(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20240508BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240508BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240508BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0568
(21)【出願番号】P 2022563474
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 KR2021014720
(87)【国際公開番号】W WO2022092691
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0140155
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユンジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】センフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】キヒョン・キム
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105981(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109088101(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0114631(KR,A)
【文献】特表2018-519620(JP,A)
【文献】Jie Li et al,ZrO(NO3)2 as a functional additive to suppress the diffusion of polysulfides in lithium - Sulfur batteries,Journal of Power Sources,ELSEVIER,2019年10月07日,442,227232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の二重結合を含むと同時に酸素原子及び硫黄原子の中でいずれか一つを含むヘテロ環化合物を含む第1溶媒;
エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物の中でいずれか一つ以上を含む第2溶媒;
リチウム塩;
オキシ硝酸ジルコニウム;及び
硝酸リチウム;を含
み、
前記硝酸リチウム及びオキシ硝酸ジルコニウムは、前記リチウム二次電池用電解液の総重量に対して2重量%ないし8重量%で含まれており、
前記硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムの含量比は重量比で15:1ないし3:1であり、
前記リチウム塩は、LiFSI((SO
2
F)
2
NLi)を含むことを特徴とする、リチウム二次電池用電解液。
【請求項2】
前記リチウム塩はLiFSIを含み、LiTFSIは含まないことを特徴とする、請求項
1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項3】
前記リチウム塩の濃度は0.2ないし2.0Mであることを特徴とする、請求項
1または2に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項4】
前記ヘテロ環化合物は、炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環型アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基、アミン基及びスルホニル基からなる群から選択される1種以上に置換または非置換された3ないし15員のヘテロ環化合物であるか、または炭素数3ないし8の環型アルキル基及び炭素数6ないし10のアリール基の中で1種以上とヘテロ環化合物の多重環化合物であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項5】
前記ヘテロ環化合物は、フラン、2‐メチルフラン、3‐メチルフラン、2‐エチルフラン、2‐プロピルフラン、2‐ブチルフラン、2,3‐ジメチルフラン、2,4‐ジメチルフラン、2,5‐ジメチルフラン、ピラン、2‐メチルピラン、3‐メチルピラン、4‐メチルピラン、ベンゾフラン、2‐(2‐ニトロビニル)フラン、チオフェン、2‐メチルチオフェン、2‐エチルチオフェン、2‐プロピルチオフェン、2‐ブチルチオフェン、2,3‐ジメチルチオフェン、2,4‐ジメチルチオフェン及び2,5‐ジメチルチオフェンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項6】
前記第2溶媒のエーテル系化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項7】
前記リチウム二次電池用電解液は、硝酸ランタン、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム及び亜硝酸セシウムからなる群から選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項8】
前記リチウム二次電池用電解液は、第1溶媒である2‐メチルフラン、第2溶媒であるジメトキシエタン、リチウム塩であるLiFSI、オキシ硝酸ジルコニウム及び硝酸リチウムを含むことを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項9】
正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び請求項1~
8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液;を含むリチウム二次電池。
【請求項10】
前記リチウム二次電池はリチウム‐硫黄電池であることを特徴とする、請求項
9に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月27日付け韓国特許出願第10‐2020‐0140155号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に係り、より詳細には、リチウム二次電池の電解液に含まれる溶媒、リチウム塩及び添加剤を最適の割合で組み合わせることでリチウム二次電池の容量及び寿命を向上させることができる、リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高くなるにつれ、携帯電話、タブレット(tablet)、ラップトップ(laptop)及びカムコーダー、さらに電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡がり、電気化学素子に対する研究及び開発が徐々に増大されている。電気化学素子はこのような側面で最も注目を浴びている分野であり、その中でも充放電可能なリチウム‐硫黄電池のような二次電池の開発は関心の的になっていて、最近はこのような電池を開発するにあたり、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新しい電極と電池の設計に対する研究開発につながっている。
【0004】
このような電気化学素子、その中でリチウム‐硫黄電池(Li‐S battery)は高いエネルギー密度(理論容量)を持ち、リチウムイオン電池を代替することができる次世代二次電池として脚光を浴びている。このようなリチウム‐硫黄電池内では、放電時に硫黄の還元反応とリチウムメタルの酸化反応が起きるし、この時、硫黄は環構造のS8から線形構造のリチウムポリスルフィド(Lithium Polysulfide、LiPS)を形成するようになるが、このようなリチウム‐硫黄電池はポリスルフィドが完全にLi2Sに還元されるまで段階的放電電圧を示すことが特徴である。
【0005】
しかし、リチウム‐硫黄電池の商業化において最大の障害物は寿命であって、充放電過程中に充電/放電効率(Efficiency)が減って電池の寿命が退化するようになる。このようなリチウム‐硫黄電池の寿命が退化する原因では、電解液の副反応(電解液の分解による副産物の堆積)、リチウムメタルの不安定性(リチウム負極上にデンドライトが成長してショート発生)及び正極副産物の堆積(正極からのリチウムポリスルフィド湧出)などと多様である。
【0006】
すなわち、硫黄系列の化合物を正極活物質で使用し、リチウムのようなアルカリ金属を負極活物質で使用する電池において、充放電時にリチウムポリスルフィドの湧出及びシャトル現象が発生し、リチウムポリスルフィドが負極に伝達されてリチウム‐硫黄電池の容量が減少し、これによってリチウム‐硫黄電池は寿命が減少され、反応性が減少する大きな問題点を持っている。つまり、正極で湧出されたポリスルフィドは有機電解液への溶解度が高いため、電解液を通じて負極の方に望まない移動(PS shuttling)が起きることがあるし、その結果、正極活物質の非可逆的損失による容量減少、及び副反応によるリチウムメタル表面への硫黄粒子の蒸着による電池寿命の減少が発生するようになる。
【0007】
一方、このようなリチウム‐硫黄電池の挙動は電解液によって大きく変わることがあるが、正極の硫黄(sulfur)が電解液にリチウムポリスルフィド(LiPS)の形態で湧出されて出る場合の電解液をカソライトと称し、硫黄がリチウムポリスルフィドの形態でほとんど湧出されない場合の電解液をSSE(Sparingly Soluble or Solvating Electrolyte)と称する。すなわち、当業界では正極活物質である硫黄が電解液に湧出されないリチウム‐硫黄電池に対する多様な研究(正極複合体にLiPS吸着物質を添加したり、既存PEなどからなる分離膜を改質させるなどの研究)が行われていて、特に、硫黄が最終放電産物であるLi2SでSolid‐to‐Solid反応を行うことができる電解液に対しても研究されているが、未だにこれといった成果を出せない実情である。したがって、リチウムポリスルフィドが負極に移動してリチウム‐硫黄電池の寿命を減少させ、多量のリチウムポリスルフィドによって反応性が減少する現象を抑制できる、より根本的な方案が要求される。
【0008】
ここで、当業界では、電解液の副反応問題などを防ぐための試みが続いているが、未だに根本的な解決が難しい実情である。したがって、リチウム二次電池の反応性及び寿命性能を画基的に改善させることができるリチウム二次電池用電解液の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、リチウム二次電池の電解液に含まれる溶媒、リチウム塩及び添加剤を最適の割合で組み合わせることでリチウム二次電池の容量及び寿命を向上させることができる、リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、一つ以上の二重結合を含むと同時に、酸素原子及び硫黄原子のいずれか一つを含むヘテロ環化合物を含む第1溶媒;エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物のいずれか一つ以上を含む第2溶媒;リチウム塩;オキシ硝酸ジルコニウム;及び硝酸リチウム;を含むリチウム二次電池用電解液を提供する。
【0012】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び前記リチウム二次電池用電解液;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池によると、リチウム二次電池の電解液に含まれる溶媒、リチウム塩及び添加剤を最適の割合で組み合わせることでリチウム二次電池の容量及び寿命を向上させることができるし、より具体的には、リチウム‐硫黄電池のクーロン効率を向上させるなどの長所を持っているオキシ硝酸ジルコニウムをさらに含ませることで、サイクル寿命などの電池性能を向上させることができる長所を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム二次電池のサイクル寿命性能を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム二次電池のサイクル寿命性能を示すグラフである。
【
図3】本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム二次電池のサイクル寿命性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
本発明によるリチウム二次電池用電解液は、A)一つ以上の二重結合を含むと同時に、酸素原子及び硫黄原子の中でいずれか一つを含むヘテロ環化合物を含む第1溶媒、B)エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物の中でいずれか一つ以上を含む第2溶媒、C)リチウム塩、D)オキシ硝酸ジルコニウム及びE)硝酸リチウムを含む。
【0017】
本出願人は、電池の寿命性能を画基的に改善させることができる新規なリチウム二次電池用電解液の開発が要求される現時点で、リチウム二次電池の電解液に含まれる溶媒、リチウム塩及び添加剤を最適の割合で組み合わせることでリチウム二次電池の容量及び寿命を向上させることができ、より具体的には、リチウム‐硫黄電池のクーロン効率を向上させるなどの長所を持つものとして確認されたオキシ硝酸ジルコニウムを既存の電解液成分として使われた化合物と組み合わせることでサイクル寿命などの電池性能を向上させることができるリチウム二次電池用電解液を開発した。
【0018】
すなわち、リチウム‐硫黄電池などのリチウム二次電池に適用可能な電解液は、電解液中に含まれている溶媒、リチウム塩及び添加剤の種類によって電池の寿命または効率などの性能差につながる。ここで、本出願人は、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究を繰り返えした結果、
i)リチウム‐硫黄電池のクーロン効率を向上させるなどの長所を持っている「オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)」を電解液に含ませると同時に(正確には、正極から負極方向にリチウムポリスルフィドが移動して自己放電及び過充電現象が発生することを防ぐ役目として使われるLiNO3の一部を代替)、
ii)既存の電解液成分として使われた1,3‐ジオキソラン(DOL)を「一つ以上の二重結合を含むと同時に酸素原子及び硫黄原子の中でいずれか一つを含むヘテロ環化合物を含む溶媒(第1溶媒)」に変更し、
iii)また、同様に、既存の電解液成分として使われたLiTFSIを「LiFSIなどの他のリチウム塩」に変更し、反応性及び寿命などが改善された本発明を想到した。
【0019】
以下、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれるA)第1溶媒、B)第2溶媒、C)リチウム塩、D)オキシ硝酸ジルコニウム及びE)硝酸リチウムのそれぞれについて具体的に説明する。
【0020】
A)第1溶媒
前記第1溶媒は、一つ以上の二重結合を含むと同時に酸素原子及び硫黄原子の中でいずれか一つを含むヘテロ環化合物を含むものであって、ヘテロ原子(酸素原子または硫黄原子)の孤立電子対(lone pair electrons)の非局在化(delocalization)によって塩(salt)を溶解させにくい特性を持つので、電池の初基放電段階でヘテロ環化合物の開環重合反応(ring opening reaction)によってリチウム系金属(負極)の表面に高分子保護膜(solid electrolyte interface、SEI層)を形成することによってリチウムデンドライトの生成を抑制させることができ、さらにリチウム系金属表面での電解液分解及びそれによる副反応を減少させることでリチウム‐硫黄電池の寿命特性を向上させることができる。
【0021】
すなわち、本発明のヘテロ環化合物は、リチウム系金属の表面に高分子保護膜を形成するために一つ以上の二重結合を必ず含むべきであり、極性を帯びるようにして電解液内で他の溶媒との親和力を高めるなどの効果を発現させるようにヘテロ原子(酸素原子または硫黄原子)も必ず含まなければならない。
【0022】
前記ヘテロ環化合物は3ないし15員、好ましくは3ないし7員、より好ましくは5ないし6員のヘテロ環化合物である。また、このような前記ヘテロ環化合物は炭素数1ないし4のアルキル基、炭素数3ないし8の環型アルキル基、炭素数6ないし10のアリール基、ハロゲン基、ニトロ基(‐NO2)、アミン基(‐NH2)及びスルホニル基(‐SO2)からなる群から選択される1種以上で置換または非置換されたヘテロ環化合物である。また、前記ヘテロ環化合物は炭素数3ないし8の環型アルキル基及び炭素数6ないし10のアリール基の中で1種以上とヘテロ環化合物の多重環化合物である。
【0023】
前記ヘテロ環化合物が炭素数1ないし4のアルキル基に置換された場合、ラジカルが安定化して電解液の間の副反応を抑制することができて好ましい。また、ハロゲン基またはニトロ基に置換された場合、リチウム系金属表面に機能性保護膜を形成することができて好ましく、この時、前記形成された機能性保護膜は圧縮(compact)された形態の保護膜として安定し、リチウム系金属の均一な蒸着(deposition)を可能とし、ポリスルフィドとリチウム系金属との間の副反応を抑制することができる長所がある。
【0024】
前記ヘテロ環化合物の具体的な例では、フラン(furan)、2‐メチルフラン(2‐methylfuran)、3‐メチルフラン(3‐methylfuran)、2‐エチルフラン(2‐ethylfuran)、2‐プロピルフラン(2‐propylfuran)、2‐ブチルフラン(2‐butylfuran)、2,3‐ジメチルフラン(2,3‐dimethylfuran)、2,4‐ジメチルフラン(2,4‐dimethylfuran)、2,5‐ジメチルフラン(2,5‐dimethylfuran)、ピラン(pyran)、2‐メチルピラン(2‐methylpyran)、3‐メチルピラン(3‐methylpyran)、4‐メチルピラン(4‐methylpyran)、ベンゾフラン(benzofuran)、2‐(2‐ニトロビニル)フラン(2‐(2‐Nitrovinyl)furan)、チオフェン(thiophene)、2‐メチルチオフェン(2‐methylthiophene)、2‐エチルチオフェン(2‐ethylthiphene)、2‐プロピルチオフェン(2‐propylthiophene)、2‐ブチルチオフェン(2‐butylthiophene)、2,3‐ジメチルチオフェン(2,3‐dimethylthiophene)、2,4‐ジメチルチオフェン(2,4‐dimethylthiophene)及び2,5‐ジメチルチオフェン(2,5‐dimethylthiophene)などを挙げることができるし、この中で2‐メチルフランまたは2‐メチルチオフェンを第1溶媒として使用することが好ましい。
【0025】
このようなヘテロ環化合物を含む第1溶媒は、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれる全体有機溶媒(すなわち、第1溶媒+第2溶媒)100体積比に対して5ないし50体積比で含まれ、好ましくは10ないし40の体積比、より好ましくは15ないし30の体積比で含まれることができる(残りは前記第2溶媒に該当する)。前記第1溶媒を本発明の全体有機溶媒100体積比に対して5体積比未満で含むと、ポリスルフィドの湧出量を減少させる能力が低下して電解液の抵抗増加を抑制できなくなったり、リチウム系金属表面に保護膜が完璧に形成されない問題が発生することがある。また、前記第1溶媒を本発明の全体有機溶媒100体積比に対して50体積比を超える含量で含むと、電解液及びリチウム系金属の表面抵抗増加によって電池の容量及び寿命が減少する問題が発生する恐れがある。
【0026】
B)第2溶媒
前記第2溶媒は、エーテル系化合物、エステル系化合物、アミド系化合物及びカーボネート系化合物の中でいずれか一つ以上を含むものであって、リチウム塩を溶解して電解液がリチウムイオン伝導度を持つようにするだけではなく、正極活物質である硫黄を湧出させてリチウムと電気化学的反応を円滑に進行させる役目をし、前記カーボネート系化合物の場合、線形カーボネート系化合物または環形カーボネート系化合物である。
【0027】
前記エーテル系化合物の具体的な例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群から選択される1種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、この中でジメトキシエタンを第2溶媒で使用することが好ましい。
【0028】
また、前記エステル系化合物としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネイト、エチルプロピオネイト、プロピルプロピオネイト、γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、γ‐カプロラクトン、σ‐バレロラクトン及びε‐カプロラクトンからなる群から選択される1種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、前記アミド系化合物は当業界で使用中の通常のアミド系化合物である。
【0029】
また、前記線形カーボネート系化合物としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)及びエチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)からなる群から選択される1種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
また、前記環形カーボネート系化合物としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2‐ブチレンカーボネート、2,3‐ブチレンカーボネート、1,2‐ペンチレンカーボネート、2,3‐ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びこれらのハロゲン化物(フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)など)からなる群から選択される1種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
一方、前記第2溶媒が適正量未満で含まれると、リチウム塩を充分溶解させることができず、リチウムイオン伝導度が下落する問題、及び活物質である硫黄が溶解されることができる濃度を超えて析出される問題が発生する恐れがあり、過量で含まれる場合は、活物質である硫黄が過多に湧出されてリチウムポリスルフィドとリチウム負極のシャトル現象がひどくなって寿命が減少する問題が発生することがある。
【0032】
一方、前記第1溶媒及び第2溶媒を含む有機溶媒は、本発明のリチウム二次電池用電解液総重量に対して70ないし97重量%、好ましくは75ないし95重量%、より好ましくは80ないし95重量%で含まれることができる。もし、前記有機溶媒がリチウム二次電池用電解液総重量に対して70重量%未満で含まれると、電解液の粘度が高くなってイオン伝導度が減少する問題またはリチウム塩や添加剤が電解液に完全に溶解されない問題が発生することがあって、97重量%を超える含量で含まれる場合は、電解液内のリチウム塩の濃度が低くなってイオン伝導度が減少する問題が発生することができる。
【0033】
C)リチウム塩
前記リチウム塩は、イオン伝導性を増加させるために使われる電解質塩であって、これの例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルホン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上を例示することができ、この中でLiFSI((SO2F)2NLi)を必須成分として使用することが好ましい。同時に、本発明の電解液はLiTFSI((CF3SO2)2NLi)を含まないことを特徴とする。
【0034】
前記リチウム塩の濃度はイオン伝導率などを考慮して決まることができるし、例えば0.2ないし2M、好ましくは0.5ないし1Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満の場合、電池駆動に適するイオン伝導度の確保が難しいことがあって、前記範囲を超える場合は電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下されたり、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池の性能が低下することができる。
【0035】
D)オキシ硝酸ジルコニウム
前記オキシ硝酸ジルコニウム(Zirconium Oxynitrate、ZrO(NO3)2)は、電池のクーロン効率(coulombic efficiency;C.E.)を向上させて窮極的には電池の寿命を向上させるために使われる成分であって、既存にもこれを電解液成分として使用した場合があるが(中国特許公開第109088101号)、該当事例はリチウム塩としてLiTFSIを使っていて、なお、後述する硝酸リチウムなどの硝酸系化合物を含まないため、電池の寿命が退化する問題を根本的に改善することはできなかった。
【0036】
しかし、本発明は、オキシ硝酸ジルコニウムを使いながらも、既存電解液成分として使用されていた1,3‐ジオキソラン(DOL)を「一つ以上の二重結合を含むと同時に酸素原子及び硫黄原子の中でいずれか一つを含むヘテロ環化合物を含む溶媒(第1溶媒)」に変更し、また、既存電解液成分として使用されていたLiTFSIを「LiFSIなどの他のリチウム塩」に変更し、また、硝酸リチウムなどの硝酸系化合物を一緒に使用することによって、反応性及び寿命などが改善された本発明を想到した。
【0037】
以上のようなオキシ硝酸ジルコニウムは、リチウム二次電池用電解液の総重量に対して0.1重量%以上ないし2重量%未満、好ましくは0.5ないし1.5重量%で含まれることができ、もし、前記オキシ硝酸ジルコニウムが電解液の総重量に対して0.1重量%未満で含まれると、電池のクーロン効率向上度合いが微々たるものになって寿命向上の程度もまた微々たるものになる問題が発生する恐れがあり、2重量%以上の場合は溶媒に溶解または分散されなくて沈澱現象が発生することがある。
【0038】
E)硝酸リチウム
また、本発明によるリチウム二次電池用電解液は、硝酸リチウム(LiNO3)を基本的に含む。ただし、必要に応じて、硝酸ランタン(La(NO3)3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)及び亜硝酸セシウム(CsNO2)からなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0039】
前記硝酸リチウムはリチウム二次電池用電解液の総重量に対して1ないし7重量%、好ましくは2ないし6重量%、より好ましくは3ないし5重量%の含量で含まれることができる。前記硝酸リチウムの含量がリチウム二次電池用電解液の総重量に対して1重量%未満の場合、クーロン効率が急激に低くなることがあるし、7重量%を超える場合は電解液の粘度が高くなって駆動が難しいことがある。一方、前記硝酸リチウム及びオキシ硝酸ジルコニウムは、前記リチウム二次電池用電解液の総重量に対して2ないし8重量%で含まれることが好ましく、この時、前記硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムの含量比は、重量比として15:1ないし3:1、好ましくは9.5:1ないし4:1、より好ましくは9:1ないし4:1であってもよいが、これに限定されない。もし、前記硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムの総含量がリチウム二次電池用電解液の総重量に対して2重量%未満で使われると、電池のクーロン効率が急激に低くなることがあるし、8重量を超えると電解液の粘度が高くなって駆動が難しいことがある。
【0040】
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。前記リチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在される分離膜及び前記リチウム二次電池用電解液を含む。前記リチウム二次電池用電解液は、以上で説明したように、A)第1溶媒、B)第2溶媒、C)リチウム塩及びD)オキシ硝酸ジルコニウム及びE)硝酸リチウムを含むものであって、具体的な内容は前述したことを準用する。また、前記リチウム二次電池は当業界で通用される全てのリチウム二次電池であってもよく、その中で、リチウム‐硫黄電池が最も好ましい。
【0041】
以下、本発明によるリチウム二次電池において、正極、負極及び分離膜についてより具体的に説明する。
【0042】
前述したように、本発明のリチウム二次電池に含まれる正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを含む。前記正極活物質では通常のリチウム二次電池に適用されるものであってもよく、例えば、硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、硫黄系列化合物またはこれらの混合物を含むことができ、前記硫黄系列化合物は具体的に、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素‐硫黄複合体((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)などであってもよい。また、前記正極活物質は硫黄‐炭素複合体を含むことができるし、硫黄物質は単独では電気伝導性がないため、導電材と複合して使用することができる。前記硫黄‐炭素複合体を構成する炭素材(または、炭素源)は多孔性構造であるか、または比表面積が高いものであって、当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)などの炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに制限されないし、その形態は球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型でリチウム二次電池に適用可能なものであれば特に制限しない。
【0043】
また、前記炭素材には気孔が形成されていて、前記気孔の孔隙率は40ないし90%、好ましくは60ないし80%であり、前記気孔の孔隙率が40%未満であればリチウムイオンの伝達が正常に行われず抵抗成分として作用して問題が発生することがあるし、90%を超える場合は機械的強度が低下する問題が発生することがある。また、前記炭素材の気孔の大きさは10nmないし5μm、好ましくは50nmないし5μmであって、前記気孔の大きさが10nm未満であればリチウムイオンの透過が不可能な問題が発生することがあるし、5μmを超える場合は電極間の接触による電池短絡及び安全性問題が発生することがある。
【0044】
前記バインダーは正極活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助力する成分として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン‐ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF/HFP)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、アルキル化ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレン、ポリメチル(メト)アクリレイト、ポリエチル(メト)アクリレイト、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレン‐ブチレンゴム、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上を使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0045】
前記バインダーは通常正極総重量100重量部を基準にして1ないし50重量部、好ましくは3ないし15重量部が添加される。前記バインダーの含量が1重量部未満であれば正極活物質と集電体との接着力が不十分となることがあるし、50重量部を超えると接着力は向上されるが、その分正極活物質の含量が減少して電池容量が低くなることがある。
【0046】
前記正極に含まれる導電材はリチウム二次電池の内部環境で副反応を引き起こさずに、当該電池に化学的変化を引き起こさないながら優れる電気伝導性を持つものであれば特に制限されないし、代表的には黒鉛または導電性炭素を使用することができるし、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独で、または2種以上混合して使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0047】
前記導電材は通常的に正極全体重量100重量部を基準にして0.5ないし50重量部、好ましくは1ないし30重量部で添加される。導電材の含量が0.5重量部未満で低すぎると電気伝導性向上効果を基待しにくいか、または電池の電気化学的特性が低下することがあるし、導電材の含量が50重量部を超えて多すぎると相対的に正極活物質の量が少なくなって容量及びエネルギー密度が低下することがある。正極に導電材を含ませる方法はさほど制限されないし、正極活物質へのコーティングなど当分野に公知された通常の方法を利用することができる。また、必要に応じて、正極活物質に導電性の第2被覆層が付加されることによって前記のような導電材の添加を代わることもできる。
【0048】
また、本発明の正極には、その膨脹を抑制する成分として充填剤が選択的に添加されることができる。このような充填剤は当該電池に化学的変化を引き起こさずに電極の膨脹を抑制できるものであれば特に制限されないし、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質;などを使用することができる。
【0049】
前記正極は、正極活物質、バインダー及び導電材などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作って、これを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造されることができる。前記分散媒ではNMP(N‐methyl‐2‐pyrrolidone)、DMF(Dimethyl formamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0050】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO2)、FTO(F doped SnO2)、及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。正極集電体の形態は、ホイル、フィルム、シート、打ち抜かれたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0051】
前記負極はリチウム系金属で、リチウム系金属の一側に集電体をさらに含むことができる。前記集電体は負極集電体が使われることができる。前記負極集電体は電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限せず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金ではアルミニウム‐カドミウム合金を使用することができるし、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子または伝導性高分子などを使用することもできる。一般に、負極集電体では銅薄板を適用する。
【0052】
また、その形態は表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使われることができる。また、前記負極集電体は3ないし500μmの厚さ範囲のものを適用する。前記負極集電体の厚さが3μm未満であれば集電効果が落ちる一方、厚さが500μmを超えると、セルをフォールディング(folding)して組み立てる場合、加工性が低下される問題点がある。
【0053】
前記リチウム系金属はリチウムまたはリチウム合金であってもよい。この時、リチウム合金はリチウムと合金化可能な元素を含み、具体的に、リチウムとSi、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge及びAlからなる群から選択される1種以上との合金であってもよい。
【0054】
前記リチウム系金属はシートまたはホイルの形態であってもよく、場合によって集電体上にリチウムまたはリチウム合金が乾式工程によって蒸着またはコーティングされた形態であるか、または粒子状の金属及び合金が湿式工程などによって蒸着またはコーティングされた形態であってもよい。
【0055】
前記正極と負極の間は通常の分離膜が介在されることができる。前記分離膜は電極を物理的に分離する機能を持つ物理的な分離膜であって、通常の分離膜として使用されるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。
【0056】
また、前記分離膜は正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間にリチウムイオンの輸送ができるようにする。このような分離膜は多孔性で非伝導性または絶縁性の物質からなることができる。前記分離膜はフィルムのような独立的な部材であるか、または正極及び/または負極に付加したコーティング層であってもよい。
【0057】
前記分離膜として使用されるポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した膜を挙げることができる。前記分離膜として使われることができる不織布の例では、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエステル(polyester)などをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子で形成した不織布が可能であり、このような不織布は多孔性ウェブ(web)を形成する繊維形態であって、長繊維で構成されたスパンボンド(spunbond)またはメルトブローン(meltblown)形態を含む。
【0058】
前記分離膜の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm範囲が好ましく、より好ましくは5ないし50μm範囲である。前記分離膜の厚さが1μm未満の場合は機械的物性を維持することができず、100μmを超える場合は前記分離膜が抵抗層で作用するようになって電池の性能が低下する。前記分離膜の気孔の大きさ及び気孔率は特に制限されないが、気孔の大きさは0.1ないし50μmで、気孔率は10ないし95%であることが好ましい。前記分離膜の気孔の大きさが0.1μm未満であるか、または気孔率が10%未満であれば分離膜が抵抗層で作用するようになり、気孔の大きさが50μmを超えたり気孔率が95%を超える場合は機械的物性を維持することができない。
【0059】
以上のような正極、負極、分離膜及び電解液を含む本発明のリチウム二次電池は、正極を負極と対面させ、その間に分離膜を介在した後、本発明によるリチウム二次電池用電解液を注入する工程を通じて製造されることができる。
【0060】
一方、本発明によるリチウム二次電池は小型デバイスの電源で使用される電池セルに適用されることは勿論、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池で特に好ましく使用されることができる。このような側面で、本発明はまた2個以上がリチウム二次電池が電気的に連結(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれるリチウム二次電池の数量は、電池モジュールの用途及び容量などを考慮して多様に調節できることは勿論である。さらに、本発明は当分野の通常的な技術によって前記電池モジュールを電気的に連結した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、及びプラグインハイブリッド電気車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;電気トラック;電気商用車;または電力貯蔵用システムの中でいずれか一つ以上の中大型デバイス電源で利用可能であるが、必ずこれに限定されるものではない。
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0061】
[実施例1]リチウム二次電池の製造
電解液製造
先ず、2‐メチルフラン(第1溶媒)とジメトキシエタン(第2溶媒)を2:8の体積比(v/v)で混合した有機溶媒に、電解液の総重量基準4.5重量%の硝酸リチウム(LiNO3)と0.5重量%のオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)を入れて、LiFSI(リチウム塩)の濃度が0.75Mになるように溶解させて電解液を製造した。ここで、前記オキシ硝酸ジルコニウムはALFA AESAR社のZrO(NO3)2・xH2Oを48時間80℃で真空乾燥させてH2Oを取り除いて製造されたものである。
【0062】
正極製造
これとは別に、正極活物質として硫黄‐炭素(CNT)複合体(S/C 75:25重量比)87.5重量部、導電材でデンカブラック5重量部、バインダーでスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR/CMC 7:3)7.5重量部を混合して正極スラリー組成物を製造した後、これを集電体(Al Foil)上にコーティングし、80℃で12時間乾燥してロールプレス(roll press)機器で圧延して正極を製造した(この時、ローディング量は5.0~5.5mAh/cm2で、電極の気孔率(porosity)は65%にした)。
【0063】
リチウム二次電池(リチウム‐硫黄電池)製造
前記製造された正極と、銅集電体上に35μm厚さのリチウムホイル(Honzo社)を圧延させた負極を対面するように位置させ、その間に多孔性ポリエチレン(PE)分離膜を介在した後、前記製造された電解液を注入し、密封/シーリングしてコインセルタイプのリチウム‐硫黄電池を製造した。一方、前記電池の製造において、前記正極は14phi円形電極で打ち抜いて使用し、前記ポリエチレン分離膜は19phiで、前記リチウムホイルは16phiに打ち抜いて使った。
【0064】
[実施例2、比較例1~5]リチウム二次電池の製造
下記表1の組成のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行って実施例2及び比較例1ないし5に該当するリチウム‐硫黄電池をそれぞれ製造した。
【0065】
【0066】
[実験例1]リチウム二次電池のサイクル寿命評価
前記実施例1、2及び比較例1ないし7で製造されたリチウム‐硫黄電池に対し、25℃で CCモードでOCV(open circuit voltage)から1.8Vになるまで0.1Cで放電し、また2.5Vになるまで0.1Cで充電するプロトコールで2.5サイクル(cycle)進行し、電池安定化サイクル以後0.3C充電/0.5C放電サイクルを1.8V~2.5Vの間の電圧区間で実施し、高率初基容量80%維持基準サイクル寿命を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0067】
【0068】
図1ないし3は本発明の一実施例及び比較例によって製造されたリチウム二次電池のサイクル寿命性能を示すグラフで、
図1ないし3及び前記表2に示すように、硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムを15:1ないし3:1の重量比(好ましくは、9.5:1ないし4:1の重量比)で使用すると同時に、第1溶媒で1,3‐ジオキソラン(DOL)ではない2‐メチルフランを使用し、また、リチウム塩でLiTFSIではないLiFSIを使用した実施例1及び2のリチウム‐硫黄電池は、「第1溶媒で1,3‐ジオキソラン(DOL)を使用し、リチウム塩でLiTFSIを使用し、硝酸リチウムを使わない比較例1のリチウム‐硫黄電池」、
「オキシ硝酸ジルコニウムを使わない比較例2のリチウム‐硫黄電池」、「硝酸リチウムを使用しない比較例3のリチウム‐硫黄電池」、「リチウム塩としてLiTFSIを使用した比較例4のリチウム‐硫黄電池」、「第1溶媒で1,3‐ジオキソラン(DOL)を使用した比較例5のリチウム‐硫黄電池」、「硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムの含量比が重量比として約16:1の比較例6のリチウム‐硫黄電池」及び「硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムの含量比が重量比として約2.3:1である比較例7のリチウム‐硫黄電池」それぞれに比べて、サイクル寿命がよくなることを確認することができた。
【0069】
言い換えれば、第1溶媒として2‐メチルフランではない1,3‐ジオキソラン(DOL)を使用したり、オキシ硝酸ジルコニウム及び硝酸リチウムの中でいずれか一つでも使わなかったり、硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムを全て使用しても、これらの含量比を15:1ないし3:1の重量比(好ましくは、9.5:1ないし4:1の重量比)の範囲内で使用しないか、またはリチウム塩でLiTFSIを使用するようになれば、サイクル寿命を向上させるに限界があり、よって、前記条件を全て充たさないと、本発明のようにサイクル寿命を向上させることができるということを確認した。さらに、前記実施例1及び2の比較/対照を通じて、硝酸リチウムとオキシ硝酸ジルコニウムの重量比範囲内で硝酸リチウムの含量を相対的に高める場合、電池のサイクル寿命がより向上される点も確認することができた。