(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
B01J 27/053 20060101AFI20240508BHJP
B01J 27/182 20060101ALI20240508BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240508BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240508BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240508BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20240508BHJP
B01J 37/30 20060101ALI20240508BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20240508BHJP
C07C 2/16 20060101ALI20240508BHJP
C07C 6/12 20060101ALI20240508BHJP
C07C 9/16 20060101ALI20240508BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20240508BHJP
C07C 29/34 20060101ALI20240508BHJP
C07C 39/07 20060101ALI20240508BHJP
C07C 41/06 20060101ALI20240508BHJP
C07C 41/09 20060101ALI20240508BHJP
C07C 43/06 20060101ALI20240508BHJP
C07C 43/184 20060101ALI20240508BHJP
C07C 45/29 20060101ALI20240508BHJP
C07C 47/11 20060101ALI20240508BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20240508BHJP
C07C 69/88 20060101ALI20240508BHJP
C07C 201/08 20060101ALI20240508BHJP
C07C 205/06 20060101ALI20240508BHJP
C07C 209/02 20060101ALI20240508BHJP
C07C 211/35 20060101ALI20240508BHJP
C07D 213/133 20060101ALI20240508BHJP
C07D 213/16 20060101ALI20240508BHJP
C07D 223/10 20060101ALI20240508BHJP
C07D 239/74 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B01J27/053 Z
B01J27/182 Z
B01J35/60 G
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/10
B01J37/30
B01J37/34
C07C2/16
C07C6/12
C07C9/16
C07C15/06
C07C29/34
C07C39/07
C07C41/06
C07C41/09
C07C43/06
C07C43/184
C07C45/29
C07C47/11
C07C67/08
C07C69/88
C07C201/08
C07C205/06
C07C209/02
C07C211/35
C07D213/133
C07D213/16
C07D223/10
C07D239/74
(21)【出願番号】P 2022555705
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2020095190
(87)【国際公開番号】W WO2021179458
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】202010177579.4
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508085671
【氏名又は名称】湘潭大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】羅和安
(72)【発明者】
【氏名】游奎一
(72)【発明者】
【氏名】曽伊白
(72)【発明者】
【氏名】文敬濱
(72)【発明者】
【氏名】張雅晴
(72)【発明者】
【氏名】袁欣雅
(72)【発明者】
【氏名】艾秋紅
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-287563(JP,A)
【文献】特開平08-047641(JP,A)
【文献】特表2008-535663(JP,A)
【文献】米国特許第07045481(US,B1)
【文献】RADWAN et al.,Catalytic Activity of Sulfated and Phosphated Catalysts towards the Synthesis of Substituted Coumarin,Catalysts,2018年01月19日,Vol.8, No.1,p.36(1-18)
【文献】D' SAUZA et al.,Vapour phase transesterification over solid acids for the synthesis of isoamyl salicylate,Indian Journal of Chemical Techn ology,2004年05月31日,Vol.11,p.401-409
【文献】WANG et al.,Synthesis of 4,4 -Methylene Diphenyl Dimethylcarbamate Catalyzed by Silica-Suppor ted Sulfuric Acid,Petrochemical Technology,2009年01月15日,Vol.38, No.1,p.82-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 27/053
B01J 27/182
B01J 35/60
B01J 37/04
B01J 37/08
B01J 37/10
B01J 37/30
B01J 37/34
C07C 2/16
C07C 6/12
C07C 9/16
C07C 15/06
C07C 29/34
C07C 39/07
C07C 41/06
C07C 41/09
C07C 43/06
C07C 43/184
C07C 45/29
C07C 47/11
C07C 67/08
C07C 69/88
C07C 201/08
C07C 205/06
C07C 209/02
C07C 211/35
C07D 213/133
C07D 213/16
C07D 223/10
C07D 239/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子形態又は粉末形態である無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)であって、
スルホン酸基及
びリン酸基を含まないケイ素含有基質である基質成分(A)と
スルホン酸基及び/又はリン酸基を含む無機シリルスルホン酸及び/又はリン酸であるケイ酸成分(B)と、を含み、
そのうち、上記シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)における基質成分(A)は、(1)メタケイ酸、(2)シリカゲル及び(3)二酸化ケイ素からなる群であるケイ素含有基質成分のうちの一つ又は二つ又は三つを含むか、又はから選ばれ、
そのうち、スルホン酸基及び/又はリン酸基を含む無機シリルスルホン酸及び/又はリン酸は、一般式(I)を有する化合物、一般式(II)を有する化合物及び一般式(III)を有する化合物
から選ばれる一つ又は複数を含み、
【化1】
式中、-AG
1及び-AG
2は、それぞれ独立して-O-SO
3H、-O-PO
3H
2又は-OHであり、そして-AG
1と-AG
2の両方が-OHであることはなく、
そのうち固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.4-7.0mmol/gであり、
前記酸量とは、固体酸触媒(h-SSA)において共有結合で結合したスルホン酸基及びリン酸基に対して測定された酸量を意味し、
そのうち固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、15-700μmである、無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)。
【請求項2】
固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.6-5.8mmol/gであり、
及び/又は
固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、30-550μmである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.8-5.0mmol/gであり、
及び/又は
固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、40-450μmである、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記ケイ酸成分(B)は、
一般式(I)を有する化合物60-100wt%と、
一般式(II)を有する化合物0-40wt%と、
一般式(III)を有する化合物0-30wt%と、を含み、
ここで、この重量百分比は、ケイ酸成分(B)に対しての総重量である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記ケイ酸成分(B)は、
一般式(I)を有する化合物70-100wt%と、
一般式(II)を有する化合物0-30wt%と、
一般式(III)を有する化合物0-20wt%と、を含み、
ここで、この重量百分比は、ケイ酸成分(B)に対しての総重量である、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
一般式(I)を有する化合物と、一般式(II)を有する化合物と、一般式(III)を有する化合物との重量の和は、ケイ酸成分(B)に対して総重量の85-100wt%であり、及び/又は
成分(A)と(B)との重量の和は、触媒(h-SSA)の総重量の90-100wt%であり、及び/又は
ケイ酸成分(B)と基質成分(A)との重量の比は、0.02-8:1であり、及び/又は
固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、50-350μmであり、及び/又は
固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、1.0-4.8mmol/gである、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
-AG
1及び-AG
2は、それぞれ独立して-O-SO
3H又は-OH、又は-O-PO
3H
2又は-OHであり、そして-AG
1と-AG
2の両方が-OHであることはなく、及び/又は
この固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、1.0-5.0mmol/gであり、及びこの固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、45-400μmであり、及び/又は
一般式(I)を有する化合物と、一般式(II)を有する化合物と、一般式(III)を有する化合物との重量の和は、ケイ酸成分(B)に対して総重量の90-100wt%であり、及び/又は
成分(A)と(B)との重量の和は、触媒(h-SSA)の総重量の95-100wt%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
ケイ素基質が二酸化ケイ素基質である固体酸触媒粒子(h-SSA)の抗圧潰強さは、165-260Nの範囲内にあり、及び/又は
固体酸触媒(h-SSA)における二酸化ケイ素基質のアルカリ金属の含有量は、0-300ppmであり、及び/又は
この固体酸触媒(h-SSA)のBET比表面積は、50-800m
2/gであり、及び/又は
この固体酸触媒(h-SSA)の細孔容積は、50-700cm
3/gであり、及び/又は
この固体酸触媒(h-SSA)の平均孔直径は、4-100nmであり、及び/又は
一般式(I)を有する化合物と、一般式(II)を有する化合物と、一般式(III)を有する化合物との重量の和は、ケイ酸成分(B)に対して総重量の95-100wt%であり、及び/又は
成分(A)と(B)との重量の和は、触媒(h-SSA)の総重量の98-100wt%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
請求項1に記載の無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒を製造する方法であって、この方法は、
(B)メタケイ酸のスルホン化及び/又はリン酸化を含み、粒子状メタケイ酸(H
2SiO
3)原料をスルホン化剤及び/又はリン酸化剤と反応させ、反応生成物を分離し、及び、この生成物を水又は有機溶媒で洗浄し、そして乾燥し、乾燥した無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸粒子(h-SSA)を得、
そのうち、スルホン化剤及び/又はリン酸化剤は、メタケイ酸に対しての使用量に基づいて、この乾燥であるが未焼成の固体酸触媒(h-SSA)の酸量が0.4-7.0mmol/gとなる、方法。
【請求項10】
前記方法は、
(C)焼成工程をさらに含み、工程(B)で得られた乾燥した粒子状シリルスルホン酸及び/又はリン酸固体を焼成し、無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)を得、
そのうち、焼成温度は、120~600℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、
(A)粒子状
又は粉末状メタケイ酸H
2SiO
3原料を製造する工程をさらに含み、ケイ素源を無機酸とイオン交換反応又は加水分解反応させ、オルソケイ酸(H
4SiO
4)ゲル又はゾルを得、オルソケイ酸ゲル又はゾルを静置して結晶化させ、粒子状オルソケイ酸(H
4SiO
4)ゲルを含む溶液を得、そしてこの溶液をろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで水で洗浄し、分離されたゲルを乾燥し、乾燥した粒子状の又は粉末状のメタケイ酸(H
2SiO
3)原料を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(A)におけるケイ素源は、ケイ酸塩、ケイ酸エステル及びシリカゲルのうちの一つ又は複数であり、及び/又は
工程(A)で使用される無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸のうちの一つ又は複数であり、及び/又は
工程(A)において、ケイ素源物質と無機酸とのモル比は、0.01~2.0:1、及び/又は
工程(B)において、前記メタケイ酸と前記スルホン化剤及び/又はリン酸化剤とのモル比は、0.01~4.0:1、及び/又は
工程(B)において、スルホン化反応の温度は、20℃~200℃であり、及び/又は
上記工程(B)又は工程(A)は、攪拌下又は攪拌上で超音波又はマイクロ波の作用下で行われており、及び/又は
工程(C)における焼成温度は、200~480℃である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒を製造する方法であって、この方法は、
ケイ素源を無機酸とイオン交換反応又は加水分解反応させ、オルソケイ酸(H
4SiO
4)ゲル又はゾルを得る工程と、
オルソケイ酸ゲル又はゾルを静置して結晶化させ、粒子状オルソケイ酸(H
4SiO
4)ゲルを含む溶液を得、そしてこの溶液をろ過し、得られたケーキを濾液が中性になるまで水で洗浄し、分離されたゲルを乾燥し、乾燥した粒子状又は粉末状のメタケイ酸(H
2SiO
3)原料を得る工程と、
そして、乾燥した粒子状
又は粉末状メタケイ酸(H
2SiO
3)原料をスルホン化剤及び/又はリン酸化剤でスルホン化及び/又はリン酸化し、得られた反応混合物をろ過し、得られたケーキを濾液が中性になるまで水又は有機溶媒で洗浄し、分離された粒子状スルホン化及び/又はリン酸化固体を乾燥し、乾燥した無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸粉末を得る工程と
最後に、無機固体酸粉末を焼成して固体酸触媒(h-SSA)を得る工程と、を含む、方法。
【請求項14】
異性化反応、エステル化反応、アルキル化反応、オレフィンのヒドロアミノ化反応、縮合反応、硝化反応、エーテル化反応、アルコールのアミン化反応、β-エナミンケトンを製造する反応、多成分反応、酸化反応
又は付加反応
の方法であって、前記方法は、請求項1に記載の無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒を用いる、方法。
【請求項15】
粒子形態又は粉末形態である無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)であって、
スルホン酸基及び/又はリン酸基を含む無機シリルスルホン酸及び/又はリン酸であるケイ酸成分を含み、
スルホン酸基及び/又はリン酸基を含む無機シリルスルホン酸及び/又はリン酸は、一般式(I)を有する化合物、一般式(II)を有する化合物及び一般式(III)を有する化合物から選ばれる一つ又は複数であり、
【化2】
式中、-AG
1
及び-AG
2
は、それぞれ独立して-O-SO
3
H、-O-PO
3
H
2
又は-OHであり、そして-AG
1
と-AG
2
の両方が-OHであることはなく、
固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.4-7.0mmol/gであり、前記酸量とは、固体酸触媒(h-SSA)において共有結合で結合したスルホン酸基及びリン酸基に対して測定された酸量を意味し、
固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、15-700μmである、無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、高酸量を有する純無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒材料、及びその製造方法と応用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
統計によると、化学品の約85%は、触媒プロセスによって生産され、大量の触媒材料の開発と応用は、化学工業の急速な発展を遂げている。以前、新規な触媒材料の製造プロセス、活性、寿命及びコストなどを開発していたが、環境などの潜在的な要素を考慮することは極めて少ない。21世紀に入ってから、科学技術革新と環境保全とを結合し、企業の高効率と社会の高収益の同期的な成長及び持続可能な発展を実現することは、人々が追う目標になってきているため、グリーン触媒プロセス及び環境に優しい触媒材料の開発が研究の焦点になってきている。液体酸触媒の代わりに固体酸を利用することは、環境に優しい触媒応用を実現する最も重要な手段の一つである。固体酸触媒は、金属有機錯体触媒に対して、その製造過程がより容易であり、反応後、反応系から分離されやすく、触媒の回収と繰り返し使用が可能である。特に、若干の固体スルホン酸触媒は、特殊な構造、高い酸強度と酸量を有し、固体スルホン酸触媒に良好な活性と選択性を付与し、特殊な性能を持たせ、ケトオキシム又はアルドオキシムのベックマン転位反応、エステル化反応、アルキル化反応、オレフィンのヒドロアミノ化反応、縮合反応、硝化反応、エーテル化反応、多成分反応及び酸化反応などの多くの酸触媒の有機反応分野に広く用いられている。そのため、固体スルホン酸触媒材料の有機反応への触媒についての発展、研究は、重要な学術研究価値と広い応用の将来性がある。
【0003】
現在研究されているのは、有機系の固体スルホン酸触媒材料、例えばポリスチレン系スルホン酸樹脂、パーフルオロスルホン酸樹脂、脂肪スルホン酸基強酸性陽イオン交換樹脂などを含みる。従来の製造方法は、スルホン酸基がフェニル環に直接接合しているため、官能基の自由度が悪く、且つ芳香族スルホン酸樹脂のスルホン化逆反応による樹脂の使用寿命が低下した。また、多くの有機溶媒反応系において、このようなスルホン酸樹脂は、膨潤して破砕することが極めて発生しやすく、スルホン酸基が脱落しやすく、触媒が不活化しやすく、工業への実用が制限されている。
【0004】
他の無機系の固体スルホン酸触媒材料、例えばシリカゲル~スルホン酸(SSAと略称される)は、無機固体プロトン酸の一つである。一般的に、表面水酸基数が相対的に少ないシリカゲル(二酸化ケイ素、silica gel)を原料として用い、シリカゲル表面上の限られた数の水酸基とクロロ硫酸とを反応させることにより、二酸化ケイ素-スルホン酸(SiO2-SO3H)触媒を製造する。このような固体酸触媒材料は、酸触媒の反応(例えば縮合反応、置換反応、エステル化反応、酸化反応など)に対して、いずれも比較的に高い反応活性と比較的に良い選択性を示している。シリカゲル(silica gel又は二酸化ケイ素)とスルホン化剤との反応によって製造され、洗浄されていない二酸化ケイ素-スルホン酸粒子(SiO2-SO3H、略称:シリカスルホン酸)が比較的に高い酸量を有するが、実際には、シリカゲル又は二酸化ケイ素の表面に大量の酸が吸着されており、吸着された酸は、二酸化ケイ素粒子に共有結合で結合しているわけではない。シリカゲル表面の水酸基数が少なすぎるため、シリカゲル粒子表面上に結合するスルホン酸基の量が制限され、シリカスルホン酸粒子の酸量は低い。この二酸化ケイ素-スルホン酸粒子(SiO2-SO3H)を水で洗浄して吸着した酸を除去した後、シリカゲル-スルホン酸粒子の酸量は、一般に0.14mmol/g未満であり、酸量は、0.15mmol/gに達しにくく、0.18mmol/gより達しにくく、ほとんど0.20mmol/gが達されない。
【0005】
US3929972Aは、粒子状アルカリ金属メタケイ酸塩(例えばsodium or potassium metasilicate pentahydrate)を濃硫酸でスルホン化することにより、シリル硫酸(Silico-dihydrogen sulphate)を製造する方法を開示している。スルホン化反応の早期では、軟皮-硬芯型(soft skin-rigid core type)の一次スルホン化粒子(その酸量は、一般に0.50 mmol/g未満である)を形成し、そのうち、軟皮は、メタケイ酸と少量のシリルスルホン酸(SiO(HSO4)2)とからなるゾル-ゲルであり、硬芯は、メタケイ酸ナトリウム結晶体である。一次スルホン化粒子は、スラリー状を呈し、その機械的強度は低い。スルホン化反応の継続に伴い、シリルスルホン酸(SiO(HSO4)2)分子が粒子の表面から連続的に離脱して硫酸溶液中に入り、硬芯のサイズが徐々に縮小して最終的に消失し(即ち塩基性のメタケイ酸ナトリウム結晶体基質が硫酸で溶解される)、単分子形態又はナノスケールサイズの小粒子形態の化合物SiO(HSO4)2を含む混合物が得られる。上記一次スルホン化粒子の焼成により得られた粒子は、酸性の反応系において触媒として機能することができず、塩基性のメタケイ酸ナトリウム基質が酸による腐食に耐えないためである。
【0006】
また、近年、いくつかの研究者がアルキル変性のシリカスルホン酸触媒材料、例えばシリカゲルプロピルスルホン酸とシリカゲルベンゼンスルホン酸などを用いた場合もある。このような触媒材料の製造では、一定量のテンプレート剤、例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとシリル化剤、例えばγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、モノフェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシランなどを添加する必要がある。アルキル変性の固体シリカスルホン酸触媒材料を得るために、酸化剤としてコストの高い過酸化水素を一定量添加する必要がある。このような触媒材料の製造過程は、複雑で、コストが比較的に高く、しかもその構造中に依然としてアルキル鎖を含み、有機反応において一定の膨潤性能を有し、そのスルホン酸基が不安定で、脱落しやすくなり、不活化されるおそれがある。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、純無機系の固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸(silicon-based sulfonic acid and/or phosphoric acid)触媒材料及びその製造方法を提供することである。この方法は、水酸基が表面に富むメタケイ酸固体を出発原料とし、スルホン化試薬及び/又はリン酸化剤を化学結合の形式によりスルホン酸基及び/又はリン酸基を無機ケイ素材料上に結合させ、高酸量を有する純無機系の固体シリルスルホン酸/リン酸触媒材料(h-SSA)、即ち:固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸(solid silico-sulfonic acid and/or -phosphoric acid)を得る工程を含む。
【0008】
本出願の発明者は、意外に、スルホン化試薬及び/又はリン酸化剤を用いて、水酸基が表面に富むメタケイ酸固体をスルホン化及び/又はリン酸化することにより、高酸量を有するスルホン化及び/又はリン酸化の粒子状メタケイ酸固体を得るとともに、粒子状メタケイ酸固体粒子の構造と粒子形状を損なうことがなく、メタケイ酸粒子のサイズを変化させることもなく、又は殆ど変化させないことを見出した。そして、更に乾燥と焼成することにより、高酸量と機械的強度の高い固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸粒子又は粉末を得る。スルホン化及び/又はリン酸化の粒子状メタケイ酸粒子が、焼成を行わずに比較的に高い温度(例えば200℃より高い)でのみ乾燥される場合、粒子内部のメタケイ酸基質をシリカゲル基質(水を含む)に変換する可能性があるが、シリカゲル基質を含む固体スルホン酸及び/又はリン酸粒子は、依然として高酸量を有する。
【0009】
本願では、無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)は、高酸量を有する(無機)固体酸触媒又は(無機)固体ケイ酸(solid siilico-acid with high surface-acidity、略称:h-SSA)と呼ばれてもよい。
【0010】
本願では、AGは、acid group(酸基)の略語である。また、シリルスルホン酸(silico-sulfonic acid)とシリル硫酸(silico-sulfuric acid)は、同等の概念であり、そして両者は互換的に使用される。ケイ酸(silico-acid)成分は、シリルスルホン酸及び/又はリン酸(silico-sulfonic acid and/or -phosphoric acid
catalyst又はsilicon-based sulfonic acid and/or phosphoric acid catalyst)を含む。
【0011】
本発明の一番目の実施形態によれば、本発明は、無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA) (silico-sulfonic acid and/or -phosphoric acid catalyst)を提供する。この固体酸触媒(h-SSA)は、
スルホン酸基及び/又はリン酸基を含まないケイ素含有基質(Si-containing substrate)である基質成分(A)と、
(共有結合で結合したもの)スルホン酸基及び/又はリン酸基を含む無機シリルスルホン酸及び/又はリン酸(silico-sulfonic acid and/or -phosphoric acid)であるケイ酸成分(B)、即ち、
【0012】
【0013】
を有する無機ケイ素・酸素(silico-oxide)化合物類とを含み、
そのうち、上記シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)における基質成分(A)は、(1)メタケイ酸(即ち、透明ガラス状固体)、(2)シリカゲル及び(3)二酸化ケイ素からなる群であるケイ素含有基質成分のうちの一つ又は二つ又は三つを含むか、又はから選ばれる。
【0014】
この固体酸触媒(h-SSA)は、粒子形態又は粉末形態を呈する。ケイ酸成分(B)は、触媒粒子の表面に位置し、ケイ素基質成分(A)は、触媒粒子の内部に位置する。
【0015】
スルホン酸基及び/又はリン酸基を含む無機シリルスルホン酸及び/又はリン酸として、前記ケイ酸成分(B)は、一般式(I)を有する化合物、一般式(II)を有する化合物及び一般式(III)を有する化合物を含み、又は前記ケイ酸成分(B)は、一般式(I)を有する化合物、一般式(II)を有する化合物及び一般式(III)を有する化合物からなる群から選ばれる一つ又は複数であり、又は前記ケイ酸成分(B)(主に)は、一般式(I)を有する化合物、一般式(II)を有する化合物及び一般式(III)を有する化合物のうちの一つ又は複数からなる:
【0016】
【0017】
式中、-AG1及び-AG2は、それぞれ独立して-O-SO3H、-O-PO3H2又は-OHであり、そして-AG1と-AG2の両方が-OHであることはない。好ましくは、-AG1及び-AG2は、それぞれ独立して-O-SO3H又は-OH、又は-O-PO3H2又は-OHであり、そして-AG1と-AG2の両方が-OHであることはない。
【0018】
本願では、ケイ素含有基質とケイ素基質(silicon substrate or
siliceous substrate or Si substrate)は、同義である。
【0019】
固体酸触媒(h-SSA)の酸量(触媒の単位質量当りの水素イオンモル量)は、0.25-8.4 mmol/g、好ましくは0.3-8.2、好ましくは0.35-8、好ましくは0.4-7.8、好ましくは0.5-7.6、好ましくは0.6-7.5、好ましくは0.7-7.3、好ましくは0.8-7.0、好ましくは0.9-6.8、好ましくは1.0-6.5、好ましくは1.1-6.3、好ましくは1.2-6.0、好ましくは1.3-5.8、好ましくは1.4-5.6、好ましくは1.5-5.4、好ましくは1.6-5.2、好ましくは1.8-5.3、好ましくは2.0-5.1、好ましくは2.2-5.0、好ましくは2.4-4.8、例えば3又は4 mmol/gである。
【0020】
固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、1 μm - 10mm、好ましくは3 μm - 5mm、好ましくは5 μm - 1mm、好ましくは7- 800 μm、好ましくは10- 750 μm、より好ましくは15- 700 μm、より好ましくは20- 650 μm、より好ましくは25- 600 μm、より好ましくは30- 550 μm、より好ましくは35- 500 μm、より好ましくは40- 450 μm、より好ましくは45- 400 μm、より好ましくは50- 350 μm、より好ましくは55- 320 μm、例えば60、70、80、90、100、110、120、130、150、170、180、190、200、220、240、260、280又は300 μmである。触媒の粒度が小さすぎると、ろ過回収や再利用に不利である。また、なんらかの連続反応において、固体酸触媒の粒径(例えばナノスケールの粒径)が小さすぎると、反応器の出口や配管を閉塞し、反応器内部の圧力を増大させ、爆発事故を引き起こすおそれがある。好ましくは、その平均粒径は、40 μm又は50 μm又は60 μmよりも大きい。
【0021】
本願では、出発原料としての固体メタケイ酸及び/又はリン酸粉末又は粒子は、固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒生成物(h-SSA)と同じ又は類似の平均粒径を持つ。
【0022】
酸量とは、水素イオンモル量/単位あたりの無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)質量を意味する。
【0023】
好ましくは、この固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、1.0-7.2 mmol/gであり、好ましくは1.3-6.8、好ましくは2.0-6.5、好ましくは2.1-6.3、好ましくは2.2-6.0、好ましくは2.3-5.8、好ましくは2.4-5.6、好ましくは2.5-5.4、好ましくは2.6-5.2、好ましくは2.7-5.3、好ましくは2.8-5.1、好ましくは2.9-5.0、好ましくは3.0-4.8、例えば3.4、3.6、4又は4.4 mmol/gであり、そして、この固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、20-600 μm、好ましくは35-550 μm、好ましくは40-500 μm、好ましくは45-450 μm、好ましくは50-400 μm、好ましくは55-320 μm、好ましくは60-320 μm、例えば70、80、90、100、110、120、130、150、170、180、190、200、220、240、260、280又は300 μmである。
【0024】
より好ましくは、固体酸触媒(h-SSA)の平均粒径は、50 - 400 um、より好ましくは55 - 350 um、例えば60、70、80、90、100、110、120、130、150、180、200、230、250、280又は300umであり、そして、その酸量は、1.0-6.5 mmol/g、好ましくは1.1-6.3、好ましくは1.2-6.0、好ましくは1.3-5.8、好ましくは1.4-5.6、好ましくは1.5-5.4、好ましくは1.6-5.2、好ましくは1.8-5.3、好ましくは2.0-5.1、好ましくは2.2-5.0、好ましくは2.4-4.8 mmol/g、例えば3又は4 mmol/gである。
【0025】
好ましくは、基質成分(A)がメタケイ酸固体(即ち、透明ガラス状固体)及び/又はシリカゲルである場合、この固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.25-7.6 mmol/g、好ましくは0.3-7.5、より好ましくは0.35-7.4、より好ましくは0.4-7.2、より好ましくは0.45-7.0、好ましくは0.5-6.8、好ましくは0.55-6.6、好ましくは0.6-6.2、好ましくは0.65-5.8、好ましくは0.7-5.4、好ましくは0.75-5.0、好ましくは0.8-4.8である。
【0026】
好ましくは、基質成分(A)が二酸化ケイ素基質である場合、この固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.25-8.2 mmol/g、好ましくは0.3-8.0 mmol/g、好ましくは0.35-7.8 mmol/g、より好ましくは0.4-7.6 mmol/g、より好ましくは0.45-7.4 mmol/g、より好ましくは0.5-7.2 mmol/g、好ましくは0.55-7.0、好ましくは0.6-6.8、好ましくは0.65-6.6、好ましくは0.7-6.2、好ましくは0.75-5.8、好ましくは0.8-5.4、好ましくは0.85-5.2、好ましくは0.9-5.0である。
【0027】
粒子状触媒(h-SSA)中の基質成分(A)が二酸化ケイ素基質を含む場合、または基質成分(A)が二酸化ケイ素基質である場合、この固体酸触媒(h-SSA)は、スルホン酸化及び/又はリン酸化のメタケイ酸粒子から焼成によって得られたものであり、より好ましくは、このスルホン酸化及び/又はリン酸化のメタケイ酸粒子の乾燥と焼成によって得られたものである。
【0028】
一般的に、(A)と(B)との重量の和は、触媒(h-SSA)総重量の80-100wt%、好ましくは83-100wt%、好ましくは85-100wt%、好ましくは87-100wt%、好ましくは90-100wt%、例えば93、95、97又は98又は99wt%である。この粒子状触媒(h-SSA)は、(A)及び(B)以外の少量(例えば、0-20wt%、0-15wt%、0-10wt%、0-5wt%又は1-3wt%)の他の物質又は不純物をさらに含むことも可能である。
【0029】
好ましくは、ケイ酸(silico-acid)成分(B)と基質成分(A)との重量の比は、0.02-20 : 1であり、好ましくは0.04-18 : 1、好ましくは0.08-15 : 1、好ましくは0.15-12 : 1、好ましくは0.2-10 : 1、好ましくは0.25-9.5 : 1、好ましくは0.3-9 : 1、好ましくは0.35-8.5 : 1、好ましくは0.4-8 : 1、好ましくは0.5-7.5 : 1、好ましくは0.6-7 : 1、例えば0.8 : 1、0.9 :
1、1 : 1、1.2 : 1、1.5 : 1、2 : 1、2.5 : 1、3
: 1、3.5 : 1、4 : 1、4.5 : 1、5 : 1、5.5 : 1、6 : 1、6.5 : 1である。
【0030】
好ましくは、前記ケイ酸成分(B)は、
60-100wt%(好ましくは63-100wt%、好ましくは65-100wt%、好ましくは68-100wt%、好ましくは70-100wt%、好ましくは75-100wt%、好ましくは80-100wt%、例えば85、90、95又は98wt%)の一般式(I)を有する化合物と、
0-40wt%(好ましくは0-37wt%、好ましくは0-35wt%、好ましくは0-32wt%、好ましくは0-30wt%、好ましくは0-25wt%、好ましくは0-20wt%、例えば15、10、5又は2wt%)の一般式(II)を有する化合物と、
0-30wt%(好ましくは0-27wt%、好ましくは0-25wt%、好ましくは0-22wt%、好ましくは0-20wt%、好ましくは0-15wt%、好ましくは0-10wt%、例えば8、5又は2 wt%)の一般式(III)を有する化合物と、を含み、
そのうち、この重量百分比は、ケイ酸成分(B)に対して総重量である。
【0031】
好ましくは、一般式(I)を有する化合物と、一般式(II)を有する化合物と、一般式(III)を有する化合物との重量の和は、ケイ酸成分(B)に対して総重量の80-100wt%、好ましくは83-100wt%、好ましくは85-100wt%、好ましくは87-100wt%、好ましくは90-100wt%、例えば93、95、97又は98又は99wt%である。このケイ酸成分(B)は、一般式(I)、(II)と(III)化合物以外の少量(例えば、0-20wt%、0-15 wt%、0-10 wt%、0-5wt%又は1-3wt%)のポリケイ酸成分及び/又は不純物をさらに含むことも可能である。
【0032】
好ましくは、一般式(I)化合物と、一般式(II)化合物と一般式(III)化合物とのモル比は、1 : (0-0.7) : (0-0.3)、好ましくは1 : (0.01-0.6) : (0-0.25)、好ましくは1 : (0.05-0.55)
: (0-0.20)、好ましくは1 : (0.08-0.5) : (0-0.17) 、好ましくは1 : (0.1-0.45) : (0.002-0.15)、好ましくは1 : (0.12-0.4) : (0.005-0.10)である。
【0033】
本発明の固体酸触媒粒子(h-SSA)の抗圧潰強さは、60Nよりも大きく、好ましくは60-260N、好ましくは70-250N、好ましくは80-240N、好ましくは90-230N、例えば100N、110N、120N、130N、140N、150N、160N、165N、170N、173N、175N又は180Nである。
【0034】
より詳細には、メタケイ酸基質は、乾燥したメタケイ酸固体であり、シリカゲル基質は、乾燥したシリカゲルであり、又は、好ましくは、二酸化ケイ素基質は、アモルファス系の二酸化ケイ素(即ち、焼成二酸化ケイ素)である。好ましくは、焼成後の固体酸触媒(h-SSA)粒子の抗圧潰強さは、165Nよりも大きく、好ましくは165-260N範囲内、より好ましくは170-260N、好ましくは173-250N、好ましくは175-240N又は178-230N又は180-230Nの範囲内にある。
【0035】
一般的に、基質成分(A)は、上記(1)、(2)と(3)基質のうちのいずれかの二つ又は三つの基質からなる混合物又は結合物(combination)であってもよい。また、二酸化ケイ素基質中には、少量(例えば0-20wt%、好ましくは0-10wt%、好ましくは1-5wt%)の不純物(例えばシリカゲル)を含んでもよい。
【0036】
ここで言う酸量とは、固体酸触媒(h-SSA又はh-SSA-1)において共有結合で結合したスルホン酸基及び/又はリン酸基に対して測定された酸量、即ち、固体酸触媒(h-SSA又はh-SSA-1)には、吸着されたスルホン化剤(硫酸又はクロロ硫酸)及び/又はリン酸化剤(リン酸)を含まないか、又はほとんど含まないことを意味する。
【0037】
本願では、(乾燥の)メタケイ酸基質とは、80-100wt%(好ましくは85-100wt%、好ましくは90-100wt%、例えば92又は95又は97又は99wt%)のメタケイ酸を含むケイ素基質を意味する。このメタケイ酸基質は、不純物、例えばメタケイ酸ナトリウムを含んでいてもよく、好ましくは、メタケイ酸基質におけるアルカリ金属(例えばナトリウムとカリウム)含有量は、0-300ppm、好ましくは0-200ppm、好ましくは0-100ppm、好ましくは0-50ppm、好ましくは0-10ppmである。
【0038】
また、(焼成されたもの)固体酸触媒粒子における二酸化ケイ素基質とは、80-100wt%(好ましくは85-100wt%、好ましくは90-100wt%、例えば92又は95又は97又は99wt%)のアモルファス系二酸化ケイ素を含むケイ素基質を意味し、170N、例えば170-240N以上の抗圧潰強さを有させる。この二酸化ケイ素基質は、少量の不純物、例えばシリカゲルを含んでいてもよい。また、シリカゲル基質は、少量の不純物、例えばメタケイ酸を含んでいてもよい。好ましくは、二酸化ケイ素基質におけるアルカリ金属(例えばナトリウムとカリウム)含有量は、0-300ppm、好ましくは0-200ppm、好ましくは0-100ppm、好ましくは0-50ppm、好ましくは0-10ppmである。
【0039】
乾燥したメタケイ酸とは、室温(20℃)~150℃(好ましくは60~120℃、より好ましくは70-90℃)の温度下で乾燥されたメタケイ酸固体を意味する。好ましくは、乾燥は、減圧又は真空下で行われる。なお、乾燥温度が比較的に高い(例えば120-150℃)である場合、メタケイ酸の大部分のシリカゲルへの変換を防止するために、乾燥時間(例えば、一般に0.5-6時間、例えば0.5-2時間)を減少させる必要がある。
【0040】
焼成された二酸化ケイ素とは、乾燥したスルホン化/リン酸化メタケイ酸粒子を120℃以上の温度(例えば120~600℃、好ましくは150~500℃、より好ましくは200-480℃)下で焼成した後にメタケイ酸基質から形成する二酸化ケイ素基質を意味する。好ましくは、焼成は、不活性雰囲気で行われる。焼成された固体酸触媒において、二酸化ケイ素基質は、比較的に高い強度(例えば圧潰強さ又は耐摩耗性能)を持つ。
【0041】
本願では、シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(silico-sulfonic
acid and/or -phosphoric acid catalyst)は、シリルスルホン酸及び/又はシリルリン酸触媒(silico-sulfonic acid and/or silico-phosphoric acid catalyst)ともいう。シリルスルホン酸及び/又はリン酸は、シリルスルホン酸、シリルリン酸及びシリルスルホン酸+リン酸という3種類の物質を表す。
【0042】
本願では、基質成分(A)として、スルホン酸基及び/又はリン酸基を含まないケイ素含有基質とは、スルホン酸基(又は硫酸基)とリン酸基とを含まないケイ素含有基質を意味する。
【0043】
一般式(I)の化合物は、
【0044】
【0045】
からなる化合物群のうちの一つ又は複数を含むか、又は前記化合物群のうちの一つ又は複数である。
【0046】
一般式(II)の化合物は、一般式(I)の化合物の一縮合物である。一般式(II)の化合物は、
【0047】
【0048】
からなる化合物群のうちの一つ又は複数を含むか、又は前記化合物群のうちの一つ又は複数である。
【0049】
一般式(III)の化合物は、一般式(I)の化合物の二縮合物である。一般式(III)の化合物は、
【0050】
【0051】
からなる化合物群のうちの一つ又は複数を含むか、又は前記化合物群のうちの一つ又は複数である。
【0052】
本願では、ケイ酸成分(B)として、-AG1及び-AG2がそれぞれ独立して-O-SO3H又は-OHであり、そして-AG1と-AG2の両方が-OHであることはない場合、シリルスルホン酸化合物は、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)及び(IIIb)の化合物を含むか、又は前記化合物である。-AG1及び-AG2がそれぞれ独立して-O-PO3H2又は-OHであり、そして-AG1と-AG2の両方が-OHであることはない場合、シリルリン酸化合物は、一般式(Ic)、(Id)、(IIc)、(IId)、(IIIc)及び(IIId)の化合物を含むか、又は前記化合物である。シリルスルホン酸/リン酸化合物は、一般式(Ie)、(IIe)及び(IIIe)の化合物を含むか、又は前記化合物である。スルホン化剤とリン酸化剤とを両方用いる場合、得られた固体酸触媒(h-SSA)のケイ酸成分(B)は、すべての一般式(I)、(II)及び(III)の化合物を含む。
【0053】
焼成された粒子状触媒(h-SSA)を手のひらにつかんで揉み、砂質の手触りを明らかに感じ、そして粒子は、硬いものである。
【0054】
この固体酸触媒(h-SSA)のBET比表面積(BET surface area)は、50-800 m2/g、好ましくは100-600 m2/g、好ましくは150-500 cm3/g、好ましくは200-400 m2/gである。
【0055】
一般に、この固体酸触媒(h-SSA)の細孔容積(pore volume)は、50-700 cm3/g、好ましくは100-600 cm3/g、好ましくは130-550 cm3/g、好ましくは150-500 cm3/g、好ましくは160-400 cm3/g、好ましくは180-300 cm3/gである。
【0056】
一般的に、この固体酸触媒(h-SSA)の平均孔直径(pore diameter)は、4-100nm、好ましくは5-50nm、より好ましくは6-30nm、より好ましくは7-20nm、より好ましくは8-13nmである。
【0057】
好ましくは、本発明の固体酸触媒(h-SSA)は、以下の工程によって製造されたものである。ケイ素源を無機酸とイオン交換反応又は加水分解反応させ(好ましくは、反応において反応混合物のpH値を4.5-6.5、好ましくは5~6に制御する)、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲル又はゾルを得る;オルソケイ酸ゲル又はゾルを静置して結晶化させ(構造組換え促進)、粒子状オルソケイ酸(H4SiO4)ゲルを含む溶液を得た後、この溶液をろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで水で洗浄し、分離したゲルを乾燥し(より好ましくは、真空乾燥)、乾燥した粒子状又は粉末状のメタケイ酸(H2SiO3)原料を得る;そして、乾燥した粒子状メタケイ酸(H2SiO3)原料をスルホン化剤及び/又はリン酸化剤でスルホン化及び/又はリン酸化し、得られた反応混合物をろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで水又は有機溶媒で洗浄し、分離した粒子状スルホン化及び/又はリン酸化固体を乾燥し(好ましくは真空乾燥)、乾燥した無機固体酸粉末(即ち、ここで、ケイ素基質は、メタケイ酸の固体酸粒子である)を得る;最後に、無機固体酸粉末を焼成し、固体酸触媒(h-SSA)(即ち、ここで、ケイ素基質は、二酸化ケイ素の固体酸粒子である)を得る。
【0058】
また、本発明は、下記の化学式(I)の一つ又は複数の無機シリカスルホン酸を含むか、又は主に含み、又は(主に)下記の化学式(I)の一つ又は複数の無機シリカスルホン酸からなる無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)を提供し、
【0059】
【0060】
式中、x=0又は1であり、y=1又は2であり、x+y=2である。
【0061】
具体的に、本発明の無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)は、下記の化学式(Ia)及び/又は(Ib)の無機シリカスルホン酸を含むか、又は主に含み、又はそれは、下記の化学式(Ia)と(Ib)の無機シリカスルホン酸のうちの一つ又は二つを含むか、又は主に含み、又はそれは、(主に)下記の化学式(Ia)及び/又は(Ib)の無機シリカスルホン酸からなり、又はそれは、(主に)下記の化学式(Ia)と(Ib)の無機シリカスルホン酸のうちの一つ又は二つからなる:
【0062】
【0063】
また、本発明の無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)は、化学式(Ia)及び/又は(Ib)の無機シリカスルホン酸と、任意のスルホン化されていないメタケイ酸(ケイ酸ともいう)又は二酸化ケイ素(メタケイ酸は、焼成後に二酸化ケイ素になるため)とを含むか、又は主に含み、又はそれは、主に化学式(Ia)及び/又は(Ib)の無機シリカスルホン酸及び任意のスルホン化されていないメタケイ酸又は二酸化ケイ素からなる。そのうち、スルホン化されていないメタケイ酸又は二酸化ケイ素の含有量は、0wt%であってもよい。
【0064】
「任意の」は、有り又はなしを表す。化学式(Ia)の無機シリカスルホン酸化合物の分子量は、238であり、化学式(Ib)の無機シリカスルホン酸化合物の分子量は、158である。
【0065】
一般的に、本発明の無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)は、粒子物形態又は粉末形態を呈する。一般的に、それは、粒子内部に位置するスルホン化されていないメタケイ酸(H2SiO3)又は二酸化ケイ素をさらに含む。
【0066】
本願では、好ましくは、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)は、10 nm - 10 mmの平均粒径を有する。好ましくは、この平均粒径は、50 nm - 5 mm、好ましくは80 nm - 1000 um、より好ましくは150 nm - 800 um、より好ましくは250 nm - 600 um、より好ましくは450 nm - 500 um、より好ましくは600
nm - 300 um、より好ましくは800 nm - 250 um、より好ましくは1 um - 200 um、より好ましくは10 um - 170 um、より好ましくは20 um - 150 um、例えば30、40、50、60、70、80、90、100、110、120又は130umである。本願では、出発原料としての固体メタケイ酸(粉末又は粒子物)は、固体シリルスルホン酸触媒生成物(h-SSA-1)と同じ又は類似の平均粒径を有する。
【0067】
好ましくは、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の酸量(触媒の単位質量当りの水素イオンモル量)は、0.05-8.4 mmol/g、好ましくは0.7-8.2 mmol/g、好ましくは0.1-8 mmol/g、好ましくは0.3-7.8、好ましくは0.5-7.6、好ましくは0.6-7.5、好ましくは0.7-7.3、好ましくは0.8-7.0、好ましくは0.9-6.8、好ましくは1.0-6.5、好ましくは1.1-6.3、好ましくは1.2-6.0、好ましくは1.3-5.8、好ましくは1.4-5.6、好ましくは1.5-5.4、好ましくは1.6-5.2、好ましくは1.8-5.3、好ましくは2.0-5.1、好ましくは2.2-5.0、好ましくは2.4-4.8 mmol/g、例えば3又は4 mmol/gである。例えば、触媒の酸量は、0.1-8 mmol/g、より好ましくは0.3-7.8、より好ましくは0.5-7.5、より好ましくは0.7-7.0、好ましくは0.8-6.5 mmol/g、より好ましくは1-6.0 mmol/gである。
【0068】
酸量とは、水素イオンモル量/単位あたりの無機固体シリルスルホン酸(又は固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の質量を意味する。
【0069】
好ましくは、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の平均粒径は、10 um - 170 um、より好ましくは20 um - 150 um、例えば30、40、50、60、70、80、90、100、110、120又は130umであり、そしてその酸量は、1.0-6.5 mmol/g、好ましくは1.1-6.3、好ましくは1.2-6.0、好ましくは1.3-5.8、好ましくは1.4-5.6、好ましくは1.5-5.4、好ましくは1.6-5.2、好ましくは1.8-5.3、好ましくは2.0-5.1、好ましくは2.2-5.0、好ましくは2.4-4.8 mmol/g、例えば3又は4 mmol/gである。
【0070】
固体粒子状のメタケイ酸をスルホン化剤でスルホン化して、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)を得た場合、反応過程においてメタケイ酸の一部がスルホン化されていないため、得られた無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)は、上記化学式(Ia)と(Ib)の2種類の無機シリカスルホン酸とスルホン化されていないメタケイ酸(H2SiO3)とを含むか、又はこれらの3種類の化合物からなるか、又は主にこれらの3種類の化合物からなる。
【0071】
好ましくは、本発明の無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)は、1-100wt%(好ましくは2-96wt%、より好ましくは4-92wt%、より好ましくは6-88wt%、より好ましくは8-84wt%、より好ましくは10-80wt%、より好ましくは15-75wt%、より好ましくは20-70wt%、より好ましくは25-65wt%、より好ましくは30-60wt%、例えば40wt%)の上記化学式(Ia)及び/又は(Ib)の無機シリカスルホン酸と、0-99wt%(好ましくは4-98wt%、より好ましくは8-96wt%、より好ましくは12-94wt%、より好ましくは16-92wt%、より好ましくは20-90wt%、より好ましくは25-85wt%、より好ましくは30-80wt%、より好ましくは35-75wt%、より好ましくは40-70wt%、例えば60wt%)のスルホン化されていないメタケイ酸又は二酸化ケイ素とを含み、この百分比は、無機固体シリルスルホン酸(触媒h-SSA-1)に対して重量である。それは、少量(例えば、0-45wt%又は0-30 wt%又は0-20 wt%又は0-10wt%)の他の物質又は不純物又はドーパントをさらに含むことも可能である。
【0072】
好ましくは、本発明の無機固体シリルスルホン酸(h-SSA-1)は、0.5-90wt%(好ましくは1-85wt%、好ましくは2-80wt%、好ましくは3-75wt%、好ましくは4-70wt%、好ましくは5-65wt%、例えば15、20、30、35、40、42、44、46、48、50、55wt%又は60wt%)の上記化学式(Ia)の無機シリカスルホン酸と、0.5-90wt%(好ましくは1-85wt%、好ましくは2-80wt%、好ましくは3-75wt%、好ましくは4-70wt%、好ましくは5-65wt%、例えば15、20、30、35、40、42、44、46、48、50、55wt%又は60wt%)の上記化学式(Ib)の無機シリカスルホン酸と、0-99wt%(好ましくは4-98wt%、より好ましくは8-96wt%、より好ましくは12-94wt%、より好ましくは16-92wt%、より好ましくは20-90wt%、より好ましくは25-85wt%、より好ましくは30-80wt%、より好ましくは35-75wt%、より好ましくは40-70wt%、例えば50、60wt%)のスルホン化されていないメタケイ酸(又は二酸化ケイ素)とを含む。この百分比は、無機固体シリルスルホン酸(触媒h-SSA-1)に対して重量である。
【0073】
驚くべきことに、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の酸量が0.05又は0.1 mmolである場合、化学式(Ia)及び/又は(Ib)の2種類の無機シリカスルホン酸の該無機固体シリルスルホン酸(触媒h-SSA-1)における含有量は、約0.6 wt%又は1.2 wt%であり、この触媒の酸性は、良好な触媒効果を有させるのに十分である。無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の酸量が6 mmolである場合、化学式(Ia)及び/又は(Ib)の2種類の無機シリカスルホン酸の該無機固体シリルスルホン酸(触媒)における含有量は、約71-95wt%、例えば83、85、88wt%である。触媒において、残部は、スルホン化されていないメタケイ酸(又は二酸化ケイ素)と不純物又はその他のドーパントである。
【0074】
理論的には、中実粒子状(例えば中実球状)の無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)に対しては、粒子の表面上に大量のスルホン酸基が存在する。その粒径(又は粒度)が比較的に大きい場合、その酸量は比較的に低い。しかし、ポーラス型又は空隙を有する無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)に対しては、その比表面積が顕著に増大するため、比較的に大きな粒径を有する粒子状触媒も比較的に高い酸量を有する可能性がある。
【0075】
一般に、2種類の無機シリカスルホン酸化合物とスルホン化されていないメタケイ酸又は二酸化ケイ素は、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)粒子に分布されており、そのため、固体シリルスルホン酸触媒のスルホン酸量は、メタケイ酸のスルホン化程度に依存する。
【0076】
無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の比表面積(surface area)は、50-800 m2/g、好ましくは100-600 m2/g、好ましくは150-500 cm3/g、好ましくは200-400 m2/gである。
【0077】
一般に、無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の細孔容積(pore volume)は、100-600 cm3/g、好ましくは130-550 cm3/g、好ましくは150-500 cm3/g、好ましくは160-400 cm3/gである。
【0078】
無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)の平均孔直径(pore diameter)は、4-100nm、好ましくは5-50nm、より好ましくは6-30nm、より好ましくは7-20nm、より好ましくは8-13nmである。
【0079】
本発明の固体酸触媒(即ち、h-SSA-1、焼成されたもの)の抗圧潰強さは、165N、好ましくは165-260N、170-250N、173-240N、175-230N又は180-230Nよりも大きい。
【0080】
本発明の二番目の実施形態によれば、本発明は、上記無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)を製造する方法をさらに提供する。この方法は、
(B)メタケイ酸のスルホン化及び/又はリン酸化を含み、(乾燥の)粒子状メタケイ酸(H2SiO3)原料をスルホン化剤及び/又はリン酸化剤と反応させ、分離(好ましくは、ろ過してケーキを分離する)及び水又は有機溶媒で洗浄し(好ましくは、ケーキを濾液が中性になるまで水で洗浄する)、次いで、乾燥し、乾燥した無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸粒子(即ち、スルホン化及び/又はリン酸化メタケイ酸の粉末又は粒子)を得る。つまり、その中のケイ素含有基質がメタケイ酸固体の乾燥であるが未焼成の無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)を得る。
【0081】
ここで、スルホン化剤及び/又はリン酸化剤のメタケイ酸に対しての使用量に基づいて、この乾燥であるが未焼成の固体酸触媒(h-SSA)の酸量は、0.25-7.6 mmol/g、好ましくは0.3-7.5、より好ましくは0.35-7.4、より好ましくは0.4-7.2、より好ましくは0.45-7.0、好ましくは0.5-6.8、好ましくは0.55-6.6、好ましくは0.6-6.2、好ましくは0.65-5.8、好ましくは0.7-5.4、好ましくは0.75-5.0、好ましくは0.8-4.8となる。
【0082】
また、本発明は、上記無機固体シリルスルホン酸触媒(h-SSA-1)を製造する方法をさらに提供する。この方法は、
(B)スルホン化を含み、粒子状メタケイ酸(H2SiO3)原料をスルホン化剤と反応させ、分離し(好ましくは、ろ過してケーキを分離する)、本発明のスルホン化メタケイ酸固体(即ち、無機固体シリルスルホン酸の湿固体)を得る。次いで、水又は有機溶媒で洗浄(好ましくはケーキを洗浄液が中性になるまで水で洗浄する)及び乾燥する(好ましくは真空下で乾燥する)。乾燥した無機固体シリルスルホン酸粒子(即ち、スルホン化メタケイ酸の粉末又は粒子)を得る。つまり、その中のケイ素含有基質がメタケイ酸固体の乾燥であるが未焼成の無機固体シリルスルホン酸触媒(h-SSA-1)を得る。
【0083】
ここで、スルホン化剤のメタケイ酸に対しての使用量に基づいて、この乾燥であるが未焼成の固体酸触媒(h-SSA-1)の酸量は、0.25-7.6 mmol/g、好ましくは0.3-7.5、より好ましくは0.35-7.4、より好ましくは0.4-7.2、より好ましくは0.45-7.0、好ましくは0.5-6.8、好ましくは0.55-6.6、好ましくは0.6-6.2、好ましくは0.65-5.8、好ましくは0.7-5.4、好ましくは0.75-5.0、好ましくは0.8-4.8となる。
【0084】
本発明の上記二つの製造方法では、好ましくは、粒子状メタケイ酸(H2SiO3)原料は、オルソケイ酸ゲルの結晶化又は結晶化により得られたものであり、得られた(未乾燥又は乾燥したもの)メタケイ酸固体の結晶形構造と空隙構造の両方も改善され、そしてその比表面積が著しく向上するため、メタケイ酸固体は、メソ細孔材料の一つである。
そのため、本願では、粒子メタケイ酸(H2SiO3)原料とは、粒子状メタケイ酸固体を意味する。
【0085】
また、得られたスルホン化メタケイ酸湿固体又はシリルスルホン酸及び/又はリン酸湿固体は、なんらかの反応においてそのまま触媒として用いられることができる。好ましくは、スルホン化メタケイ酸湿固体又はシリルスルホン酸及び/又はリン酸湿固体を更に乾燥又は真空乾燥し、乾燥したスルホン化メタケイ酸固体(粉末又は粒子物形態)又は乾燥したシリルスルホン酸及び/又はリン酸固体(粉末又は粒子物形態)を得る。
【0086】
本願では、前記スルホン化剤は、発煙硫酸、硫酸(好ましくは、濃硫酸、好ましくは、濃度が65-100wt%である濃硫酸、例えば濃度又は質量分率が70-100wt%又は75-100wt%である濃硫酸、例えば95-99wt%の濃硫酸)、クロロ硫酸、三酸化硫黄、塩化スルフリル、二酸化硫黄と塩素ガスとの混合物、二酸化硫黄と酸素との混合物、二酸化硫黄とオゾンとの混合物、アミノスルホン酸及び亜硫酸塩のうちのスルホン化剤から選ばれる一つ又は複数であり、より好ましくは、スルホン化剤は、発煙硫酸、濃硫酸(好ましくは、濃度又は質量分率が70-100wt%又は75-100wt%である濃硫酸)、クロロ硫酸又は三酸化硫黄などのうちの一つ又は複数である。
【0087】
リン酸化剤は、リン酸、リン酸一塩化物及び/又はリン酸二塩化物であり、好ましくは濃リン酸、例えば75wt%-85wt%濃度の濃リン酸である。
【0088】
前記メタケイ酸(H2SiO3)原料は、粉末状の又は粒子状の固体(即ち乾燥固体又は湿固体)である。前記固体メタケイ酸原料は、ポーラス型のメタケイ酸又は空隙を有するメタケイ酸又は泡状のメタケイ酸である。
【0089】
ここで、メタケイ酸は、ケイ酸ともいう。
【0090】
好ましくは、粒子の強度を向上させるために、得られた乾燥した粒子状シリルスルホン酸及び/又はリン酸固体を焼成し、それによって焼成されたシリルスルホン酸及び/又はリン酸固体(粉末又は粒子物形態)、即ち、その中のケイ素基質が二酸化ケイ素である触媒h-SSAを得る。
【0091】
好ましくは、得られたスルホン化メタケイ酸湿固体又は得られた乾燥したスルホン化メタケイ酸固体を焼成し、焼成されたスルホン化メタケイ酸固体(粉末又は粒子物形態)、即ち触媒h-SSA-1を得る。
【0092】
上述したシリルスルホン酸及び/又はリン酸を製造する方法では、好ましくは、前記方法は、
(C)焼成工程をさらに含み、工程(B)で得られた乾燥した粒子状シリルスルホン酸及び/又はリン酸(固体粉末)を焼成し、無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(即ち、焼成されたシリルスルホン酸及び/又はリン酸固体h-SSA、一般的には粉末又は粒子物形態である)を得る。つまり、その中のケイ素含有基質が二酸化ケイ素である固体酸触媒h-SSAを得る。
【0093】
上述したシリルスルホン酸を製造する方法では、好ましくは、前記方法は、
(C)焼成工程をさらに含み、工程(B)で得られたスルホン化メタケイ酸固体を焼成し、本発明の無機固体シリルスルホン酸(即ち、焼成されたスルホン化メタケイ酸固体h-SSA-1、一般的には粉末又は粒子物形態である)を得る。
【0094】
焼成した固体酸触媒(h-SSA、又はh-SSA-1)の酸量は、0.25-8.4
mmol/g、好ましくは0.3-8.4 mmol/g、好ましくは0.32-8.4 mmol/g、好ましくは0.33-8.4 mmol/g、好ましくは0.35-8.2 mmol/g、好ましくは0.36-8.0 mmol/g、好ましくは0.38-7.8 mmol/g、好ましくは0.38-7.6 mmol/g、より好ましくは0.4-7.6 mmol/g、より好ましくは0.45-7.4 mmol/g、より好ましくは0.5-7.2 mmol/g、好ましくは0.55-7.0、好ましくは0.6-6.8、好ましくは0.65-6.6、好ましくは0.7-6.2、好ましくは0.75-5.8、好ましくは0.8-5.4、好ましくは0.85-5.2、好ましくは0.9-5.0である。
【0095】
上記の二つの製造方法では、好ましくは、前記方法は、
(A)粒子状メタケイ酸H2SiO3原料を製造する工程をさらに含み、ケイ素源を無機酸とイオン交換反応又は加水分解反応させ(好ましくは、反応において反応混合物のpH値を4.5-6.5、好ましくは5~6に制御する)、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲル又はゾルを得る;オルソケイ酸ゲル又はゾルを静置して結晶化させ(構造組換え促進)、粒子状オルソケイ酸(H4SiO4)ゲルを含む溶液を得た後、この溶液をろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで水で洗浄し、分離したゲルを乾燥し(より好ましくは、真空乾燥)、乾燥した粒子状の又は粉末状のメタケイ酸(H2SiO3)原料を得る。そして上記の工程(B)に用いる。
【0096】
好ましくは、上述したシリルスルホン酸を製造する方法では、前記方法は、
(A)メタケイ酸H2SiO3原料を製造する工程をさらに含み、ケイ素源を無機酸とイオン交換反応又は加水分解反応させ、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲル(即ち、ケイ素含有溶液)を得る;オルソケイ酸ゲルを結晶化させ、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲルを含む溶液を得、そしてゲルを分離して乾燥し(即ち、固液分離、固体洗浄と乾燥)、メタケイ酸(H2SiO3)原料(粉末状の又は粒子状の固体)を得る。
【0097】
上記の二つの製造方法では、以下の好適な条件を採用してもよい。
【0098】
結晶化とは、静置結晶化を意味する。オルソケイ酸ゲルは、あまり安定ではなく、そして乾燥によりメタケイ酸固体を形成する。
【0099】
メタケイ酸は、液相析出法を用いて調製したものである。
【0100】
前記工程(A)におけるケイ素源は、ケイ酸塩、ケイ酸エステル又はシリカゲルのうちの一つ又は複数である。そのうち、前記ケイ酸塩のカチオンは、金属イオン(例えばアルカリ金属イオン、例えばカリウム又はナトリウムイオン)又はアンモニウムイオンのうちの一つ又は複数である。そのうち、前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸テトラC1-C15ヒドロカルビルエステル、好ましくはオルトケイ酸テトラC1-C10ヒドロカルビルエステルである。前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸テトラC1-C7アルキルエステル、オルトケイ酸テトラC3-C8シクロアルキルエステル又はオルトケイ酸テトラアリールエステル、例えばオルトケイ酸テトラメチルエステル、オルトケイ酸テトラエチルエステル、オルトケイ酸テトラプロピルエステル、オルトケイ酸テトラブチルエステル及びオルトケイ酸テトラフェニルエステルである。
【0101】
前記工程(A)で使用される無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸のうちの一つ又は複数である。
【0102】
好ましくは、上記工程(B)又は工程(A)は、均一な粒度の粒子を得るために、攪拌下又は攪拌上で超音波又はマイクロ波の作用下で行われる。工程(A)において、形成されたオルソケイ酸ゲル溶液におけるオルソケイ酸濃度、及び結晶化の温度と時間は、粒子状メタケイ酸固体の粒度を決定する。
【0103】
好ましくは、上記工程(B)は、以下のようにして行った。攪拌条件下又は攪拌上で超音波又はマイクロ波の作用下で、スルホン化試薬、又は、スルホン化剤及び/又はリン酸化剤、メタケイ酸に添加してスルホン化した後、冷却し(例えば室温まで冷却)、ろ過し、得られたケーキを濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、得られた白色固体粉末を乾燥(例えば真空乾燥)及び焼成し、無機固体シリルスルホン酸触媒材料、又は無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒材料を得る。
【0104】
好ましくは、工程(B)において、前記メタケイ酸と前記スルホン化剤とのモル比、又は前記メタケイ酸と前記スルホン化剤及び/又はリン酸化剤とのモル比は、0.01~4.0 : 1、好ましくは0.03~3.0 : 1、好ましくは0.04~2.0 :
1、好ましくは0.05~1 : 1、より好ましくは0.1~0.9 : 1、より好ましくは0.2~0.8 : 1、より好ましくは0.3~0.7 : 1である。スルホン化反応の温度は、室温(20℃)~200℃、好ましくは40~180℃、好ましくは60~150℃、より好ましくは80~130℃である。
【0105】
好ましくは、工程(B)において、固体粉末の乾燥は、空気又は不活性ガス雰囲気下で行われる。より好ましくは、5~150 kPa、好ましくは10~120 kPaの圧力(絶対圧力)下で行われる。乾燥温度は、室温(20℃)~150℃、好ましくは60~120℃である。
【0106】
前記工程(C)において、固体焼成は、不活性ガス雰囲気下で行われる。好ましくは、焼成温度は、120~600℃、好ましくは150~500℃、より好ましくは200-480℃である。
【0107】
好ましくは、上記工程(A)は、以下のようにして行った:攪拌下又は攪拌上で超音波又はマイクロ波の作用下で、無機酸溶液(イオン交換反応又は加水分解反応用のもの)をケイ素源を含む溶液に徐々に滴下し、溶液のpH値(例えば4.5~6.5、好ましくは5~6)を保持し、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲル(湿潤ゲル又はゲル溶液)を得、次いで、このゲルを静置し(例えば室温~80℃の温度下)、結晶化させ、さらにろ過し、濾液が中性(pH=7)になるまで洗浄し(例えば水で)、最後に、得られたゲルを乾燥し(例えば真空乾燥)、固体粒子状又は粉末状のメタケイ酸(H2SiO3)を得る。
【0108】
更に、前記工程(A)において、イオン交換又は加水分解は、攪拌下又は攪拌上で超音波又はマイクロ波の作用下で行われる。そのうち、前記ケイ素源物質(ケイ酸塩又はケイ酸エステル又はシリカゲル)と前記無機酸とのモル比は、0.01~2.0 : 1、好ましくは0.05~1.0 : 1、より好ましくは0.1~0.8 : 1、より好ましくは0.3~0.7 : 1、例えば、0.05-0.7 : 1、好ましくは0.1-0.65 : 1、好ましくは0.15-0.6 : 1、好ましくは0.2-0.5
: 1である。イオン交換又は加水分解の温度は、0~100℃、好ましくは室温(20℃)~80℃である。
【0109】
更に、前記工程(A)において、オルソケイ酸ゲルの結晶化条件は、ゲル溶液のpH値が1~9、好ましくは2~7、結晶化温度が0~100℃、好ましくは10~90℃、より好ましくは室温(20℃)~80℃、より好ましくは30℃~70℃である。前記工程(A)において、ゲル固体(即ち、洗浄した後ゲル固体)の乾燥は、空気又は不活性ガス雰囲気下で行われる。好ましくは、オルソケイ酸ゲル固体の乾燥は、5~150 kPa、好ましくは10~120 kPaの圧力(絶対圧力)下で行われる。乾燥温度は、室温(20℃)~200℃、好ましくは60~150℃、より好ましくは60-110℃である。オルソケイ酸ゲルを比較的に高い温度(例えば150-200)下で乾燥させる場合、乾燥時間は、シリカゲルの形成を回避するために、それに応じて、例えば10分間-4時間に短縮されるべきである。
【0110】
オルソケイ酸ゲルの乾燥(特に真空下での乾燥)は、粒子状メタケイ酸固体を形成し、メタケイ酸固体粒子中の水分を完全に除去するためである。一方、スルホン化及び/又はリン酸化の固体粒子の先に乾燥及び後焼成することは、構造安定と高強度の固体酸触媒(h-SSA又はh-SSA-1)を得るのに有利である。好ましくは、スルホン化及び/又はリン酸化の固体粒子が不活性雰囲気において乾燥され、次いで不活性雰囲気において焼成されることは、粒子の内部に純粋な二酸化ケイ素基質を形成する。
【0111】
無論、オルソケイ酸ゲルを比較的に高い温度(例えば200℃より高く、例えば200-400℃)下で乾燥し、そして得られたスルホン化及び/又はリン酸化の固体粒子が焼成されない場合、粒子の内部にシリカゲル基質が形成される可能性がある。このような場合、本発明の触媒のケイ素基質は、シリカゲルである。シリカゲル基質を含むこのような固体酸触媒も高酸量を有するが、本発明の好適な技術案ではない。
【0112】
本発明は、無機固体スルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)を製造する方法をさらに提供する。この方法は、以下の工程を含み、ケイ素源を無機酸とイオン交換反応又は加水分解反応させ(好ましくは、反応において反応混合物のpH値を4.5-6.5、好ましくは5~6に制御する)、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲル又はゾルを得る;オルソケイ酸ゲル又はゾルを静置して結晶化させ(構造組換え促進)、粒子状オルソケイ酸(H4SiO4)ゲルを含む溶液を得た後、この溶液をろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで水で洗浄し、分離されたゲルを乾燥し(より好ましくは、真空乾燥)、乾燥した粒子状の又は粉末状のメタケイ酸(H2SiO3)原料を得る;そして、乾燥した粒子状メタケイ酸(H2SiO3)原料をスルホン化剤及び/又はリン酸化剤でスルホン化及び/又はリン酸化し、得られた反応混合物をろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで水又は有機溶媒で洗浄し、分離された粒子状スルホン化及び/又はリン酸化固体を乾燥し(好ましくは真空乾燥)、乾燥した無機固体酸粉末(即ち、ここで、ケイ素基質は、メタケイ酸の固体酸粒子である)を得る;最後に、無機固体酸粉末を焼成し、固体酸触媒(h-SSA)(即ち、ケイ素基質は、二酸化ケイ素の固体酸粒子である)を得る。
【0113】
本発明は、上記方法により製造された無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸(即ち、固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒h-SSA)又は無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1)を提供する。無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)、又は、前記の無機固体シリルスルホン酸触媒h-SSA-1(又は触媒材料)は、担持型触媒又は触媒材料であってもよい。好ましくは、担持型無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒又は担持型無機固体シリルスルホン酸触媒の担体は、比較的に大きな比表面積を有するモレキュラーシーブ類、γ-アルミナ、活性炭、シリカゲル、粘土類などの担体から選ばれる一つ又は複数である。
【0114】
好ましくは、前記のモレキュラーシーブは、MCM-41、MCM-22、SBA-15、HZSM-5、モルデナイト、Y型ゼオライト又はβゼオライトなどである。
【0115】
本発明は、上記無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒(h-SSA)又は上記無機固体シリルスルホン酸(h-SSA-1)の触媒としての用途をさらに提供する。特に、異性化反応、エステル化反応、アルキル化反応、オレフィンのヒドロアミノ化反応、縮合反応、硝化反応、エーテル化反応、アルコールのアミン化反応(例えばエチレングリコールのアミン化からエチレンジアミンを製造する反応に用いられる)、β-エナミンケトンを製造する反応、多成分反応及び酸化反応などの多くの酸触媒の有機反応分野に用いられる。
【0116】
ケイ酸(即ちメタケイ酸)と本発明の無機固体シリルスルホン酸(即ち、固体シリルスルホン酸触媒)の両方のFT-IR赤外線スペクトル(
図1)を比較すると、シリルスルホン酸の赤外線スペクトルにおいて1394 cm
-1部前後で新たな赤外線特徴吸収ピークが現れ、このピークがO=S=Oの伸縮振動に帰属することが分かる。また、メタケイ酸の1101 cm
-1部に位置する赤外線特徴信号ピークの強度に比べて、シリルスルホン酸の1101 cm
-1部に位置する赤外線特徴信号ピークの強度が大いに増大するのは、スルホン酸基におけるO-S-Oの赤外線特徴吸収ピークが触媒骨格主体Si-O-Siの非対称伸縮振動信号ピークと重なっているためである。
【0117】
同時に、
図3によれば、メタケイ酸試料は、1400~1640 cm
-1波長範囲内で有意な赤外線吸収ピークが認められなかったことが分かる。スルホン化後、無機固体シリルスルホン酸触媒材料は、1400~1640 cm
-1波長範囲内で四つの明らかな赤外線特徴吸収ピークが現れた。そのうち、1454 cm
-1と1622 cm
-1部に位置する赤外線吸収ピークは、ピリジンがLewis酸中心に吸着する特徴吸収ピークであり、1546 cm
-1部に位置する赤外線吸収ピークは、ピリジンがBronsted酸中心に吸着する特徴吸収ピークであり、これは、主に-SO
3H基によって提供され、1491 cm
-1部に位置する赤外線吸収ピークは、ピリジンがLewis酸及びBronsted酸の中心に同時に吸着することにより、共同作用によって生じる特徴吸収ピークである。当然ながら、シリルスルホン酸触媒における酸成分(B)は、過半量の一般式(I)の化合物と、少量の一般式(II)のシリルスルホン酸化合物とを含む。
【0118】
本発明の優位性
本発明の無機固体シリルスルホン酸及び/又はリン酸触媒又は無機固体シリルスルホン酸触媒は、酸量が高く、活性が強く、水熱安定性が良く、膨潤がなく、触媒の製造過程が簡単で、安価、汚染がなく、腐食がなく、分離しやすく、及び繰り返し使用可能などの利点があり、環境に優しい固体酸触媒材料であり、幅広い応用将来性がある。この触媒材料は、異性化反応、エステル化反応、アルキル化反応、オレフィンのヒドロアミノ化反応、縮合反応、硝化反応、エーテル化反応、多成分反応及び酸化反応など、多くの酸触媒有機反応に広く使用できる。例えば、固体酸触媒は、没食子酸とC1-C8脂肪族アルコールのエステル化反応に用いられ、可逆反応において96-99%の高収率を達成することができ、触媒粒子の障害効果により、エステル生成物を水で攻撃する逆反応の発生が困難となることに起因する可能性がある。
【0119】
特に、オルソケイ酸ゲルの結晶化により、そのうちの結晶形構造と空隙構造が改善され、そして比表面積が著しく向上した粒子状メタケイ酸固体を得る。乾燥前と乾燥後の粒子状メタケイ酸固体及び最終的なシリルスルホン酸粒子は、いずれもメソ細孔材料である。これらの材料は、比較的に高い機械的強度を有し、例えばその抗圧潰強さは、いずれも60N(好ましくは、60-260N、80-250N、100-240N、例えば120N、150N、160N、165N、170N、175N又は180N)よりも大きく、その耐摩耗性が著しく向上する。本発明の固体酸触媒は、吸着したスルホン酸又はリン酸を含まない。流動床式反応器内の反応において、例えば400時間以上続けて使用されても、その酸量は変わらない。
【0120】
特に、本発明の固体酸触媒は、強酸による腐食に耐えることができる。
【0121】
スルホン化後の粒子生成物は、先に乾燥して水分を除去し、そして焼成する。このようにすれば、焼成時に触媒粒子の崩壊を防ぐことができ、それによって触媒粒子の構造とサイズの保持に有利である。
【0122】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒の赤外線特徴付けFT-IR図である。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【0123】
〔
図2〕本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒のN
2吸着-脱離図(A)と孔径分布図(B)である。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【0124】
〔
図3〕本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒のピリジン吸着赤外線スペクトログラムである。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【0125】
〔
図4〕本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒のNH
3~TPD(ammonia temperature programmed desorption)スペクトルである。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【0126】
〔
図5〕本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒の熱重量図である。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【0127】
〔
図6〕シリルスルホン酸を製造する反応過程である。図中、a:ケイ酸塩、b:ケイ酸エステル、c:シリカゲル、1:メタケイ酸、2:固体シリルスルホン酸触媒材料、3:無機酸、4:スルホン化試薬。
【0128】
〔
図7〕実施例1の乾燥であるが焼成されていない固体酸触媒のXRDスペクトルである。図中、1:シリルスルホン酸粉末(未焼成)、2:メタケイ酸粉末(未焼成)。
【0129】
〔
図8〕実施例1の焼成後の固体酸触媒のXRDスペクトルである。図中、1:焼成後のメタケイ酸粉末、2:焼成後のシリルスルホン酸粉末。
【0130】
〔
図9と10〕それぞれ、実施例1で得られたメタケイ酸とシリルスルホン酸の粒子径分布である。
【0131】
〔
図11〕実施例1の焼成した無機固体シリルスルホン酸粒子生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0132】
〔
図12〕実施例2における乾燥メタケイ酸と焼成した無機固体シリルスルホン酸粒子のFT-IRスペクトルである。図中、1:二酸化ケイ素粉末、2:メタケイ酸粉末、3:焼成後のシリルスルホン酸粉末。
【0133】
〔
図13〕実施例20のリン酸化の無機固体メタケイ酸粉末と実施例21のスルホン酸化/リン酸化の無機固体メタケイ酸粉末のFT-IRスペクトルである。図中、1:メタケイ酸粉末、2:リン酸化のメタケイ酸粉末、3:スルホン酸化/リン酸化のメタケイ酸粉末。
【0134】
〔
図14〕比較例3の粉末状のシリルスルホン酸粒子(T2B)の粒度分布である。
【0135】
〔
図15〕比較例3の固体シリルスルホン酸のXRDスペクトルである。
【0136】
〔発明を実施するための形態〕
以下の実施例では、無機固体シリルスルホン酸触媒材料(略称:触媒)の製造方法及び応用について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0137】
1、粒子状シリルスルホン酸触媒の酸量の測定方法
真空乾燥した固体シリルスルホン酸触媒(吸着したスルホン酸及び/又はリン酸を含まない)を約0.5g(0.0001まで)秤量し、250mL三角フラスコに加え、そして新たに調製した飽和NaCl溶液25mLを添加し、均一振り混ぜ、三角フラスコの口をラップフィルムで密封し、そして4hごとに十分に均一振り混ぜ、イオン交換24h後、フェノールフタレイン指示薬を2~3滴加え、0.1mol/L NaOH標準溶液を用いて酸量滴定を行う。固体酸ごとに、少なくとも3回平行滴定し、相対誤差を1%以内に抑える。消費したNaOHの体積を記録し、酸量を次式より算出し、酸量の単位は、mmol H+/gである。
【0138】
【0139】
2、抗圧潰強さの測定方法
中国国家標準GB/T 3780.16-1983の方法を用いて固体酸触媒粒子の抗圧潰強さを測定し、使用された設備は、DL5型スマート粒子強度測定機である。
測定手順:用意した試料粒子の粒子径を1つずつ測定し、そしてDL5型スマート粒子強度測定機の試料プラットフォーム上に置き、それに力を印加して破砕させ、粒子破砕時の印加負荷を記録し、その抗圧潰強さ結果を測定する。
【0140】
<実施例1>
50gのケイ酸ナトリウム九水和物を400mLの脱イオン水に十分に溶解し、ケイ酸ナトリウム溶液を得た。そして、ケイ酸ナトリウム溶液に1.8mol/L塩酸溶液200mL(ケイ酸ナトリウムと塩酸とのモル比は、0.5である)を加え、室温下でイオン交換反応させ、pH値を5~6に制御して、オルソケイ酸(H
4SiO
4)ゲルを得た。そして、このゲルを60℃下で静置し、12時間結晶化させ、さらに濾液が中性になるまでろ過し、洗浄した。最後に、得られたゲル固体を110℃下で12h真空乾燥し、固体粉末メタケイ酸(H
2SiO
3)を得、その比表面積の測定結果は、293m
2/gであった。平均粒径が90μmであるメタケイ酸粉末5gを100mL濃硫酸(濃度98wt%)に加え、攪拌し、130℃下で6hスルホン化させ、そして室温まで冷却し、ろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、得られた白色固体粉末(湿固体)を110℃下で5h真空乾燥し、乾燥した無機固体シリルスルホン酸粉末(圧潰強さ105 N)を得た。最後に、乾燥されたスルホン化固体粉末を窒素雰囲気下で3h焼成し、焼成温度は、200℃であり、無機固体シリルスルホン酸触媒材料(焼成した無機固体シリルスルホン酸)(圧潰強さ185 N)を得、その酸量の測定結果は、3.419mmol/gであり、そのBET比表面積の測定結果は、286m
2/gであった。触媒材料の構造特徴付けを
図1~5に示す。
【0141】
<実施例2>
280mL 1.8mol/L塩酸溶液を21gオルトケイ酸テトラエチルエステル(0.1モル)のエタノール溶液(ケイ酸エステルと塩酸とのモル比は、0.2である)に滴下し、20℃で加水分解反応させpH値を5~6に制御し、オルソケイ酸(H4SiO4)ゲルを得た。そしてこのゲルを60℃下で静置し、12時間結晶化させ、さらに濾液が中性になるまでろ過し、洗浄した。最後に、得られたゲル固体を110℃下で12h真空乾燥し、固体粉末メタケイ酸(H2SiO3)を得、その比表面積の測定結果は、305m2/gであった。平均粒径が88 μmであるメタケイ酸粉末5gを100mL濃硫酸に加え、攪拌し、130℃下で6hスルホン化させ、そして室温まで冷却し、ろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、得られた白色固体粉末を110℃下で5h真空乾燥し、最後に、乾燥したスルホン化固体粉末を窒素雰囲気下で3h焼成し、焼成温度は、200℃であり、無機固体シリルスルホン酸触媒材料を得、その酸量の測定結果は、3.532mmol/gであり、そのBET比表面積の測定結果は、295m2/gであった。
【0142】
<比較例1>
シリカゲル直接スルホン化法を用いてシリカゲルスルホン酸触媒材料を製造した。5gの90μmのシリカゲルを100mL濃硫酸に加えて直接スルホン化させ、攪拌し、130℃下で6hスルホン化させ、そして室温まで冷却し、ろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、得られた白色固体粉末を110℃下で5h真空乾燥し、最後に、乾燥したスルホン化固体粉末を窒素雰囲気下で3h焼成し、焼成温度は、200℃であり、無機固体シリカゲル(Silica gel)スルホン酸触媒材料を得、その酸量の測定結果は、わずか0.133mmol/gであった。そのBET比表面積は、185m2/gであり、その平均粒径は、85μmであり、抗圧潰強さは、165Nであった。
【0143】
<実施例3(適用例-触媒安定性)>
無機固体シリルスルホン酸触媒材料の安定性について考察した。本発明の実施例1に記載の無機固体シリルスルホン酸触媒材料を選んで用いて、シクロヘキサノンオキシム液相ベックマン転位反応系に用いられ、その使用寿命について考察した。この触媒材料を反応温度130℃下で136 h運行させても、シクロヘキサノンオキシム転化率及びカプロラクタム選択性の有意な低下が見られず、シクロヘキサノンオキシムの転化率は、98%に保持し、カプロラクタムの選択性は、99%に保持し、且つ反応後の酸量は、ほとんど低下しなかった。
【0144】
<比較例2(適用例-触媒安定性)>
有機系固体スルホン酸触媒材料安定性について考察した。製品化の742B型スルホン酸樹脂を選んで用いてシクロヘキサノンオキシム液相ベックマン転位反応系に用いられた。結果から分かるように、この触媒が130℃で12時間運行させた後、この触媒は、基本的に活性を失い、且つこのような触媒は、反応溶液において明らかに膨潤し、その構造は、破損され、酸量の低下は、明らかで、わずか0.05 mmol/gであった。
【0145】
<実施例4>
実験手順が実施例1と同じであるが、異なるのは、イオン交換反応過程においてマイクロ波場を加え、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料の酸量の測定結果が4.215mmol/gである点である。シリルスルホン酸粒子の平均粒径は、103 umであり、抗圧潰強さは、198Nであった。
【0146】
<実施例5>
実験手順が実施例1と同じであるが、異なるのはメタケイ酸スルホン化過程においてマイクロ波場を加え、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料の酸量の測定結果が4.932mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、96 umであり、抗圧潰強さは、201Nであった。
【0147】
<実施例6>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、ケイ酸ナトリウム九水和物と塩酸とのモル比が1.0であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が2.986mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、101 umであり、抗圧潰強さは、195 Nであった。
【0148】
<実施例7>
製造工程が実施例2と同じであるが、異なるのは、ケイ酸エステルと塩酸とのモル比が1.0であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.215mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、97umであり、抗圧潰強さは、209 Nであった。
【0149】
<実施例8>
製造工程が実施例2と同じであるが、異なるのは、加水分解反応の温度が60℃であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.053mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、96 umであり、抗圧潰強さは、198 Nであった。
【0150】
<実施例9>
製造工程が実施例2と同じであるが、異なるのは、加水分解反応の温度が50℃であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.648mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、102 umであり、抗圧潰強さは、188 Nであった。
【0151】
<実施例10>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、使用される無機酸が硝酸であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.421mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、99 umであり、抗圧潰強さは、185 Nであった。
【0152】
<実施例11>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、メタケイ酸スルホン化試薬がクロロ硫酸であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.515mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、84 umであり、抗圧潰強さは、179 Nであった。
【0153】
<実施例12>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、メタケイ酸スルホン化試薬が三酸化硫黄であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.815mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、78 umであり、抗圧潰強さは、168 Nであった。
【0154】
<実施例13>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、ゲル溶液のpHを8に保持し、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が2.056mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、88 umであり、抗圧潰強さは、205 Nであった。
【0155】
<実施例14>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、ゲル結晶化の温度が80℃であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が1.988mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、92 umであり、抗圧潰強さは、187 Nであった。
【0156】
<実施例15>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、ゲル乾燥温度を120℃に変更し、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が1.885mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、99 umであり、抗圧潰強さは、194 Nであった。
【0157】
<実施例16>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、メタケイ酸スルホン化の温度が100℃であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が2.568mmol/gである点である。焼成した触媒粒子の平均粒径は、108 umであり、抗圧潰強さは、198 Nであった。
【0158】
<実施例17>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、メタケイ酸スルホン化の温度が140℃であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.058mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、95 umであり、抗圧潰強さは、191 Nであった。
【0159】
<実施例18>
製造工程が実施例1と同じであるが、異なるのは、固体ケイ酸触媒材料の乾燥温度が90℃であり、得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料酸量が3.357mmol/gである点である。粒子の平均粒径は、96 umであり、抗圧潰強さは、188 Nであった。
【0160】
<実施例19(適用例)>
本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒材料は、その他の酸触媒反応、例えば異性化反応、ヒドロアミノ化反応、アルキル化反応、多成分反応、エステル化反応、エーテル化反応、硝化反応、酸化反応、付加反応などの反応系にも用いられることができ、いずれも優れた結果が得られ、表1に示す。
【0161】
【0162】
<実施例20 無機固体シリルリン酸触媒の製造>
固体粉末メタケイ酸(平均粒度90μm)3gを、スターラーバーを入れた50mLの二口丸底フラスコに取り、丸底フラスコを鉄架台上に固定し、定圧漏斗でリン酸(濃度85wt%)30mLを加え、温度計を液面以下に挿入し、フラスコの別の口を凝縮還流装置に接続し、密封し、恒温磁気撹拌機に入れ、100℃の温度下で4h還流した。反応完了後、丸底フラスコ中の溶液と触媒をフリット漏斗に流し込んで吸引ろ過し、最後の1滴濾液が中性になるまで蒸留水で洗浄した。上層触媒を取り出し、110℃の真空乾燥箱に入れて12時間乾燥し、リン酸化の無機固体メタケイ酸粉末(そのFT-IRスペクトルを
図13中、曲線2に示す)を得た。最後に、乾燥した固体粉末を窒素雰囲気下で3h焼成し、焼成温度は、200℃であり、無機固体シリルリン酸触媒を得、その酸量の測定結果は、2.885mmol/gであり、比表面積は、268 m
2/gであり、平均粒度約は、89.7 μmであり、圧潰強さは、185 Nであった。触媒に対して元素分析を行った結果から分かるように、アルカリ金属(例えばナトリウムとカリウム)の含有量は、検出限界未満(3 ppm未満)であり、アルカリ土類金属(例えばカルシウムとマグネシウム)の含有量も検出限界未満であった。
【0163】
<実施例21 -無機固体シリルスルホン酸/リン酸触媒の製造>
固体粉末メタケイ酸(平均粒度90μm)3gを、ターラーバーを入れた50mLの二口丸底フラスコに取り、丸底フラスコを鉄架台上に固定し、定圧漏斗で15mLリン酸(濃度85wt%)、15mL濃硫酸(濃度98wt%)を順次に加え、温度計を液面以下に挿入し、フラスコの別の口を凝縮還流装置に接続し、密封し、恒温磁気撹拌機に入れ、100℃の温度下で4h還流した。反応完了後、丸底フラスコ中の溶液と触媒をフリット漏斗に流し込んで吸引ろ過し、最後の1滴濾液が中性になるまで蒸留水で洗浄した。上層触媒を取り出し、110℃の真空乾燥箱に入れて12時間乾燥し、スルホン酸化/リン酸化の無機固体メタケイ酸粉末(そのFT-IRスペクトルを
図13中、曲線3に示す)を得た。最後に、乾燥した固体粉末を窒素雰囲気下で3h焼成し、焼成温度は、200℃であり、無機固体シリルスルホン酸とリン酸触媒を得、その酸量の測定結果は、3.685mmol/gであり、比表面積は、305m
2/gであり、平均粒度は、約89.3 μmであり、圧潰強さは、186 Nであった。触媒に対して元素分析を行った結果から分かるように、アルカリ金属(例えばナトリウムとカリウム)の含有量は、検出限界未満であり、アルカリ土類金属(例えばカルシウムとマグネシウム)の含有量も検出限界未満であった。
【0164】
図13において、464cm
-1部のピークは、Si-O-Si結合の湾曲振動吸収ピークであり、1107cm
-1部のピークは、Si-O結合の吸収振動ピークであり、3450 cm
-1部のピークは、水酸基吸収ピークである。曲線2及び3において、977 cm
-1部でO-P-O反対称伸縮ピーク、1330 cm
-1部で吸収ピークが広くなり、P-O結合に帰属可能な伸縮振動ピーク、S=O結合の非対称伸縮振動とSi-O-Si結合の反対称伸縮振動とを重ね合わせた効果が認められ、これは、メタケイ酸-リン酸の骨格中のP-O基の引張振動によるものである。一方、曲線1(乾燥メタケイ酸固体粉末)において、この二つのピークは認められなかった。そのため、リン酸化の又はスルホン酸化/リン酸化のメタケイ酸粒子中で、リン酸基とスルホン酸基が共有結合でメタケイ酸分子上に結合することを示している。
【0165】
また、本発明の固体酸触媒は、製油分野の触媒分解蒸留反応と(オレフィンとパラフィンの)アルキル化反応にも用いられることができる。例えば、この触媒は、2-ブチレンとイソブタンと反応に用いて、2,2,3-トリメチルペンタンを得る。
【0166】
<実施例22(適用例)>
シリルスルホン酸触媒(実施例1からの)0.5kg、2-ブチレン5kgとイソブタン35 kgを高圧反応釜に加え、密封し、反応圧力を1 MPaに保持し、反応温度100℃、4時間反応させた。結果から分かるように、2-ブチレンの転化率は、84%であり、目的物2,2,3-トリメチルペンタン(アルキル化ガソリン、C8生成物)の選択性は、98%であり、このアルキル化ガソリンは、高オクタン価を有し、そのRON値は、98であった。
【0167】
本実施例22では、固体酸触媒が製油分野のアルキル化反応に理想的に用いることができることを説明した。
【0168】
比較として、上記の過程を繰り返し、0.5kgシリルスルホン酸触媒(実施例1からの)の代わりに0.65 kgシリルリン酸触媒(実施例20からの)のみを用いた。2-ブチレンの転化率は、81 %であり、及び目的物の選択性は、93%であった。
【0169】
また、比較として、上記の過程を繰り返し、0.5kgシリルスルホン酸触媒(実施例1からの)の代わりに0.6 kgシリルスルホン酸/リン酸触媒(実施例21からの)のみを用いた。2-ブチレンの転化率は、82 %であり、及び目的物の選択性は、95%であった。
【0170】
上記結果は、強酸を触媒として必要とする反応に用いた場合、シリルスルホン酸触媒に近い転化率と収率を達成するためには、シリルリン酸触媒とシリルスルホン酸/リン酸触媒をより多く使用する必要があることを示している。
【0171】
<実施例23(適用例)>
β-エナミンケトンの製造に用いられるシリルリン酸触媒
アセチルアセトン(100.11mg、1.0mmol)とシクロヘキシルアミン(92.19mg、1.0mmol)を500mlフラスコに加えて混合し、実施例20のシリルリン酸触媒(1.2 mg)を添加し、混合物を50℃油浴で加熱するとともに、混合物を攪拌した。TLC検出により原料が消失し、反応を停止させ、反応混合物に150mlのジクロロメタンを加えてこの混合物を希釈し、ろ過し、固体をジクロロメタンで洗浄した。得られた濾液を減圧蒸留して溶媒を除去した。残留物をカラムで精製し(3:1
石油エーテル/酢酸エチル)、黄色油状液体を得、目的物は、4-シクロヘキシルアミン-ペンチル-3-エン-2-オンであり、収率は、96%であった。
【0172】
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ:10.98(br s, 1H, NH), 4.90(s, 1H, CH), 3.36(t, J=4.5 Hz, 1H, CH), 1.98(s, 3H, CH3), 1.93(s, 3H,
CH3), 1.73-1.87(m, 4H, CH2), 1.21-1.38(m, 6H, CH2); 13C NMR(100 MHz, CDCl3) δ:194.4(C=O), 161.8(C), 94.9(CH), 51.5(CH), 33.8(CH2), 28.7(CH2), 25.3(CH2), 24.4(CH3), 18.6(CH3). MS(ESI)(m/z): 182.3 ([M+H]+ )。
【0173】
比較として、上記の過程を繰り返し、等量のシリルスルホン酸触媒(実施例1からの)のみを用いた。目的物の収率は、92%であった。これは、シリルリン酸がシリルスルホン酸よりもβ-エナミンケトンの製造に適していることを示している。
【0174】
分析と特性評価
1. 実施例1の固体シリルスルホン酸触媒粒子の分析:
実施例1のメタケイ酸ゲルの乾燥過程において、乾燥温度と乾燥時間を制御し、メタケイ酸粒子の水分を予め十分に除去した後、焼成し、焼成過程において粒子の崩壊の発生を防止することによって、焼成後の触媒粒子の構造と形状の保持に有利である。焼成後の触媒粒子(即ち、シリルスルホン酸)の基質は、アモルファス系形態又はアモルファス系-規則構造混合物形態の二酸化ケイ素基質である。
【0175】
メタケイ酸と実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒材料(略称:触媒)のFT-IR図を
図1に示す。
【0176】
図1から分かるように、メタケイ酸がスルホン化された後、1394 cm
-1部で新たな赤外線特徴吸収ピークが現れ、O=S=Oの伸縮振動に帰属する。また、1101 cm
-1部に位置する赤外線特徴信号ピークの強度も有意に増大したのは、スルホン酸基におけるO-S-Oの赤外線特徴吸収ピークが触媒骨格主体Si-O-Siの非対称伸縮振動信号ピークと重なっているためである。
【0177】
メタケイ酸と実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒材料のN2吸着-脱離図(A)と孔径分布図(B)を
図2に示す。
【0178】
図2(A)から分かるように、IUPAC分類により、メタケイ酸と無機固体シリルスルホン酸触媒材料のN
2吸着~脱離等温線は、いずれも典型的なLangmuir IV型等温吸着線を示し、且つ明確なH1型ヒシテリシスが存在し、これは、メソ細孔材料の典型的な特徴である。また、メタケイ酸がスルホン化された後、その比表面積と孔構造は、ほぼ一定に維持される。
【0179】
メタケイ酸と実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒材料のピリジン吸着赤外線スペクトログラムを
図3に示す。
【0180】
図3から、メタケイ酸試料は、1400~1640 cm
-1波長範囲内で有意な赤外線吸収ピークが認められなかったことが認められる。スルホン化後、無機固体シリルスルホン酸触媒材料は、1400~1640 cm
-1波長範囲内で四つの明らかな赤外線特徴吸収ピークが現れた。そのうち、1454 cm
-1と1622 cm
-1部に位置する赤外線吸収ピークは、ピリジンがLewis酸中心に吸着する特徴吸収ピークであり、1546 cm
-1部に位置する赤外線吸収ピークは、ピリジンがBronsted酸中心に吸着する特徴吸収ピークであり、これは、主に-SO
3H基によって提供され、1491 cm
-1部に位置する赤外線吸収ピークは、ピリジンがLewis酸及びBronsted酸の中心に同時に吸着することにより、共同作用によって生じる特徴吸収ピークである。
【0181】
メタケイ酸と実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒材料のNH
3~TPDスペクトルを
図4に示す。
【0182】
図4から、メタケイ酸をスルホン化した後に得られた無機固体シリルスルホン酸触媒材料のTPD曲線は、50~200 ℃、200~400 ℃と400~800 ℃範囲内で三つの明らかなNH
3脱離ピークが現れ、それぞれ、NH
3がその表面弱酸性部位、中強酸性部位と強酸性部位上に吸着した脱離ピークに対応しているが、メタケイ酸表面には、少量の弱酸性部位のみが存在することが認められる。
【0183】
メタケイ酸と実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒材料の熱重量図を
図5に示す。
【0184】
図5中から、メタケイ酸は、100 ℃までにのみ明らかな減量ピークが現れることが認められ、これは、メタケイ酸表面の物理吸着水の脱離によるものである。メタケイ酸がスルホン化された後、明らかな熱減量がなかったことは、製造された無機固体シリルスルホン酸触媒材料が良好な熱安定性を持つことを示している。
【0185】
図2における非常に完璧なピークから、オルソケイ酸ゲルの結晶化により、そのうちの結晶形構造と空隙構造の両方が改善され、そして比表面積が著しく向上したメタケイ酸ゲル又は結晶体が得られたことが認められる。乾燥前と乾燥後のメタケイ酸ゲル又は結晶体及び最終的なシリルスルホン酸粒子は、いずれもメソ細孔材料である。これらのメソ細孔材料の構造特徴は、明らかな差がなく、そしてそれらの細孔容積(pore volume)は、いずれも約0.9 cm
2/gであり、及び孔径は、約0.87nmであった。
【0186】
特に、すべてのこれらのメソ細孔材料は、強酸による腐食に耐えることができる。
【0187】
株式会社リガク(Japan Rigaku)のD/Max-2550VB+ 18 KW型番の粉末X-線回折スペクトル分析装置を用いて、試料のXRDスペクトルを取得した。乾燥と未焼成の固体メタケイ酸粉末、及び乾燥と未焼成の固体シリルスルホン酸粉末のXRDスペクトルを
図7に示す。乾燥と焼成した固体メタケイ酸粉末、及び乾燥と焼成した固体シリルスルホン酸粉末のXRDスペクトルを
図8に示す。2θ角が22
oである部でのピークは、メタケイ酸とシリカスルホン酸の特徴回折ピークを表す。
図8から、焼成後の回折ピークが明らかに滑らかになっていることが認められ、これは、固体酸の焼成後の固体酸の強度が著しく向上していることを示しており、焼成後の固体酸の結晶度が著しく向上し、アモルファス系形態の又は短距離規則正しい配列アモルファス系混合形態の二酸化ケイ素結晶体であることも示している。焼成後の固体酸の基質は、シリカゲルではない。また、メタケイ酸がスルホン化された後、その回折ピークの強度と結晶度は、略変化せず、スルホン化過程において、メタケイ酸の結晶形構造が破壊されていないことが示唆される。
【0188】
実施例1で得られたメタケイ酸とシリルスルホン酸の粒子径分布は、MALVERN社製レーザー粒度計により測定したものであり、例えば
図9及び10に示すように。メタケイ酸粒子とシリルスルホン酸粒子の平均粒径は、いずれも約95μmであり、これは、スルホン化反応がメタケイ酸粒子のサイズを変化させないことを示している。
【0189】
実施例1の焼成した無機固体シリルスルホン酸粒子生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を
図11に示す。ここで、二酸化ケイ素は、市販の対照試料である。SEM写真から分かるように、粒子の平均粒径は、約90μmであり、そして比較的に良好な抗圧潰強さを持つことが認められる。
【0190】
実施例の触媒に対して元素分析を行った結果から分かるように、アルカリ金属(例えばナトリウムとカリウム)の含有量は、検出限界未満(3 ppm未満)であり、アルカリ土類金属(例えばカルシウムとマグネシウム)の含有量は、検出限界未満であった。
【0191】
2.実施例2のシリルスルホン酸粒子のFT-IR分析:
実施例2におけるメタケイ酸と焼成した無機固体シリルスルホン酸粒子のFT-IRスペクトルを
図12に示す。
【0192】
1394cm-1部において、S=O結合の対称伸縮振動吸収ピークである。476cm-1部において、Si-O結合の湾曲振動吸収ピークである。800cm-1部において、Si-O-Si結合の対称伸縮振動吸収ピークである。965cm-1部の吸収ピークは、Si-OH結合の湾曲振動弱吸収ピーク(二酸化ケイ素はこのピークがない)である。1091cm-1部の吸収ピークが広くなり、これは、S=O結合の非対称伸縮振動とSi-O-Si結合の反対称伸縮振動とを重ね合わせた効果に帰属可能である。3421cm-1部の吸収ピークは、表面水酸基の赤外線吸収ピークである。市販の二酸化ケイ素試料は、非常に弱いHOピークを持ち、保管中に空気から微量の水が吸着していることを示している。
【0193】
<比較例3>
US3929972の実施例Iを繰り返し、異なるのは、得られた中間生成物(即ち、「ゾル-ゲル」軟皮-「メタケイ酸ナトリウム」硬芯形態の粒子)を更に乾燥及び焼成する点である。US特許の実施例Iでは、メタケイ酸ナトリウムの粒度は開示されていない。
【0194】
硬いメタケイ酸ナトリウム五水和物(ガラス状)1kgを粉砕、研磨した。研磨操作は、非常に困難であった。得られた粒子物を2部分に分けられ、これらの2部分の粒子物は、それぞれ篩孔サイズが220 μmと300 μmである二つの篩で篩分けし、粒径がそれぞれ220μmと300μmよりも大きいケイ酸ナトリウム五水和物細粒子(M1)(その平均粒度は、約350μmである)とケイ酸ナトリウム五水和物粗粒子(M2)(その平均粒度は、約440μmである)を得た。ケイ酸ナトリウム五水和物細粒子(M1)とケイ酸ナトリウム五水和物粗粒子(M2)から60gの細粒子原料と60gの粗粒子原料をそれぞれ秤量し、そしてUS3929972の実施例Iにおける操作を繰り返し、1:4のメタケイ酸ナトリウムと硫酸とのモル比に従って濃硫酸(98wt%)を用いて100℃下でスルホン化反応させた。スルホン化反応を約25分間行った後、反応混合物が粘稠なスラリーとなり、攪拌がますます困難になってきたため、再び1:2のメタケイ酸ナトリウムと硫酸とのモル比に従って濃硫酸を添加し、スルホン化反応を5時間行った。スルホン化反応混合物(即ち粒子状混合物)を砂ろ過器でろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄した。得られた白色固体粉末(湿固体)を110℃下で5h真空乾燥し、乾燥した無機固体シリルスルホン酸粉末を得た。そして、得られた乾燥粉末に別の2 molの硫酸/molあたりのメタケイ酸ナトリウムを添加して更に反応させ、得られた反応混合物を砂ろ過器でろ過し、ケーキを濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、細原料(M1)と粗原料(M2)から白色粒子状化合物(T1)と(T2)をそれぞれ得た。
【0195】
これらの化合物(T1)と(T2)は、スラリーのように見え、化合物(T1)と(T2)の平均粒度は、それぞれ約27 μmと約45 μmであった。スルホン化化合物粒子の粒度が著しく小さくなるため、形成されたスルホン化化合物粒子が酸に対して耐性がなく、硫酸がメタケイ酸ナトリウム粒子を徐々に腐食し(即ち溶解)、形成されたシリルスルホン酸分子が粒子から脱離して硫酸溶液(液相)に入ることを示している。粒子状化合物(T1)又は(T2)手のひらにつかんで揉み、柔軟、砂質手触りがないことを感じた。当然ながら、粒子状化合物(T1)又は(T2)の表面上には、シリルスルホン酸分子が存在し、そして粒子(T1)又は(T2)の構造は、硬芯-軟皮(rigid core-soft skin)構造であり、ここで、硬芯は、粒子(T1)又は(T2)の基質部としてのメタケイ酸ナトリウムであり、この軟皮は、メタケイ酸及びシリルスルホン酸からなる相対的柔軟なゾル-ゲル混合物である。
【0196】
粒子状化合物(T1)から試料3gを秤量し、攪拌器を備えたフラスコ中に加えた後、その中に20 mlの濃硫酸を添加し、攪拌下で90℃まで加熱してスルホン化反応を行った。スルホン化反応の進行に伴い、メタケイ酸ナトリウム硬芯が徐々に小さくなり、最終的に軟皮と硬芯の両方も消失し、それらは、硫酸により単分子シリカスルホン酸化合物とナノスケールサイズの微細粒子状シリカスルホン酸化合物に分解された。
【0197】
比較のために、粒子状化合物(T1)と(T2)を110℃下でそれぞれ5h真空乾燥し、乾燥した無機固体シリルスルホン酸粉末(T1A)と(T2A)を得た。そして、乾燥したスルホン化固体粉末を窒素雰囲気下で3h焼成し、焼成温度は、200℃であり、焼成した粉末状のシリルスルホン酸粒子(T1B)と(T2B)を得た。
【0198】
【0199】
粉末状のシリルスルホン酸粒子(T2B)の粒度分布を測定した結果を
図14に示す。
図14から、粒子径分布は、非常に広いことが認められる。
【0200】
シリルスルホン酸粉末(T1A)と(T2A)及びシリルスルホン酸粒子(T1B)と(T2B)の試料に対してXRDスペクトル分析結果を
図15に示す。
図15から、シリルスルホン酸粒子(T1B)と(T2B)の結晶形構造は、アモルファス系に属し、結晶度が低く、強度が弱
いことが認められる。
【0201】
焼成した粒子(T1B又はT2B)内部のメタケイ酸ナトリウム基質が塩基性化合物であるため、粒子(T1B又はT2B)は酸に対して耐性がない。焼成した粒子(T1B又はT2B)が酸性の反応系において触媒として使用されると、徐々に分解される。
【0202】
また、上記のケイ酸ナトリウム五水和物細粒子(M1)を用いて、上述した製造過程を繰り返し、スルホン化反応の温度は、それぞれ80℃、90℃、110℃と120℃であり、得られた焼成シリルスルホン酸粒子生成物の酸量は、それぞれ0.378、0.402、0.398と0.385 mmol/gであり、これは、US3929972の実施例Iにおいて、最適なスルホン化反応温度が約100℃であることを示している。スルホン化反応において形成されたシリルスルホン酸分子がメタケイ酸ナトリウム粒子上から脱離するため、最終的に得られた粒子(T1B)と(T2B)の酸量は、非常に低い。
【0203】
また、我々の実験結果から分かるように、メタケイ酸ナトリウム原料五水和物の代わりに無水メタケイ酸ナトリウム又はメタケイ酸ナトリウム九水和物原料を用いてUS特許の実施例Iを繰り返した場合、得られた様々な結果は、上記の結果とほぼ同様であった。
【0204】
また、US特許の請求項から分かるように、US特許の目的は、シリルスルホン酸粒子又は粉末ではなく、単分子化合物SiO(HSO4)2とナノスケールサイズの微細粒子状化合物を提供することである。
【0205】
<比較例4>
シリカゲル(二酸化ケイ素)直接スルホン化法によりシリカゲルスルホン酸触媒材料を製造した。
【0206】
オルトケイ酸テトラエチル200 mL、イソプロパノール200 mL、水200 mLを取って、pH = 3を濃硝酸で調整し、水200 mLを加え、攪拌下で徐々に80 eまで加熱し、3 h加水分解して薄緑色ゲルを得、24 h劣化した後、110
e温度下で24 h乾燥し、90μmのシリカゲルを研磨形成した。
【0207】
5gの90μmのシリカゲルを25mLクロロ硫酸に加えて直接スルホン化させ、攪拌し、130℃下で6hスルホン化させた後、室温まで冷却し、ろ過し、濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄しなかった。得られた白色固体粉末を110℃下で5h真空乾燥し、最後に、無機固体シリカゲルスルホン酸触媒材料を得、その酸量の測定結果は、31.653 mmol/gであった。
【0208】
スルホン化後得られた固体試料を濾液が中性になるまで脱イオン水で洗浄し、そして得られた白色固体粉末を110℃下で5h真空乾燥し、最後に、無機固体シリカゲルスルホン酸触媒材料を得、その酸量の測定結果は、わずか0.128mmol/gであった。これは、シリカゲルがクロロ硫酸に対して強い吸着作用を有することを示唆している。スルホン化粒子を脱イオン水で洗浄しない場合、シリカゲルの表面に多くのクロロ硫酸が吸着され、測定された酸量を大きく向上させた。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【
図1】本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒の赤外線特徴付けFT-IR図である。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【
図2】本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒のN
2吸着-脱離図(A)と孔径分布図(B)である。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【
図3】本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒のピリジン吸着赤外線スペクトログラムである。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【
図4】本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒のNH
3~TPD(ammonia temperature programmed desorption)スペクトルである。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【
図5】本発明の実施例1の無機固体シリルスルホン酸触媒の熱重量図である。図中、1:メタケイ酸、2:シリルスルホン酸。
【
図6】シリルスルホン酸を製造する反応過程である。図中、a:ケイ酸塩、b:ケイ酸エステル、c:シリカゲル、1:メタケイ酸、2:固体シリルスルホン酸触媒材料、3:無機酸、4:スルホン化試薬。
【
図7】実施例1の乾燥であるが焼成されていない固体酸触媒のXRDスペクトルである。図中、1:シリルスルホン酸粉末(未焼成)、2:メタケイ酸粉末(未焼成)。
【
図8】実施例1の焼成後の固体酸触媒のXRDスペクトルである。図中、1:焼成後のメタケイ酸粉末、2:焼成後のシリルスルホン酸粉末。
【
図9】
図9および10は、それぞれ、実施例1で得られたメタケイ酸とシリルスルホン酸の粒子径分布である。
【
図10】
図9および10は、それぞれ、実施例1で得られたメタケイ酸とシリルスルホン酸の粒子径分布である。
【
図11】実施例1の焼成した無機固体シリルスルホン酸粒子生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図12】実施例2における乾燥メタケイ酸と焼成した無機固体シリルスルホン酸粒子のFT-IRスペクトルである。図中、1:二酸化ケイ素粉末、2:メタケイ酸粉末、3:焼成後のシリルスルホン酸粉末。
【
図13】実施例20のリン酸化の無機固体メタケイ酸粉末と実施例21のスルホン酸化/リン酸化の無機固体メタケイ酸粉末のFT-IRスペクトルである。図中、1:メタケイ酸粉末、2:リン酸化のメタケイ酸粉末、3:スルホン酸化/リン酸化のメタケイ酸粉末。
【
図14】比較例3の粉末状のシリルスルホン酸粒子(T2B)の粒度分布である。
【
図15】比較例3の固体シリルスルホン酸のXRDスペクトルである。