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  • 特許-固体素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】固体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/07 20120101AFI20240508BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20240508BHJP
   H01L 31/0248 20060101ALI20240508BHJP
   H01L 31/108 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L31/06 350
H01L31/04 260
H01L31/04 300
H01L31/10 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022559843
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021058346
(87)【国際公開番号】W WO2021198286
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】102020002061.5
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522384536
【氏名又は名称】ロルフ ジーゲル
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ジーゲル
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016015581(DE,A1)
【文献】特開2019-169693(JP,A)
【文献】特開2019-133963(JP,A)
【文献】特開2013-089684(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014002092(DE,A1)
【文献】特開2016-063160(JP,A)
【文献】特表2015-502658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射に曝され得るカソード(K)と、
アノード(A)と、
前記カソード(K)及び前記アノード(A)の対向する面によって形成される電極間領域(EZR)と、
前記電極間領域(EZR)内の半導体材料(HL)と、
前記電極間領域(EZR)内の被覆材料(BM)と、を備えた固体素子であって、
前記カソード(K)から前記アノード(A)に達する電子流が得られるように、
記カソード(K)の材料の仕事関数Φは、前記アノード(A)の材料の仕事関数Φよりも大きく、
前記半導体材料(HL)は、前記電極間領域(EZR)において前記カソード(K)に接触し、バンドギャップ(EgHL)が2.0eVよりも大きく且つフェルミエネルギー位置(EFnHL)が前記カソード(K)の仕事関数(Φ)以上のn型半導体材料(nHL)であり、
前記被覆材料(BM)は、前記電極間領域(EZR)において前記アノード(A)に接触しており、前記被覆材料(BM)は前記アノード(A)の仕事関数よりも小さい仕事関数ΦBMを有しており、又は、前記被覆材料(BM)は負の電子親和力(NEA)を有しており、
前記カソード(K)、前記n型半導体材料(nHL)、前記被覆材料(BM)、及び前記アノード(A)の間には、電子伝導性の接触が存在しており、
前記カソード(K)の前記n型半導体材料(nHL)と接触していない領域と、前記アノード(A)の前記被覆材料(BM)と接触していない領域とは、回路の形成のために、集電部を介して及び必要に応じて負荷を介して互いに接続可能である、固体素子。
【請求項2】
前記n型半導体材料(nHL)は、前記被覆材料(BM)と電子伝導的に接触する、請求項1に記載の固体素子。
【請求項3】
前記カソード(K)の材料は、電子伝導性の炭素である、請求項1又は2に記載の固体素子。
【請求項4】
前記アノード(A)の材料は、マグネシウム、又はマグネシウム合金である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体素子。
【請求項5】
前記被覆材料(BM)は、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、希土類硫化物、又は、これらの二元或いは三元化合物、又は、負の電子親和力を有する材料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体素子。
【請求項6】
前記被覆材料(BM)は、酸化バリウムBaO、酸化カルシウムCaO、酸化ストロンチウムSrO、酸化セシウムCsO、又は六方晶窒化ホウ素hBNである、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体素子。
【請求項7】
前記n型半導体材料(nHL)は、ZnO、Fe、PbO、FeTiO、BaTiO、CuWO、BiFe、SnO、TiO、WO、In、又はGaである、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射に応答する固体素子に関し、実施形態に応じて、(熱)光起電力素子、光電センサ、光触媒、蓄電素子等として利用することができる。
【発明の概要】
【0002】
本発明に係る固体素子は、請求項1の特徴によって特定される。それは、(そこから電子が出る)カソードKと(その中にその電子が入る)アノードAとを備えている。カソードK及びアノードAの互いに対向する面は、電極間領域EZRの境界をなしている。その電極間領域EZR内には、半導体材料HLと被覆材料BMとが存在している。その半導体材料HLは、n型半導体nHLとして形成され、カソードKに接触するとともに、好ましくは、被覆材料BMにも接触している。その被覆材料BMは、アノードAに接触し、好ましくは、n型半導体nHLにも接触している。
【0003】
本発明によれば、使用される材料は、以下の、真空に関連した、エネルギー位置(Energieposition)を有する:
i)カソードKの仕事関数Φは、アノードAの仕事関数Φよりも大きく(Φ>Φ)、
ii)n型半導体材料nHLのバンドギャップEgHLは2.0eVよりも大きく(EgnHL>2eV)且つ、そのフェルミエネルギーEFnHLはカソードKの仕事関数Φよりも大きく、又は(実質的に)等しく(EFnHL≧Φ)、
iii)被覆材料BMの仕事関数は、アノードAの仕事関数よりも小さく(ΦBM<Φ)、又は、被覆材料BMは、負の電子親和力(NEA)を有している。
【0004】
カソードK、n型半導体材料nHL、被覆材料BM、及びアノードAの間には、電子伝導性の接触が存在している。また、n型半導体材料(nHL)或いは被覆材料(BM)と接触していない、カソード(K)及びアノード(A)の領域は、回路の形成のために集電部及び必要ならば負荷を介して互いに接続可能であり、つまり、固体素子の動作中は互いに接続される。
【0005】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において説明される。
【0006】
以下、本発明の実施例を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】カソードK、n型半導体nHLの形態の半導体材料HL、被覆材料BM、及びアノードAを備えた固体素子、並びに、これらの構成要素の非接触状態における真空に関連したエネルギー位置(単位:eV)を示す概略的な図である。
図2】カソードKへの電磁エネルギーhの作用下および短絡状況下において、電子伝導性の接触状態にある、カソードK、n型半導体nHL、被覆部材BM、及びアノードAに使用される材料のエネルギーバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
互いに対応する部分、大きさ、及び構造には、全ての図において常に同一の参照符号が付される。
【0009】
図1は、固体素子の構成要素、すなわち、
・カソードK、
・n型半導体nHLの形態の半導体材料HL、
・被覆材料BM、及び
・アノードA
それぞれの配置を概略的に示す。図1には、さらに、非接触状態における、これらの構成要素の真空に関連した上記エネルギー位置(単位:eV)が概略的に示されている。カソードK及びアノードAの互いに対向する面は、電極間領域EZRの境界をなしている。
【0010】
カソードK及びアノードAは電子伝導性の材料から形成されており、その材料は元素のまま、又は合金として存在し得る。その際、電極材料は、カソードKの仕事関数ΦとアノードAの仕事関数Φとの差ができるだけ大きくなるように、選択される。
【0011】
適切なカソード材料の限定されない例は、
・金Au(ΦAu 4.8-5.4eV)、
・セレンSe(ΦSe 5.11eV)、
・白金Pt(ΦPt 5.32-5.66eV)、
・ニッケルNi(ΦNi 5.0eV)、及び
・電子伝導性の炭素C、例えばグラファイト(ΦGraphit 4.7eV)である。
【0012】
電子伝導性の炭素Cの限定されない例として、活性炭布、(粒子、織物シート材料、又はフィルムの形態の)グラファイト、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブが挙げられる。
【0013】
適切なアノード材料の限定されない例は、
・マグネシウムMg(ΦMg 3.7eV)、
・バリウムBa(ΦBa 1.8-2.52eV)、
・セシウムCs(ΦCs 1.7-2.14eV)、
・カルシウムCa(ΦCa 2.87eV)、及び
・アルミニウムAl(ΦAl 4.0-4.2eV)である。
【0014】
固体素子の形成及び使用分野に応じて、電極間領域EZRを形成するカソードK及びアノードAの面積は、一致、又は(数学的な意味において)類似しても良く、また、例えば、平方マイクロメートルの、又は平方メートルもの範囲において寸法を決めることができる。
【0015】
電極間領域EZRに配置された半導体材料nHLとカソードKの接触(する)面積と、電極間領域EZRに配置された被覆材料BMとアノードAの接触(する)面積とは、それぞれできる限り大きい。形成及び使用分野に応じて、カソードK及びアノードAの強度(厚さ)は異なる。光起電力素子としての形成の場合には、例えば、金(箔)からなるナノメートル厚の薄いカソードKが使用される。(熱)光起電力素子としての形成の場合には、カソードKは、例えば、マイクロメートル又はミリメートルの厚さのグラファイトフィルムであり、又は、ナノメートル又はマイクロメートルのグラファイト粒子から形成される。エネルギー貯蔵素子としての形成の場合には、(多孔質)電極の寸法はデシメートル又はリットルの範囲にある。
【0016】
gnHL>2eV、及び、EFnHL>Fという条件を満たす好適なn型半導体材料nHLは、例えば、Shiyou Chen及びLin-Wang Wangによる論文 Chem.Mater.,2012,24(18),pp.3659-3666、或いは、J.Robertson及びB.Falabrettiによる論文 Electronic Structure of Transparent Conducting Oxides,pp.27-50 in Handbook of Transparent Conductors,Springer,DOI 10.1007/978-1-4419-1638-9 に見出すことができる。それらは、限定されない例として、(ΦGraphit 約4.7eVを有する)グラファイトをカソードKとして使用する場合には、ZnO、PbO、FeTiO、BaTiO、CuWO、BiFe、SnO、TiO、WO、Fe、In、及びGaである。
【0017】
電極間領域EZRに向けられた、アノードAの表面を、被覆材料BMは被覆し、その仕事関数ΦBMは、アノードAの仕事関数Φよりも小さい(ΦBM<Φ)。本発明によれば、そのために、アルカリ酸化物(Alkali-Oxide)、アルカリ土類酸化物(Erdalkali-Oxide)、希土類酸化物(Seltenerd-Oxid)、希土類硫化物(Seltenerd-Sulfide)、又は、それらからなる二元或いは三元化合物が使用される。例えば、V.S.Fomenko及びG.V.Samsonov(ed.)による文献 Handbook of Thermionic Properties,ISBN:978-1-4684-7293-6 によると、それらの仕事関数Φは、0.5-3.3eVの範囲にある。このような化合物は、カソード材料からの電子の流出を容易にするために、これまで、光検出器、真空管、熱イオン放出素子(thermionischen Emitter)、LEDなどのカソード材料の被覆に使用されてきた。本実施形態の場合には、アノードAの材料内への電子の進入を容易にすることが想定される。仕事関数が真空基準値の下方にある上記被覆材料BMの他に、真空の上方にある仕事関数を有する化合物も使用される。その際、その化合物は、負の電子親和性(NEA)を有する。例として、六方晶窒化ホウ素(hBN)が挙げられる。
【0018】
本発明による素子は、上記の材料同士の電子伝導性の接触によって製造される。図2は、図1のカソードK、n型半導体材料nHL、被覆材料BM、及びアノードAの短絡状態における相互のエネルギー関係を示す:カソードKとn型半導体材料nHLとの間に形成される界面K/nHLは、電子蓄積(○で囲まれた+でマーク)を伴うショットキー接触を形成している。また、n型半導体材料nHLと被覆材料BMとの間に形成される界面nHL/BMについても、同様に電子蓄積(○で囲まれた+)が想定される。それに対して、被覆材料BMとアノードAとの間に形成される界面BM/Aは、電子がトンネルしやすい(破線によって示される)。これらの界面は、電子にとってエネルギー的なバリアではない。室温及び暗所の中においても、それらは、エネルギー的に低いカソードKから離れ、エネルギー的に高いアノードAに入ることができ、それは、開放端子電圧Vocの連続的な上昇によって確認できる(実施例1を参照)。
【0019】
動作の仕組みについて:
カソード材料のバルク中の電子は、十分に高いエネルギーでカソードKに作用する電磁放射によって、直接的に又は、フォノン及びプラズモンを介して間接的に励起され、その結果、カソード材料を離れてn型半導体材料nHLの伝導帯に入ることができる。それは、界面K/nHLに存在する電子蓄積(○で囲まれた+)に基づいて(容易に)可能である。電子が十分な(運動)エネルギーを持ち続ける場合、電子は被覆材料BMのバルク内に界面nHL/BMを介して達し更に、エネルギー的に高い位置にあるアノードAのバルク内に、界面BM/Aを介して入り込む。n型半導体材料nHLは、2eVよりも大きいバンドギャップEgHLを有するため、価電子帯からの正孔との再結合は起きない。
【0020】
固体素子の動作のために、カソードKのn型半導体で覆われていない部分とアノードAの被覆材料で覆われていない部分とは、1つ又は複数の電気導体によって、及び必要に応じてそれらの間に接続された電気的負荷によって、回路を形成するために接続されている。上記の1つ又は複数の電気導体、及び必要に応じた電気的負荷は、その際、本発明による固体素子には属さない、回路の外側部分を形成する。固体素子のこの動作条件において、電子がエネルギー的に高いアノードAから回路の外側部分を経由してカソードKに戻るため、十分に「ホットな」電子は、電気的な仕事を行うことができる。従って、本素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための(熱)光起電力セルとしても好適である。
【0021】
使用する材料のそれぞれの電子伝導性の接触には、スピンコート、(ナノ)結晶の(静電)固定、陰極飛散法(スパッタリング法)、原子層堆積法(ALD)、エピタキシ、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)、化学溶液堆積法(CBD)、又は(電気)化学的手法のような、既知の(半導体)技術が使用可能である。
【0022】
例えば、接触条件(温度、圧力、ガス雰囲気、湿度、溶液のpH)、電極材料及び/又は半導体材料の化学量論的組成、それら材料の粗さ、それら材料の熱電列又は電気化学系列における位置、(双極子)層の形成、結晶サイズ、結晶面方位、結晶性、結晶水(割合)、格子欠陥の種類及び程度、ドーピングの種類及び程度、格子整合、層の形態、塗布された層(複数)の厚さ、その層の多孔性、などのようなパラメータは、当業者によく知られており、広い範囲にわたって変化させることができ、(得られた実験結果に基づいて)最適化することができる。
【0023】
実施例1:
使用材料:
・カソードKの材料は、4.7eVの仕事関数Φを有するグラファイトである。
・アノードAの材料は、3.7eVの仕事関数Φを有するマグネシウムである。
・アノードAの被覆材料BMは、1.9eVの仕事関数ΦBMを有する酸化バリウムである。
・n型半導体材料nHLは、酸化スズ(IV)SnOである。
【0024】
文献によれば、伝導帯LBのエネルギー位置は5.1eVに、フェルミエネルギーEFSnO2は5.3eVに、価電子帯VBのエネルギー位置は8.6eVに、及びバンドギャップEgSnO2は3.5eVに想定される。
【0025】
素子の製造:
I)カソードKとn型半導体材料nHLとの電子伝導性の接触
Tyne & Wear(英国)に所在する“Chemviron Cloth Division”社製の活性炭布(FLEXSORB FM30K)を、70%(v/v)2-プロパノール水溶液中の約2.0%(w/v)Sn(II)Cl*2HOの溶液によって5時間、完全に覆う。余分な溶液を除去した後、濡れた布の片面を、アンモニア雰囲気に約12時間さらす。その後、その布を、約50℃において数時間、乾燥する。生成される銀色に輝く層は、酸化スズ(IV)SnOの(錫石の)結晶である。
【0026】
II)アノードAと被覆材料BMとの電子伝導性の接触
20×3.2×0.3mmのマグネシウムリボンの長さ約17mmの部分を、1n塩酸中に約2秒間、浸し、それによって、水素発生下において、付着した酸化膜を除去する。柔らかいペーパータオルによる乾燥後、約90℃の飽和酸化バリウム水溶液約10μlを、ピペットによって、酸との接触部に注ぐ。その後、そのリボンを、ブンゼンバーナー上に置かれた、ガラス状炭素からなるプレート上で、処理面を上にして約30分間、推定温度約900℃において熱処理する。生成される灰色の層は、酸化バリウムBaOである。
【0027】
III)固体素子の組み立て
II)によって製造されるアノードAの未処理面を、自己粘着性フィルム(Tesafilm(登録商標))に固定する。I)によって製造されるカソードKの銀色に輝く面を、塩酸で処理されていない端部、並びに灰色を呈するBaO層の約2mmをそのまま残すように、アノードA上に一致させて固定する。その結果、約15×3.2mmのアノードAの電子伝導性の接触面が生じる。カソード集電部として、厚さ0.1mmの銅線を、粘着性フィルム(Tesafilm(登録商標))によって活性炭布に固定する。アノード集電部として、マグネシウムリボンの塩酸に接触していない端部を使用し、そこに存在する酸化層を機械的に除去する。
【0028】
次に、このように製造される部材を、2枚のガラス製のスライドグラスの間に挟む。上のスライドグラスは、マルチメータのリード線が上記の集電部に接続できるように設計される。カソードKとアノードAとの電子伝導性の接触は、クランプを用いて2枚のスライドグラス同士を押合わせ、且つ固定することによって生じる。素子の取り扱い性及び安定性をさらに高めるために、素子を、集電部を除き、光学的に透明な2Kエポキシポッティング材(2K-Epoxy- Vergussmasse)内に入れ、次いで、そのポッティング材を硬化しても良い。このように製造される素子は、(カソードの)銅線をマルチメータのプラス極に、(アノードの)マグネシウムリボンの自由端をそのマイナス極に接続することによって、回路に組み込まれる。
【0029】
短絡電流Iscを測定の際に、室温及び室内光下において、一貫して5μA/cmの値が示される。太陽光下においては、カソードKにルーペの焦点を合わせることで、2,000μA/cm程度の値が得られる。このようなIsc測定直後に開放端子電圧Vocを測定した場合、Vocは約0.7Vである。室温及び暗所においても、約8時間以内において、Voc値が約1.8Vに上昇する。Vocの最大値においてIscを測定すると、最初は400μA/cmの電流値が得られ、その後、約20分以内において、約20μA/cmまで連続的に低下することが確認される。その結果、この素子は、エネルギー貯蔵素子として、特に、自己充電型キャパシタの形態においても、適している。
【0030】
(エポキシ樹脂内に封止された)素子の開放端子電圧Vocは、数ヶ月間、約1.8ボルトにおいて一定であり、このことはアノードAの腐食のないことにも表われている。
【0031】
カソードK及びアノードAの上記の寸法は、以下の実施例においても、保持される。
【0032】
実施例2:
n型半導体nHLとして、TiOを使用する。
エネルギー位置:
伝導帯LB4.6eV、フェルミエネルギーEFTiO25.3eV、価電子帯VB7.8eV、及びバンドギャップEgTiO23.7eV。
活性炭布(カソードK)に、2-プロパノール中のチタン(IV)エチラートの1%(v/v)溶液をしみ込ませ、90℃において数日間乾燥する。実施例1と同様の、アノードA及び被覆材料BM。(TiOの生成によって白色に着色した)活性炭布とBaO被覆アノードAとの接触、及び、実施例1に記載のような組み立て。実施例1と同様の測定結果。
【0033】
実施例3:
n型半導体nHLとして、Feを使用する。
エネルギー位置:
伝導帯LB5.0eV、フェルミエネルギーEFFe2O35.3eV、価電子帯VB7.3eV、及びバンドギャップEgFe2O32.3eV。
実施例1と同様の、アノードA及び被覆材料BM。BaOからなる被覆表面への、硝酸鉄(III)の飽和水溶液約10μlの塗布。最初に室温における乾燥、及び、その後に実施例1と同様に熱処理。未修正の活性炭布(カソードK)との接触、及び実施例1と同様に組み立て。実施例1と同様の測定結果。
【0034】
実施例4:
被覆材料BMとして、酸化カルシウムCaOを使用する。
実施例1と同様に、マグネシウムからなるアノードの洗浄。洗浄したマグネシウム表面への、硝酸カルシウムCa(NOの飽和水溶液約10μlの塗布、及び、続いて約900℃における熱処理。その後、Feからなる半導体層(実施例3に類似)の形成のために、硝酸鉄(III)の飽和水溶液約10μlを、CaOからなる被覆面へ塗布する。最初に室温における乾燥、及び、その後に実施例1と同様に加熱。未処理の活性炭布との接触、及び、実施例1と同様に組み立て。実施例1と同様の測定結果。
【0035】
実施例5:
被覆材料BMとして、酸化ストロンチウムSrOを使用する。
実施例1と同様に、マグネシウムからなるアノードAの洗浄。洗浄したマグネシウム表面への、硝酸ストロンチウムSr(NOの飽和水溶液約10μlの塗布、及び、続いて約900℃における熱処理。その後、Feからなる半導体層の形成(実施例3に類似)のため、硝酸鉄(III)の飽和水溶液約10μlを、SrOを有する被覆面へ塗布。最初に室温における乾燥、及び、その後に実施例1と同様に、加熱。未処理の活性炭布(カソードK)との接触、及び、実施例1と同様に組み立て。実施例1と同様の測定結果。
【0036】
実施例6:
被覆材料BMとして、酸化セシウムCsOを使用する。
実施例1と同様に、マグネシウムからなるアノードAの洗浄。へら先一杯のヨウ化セシウムCsJを、約10mlの希釈KOHで溶解。10μlを洗浄したマグネシウム表面へ塗布、及び、続いて約900℃における熱処理。その後、Feからなる半導体層の形成(実施例3に類似)のため、硝酸鉄(III)の飽和水溶液約10μlを、CsOを有する被覆面へ塗布。最初に室温における乾燥、及び、その後に実施例1と同様に加熱。未処理の活性炭布との接触、及び、実施例1と同様に組み立て。実施例1と同様の測定結果。
【0037】
実施例7:
被覆材料BMとして、六方晶窒化ホウ素hBNを使用する。
実施例1と同様に、マグネシウムからなるアノードAの洗浄。へら先一杯のhBNを、約10mlの酢酸エチルに分散。分散液10μlを洗浄したマグネシウム表面へ塗布、酢酸エチルを蒸発させた後、約900℃で30分以上の熱処理。その後、Feからなる半導体層の形成(実施例3に類似)のため、硝酸鉄(III)の飽和水溶液約10μlを、hBNを有する被覆面への塗布。最初に室温における乾燥、及び、その後に実施例1と同様に加熱。未処理の活性炭布との接触、及び、実施例1と同様に組み立て。実施例1と同様の測定結果。
【0038】
要約すると、本固体素子においては、互いに対向する非対称の電極、すなわち、カソードKとアノードAとが、電磁放射の作用によって約1.8ボルト以上の開放端子電圧Vocが得られるように、半導体材料HLと被覆材料BMとを介して電子伝導性に互いに接続されている。
図1
図2