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特許7483943プロピレン重合用の触媒、プロピレン重合用の触媒系およびその調製と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】プロピレン重合用の触媒、プロピレン重合用の触媒系およびその調製と応用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20240508BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20240508BHJP
   C07C 311/21 20060101ALN20240508BHJP
   C07C 311/08 20060101ALN20240508BHJP
   C07C 311/14 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/06
C07C311/21
C07C311/08
C07C311/14
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022568455
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2021091877
(87)【国際公開番号】W WO2021227920
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】202010385500.7
(32)【優先日】2020-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519316254
【氏名又は名称】中国石油天然气股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PetroChina Company Limited
【住所又は居所原語表記】9 Dongzhimen North Street,Dongcheng District,Beijing,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】崔亮
(72)【発明者】
【氏名】義建軍
(72)【発明者】
【氏名】雷▲ジュン▼宇
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼海軍
(72)【発明者】
【氏名】王科峰
(72)【発明者】
【氏名】趙士勝
(72)【発明者】
【氏名】庄俊鵬
(72)【発明者】
【氏名】張聖輝
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-039484(JP,A)
【文献】特表2010-529268(JP,A)
【文献】特開昭61-213209(JP,A)
【文献】特表2008-521944(JP,A)
【文献】特開昭52-000247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60-4/70、6/00-246/00、301/00
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロゲン化マグネシウムと、
記ハロゲン化マグネシウムに担持され、少なくとも1つのTi-ハロゲン結合を含むチタン化合物と、
内部電子供与体化合物と
を含むプロピレン重合用の触媒であって、
前記内部電子供与体化合物は、式(1)で表される構造を有する1種又は2種以上の化合物から選択される、プロピレン重合用の触媒。
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、C3~C15のシクロアルキル基、またはアリール基から選択され、
R′はH原子、C1~C5の直鎖もしくは分岐したアルキル基、またはフェニル基であり、
、R、R、Rはそれぞれ独立して、H原子、ハロゲン、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、C6~C15のアリール基またはアリールアルキル基から選択される。)
【請求項2】
式(1)において、前記R′はメチル基である、請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項3】
式(1)において、前記Rは、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、またはフェニル基から選択される、請求項2に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項4】
式(1)において、前記RはC1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基から選択される、請求項3に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項5】
式(1)において、前記R、R、R、RはいずれもH原子である、請求項4に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項6】
前記内部電子供与体化合物は、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチル、
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
2-(N-メチルメチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ネオペンチル、
2-(N-メチルプロピルスルホンアミド)安息香酸シクロペンチル、
2-(N-メチルプロピルスルホンアミド)安息香酸シクロヘキシル、
2-(N-メチルシクロプロピルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-メチルシクロペンチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-メチルペンチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-メチルシクロヘキシルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
2-(N-メチルヘプチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
2-(N-メチル-p-トリルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸フェニル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸イソオクチル、
2-(N-メチルプロピルスルホンアミド)安息香酸p-トリル、
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸エチル、
2-(N-メチルペンチルスルホンアミド)安息香酸エチル、
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
2-(N-メチル-p-トリルスルホンアミド)安息香酸ネオペンチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸p-トリル、
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソオクチル、
2-(N-メチルシクロヘキシルスルホンアミド)安息香酸p-トリル、
2-(N-メチル-β-ナフチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
2,3,4,5-テトラメチル-6-(N-メチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
4-ブロモ-6-(N-エチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
3-イソプロピル-6-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸ブチル、
2-(N-フェニルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-フェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
2-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
2-(N-エチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
から選択されるいずれか1種または2種以上の化合物である、請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項7】
記ハロゲン化マグネシウムの前駆体は、一般式Mg(OR2-m・n(ROH)(ただし、R はC1~C20のアルキル基から選択され、Xはハロゲンであり、mは1又は2であり、nは0<n<5である小数又は整数であり、R はC1~C20のアルキル基から選択される。)で表されるハロゲン化マグネシウムアルコール化合物である、請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項8】
前記ハロゲン化マグネシウムアルコール化合物におけるハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、マグネシウムクロロメトキシドやマグネシウムクロロエトキシドから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含み、
前記ハロゲン化マグネシウムアルコール化合物におけるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールやイソブタノールから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含む、
請求項7に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項9】
前記ハロゲン化マグネシウムアルコール化合物におけるハロゲン化マグネシウムは塩化マグネシウムであり、
前記アルコールはエタノールである、
請求項8に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項10】
前記チタン化合物は、チタンクロロトリアルコキシド、チタンジクロロジアルコキシド、チタントリクロロアルコキシド、四塩化チタンや四臭化チタンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含む、請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項11】
前記チタン化合物は四塩化チタンである、請求項10に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項12】
前記プロピレン重合用の触媒の合計質量を100%とする場合、元素マグネシウムの質量含有率は10%~25%であり、元素チタンの質量含有率は1%~15%であり、ハロゲン化マグネシウムおよびチタン化合物におけるハロゲンの合計質量は40%~60%であり、内部電子供与体の質量含有率は1%~10%である、請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒。
【請求項13】
請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒の調製方法であって
ロゲン化マグネシウムの前駆体を一部のチタン化合物液に添加し、第1の所定温度まで温度を下げて反応させるS1工程と、
第2の所定温度まで徐々に昇温し、内部電子供与体化合物を添加して反応を継続させるS2工程と、
第3の所定温度でチタン化合物の残部を加えて反応を継続させ、反応終了後に反応系をろ過して固体残渣を得るS3工程と、
前記固体残渣を洗浄・乾燥して、前記プロピレン重合用の触媒を得るS4工程と、
を含む、調製方法。
【請求項14】
S2工程において、元素マグネシウムと内部電子供与体化合物とのモル比は1:1~20:1である、請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
S1工程における前記第1の所定温度は-40℃~0℃であり、反応時間は0.1時間~3時間であり、
S2工程における前記第2の所定温度は40℃~100℃であり、反応時間は0.5時間~3時間であり、
S3工程における前記第3の所定温度は80℃~140℃であり、反応時間は0.5時間~3時間である、
請求項13に記載の調製方法。
【請求項16】
請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒と、助触媒と、外部電子供与体とを含む、プロピレン重合用の触媒系。
【請求項17】
前記助触媒は、一般式AlR 3-p(ただし、RがC1~C20のアルキル基であり、Xがハロゲンであり、pが1≦p≦3の整数である。)で表されるアルキルアルミニウム化合物であり、
外部電子供与体は、一般式R Si(OR4-q(ただし、R はC1~C10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、qは0≦n≦3の整数である。)で表されるシロキサン化合物である、
請求項16に記載のプロピレン重合用の触媒系。
【請求項18】
前記助触媒は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、モノヒドロジエチルアルミニウム、モノヒドロジイソブチルアルミニウム、モノクロロジエチルアルミニウム、モノクロロジイソブチルアルミニウムやジクロロエチルアルミニウムから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含む、請求項16に記載のプロピレン重合用の触媒系。
【請求項19】
前記外部電子供与体は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランやジフェニルジメトキシシランから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含む、請求項16に記載のプロピレン重合用の触媒系。
【請求項20】
前記プロピレン重合用の触媒におけるチタンと助触媒におけるアルミニウムとのモル比は1:1~1:2000であり、
外部電子供与体とプロピレン重合用の触媒との比率は、Si/Tiモル比で1:1~1:100である、
請求項16に記載のプロピレン重合用の触媒系。
【請求項21】
請求項1に記載のプロピレン重合用の触媒または請求項16に記載のプロピレン重合用の触媒系の、プロピレン重合反応における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の技術分野に関し、具体的には、プロピレン重合用の触媒、プロピレン重合用の触媒系およびその調製と応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を基本成分とする固体触媒は、CH=CHRオレフィン重合反応、特に炭素数3以上のα-オレフィンの重合において、高い収率と高い立体規則性を有するポリマーを与えるために使用することができる。Ziegler-Natta触媒の重要な構成要素である内部電子供与体化合物は、触媒性能の向上に重要な役割を果たし、触媒の性能に影響する主な要因の1つであり、触媒活性を向上させるだけでなく、触媒の配向性を高め、重合生成物の立体配置の規則性を高くすることができる。そのため、電子供与体化合物の発展により、ポリオレフィン触媒は常に更新されている。
【0003】
Ziegler-Natta触媒の内部電子供与体として使用できる化合物は多数ある。ポリカルボン酸、モノまたはポリカルボン酸エステル、酸無水物、ケトン、モノまたはポリエーテル等およびそれらの誘導体、その中でもより一般的なのはフタル酸ジn-ブチルまたはフタル酸ジイソブチル(US6365685B1、US20010020073A1)等の2価芳香族カルボン酸エステル類である。WO2005097841A1は、特定の化学式のケトエステル誘導体である電子供与体が用いられる触媒成分を提供する。WO2005047351A1の内部電子供与体は、特定の化学式のチオフェンジカルボキシレートである。WO2004106388A2の内部電子供与体は、主にエーテル、脂質およびアルコキシシラン、特にC1~C20の環状エーテル、アルキルエステルおよび脂肪族カルボンから選択される。WO03002617A1は、エステル、エーテル、アミドまたはケトンから選択される単官能性電子供与体(MD)に関するものである。US6433119B1は、酢酸エステル、無水物、ケトン、アルデヒドおよび単官能性および二官能性の有機酸エステルを含む内部電子供与体が、担持された触媒成分において使用されることに関するものである。US20030207754A1およびUS20030199388A1の内部電子供与体は、マロン酸ジエステルである。特許WO2004005359A1、US6818583B1、US20020183575A1およびUS200532633A1の内部電子供与体はコハク酸エステルであり、触媒の活性を改善し、かつ得られたポリポロピレンの分子量分布が明らかに広くなる。WO03076480A1、WO03022894A1、US6395670B1、US20050154157A1、EP728769A1等の研究結果から、1,3-ジエーテル系電子供与体化合物の2位炭素原子において、空間体積が大きい置換基、及び対称性の高い置換基では、触媒活性及び重合物のアイソタクティシティーに寄与し、高い水素感度を持つ触媒を実現させる。CN1453298A、CN1690039A、CN101125898A、CN105985469A、CN104628911A等は、ジオールエステル、環状エステル、ポリエーテルエステル、リン酸エステル等の内部電子供与体としての使用を報告した。
【0004】
ジフタル酸塩を内部電子供与体とする触媒は使用されてきているが、その使用時にポリプロピレン製品に残留するジフタル酸塩は男性の生殖機能に影響を与える可能性があるため、各国は相次いで相応の法規を制定して、フタル酸塩含有量が基準を超えたプラスチック製品の使用を制限している。そのため、現在、各研究機関はオレフィン重合触媒の開発において、調製過程でジフタル酸塩の使用を避けることを基本条件としながら、触媒全体の性能を向上させることを目的とし、新しい構造の内部電子供与体化合物の探索・開発を重ね、そして、オレフィン重合触媒への適用が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プロピレン重合用の触媒、プロピレン重合用の触媒系、およびその調製と応用を提供することを目的とする。前記プロピレン重合用の触媒は、高い重合反応活性と良好な立体配向性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、
活性化ハロゲン化マグネシウムと、
前記活性化ハロゲン化マグネシウムに担持され、少なくとも1つのTi-ハロゲン結合を含むチタン化合物と、
内部電子供与体化合物と
を含むプロピレン重合用の触媒であって、
前記内部電子供与体化合物は、式(1)で表される構造を有する1種又は2種以上の化合物から選択される、プロピレン重合用の触媒を提供する。
【化1】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、C3~C15のシクロアルキル基、またはアリール基から選択され、
R′はH原子、C1~C5の直鎖もしくは分岐したアルキル基、またはフェニル基であり、
、R、R、Rはそれぞれ独立して、H原子、ハロゲン、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、C6~C15のアリール基またはアリールアルキル基から選択される。)
【0008】
本発明の一実施形態において、式(1)において、前記R′はメチル基である。
【0009】
本発明の一実施形態において、式(1)において、前記Rは、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、またはフェニル基から選択される。
【0010】
本発明の一実施形態において、式(1)において、前記Rは、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基から選択される。
【0011】
本発明の一実施形態において、式(1)において、前記R、R、R、RはいずれもH原子である。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記内部電子供与体化合物は、
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチル、
【化2】
下記の構造式で表される2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化3】
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化4】
下記の構造式で表される2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
【化5】
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
【化6】
下記の構造式で表される2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
【化7】
下記の構造式で表される2-(N-メチルメチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化8】
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ネオペンチル、
【化9】
下記の構造式で表される2-(N-メチルプロピルスルホンアミド)安息香酸シクロペンチル、
【化10】
下記の構造式で表される2-(N-メチルプロピルスルホンアミド)安息香酸シクロヘキシル、
【化11】
下記の構造式で表される2-(N-メチルシクロプロピルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化12】
下記の構造式で表される2-(N-メチルシクロペンチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化13】
下記の構造式で表される2-(N-メチルペンチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化14】
下記の構造式で表される2-(N-メチルシクロヘキシルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
【化15】
下記の構造式で表される2-(N-メチルヘプチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
【化16】
下記の構造式で表される2-(N-メチル-p-トリルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
【化17】
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸フェニル、
【化18】
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸イソオクチル、
2-(N-メチルプロピルスルホンアミド)安息香酸p-トリル、
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸エチル、
2-(N-メチルペンチルスルホンアミド)安息香酸エチル、
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
2-(N-メチル-p-トリルスルホンアミド)安息香酸ネオペンチル、
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸p-トリル、
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソオクチル、
2-(N-メチルシクロヘキシルスルホンアミド)安息香酸p-トリル、
下記の構造式で表される2-(N-メチル-β-ナフチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
【化19】
下記の構造式で表される2,3,4,5-テトラメチル-6-(N-メチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化20】
4-ブロモ-6-(N-エチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
3-イソプロピル-6-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸ブチル、
2-(N-フェニルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
2-(N-フェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
2-(N-ブチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
2-(N-エチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
から選択されるいずれか1種または2種以上の化合物である。
本発明の一実施形態において、前記内部電子供与体化合物は、
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチル、
【化21】
下記の構造式で表される2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化22】
下記の構造式で表される2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチル、
【化23】
下記の構造式で表される2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピル、
【化24】
下記の構造式で表される2-(N-メチル-ブチルスルホンアミド)安息香酸プロピル、
【化25】
下記の構造式で表される2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチル、
【化26】
から選ばれるの1つである。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記活性化ハロゲン化マグネシウムの前駆体は、一般式Mg(OR2-m・n(ROH)(ただし、RはC1~C20のアルキル基から選択され、Xはハロゲンであり、mは1又は2であり、nは0<n<5である小数又は整数であり、RはC1~C20のアルキル基から選択される。)で表されるハロゲン化マグネシウムアルコール化合物である。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記ハロゲン化マグネシウムアルコール化合物におけるハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、マグネシウムクロロメトキシドやマグネシウムクロロエトキシドから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含み、前記ハロゲン化マグネシウムアルコール化合物におけるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールやイソブタノールから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含む。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記ハロゲン化マグネシウムアルコール化合物におけるハロゲン化マグネシウムは塩化マグネシウムであり、アルコールはエタノールである。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記チタン化合物は、チタンクロロトリアルコキシド、チタンジクロロジアルコキシド、チタントリクロロアルコキシド、四塩化チタンや四臭化チタンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含む。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記チタン化合物は、四塩化チタンである。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記プロピレン重合用の触媒の合計質量を100%とする場合、元素マグネシウムの質量含有率は10%~25%であり、元素チタンの質量含有率は1%~15%であり、ハロゲン化マグネシウムおよびチタン化合物におけるハロゲンの合計質量は40%~60%であり、内部電子供与体の質量含有率は1%~10%である。
【0019】
本発明の第2の態様は、
上記プロピレン重合用の触媒の調製方法であって、
活性化ハロゲン化マグネシウムの前駆体を一部のチタン化合物液に添加し、第1の所定温度まで温度を下げて反応させるS1工程と、
第2の所定温度まで徐々に昇温し、内部電子供与体化合物を添加して反応を継続させるS2工程と、
第3の所定温度でチタン化合物の残部を加えて反応を継続させ、反応終了後に反応系をろ過して固体残渣を得るS3工程と、
前記固体残渣を洗浄・乾燥して、前記プロピレン重合用の触媒を得ることS4工程と、
を含む、調製方法を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態において、
S1工程における前記第1の所定温度は-40℃~0℃であり、反応時間は0.1時間~3時間であり、
S2工程における前記第2の所定温度は40℃~100℃であり、反応時間は0.5時間~3時間であり、
S3工程における前記第3の所定温度は80℃~140℃であり、反応時間は0.5時間~3時間である。
【0021】
S2工程において、元素マグネシウムと内部電子供与体化合物とのモル比は、1:1~20:1であり、好ましくは、元素マグネシウムと内部電子供与体化合物とのモル比は、2:1~10:1である。
【0022】
ここで、内部電子供与体化合物は、以下のようにして調製される。
式(2)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物を原料として、有機溶媒中に-78℃~50℃の温度範囲で塩基とのモル比1:1~1:2の範囲で1時間~10時間反応させた後、分離せずにR'Xと1時間~150時間反応させる。式(2)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物とR'Xとの仕込モル比は1:1~1:50とする。
【化27】
式(2)において、R、Rはそれぞれ独立してC1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、C3~C15のシクロアルキル基、またはアリール基から選択され、R′はH原子、C1~C5直鎖もしくは分岐したアルキル基、またはフェニル基であり、R、R、R、Rはそれぞれ独立してH原子、ハロゲン、C1~C12の直鎖もしくは分岐したアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、C6~C15のアリール基またはアリールアルキル基から選択される。R'Xにおいて、R'はメチル基であり、X=Br、IまたはOSC
【0023】
内部電子供与体化合物の調製に関して、本発明の一実施形態において、前記塩基は、NaHやリチウムジイソプロピルアミンから選ばれる1種である。
【0024】
内部電子供与体化合物の調製に関して、本発明の一実施形態において、有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミドやテトラヒドロフランから選ばれる1種である。
【0025】
内部電子供与体化合物の調製に関して、本発明の一実施形態において、
調製方法は、
式(2)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物を反応基質として、それとNaHとヨードメタンとを仕込モル比1:1:1~1:20:50で反応させ、溶媒としてDMFとTHFを用い、無水かつ無酸素反応系を維持して、反応温度-78℃~50℃、反応時間1時間~150時間とする。反応終了後、中和、抽出、洗浄、スピンオフ、カラムクロマトグラフィー分離等の操作を経って、真空下で乾燥させ、対応するメチル化生成物(すなわち、本発明の内部電子供与体化合物)である固体または油状の液体を約70%の収率で得られる、
ことを含む。
【0026】
内部電子供与体化合物の調製に関して、本発明の一実施形態において、式(2)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物とNaHとヨードメタンとの仕込モル比は、1:1:1~1:5:10である。
【0027】
内部電子供与体化合物の調製に関して、本発明の一実施形態において、反応温度は0℃~30℃から選択される。
【0028】
内部電子供与体化合物の調製に関して、本発明の一実施形態において、反応時間は、12時間~100時間である。
【0029】
本発明は、さらに、
式(3)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物をテトラヒドロフラン又はジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、酸結合剤として1~5倍量のトリエチルアミンを加え、-30℃~50℃でアルキルスルホニルクロリドを加え、好ましい反応温度は0℃~10℃であり、添加後2時間~120時間反応させ、好ましい反応時間は30時間~40時間であり、水を加えて加水分解し、酢酸エチルで抽出し、濃縮して、カラムクロマトグラフィーによって分離・精製して最終製品を得る、
という式(2)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物の一般的な合成プロセスを提供する。
【0030】
この合成プロセスでは、その収率が30%~95%である。
【0031】
【化28】
本発明の一実施形態において、式(3)で表される2-アミノ安息香酸エステル化合物は、2-アミノ安息香酸とアルコールとをエステル化反応することによって得られるものである。
【0032】
その一般的な合成プロセスは、2-アミノ安息香酸をHORアルコールに溶解し、HORは溶媒として大きく過剰となり、2-アミノ安息香酸とHORとの比は1:5から10000であってもよく、一般に室温で2-アミノ安息香酸が溶解するのが良く、触媒として濃HSOを0.01~1モル倍使用し、好ましい添加量は0.2倍であり、反応温度範囲は室温~150℃であり、好ましくは100℃であり、反応時間は5時間~60時間であり、好ましくは36時間であり、加水分解後、ジクロロメタンで濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製する。収率は30%~95%である。
ここで、HORにおけるRは、式(1)におけるRの定義の通りである。
【0033】
本発明の第3の態様は、上記プロピレン重合用の触媒と、助触媒と、外部電子供与体とを含む、プロピレン重合用の触媒系を提供する。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記助触媒は、一般式AlR 3-p(ただし、RがC1~C20のアルキル基であり、Xがハロゲンであり、pが1≦p≦3の整数である。)で表されるアルキルアルミニウム化合物である。
【0035】
外部電子供与体は、一般式R Si(OR4-q(ただし、RはC1~C10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、qは0≦n≦3の整数である。)で表されるシロキサン化合物である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記助触媒は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、モノヒドロジエチルアルミニウム、モノヒドロジイソブチルアルミニウム、モノクロロジエチルアルミニウム、モノクロロジイソブチルアルミニウムまたはジクロロエチルアルミニウムを含む。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記外部電子供与体は、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン又はジフェニルジメトキシシランを含む。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記プロピレン重合用の触媒におけるチタンと助触媒におけるアルミニウムとのモル比は、1:1~1:2000であり、好ましくは1:5~1:500である。
【0039】
外部電子供与体とプロピレン重合用の触媒との比率は、Si/Tiモル比で、1:1~1:100であり、好ましくは1:1~1:50である。
【0040】
本発明の第4の態様は、上記プロピレン重合用の触媒または上記プロピレン重合用の触媒系の、プロピレン重合反応における応用を提供する。
【0041】
上記の応用では、既存のオレフィン重合に関する様々な方法を用いることができ、塊状重合、スラリー重合、気相重合などが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、触媒を使用するにあたって基本的なプロセスをプロピレンの塊状重合を例として簡単に説明すると、重合反応器を窒素で完全に置換し、真空下で乾燥し、プロピレンモノマーを加え、本発明に記載のプロピレン重合用の触媒、助触媒および外部電子供与体を一定の割合で加え、重合温度を20℃~90℃、好ましくは60℃~80℃とし、重合反応を1時間~2時間行い、空にして窒素で完全に置換して、乾燥したポリマーが得られる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のプロピレン重合用の触媒は、新規な内部電子供与体を用いることで、高い重合反応活性と良好な立体配向性を有する触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、実施例1で得られた2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチルのHスペクトルである。
図2図2は、実施例1で得られた2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチルの13Cスペクトルである。
図3図3は、実施例2で得られた2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチルのHスペクトルである。
図4図4は、実施例2で得られた2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチルの13Cスペクトルである。
図5図5は、実施例3で得られた2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチルのHスペクトルである。
図6図6は、実施例3で得られた2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチルの13Cスペクトルである。
図7図7は、実施例4で得られた2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルのHスペクトルである。
図8図8は、実施例4で得られた2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルの13Cスペクトルである。
図9図9は、実施例5で得られた2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピルのHスペクトルである。
図10図10は、実施例5で得られた2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピルの13Cスペクトルである。
図11図11は、実施例6で得られた2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチルのHスペクトルである。
図12図12は、実施例6で得られた2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチルの13Cスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明をより明瞭に説明するために、本発明を好ましい実施例を通じて以下にさらに説明する。以下に具体的に説明することは例示であって限定的なものではなく、本発明の保護範囲を限定するに用いてはならないことは、当業者には理解されるはずである。
【実施例
【0045】
テスト方法
1.合成した電子供与体化合物の構造を核磁気共鳴法を用いて測定する。
2.沸騰n-ヘプタン抽出法を用い、重合生成物のアイソクラティック度を測定する。中国標準規格GB/T2412-2008に準拠して実施する。
3.触媒活性については、触媒投入量に対する反応により生成した重合物の質量比として算出する。
【0046】
I.化合物の合成
実施例1
本実施例では、
【化29】
という構造を有する2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチルを提供する。
【0047】
該2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチルの調製方法は、以下のステップを含む。
【0048】
ステップ1:1000mLフラスコに2-アミノ安息香酸30.0g、n-ブタノール800mL、濃HSO50mL(98.3質量%)を加え、100℃のオイルバスで加熱・攪拌しながら約36時間連続加熱反応させた後、反応液を2000mLフラスコに移し、n-ブタノールと水を除去し、オレンジ色の残液を水600mLに溶解させ、2000mLビーカーに移し、泡が出なくなる(pH≦7)まで適量のNaHCOを加えて過剰のHSOを中和し、その後、そこに約300mLのジクロロメタンを加えて有機相を抽出し、溶剤を除去して粗生成物を得た。
カラムクロマトグラフィー精製により、オイル状の2-アミノ安息香酸ブチル16.62gを収率39%で得た。
【0049】
ステップ2:250mLフラスコに2-アミノ安息香酸ブチル12.00g、テトラヒドロフラン50mLおよびトリエチルアミン11mLを加え、次にブチルスルホニルクロリド12gを酢酸エチル70mLに溶解したものをフラスコに滴下し、滴下終了後、次に約42時間撹拌後、反応液を1000mLの分液ロートに移して水約300mLを加えて反応液を調製し、その後、反応液を1000mLの分液ロートに移し、反応液に水約300mLを加え、酢酸エチルで抽出し、溶媒を除去して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチル14gを70%の収率で得た。
【0050】
ステップ3:NaH 1.52gをDMF 30mLに溶かし、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチル13gをDMF 60mLに溶かしたものをSchlenk瓶に加え、約2時間撹拌し、Hの放出終了後、ヨードメタン18gをTHF 150mLに溶かしたものを反応液に滴下し、室温で36時間撹拌した後、反応液にpH≦7まで適量の濃塩酸をゆっくり滴下して過剰なNaHを中和させ、その後、反応液を1000mLの分液ロートに移し、水を約200mL加えて加水分解させ、メチルtert-ブチルエーテルで抽出した有機相を濃縮して得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色油状の2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチル10gを71%の収率で得た。
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチルのNMR水素スペクトルおよび炭素スペクトルを図1および図2に示す。
【0051】
H NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 7.88 (d, 1H, J=8.0 Hz), 7.54 (t, 1H, J=8.8 Hz), 7.42 (q, 2H, J=9.6 Hz), 4.33 (t, 2H, J=6.8 Hz), 3.35 (d, 3H, J=2.8 Hz), 3.07 (t, 2H, J=8.0 Hz), 1.86-1.73 (m, 4H), 1.53-1.39 (m, 4H), 1.01-0.91 (m, 6H).
13C NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 166.22, 140.37, 132.58, 131.20, 130.64, 130.61, 128.16, 65.32, 51.61, 39.37, 30.60, 25.27, 21.69, 19.22, 13.59.
【0052】
実施例2
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチルの合成
【化30】
反応ステップは、実施例1と同様とした。異なる点は、ステップ1の反応において原料におけるn-ブタノールをメタノールに置き換えて、まず、2-アミノ安息香酸メチルを合成して、次に、ブチルスルホニルクロリドをフェニルスルホニルクロリドに置き換える以外に実施例1のステップ2に従って進めて2-フェニルスルホンアミド安息香酸メチルを得、さらに、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチルを2-フェニルスルホンアミド安息香酸メチルに置き換える以外に実施例1のステップ3に従って進め、2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチルを融点97℃の白色固体顆粒として得て、収率は59%であった。
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチルのNMR水素および炭素スペクトルを図3および図4に示す。
【0053】
H NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 7.88-7.86 (dd, 1H, J=8.0 Hz, J=2.8 Hz), 7.67 (d, 2H, J=8.0 Hz), 7.60 (t, 1H, J=8.0 Hz), 7.52-7.39 (m, 4H), 6.96-6.94 (dd, 1H, J=8.0 Hz, J=2.0 Hz), 3.85 (s, 3H), 3.13 (s, 3H).
13C NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 166.72, 140.04, 138.75, 132.53, 132.23, 132.14, 131.14, 128.98, 128.82, 128.18, 127.54, 52.35, 38.98.
【0054】
実施例3
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチルの合成
【化31】
反応ステップは、実施例1と同様とした。異なる点は、ステップ1の反応において原料におけるn-ブタノールをメタノールに置き換えて、まず、2-アミノ安息香酸メチルを合成し、次に実施例1のステップ2に従って進めて2-ブチルスルホンアミド安息香酸メチルを得、さらに、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチルを2-ブチルスルホンアミド安息香酸メチルに置き換える以外に実施例1のステップ3に従って進め、2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチルを融点42℃の赤褐色粉末として得て、収率は53%であった。
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチルのNMR水素スペクトルおよび炭素スペクトルを図5および図6に示す。
【0055】
H NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 7.90-7.87 (dq, 1H, J=1.6 Hz, J=7.6 Hz), 7.56 (t, 1H, J=8.4 Hz), 7.41 (q, 2H, J=8.4 Hz), 3.93 (t, 3H, J=1.6 Hz), 3.34 (t, 3H, J=1.2 Hz), 3.07 (t, 2H, J=8.0 Hz), 1.86-1.78 (m, 2H), 1.44 (q, 2H, J=7.6 Hz), 0.94 (t, 3H, J=7.6 Hz).
13C NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 166.57, 140.46, 132.74, 131.24, 131.02, 130.60, 128.16, 52.39, 51.65, 39.36, 25.27, 21.69, 13.59.
【0056】
実施例4
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルの合成
【化32】
反応ステップは、実施例1と同様とした。異なる点は、ステップ1の反応において原料におけるn-ブタノールをイソプロパノールに置き換えて、まず2-アミノ安息香酸イソプロピルを合成し、次に、ブチルスルホニルクロリドをフェニルスルホニルクロリドに置き換える以外に実施例1のステップ2に従って進めて2-フェニルスルホンアミド安息香酸イソプロピルを得、さらに、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチルを2-フェニルスルホンアミド安息香酸イソプロピルに置き換える以外に実施例1のステップ3に従って進め、2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルを、融点118℃の白色針状凝集結晶体として得て、収率は68%であった。
2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルのNMR水素スペクトルおよび炭素スペクトルを図7および図8に示す。
【0057】
H NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 7.87-7.85 (m, 1H), 7.67 (d, 2H, J=8.4 Hz), 7.60 (t, 1H, J=7.2 Hz), 7.49 (t, 2H, J=8.0 Hz), 7.42-7.35 (m, 2H), 6.80-6.78 (m, 1H), 5.30-5.21 (m, 1H), 3.31 (s, 3H), 1.42 (d, 6H, J=6.4 Hz).
13C NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 165.98, 139.82, 138.70, 133.52, 132.53, 131.80, 130.99, 128.82, 128.38, 128.20, 127.53, 69.12, 38.98, 21.82.
【0058】
実施例5
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピルの合成
【化33】
反応ステップは、実施例1と同様とした。異なる点は、反応のステップ1において、原料におけるn-ブタノールをn-プロパノールに置き換えて、まず、2-アミノ安息香酸プロピルを合成し、次に、実施例1のステップ2に従って進めて2-ブチルスルホンアミド安息香酸プロピルを得、さらに、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチルを2-ブチルスルホンアミド安息香酸プロピルに置き換える以外に実施例1のステップ3に従って進め、2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピルを黄金色の油状液体製品として得て、収率は73%であった。
2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピルのNMR水素スペクトルおよび炭素スペクトルを図9および図10に示す。
H NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 7.89 (t, 1H, J=4.0 Hz), 7.55 (q, 1H, J=5.6 Hz), 7.46-7.40 (m, 2H), 4.32-4.27 (m, 2H), 3.36 (s, 3H), 3.09-3.05 (m, 2H), 1.87-1.79 (m, 4H), 1.50-1.43 (m, 2H), 1.06-0.93 (dt, 6H, J=7.6 Hz, J=40 Hz).
13C NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 166.23, 140.36, 132.58, 131.22, 131.20, 130.58, 128.16, 67.06, 51.58, 39.38, 25.27, 21.95, 13.59, 10.49.
【0059】
実施例6
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチルの合成
【化34】
反応ステップは実施例1と同様とした。異なる点は、原料におけるn-ブタノールをイソブタノールに置き換えて、まず、2-アミノ安息香酸イソブチルを合成し、次に、ブチルスルホニルクロリドをエチルスルホニルクロリドに置き換える以外に実施例1のステップ2に従って進めて2-エチルスルホンアミド安息香酸イソブチルを得、さらに、2-ブチルスルホンアミド安息香酸ブチルを2-エチルスルホンアミド安息香酸イソブチルに置き換える以外に実施例1のステップ3に従って進め、2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチルを融点78℃の灰白色の粉末製品として得て、収率は53%であった。
2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチルのNMR水素スペクトルおよび炭素スペクトルを図11および図12に示す。
【0060】
H NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 7.90 (d, 1H, J=7.6 Hz), 7.56 (t, 1H, J=7.6 Hz), 7.48-7.40 (m, 2H), 7.29 (s, 1H), 4.12 (d, 2H, J=6.8 Hz), 3.36 (d, 3H, J=0.8 Hz), 3.11 (q, 2H, J=7.2 Hz), 2.16-2.06 (m, 1H), 1.39 (t, 3H, J=7.2 Hz), 1.04-1.02 (dd, 6H, J=1.2 Hz, J=6.8 Hz).
13C NMR (400 MHz, CDCl, 25 C, TMS): δ (ppm) 166.12, 140.45, 132.62, 131.15, 130.79, 130.77, 128.18, 71.56, 46.30, 39.53, 27.75, 19.23, 8.01.
【0061】
II.触媒の調製と評価。
実施例7.
本実施例は、プロピレン重合用の触媒を提供する。その調製は、以下のステップを含む。
球状MgCl・2.65COH担体7.8gを、TiClを250mL入れた-30℃に予冷された反応フラスコにゆっくりと加え、徐々に80℃に昇温して、内部電子供与体2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸メチルを5mmol加え、この温度で30分間保ち、130℃に昇温して2時間反応を行い、ろ過して、さらにTiClを250mL加えて130℃で2時間反応させ、ヘキサンで6回洗浄し、真空下で乾燥させ、チタン含有量2.2%の触媒3.6gを得た。
上記のプロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
【0062】
重合反応は、2Lのステンレス製オートクレーブにて行った。
まず、オートクレーブをゲージ圧0まで排気し、高純度窒素で反応クレーブを十分に置換して加熱下で1時間真空処理し、室温まで冷却した後、低速撹拌しながら0.1MPaの高純度水素とプロピレン300gを反応クレーブに導入し、触媒ホッパーを窒素で保護しながら本実施例の触媒10mg、トリエチルアルミニウム(2.4mol/L)2mLおよびメチルシクロヘキシルジメトキシシラン(0.18 mol/L)2.5mLを順次添加して、短時間予備複合した後、さらにプロピレンを300g加え、70℃に昇温して1時間反応を行い、反応終了後、撹拌を停止して、降温、圧抜き、排出して、固体プロピレンポリマーを得た。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は38.3 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが98.2%であった。
【0063】
実施例8
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸プロピルとした以外に実施例7と同様にして調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量2.85%の固体触媒を0.87g得た。
上記プロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
実施例7と同様の手順で行った。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は36.3 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが97.9%であった。
【0064】
実施例9
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルフェニルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルとした以外に実施例7と同様にしてで調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量3.2%の固体触媒を0.78g得た。該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は1時間で35.0 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが97.3%であった。
【0065】
実施例10
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸ブチルとした以外に実施例7と同様にして調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量3.2%の固体触媒を0.78g得た。
上記プロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
実施例7と同様の手順で行った。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は35.0 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが97.3%であった。
【0066】
実施例11
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルブチルスルホンアミド)安息香酸メチルとした以外に実施例7と同様にして調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量2.2%の触媒を3.6g得た。
上記プロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
実施例7と同様の手順で行った。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は37.6 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが96.0%であった。
【0067】
実施例12
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸イソブチルとした以外に実施例7と同様にして調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量2.8%の球状触媒を3.2g得た。
上記プロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
実施例7と同様の手順で行った。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は38.2 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが96.8%であった。
【0068】
実施例13
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルシクロヘキシルスルホンアミド)安息香酸イソプロピルとした以外に実施例7と同様にして調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量3.0%の球状触媒を3.0g得た。
上記プロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
実施例7と同様の手順で行った。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は38.9 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが95.8%であった。
【0069】
実施例14
本実施例は、電子供与体を2-(N-メチルエチルスルホンアミド)安息香酸エチルとした以外に実施例7と同様にして調製したプロピレン重合用の触媒を提供し、その結果として、チタン含有量2.9%の球状触媒を3.4g得た。
上記プロピレン重合用の触媒をプロピレン重合実験に用いた。
実施例7と同様の手順で行った。
該触媒を用いて1時間重合反応する際、重合活性は35.3 kg PP/(g 触媒)であり、得られたポリプロピレンは、アイソクラティックが96.5%であった。
【0070】
上記の実験結果から分かるように、本発明の化合物をポリプロピレン触媒の電子供与体として使用することにより、高い触媒活性とより良好な立体配光性が得られた。
本発明の上記実施例は、本発明を明瞭に説明するための例に過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではなく、上記説明に基づいて他の変形または変更を行うことが可能であり、ここですべての実施形態を網羅することはできず、本発明の技術案から導かれるすべての明らかな変形または変更であれば、依然として本発明の保護範囲内にあることは、当業者にとって自明なことである。
図1
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図7
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図11
図12