(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント
(51)【国際特許分類】
B23B 45/00 20060101AFI20240508BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20240508BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B23B45/00 Z
B23B47/34 Z
B23Q11/00 Q
(21)【出願番号】P 2023132359
(22)【出願日】2023-08-15
【審査請求日】2023-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505012276
【氏名又は名称】有限会社エイケイアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】荒井 昭男
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-070939(JP,U)
【文献】特開2017-052022(JP,A)
【文献】特開平08-071884(JP,A)
【文献】特開2017-080823(JP,A)
【文献】特開2017-001158(JP,A)
【文献】特開2006-255815(JP,A)
【文献】特開2000-354935(JP,A)
【文献】特開平11-182764(JP,A)
【文献】特開平10-034484(JP,A)
【文献】特開昭52-098279(JP,A)
【文献】実開平02-100713(JP,U)
【文献】実開昭54-112677(JP,U)
【文献】中国実用新案第211163803(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00-49/06
B23Q 11/00-13/00
B25D 1/00-17/32
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ドリル(30)に、
筒体(20)と、
摺動収容体(10)と、
柔軟な可撓性を有する弾性体(40)とを利用する粉塵飛散防止アタッチメントであって、
前記摺動収容体(10)は弾性素材から成り、
前記電動ドリル(30)の本体と前記筒体(20)とを繋ぎ、
前記摺動収容体(10)の形状は前記電動ドリル(30)側から前記筒体(20)側に向かって末広がり状となる円錐台形であり、
前記摺動収容体(10)の外周面は環状の凹状溝が長手方向に所定の間隔をあけて複数形成され、
前記摺動収容体(10)の内周面はなだらかに繋がる面一となって
おり、
前記摺動収容体(10)の電動ドリル(30)側端部に軸受(70)が備えられていることを特徴とする粉塵飛散防止アタッチメント(1)。
【請求項2】
前記軸受(70)が、異径軸(71)を許容する許容機能(72)を備えた軸受(70)であり、該許容機能(72)は、アウター部(73)とこれに回転可能に内装されるインナー部(74)とで成り、インナー部は半円に割部(75)を有し、他の半円に複数の突起部(76)を有して回転軸を保持する軸受け(70)であることを特徴とする請求項
1に記載の粉塵飛散防止アタッチメント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの技術に関し、詳しくは、壁等に穴を開ける作業に於いて、ドリル及びホルソーで削った粉塵の飛散をもれなく集める容器に関するアタッチメントであって、詳しくは、粉塵収容容器から粉塵を取り出す際にも粉塵飛散を最小限にできる粉塵収容容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり人体に悪影響を及ぼすといわれてきたアスベストの問題は、国の規制が定められた約50年前から意識が高まり、アスベストの含有率などを定めることで被害防止に努めてきたといえる。しかしながら、現在、解体作業や設備の改善の対象となっている建物の多くは規制以前のものも多く、作業者の健康被害が後を絶たない。また、アスベストの粉塵の健康被害は、工事をしている作業者だけでなく、飛散により作業場の近くに住む住人や歩行者などにも影響するといえる。
【0003】
係るアスベストの問題は、アスベストの粉塵が口や鼻から吸引され、人体に入ることで特に悪影響を及ぼすが、作業者が直接アスベストが含有している壁や天井などに触れて穴あけ作業を行うエアコンの取り付け作業においては特に深刻である。このエアコン取り付けによる穴あけ作業では、ドリルなどを使っての人的作業となり、この時の穴あけ作業時、または作業時に回収した粉塵の処理作業においても、どうしても粉塵を吸い込んでしまうこととなる。従って、このような問題を解決する工夫が必要であるといえる。
【0004】
エアコンの配管をする場合の作業は、具体的には、先ず電気ドリル等の電動工具によって約内径65mmから80mmの穴を貫通させる工程がある。そうすると、その内径約65mmから80mm分の壁に使用された建材が破片と粉になることとなる。また、それは作業者が作業を行っている側の壁にも、また、作業を行っている壁とは反対側の壁にも粉塵は飛散する。それによって、作業者だけでなく、反対側にいる、例えば通りすがりの通行人がいたとしてもその粉塵を吸い込むこととなる。特に、作業者においては、一日何回も繰り返す作業であり、それは、削った壁や道具についた粉塵を拭い去る作業においてもアスベストを吸い込むこととなる。また、それが毎日のように繰り返し行った場合には、吸い込む粉塵の量も少量では済まされず、人体に与える悪影響は大きいといえる。そしてアスベストを吸引する恐れがある仕事を長期に続けた場合、吸引されたアスベストは肺の組織内に長く滞留し、その結果、石綿肺や肺がんなどに掛かりやすくなるといわれている。そのように健康被害を少しでも無くすための対策が必用であるといえる。
【0005】
また、これらの現状を深刻に受け止めて、ついに国が対策に乗り出し、2022年4月1日から、アスベストの有り無の事前調査結果の報告義務、並びに、飛散させないように養生しなければならないことが、厚生労働省より発表され、これに伴い、アスベストの粉塵を吸引しないで済む器具や方法の提供は急務といえる。
【0006】
係る問題に鑑み、従来より種々の技術提案がなされている。例えば、考案の名称「アスベスト除去方法および剥離塗材回収システム」とする技術がある(特許文献1参照)。具体的には、「塗材層を剥離したときに下地調整層の表面に残留した塗材をアスベストが飛散しないように除去することができるアスベスト除去方法を提供すること。
」ことを課題とし、解決手段としては「コンクリート層12と、コンクリート層12の表面に形成された下地調整層11と、下地調整層11の表面に形成されており、アスベストを含有する塗材により形成された塗材層10と、を有する構造物Bに含有されたアスベストを除去するためのアスベスト除去方法であって、塗材層10の表面に剥離剤41を塗布することにより、塗材層10に剥離剤41を浸透させる剥離剤塗布工程と、剥離剤塗布工程により剥離剤41が浸透した塗材層10をスクレーパ71により除去する塗材層除去工程と、アスベストの飛散を抑制するための液体を研磨領域11bに供給しながら下地調整層11の表面を研磨することにより、下地調整層11に残留する塗材を除去する残留塗材除去工程と、を有する」というものである。係る特許文献1に記載された発明は、アスベストを飛散させずに取り除くという点で本発明と一部共通する効果を発揮するものといえる。しかしながら、特許文献1では、アスベストを含有した塗膜層を除去する方法に関し、切削に伴って生じる粉塵の飛散を対象とするものではない。
【0007】
また、考案の名称「集塵装置」とする技術がある(特許文献2参照)。具体的には、「穿孔工具に着脱可能に構成された集塵装置の小型化に資する技術を提供する。」ことを課題とし、解決手段としては「集塵装置5は、本体部51と、粉塵収容部6と、摺動部7と、粉塵移送路80と、工具接続路87とを備える。本体部51は、ハンマドリル1の本体部10の下側に着脱可能である。粉塵収容部6は、流入口としての第1開口671と、フィルタ60と、収容空間610と、流出口としての第2開口672とを有する。摺 動部7は、内部空間52内を前後方向に摺動可能に本体 部51に保持されている。粉塵移送路80は、摺動部7内を延在し、吸引口712と第1開口671とを接続する。工具接続路87は、内部空間52に配置され、集塵装置5がハンマドリル1に装着された場合に、第2開口672とハンマドリル1の第1吸気口111とを接続する。フィルタ60は、第1開口671に対して前側に配 置されている。」というものである。しかしながら、係る文献に記載された発明は、所謂専用装置であり、既存の電動ドリル・ドライバー等にアタッチメントとして利用できるものではない。また、低コストで供給可能とする本発明とは相違するものである。
【0008】
また、発明の名称「電動ドリル装置及び吸引装置」とする技術がある(特許文献3参照)。具体的には、「清掃作業を楽に行うことができ、作業負担も生じない電動ドリル装置及び吸引装置を提供する。」ことを課題とし、解決手段としては「電動ドリルと上下動可能な筒体を有する吸引装置を備えた電動ドリル装置であって、筒体はドリルのシャフトとビットを覆うカバー部と、該カバー部の途中に設けられた分岐筒を備えており、電動ドリルの作動に応じて上下させることができ、吸引機本体から伸びたホースと分岐筒は結合され、吸引機本体には背負具を備られて可搬型とされている電動ドリル装置。」というものである。しかしながら、係る特許文献3に記載された発明は、基台の上に立設される壁掛け材の構造が大きく異なっており、更に、特許文献3に記載の技術では、大掛かりな吸引装置を必要とするため、手軽さに欠ける点が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2022-006896号公報
【文献】特開2019-63890号公報
【文献】特開2016-129913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に設備工事における壁等への穴あけ作業時に生ずる粉塵被害の削減を目的とし、アスベストを含有する建築物石綿含有建材による人体被害を削減することができ、特に、粉塵を収集した後に廃棄処理する際にも飛散を最小限とすることを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る、電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントは、電動ドリルに、筒体と、摺動収容体と、柔軟な可撓性を有する弾性体とを利用する粉塵飛散防止アタッチメントであって、前記摺動収容体は弾性素材から成り、前記電動ドリルの本体と前記筒体とを繋ぎ、前記摺動収容体の形状は一方に向かって末広がり状となる円錐台形であり、前記摺動収容体の外周面は環状の凹状溝が複数周接され、前記摺動収容体の内周面はなだらかに繋がる面性状を有した構成を採用した。
【0012】
また、本発明に係る、前記摺動収容体が、ドリル側端部の前記筒体に軸受が備えられている構成を採用することもできる。
【0013】
また、本発明は、前記摺動収容体が、前記筒体内をスライドすることにより、伸縮する構成を採用した構成を採用することもできる。
【0014】
また、本発明は、前記摺動収容体が、前記筒体に対して片側端部が捲れることで伸縮する構成を採用することもできる。
【0015】
また、本発明は、前記軸受が、異径軸を許容する許容機能を備えた軸受であり、該許容機能は、アウター部とこれに回転可能に内装されるインナー部とで成り、インナー部は半円に割部を有し、他の半円に複数の突起部を有して回転軸を保持する軸受けである構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントによれば、刃先から零れ落ちるアスベスト等の粉塵を簡易的な道具によって飛散を漏れなく防ぐことを可能とし、作業者等の健康被害を防止できるという優れた効果を発揮するものである。
【0017】
また、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントによれば、作業後に粉塵を処理する際にも容易に拭い去ることができるという優れた効果を発揮する。
【0018】
また、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントによれば、収容体の縁に着脱可能な弾性体で凹凸のある壁面に押し付けて貼着するため、外して使用済みの筒体の蓋としてそのまま使えることから、処分の際のアスベストの飛散防止を更に図れるという優れた効果を発揮する。
【0019】
また、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントによれば、構成がシンプルなため製造コストを抑えることができ量産に適するという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントで使用する道具に関する基本構成説明図である。
【
図2】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の実施構成を説明する実施構成説明である。
【
図3】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の第一の実施形態を説明する実施形態説明図である。
【
図4】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の第二の実施形態を説明する実施形態説明図である。
【
図5】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の第三の実施形態を説明する実施形態説明図である。
【
図6】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントにおいて、摺動収容体の径違いの軸を軸受けする軸受部を説明する軸受け構造説明図である。
【
図7】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントを用いた作業状態を説明する作業状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント1は、電動ドリル30に、筒体20と、摺動収容体10と、柔軟な可撓性を有する弾性体40とを利用する粉塵飛散防止アタッチメントであって、前記摺動収容体10は弾性素材から成り、前記電動ドリル30の本体と前記筒体20とを繋ぎ、前記摺動収容体10の形状は一方に向かって末広がり状となる円錐台形であり、前記摺動収容体10の外周面は環状の凹状溝が複数周接され、前記摺動収容体10の内周面はなだらかに繋がる面性状を有していることを最大の特徴としている。以下、図面に基づいて説明する。なお、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント1の全体形状、及び寸法各部の形状は、下記に述べる説明に限定さるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を奏する形状及び寸法の範囲内で変更することができるものである。
【0022】
図1は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント1の基本構成を説明する基本構成説明図であり、
図1(a)は、電動ドリルに用いる各部材ごとに示したものであり、
図1(b)は、電動ドリルに各部材を装着した状態を示している。以下、使用する各構成部材について詳細な説明をする。
【0023】
電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント1は電動ドリルに、筒体20と、摺動収容体10と、柔軟な可撓性を有する弾性体40とを利用する粉塵飛散防止アタッチメントであって、前記摺動収容体10は弾性素材から成り、前記電動ドリル30の本体と前記筒体20とを繋ぎ、前記摺動収容体10の形状は一方に向かって末広がり状となる円錐台形を基本形状とするものであり、前記摺動収容体10の外周面は環状の凹状溝が複数周接され、前記摺動収容体10の内周面はなだらかに繋がる面性状を有したものである。
【0024】
ドリル刃200は、電動ドリル30に装着され、回転させられることによって、物に穴を開け、切削を行うための刃のことである。おおまかに分けて、木工用、金属用、コンクリート用などがある。
【0025】
ホールソー210は、電動ドリルドライバーやインパクトドライバーに取り付けて使用する工具で、木材や金属にドリルでは開けられないような大きな穴をあける工具の事である。用途や目的に合わせて種類やサイズが様々で、木材や樹脂、鉄板などに穴をあけることが可能である。
【0026】
摺動収容体10は、ドリル刃200やホルソー210が壁Kを切り込んで突き進むと、これに応じて筒体20がスライドし、引き伸ばされても押しつぶされても常に元の状態に戻ろうとする力を与えるための形状に形成されたゴムなどの弾性素材により構成するか、若しくは筒体20内をスライドさせる構成とするか、または摺動収容体10の端部が捲れる構成とするものである。なお、市販されているダストカバーには、全体が蛇腹となったものが存在する。しかし、これも、係る蛇腹により自由な伸縮を可能とするものではあるものの、係る蛇腹部の凹凸に粉塵Pが入り込み取り除くことが困難になるというメンテナンス性の問題を含んでいるといえるものである。そこで本発明では係る摺動収容体10の内面には可能な限り凹凸部の無い面性状とし、これを最大の技術的特徴とするものである。
【0027】
筒体20は、透明な素材で成形され、ドリル刃200又はホルソー210を被覆し、刃先から生じる粉塵Pを収容する容体となるものであり、摺動収容体10を介してドリル刃200又はホルソー210に対して前後に移動するものである。また筒体20の先端側端部には筒体20の先端と壁等の間に弾性体40を挟みつけるためのフランジ部41が設けられる。なお、透明素材とするのは、粉塵の排出状態を外部から目視できるようにするためである。
【0028】
電動ドリル30は、穴あけが主目的の電動工具である。本発明では、一般に市販されている既存の電動ドリル・ドライバー等を利用することができる。係る電動ドリル30は、、モーターと減速機・ドリルチャックからなり、JISC9605では「携帯電気ドリル」となっている。機能的には「ボール盤」を携帯化したものである。現在では、機械本体も絶縁体で構成された二重絶縁の機種が主流である。携帯用電動工具としては一番普及しているものであり、電動ドリル30又は単に電ドリ、電ドル、ドリル、ドリルドライバーとも呼ばれる。電気ドリル30は、発明された当時はドリル刃200を取り付け正方向に回転させて木材や金属に穴をあける専用の電動工具であった。その後色々な機能が本体に追加され、先端に取付ける工具も豊富になって作業範囲が広がった。その事により穴あけ・締め付け・弛め・研磨・研削等の各種作業が可能となり、名称も機能性能を追加表示する各種電気ドリル30となった。
【0029】
弾性体40は、筒体20の先端部分に設けられるフランジ部41に対応するリング形状であって、貼着によって切削加工する壁面Kとの間に挟み、更にこれを押し付けることによって壁等の凹凸の形状に則して変形する弾性物質である。具体的には、例えば、日常で使用するふわふわとした形状のウレタンがある。原料であるポリウレタンなどの合成樹脂を発泡成形させてスポンジ状に加工した物を用途に応じた形状にカットしたもので、「ウレタンスポンジ」略して「ウレタン」と呼ばれているものである。同じようにポリウレタンでできたウレタンスポンジでも、発泡させる度合いや製法を変えることで「軟質ウレタンフォーム」「硬質ウレタンフォーム」「低反発ウレタンフォーム」など様々な硬さや形状で作られており、使用用途に合わせて選ぶことができるのが大きな特長である。ウレタンスポンジはウレタンフォームとも呼ばれ、原料をスポンジ状に発泡させたものをフォームといい、ウレタンスポンジとウレタンフォームは基本的には同じものを指している。更に、係るウレタンフォームは、発泡により表面がザラザラしており、筒体20を壁面Kに押し付けたとき、滑り止め機能を発揮する。また、シリコン樹脂の架橋密度をコントロールして僅かな自由流動性を残すことにより柔軟性と剥離性を備えたものも好適な素材といえる。本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント1において、壁面Kに凹凸があるような場合に、下部面Kと、筒体20との間に係る弾性体40を挟んでこれを押し付けることで凸凹に対応して安定した穴開けを可能とするものである。
【0030】
フランジ部41は、筒体20の先端と壁等の間に弾性体40を挟みつけるための段差部のことである。
【0031】
基準孔50は、目的となる内壁開口穴52を開ける際に、ホルソー210等の円形切削具を案内するために最初に開けられる孔である。
【0032】
案内孔51は、内壁の基準孔50及び開口穴に貫通して開けられる外壁開口穴53の中心を案内する孔である。
【0033】
内壁開口穴52は、内壁UKの目的となる穴のことであり、基準孔50を中心としてホルソー等の円形切削具を用いて開口させた穴のことである。
【0034】
外壁開口穴53は、外壁SKの目的となる穴のことであり、案内孔51を中心としてホルソー等の円形切削具を用いて開口させた穴のことである。
【0035】
収容体60は、アスベスト等の粉塵Pを飛散させることなく収容する容体である。内壁側の内壁開口穴52を開けた後、案内孔51を開ける際に外壁の外側にドリル刃200による粉塵Pが飛散するのを防ぐとともに使用後の筒体を取り外す際に係る筒体の片側端部を塞ぐ蓋体となる。
【0036】
粘着体ジェル100は、液体のような柔軟性と固体のような弾力を持つゼリー状の半固形物のことであり、必要に応じて筒体20のフランジ部41や弾性体40の壁面Kへの貼着に用いるものである。
【0037】
壁面Kは、外壁内壁を問わず壁を構成する平な建築資材のことである。一般の住宅では、壁内に間柱Mを挟むように外壁SKと内壁UKが存在し、エアコンのダクト用の穴を開ける場合には外壁SKと内壁UKを貫通した穴を開けることが必要となるものである。
【0038】
粉塵Pは、粉のように細かく気体中に浮遊する塵状の固体の粒子であり、国際標準化機構では「粒径が75μm未満の固形浮遊物」と定義されている。特に吸引すると作業者の健康に大きく影響するアスベストを含有する粉塵Pが問題となる。
【0039】
図2は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の実施構成を説明する実施構成説明図であり、
図2(a)は、摺動収容体10がテーパー状に配置され、外面に突出部が環設され、内面に伸長状態において内面凹凸の無い面性状となる第一の実施形態を示し、
図2(b)は、スライドによって摺動する第二の実施形態を示し、
図2(c)は、摺動収容体10の端部が捲れて伸縮する第三の実施形態を示している。以下、第一から第三の実施形態について、
図3から
図5を用いて説明する。
【0040】
図3(a)・
図4(a)・
図5(a)に示すように、内壁UKと筒体20との間を弾性体40で隙間なく押し付けて基準孔50を開け、係る基準孔50に案内されたホルソー210により内壁開口穴52を開ける。
【0041】
その後、
図3(b)・
図4(b)・
図5(b)に示すように、ドリル刃200が外壁SKに案内孔51を開ける。この時、外壁SKには収容隊60で被覆し、粉塵Pを収容する。ドリル刃200が貫通した段階でドリル刃200の切込を止める。
【0042】
図面には示していないが、その後、外壁から収容体60を取り外し、外側から外壁SKに対して弾性体40を押し付けて外壁SKと筒体20との間を隙間なく密着させた状態で案内孔51にドリル刃200を案内させて、外壁SKに外壁開口穴53をホルソー210によって開口させる。
【0043】
図3は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体10の第一の実施形態を説明する実施形態説明図であり、
図3(a)は、第一の実施形態における摺動収容体が伸びた状態で基準孔50を開けているところを示し、
図3(b)は、その後、ホルソー210により内壁UKに内壁開口穴52を開け、更に外壁SKに案内孔51を開けているところを示し、その際に摺動収容体10は縮んだ状態となることを示している。具体例として、SHULLIN社から提供されている折りたたみじょうご(シリカゲル)等の構造と摺動収容体10の構造は同様である。
【0044】
図4は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の第二の実施形態を説明する実施形態説明図であり、
図4(a)は、第二の実施形態における摺動収容体10が伸びた状態で基準孔50を開けているところを示し、
図4(b)は、その後、ホルソー210により内壁UKに内壁開口穴52を開け、更に外壁SKに案内孔51を開けているところを示している。またその際に摺動収容体10は縮んだ状態となることを示している。
【0045】
図5は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントの摺動収容体の第三の実施形態を説明する実施形態説明図であり、
図5(a)は、第三の実施形態における摺動収容体が伸びた状態で内壁UKに基準孔50を開けているところを示し、
図5(b)は、ホルソー210により内壁UKに内壁開口穴52を開け、更に外壁SKに案内孔51を開けているところを示している。またその際に摺動収容体10は縮んだ状態となることを示している。
【0046】
図6は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントにおいて、摺動収容体の径違いの軸を軸受けする軸受部を説明する軸受け構造説明図である。
【0047】
軸受70は、所謂ベアリングであって、ホルソーやドリル刃の端部を回転自在に軸支する部材である。一般的にはボールベアリングやニードルベアリングなどが考えられる。
【0048】
異径軸71は、一般のホルソーの場合、直径が10mm又は11mmであることから、この二種類の軸径に対応することが望ましい。そこで、係る二種類の直径が異なる場合でもチャッキングができると好適である。
【0049】
許容機能72は、直径が異なる軸を軸受けする機能であり、具体的には直径10mmと11mmを許容する軸受けとするものである。具体的には、
図6に示すように複数の突起状物で保持され、係る軸受70に弾性力を有する素材を用いることで軸芯を調整することが可能となるものである。例えば、軸を保持する突起状物の部分を弾性力の大きな樹脂とし、母体となる部分を硬質の樹脂とする二色成形により必要な部分に必要な硬さや弾性を与える事ができる。
【0050】
アウター部73は、
図6に示すように、摺動収容体10と、ホルソー210の回転軸とを結合する役割を果たし、インナー部74を回転可能に内設する部材である。
【0051】
インナー部74は、
図6に示すように、アウター部73に回転自在に内設され、ホルソー210の回転軸と結合する役割を果たす部材である。
【0052】
割部75は、インナー部74の軸穴の一部が割られている部分である。係る割部75は直径が大きな軸の場合には割部75を押し広げて挿入され、軸径が小さなものはそのまま軸穴に沿って割部を押し広げることなく挿入される。
【0053】
突起部76は、インナー部74の軸穴の一部に複数の突起が設けられている部分である。係る突起部76は、弾性により軸径に応じて押し広げられ、その軸芯を補正するものである。
縮んだ状態となることを示している。
【0054】
次に、第一の実施形態から第三の実施形態に共通する作業手順について、工程Aから工程Jにより説明する。
【0055】
収容体および粘着体の取り付け工程Aは、外壁側SKから案内孔51が予定される位置に粘着体ジェル100及び収容体60を外壁SKに貼着する工程である。詳しくは、収容体60と外壁SKの間に弾性体40を挟んで外壁SKの表面形状に沿って弾性体40を変形させる。この際、案内孔51が貫通して突き出した時にこれを被覆できる収容隊60を粘着体ジェル100等で外壁SKへ貼着させておく。
【0056】
内壁押し付け工程Bは、フランジ部41に貼着した弾性体40を圧し潰して内壁等の被切削加工物の表面に形状に沿って変形させ、筒体20と壁等の被切削加工物との隙間を無くす工程である。
【0057】
内壁基準孔開け工程Cは、目的となる穴あけの中心を案内するための基準孔50を開ける工程である。
【0058】
内壁円形切削工程Dは、基準孔開け工程Cで開けた基準孔50に案内されてホルソー210により内壁UKに大径の穴を開ける工程である。
【0059】
外壁案内孔開け工程Eは、基準孔開け工程C及び円形切削工程Dで内壁UKに穴を開けた後に、外壁SKへ目的となる穴あけの中心を案内するための基準孔50を開ける工程である。
【0060】
収容体および粘着体の取り外し工程Fは、収容体および粘着体の取り付け工程Aで取り付けた収容体60と弾性体40を剥がして取り外す工程である。
【0061】
内壁封鎖工程Gは、内壁円形切削工程Dにより内壁UKに開口した大径の内壁開口穴52を塞ぐ工程である。係る被覆部材に関しては特に図面には示していないが、粘着剤のついたビニールシート等が考え得る。
【0062】
外壁押し付け工程Hは、外壁SKに設けた案内孔51を中心に、弾性体40を圧し潰して壁等の被切削加工物の表面に形状に沿って変形させ、筒体20と壁との被切削加工物との隙間を無くす工程である。
【0063】
外壁円形切削工程Iは、案内孔開け工程Eで開けた案内穴に案内されて外壁等の被切削加工物へ大径の外壁開口穴53を開ける工程である。
【0064】
被覆部材剥離工程Jは、内壁封鎖工程Gで封鎖した内壁開口穴52に貼着したビニールシート等を剥離する工程である。
以上の工程を経て施工終了となる。
以後は、取り外した筒体20の片側端部に収容体60を蓋体として装着し、反対側端部にも蓋体を装着して筒体20を密閉状態で廃棄する。
【0065】
図7は、本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント1の作業状態を説明する作業状態説明図であり、
図7(a)は、最初に内壁の内側から外壁に向かって基準孔50を開けた状態を示し、
図7(b)は、ホルソー210によって内壁開口穴52を開けた状態を示し、
図7(c)は、その後ドリル刃200を外壁SKに貫通させて案内孔51が空いている状態を示している。
図7(d)は、外側に回り込んで外壁に空いた案内孔51にドリル刃200を案内させ大径の内壁開口穴53を開けた状態を示したものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、アスベストの粉塵を吸い込むことによって作業者の健康が著しく損なわれていた問題を解決し、また、作業者のみならず作業をしている周辺においても粉塵による環境被害を減少することが可能となり、特に粉塵を収容した後に廃棄処理をする際も最小限に出来ることから、産業上の利用可能性は高いものと思慮される。
【符号の説明】
【0067】
K 壁面
UK 内壁
SK 外壁
P 粉塵
1 電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメント
10 摺動収容体
20 筒体
30 電動ドリル
40 弾性体
41 フランジ部
50 基準孔
51 案内孔
52 内壁開口穴
53 外壁開口穴
60 収容体
70 軸受
71 異径軸
72 許容機能
73 アウター部
74 インナー部
75 割部
76 突起部
100 粘着体ジェル
200 ドリル刃
210 ホルソー
【要約】
【課題】本発明は、特に設備工事における壁等への穴あけ作業時に生ずる粉塵被害の削減を目的とし、アスベストを含有する建築物石綿含有建材による人体被害を削減することができ、特に、粉塵を収集した後に廃棄処理する際にも飛散を最小限とすることを課題とする。
【解決手段】本発明に係る電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントは、本発明に係る、電動ドリル用粉塵飛散防止アタッチメントは、電動ドリルに、筒体と、摺動収容体と、柔軟な可撓性を有する弾性体とを利用する粉塵飛散防止アタッチメントであって、前記摺動収容体は弾性素材から成り、前記電動ドリルの本体と前記筒体とを繋ぎ、前記摺動収容体の形状は一方に向かって末広がり状となる円錐台形であり、前記摺動収容体の外周面は環状の凹状溝が複数周接され、前記摺動収容体の内周面はなだらかに繋がる面性状を有した構成を採用した。
【選択図】
図1