炭素は、微生物の発酵工程で発生した二酸化炭素を含むものであってもよい。具体的には、前記塩基性アミノ酸水溶液を作製するステップ(aステップ)で発生した二酸化炭素を含むものであってもよい。アミノ酸水溶液に二酸化炭素を注入すると、水溶液中にHCO 又はCO 2-が含まれるようになり、塩基性アミノ酸が中和されるという効果が生じる。上記方法によれば、発酵中に生成される二酸化炭素を用いることができるので、二酸化炭素の排出が低減し、資源を再利用することができる。
【0023】
また、従来のアミノ酸水溶液の中和に用いられていた塩酸使用工程を省略することができるので、精製工程を単純化することができる。
【0024】
前記顆粒状飼料添加剤の製造方法は、前記塩基性アミノ酸水溶液を作製するステップ(aステップ)の後に、前記微生物を培養して得た発酵液を濃縮して濃縮発酵液を作製するステップ(a-2ステップ)をさらに含むものであってもよい。
【0025】
本明細書における「濃縮発酵液」とは、塩基性アミノ酸を含む発酵液を真空及び/又は乾燥過程で濃縮したものを意味する。前記濃縮発酵液は、塩基性アミノ酸を生産する菌株を培養して得た発酵液に対して、微生物除去及び精製過程を経ることなく、真空、加温状態で発酵液中の固形分の総量が約50~60重量%になるように、すなわち固体含有量が約50~60重量%になるように濃縮する工程で得られる。前記「固体含有量」とは、液体を完全に除去した際に残っている質量を意味する。
【0026】
また、前記a-2ステップは、前記aステップと同時に、前記aステップの後に、又は前記aステップの前に行われるものであってもよい。例えば、塩基性アミノ酸を生産する菌株を培養して得た発酵液を精製及び濃縮して塩基性アミノ酸水溶液を作製する一方で、前記発酵液に対して、精製過程を経ることなく、濃縮して濃縮発酵液を作製するものであってもよい。
【0027】
前記顆粒状飼料添加剤の製造方法は、前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)の後に、前記濃縮発酵液と前記中和アミノ酸水溶液を混合するステップ(b-2ステップ)をさらに含むものであってもよい。
【0028】
一実施例によれば、前記濃縮発酵液と中和アミノ酸水溶液を混合するステップは、アミノ酸に対する陰イオンのモル比が約0.19超、0.62以下になるように混合するものであってもよい。
【0029】
前記顆粒状飼料添加剤の製造方法において、前記bステップの後に、前記濃縮発酵液と前記中和アミノ酸水溶液を混合するステップ(b-2ステップ)をさらに含むことにより、より経済的に顆粒中のアミノ酸の純度を向上させることができる。
【0030】
前記顆粒状飼料添加剤の製造方法において、前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)は、気泡塔(bubbling tower)、循環式吸収塔又は連続式吸収塔装置を用いるものであってもよい。具体的には、前記bステップは、前記装置を用いて中和アミノ酸水溶液に二酸化炭素を含む気体を注入するものであってもよい。
【0031】
前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)が気泡塔により行われる場合、約1時間以上、例えば1~15時間、1~12時間、2~15時間、2~12時間、3~15時間、3~12時間、3~11時間、又は4~11時間行われるが、これらに限定されるものではなく、前記中和アミノ酸水溶液のpHが約8.5~約9.5になる範囲で選択されてもよい。
【0032】
前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)が循環式吸収塔により行われる場合、二酸化炭素を含む気体を約700~1500L/分の速度で吸収塔に注入するものであってもよい。
【0033】
前記bステップが循環式吸収塔により行われる場合、約1時間以上、例えば1~10時間、1~6時間、1~4時間、又は1~3時間行われるが、これらに限定されるものではなく、前記中和アミノ酸水溶液のpHが約8.5~約9.5になる範囲で選択されてもよい。
【0034】
一実施例において、前記循環式吸収塔は、トレイ(tray)タイプの吸収塔であってもよい。
【0035】
前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)が連続式吸収塔により行われる場合、二酸化炭素を含む気体を約300~1500L/分、又は約400~1200L/分の速度で吸収塔に注入するものであってもよい。
【0036】
前記bステップが連続式吸収塔により行われる場合、正常状態(steady state)で一定の物性の中和アミノ酸水溶液が排出されるまで行われてもよく、前記二酸化炭素を含む気体を注入する速度は、中和アミノ酸水溶液のpHが約8.5~9.5になる範囲、又は中和アミノ酸水溶液の純度が約82~89重量%になる範囲で調節されてもよい。
【0037】
本明細書における「正常状態(steady state)」とは、「stationary state」ともいい、物質界の状態が時間に応じて変化しない一定の状態であることを意味する。
【0038】
前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)は、約35~65℃、約40~60℃、又は約45~55℃で行われるものであってもよい。
【0039】
前記中和アミノ酸水溶液のpHは、約8.5~9.5であってもよい。前記中和アミノ酸水溶液の比重は、約1.18~1.22であってもよい。前記中和アミノ酸水溶液の純度は、約78重量%以上、例えば約78~91重量%、約78~89重量%、又は約80~89重量%であってもよい。
【0040】
前記顆粒状飼料添加剤の製造方法は、前記中和アミノ酸水溶液を作製するステップ(bステップ)の後に、前記中和アミノ酸水溶液を顆粒化するステップ(cステップ)をさらに含むものであってもよい。
【0041】
また、前記顆粒状飼料添加剤の製造方法は、前記bステップの後に、濃縮発酵液と中和アミノ酸水溶液を混合するステップ(b-2ステップ)をさらに含む場合、前記b-2ステップの後に、前記濃縮発酵液と前記中和アミノ酸水溶液の混合液を顆粒化するステップ(c-2ステップ)をさらに含むものであってもよい。
【0042】
前記顆粒化するステップ(cステップ又はc-2ステップ)は、例えば前記中和アミノ酸水溶液又は前記混合液を造粒機内に連続して噴射し、噴射により形成される一定の大きさの粒子が流動層を形成するように、熱風を連続して供給することにより行われてもよい。この工程のために、通常の流動層循環造粒機などが用いられてもよい。顆粒化条件は、例えば注入速度約5~10mL/分、ノズル圧力約1.2kg/cm、温度約75~80℃であるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記顆粒状飼料添加剤の製造方法において、前記顆粒状飼料添加剤は、塩基性アミノ酸と、下記化学式1で表される陰イオンとを含み、前記塩基性アミノ酸に対する前記陰イオンのモル比が0.1超、0.52以下であるものであってもよい。
【0044】
【化1】
【0045】
(化学式1において、nは0又は1である)
【0046】
化学式1で表される陰イオンとしては、具体的には重炭酸イオン(HCO )又は炭酸イオン(CO 2-)が挙げられる。
【0047】
前記陰イオンは、塩基性アミノ酸を含む水溶液に二酸化炭素を添加することにより生成されてもよい。二酸化炭素が水溶液の水素イオンと反応して炭酸イオンが生成され、炭酸イオンが重炭酸イオンに変換されてもよい。この過程において、顆粒状飼料添加剤組成物のpHが減少したり、中和されてもよい。よって、一実施例によれば、前記顆粒状飼料添加剤は、炭酸イオン、重炭酸イオン又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0048】
本明細書における「塩基性アミノ酸に対する陰イオンのモル比」は、塩基性アミノ酸に対する重炭酸イオンもしくは炭酸イオンのモル比、HCO /塩基性アミノ酸、又はCO 2-/塩基性アミノ酸ともいう。
【0049】
前記モル比が0.1以下であると、顆粒中の重炭酸イオン又は炭酸イオンの含有量が少なく、塩基性アミノ酸の中和効果が低下するので、顆粒の吸湿性又は固化性の問題が生じうる。前記モル比が約0.52超であると、顆粒の含有量が少なく、商品価値が著しく低下するという問題がある。すなわち、前記顆粒状飼料添加剤は、重炭酸イオン又は炭酸イオンを含まない顆粒状飼料添加剤に比べて、吸湿性(hygroscopicity)が改善されたものであってもよい。
【0050】
本明細書における「吸湿性」とは、水分を吸収又は保湿する傾向を意味する。通常の顆粒状飼料添加剤、特に塩基性アミノ酸を含む顆粒状飼料添加剤組成物は、吸湿性が高く、凝集現象の増加により商品価値が低下するので、本発明によれば、飼料添加剤の商品価値が向上する。
【0051】
前記モル比は、具体的には約0.15~0.5、又は約0.2~0.45であってもよい。
【0052】
前記モル比は、顆粒を水に溶解し、その後HPLC(high performance liquid chromatography)を行って得られた結果から計算されるが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記顆粒状飼料添加剤に含まれる前記顆粒の大きさは、畜産学的用途に応じて選択されてもよい。
【0054】
一実施例によれば、前記顆粒の平均直径は、0.1~3.0mmであり、他の実施例によれば、0.5~3.0mmであるが、本発明の目的を逸脱しない範囲で変形することができる。前記顆粒の平均直径が約0.1mm未満であれば、固化の程度が大きくなるか、粉塵が発生する。前記顆粒の平均直径が約3.0mm超であれば、飼料製造時に不均一に混合されるという問題が生じる。
【0055】
前記顆粒は、不規則的な形態であってもよく、例えば球形であってもよい。
【0056】
一実施例によれば、塩基性アミノ酸の含有量は、顆粒の総重量に対して50~90重量%であってもよい。
【0057】
前記顆粒状飼料添加剤は、動物飼料の製造における使用に適する。例えば、前記飼料添加剤は、動物飼料プレミックス(premix)の一部又は動物飼料の前駆物質であり、それ自体を飼料物質と混合することができる。
【0058】
前記顆粒状飼料添加剤は、動物に単独で投与してもよく、食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与してもよい。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして、もしくはそれらを動物飼料に直接混合して、又は飼料とは別の経口剤形で容易に動物に投与することができる。
【0059】
他の態様は、前記顆粒状飼料添加剤の製造方法により製造された顆粒状飼料添加剤を提供する。
【0060】
前記顆粒状飼料添加剤については前述した通りである。
【実施例
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1~6及び比較例1~6
気泡塔を用いた顆粒状飼料添加剤の製造及び特性分析(1)
図1は一態様の高含有量塩基性アミノ酸を含む顆粒状飼料添加剤を製造するステップを示す図である。以下、図1を参照して、各ステップを具体的に説明する。
【0063】
1.顆粒状飼料添加剤の製造
1.1.アミノ酸混合液の作製
表1及び2の組成に従ってアミノ酸水溶液と濃縮発酵液を準備し、それらを混合して混合液を準備した。本実施例においては、塩基性アミノ酸の例としてL-リシンを用いた。まず、アミノ酸水溶液は、L-リシンを含む発酵液を精製して作製した。発酵液を作製するために、pH7.0の種培地25mL、L-リシンを生産するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌株、20時間、30℃、200rpmの条件で種菌培養を行った。種培地は、蒸留水1L中に、グルコース20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl 1mg、パントテン酸カルシウム2mg、ニコチンアミド2mgとなるように構成した。種菌培養により得られた種菌をpH7.0の生産培地に4%(v/v)となるように接種し、30℃で十分な通気と攪拌を行い、投入したグルコースを全て消費するまで培養して最終発酵液を得た。生産培地は、蒸留水1L中に、グルコース100g、(NHSO 40g、大豆タンパク質2.5g、コーンスティープソリッド(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、KHPO 1g、MgSO・7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1mg、パントテン酸カルシウム2mg、ニコチンアミド3mg、CaCO 30gとなるように構成した。培養終了後に、発酵液中のL-リシン濃度をHPLC(Waters社,2478)で分析した。前記発酵液中の微生物は、0.1μmサイズの膜を用いて除去した。膜分離過程において、発酵液のpHを4.0に調整し、その後50℃に加温して行った。微生物が除去された発酵液(broth)は、陽イオン交換樹脂塔を通過させて発酵液中のL-リシンを樹脂塔に吸着させ、他の不純物からL-リシンを分離した。吸着したL-リシンは、約2Nのアンモニア水を用いて樹脂塔から脱着させて回収し、その後真空状態で加温して濃縮する過程によりL-リシン水溶液を作製し、濃縮時の水溶液中の固形物質が50~60重量%になるようにした。濃縮後のL-リシン水溶液の濃度は560g/L、pHは10.2、比重は1.13、純度は99重量%であった。
【0064】
図2は気泡塔装置を用いてアミノ酸水溶液を中和する方法を示す図である。以下、図2を参照して、各ステップを具体的に説明する。
【0065】
前記L-リシン水溶液35kgを中和槽に投入し、その後温度50℃の条件で5体積%の二酸化炭素を含む気体を500rpmの攪拌条件、1000L/分で10時間注入した。二酸化炭素注入による中和L-リシン水溶液のL-リシン濃度と重炭酸イオン(HCO )又は炭酸イオン(CO 2-)濃度をHPLC(Waters社,2478)で分析した。中和したL-リシン水溶液のpHは8.9、比重は1.20、純度は81.6重量%であった。
【0066】
濃縮発酵液は、前述したように、コリネバクテリウム属菌株を培養して得た発酵液に対して、微生物除去及び精製工程を経ることなく、真空状態で加温及び濃縮して作製した。濃縮後の発酵液中の固形分の総量が50~60重量%になるようにした。
【0067】
前記L-リシン水溶液又は中和したL-リシン水溶液を表1及び2に示す割合で前記濃縮発酵液と混合して混合液を作製した。混合液中のL-リシンとHCO 又はCO 2-の濃度をHPLC(Waters社,2478)で分析した。濃度分析結果を用いて、実施例1~6及び比較例1~6の混合液中のL-リシンに対するHCO のモル比を計算した結果をそれぞれ表1及び2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1に示すように、実施例1~6において、L-リシン水溶液の割合が減少し、濃縮発酵液の割合が増加するにつれて、混合液中のHCO /L-リシンのモル比が減少した。
【0071】
表2に示すように、比較例1~6において、L-リシン水溶液の割合が変化しても、混合液中のHCO /L-リシンのモル比に有意な変化はなかった。
【0072】
1.2.顆粒状飼料添加剤の製造
前記1.1.で作製した各混合液を顆粒化した。具体的には、準備した混合液を流動層循環造粒機に5mL/分で注入し、ノズル圧力1.2kg/cmで80℃の造粒機の内部に噴霧して顆粒化した。作製された顆粒を篩分けにより約0.5~3.0mmの大きさに選別した。
【0073】
2.顆粒状飼料添加剤の特性分析
2.1.顆粒中のL-リシンに対するHCO のモル比及びL-リシン含有量の分析
実施例1~6、比較例1~6の顆粒中のL-リシンに対するHCO のモル比及びL-リシン含有量を分析するために、微量の顆粒を1Lの三次蒸留水に溶解し、その後HPLC(Waters社,2478)を行い、その結果からモル比を計算した。計算の結果を表3及び4に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
表3及び4に示すように、顆粒中のL-リシンに対するHCO のモル比は、実施例1~6において0.1~0.52の範囲であり、比較例1~6において0.02~0.03のレベルであることが確認された。
【0077】
また、L-リシン含有量は、実施例1~6、比較例1~6の全てにおいて78%以上であることが確認され、高含有量であることが確認された。
【0078】
2.2.吸湿性及び固化性の評価
実施例1~6、比較例1~6の吸湿性及び固化性を評価するために、各顆粒3gを使い捨て計量皿に載せ、40℃、相対湿度60%の条件で1週間保管し、その後質量変化による顆粒中の水分変化を測定した。
【0079】
さらに、このように水分を吸収した顆粒の凝集現象(固化性)を定量評価するために、1.7mmのメッシュサイズを有する篩の上に顆粒を移し、振動機器を用いて振動(50Hzの条件で5分間)させ、その後篩を通過した顆粒の質量を測定して凝集の程度を測定した。凝集の程度は次の式で計算した。
【0080】
【数1】
【0081】
その結果を表5及び6に示す。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
表5及び6に示すように、実施例1~6は、比較例1~6に比べて、水分含有量及び凝集の程度が非常に低かった。特に、L-リシン水溶液のみを用いた場合(比較例1)に吸湿性が最も高いことが確認され、比較例1~6の組成物において、L-リシン水溶液の割合が増加するにつれて顆粒の吸湿性が増加することから、精製されたL-リシンの極性が顆粒の吸湿性を増加させることが分かった。
【0085】
一方、実施例1~6の組成物において、中和L-リシン水溶液の割合が増加するにつれて水分含有量及び凝集の程度が減少した。すなわち、顆粒中のHCO の割合が高くなるにつれて、L-リシンの極性が緩和され、顆粒の吸湿性が改善されることを示す。特に、顆粒中のHCO /L-リシンのモル比が0.1以下のレベルに減少すると、固化性が急激に増加するので、固化性の問題を解決するためには、HCO /L-リシンのモル比が0.1を超えるようにしなければならないことが分かった。
【0086】
よって、実施例1~6の組成物により、顆粒中のHCO のモル比が0.1超、0.52以下であれば、顆粒の吸湿性が緩和されると共に、吸湿による凝集現象が緩和されることが確認された。
【0087】
実施例7
気泡塔を用いた中和アミノ酸水溶液の作製
塩基性アミノ酸の例としてL-リシンを用いて、実施例1~6の1.1.と同様にL-リシン水溶液を作製し、その後図2に示す気泡塔装置を用いて、アミノ酸水溶液を中和させた。具体的には、前記L-リシン水溶液35kgを中和槽に投入し、その後温度50℃の条件で5体積%の二酸化炭素を含む気体を500rpmの攪拌条件、1000L/分で1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0又は6.0時間注入して中和したL-リシン水溶液(中和アミノ酸水溶液)を作製した。中和したL-リシン水溶液は、前記L-リシン水溶液にHCO 又はCO 2-をさらに含むものである。HCO 又はCO 2-の濃度をHPLC(Waters社,2478)で分析した。二酸化炭素の注入時間によるL-リシン水溶液の物性変化を表7に示す。
【0088】
【表7】
【0089】
表7に示すように、二酸化炭素の注入時間が増加するにつれて、L-リシン水溶液のpH及び純度が減少し、比重及び水溶液中のHCO イオンの濃度が増加することが確認された。また、上記条件に従って二酸化炭素を6時間注入すると、純度が81.8%の高含有量塩基性アミノ酸水溶液が作製されることが確認された。
【0090】
実施例8~13.
気泡塔を用いた顆粒状飼料添加剤の製造及び特性分析(2)
1.顆粒状飼料添加剤の製造
塩基性アミノ酸の例としてL-リシンを用いて、実施例1~6の1.1.と同様にL-リシン水溶液を作製し、その後図2に示す気泡塔装置を用いて、二酸化炭素を含む気体を1、4、5、6、10又は20時間注入したことを除いて、実施例7と同様に中和アミノ酸水溶液を作製した。その後、前述した中和したL-リシン水溶液のそれぞれを流動層循環造粒機に5~10mL/分で注入し、ノズル圧力1.2kg/cmで75~80℃の造粒機の内部に噴霧して顆粒化した。作製された顆粒を篩分けにより0.5~1.5mmの大きさに選別した。
【0091】
2.顆粒状飼料添加剤の特性分析
前記1.で作製した顆粒を三次蒸留水(0.9μS/cm)に溶解し、その後顆粒中のL-リシン及び重炭酸イオン濃度をHPLC(Waters社,2478)で分析した。また、凝集の程度は、各顆粒を40℃の温度及び60%の相対湿度で1週間保管し、その後肉眼で評価した。その結果を表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
表8に示すように、二酸化炭素注入、L-リシン中和を経て作製した顆粒において、中和が進む(pH減少)につれて、顆粒のL-リシン含有量は減少し、重炭酸イオン含有量は増加した。具体的には、二酸化炭素を注入してpH9.0まで中和させると、顆粒含有量はL-リシン塩酸塩(含有量79%)レベルよりL-リシン含有量が多い状態に作製することができ、pH8.5においては、L-リシン塩酸塩と同等レベルに作製することができることが確認された。しかし、pH9.3以上において顆粒を作製すると、吸湿による凝集の程度がL-リシン塩酸塩と比較して不良であることが確認されたので、適正レベルのL-リシン含有量と凝集の問題の解決が同時に得られるpHの範囲は8.5~9.3であることが分かった。
【0094】
実施例14
循環式吸収塔を用いた中和アミノ酸水溶液の作製
顆粒状飼料添加剤の製造において、アミノ酸水溶液の中和速度を向上させるために、循環式吸収塔を用いて中和アミノ酸水溶液を作製した。図3は循環式吸収塔を用いてアミノ酸水溶液を中和する方法を示す図である。以下、図3を参照して、各ステップを具体的に説明する。
【0095】
実施例1~6の1.1.と同様にL-リシン水溶液を作製し、その後二酸化炭素を含む気体を注入して中和したL-リシン水溶液を作製した。具体的には、50℃に加温した35kgのリシン水溶液を60kg/hの速度で吸収塔の上部から下部に流し、吸収塔の内部を循環させると共に、5体積%の二酸化炭素を含む気体を1000L/分で吸収塔の下部から注入した。直径158.4mm、高さ6400mm(12段)の構造化パッキング(Structured Packing; TPT Pacific; Surface Area 250 m2/m3)を含むトレイ(Tray)タイプの吸収塔を用いた。
【0096】
その結果、L-リシン水溶液がpH8.9のレベルに達するのに2時間かかることが確認された。すなわち、循環式吸収塔を用いて二酸化炭素を注入すると、気体・液体接触面積の増加により、実施例1~13のように気泡塔装置を用いた場合より、約3倍早く塩基性アミノ酸を中和させることができることが確認された。
【0097】
実施例15
連続式吸収塔を用いた中和アミノ酸水溶液の作製
顆粒状飼料添加剤の製造において、一定の物性の中和アミノ酸水溶液を連続して得るために、連続式吸収塔を用いて中和アミノ酸水溶液を作製した。図4は連続式吸収塔を用いてアミノ酸水溶液を中和する方法を示す図である。以下、図4を参照して、各ステップを具体的に説明する。
【0098】
実施例1~6の1.1.と同様にL-リシン水溶液を作製し、その後二酸化炭素を含む気体を注入して中和したL-リシン水溶液を作製した。具体的には、50℃に加温したL-リシン水溶液(濃度560g/L,pH10.2,比重1.13,純度95重量%)を30kg/hで流し、5%二酸化炭素を含む気体の注入速度を調節した。各気体注入速度において正常状態(steady state)で連続式吸収塔から排出されるL-リシン水溶液の物性を表9に示す。
【0099】
【表9】
【0100】
その結果、表9に示すように、二酸化炭素を含む気体の注入速度が増加するにつれて、正常状態(steady state)で排出されるL-リシン水溶液のpHと純度は減少し、重炭酸イオン濃度は増加することが確認された。特に、1000L/分で注入すると、排出されるL-リシン水溶液のpHは8.8、重炭酸イオン濃度は122g/Lであり、純度はL-リシン塩酸塩と同等の高含有量レベルである80%であった。これらの結果は、連続式吸収塔を用いると、気体注入速度を調節することにより、所望のpH範囲又は純度範囲を有する中和アミノ酸水溶液が得られることを示すものである。
図1
図2
図3
図4