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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240508BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240508BHJP
【FI】
H05K7/20 A
H02M7/48 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023017668
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2020516221の分割
【原出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2023053038
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018084184
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山島 篤志
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-233294(JP,A)
【文献】特開2016-046861(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140502(WO,A1)
【文献】特開2002-204580(JP,A)
【文献】特開2001-275360(JP,A)
【文献】特開2017-108007(JP,A)
【文献】米国特許第8705242(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0257680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 1/44
H02M 3/00 - 3/44
H02M 7/42 - 7/98
H01L 23/40
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発熱部品と、
一面が開口された箱形状に形成され、前記第1発熱部品を収容するケースと、
前記ケース内に充填され、前記第1発熱部品の熱を前記ケースに伝達する樹脂材と、
回路基板と、
前記回路基板に接続される第2発熱部品と、
前記ケース、前記回路基板および前記第2発熱部品を収容し、前記第1発熱部品および前記第2発熱部品を放熱する放熱筐体と、
を備える電源装置であって、
前記ケースの第1外面に接して配置される第1部分と、前記放熱筐体と接して配置される第2部分とを有し、前記ケースよりも熱伝導性の高い伝熱部材をさらに備え、
前記第2発熱部品は、前記伝熱部材に接して配置される、
電源装置。
【請求項2】
前記ケースは、底壁と、4つの側壁とで構成される直方体状に構成されており、
前記第1外面は、前記4つの側壁のうちの第1側壁、および、第1側壁とは反対側の第2側壁の外面であり、
前記伝熱部材は、前記第1側壁の第1外面および、前記底壁の外面である第2外面に接して配置される第1の伝熱部材と、前記第2側壁の第1外面および前記第2外面に接して前記第1の伝熱部材と重ならないように配置される第2の伝熱部材とで構成されており、
前記第2発熱部品は、前記第1の伝熱部材の第1部分に接して配置される第1スイッチング素子と、前記第2の伝熱部材の第1部分に接して配置される第2スイッチング素子とを含む、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記ケースは、上壁、側壁および底壁で構成され、上下方向と直交する方向に開口する開口部から前記第1発熱部品を収容可能であり、
前記第1外面は、前記底壁における前記開口部の縁面である、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記ケースは、ダイカスト成形されたアルミニウムで構成され、
前記伝熱部材は、銅板で構成されている、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第2発熱部品は、樹脂付きネジにより、前記ケースおよび前記伝熱部材に固定配置されている、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
前記ケースは、樹脂で構成されている、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
前記伝熱部材はインサート成型により前記ケースに嵌め込まれる、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項8】
前記伝熱部材は前記第2部分が上面視で前記ケースの前記底壁に重畳するように配置される、
請求項2に記載の電源装置。
【請求項9】
前記第1発熱部品の体積は前記第2発熱部品の体積よりも大きい、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項10】
前記伝熱部材の幅は前記第2発熱部品の幅以上の幅である、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項11】
第1発熱部品と、
一面が開口された箱形状に形成され、前記第1発熱部品を収容するケースと、
前記ケース内に充填され、前記第1発熱部品の熱を前記ケースに伝達する樹脂材と、
回路基板と、
前記回路基板に接続される第2発熱部品と、
前記ケース、前記回路基板および前記第2発熱部品を収容し、前記第1発熱部品および前記第2発熱部品を放熱する放熱筐体と、
を備える電源装置であって、
前記ケースの第1外面に熱的に接続され配置される第1部分と、前記放熱筐体と熱的に接続され配置される第2部分とを有し、前記ケースよりも熱伝導性の高い伝熱部材をさらに備え、
前記第2発熱部品は、前記伝熱部材に接して配置される、
電源装置。
【請求項12】
前記ケースは、ダイカスト成形されたアルミニウムで構成され、
前記伝熱部材は、銅板で構成されている、
請求項11に記載の電源装置。
【請求項13】
前記ケースは、樹脂で構成されている、
請求項11に記載の電源装置。
【請求項14】
前記伝熱部材はインサート成型により前記ケースに嵌め込まれる、
請求項13に記載の電源装置。
【請求項15】
第1発熱部品と、
一面が開口された箱形状に形成され、前記第1発熱部品を収容するケースと、
前記ケース内に充填され、前記第1発熱部品の熱を前記ケースに伝達する樹脂材と、
回路基板と、
前記回路基板に接続される第2発熱部品と、
前記ケース、前記回路基板および前記第2発熱部品を収容し、前記第1発熱部品および前記第2発熱部品を放熱する放熱筐体と、
を備える電源装置であって、
前記ケースの第1外面に接し、前記ケースよりも熱伝導性の高い伝熱部材をさらに備え、
前記第2発熱部品は、前記伝熱部材に接して配置され、
前記伝熱部材は前記放熱筐体と熱的に接続されるように前記放熱筐体を構成する壁面に接して配置される、
電源装置。
【請求項16】
前記ケースは、ダイカスト成形されたアルミニウムで構成され、
前記伝熱部材は、銅板で構成されている、
請求項15に記載の電源装置。
【請求項17】
前記ケースは、樹脂で構成されている、
請求項15に記載の電源装置。
【請求項18】
前記伝熱部材はインサート成型により前記ケースに嵌め込まれる、
請求項17に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等に搭載されるインバータ等に用いられる電源装置において、回路基板に実装される半導体等の電子部品の高出力化に伴い、当該電子部品における電力損失が増大する。これによって、当該電子部品が発熱しやすくなるので、当該電子部品を効率よく放熱できるかが課題となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミブロック(伝熱部材)を放熱筐体内に配置することで電子部品の放熱を行う電源装置が開示されている。具体的には、当該電源装置では、伝熱部材の側壁に接触するように取り付けられた第1発熱部品(例えば、FET(Field Effect Transistor))や、伝熱部材内に収容された第2発熱部品(例えば、リアクトル)を、伝熱部材に接触する放熱筐体に伝熱させて放熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-108007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、伝熱部材(アルミブロック)の熱伝導率を考慮すると、放熱性を向上させるためには、伝熱部材の側壁等を厚くする必要が生じ、ひいては伝熱部材の配置面積を確保する必要が生じる。すなわち、特許文献1に記載の構成では、装置全体の小型化の観点から一定の限界のある構成となっていた。
【0006】
本開示の目的は、発熱部品の放熱性を確保しつつ、装置全体の小型化を実現することが可能な電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電源装置は、
第1発熱部品と、
一面が開口された箱形状に形成され、前記第1発熱部品を収容するケースと、
前記ケース内に充填され、前記第1発熱部品の熱を前記ケースに伝達する樹脂材と、
回路基板と、
前記回路基板に接続される第2発熱部品と、
前記ケース、前記回路基板および前記第2発熱部品を収容し、前記第1発熱部品および前記第2発熱部品を放熱する放熱筐体と、
を備える電源装置であって、
前記ケースの第1外面に接して配置される第1部分と、前記放熱筐体と接して配置される第2部分とを有し、前記ケースよりも熱伝導性の高い伝熱部材をさらに備え、
前記第2発熱部品は、前記伝熱部材に接して配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、発熱部品の放熱性を確保しつつ、装置全体の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係る電源装置の斜視図である。
図2】電力変換装置の分解斜視図である。
図3】電力変換装置の側断面図である。
図4】電力変換装置を下から見た図である。
図5】第1変形例に係る電力変換装置の側断面図である。
図6】第2変形例に係る電力変換装置の側断面図である。
図7】第2の実施の形態に係る固定部材の斜視図である。
図8】第2の実施の形態に係る伝熱部材の斜視図である。
図9】第2の実施の形態に係る固定部材および伝熱部材の斜視図である。
図10】第2の実施の形態に係る電力変換装置の側断面図である。
図11】第2の実施の形態に係る電力変換装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本開示の実施の形態に係る電源装置1の斜視図である。図2は、電力変換装置100の分解斜視図である。図3は、電力変換装置100の側断面図である。
【0011】
図1に示すように、電源装置1は、電気自動車等に搭載される車載充電器やインバータ等に用いられ、放熱筐体2と、蓋3と、電力変換装置100とを有する。
【0012】
放熱筐体2は、底壁と、4つの側壁とで構成される直方体状に構成されており、上方向に開口する箱型状に形成されている。放熱筐体2は、伝熱性に優れた部材(例えば、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム)で構成され、内部に収容された電力変換装置100を放熱する。放熱筐体2の底壁にはフィン2Aが形成されている。蓋3は、放熱筐体2の開口を覆う。なお、図1は、前後方向に垂直な面で切った放熱筐体2の断面図を示している。
【0013】
電力変換装置100は、放熱筐体2の底壁の内側の底面(放熱筐体2を構成する壁面)に接した状態で収容されている。電力変換装置100は、回路基板110と、ケース120と、第2発熱部品の一例としての電子部品130と、第1発熱部品の一例としてのリアクトル140(図2参照)と、伝熱部材150とを有する。
【0014】
回路基板110は、所定の配線パターンが形成され、また、所定の回路素子が実装される基板であり、電子部品130及びリアクトル140とも電気的に接続されて、電力変換回路(例えば、力率改善回路及びDC/DCコンバータからなる車載充電器、インバータなどの電気回路)を構成するプリント基板である。特に、本実施の形態の回路基板110は、電気自動車等に搭載される駆動用の高電圧バッテリに対応し、高出力可能な電力変換回路である。なお、回路基板110は、放熱筐体2の底壁の内側の底面から上方向に突出するボス(不図示)や、ケース120の上端部の4隅に、図示しないネジ等により固定される。
【0015】
図2に示すように、ケース120は、例えばアルミニウムで構成され、ダイカスト成形により上方向に開口する箱形状(底壁と4つの側壁とで構成される直方体状)に形成されている。ケース120には、リアクトル140およびスペーサ141が収容される。ケース120の側壁には、後述する樹脂付きネジ131が通されるネジ穴121が形成されている。
【0016】
また、ケース120には、ケース120を放熱筐体2にネジ留め固定するための締結部や、回路基板110と接する基板接触部も形成されている。本実施の形態では、締結部は、ケース120の底壁の四隅に形成され、基板接触部は、ケース120の上面の四隅(各側壁が接続される箇所の上端)に形成されている。なお、本実施の形態では、放熱筐体2及びケース120を底壁と4つの側壁で構成される直方体状(上方向のみ開口する直方体状)と説明したが、これに限らず、底壁と3つの側壁で構成される三角柱状や、底壁と6つの側壁で構成される六角柱状などであってもよい。
【0017】
電子部品130は、例えば、FET等のスイッチング素子やダイオード等である。本実施の形態では、電子部品130は、図2に示すように6つ備えられているが、説明の簡略化のため、電子部品130が取り付けられる面に対応して、電子部品130Aと電子部品130Bの2つに分けて記載する。詳細は後述するが、電子部品130Aは、伝熱部材150Aを介してケース120の前の側壁に、樹脂付きネジ131により固定されるとともに、リード線Aを介して回路基板110にはんだ付け等で接続される。電子部品130Bは、伝熱部材150Bを介してケース120の後の側壁に、樹脂付きネジ131により固定されるとともに、リード線Aを介して回路基板110にはんだ付け等で接続される。電子部品130Aは、本開示の「第1スイッチング素子」に対応し、電子部品130Bは、本開示の「第2スイッチング素子」に対応する。なお、本実施の形態の電子部品130は、絶縁樹脂によりモールド(インサート成形)されている。すなわち、電子部品130は、導電体(金属)に接触させても漏電することが無いように構成されている。
【0018】
リアクトル140は、コア(図示省略)に巻回されたコイルを有する電子部品であり、スペーサ141とともにケース120内に配置される。ケース120内におけるリアクトル140の周囲には、放熱性を有する樹脂材の一例としてのポッティング樹脂材P(図3参照)が充填される。ポッティング樹脂材Pがケース120内に充填されることにより、リアクトル140から発生する熱がポッティング樹脂材Pを介してケース120に伝達される。後述するが、ケース120に伝達された熱は、伝熱部材150を介して放熱筐体2に伝わる。これにより、リアクトル140が放熱される。
【0019】
また、ポッティング樹脂材Pは、さらに、絶縁性および硬化性を有する。これにより、リアクトル140とケース120(アルミ)との絶縁を確保しつつ、リアクトル140を固定(振動対策)することも可能である。また、ポッティング樹脂材Pが硬化した後は、ポッティング樹脂材がこぼれることがないため、ケース120を90度回転させて放熱筐体2に収容することも可能である。
【0020】
ここで、電子部品130とリアクトル140は、電力変換回路(車載充電器やインバータなど)に用いられ、電力変換を行う際に発熱する。図2に示す通り、リアクトル140は電子部品130よりも大きな体積を有するため、ケース120の主な放熱面積(本実施の形態では、放熱筐体2に最も近いケース120の底面積)を大きく確保することができる。また、ケース120内には、上述のポッティング樹脂材Pが充填されることにより空気が介在しないため、リアクトル140を高い放熱性(伝熱性)により放熱することができる。
【0021】
すなわち、発熱量と放熱性(放熱面積や放熱体への伝熱性など)の関係性を考慮した場合、リアクトル140よりも電子部品130の方が、発熱量(および耐熱性)に対して放熱性が乏しく、より電子部品130を放熱する構造が望まれる。
【0022】
伝熱部材150は、上述した電子部品130およびリアクトル140を放熱する部材であり、例えば、銅等の、ケース120よりも熱伝導性の高い金属板を略直角に折り曲げることで構成されている。本実施の形態では、折り曲げられた箇所を起点として、第1部分151と第2部分152として分けて記載する。図2において、上下方向に延びる部分を第1部分151とし、前後方向に延びる部分を第2部分152とする。
【0023】
また、本実施の形態では、伝熱部材150は、伝熱部材150Aおよび伝熱部材150Bの2つの伝熱部材で構成されている。伝熱部材150Aおよび伝熱部材150Bは、それぞれ、第1部分151と、第2部分152とを有する。なお、伝熱部材150Aは、本開示の「第1の伝熱部材」に対応し、伝熱部材150Bは、本開示の「第2の伝熱部材」に対応する。
【0024】
図3に示すように、伝熱部材150Aは、第1部分151の第2部分152側の面(折り曲げられた内側の面)が、ケース120の4つの側壁122のうちの1つの外面(第1外面)に接して配置される。また、伝熱部材150Aは、第2部分152の第1部分151側の面(折り曲げられた内側の面)が、ケース120の底壁123の外面(第2外面)に接して配置される。
【0025】
伝熱部材150Bは、第1部分151の第2部分152側の面(折り曲げられた内側の面)が、伝熱部材150Aの第1部分151が接するケース120の側壁122と対向する側壁122の外面(第1外面)に接して配置される。また、伝熱部材150Bは、第2部分152の第1部分151側の面(折り曲げられた内側の面)が、ケース120の底壁123の外面(第2外面)に接して配置される。
【0026】
伝熱部材150Aおよび伝熱部材150Bのそれぞれの第1部分151には、電子部品130を取り付けるための樹脂付きネジ131が通されるネジ穴153が形成されている。ここで、樹脂付きネジ131により、電子部品130A、伝熱部材150Aのネジ穴153、及びケース120のネジ穴121を挿通してネジ留め固定されることで、電子部品130Aが伝熱部材150Aの第1部分151に接して固定される。同様に、樹脂付きネジ131により、電子部品130B、伝熱部材150Bのネジ穴153、及びケース120のネジ穴121を挿通してネジ留め固定されることで、電子部品130Bが伝熱部材150Bの第1部分151に接して固定される。なお、前側の側壁122および後側の側壁122は、本開示の「第1側壁および第2側壁」に対応する。
【0027】
第2部分152は、ケース120の底壁123の外面(第2外面)と、放熱筐体2の底壁の内面との両方に接して配置される。具体的には、ケース120に成形された締結部と放熱筐体2の底壁をネジ留めすることで、ケース120の底壁123の外面(第2外面)と、伝熱部材150Aおよび伝熱部材150Bのそれぞれの第2部分152と、放熱筐体2の底壁の内面とが圧着される。このように伝熱部材150が配置されることで、電子部品130から発生する熱が伝熱部材150の第1部分151から第2部分152に伝わり、ひいては放熱筐体2に伝達される。また、リアクトル140から発生する熱がケース120の底壁123から伝熱部材150の第2部分152に伝わり、ひいては放熱筐体2に伝達される。これにより、電子部品130およびリアクトル140の両方が放熱される。
【0028】
ここで、伝熱部材150を介さずに電子部品130およびリアクトル140の両方を放熱する場合、すなわち、電子部品130をケース120の側壁122に直接接触するように配置した場合、電子部品130およびリアクトル140は、ケース120の側壁122から底壁123に熱が伝えられることによって放熱されることとなる。
【0029】
ケース120には、電子部品130およびリアクトル140の両方から熱が伝達されるため、側壁122の厚み(水平方向:前後左右方向)を、電子部品130の発熱量およびリアクトル140の発熱量に対応させた厚みにする必要が生じる。ここで、ケース120を構成するアルミニウムの熱伝導性を考慮すると、放熱効率を向上させるには、側壁122の厚みを増大させる必要が生じ、ひいては放熱筐体2内におけるケース120の配置面積を確保する必要が生じる。その結果、装置全体を大型化する必要が生じてしまう。
【0030】
そこで、本実施の形態では、ケース120よりも熱伝導性の高い伝熱部材150を介することで、電子部品130については、伝熱部材150で主に放熱し、リアクトル140については、ケース120および伝熱部材150の第2部分152で放熱する。
【0031】
このように構成することにより、発熱量と放熱性(放熱面積や放熱体への伝熱性など)の関係性を考慮した場合、リアクトル140よりも放熱性が乏しい電子部品130の放熱性を向上することが可能であるとともに、ケース120の側壁122および底壁123を厚くする必要がない。また、伝熱部材150については、ケース120よりも熱伝導性が高いので、ケース120のみで放熱する構成よりも、伝熱部材150およびケース120の側壁122全体の厚みを薄くしても良好に放熱することができる。例えば、銅で構成される伝熱部材150の熱伝導率は、ケース120における、ダイカスト成形に用いられるアルミニウムの熱伝導率の約3倍である。
【0032】
これらのことから、ケース120のみで放熱する構成と比較して、ケース120および伝熱部材150の厚みを全体として薄くできるので、装置全体の小型化に寄与することができる。
【0033】
特に、本実施の形態では、伝熱部材150の第2部分152が、ケース120の底壁123と上下方向で重なる(言い換えると、上面視で、伝熱部材150の第2部分152のケース120の底壁123が重畳する)ように伝熱部材150が配置される。
【0034】
すなわち、電子部品130よりも放熱性に余裕のあるリアクトル140(ケース120)の底面の配置位置を、電子部品130の放熱位置(伝熱部材150の第2部分152)と重ねることができる。その結果、リアクトル140よりも電子部品130の放熱性を向上させるように、電子部品130の放熱を優先的に行うことができ、また、別途電子部品130の放熱面を確保する必要が無いので、電力変換装置100の配置面積(底面積)を大きくすることなく電子部品130の放熱性を向上させることができる。
【0035】
また、前側の伝熱部材150Aの厚みと、後側の伝熱部材150Bの厚みとは、同じ厚みである。これにより、電力変換装置100を放熱筐体2に配置した際、前後両側の伝熱部材150の間で段差が生じることが防止されるので、電力変換装置100を放熱筐体2に接触させやすくすることができる。
【0036】
また、前側の伝熱部材150Aの第2部分152の端部および後側の伝熱部材150Bの第2部分152の端部は、互いに重なっていない。そして、前側の伝熱部材150Aの第2部分152の端部と、後側の伝熱部材150Bの第2部分152の端部との間隔は、前後に並ぶ2つのリアクトル140の間隔よりも狭くなっている。これにより、当該2つのリアクトル140の前後方向の範囲に第2部分152が確実に存在するので、これらの放熱効率をさらに向上させることができる。なお、前側の伝熱部材150Aおよび後側の伝熱部材150Bは、一体に構成されたもの、つまり、1枚の銅板(伝熱部材150)で構成されたものであっても良い。
【0037】
また、図4に示すように、伝熱部材150の左右方向の幅は、配置される電子部品130の幅に応じて適宜調整することができる。つまり、伝熱部材150の左右方向の幅は、配置される電子部品130の幅以上の幅である。このようにすることで、伝熱部材150に配置される全ての電子部品130の熱を放熱筐体2に伝達できるので、放熱効率をさらに向上させることができる。
【0038】
なお、図4に示す例の場合、前側に配置される電子部品130Aの幅よりも後側に配置される電子部品130Bの幅の方が広いので、前側の伝熱部材150Aの幅よりも後側の伝熱部材150Bの幅が広くなっている。
【0039】
以上のように構成された本実施の形態によれば、ケース120よりも熱伝導性の高い伝熱部材150を電子部品130の放熱に積極的に用いることで、放熱効率を大幅に向上させることができるとともに、放熱性に余裕のあるリアクトル140(ケース120)の底面の配置位置を、電子部品130の放熱面(伝熱部材150の配置位置)として利用することで、電子部品130用の放熱面を増加させることがなく、装置全体の小型化に寄与することができる。また、ケース120および伝熱部材150の厚みを、ケース120のみで放熱する構成と比較して、全体として薄くできるので、装置全体の小型化に寄与することができる。すなわち、本実施の形態では、電子部品130およびリアクトル140の放熱性を確保しつつ、装置全体の小型化を実現することができる。
【0040】
ところで、銅のみによって、ケース120を形成することも考えられるが、銅の場合、アルミニウムと比較して、融点が大幅に高いため、加工しにくく、また、コストが大幅にかかってしまうので、現実的ではない。具体的には、ケース120には、上述のように、ケース120を放熱筐体2にネジ留め固定するための締結部などを形成することが望ましい。このような締結部を有するケース120を銅でダイカスト成形するのは、加工が困難であり、コストも高い。一方、鍛造により成形する場合には、ネジ留め用の締結部を形成することが困難であるとともに、銅の折り曲げ箇所が弧になり、ケース120が大型化してしまう。
【0041】
しかし、本実施の形態では、銅を折り曲げることによって伝熱部材150を構成するので、簡易に電源装置1における放熱効率を向上させることができる。
【0042】
また、伝熱部材150が第1部分151と第2部分152とを有する構成であるので、ケース120の側壁122および底壁123の両方に接して配置しやすくすることができる。
【0043】
また、ケース120の側壁122にネジ穴121が形成されているので、ポッティング樹脂材がネジ穴121から漏れる可能性があるが、樹脂付きネジ131がネジ穴121に通されるので、ネジ穴121からポッティング樹脂材が漏れることを抑制することができる。
【0044】
また、ケース120の前後に伝熱部材150を2つ配置することができるので、より多くの電子部品130を配置することができる。
【0045】
次に、第1変形例について説明する。図5は、第1変形例に係る電力変換装置100の側断面図である。上記実施の形態では、ケース120がアルミニウム等の金属で構成されていたが、図5に示すように、第1変形例では、ケース120が樹脂で構成されている。伝熱部材150は、インサート成形によってケース120に嵌め込まれる。
【0046】
このような構成であっても、伝熱部材150のみで電子部品130の放熱を行うとともに、ケース120および伝熱部材150の第2部分152でリアクトル140の放熱を行うことができるので、放熱効率を向上させることができる。また、上記実施の形態のように、樹脂で構成されたケース120の外面に伝熱部材150を接触させるようにしても良い。なお、ケース120が樹脂で構成される場合、伝熱部材150は樹脂よりも熱伝導率が高いものであれば良く、例えばアルミニウムでも良い。
【0047】
次に、第2変形例について説明する。図6は、第2変形例に係る電力変換装置100の側断面図である。
【0048】
図6に示すように、第2変形例に係る電力変換装置100のケース120は、上壁124と、側壁125と、底壁126とで構成され、前方向(上下方向と直交する方向)に開口する開口部からリアクトル140を収容可能に構成されている。また、回路基板110は、ケース120における前端部における当該開口部に対向する位置に配置されている。なお、側壁125は、上壁124と底壁126との間の空間を囲うように配置されているが、図6では、上壁124の後端部と底壁126の後端部とを接続するもののみ示されている。また、上壁124と底壁126との間の空間には、ポッティング樹脂材Pが充填されている。また、回路基板110は、ケース120の前側下端部における左右の両端部に形成された締結部に図示しないネジ等により固定される。
【0049】
伝熱部材150は、底壁126における開口部の下縁面126A(第1外面)、及び、底壁126の下面126B(第2外面)に接して配置されている。つまり、伝熱部材150の第1部分154が下縁面126Aに接して配置され、伝熱部材150の第2部分155が下面126Bに接して配置されている。このような構成であっても、電源装置1の放熱効率を向上させることができる。
【0050】
また、第1部分154には電子部品230がシート160を介して固定されている。電子部品230は、ネジによって第1部分154に固定されていても良いし、接着剤等によって第1部分154に固定されていても良い。シート160は、例えば、グラファイト製であり、ケース120よりも熱伝導性が高くなっている。このようなシート160を用いることで、伝熱部材150に電子部品230の熱を伝達しやすくすることができる。なお、このようなグラファイト製の部材を伝熱部材150に適用しても良い。
【0051】
なお、上記実施の形態では、伝熱部材150は、銅板を折り曲げることによって第1部分151および第2部分152を構成していたが、本開示はこれに限定されず、例えば、第1部分と第2部分とが別体で構成されたものであっても良い。
【0052】
また、上記実施の形態では、放熱筐体2がフィン2Aを有する箱型の構成であったが、電子部品130およびリアクトル140を放熱可能である限り、どのような構成であっても良い。
【0053】
また、上記実施の形態では、電子部品130が樹脂付きネジ131によってケース120および伝熱部材150に固定配置されていたが、本開示はこれに限定されず、その他の方法によって固定配置されていても良い。
【0054】
また、上記実施の形態(図1図4の形態)では、伝熱部材150の第1部分151が、ケース120の側壁122の第1外面に接し、伝熱部材150の第2部分152が、ケース120の底壁123の第2外面に接していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1外面および第2外面は、ケース120において、互いに異なる面であり、かつ、互いに接続された面であれば、ケース120における、どの外面であっても良い。
【0055】
なお、上記実施の形態では、電子部品が絶縁樹脂によりモールド(インサート成形)されていたが、より放熱性を高めるために、放熱面が絶縁樹脂によりモールドされていない(絶縁されていない)電子部品を用いても良い。
【0056】
この場合、絶縁されていない電子部品の放熱面が、直接、伝熱部材150(銅板)に接触しないように、伝熱部材150に絶縁処理を施すことが好ましい。
【0057】
絶縁処理は、例えば、熱プレス工程や粉体塗装などが想定される。特に熱プレス工程は、箱型に構成された放熱筐体2(アルミダイカストケース)に施すことは困難であるが、金属板(銅板)には容易に施すことが可能である。
【0058】
すなわち、金属板を伝熱部材150として用いることで、容易に絶縁処理を施すことができ、絶縁樹脂によりモールドされていない電子部品を容易に使用できる。これにより、モールドされた電子部品の樹脂の厚みよりも、厚みが薄い樹脂(絶縁処理)を介して放熱されるため、さらに放熱性を向上させることができる。
【0059】
なお、絶縁処理は、少なくとも電子部品と接触する箇所に施されていれば良い。
【0060】
なお、ケース120は、アルミニウムではなく、炭素繊維等で構成されていても良い。
【0061】
なお、本実施の形態では、電力変換装置100を例示したが、本開示はこれに限定されず、電力変換を行わない電源装置にも適用可能である。
【0062】
次に、第2の実施の形態について説明する。
上記実施の形態では、ケース120が、アルミダイカスト成形により、上方向に開口する箱形状(底壁と4つの側壁とで構成される直方体状)に形成されている構造を例示し、ケース120にポッティング樹脂材Pが充填される例を示したが、その他の構造であっても良い。
【0063】
ところで、銅などの熱伝導率の高い素材でケース120を構成する場合、ケース120を放熱筐体2にネジ留めなどで固定するための固定部を成形する加工が困難である、または、コストが大幅にかかってしまう。そのため、上記実施の形態では、ケース120を伝熱部材よりも成形しやすい素材で成形した上で、熱伝導率の高い伝熱部材(例えば銅)を組み合わせる構成となっている。
【0064】
このように、成形しやすい素材で、ポッティング樹脂材Pが充填可能な「ケース」を成形するのではなく、成形しやすい素材で、放熱筐体2にネジ留めなどで固定するための「固定部」のみの成形としてもよい。そして、この固定部と伝熱部材とを組み合わせることで、ポッティング樹脂材Pが充填可能なケースを構成してもよい。
【0065】
具体的には、図7に示すように、ネジ等により放熱筐体2に固定されるための固定部201(締結部)を有するとともに、リアクトルを収納可能な収納空間を構成するように成形された固定部材200を使用する。固定部材200は、主にリアクトル140(リアクトルが収納された固定部材)を放熱筐体2に固定する役割を担う。固定部材200単独では、底面200Aが開口されており、ポッティング樹脂材Pが充填できない(漏れる)構造である。
【0066】
第2の実施の形態では、この固定部材200の底面200Aにおける開口部分を覆うように、熱伝導率の高い伝熱部材210(例えば銅)がインサート成型(成形)される。図8に示すように、伝熱部材210は、固定部材200の側壁202の側面200Bに沿って配置される第1部分211と、底面200Aに接して開口部分を覆う第2部分212とを有する。これにより、図9に示すように、固定部材200の底面200Aおよび側面200Bが伝熱部材210で覆われて、ポッティング樹脂材Pが充填可能な(漏れない)ケースが構成される。なお、固定部材200と伝熱部材210の接合は、インサート成型に限らず、接着剤などを用いて接合されても良い。
【0067】
また、固定部材200は、リアクトル140を収納するための収納空間を仕切る仕切板203を有している。この仕切板203で挟まれた収納空間の幅の長さDは、リアクトル140の直径よりも小さく構成される。
【0068】
図10に示すように、この仕切り板203の間に、リアクトル140が収納されると、仕切板203により、リアクトル140の上下方向の高さが規定される。この高さは、リアクトルと、底面を覆っている伝熱部材210との間に空間Sを確保するように規定される。これにより、伝熱部材210を、導電性を有する金属(銅・アルミ等)で構成した場合であっても、リアクトル140と伝熱部材210の絶縁も確保される。
【0069】
そして、図11に示すように、上記実施の形態と同様に伝熱部材210に電子部品130が接着固定され、固定部材200と伝熱部材210からなるケース(図9参照)に放熱性樹脂(ポッティング樹脂)が充填される。そして、固定部材200の固定部201を用いて放熱筐体2にネジ留め等により固定される。この固定部201の締結により伝熱部材210と放熱筐体2の熱的接合がより確保され、上記実施の形態と同様に、電子部品130およびリアクトル140の放熱性を確保しつつ、装置全体の小型化を実現することができる。
【0070】
なお、第2の実施の形態では、上記実施の形態のようにケース120をアルミダイカストで成形するものと比較して、安価に製造することが可能である。また、第2の実施の形態では、アルミダイカストよりも肉薄させることが可能であるため、より小型化することも可能である。
【0071】
なお、伝熱部材210は、筐体を構成する部材(例えば、アルミニウム)よりも熱伝導性の高い部材で構成される方が好ましい。
【0072】
また、第1の実施の形態において伝熱部材150は、ケース120の第1外面(側面)に接して配置される第1部分を説明したが、第1部分は、第1外面(側面)に接しない場合もあっても良い。但し、第1部分は、第1外面(側面)に接した方が、伝熱部材(第1部分)と第1外面の間の空間がないため小型化でき、また、リアクトルの熱も伝熱部材を介して伝熱できるため放熱性(伝熱性)も好ましい。
【0073】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0074】
2018年4月25日出願の特願2018-084184の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の電源装置は、発熱部品の放熱性を確保しつつ、装置全体の小型化を実現することが可能な電源装置として有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 電源装置
2 放熱筐体
2A フィン
3 蓋
100 電力変換装置
110 回路基板
120 ケース
121 ネジ穴
122 側壁
123 底壁
130 電子部品
131 樹脂付きネジ
140 リアクトル
150 伝熱部材
151 第1部分
152 第2部分
153 ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11