(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】バッテリ診断装置、バッテリ診断方法、バッテリパック及び自動車
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20240508BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240508BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G01R31/396
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2022559439
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2021017684
(87)【国際公開番号】W WO2022114871
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0163366
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヨン-チュル
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヤン-スー
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-85916(JP,A)
【文献】特開2001-27663(JP,A)
【文献】特開2019-39825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372805(US,A1)
【文献】国際公開第2020/158182(WO,A1)
【文献】特開2020-91248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0025832(US,A1)
【文献】特表2023-538347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のバッテリセルを含むセルグループのためのバッテリ診断装置において、
各バッテリセルのセル電圧
を示す電圧信号を
周期的に生成する電圧センシング回路と、
前記電圧信号に基づいて、前記各バッテリセルの前記セル電圧の経時変化を示す時系列データを生成する制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、
(i)前記時系列データに基づいて前記各バッテリセルの、
第1ムービングウィンドウによる短期移動平均である第1平均セル電圧と、
第2ムービングウィンドウによる長期移動平均である第2平均セル電圧とを決定し、
(ii)前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に基づいて前記各バッテリセルの電圧異常を検出
し、
前記第1ムービングウィンドウの時間長および前記第2ムービングウィンドウの時間長は、電圧異常が発生したバッテリセルの前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差が、電圧異常が発生していないバッテリセルの前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差から偏差を有するように、設定される、バッテリ診断装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、
前記各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差に該当するセル診断偏差を決定し、
前記セル診断偏差が診断閾値を超える条件を満たすバッテリセルを電圧異常セルとして検出する、請求項1に記載のバッテリ診断装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記各バッテリセルについて、前記セル診断偏差の時系列データを生成し、前記セル診断偏差が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超える前記セル診断偏差のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出する、請求項2に記載のバッテリ診断装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、
前記各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差を算出してセル診断偏差を決定し、
前記全バッテリセルのセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定し、
前記各バッテリセルのセル診断偏差に関する時系列データを、前記統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成し、
前記フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超える前記フィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出する、請求項
1に記載のバッテリ診断装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、
前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定し、全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定し、
前記各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、前記統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成し、
前記フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出する、請求項
1に記載のバッテリ診断装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差を全バッテリセルの長短期平均差の平均値で除算して前記長短期平均差を正規化する、請求項
5に記載のバッテリ診断装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差のログ演算により前記長短期平均差を正規化する、請求項
5に記載のバッテリ診断装置。
【請求項8】
前記制御回路は、
単位時間毎に測定された、全バッテリセルのセル電圧平均値と前記各バッテリセルのセル電圧との差に該当する電圧を用いて、前記各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを生成する、請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリ診断装置。
【請求項9】
前記制御回路は、
各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、
前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定し、
前記各バッテリセルについて、前記正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成し、
(i)前記各バッテリセルの前記正規化されたセル診断偏差の時系列データについて、
前記第1ムービングウィンドウによる短期移動平均である第1移動平均、及び
前記第2ムービングウィンドウによる長期移動平均である第2移動平均を決定することと、(ii)前記各バッテリセルについて、前記第1移動平均と前記第2移動平均との差に該当する長短期平均差を決定することと、(iii)前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定することと、(iv)前記各バッテリセルについて、前記正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成することと、を少なくとも1回以上再帰的に繰り返し、前記各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成し、
全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定し、
前記各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、前記統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成し、
前記フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出する、請求項
1に記載のバッテリ診断装置。
【請求項10】
前記第2ムービングウィンドウの時間長は、前記第1ムービングウィンドウの時間長の10倍以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載のバッテリ診断装置。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載のバッテリ診断装置を含む、バッテリパック。
【請求項12】
請求項
11に記載のバッテリパック
の電力を用いて駆動するモータによって駆動される、自動車。
【請求項13】
直列に接続された複数のバッテリセルを含むセルグループのためのバッテリ診断方法において、
(a)各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを周期的に生成するステップと、
(b)前記時系列データに基づいて各バッテリセルの、
第1ムービングウィンドウによる短期移動平均である第1平均セル電圧と、
第2ムービングウィンドウによる長期移動平均である第2平均セル電圧とを決定するステップと、
(c)前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に基づいて各バッテリセルの電圧異常を検出するステップと、
を含
み、
前記第1ムービングウィンドウの時間長および前記第2ムービングウィンドウの時間長は、電圧異常が発生したバッテリセルの前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差が、電圧異常が発生していないバッテリセルの前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差から偏差を有するように、設定される、バッテリ診断方法。
【請求項14】
前記(c)ステップは、
(c1)前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、
(c2)前記各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差に該当するセル診断偏差を決定するステップと、
(c3)前記セル診断偏差が診断閾値を超える条件を満たすバッテリセルを電圧異常セルとして検出するステップと、を含む、請求項
13に記載のバッテリ診断方法。
【請求項15】
前記(c)ステップは、
(c1)前記各バッテリセルについて前記セル診断偏差の時系列データを生成するステップと、
(c2)前記セル診断偏差が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超える前記セル診断偏差のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含む、請求項
14に記載のバッテリ診断方法。
【請求項16】
前記(c)ステップは、
(c1)前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、
(c2)前記各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差を算出してセル診断偏差を決定するステップと、
(c3)前記全バッテリセルのセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定するステップと、
(c4)前記各バッテリセルのセル診断偏差に関する時系列データを、前記統計的可変閾値を基準としてフィルタリングして、前記各バッテリセルについてフィルタ診断値の時系列データを生成するステップと、
(c5)前記フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超える前記フィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含む、請求項
13に記載のバッテリ診断方法。
【請求項17】
前記(c)ステップは、
(c1)前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、
(c2)前記各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定するステップと、
(c3)全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定するステップと、
(c4)前記各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、前記統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成するステップと、
(c5)前記フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超える前記フィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含む、請求項
13に記載のバッテリ診断方法。
【請求項18】
前記(c2)ステップは、
前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差を全バッテリセルの長短期平均差の平均値で除算して前記長短期平均差を正規化するステップである、請求項
17に記載のバッテリ診断方法。
【請求項19】
前記(c2)ステップは、
前記各バッテリセルについて、前記長短期平均差のログ演算により前記長短期平均差を正規化するステップである、請求項
17に記載のバッテリ診断方法。
【請求項20】
前記(a)ステップは、
単位時間毎に測定された、全バッテリセルのセル電圧平均値と各バッテリセルのセル電圧との差に該当する電圧を用いて、前記各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを生成するステップである、請求項
13から
19のいずれか一項に記載のバッテリ診断方法。
【請求項21】
前記(c)ステップは、
(c1)前記各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、
(c2)前記各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定するステップと、
(c3)前記各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成するステップと、
(c4)(i)前記各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差の時系列データについて、
前記第1ムービングウィンドウによる短期移動平均である第1移動平均、及び
前記第2ムービングウィンドウによる長期移動平均である第2移動平均を決定することと、(ii)前記各バッテリセルについて、第1移動平均と第2移動平均との差に該当する長短期平均差を決定することと、(iii)前記各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定することと、(iv)前記各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成することと、を少なくとも1回以上再帰的に繰り返し、前記各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成するステップと、
(c5)全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定するステップと、
(c6)前記各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、前記統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成するステップと、
(c7)前記フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または前記診断閾値を超える前記フィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含む、請求項
13に記載のバッテリ診断方法。
【請求項22】
前記第2ムービングウィンドウの時間長は、前記第1ムービングウィンドウの時間長の10倍以上である、請求項13から21のいずれか一項に記載のバッテリ診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電圧異常を診断する技術に関する。
【0002】
本出願は、2020年11月27日付け出願の韓国特許出願番号第10-2020-0163366号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気車両、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能バッテリに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、商用化されているバッテリとしてはニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリなどが挙げられるが、そのうちリチウムバッテリは、ニッケル系列のバッテリに比べてメモリ効果が殆ど起きないため充放電が自在であり、自己放電率が非常に低くエネルギー密度が高いという長所で脚光を浴びている。
【0005】
近年、高電圧が要求されるアプリケーション(例えば、エネルギー貯蔵システム、電気車両)が広く普及しているにつれて、バッテリパックに直列に接続された複数のバッテリセルのそれぞれの電圧異常を正確に検出する診断技術の必要性が高まっている。
【0006】
バッテリセルの電圧異常とは、内部短絡、外部短絡、電圧センシングラインの故障、充放電ラインとの接続不良などにより、セル電圧が異常に低下および/または上昇する故障状態を意味する。
【0007】
従来、特定の時点での各バッテリセルの両端にわたる電圧であるセル電圧を、上記特定の時点と同一時点での複数のバッテリセルの平均セル電圧と比較することにより、各バッテリセルの電圧異常を診断する試みがなされてきた。しかしながら、各バッテリセルのセル電圧は、当該バッテリセルの温度、電流および/または健康状態(SOH:State Of Health)などにも依存するので、単に特定の時点で複数のバッテリセルについて測定されたセル電圧を比較する過程だけでは各バッテリセルの電圧異常を正確に診断しにくい。例えば、電圧異常のないバッテリセルであっても、残りのバッテリセルとの温度偏差やSOH偏差が大きい場合、当該バッテリセルのセル電圧と平均セル電圧との差も大きくなることがある。
【0008】
かかる問題を解決するために、各バッテリセルの電圧異常を診断する際に、各バッテリセルのセル電圧とともに、充放電電流、各バッテリセルの温度及び/又は各バッテリセルの充電状態(SOC:State Of Charge)等の追加パラメータを用いることが考えられる。しかしながら、追加のパラメータを利用する診断方式は、各パラメータの検出過程及び相互比較過程を伴わなければならないので、セル電圧を単一のパラメータとして用いる診断方式に比べて、比較的複雑で長い時間がかかるという制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するために案出されたものであり、単位時間毎に、所定の時間長を有する少なくとも1つのムービングウィンドウのそれぞれについて、複数のバッテリセルの各々のセル電圧の移動平均を決定し、各バッテリセルの各移動平均に基づいて、各バッテリセルの電圧異常を効率的かつ正確に診断するためのバッテリ診断装置、バッテリ診断方法、バッテリパックおよび自動車を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現できることが容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を達成するためのバッテリ診断装置は、直列に接続された複数のバッテリセルを含むセルグループのためのバッテリ診断装置であり、各バッテリセルのセル電圧を周期的に示す電圧信号を生成するように構成される電圧センシング回路と、前記電圧信号に基づいて、各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを生成するように構成される制御回路と、を含んでいてもよい。
【0012】
好ましくは、前記制御回路は、(i)前記時系列データに基づいて各バッテリセルの第1平均セル電圧と第2平均セル電圧を決定し(ここで、前記第1平均セル電圧は短期移動平均であり、前記第2平均セル電圧は長期移動平均である)、(ii)前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に基づいて各バッテリセルの電圧異常を検出するように構成されてもよい。
【0013】
一態様では、前記制御回路は、各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差に該当するセル診断偏差を決定し、セル診断偏差が診断閾値を超える条件を満たすバッテリセルを電圧異常セルとして検出するように構成されてもよい。
【0014】
好ましくは、前記制御回路は、各バッテリセルについて、セル診断偏差の時系列データを生成し、セル診断偏差が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるセル診断偏差のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するように構成されてもよい。
【0015】
他の態様では、前記制御回路は、各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差を算出してセル診断偏差を決定し、全バッテリセルのセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定し、各バッテリセルのセル診断偏差に関する時系列データを、統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成し、フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するように構成されてもよい。
【0016】
さらに他の態様では、前記制御回路は、各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定し、全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定し、各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成し、フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するように構成されてもよい。
【0017】
好ましくは、前記制御回路は、各バッテリセルについて、長短期平均差を全バッテリセルの長短期平均差の平均値で除算して長短期平均差を正規化してもよい。
【0018】
あるいは、前記制御回路は、各バッテリセルについて、長短期平均差のログ演算により長短期平均差を正規化してもよい。
【0019】
さらに他の態様では、前記制御回路は、単位時間毎に測定された、全バッテリセルのセル電圧平均値と各バッテリセルのセル電圧との差に該当する電圧を用いて、各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを生成するように構成されてもよい。
【0020】
さらに他の態様では、前記制御回路は、各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定し、各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定し、各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成し、
【0021】
(i)各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差の時系列データについて第1移動平均及び第2移動平均を決定すること[ここで、第1移動平均は短期移動平均であり、第2移動平均は長期移動平均である]と、(ii)各バッテリセルについて、第1移動平均と第2移動平均との差に該当する長短期平均差を決定することと、(iii)各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定することと、(iv)各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成することと、を少なくとも1回以上再帰的に繰り返し、各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成し、
【0022】
全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定し、各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成し、フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するように構成されてもよい。
【0023】
上記技術的課題を達成するための本発明によるバッテリ診断方法は、直列に接続された複数のバッテリセルを含むセルグループのためのバッテリ診断方法であり、(a)各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを定期的に生成するステップと、(b)前記時系列データに基づいて各バッテリセルの第1平均セル電圧と第2平均セル電圧を決定するステップ[ここで、前記第1平均セル電圧は短期移動平均であり、前記第2平均セル電圧は長期移動平均である]と、(c)前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に基づいて各バッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含んでいてもよい。
【0024】
一態様では、前記(c)ステップは、(c1)各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、(c2)各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差に該当するセル診断偏差を決定するステップと、(c3)セル診断偏差が診断閾値を超える条件を満たすバッテリセルを電圧異常セルとして検出するステップと、を含んでいてもよい。
【0025】
好ましくは、前記(c)ステップは、(c1)各バッテリセルについてセル診断偏差の時系列データを生成するステップと、(c2)セル診断偏差が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるセル診断偏差のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含んでいてもよい。
【0026】
他の態様では、(c)ステップは、(c1)各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、(c2)各バッテリセルについて、全バッテリセルの長短期平均差の平均値とバッテリセルの長短期平均差との偏差を算出してセル診断偏差を決定するステップと、(c3)全バッテリセルのセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定するステップと、(c4)各バッテリセルのセル診断偏差に関する時系列データを、統計的可変閾値を基準としてフィルタリングして、各バッテリセルについてフィルタ診断値の時系列データを生成するステップと、(c5)フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含んでいてもよい。
【0027】
さらに他の態様では、前記(c)ステップは、(c1)各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、(c2)各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定するステップと、(c3)全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定するステップと、(c4)各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成するステップと、(c5)フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含んでいてもよい。
【0028】
好ましくは、前記(c2)ステップは、各バッテリセルについて、長短期平均差を全バッテリセルの長短期平均差の平均値で除算して長短期平均差を正規化するステップであってもよい。
【0029】
あるいは、前記(c2)ステップは、各バッテリセルについて、長短期平均差のログ演算により長短期平均差を正規化するステップであってもよい。
【0030】
他の態様では、前記(a)ステップは、単位時間毎に測定された、全バッテリセルのセル電圧平均値と各バッテリセルのセル電圧との差に該当する電圧を用いて、各バッテリセルのセル電圧の経時変化を示す時系列データを生成するステップであってもよい。
【0031】
さらに他の態様では、前記(c)ステップは、(c1)各バッテリセルについて、前記第1平均セル電圧と前記第2平均セル電圧との差に該当する長短期平均差を決定するステップと、(c2)各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定するステップと、(c3)各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成するステップと、
【0032】
(c4)(i)各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差の時系列データについて第1移動平均及び第2移動平均を決定すること[ここで、第1移動平均は短期移動平均であり、第2移動平均は長期移動平均である]と、(ii)各バッテリセルについて、第1移動平均と第2移動平均との差に該当する長短期平均差を決定することと、(iii)各バッテリセルについて、長短期平均差の正規化値を、正規化されたセル診断偏差として決定することと、(iv)各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成することと、を少なくとも1回以上再帰的に繰り返し、各バッテリセルについて、正規化されたセル診断偏差の時系列データを生成するステップと、
【0033】
(c5)全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差についての標準偏差に依存する統計的可変閾値を決定するステップと、(c6)各バッテリセルの正規化されたセル診断偏差に関する時系列データを、統計的可変閾値を基準としてフィルタリングしてフィルタ診断値の時系列データを生成するステップと、(c7)フィルタ診断値が診断閾値を超える時間または診断閾値を超えるフィルタ診断値のデータ数からバッテリセルの電圧異常を検出するステップと、を含んでいてもよい。
【0034】
上記技術的課題は、上述したバッテリ診断装置を含むバッテリパックとそれを含む自動車によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様によれば、単位時間毎に、2つの異なる時間長に対する各バッテリセルのセル電圧の2つの移動平均を決定し、複数のバッテリセルのそれぞれの2つの移動平均間の差に基づいて、各バッテリセルの電圧異常を効率的かつ正確に診断することができる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、各バッテリセルの2つの移動平均の変化傾向の差を分析する際に、正規化及び/又は統計的可変閾値などの高度な技法を適用することにより、各バッテリセルの電圧異常を正確に診断することができる。
【0037】
本発明のさらに他の態様によれば、統計的可変閾値を基準として決定されたフィルタ診断値の時系列データを分析して、各バッテリセルの電圧異常が発生した時間区間及び/又は電圧異常検出カウントなどを正確に検出することができる。
【0038】
本発明の効果は、上記の効果に限らず、言及されていない他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者にとって明確に理解できるものであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項のみに限定されて解釈されてはいけない。
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態による電気車両の構成を例示的に示す図である。
【
図2a】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2b】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2c】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2d】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2e】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2f】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2g】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図2h】
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を説明するために参照されるグラフである。
【
図3】本発明の第1実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第3実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第4実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第5実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0042】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0043】
第1、第2などの序数を含む用語は、様々な構成要素のうちのいずれか一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0044】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載の「制御部」のような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組合せで具現され得る。
【0045】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「接続(連結)」されているというとき、これは「直接的に接続(連結)」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「間接的に接続(連結)」されている場合も含む。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態による電気車両の構成を例示的に示す図である。
【0047】
図1を参照すると、電気車両1は、バッテリパック10、インバータ3、電気モータ4、及び車両コントローラ5を含む。
【0048】
バッテリパック10は、セルグループCG、スイッチ6、およびバッテリ管理システム100を含む。
【0049】
セルグループCGは、バッテリパック10に設けられた一対の電源端子を介してインバータ3に結合されてもよい。セルグループCGは、直列接続された複数のバッテリセルBC1~BCN、(Nは2以上の自然数)を含む。各バッテリセルBCiは、リチウムイオンバッテリセルのように再充電できる限り、種類に特に限定されない。iはセルを識別するためのインデックスである。iは1からNまでの自然数である。
【0050】
スイッチ6は、セルグループCGに直列に接続される。スイッチ6は、セルグループCGの充放電のための電流経路に設けられる。スイッチ6は、バッテリ管理システム100からのスイッチング信号に応答してオンオフ制御される。スイッチ6は、コイルの磁力によってオンオフされる機械式リレーであってもよいし、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect transistor)などの半導体スイッチであってもよい。
【0051】
インバータ3は、バッテリ管理システム100からの命令に応答して、セルグループCGからの直流電流を交流電流に変換するために提供される。電気モータ4は、例えば三相交流モータであってもよい。電気モータ4は、インバータ3からの交流電力を用いて駆動する。
【0052】
バッテリ管理システム100は、セルグループCGの充放電に関連する全体的な制御を担当するために提供される。
【0053】
バッテリ管理システム100は、バッテリ診断装置200を含む。バッテリ管理システム100は、電流センサ310、温度センサ320、およびインタフェース部330のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。
【0054】
バッテリ診断装置200は、複数のバッテリセルBC1~BCNのそれぞれの電圧異常を診断するために提供される。バッテリ診断装置200は、電圧センシング回路210と制御回路220とを含む。
【0055】
電圧センシング回路210は、複数の電圧センシングラインを介して複数のバッテリセルBC1~BCNのそれぞれの陽極および陰極に接続される。電圧センシング回路210は、各バッテリセルBCの両端にわたるセル電圧を測定し、測定されたセル電圧を表す電圧信号を生成するように構成される。
【0056】
電流センサ310は、電流経路を介してセルグループCGに直列に接続される。電流センサ310は、セルグループCGを通って流れるバッテリ電流を検出し、検出されたバッテリ電流を表す電流信号を生成するように構成される。
【0057】
温度センサ320は、セルグループCGの温度を検出し、検出された温度を表す温度信号を生成するように構成される。
【0058】
制御回路220は、ハードウェア的に、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuits)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processors)、デジタル信号処理装置(DSPD:digital signal processing devices)、プログラマブルロジックデバイス(PLD:programmable logic devices)、フィールド プログラマブル ゲートアレイ(FPGA:field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサ(microprocessors)、およびその他の機能遂行のための電気ユニットのうちの少なくとも1つを使用して実現されてもよい。
【0059】
制御回路220は、メモリ部を有することができる。メモリ部は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、ソリッドステートディスタイプ(SSDタイプ:Solid State Disk type)、シリコンディスクドライブタイプ(SDDタイプ:Silicon Disk Drive type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM:static random access memory)、リードオンリーメモリ(ROM:read-only memory)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM:electrically erasable programmable read-only memory)、およびプログラム可能な読み取り専用メモリ(PROM:programmable read-only memory)のうち少なくとも一つのタイプの記憶媒体を含み得る。メモリ部は、制御回路220による演算動作に必要なデータ及びプログラムを記憶することができる。メモリ部は、制御回路220による演算動作の結果を示すデータを記憶することができる。特に、制御回路220は、後述する単位時間毎に演算される様々なパラメータのうちの少なくとも1つをメモリ部に記録することができる。
【0060】
制御回路220は、電圧センシング回路210、温度センサ320、電流センサ310、インタフェース部330、および/またはスイッチ6に動作可能に結合され得る。制御回路220は、センシング信号を電圧センシング回路210、電流センサ310および温度センサ320から収集することができる。センシング信号は、同期検出された電圧信号、電流信号および/または温度信号を指す。
【0061】
インタフェース部330は、制御回路220と車両コントローラ5(例えば、エレクトロニックコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)との間の有線通信または無線通信をサポートするように構成された通信回路を含み得る。有線通信は、例えばコントローラエリアネットワーク(CAN:contoller area network)通信であり得、無線通信は、例えば、ZigBee(登録商標)またはBluetooth(登録商標)通信であり得る。制御回路220と車両コントローラ5との間の有無線通信をサポートする限り、通信プロトコルの種類は特に限定されないことは言うまでもない。
【0062】
インタフェース部330は、車両コントローラ5および/または制御回路220から受信した情報をユーザが認識可能な形態で提供する出力装置(例えば、ディスプレイ、スピーカ)と組み合わせることができる。車両コントローラ5は、バッテリ管理システム100との通信を通じて収集されるバッテリ情報(例えば、電圧、電流、温度、SOC)に基づいてインバータ3を制御することができる。
【0063】
図2aから
図2hは、
図1に示す複数のバッテリセルのそれぞれのセル電圧の経時変化を示す時系列データから各バッテリセルの電圧異常を診断する過程を例示的に示すグラフである。
【0064】
図2aは、複数のバッテリセルBC
1~BC
Nのそれぞれの電圧曲線を示す。バッテリセルの数は14個である。制御回路220は、単位時間毎に電圧センシング回路210からの電圧信号を収集し、各バッテリセルBC
iのセル電圧の電圧値をメモリ部に記録する。単位時間は、電圧センシング回路210の電圧測定周期の整数倍であってもよい。
【0065】
制御回路220は、メモリ部に記録された各バッテリセルBCiのセル電圧の電圧値に基づいて、各バッテリセルのセル電圧の経時的な履歴を示すセル電圧時系列データを生成することができる。セル電圧が測定されるたびに、セル電圧時系列データの数が1つずつ増加する。
【0066】
図2aに示す複数の電圧曲線は、複数のバッテリセルBC
1~BC
Nに一対一に関連付けられている。したがって、各電圧曲線は、それに関連するいずれか1つのバッテリセルBCのセル電圧の変化履歴を示す。
【0067】
制御回路220は、1つのムービングウィンドウまたは2つのムービングウィンドウを用いて、複数のバッテリセルBC1~BCNのそれぞれの移動平均を単位時間毎に決定することができる。2つのムービングウィンドウを使用する場合、一方のムービングウィンドウの時間長は他方のムービングウィンドウの時間長とは異なる。
【0068】
ここで、各ムービングウィンドウの時間長は単位時間の整数倍であり、各ムービングウィンドウの終了点は現時点であり、各ムービングウィンドウの開始点は、現時点から所定の時間長だけ先行した時点である。
【0069】
以下では、説明の便宜上、2つのムービングウィンドウのうちより短い時間長に関連するものを第1ムービングウィンドウと呼び、より長い時間長に関連するものを第2ムービングウィンドウと呼ぶ。
【0070】
制御回路220は、第1ムービングウィンドウのみを用いるか、または第1ムービングウィンドウと第2ムービングウィンドウの両方を用いて、各バッテリセルBCiの電圧異常を診断することができる。
【0071】
制御回路220は、単位時間毎に収集される第iバッテリセルBCiのセル電圧に基づいて、第iバッテリセルBCiのセル電圧の短期的変化傾向及び長期的変化傾向を単位時間毎に比較できる。
【0072】
制御回路220は、次の数式1または数式2を用いて、第1ムービングウィンドウによる第iバッテリセルBCiの移動平均である第1平均セル電圧を単位時間毎に決定することができる。
【0073】
数式1は算術平均法による移動平均計算式であり、数式2は加重平均法による移動平均計算式である。
【0074】
【0075】
【0076】
数式1及び数式2において、kは現時点を示す時間インデックス、SMAi[k]は現時点の第iバッテリセルBCiの第1平均セル電圧、Sは第1ムービングウィンドウの時間長を単位時間で割った値、Vi[k]は、現時点の第iバッテリセルBCiのセル電圧である。例えば、単位時間が1秒であり、第1ムービングウィンドウの時間長が10秒である場合、Sは10である。xがk以下の自然数であるとき、Vi[k-x]とSMAi[k-x]は、それぞれ時間インデックスがk-xであったときの第iバッテリセルBCiのセル電圧と第1平均セル電圧を示す。参考までに、制御回路220は、単位時間毎に、時間インデックスを1ずつ増加させるように設定されていてもよい。
【0077】
制御回路220は、次の数式3または数式4を用いて、第2ムービングウィンドウによる第iバッテリセルBCiの移動平均である第2平均セル電圧を単位時間毎に決定することができる。
【0078】
数式3は算術平均方式による移動平均計算式であり、数式4は加重平均方式による移動平均計算式である。
【0079】
【0080】
【0081】
数式3および数式4において、kは現時点を示す時間インデックス、LMAi[k]は現時点の第iバッテリセルBCiの第2平均セル電圧、Lは第2ムービングウィンドウの時間長を単位時間で割った値、Vi[k]は現時点の第iバッテリセルBCiのセル電圧である。例えば、単位時間が1秒であり、第2ムービングウィンドウの時間長が100秒である場合、Lは100である。xがk以下の自然数である場合、LMAi[k-x]は、時間インデックスがk-xであったときの第2平均セル電圧を表す。
【0082】
一実施形態では、制御回路220は、数式1~数式4のVi[k]として、現時点での各バッテリセルBCiのセル電圧の代わりに、現時点でのセルグループCGの基準セル電圧とバッテリセルBCiのセル電圧との差を入力することができる。
【0083】
現時点におけるセルグループCGの基準セル電圧は、複数のバッテリセルBC1~BCNから決定されたた現時点の複数のセル電圧の平均値である。変形例では、複数のセル電圧の平均値を中央値に置き換えることができる。
【0084】
具体的には、制御回路220は、次の数式5のVDi[k]を数式1~4のVi[k]として設定することができる。
【0085】
<数式5>
VDi[k]=Vav[k]-Vi[k]
【0086】
数式5において、Vav[k]は、現時点におけるセルグループCGの基準セル電圧であって複数のセル電圧の平均値である。
【0087】
第1ムービングウィンドウの時間長が第2ムービングウィンドウの時間長より短い場合、第1平均セル電圧をセル電圧の「短期移動平均」と呼び、第2平均セル電圧をセル電圧の「長期移動平均」と呼ぶことができる。
【0088】
図2bは、
図2aに示す複数の電圧曲線から決定される第iバッテリセルBC
iのセル電圧に対する短期移動平均線と長期移動平均線を示す。
図2bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸はセル電圧の短期移動平均と長期移動平均を表す。
【0089】
図2bを参照すると、点線で示された複数の移動平均線Siは、複数のバッテリセルBC
1~BC
Nに一対一に関連付けられており、各バッテリセルBCの第1平均セル電圧(SMA
i[k])の経時変化履歴を示す。また、実線で示された複数の移動平均線L
iは、複数のバッテリセルBC
1~BC
Nに一対一に関連付けられており、各バッテリセルBCの第2平均セル電圧(LMA
i[k]の経時変化履歴を示す。
【0090】
点線グラフ及び実線グラフは、それぞれ数式2及び数式4を用いて得られたものである。また、数式2及び数式4のVi[k]として数式5のVDi[k]を用い、Vav[k]を複数のセル電圧の平均として設定した。第1ムービングウィンドウの時間長は10秒であり、第2ムービングウィンドウの時間長は100秒である。
【0091】
図2cは、
図2bに示す各バッテリセルの第1平均セル電圧(SMA
i[k])と第2平均セル電圧(LMA
i[k])との差に該当する長短期平均差(絶対値)の経時変化を示す。
図2cにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は各バッテリセルBC
iの長短期平均差を示す。
【0092】
各バッテリセルBCiの長短期平均差は、単位時間毎の、各バッテリセルBCiの第1平均セル電圧(SMAi[k])と第2平均セル電圧(LMAi[k])との差である。例えば、第iバッテリセルBCiの長短期平均差は、SMAi[k]とLMAi[k]の一方のもの(例えば、より大きいもの)から他方のもの(例えば、より小さいもの)を差し引いた値と同じでもよい。
【0093】
第iバッテリセルBCiの長短期平均差は、第iバッテリセルBCiのセル電圧の短期変化履歴および長期変化履歴に依存する。
【0094】
第iバッテリセルBCiの温度やSOHは、短期的にはもちろん長期的にも着実に第iバッテリセルBCiのセル電圧に影響を与える。したがって、第iバッテリセルBCiの電圧に異常がなければ、第iバッテリセルBCiの長短期平均差は、残りのバッテリセルの長短期平均差とは有意差はない。
【0095】
一方、第iバッテリセルBCiに内部短絡及び/又は外部短絡等により突然発生した電圧異常は、第2平均セル電圧(LMAi[k])よりも第1平均セル電圧(SMAi[k])に多くの影響を与える。その結果、第iバッテリセルBCiの長短期平均差は、電圧異常のない残りのバッテリセルの長短期平均差と大きな偏差を有する。
【0096】
制御回路220は、単位時間毎に、各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)を決定することができる。また、制御回路220は、長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)の平均値を決定することができる。以下、平均値は|SMAi[k]-LMAi[k]|avで表す。制御回路220はまた、長短期平均差の平均値(|SMAi[k]-LMAi[k]|av)と長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)との偏差をセル診断偏差(Ddiag,i[k])として決定することができる。また、制御回路220は、セル診断偏差(Ddiag,i[k])に基づいて各バッテリセルBCiの電圧異常を診断することができる。
【0097】
一実施形態では、制御回路220は、第iバッテリセルBCiに対するセル診断偏差(Ddiag,i[k])が所定の診断閾値(例えば、0.015)を超えると、当該第iバッテリセルBCiに電圧異常が生じたと診断することができる。
【0098】
好ましくは、制御回路220は、電圧異常診断のために、各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)を、正規化基準値を用いて正規化することができる。好ましくは、正規化基準値は、長短期平均差の平均値(|SMAi[k]-LMAi[k]|av)である。
【0099】
具体的には、制御回路220は、第1~第NのバッテリセルBCi~BCNの長短期平均差の平均値(|SMAi[k]-LMAi[k]|av)を正規化基準値として設定できる。制御回路220はまた、各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)を正規化基準値で除算して長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)を正規化できる。
【0100】
下記数式6は、各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)を正規化する数式を示す。実施形態では、数式6によって算出される値は、正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])と命名され得る。
【0101】
<数式6>
D*
diag,i[k]=(|SMAi[k]-LMAi[k]|)÷(|SMAi[k]-LMAi[k]|av)
【0102】
数式6において、|SMAi[k]-LMAi[k]|は、現時点の第iバッテリセルBCiの長短期平均差、|SMAi[k]-LMAi[k]|avは、全バッテリセルの長短期平均差の平均値(正規化基準値)、D*
diag,i[k]は、現時点の第iバッテリセルBCiの正規化されたセル診断偏差である。記号「*」は、パラメータが正規化されたことを示す。
【0103】
各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)は、下記数式7のログ演算により正規化することも可能である。実施形態では、数式7によって算出される値も正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])と命名することができる。
【0104】
<数式7>
D*
diag,i[k]=Log|SMAi[k]-LMAi[k]|
【0105】
図2dは、各バッテリセルBC
iの正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の経時変化を示す。セル診断偏差(D
*
diag,i[k])は数式6を用いて算出した。
図2dにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は各バッテリセルBC
iのセル診断偏差(D
*
diag,i[k])を表す。
【0106】
図2dを参照すると、各バッテリセルBC
iの長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)が正規化されることにより、各バッテリセルBC
iの長短期平均差の変化が平均値を基準に増幅されたことがわかる。これにより、バッテリセルの電圧異常診断をより正確に行うことができる。
【0107】
好ましくは、制御回路220は、各バッテリセルBCiの正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])と統計的可変閾値(Dthreshold[k])とを比較して各バッテリセルBCiの電圧異常診断を行うことができる。
【0108】
好ましくは、制御回路220は、下記数式8を用いて単位時間毎に統計的可変閾値(Dthreshold[k])を設定することができる。
【0109】
<数式8>
Dthreshold[k]=β*Sigma(D*
diag,i[k])
【0110】
数式8において、Sigmaは、時間インデックスkにおける全バッテリセルBCの正規化されたセル診断偏差(D*
diag、i[k])についての標準偏差を計算する関数である。そして、βは実験的に決定される定数である。βは診断感度を決定する因子である。βは、実際の電圧異常が発生したバッテリセルを含むセルグループを対象に本発明を実施したとき、当該バッテリセルを電圧異常セルとして検出できるように試行錯誤により適宜決定することができる。一例では、βは、少なくとも5以上、または少なくとも6以上、または少なくとも7以上、または少なくとも8以上、または少なくとも9以上に設定され得る。数式8により生成されるDthreshold[k]は複数であるため、時系列データを構成する。
【0111】
一方、電圧異常を有するバッテリセルは、正規化されたセル診断偏差(D*
diag、i[k])が正常バッテリセルよりも相対的に大きい。したがって、診断の精度と信頼性を向上させるために時間インデックスkでSigma(D*
diag,i[k])を演算する際に最大値に該当するmax(D*
diag,i[k])を除外することが好ましい。ここで、maxは複数の入力変数の最大値を返す関数であり、入力変数は全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])である。
【0112】
図2dにおいて、統計的可変閾値(D
threshold[k])の時間変化を示す時系列データは、全プロファイルの中で最も濃い色で表示されたプロファイルに該当する。
【0113】
制御回路220は、時間インデックスkにおいて統計的可変閾値(Dthreshold[k])を決定した後、下記式9を用いて各バッテリセルBCiの正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])をフィルタリングすることによって、フィルタ診断値(Dfilter、i[k])を決定することができる。
【0114】
各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter、i[k])には2つの値を割り当てることができる。つまり、セル診断偏差(D*
diag,i[k])が統計的可変閾値(Dthreshold[k])よりも大きい場合、セル診断偏差(D*
diag,i[k])と統計的可変閾値(DThreshold[k])との差分値がフィルタ診断値(Dfilter、i[k])に割り当てられる。一方、セル診断偏差(D*
diag,i[k])が統計的可変閾値(Dthreshold[k])以下である場合、0(ゼロ)がフィルタ診断値(Dfilter、i[k])に割り当てられる。
【0115】
<数式9>
Dfilter,i[k]=D*
diag,i[k]-Dthreshold[k](IF D*
diag,i[k]>Dthreshold[k])
Dfilter,i[k]=0(IF D*
diag,i[k]≦Dthreshold[k])
【0116】
図2eは、時間インデックスkにおけるセル診断偏差(D
*
diag,i[k])のフィルタリングによって得られたフィルタ診断値(D
filter、i[k])の時系列データを示す図である。
【0117】
図2eを参照すると、特定のバッテリセルのフィルタ診断値(D
filter、i[k])が3000秒を前後にして正の値を有する不規則なパターンが確認される。参考までに、不規則なパターンを有する特定のバッテリセルは、
図2dにAで示される時系列データを有するバッテリセルである。
【0118】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0119】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間を積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0120】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間に含まれるデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0121】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータの数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0122】
一方、制御回路220は、数式1~数式5のV
i[k]を、
図2dに示す各バッテリセルBC
iの正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])に置き換えることができる。また、制御回路220は、時間インデックスkにおいて、セル診断偏差(D
*
diag,i[k])の長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)計算、セル診断偏差(D
*
diag,i[k])の長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)の平均値計算、長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)の平均値との差に該当するセル診断偏差(D
diag,i[k])の計算、数式6を用いた長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)に対する正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の計算、数式8を用いて正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])に対する統計的可変閾値(D
threshold[k])の決定、数式9を用いたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])のフィルタリングによるフィルタ診断値(D
filter,i[k])決定,およびフィルタ診断値(D
filter,i[k])の時系列データを用いたバッテリセルの電圧異常診断を再帰的に実行できる。
【0123】
図2fは、正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の時系列データ(
図2d)に対する長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)の時間変化を示すグラフである。長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)の計算に使用される数式2、数式4および数式5において、V
i[k]はD
*
diag,i[k]に置き換えられてもよく、V
av[k]はD
*
diag,i[k]の平均値に置き換えられてもよい。
【0124】
図2gは、数式6を用いて計算された正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の時系列データを示すグラフである。
図2gにおいて、統計的可変閾値(D
threshold[k])の時系列データは、最も濃い色で表示されたプロファイルに該当する。
【0125】
図2hは、数式9を用いてセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の時系列データをフィルタリングして得られたフィルタ診断値(D
filter、i[k])の時系列データを示すプロファイルである。
【0126】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0127】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間を積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0128】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間に含まれるデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0129】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータの数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0130】
制御回路220は、上述した再帰的演算過程を基準回数だけさらに繰り返すことができる。すなわち、制御回路220は、
図2aに示す電圧時系列データを、正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の時系列データ(例えば
図2gのデータ)に置き換えることができる。また、制御回路220は、時間インデックスkにおいて、長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)計算、長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)の平均値計算、長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)の平均値対比の差に該当するセル診断偏差(D
diag,i[k])の計算、数式6を用いた長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)に対する正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])の計算、数式8を用いてセル診断偏差(D
diag,i[k])に対する統計的可変閾値(D
threshold[k])の決定、数式9を用いたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])に対するフィルタリングによるフィルタ診断値(D
filter,i[k])の決定、およびフィルタ診断値(D
filter,i[k])の時系列データを用いたバッテリセルの電圧異常診断を再帰的に実行することができる。
【0131】
上記のような再帰的演算過程が繰り返されると、バッテリセルの電圧異常診断をより正確に行うことができる。すなわち、
図2eを参照すると、電圧異常が発生したバッテリセルのフィルタ診断値(D
filter、i[k])の時系列データにおいて、2つの時間区間でのみ正のプロファイルパターンが観察される。しかしながら、
図2hを参照すると、電圧異常が発生したバッテリセルのフィルタ診断値(D
filter、i[k])の時系列データにおいて、
図2eよりも多くの時間区間で正のプロファイルパターンが観察される。したがって、再帰的演算過程が繰り返されると、バッテリセルの電圧異常が発生した時点をより正確に検出することができる。
【0132】
以下では、上述した本発明のバッテリ診断装置200を用いたバッテリ診断方法について詳細に説明する。制御回路220の動作は、バッテリ診断方法の様々な実施形態においてより詳細に説明される。
【0133】
図3は、本発明の一実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
図3の方法を、制御回路220によって単位時間毎に周期的に実行することができる。
【0134】
図1から
図3を参照すると、ステップS310において、制御回路220は、電圧測定回路210から複数のバッテリセルBC
1~BC
Nのそれぞれのセル電圧を示す電圧信号を収集し、各バッテリセルBCのセル電圧の時系列データを生成する(
図2a参照)。セル電圧の時系列データは、単位時間が経過するたびにデータ数が1ずつ増加する。
【0135】
好ましくは、セル電圧としてVi[k]または数式5のVDi[k]を使用することができる。
【0136】
ステップS320において、制御回路220は、各バッテリセルBC
iのセル電圧の時系列データに基づいて、各バッテリセルBC
iの第1平均セル電圧(SMA
i[k]、数式1および数式2参照)および第2平均セル電圧(LMA
i[k]、数式3および数式4参照)を決定する(
図2b参照)。第1平均セル電圧(SMA
i[k])は、第1時間長を有する第1ムービングウィンドウにわたる各バッテリセルBC
iのセル電圧の短期移動平均である。第2平均セル電圧(LMA
i[k])は、第2時間長を有する第2ムービングウィンドウにわたる各バッテリセルBC
iのセル電圧の長期移動平均である。第1平均セル電圧(SMA
i[k])及び第2平均セル電圧(LMA
i[k])の算出には、V
i[k]またはVD
i[k]を用いることができる。
【0137】
ステップS330において、制御回路220は、各バッテリセルBC
iの長短期平均差(|SMA
i[k]-LMA
i[k]|)を決定する(
図2c参照)。
【0138】
ステップS340において、制御回路220は、各バッテリセルBCiのセル診断偏差(Ddiag,i[k])を決定する。セル診断偏差(Ddiag,i[k])は、全バッテリセルの長短期平均差の平均値(|SMAi[k]-LMAi[k]|av)と第iバッテリセル(BCi)の長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)との偏差である。
【0139】
ステップS350において、制御回路220は診断時間が経過したか否かを判定する。診断時間は予め設定されている。ステップS350の判断がYESであればステップS360に進み、ステップS350の判断がNOであればステップS310~ステップS340を再度繰り返す。
【0140】
ステップS360において、制御回路220は、診断時間中に収集された各バッテリセルBCiのセル診断偏差(Ddiag,i[k])についての時系列データを生成する。
【0141】
ステップS370において、制御回路220は、セル診断偏差(Ddiag,i[k])についての時系列データを分析して各バッテリセルBCiの電圧異常を診断する。
【0142】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiのセル診断偏差(Ddiag,i[k])についての時系列データにおいてセル診断偏差(Ddiag,i[k])が診断閾値(例えば、0.015)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0143】
好ましくは、制御回路220は、セル診断偏差(Ddiag,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0144】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiのセル診断偏差(Ddiag,i[k])についての時系列データにおいてセル診断偏差(Ddiag,i[k])が診断閾値(例えば、0.015)よりも大きいデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0145】
好ましくは、制御回路220は、セル診断偏差(Ddiag,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータ数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0146】
図4は、本発明の第2実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
図4の方法を、制御回路220によって単位時間毎に周期的に実行することができる。
【0147】
第2実施形態のバッテリ診断方法において、ステップS310~ステップS360は第1実施形態と実質的に同一であるのでその説明を省略する。ステップS360の後、ステップS380に進む。
【0148】
ステップS380において、制御回路220は、数式8を用いて統計的可変閾値(Dthreshold[k])の時系列データを生成する。数式8のSigma関数の入力は、ステップS360で生成された全バッテリセルのセル診断偏差(Ddiag,i[k])についての時系列データである。好ましくは、セル診断偏差(Ddiag,i[k])の最大値は、Sigma関数の入力値から除外されてもよい。セル診断偏差(Ddiag,i[k])は、長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)に対する平均値対比偏差である。
【0149】
ステップS390において、制御回路220は、数式9を用いて各バッテリセルBCiのセル診断偏差(Ddiag,i[k])をフィルタリングすることによりフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データを生成する。
【0150】
数式9を用いる場合、D*
diag,i[k]をDdiag,i[k]に置き換えることができる。
【0151】
ステップS400において、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データを分析して各バッテリセルBCiの電圧異常を診断する。
【0152】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0153】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0154】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間に含まれるデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0155】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータの数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0156】
図5は、本発明の第3実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
図5の方法を、制御回路220によって単位時間毎に周期的に実行することができる。
【0157】
第3実施形態によるバッテリ診断方法は、第1実施形態と比較して、ステップS340、S360およびS370がそれぞれステップS340'、360'およびステップS370'に変更されたことを除いては、実質的に同じ構成を有する。したがって、第3の実施形態については、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0158】
ステップS340'において、制御回路220は、数式6を用いて各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)に対する正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])を決定する。正規化基準値は、長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)の平均値である。数式6は数式7に置き換えることができる。
【0159】
ステップS360'において、制御回路220は、診断時間中に収集された各バッテリセルBC
iの正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])についての時系列データを生成する(
図2d参照)。
【0160】
ステップS370'において、制御回路220は、正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])についての時系列データを分析して各バッテリセルBCiの電圧異常を診断する。
【0161】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiの正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])についての時系列データにおいてセル診断偏差(D*
diag,i[k])が診断閾値(例えば、4)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0162】
好ましくは、制御回路220は、正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0163】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiの正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])についての時系列データにおいてセル診断偏差が診断閾値(例えば、4)よりも大きいデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0164】
好ましくは、制御回路220は、正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータ数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0165】
図6は、本発明の第4実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
図6の方法を、制御回路220によって単位時間毎に周期的に実行することができる。
【0166】
第4実施形態によるバッテリ診断方法は、第2実施形態と比較して、ステップS340、S360、S380、S390及びS400がそれぞれステップS340'、S360'、S380'、S390'及びS400'に変更されたことを除いては、実質的に同じ構成を有する。したがって、第4実施形態については、第2実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0167】
ステップS340'において、制御回路220は、数式6を用いて各バッテリセルBCiの長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)に対する正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])を決定する。正規化基準値は、長短期平均差(|SMAi[k]-LMAi[k]|)の平均値である。数式6は数式7に置き換えることができる。
【0168】
ステップS360'において、制御回路220は、診断時間中に収集された各バッテリセルBC
iの正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])についての時系列データを生成する(
図2d参照)。
【0169】
ステップS380'において、制御回路220は、数式8を用いて統計的可変閾値(Dthreshold[k])の時系列データを生成する。数式8のSigma関数の入力は、ステップS360'で生成された全バッテリセルの正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])についての時系列データである。好ましくは、各時間インデックスにおいて、セル診断偏差(D*
diag,i[k])の最大値は、Sigma関数の入力値から除外されてもよい。
【0170】
ステップS390'において、制御回路220は、数式9を用いて統計的可変閾値(Dthreshold[k])に基づいて各バッテリセルBCiのセル診断偏差(D*
diag,i[k])をフィルタリングすることによりフィルタ診断値(Dfilter、i[k])の時系列データを生成する。
【0171】
ステップS400'において、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データを分析して各バッテリセルBCiの電圧異常を診断する。
【0172】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0173】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間を積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0174】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間に含まれるデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0175】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータの数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0176】
図7は、本発明の第5実施形態によるバッテリ診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【0177】
第5実施形態では、ステップS310からステップS360'までは第4実施形態と実質的に同じである。したがって、第5実施形態については、第4実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0178】
ステップS410において、制御回路220は、各バッテリセルBC
iの正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])時系列データを用いてセル診断偏差(D
*
diag,i[k])についての第1移動平均(SMA
i[k])時系列データおよび第2移動平均(LMA
i[k])時系列データを生成する(
図2f参照)。
【0179】
ステップS420において、制御回路220は、数式6を用いて各バッテリセルBC
iの第1移動平均(SMA
i[k])時系列データ及び第2移動平均(LMA
i[k])時系列データを用いて正規化されたセル診断偏差(D
*
diag,i[k])時系列データを生成する(
図2g参照)。
【0180】
ステップS430において、制御回路220は、数式8を用いて統計的可変閾値(D
threshold[k])の時系列データを生成する(
図2g参照)。
【0181】
ステップS440において、制御回路220は、数式9を用いて統計的可変閾値(D
threshold[k])を基準として各バッテリセルBC
iのフィルタ診断値(D
filter,i[k])についての時系列データを生成する(
図2h参照)。
【0182】
ステップS450において、制御回路220は、各バッテリセルBCiのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データを分析して各バッテリセルBCiの電圧異常を診断する。
【0183】
一例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間を積算し、積算時間が所定の基準時間よりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0184】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間を積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、時間区間毎に積算時間を独立して算出することができる。
【0185】
他の例では、制御回路220は、各バッテリセルBCiについてのフィルタ診断値(Dfilter,i[k])の時系列データにおいてフィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値(例えば、0)よりも大きい時間区間に含まれるデータ数を積算し、データ積算値が所定の基準カウントよりも大きい条件が成立するバッテリセルを電圧異常セルと診断することができる。
【0186】
好ましくは、制御回路220は、フィルタ診断値(Dfilter,i[k])が診断閾値よりも大きい条件が継続的に満たされる時間区間に含まれるデータの数のみを積算することができる。当該時間区間が複数である場合、制御回路220は、各時間区間のデータ数を独立して積算することができる。
【0187】
第5の実施形態において、制御回路220は、ステップS410及びステップS420を2回以上再帰的に実施することができる。すなわち、制御回路220は、ステップS420で生成された正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])時系列データを用いて再びステップS410でセル診断偏差(D*
diag,i[k])についての第1移動平均(SMAi[k])時系列データ及び第2移動平均(LMAi[k])時系列データを生成することができる。その次、制御回路220は、ステップS420において、再び各バッテリセルBCiの第1移動平均(SMAi[k])時系列データ及び第2移動平均(LMAi[k])時系列データを用いて数式6に基づいて正規化されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])時系列データを生成することができる。このような再帰的アルゴリズムは、所定の回数だけ繰り返すことができる。
【0188】
再帰的アルゴリズムに従ってステップS410およびステップS420が実行される場合、ステップS430からステップS450は、再帰的アルゴリズムによって最終的に算出されたセル診断偏差(D*
diag,i[k])時系列データを用いて行われてもよい。
【0189】
本発明の実施形態において、制御回路220は、全バッテリセルに対する電圧異常診断を行った後、特定のバッテリセルで電圧異常が診断された場合、診断結果情報を、ディスプレイ部(図示せず)を介して出力できる。また、制御回路220は、電圧異常が診断されたバッテリセルの識別情報(ID)、電圧異常が診断された時点及び診断フラグをメモリ部に記録することができる。
【0190】
好ましくは、診断結果情報は、セルグループ内に電圧異常が発生したセルがあることを示すメッセージを含み得る。選択的に、診断結果情報は、バッテリセルの精密な点検が必要であることを示す警告メッセージを含み得る。
【0191】
一例では、ディスプレイ部は、セルグループCGから電力を供給される負荷装置に含まれてもよい。負荷装置が電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などである場合、診断結果情報は自動車の統合情報ディスプレイを介して出力され得る。他の例では、本発明によるバッテリ診断装置200が診断システムに含まれる場合、診断結果は、診断システムに設けられたディスプレイを介して出力され得る。
【0192】
好ましくは、本発明の実施形態によるバッテリ診断装置200は、バッテリ管理システム100または負荷装置の制御システム(図示せず)に含まれてもよい。
【0193】
上述の実施形態によれば、単位時間毎に、2つの異なる時間長に対する各バッテリセルのセル電圧の2つの移動平均を決定し、複数のバッテリセルのそれぞれの2つの移動平均間の差に基づいて、各バッテリセルの電圧異常を効率的かつ正確に診断することができる。
【0194】
他の態様によれば、各バッテリセルの2つの移動平均の変化傾向の差を分析する際に、正規化及び/又は統計的可変閾値などの高度な技法を適用することにより、各バッテリセルの電圧異常を正確に診断することができる。
【0195】
さらに他の態様によれば、統計的可変閾値を基準として決定されたフィルタ診断値の時系列データを分析して、各バッテリセルの電圧異常が発生した時間区間及び/又は電圧異常検出カウントなどを正確に検出することができる。
【0196】
以上説明した本発明の実施形態は、装置および方法によってのみ実現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を介して実現されてもよい。このような実現は、上述した実施形態の記載から本発明が属する技術分野の専門家であれば容易に実現できるものである。
【0197】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0198】
また、以上で説明した本発明は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるため、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるのではなく、様々な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。