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特許7484009リチウム二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240508BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240508BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023501302
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 KR2021014194
(87)【国際公開番号】W WO2022097945
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0144943
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョルウン・ヨム
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ヘン・イ
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/072763(WO,A1)
【文献】特表2002-508576(JP,A)
【文献】特開2014-194871(JP,A)
【文献】特開2019-099389(JP,A)
【文献】特開2019-179638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用非水系電解液であって、
前記添加剤はスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩であり、
前記添加剤が下記化学式1で表されるリチウム塩であり、
【化1】
前記化学式1において、
XはCH またはOであり、
Rは水素、フッ素またはフッ素に置換された炭素数1ないし4のアルキル基であり、
前記添加剤が全体重量に対して0.01重量%ないし10重量%含まれることを特徴とするリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項2】
前記RがFまたはCFであることを特徴とする請求項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項3】
前記化学式1が下記化学式Aないし化学式Dのいずれか一つで表されることを特徴とする請求項またはに記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項4】
前記電解質塩がLiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiFSI(LiN(SOF))、LiBETI(LiN(SOCFCF)及びLiTFSI(LiN(SOCF)からなる群から選択されたことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項5】
前記電解質塩の濃度が0.1Mないし3Mであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項6】
前記有機溶媒がエーテル、エステル、アミド、線形カーボネート及び環形カーボネートからなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項7】
前記リチウム二次電池が4.0V以上の作動電圧を持つことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液。
【請求項8】
正極、負極、前記正極と負極との間に介在される分離膜、及び請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水系電解液を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年11月3日付韓国特許出願第10-2020-0144943号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は高電圧下で正/負極に安定した被膜を形成し、電解液の持続的な分解抑制を通じた寿命改善及び高率充放電を達成できるリチウム二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電子機器が広く普及し、このような携帯電子機器の急速な小型化、軽量化及び薄形化に伴って、その電源である電池についても、小型で軽量でありながら、長時間充放電可能であり、高率特性に優れる二次電池の開発が強く要求されている。
【0004】
リチウム電池、具体的に、リチウムイオン電池(lithium ion battery:LIB)は、このような要求を最もよく満たすことができる電池であって、エネルギー密度が高くて設計が容易であるため、多くの携帯用機器の電源として採用されている。最近は前記リチウムイオン電池が携帯用IT機器などの小型電子機器の他に電気自動車用または電力貯蔵用の電源として採用され、常温だけでなく高温や低温環境など、より苛酷な外部環境でも優れた性能を維持できるようにする研究が進んでいる。
【0005】
一方、リチウム二次電池は大部分リチウムイオンを吸蔵及び放出できる負極及び正極と、混合カーボネート系有機溶媒にLiPF、LiBFなどのリチウム塩が適量溶解された非水電解液とで構成されている。
【0006】
前記リチウム二次電池は充放電が進められながら、正極活物質が構造的に崩壊されて正極表面から金属イオンが浸出される。浸出された金属イオンは負極に電着(electrodeposition)されて負極を劣化させる。このような劣化現象は正極の電位が高くなるか、または電池の高温への露出時さらに加速化される傾向を示す。
【0007】
このような問題点を解決するために、非水電解液内に保護被膜、すなわち負極表面にSEI膜を形成することができる化合物を添加する方法が提案された。しかし、電解液に添加された化合物によって他の副作用が発生し、二次電池の諸般性能が減少するまた他の問題点が発生することがある。
【0008】
したがって、副作用を最小化しながら電池の性能及び安定性は向上させることができる添加剤を含む非水電解液に対する開発が持続的に要求されている。
【0009】
また、リチウム二次電池では、原料物質に含まれていたり、工程上で混入される異物によって低電圧現象(電圧降下)が発生し、このような現象は電池内での微細な短絡によって深刻化して、セルの駆動が止まってしまう短所がある。このような短所は製造工程最終段階での不良なので損失が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-256995号公報
【文献】米国特許第7,033,707号明細書
【文献】特開2003-059529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は従来の問題点を解決するためのもので、リチウム二次電池用非水系電解液に添加剤としてスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩を含むことで、電極表面上に安定した被膜を形成するとともに、電池内部の金属異物によって発生する副作用を抑制することができるリチウム二次電池用非水系電解液及びこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【0012】
また、本発明は電極表面上に安定した被膜を形成することで、リチウム輸送を阻む陰イオンが電極被膜に固定されて被膜の抵抗を減少させ、リチウムイオン輸送率を向上させて高率充放電が優秀であるリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、電解質塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用非水系電解液であって、前記添加剤がスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩である、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記添加剤が下記化学式1で表されるリチウム塩である、二次電池用非水系電解液を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
前記化学式1において、
XはCHまたはOであり、
Rは水素、フッ素またはフッ素に置換された炭素数1ないし4のアルキル基である。
【0017】
また、本発明は、前記化学式1において、前記RがFまたはCFである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記化学式1が下記化学式Aないし化学式Dのいずれか一つで表されるものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
また、本発明は、前記添加剤が全体重量に対して0.01重量%ないし10重量%含まれる、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記電解質塩がLiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiN(SOF))、LiBETI(lithium bis(perfluoroethanesulfonyl)imide、LiN(SOCFCF)及びLiTFSI(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiN(SOCF)からなる群から選択されたものである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記電解質塩の濃度が0.1Mないし3Mである、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記有機溶媒がエーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環形カーボネートからなる群から選択された1種以上を含むものであるリチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記リチウム二次電池が4.0V以上の作動電圧を持つことを特徴とするリチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0028】
また、本発明は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在される分離膜及び前記リチウム二次電池用非水系電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によるリチウム二次電池用非水系電解液は添加剤としてスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩を含むことで、電極表面に陰イオンが固定された形態の安定した被膜を形成する効果を示す。
また、本発明によるリチウム二次電池用非水系電解液を含むリチウム二次電池は高電圧下でも電極表面上に安定した被膜を形成し、電解液の持続的な分解抑制を通じた寿命改善及び優れる充放電特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の添加剤による電極被膜(Solid Electrolyte Interphase、SEI)形成及び作動メカニズムを示す模式図である。
図2】本発明の実施例1による添加剤の還元性分解メカニズムを示す反応式である。これより前記メカニズムを通じて生成されたラジカル及び陰イオンがさらに溶媒または添加剤と反応して高分子被膜を形成することができることを確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明によって提供される具体例は下記の説明によって全て達成される。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解すべきであり、本発明が必ずこれに限定されないことを理解しなければならない。
【0032】
本発明は、電解質塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用非水系電解液であって、前記添加剤がスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩である、リチウム二次電池用非水系電解液を提供する。
【0033】
前記添加剤としてのスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩は、下記化学式1で表されるリチウム塩であってもよい。
【0034】
【化6】
【0035】
前記化学式1において、
XはCHまたはOであり、
Rは水素、フッ素またはフッ素に置換された炭素数1ないし4のアルキル基である。
【0036】
また、前記化学式1において、前記Rはフッ素またはフッ素に置換された炭素数1ないし4のアルキル基であってもよく、好ましくはフルオロ基(-F)またはトリフルオロメチル基(-CF)であってもよく、より好ましくはフルオロ基(-F)である。
【0037】
また、前記化学式1で表されるリチウム塩は、より好ましくは化学式Aないし化学式Dのいずれか一つで表されるリチウム塩のいずれか一つであってもよい。
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
本発明のリチウム二次電池用非水系電解液は、前記添加剤としてのスルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩を含むことで、電極表面に陰イオンが固定された形態の安定した被膜を形成することができる。これによって、前記添加剤を含むリチウム二次電池は高電圧下でも電極表面上に安定した被膜を形成し、電解液の持続的な分解抑制を通じた寿命改善及び優れた充放電特性を示す。
【0043】
また、本発明のリチウム二次電池用非水系電解液は、ジフルオロ(オキサレート)ホウ酸リチウム(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ホウ酸(LiB(C、LiBOB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、エチレンスルファイト(ethylene sulfite)、プロピレンスルファイト(propylene sulfite)、ジアルリルスルホネート(diallyl sulfonate)、エタンスルトン、プロパンスルトン(propane sulton、PS)、ブタンスルトン(butane sulton)、エテンスルトン、ブテンスルトン及びプロペンスルトン(propene sultone、PRS)からなる群から選択された添加剤をさらに含むことができる。
【0044】
また、前記スルホンイミド基及びプロパンスルトン基またはエチレンスルフェート基を持つ陰イオンを含むリチウム塩の含有量は、電解液の全体重量に対して0.01重量%ないし10重量%であってもよく、好ましくは0.01重量%ないし5重量%であってもよく、より好ましくは0.1重量%ないし3重量%である。前記リチウム塩の含有量が前記範囲未満の場合、電極表面上での被膜(Solid Electrolyte Interphase、SEI)形成及び安定化効果が些細なものであり、前記リチウム塩の含有量が前記範囲を超える場合は、余剰添加剤による抵抗が増加する問題点が発生することがある。したがって、前記リチウム塩の含有量は前記範囲を満たすことが好ましい。
【0045】
本発明のリチウム二次電池用非水系電解液は電解質塩を含むことができ、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiN(SOF))、LiBETI(lithium bis(perfluoroethanesulfonyl)imide、LiN(SOCFCF)及びLiTFSI(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiN(SOCF)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0046】
前記電解質塩の濃度は0.1Mないし3.0Mであってもよく、好ましくは0.5Mないし2.5Mであってもよく、より好ましくは0.8Mないし2.0Mである。前記電解質塩の濃度が0.1M未満であれば電解液の伝導率が低くなって電解液の性能が落ち、前記電解質塩の濃度が3.0Mを超える場合は電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する問題点がある。したがって、電解質塩の濃度は前記範囲を満たすことが好ましい。前記電解質塩は電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動ができるようにする。
【0047】
また、本発明のリチウム二次電池用非水系電解液の電解質塩は、イミドリチウム塩とイミドリチウム塩ではない他の種類のリチウム塩を混合して使用することができる。
【0048】
前記イミドリチウム塩はLiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiN(SOF))、LiBETI(lithium bis(perfluoroethanesulfonyl)imide、LiN(SOCFCF)及びLiTFSI(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiN(SOCF)からなる群から選択される1種以上であってもよく、前記イミドリチウム塩ではない他の種類のリチウム塩はLiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、及びLiCHSOからなる群から選択される1種以上である。
【0049】
また、前記イミドリチウム塩とイミドリチウム塩ではない他の種類のリチウム塩のモル比は1:1ないし7:1であってもよく、好ましくは1:1ないし6:1であってもよく、より好ましくは1:1ないし4:1である。前記イミドリチウム塩とイミドリチウム塩ではない他の種類のリチウム塩はモル比を満たすことで、電解液の副反応を抑制させながらも集電体の腐食現象を抑制することができる被膜を安定的に形成することができる。
【0050】
本発明のリチウム二次電池用非水系電解液は有機溶媒を含むことができ、前記有機溶媒はリチウム二次電池に通常使われる溶媒であって、例えば、エーテル化合物、エステル(アセテート(Acetate)類、プロピオネート(Propionate)類)化合物、アミド化合物、線形カーボネートまたは環形カーボネート化合物などをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0051】
前記並べた化合物の中でも、好ましくは有機溶媒として線形カーボネート及び環形カーボネートを混合して使用することができる。有機溶媒として線形カーボネート及び環形カーボネートを混合して使用する場合、リチウム塩の解離及び移動を円滑にすることができる。このとき、前記環形カーボネート系化合物及び線形カーボネート系化合物は1:9ないし6:4体積比、好ましくは1:9ないし4:6体積比、より好ましくは2:8ないし4:6体積比で混合されたものであってもよい。
【0052】
一方、前記線形カーボネート化合物は、その具体的な例として、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)からなる群から選択される1種の化合物または少なくとも2種以上の混合物などを挙げることができるし、これに限定されるものではない。
【0053】
また、前記環形カーボネート化合物は、その具体的な例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群から選択される1種の化合物または少なくとも2種以上の混合物を挙げることができる。
【0054】
本発明のリチウム二次電池は4.0V以上の作動電圧を持つことができ、好ましくは4.2V以上の作動電圧を持つことができ、より好ましくは4.25V以上の作動電圧を持つことができる。リチウム二次電池の作動電圧が4.0V未満の場合は、本発明の前記添加剤の添加による差が大きくないが、4.0V以上の作動電圧を持つリチウム二次電池では前記添加剤の添加によって高温貯蔵及び寿命特性が急激に上昇する効果を示す。
【0055】
リチウム二次電池
以下では、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0056】
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、分離膜及びリチウム二次電池用非水系電解液を含む。より具体的に、少なくとも一つ以上の正極、少なくとも一つ以上の負極及び前記正極と負極との間に選択的に介在されることができる分離膜、及び前記リチウム二次電池用非水系電解液を含む。このとき、前記リチウム二次電池用非水系電解液については上述した内容と同一であるため、具体的な説明を省略する。
【0057】
(1)正極
前記正極は正極集電体上に正極活物質、電極用バインダー、電極導電材及び溶媒などを含む正極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。
【0058】
前記正極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されることができる。このとき、正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されることができる。
【0059】
前記正極活物質はリチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含むことができる。より具体的に、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-Y1MnY1(ここで、0<Y1<1)、LiMn2-z1Niz1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y2CoY2(ここで、0<Y2<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y3MnY3(ここで、0<Y3<1)、LiMn2-z2Coz2(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(Nip1Coq1Mnr1)O(ここで、0<p1<1、0<q1<1、0<r1<1、p1+q1+r1=1)またはLi(Nip2Coq2Mnr2)O(ここで、0<p2<2、0<q2<2、0<r2<2、p2+q2+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip3Coq3Mnr3S1)O(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg及びMoからなる群から選択され、p3、q3、r3及びs1はそれぞれ独立的な元素の原子分率として、0<p3<1、0<q3<1、0<r3<1、0<s1<1、p3+q3+r3+s1=1である)など)などを挙げることができ、これらの中でいずれか一つまたは2つ以上の化合物が含まれることができる。
【0060】
この中でも電池の容量特性及び安定性を高めることができるという点で、前記リチウム複合金属酸化物はLiCoO、LiMnO、LiNiO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05など)などであってもよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類及び含量比制御による改善効果の著しさを考慮するとき、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)OまたはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなどであってもよく、これらの中でいずれか一つまたは2つ以上の混合物が使用されることができる。
【0061】
前記電極用バインダーは正極活物質と電極導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分である。具体的に、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0062】
前記電極導電材は正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。前記電極導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われることができる。市販されている導電材の具体的な例では、アセチレンブラック系であるシェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)製品やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC‐72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)及びスーパー(Super)P(Timcal社製品)などがある。
【0063】
前記溶媒はNMP(Nmethyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含むことができ、前記正極活物質、及び選択的に正極用バインダー及び正極導電材などを含むとき、好ましい粘度になる量で使われることができる。
【0064】
(2)負極
また、前記負極は、負極集電体上に負極活物質、電極用バインダー、電極導電材及び溶媒などを含む負極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。一方、前記負極は金属負極集電体自体を電極で使用することができる。
【0065】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を持つものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使われることができる。
【0066】
前記負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、Si、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、NiまたはFeである金属類(Me);前記金属類(Me)で構成された合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeOx);及び前記金属類(Me)と炭素との複合体からなる群から選択された1種以上の負極活物質を挙げることができる。
【0067】
前記電極用バインダー、電極導電材及び溶媒についての内容は上述した内容と同一であるため、具体的な説明を省略する。
【0068】
(3)分離膜
前記分離膜では従来分離膜で使用された通常的な多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができるし、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0069】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0070】
実施例
1.実施例1
(1)リチウム二次電池用非水系電解液の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した後、LiPF(リチウムヘキサフルオロホスフェート)の濃度が1.0Mになるように溶解して非水性有機溶媒を製造した後、LiN(FSO(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、LiFSI)を0.3重量%になるように添加した。前記非水性有機溶媒99gに添加剤である下記化学式Aで表されるリチウム塩1gを添加してリチウム二次電池用非水系電解液を製造した。
【0071】
【化11】
【0072】
(2)リチウム二次電池の製造
正極活物質(LiNi0.6Co0.6Mn0.2;NCM622)、導電材でカーボンブラック(carbon black)、バインダーでポリフッ化ビニリデン(PVDF)を94:3:3の重量比で混合した後、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーを厚さ20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0073】
負極活物質で黒鉛、バインダーでポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電材でカーボンブラック(carbon black)を95:2:3の重量比で混合した後、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを厚さ10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0074】
前記正極、負極及びポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)からなる分離膜を正極/分離膜/負極の順に積層し、前記積層構造物をポーチ型電池ケースに位置させた後、リチウム二次電池用非水系電解液を注液してリチウム二次電池を製造した。
【0075】
2.実施例2
非水性有機溶媒97gに添加剤である前記化学式Aで表されるリチウム塩3gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0076】
3.実施例3
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩1gの代わりに下記化学式Bで表されるリチウム塩1gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0077】
【化12】
【0078】
4.実施例4
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩1gの代わりに下記化学式Cで表されるリチウム塩1gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0079】
【化13】
【0080】
5.実施例5
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩1gの代わりに下記化学式Dで表されるリチウム塩1gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0081】
【化14】
【0082】
比較例
1.比較例1
リチウム二次電池用電解液を製造するとき、前記化学式Aで表されるリチウム塩を添加剤で使わないことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0083】
2.比較例2
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩15gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0084】
3.比較例3
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩1gの代わりに1,3-プロパンスルトン1gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0085】
4.比較例4
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩1gの代わりにエチレンスルフェート1gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0086】
5.比較例5
添加剤として前記化学式Aで表されるリチウム塩1gの代わりに比較化合物a1gを添加したことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池用非水系電解液及びリチウム二次電池を製造した。
【0087】
【化15】
【0088】
前記実施例1ないし5及び比較例1ないし5で使われた添加剤の成分及び含量を下記表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実験例
1.実験例1:容量特性評価
実施例1ないし5と比較例1ないし5のリチウム二次電池を常温で0.33C/4.25Vの定電流/定電圧(CC/CV)の条件で4.25V/0.05C mAまで充電し、0.33Cの定電流(CC)の条件で3Vまで放電して初期放電容量を測定した。
【0091】
以後、リチウム二次電池を常温で0.33C/4.25Vの定電流/定電圧(CC/CV)の条件で4.25V/0.05C mAまで充電し、0.33Cの定電流(CC)の条件で3Vまで放電する過程を300回繰り返した後放電容量を測定した。この時の放電容量を最終放電容量と定義した。前記初期放電容量、最終放電容量それぞれの測定値を下記式1に代入して計算された容量維持率(%)を表2に示す。
【0092】
[式1]
容量維持率(%)=最終放電容量(mAh)/初期放電容量(mAh)
【0093】
【表2】
【0094】
前記表2を参考すれば、実施例1ないし5によるリチウム二次電池の場合、比較例1ないし5によるリチウム二次電池に比べて初期放電容量と最終放電容量及び容量維持率がいずれも改善されたことを確認することができる。
【0095】
2.実験例2:抵抗増加率評価
前記実施例1ないし5と及び比較例1ないし5によって製造されるリチウム二次電池の抵抗を評価するために、リチウム二次電池を活性化した後、SOC(state of charge)が50%になるように充電させた時の初期抵抗を測定した。以後、リチウム二次電池を常温で0.33C/4.25Vの定電流/定電圧(CC/CV)の条件で4.25V/0.05C mAまで充電し、0.33Cの定電流(CC)の条件で3Vまで放電する過程を300回繰り返した後、SOC 50%に合わせて抵抗を測定した。これを最終抵抗と定義する。前記初期抵抗、最終抵抗を下記式2に代入して計算された抵抗増加率(%)を下記表3に示す。
【0096】
[式2]
抵抗増加率(%)={(最終抵抗-初期抵抗)/初期抵抗}×100(%)
【0097】
【表3】
【0098】
表3を見ると、実施例1ないし5の二次電池の場合、比較例1ないし5の二次電池に比べて抵抗増加率が著しく低いことを確認することができる。
【0099】
本発明の単純な変形ないし変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。
図1
図2